JP2014143003A - 非水電解質電池 - Google Patents

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Abstract


【課題】注液口と封止部材との溶接不良及び電解液漏れの少ない非水電解質電池を提供する。
【解決手段】実施形態によると、金属製外装部材1と、電極群2と、非水電解液と、注液口1cと、絶縁膜21と、封止部材23とを含む非水電解質電池が提供される。電極群2は、正極3及び負極4を含み、外装部材1内に収納される。非水電解液は、電極群2に含浸される。注液口1cは、外装部材1に開口されている。絶縁膜21は、注液口1cの周囲の少なくとも一部を被覆する。封止部材23は、注液口1cを塞ぎ、注液口1cの周囲に溶接されている。
【選択図】図8

Description

本発明の実施形態は、非水電解質電池に関する。
近年、急速に普及しているハイブリッド電気自動車、プラグイン電気自動車等の電気自動車の電源には、充放電可能な非水電解質電池、例えばリチウムイオン二次電池が主として用いられている。リチウムイオン二次電池は、例えば、以下の方法で製造される。正極及び負極がセパレータを介して捲回または積層された電極群を作製した後、この電極群をアルミニウムやアルミニウム合金のような金属製ケースに収納する。次いで、ケースの開口部に蓋を溶接し、蓋に設けられた注液口から非水電解液をケース内に注液した後、注液口に封止部材を溶接する。その後、初充電やエージング処理を施すことにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
この非水電解質電池では、電解液漏れに対する対策が必要となる。電解液が漏れやすい箇所は、蓋とケースとの溶接部、もしくは注液口と封止部材との溶接部である。特に、注液口と封止部材との溶接部から電解液が漏れやすいため、注液口と封止部材とを溶接する際の溶接不良を減少させることが要望されている。
特開2000−268811号公報
本発明が解決しようとする課題は、注液口と封止部材との溶接不良及び電解液漏れの少ない非水電解質電池を提供することを目的とする。
実施形態によると、金属製外装部材と、電極群と、非水電解液と、注液口と、絶縁膜と、封止部材とを含む非水電解質電池が提供される。電極群は、正極及び負極を含み、外装部材内に収納される。非水電解液は、電極群に含浸される。注液口は、外装部材に開口されている。絶縁膜は、注液口の周囲の少なくとも一部を被覆する。封止部材は、注液口を塞ぎ、注液口の周囲に溶接されている。
実施形態の非水電解質電池の外観を示す斜視図である。 図1の非水電解質電池を下方から見た分解斜視図である。 図1に示す非水電解質電池に用いられる電極群を示す部分展開斜視図である。 図1の非水電解質電池を下方から見た部分分解斜視図である。 図1の非水電解質電池における絶縁膜形成後の蓋を示す平面図である。 図1の非水電解質電池におけるレーザ照射後の蓋を示す平面図である。 図1の非水電解質電池における注液口に封止部材を配置した状態の蓋を示す平面図である。 図1の非水電解質電池における封止部材溶接後の蓋を示す平面図である。 図1の非水電解質電池におけるレーザ照射後の蓋の別な例を示す平面図である。 図1の非水電解質電池におけるレーザ照射後の蓋の別な例を示す平面図である。
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施形態によれば、金属製外装部材と、電極群と、非水電解液と、注液口と、絶縁膜と、封止部材とを含む非水電解質電池が提供される。電極群は、正極及び負極を含み、外装部材内に収納される。非水電解液は、電極群に含浸される。注液口は、外装部材に開口されている。絶縁膜は、注液口の周囲の少なくとも一部を被覆している。封止部材は、注液口を塞ぐもので、注液口の周囲に溶接されている。
注液口に封止部材を溶接する際の溶接不良を低減する方法として、溶接前に、注液口周辺に付着した電解液を払拭か、レーザー照射で蒸発させることが検討されている。しかし、付着した電解液を長時間放置すると、溶媒が揮発して電解質が残るため、払拭できなくなる。注液口の周囲に残存した電解質は、溶接不良の原因となる。このため、レーザー照射で電解質や電解質と外装部材との反応物を除去しようとしても、これら電解質と反応物は融点及び沸点が高いため(例えば電解質の一例であるLiFの沸点は約1681℃であるのに対し、外装部材を構成する金属元素の一例であるアルミニウムの融点は約660℃)、高出力のレーザーでなければ除去できない。
実施形態によれば、絶縁膜が反射防止膜のような役割を果たすため、注液口周辺に電解質が付着した場合でも、レーザー照射により外装部材表面の温度を上げることができ、絶縁膜の蒸発により電解質を除去することが可能となる。そのため、注液口溶接の不良率を下げることが可能となり、電解液漏れが発生しにくい非水電解質電池を提供することができる。よって、非水電解質電池の寿命を向上させることができる。また、絶縁膜は、電解液を注液口周辺に塗布して、高温雰囲気に晒すことで形成できるため、絶縁膜の形成工程が非水電解質電池のエージングを兼ねることができる。
実施形態に係る非水電解質電池を図1〜図10を参照して説明する。図1及び図2に示すように、非水電解質電池は、外装部材1と、外装部材1内に収納された電極群2と、電極群2に含浸された非水電解液(図示せず)とを含む角形非水電解質電池である。外装部材1は、有底矩形筒状の金属製容器1aと、容器1aの開口部に配置され、矩形板状の蓋1bとを含む。蓋1bは、容器1aの開口部に例えばレーザ溶接等の溶接により接合される。蓋1bには、二つの貫通孔(図示せず)と、注液口1cとが開口されている。
電極群2は、扁平形状をなし、図3に示すように、シート状の正極3とシート状の負極4とを、それらの間にセパレータ5を介在させた状態で捲回したものである。電極群2は、例えば、正極3と負極4とを、それらの間にセパレータ5を介在させた状態で渦巻状に捲回した後、その横断面形状が容器1aの横断面形状に対応する四角形状となるように、全体を加圧して形成される。電極群2の最外層(最外周)には、セパレータ5が配置される。正極3は、例えば金属箔からなる帯状の正極集電体と、正極集電体の長辺に平行な一端部からなる正極集電タブ3aと、少なくとも正極集電タブ3aの部分を除いて正極集電体に積層された正極活物質含有層3bとを含む。負極4は、例えば金属箔からなる帯状の負極集電体と、負極集電体の長辺に平行な一端部からなる負極集電タブ4aと、少なくとも負極集電タブ4aの部分を除いて負極集電体に積層された負極活物質含有層4bとを含む。
このような正極3、セパレータ5および負極4は、電極群の捲回軸に沿って、正極集電タブ3aがセパレータ5から一方向に突出し、負極集電タブ4aがセパレータ5から反対方向に突出するように、正極3および負極4の位置をずらして捲回される。このように捲回することにより、図2および図3に示したように、電極群2の一方の端面から正極集電タブ3aが突出し、電極群2の他方の端面から負極集電タブ4aが突出する。
正極リード6は、貫通孔6bを有する接続プレート6aと、接続プレート6aから二又に分岐して下方に延出した集電部6cとを有する。負極リード7も同様に、貫通孔7bを有する接続プレート7aと、接続プレート7aから二又に分岐して下方に延出した集電部7cとを有する。
図2及び図4に示すように、絶縁体8は、蓋1bの裏面に配置されている。絶縁体8は、裏面に第1,第2の凹部9,10を有する。第1および第2の凹部9,10には、それぞれ、貫通孔9a,10aが開口され、各貫通孔9a,10aは、蓋1bの貫通孔と連通している。第1の凹部9内には正極リード6の接続プレート6aが配置され、第2の凹部10内には負極リード7の接続プレート7aが配置される。また、絶縁体8には、蓋1bの注液口1cと連通する貫通穴8cが開口されている。
正極リード6は二又の集電部6cの間に電極群2の正極集電タブ3aの外周を挟んでこれと接合され、負極リード7は二又の集電部7cの間に電極群2の負極集電タブ4aの外周を挟んでこれと接合される。こうして、正極リード6と電極群2の正極集電タブ3aとが電気的に接続され、負極リード7と電極群2の負極集電タブ4aとが電気的に接続される。
絶縁部材11は、正極リード6と正極集電タブ3aとの接合部分および負極リード7と負極集電タブ4aとの接合部分を被覆する。絶縁部材11は、二つ折りにした絶縁テープ12によって電極群2に固定される。
正極端子13及び負極端子14は、それぞれ、矩形状の頭部13a,14aと、頭部13a,14aの裏面から下方に延出した軸部13b,14bとを含む。正極端子13及び負極端子14は、それぞれ、蓋1bの上面に絶縁ガスケット15を介して配置されている。正極端子13の軸部13bは、絶縁ガスケット15の貫通孔15a、蓋1bの貫通孔、絶縁体8の貫通孔9a、正極リード6の接続プレート6aの貫通孔6bに挿入され、これらにかしめ固定されている。また、負極端子14の軸部14bは、絶縁ガスケット15の貫通孔15a、蓋1bの貫通孔、絶縁体8の貫通孔10a、負極リード7の接続プレート7aの貫通孔7bに挿入され、これらにかしめ固定されている。これにより、正極端子13と正極リード6が電気的に接続され、負極端子14と負極リード7が電気的に接続される。
上述した構成の非水電解質電池において、非水電解液の注液は、容器1a内に電極群2を収容し、容器1aの開口部に蓋1bを接合した後、蓋1bに開口された注液口1cを通して行われる。注液後、図5に示すように、注液口1cを円柱状の封止栓(例えばゴム栓)20で塞ぎ、外装部材1を密封する。次いで、電池を高温雰囲気に貯蔵することにより、蓋1bの上面の注液口1cの周囲に付着した電解液と蓋1bを構成する金属とを反応させ、図5に示すように、注液口1cの周囲に絶縁膜21を形成する。蓋1bが例えばAlを含む金属から形成される場合、非水電解液中の電解質(例えばフッ化リチウム塩)とAlとが反応し、Alのフッ化物、リチウムアルミニウム合金を含む絶縁膜21が生成する。なお、貯蔵を行う雰囲気は、大気中であっても、不活性ガス等の還元雰囲気であってもよい。また、高温雰囲気の温度条件は、55℃以上100℃以下の範囲にすることができる。
次いで、注液口1cから封止栓20を引き抜いた後、注液口1cの周囲にレーザを照射すると、絶縁膜21が反射防止膜として機能するため、蓋1b及び絶縁膜21がレーザ光を効率良く吸収して温度が速やかに上昇する。また、絶縁膜21は、電解質と蓋1bとの反応生成物であり、その融点は、電解質の融点よりも低いため(例えば、電解質のLiBFの融点が約1500℃で、絶縁膜のAlのフッ化物の融点が約700〜800℃)、速やかに蒸発させることができ、絶縁膜の蒸発により、注液口1cの周囲に残存する電解質を除去することができる。レーザー照射後の蓋1bの平面図を図6に示す。図6に示すように、レーザー照射は、その軌跡22が、注液口1cの周囲を囲む円となるように行うことができる。
次いで、図7に示すように、蓋1bの上面に注液口1cを覆うように円形の金属板からなる封止部材23を配置する。封止部材23の径は、絶縁膜21及びレーザー照射領域22双方の径よりも小さい。
ひきつづき、図8に示すように、封止部材23を注液口1cの周囲にレーザ溶接することにより、注液口1cを封止部材23で封止する。図8の24は、レーザ溶接痕を示す。初充電は、封止部材23で封止後に行っても、高温貯蔵前に行っても良い。初充電を高温貯蔵前に行うと、高温貯蔵が初充電後のエージングを兼ねることができる。
絶縁膜21は、外装部材1を構成する元素のフッ化物を含むことが望ましい。フッ化物の例には、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)めっきした鉄、ステンレス(SUS)のフッ化物が含まれる。アルミニウムのフッ化物は、非水電解液の電解質よりも融点が低いため、好ましい。
絶縁膜21の表面から深さ5nmまでの部分におけるフッ素含有量が5at%以上75at%以下の範囲であることが好ましい。フッ素含有量を5at%以上にすることにより、絶縁膜をレーザー照射時の反射防止膜として機能させることができる。また、フッ素含有量を75at%以下にすることにより、レーザー照射時の絶縁膜の剥離を抑制することができる。フッ素の原子濃度は、絶縁膜周辺を有機溶媒で払拭した後に、オージェ電子分光法等で測定することができる。払拭に用いる有機溶媒は、エタノールか、非水電解液に用いられる溶媒を使用することができる。
絶縁膜21の厚さは、5nm以上200nm以下の範囲であることが好ましい。この範囲にすることにより、絶縁膜を反射防止膜として機能させることができる。絶縁膜の厚さは、断面透過型電子顕微鏡法または断面走査型電子顕微鏡法により任意に20箇所測定した値の平均値である。
絶縁膜21は、注液口1cの周囲の溶接部となる箇所の少なくとも一部を被覆していれば良い。また、絶縁膜21は、溶接部の溶接径よりも大きい径を有することが望ましい。これにより、注液口1cの周囲に残存する電解質の除去を促進することができる。
絶縁膜21は平坦よりも凹凸を有する方が好ましく、絶縁膜の最も低い位置と最も高い位置との差が10nm以上1000nm以下であることがより好ましい。前記範囲の表面凹凸において、レーザー照射時に乱反射が起き、効率よくレーザーエネルギーを吸収でき、電解質が蒸発しやすくなるためである。凹凸は、断面透過型電子顕微鏡法または断面走査型電子顕微鏡法により任意に20箇所測定したときの、最も大きな値と最も小さな値との差である。
レーザー照射の範囲は、封止部材23の溶接径よりも大きいことが好ましい。これにより、注液口1cの周囲に付着した電解質の蒸発を促進することができる。レーザー照射は、スポット形状のレーザーを、図6に示すように注液口1c周辺に円の軌跡22を描くように照射してもよく、スポット形状のレーザーを、図9に示すように注液口1c周辺にジグザグの軌跡22を描くように照射してもよく、ライン形状のレーザーを使って、図10に示すように注液口1c周辺を撫でるように照射してもよい。図10の22は、ライン形状のレーザーによる直線状の軌跡を示す。
次に、正極活物質、負極活物質、セパレータ、非水電解液、外装部材、および絶縁部材について説明する。
正極活物質は、特に限定されるものではなく、種々の酸化物、例えば、リチウム含有コバルト酸化物(例えば、LiCoO)、二酸化マンガン、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn、LiMnO)、リチウム含有ニッケル酸化物(例えば、LiNiO)、リチウム含有ニッケルコバルト酸化物(例えば、LiNi0.8Co0.2)、リチウム含有鉄酸化物、リチウムを含むバナジウム酸化物や、二硫化チタン、二硫化モリブデンなどのカルコゲン化合物などを挙げることができる。使用する正極活物質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
負極活物質は、特に限定されるものではなく、例えば、黒鉛質材料もしくは炭素質材料(例えば、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、熱分解気相炭素質物、樹脂焼成体など)、カルコゲン化合物(例えば、二硫化チタン、二硫化モリブデン、セレン化ニオブなど)、軽金属(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、リチウム、リチウム合金など)、リチウムチタン酸化物(例えば、スピネル型のチタン酸リチウム)等を挙げることができる。使用する負極活物質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
セパレータは、特に限定されるものではなく、例えば、微多孔性の膜、織布、不織布、これらのうち同一材または異種材の積層物などを用いることができる。セパレータを形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合ポリマー、エチレン−ブテン共重合ポリマー、セルロースなどを挙げることができる。
非水電解液は、非水溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解させることにより調製される。非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフランなどを挙げることができる。非水溶媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。電解質は、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)などのリチウム塩を挙げることができる。電解質は単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.2mol/L〜3mol/Lとすることが望ましい。電解質の濃度が低すぎると十分なイオン導電性を得ることができない場合がある。一方、高すぎると電解液に完全に溶解できない場合がある。
外装部材における容器及び蓋と、封止部材には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)めっきした鉄、ステンレス(SUS)などを用いることができる。正極端子、負極端子、正極リード、負極リードには、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金から形成することが望ましい。
絶縁部材に使用される樹脂としては、電解液に侵されにくい樹脂であればいかなる樹脂でも使用可能であるが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニルアルコール共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレンメタクリルアクリレート共重合体、エチレン・メチルメタクリル酸共重合体、アイオノマー、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができ、上記樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、また、複数の種類を混合して使用してもよい。中でも、ポリプロピレンまたはポリエチレンを用いることが好ましい。
実施形態によれば、注液口の周囲の少なくとも一部が絶縁膜で被覆されているため、絶縁膜が反射防止膜のような役割を果たし、注液口周辺に電解質が付着した場合でも、レーザー照射により外装部材表面の温度を上げることができ、電解質を除去することが可能となる。そのため、注液口溶接の不良率を下げることが可能となり、電解液漏れが発生しにくい長寿命な非水電解質電池を提供することができる。
以下、実施例について説明する。
[実施例1]
[正極の作製]
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3とLiCoOを用い、LiNi1/3Co1/3Mn1/3とLiCoOとが2:1となるように混合した。この活物質とアセチレンブラックとグラファイトとポリフッ化ビニリデンとを質量比100:2:2:3の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としてプラネタリミキサで混練、攪拌し、正極スラリーを作製した。その後、塗工装置で、単位面積当たりの塗布量が110g/mとなるように厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布し、ロールプレス機で電極密度が3.4g/ccとなるように圧延した。
[負極の作製]
負極活物質として、LiTi12を用いた。この活物質とグラファイトとポリフッ化ビニリデンとを質量比100:5:3の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒としてプラネタリミキサで混練、攪拌し、負極スラリーを作製した。その後、塗工装置で、単位面積当たりの塗布量が110g/mとなるように厚さ20μmのアルミニウム箔に塗布し、ロールプレス機で電極密度が2.4g/ccとなるように圧延した。
[電極群の作製]
上記正極と負極と30μmのセルロースセパレータとを捲回装置で捲回し、巻き止めテープを貼り電極群2とした。
[封口体の作製]
アルミニウム製の蓋1bの裏面に絶縁体8を配置した。次いで、正極端子13の軸部13bを蓋1bの上面に絶縁ガスケット15を介して配置し、軸部13bを蓋1bの一方の貫通孔及び絶縁体8の貫通孔9aに挿入した。また、負極端子14の軸部14bを蓋1bの上面に絶縁ガスケット15を介して配置し、軸部14bを蓋1bの他方の貫通孔及び絶縁体8の貫通孔10aに挿入し、封口体を得た。
[電池の組立]
図2及び図4に示すように、電極群2の正極タブ3aを正極リード6に溶接し、また、正極リード6に正極端子13をかしめ固定した。同様に、電極群2の負極タブ4aを負極リード7に溶接し、また、負極リード7に負極端子14をかしめ固定した。このようにして電極群2と封口体とを一体にして、絶縁部材11を正負極リード6,7および正負極タブ3a,4aを固定するように被せた後、これらをアルミニウム製の容器1a内に挿入し、容器1aの開口部に蓋1bをレーザーにより溶接した。
蓋1bの注液口1cから電解液を入れ、注液口周りに電解液が残っている状態で注液口1cをゴム栓20で塞ぎ、仮封止のなされた電池を得た。仮封止済みの電池を60℃の大気中で24時間加温し、注液口1c周りに絶縁膜21を形成した。オージェ電子分光法により絶縁膜21の組成を調査したところ、Alのフッ化物であった。断面透過型電子顕微鏡法と断面走査型電子顕微鏡法により絶縁膜厚を計測したところ、絶縁膜厚は20点平均で5nmであり、表面に凹凸があり、絶縁膜の最も低い位置と最も高い位置との差が200nmであった。また、絶縁膜周辺をエタノールで払拭し、オージェ電子分光法で表層5nmのフッ素原子濃度を測定したところ、5at%であった。その後、ゴム栓を取り、注液口周りにレーザー照射を行い、注液口をレーザー溶接で塞ぎ、定格容量が20Ahの非水電解質二次電池とした。絶縁膜が半径5mmの円であったのに対して、レーザー溶接は半径3mmの円とした。電解液は、非水溶媒としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートを1:1で混合したものを用い、電解質として2mol/Lの六フッ化リン酸リチウムを用いた。
非水電解質二次電池を20個作製したところ、20個すべてが異常無く充放電できた。歩留まりは100%であった。
[実施例2]
本実施例では、電池の加温条件を100℃24時間とした以外は、上記実施例1と同様の手順により、実施例2のリチウムイオン二次電池を構成した。オージェ電子分光法で、注液口周りに形成された絶縁膜の組成を調査したところ、Alのフッ化物であった。断面透過型電子顕微鏡法と断面走査型電子顕微鏡法により絶縁膜厚を計測したところ、絶縁膜厚は20点平均で200nmであり、表面に凹凸があり、絶縁膜の最も低い位置と最も高い位置との差が1000nmであった。また、オージェ電子分光法で表層5nmのフッ素原子濃度を測定したところ、75at%であった。
非水電解質二次電池を20個作製したところ、20個すべてが異常無く充放電できた。歩留まりは100%であった。
[実施例3]
本実施例では、電池の加温条件を80℃24時間とした以外は、上記実施例1と同様の手順により、実施例3のリチウムイオン二次電池を構成した。オージェ電子分光法で、注液口周りに形成された絶縁膜の組成を調査したところ、Alのフッ化物であった。断面透過型電子顕微鏡法と断面走査型電子顕微鏡法により絶縁膜厚を計測したところ、絶縁膜厚は20点平均で30nmであり、表面に凹凸があり、絶縁膜の最も低い位置と最も高い位置との差が500nmであった。また、オージェ電子分光法で表層5nmのフッ素原子濃度を測定したところ、20at%であった。
非水電解質二次電池を20個作製したところ、20個すべてが異常無く充放電できた。歩留まりは100%であった。
[実施例4]
本実施例では、電解液に、非水溶媒としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートを1:1で混合したものを用い、電解質として2mol/Lの四フッ化ホウ酸リチウムを用いた以外は、上記実施例1と同様の手順により、実施例4のリチウムイオン二次電池を構成した。オージェ電子分光法で、注液口周りに形成された絶縁膜の組成を調査したところ、Alのフッ化物であった。断面透過型電子顕微鏡法と断面走査型電子顕微鏡法により絶縁膜厚を計測したところ、絶縁膜厚は20点平均で10nmであり、表面に凹凸があり、絶縁膜の最も低い位置と最も高い位置との差が300nmであった。また、オージェ電子分光法で表層5nmのフッ素原子濃度を測定したところ、10at%であった。
非水電解質二次電池を20個作製したところ、20個すべてが異常無く充放電できた。歩留まりは100%であった。
[実施例5]
本実施例では、絶縁膜を縦6mm、横4mmの長方形とした以外は、上記実施例1と同様の手順により、実施例5のリチウムイオン二次電池を構成した。リチウムイオン二次電池を20個作製したところ、20個すべてが異常無く充放電できた。歩留まりは100%であった。
[実施例6]
本実施例では、絶縁膜を長軸6mm、短軸2mmの楕円とした以外は、上記実施例1と同様の手順により、実施例6のリチウムイオン二次電池を構成した。リチウムイオン二次電池を20個作製したところ、20個すべてが異常無く充放電できた。歩留まりは100%であった。
[比較例]
本比較例では、注液口から電解液を入れ、注液口周りの電解液を払拭し、電池を25℃で24時間放置後に、注液口周りにレーザー照射をおこない、注液口をレーザー溶接で塞いだ以外は、上記実施例1と同様の手順により、比較例のリチウムイオン二次電池を構成した。リチウムイオン二次電池を20個作製したところ、4個が注液口から漏液した。注液口周りをオージェ電子分光法で組成を調査したところ、絶縁膜が形成されていなかったことから、払拭しきれなかった電解質が残っていたためと考えられる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態及び実施例の非水電解質電池によれば、注液口の周囲の少なくとも一部が絶縁膜で被覆されているため、レーザー照射時に電解質を蒸発させやすくなり、注液口をレーザー溶接で塞ぐ際の歩留まりを向上することができ、電解液漏れを抑制することが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…外装部材、1a…容器、1b…蓋、1c…注液口、2…電極群、3…正極、3a…正極集電タブ、3b…正極活物質含有層、4…負極、4a…負極集電タブ、4b…負極活物質含有層、5…セパレータ、6…正極リード、7…負極リード、8…絶縁体、11…絶縁部材、12…絶縁テープ、13…正極端子、14…負極端子、13a,14a…頭部、13b,14b…軸部、15…絶縁ガスケット、20…封止栓、21…絶縁膜、22…レーザ照射の軌跡、23…封止部材、24…レーザ溶接痕。

Claims (7)

  1. 金属製外装部材と、
    前記外装部材内に収納され、正極及び負極を含む電極群と、
    前記電極群に含浸される非水電解液と、
    前記外装部材に開口された注液口と、
    前記注液口の周囲の少なくとも一部を被覆する絶縁膜と、
    前記注液口を塞ぎ、前記注液口の周囲に溶接された封止部材と
    を含むことを特徴とする非水電解質電池。
  2. 前記絶縁膜は、フッ化物を含むことを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
  3. 前記絶縁膜の表面から5nmまでの部分におけるフッ素含有量が5at%以上75at%以下の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
  4. 前記絶縁膜の一部が前記封止部材からはみだして外装部材表面に露出していることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
  5. 前記絶縁膜の厚さは、5nm以上200nm以下の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
  6. 前記非水電解液は、六フッ化リン酸リチウム及び四フッ化ホウ酸リチウムから選ばれる少なくとも1種類を含むことを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
  7. 前記外装部材は、Al及びFeから選ばれる少なくとも1種類の金属を含むことを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
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