JP2014135934A - ドライフルーツ、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 果実または果実片をマイクロ波(電子レンジ)により加熱し、細胞組織を破壊して乾燥を促進させるとともに、酸化酵素を失活させる。その後、熱風乾燥を行うことにより、従来の約2/3の時間で乾燥が終了し、色彩が鮮やかで、水分や物性が均一かつ安定な製品が得られる。
【選択図】 図2
Description
熱風乾燥以外の乾燥技術として、真空凍結乾燥機、マイクロ波乾燥機、ドラムドライヤー等を用いる方法があるが、機器および運転のコストが高いことや、製品の水分制御が難しいという欠点がある。
熱風乾燥による果実の表面硬化や褐変を軽減するとともに、乾燥時間を短縮する方法として、水または各種溶液を一定時間ごとに散布する方法が研究されている(非特許文献1)。しかし、この方法は、多大な手間または新たな装置化を必要とする。
一方、乾燥野菜の製造における褐変の軽減方法として、乾燥前の野菜を熱湯や蒸気により短時間加熱し、急冷する「ブランチング」が知られている(例えば、非特許文献2)。これに対し、ドライフルーツの製造における褐変軽減には、硫黄燻蒸が行われる場合が多い(例えば、非特許文献3)。
また、渋柿を乾燥した製品である「あんぽ柿」において、果実の殺菌および色彩を向上させる手法として行われている硫黄燻蒸または熱湯浸漬に代わる乾燥前処理として、マイクロ波を照射し、次いで水冷する処理が考案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、渋柿の渋みを抜くための酵素まで失活させてしまうために、実用には向きにくいと考えられる。
家庭で電子レンジを用いてドライフルーツを作る技術はよく知られている(例えば、非特許文献6)。この方法は、乾燥前に果実を薄く切ることが必要であり、厚みのある果実片の乾燥には向かない。また、加熱と表面の水分を拭き取る処理を何度も繰り返す必要があり、煩雑である。
こうして本願発明に係るドライフルーツの製造方法は、果実または果実片にマイクロ波を照射し、加熱・沸騰させた後にも、しばらくマイクロ波を照射するマイクロ波処理工程、マイクロ波処理された果実または果実片に熱風を与えて乾燥させて、水分含量を5%〜30%とする熱風乾燥工程を備えたことを特徴とする。
また、かんきつ、アボカド、イチジク、キウイフルーツ、マンゴー、パイナップル、バナナ、イチゴ、トマトについては、本発明法の処理を行うと、果肉の崩れや味・食感の悪化がおこるため、本発明の処理は適当ではなかった。詳細な理由は不明であるが、このような果実は、組織が弱いために、マイクロ波処理工程を実施するとドロドロとなったり、焦げてしまったりしたものと考えられた。
果実が小さく、マイクロ波処理工程及び熱風乾燥工程によって、全体がほぼ均質な状態でドライフルーツとなる場合には、果実そのものを処理できる。一方、一定程度よりも大きい果実については、これを適当な大きさに切断することにより、果実片として、本発明の処理を行う。果実片としては、マイクロ波処理工程及び熱風乾燥工程を均質な条件で行い、均一なドライフルーツを提供するためには、できるだけ均等な形・大きさとすることが好ましい。そのような切断方法としては、例えば輪切り、さいの目切り、斜め切り、角切り、くし形切り、半月切り、いちょう切りなどが例示される。但し、果実の形状によっては、必ずしも均等な形・大きさとする必要はない。
本発明により得られるドライフルーツは、色彩が鮮やかで透明感があり、従来法のような褐変が見られない。また、製品の水分のばらつきが小さく、表面が硬化することもない。
このように、発明した製造法によれば、短い乾燥期間で品質の高いドライフルーツが得られる。
<マイクロ波処理工程>
果実として、ニホンナシを選択する場合は、以下の工程によりドライフルーツを製造できる。果実の1/4〜1/6の大きさに切断した果実片をマイクロ波により加熱する。果実片の総重量が350gの場合は、出力700Wの電子レンジで5〜10分間加熱する。果実片の量および電子レンジの出力に応じて、加熱時間を変更する。各果実片は、2〜3分程度の加熱によって、沸騰し、表面から盛んに湯気が沸き立つ。しかし、ここで更に、電子レンジで数分間に渡って処理する。
マイクロ波処理工程で加熱した果実片を、定温送風乾燥機により乾燥する。乾燥前に、マイクロ波により加熱した試料を急冷する必要はない。乾燥は40〜75℃で行い、乾燥時間は通常1〜3日間である。ドライタイプ、セミドライタイプの両方の製品が製造可能であり、求める水分になるよう乾燥温度および乾燥時間を定める。
以上のマイクロ波処理工程および熱風乾燥工程によれば、従来の前処理を行わない熱風乾燥法と比較し、乾燥時間が約2/3に短縮される。
この製法により得られるドライフルーツは色彩が鮮やかで透明感があり、従来法のような褐変が見られない。また、製品の水分のばらつきが小さく、表面が硬化することもない。
次に、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
ニホンナシ(品種:豊水)を剥皮・除芯し、ほぼ均等に四つ切りにした果実片4片(350g)をマイクロ波により加熱した(マイクロ波処理工程)。加熱は、電子レンジ(NE−S380F、パナソニック(株))により700Wで5分間マイクロ波を照射することにより行った。マイクロ波処理工程を経たニホンナシは黄白色であった。また、フニャフニャで腰がなく、全体が湿潤していて、一見そのままでは乾燥しにくいような状態であった。
その後、処理した果実片を定温送風乾燥機(WFO−1001SD、東京理化器械(株))により50℃で乾燥した(熱風乾燥工程)。
乾燥前に上記のマイクロ波処理を行った場合は、熱風乾燥により試料の水分が15%(一般的なセミドライフルーツの物性になる)以下になるまで2日であったが、マイクロ波処理を行わない場合は3日を要した(図1)。このように、マイクロ波により前処理を行うと、熱風乾燥時間が2/3に短縮できた。
上記のように、マイクロ波処理後に熱風乾燥を行うことにより得られるニホンナシドライフルーツは、透明感のある濃黄色の美しい色彩であり、褐変も認められなかった。一方、マイクロ波処理を行わない乾燥物は、黄白色で、まだら状に褐変がおこっていた。分光測色計(CM−700d、コニカミノルタセンシング(株))により色彩を測定したところ、マイクロ波処理を行ったドライフルーツは、無処理のものより明度を示すL*値および黄色の指標である(値が正の場合)b*値が低かった(表1、乾燥2日間)。
実験例1と同様のニホンナシ試料をマイクロ波照射後、氷水により冷却したところ、50℃で2日間熱風乾燥後試料の水分は、実験例1で示した冷却しないものよりやや多く、色彩はほぼ同等であった(表1)。このため、野菜のブランチングで行われるような、加熱後の急冷処理は不必要と判断された。
<実験例3>
実験例1と同様のニホンナシ試料に対して、マイクロ波照射時間を変えて(3、5、7および10分)同様に50℃で2日間熱風乾燥したところ、照射時間3分間では褐色を帯びた色彩になるとともに、水分が照射時間5分間より多く、加熱が不十分と判断された。照射時間7分間および10分間においては、実験例1の5分間照射と同様な色彩および水分であり、いずれの照射時間でも良質なドライフルーツが得られた(表1)。
実験例1と同様に切断したニホンナシを、実験例1の2倍量(700g)および3倍量(1050g)用意し、時間を変えてマイクロ波を照射した後に、50℃で2日間熱風乾燥した。1050gを10分間処理した場合は、実験例1におけるマイクロ波処理後乾燥物より水分が高く、褐変がおこり色彩も不良であったが、他の処理量および処理時間では実験例1の5分間照射と同様な色彩および水分であった(表1)。このように、良好なドライフルーツを得るためには、700gでは10分間、1050gでは15分間以上のマイクロ波処理を必要とする。すなわち、本発明法の効果が得られるマイクロ波の照射時間は、ニホンナシの試料重量にほぼ比例したことから、10(W・分/g)〜50(W・分/g)の範囲でマイクロ波処理工程を実施することが好ましいことが分かった(なお、最大値50については、後述の表5に示す結果より算出できる)。
実験例1と同様に切断したニホンナシを、蒸し器で蒸煮した直後に氷水中で急冷するブランチング処理を行い、50℃で2日間熱風乾燥した。5分間および10分間の蒸煮では、乾燥が不十分で水分が多く、さらに褐変がおこった(表1)。20分蒸煮すると、実験例1のマイクロ波処理と類似した水分および色彩であった(表1)が、個体によっては形が崩れた。これらの結果、ドライフルーツ製造におけるマイクロ波処理の優位性が明らかとなった。
<実験例6>
業務用電子レンジ(NE−1801、パナソニック(株))により、ニホンナシ(品種:豊月)の切片350g(六つ切り、6片)を出力および照射時間を変えてマイクロ波処理したものについて、50℃で2日間熱風乾燥を行った。その結果、出力750W、1000W、1400Wおよび1800Wでは、それぞれ5分間、4分間、3分間、2分間マイクロ波を照射すると、ドライフルーツの色彩が黄橙色になり、褐変がおこらないことがわかった(表2)。以上のように、色彩が良好なドライフルーツを得るために必要なマイクロ波の照射時間は、マイクロ出力にほぼ反比例した。
実験例1と同様のニホンナシ試料、電子レンジおよび定温送風乾燥機を用いて、熱風乾燥温度を変えてドライフルーツを作成した。電子レンジによるマイクロ波照射時間は7分間とし、熱風乾燥を40℃から80℃までの5段階の温度で行った。ニホンナシの水分が15%以下になる乾燥期間は、乾燥温度が高くなるほど短かった(表3)。乾燥温度が高くなるほど、ドライフルーツの色彩が橙色を帯びていき、測色色差計によるa*値が高くなっていった(表3)。80℃乾燥では、乾燥中に果実片の一部が焦げる個体があった。
ニホンナシ(品種:福水)をマイクロ波で7分間照射したものおよび照射しないものについて、70℃で1日熱風乾燥を行い、水分が同等(12%)なドライフルーツを作成した。これらについて、物性測定機(クリープメータRE2−3305S、(株)山電)による貫入試験(アダプター:直径3mm円柱、速度1mm/秒)を行ったところ、上記マイクロ波処理によるドライフルーツは、無処理のドライフルーツより破断荷重および破断ひずみ率が小さかった(表4)。これは、無処理の熱風乾燥物は、表面が硬化して硬く、歯でかみ切りにくいが、マイクロ波処理を行えば、食感が改善されたことを示す。
実験例8と同様のマイクロ波処理および無処理のニホンナシドライフルーツを110名の消費者に試食させて好ましい方を選ばせたところ、香りを除き、外観、味、食感、総合評価の各項目について、マイクロ波処理の方が有意に高い評価を受けた(図2)。
<実験例10>
実験例3、実験例4および実験例6の結果のように、ニホンナシのドライフルーツ作成において、乾燥時間の短縮および製品の色彩向上に有効なマイクロ波処理時間は、電子レンジ出力に反比例し、果実片の処理重量に比例した。これらの結果から、ニホンナシ果実片を処理する場合に必要なマイクロ波照射時間は下記の式で表される。この式により、マイクロ波処理を行う果実量および電子レンジ出力から処理時間の目安を知ることができる。
y=A×(19.4−7.7×B)
y:電子レンジ処理時間(分)、A:試料重量(kg)、B:電子レンジ出力(kW)
ただし、電子レンジ出力700W〜1800Wの場合
ニホンナシ(品種:晩三吉)の果実片1個(60g)に、業務用電子レンジを用いて異なる出力でマイクロ波を照射し、ドライフルーツの製造を試みた。出力1800Wおよび750Wで処理すると、セミドライフルーツ並の水分(15%)まで乾燥する前に果実片が焦げた(表5)。出力150Wで20分間処理した場合は焦げないが、セミドライフルーツとしては不十分な乾燥具合であった(表5)。出力150Wで25分間処理するとセミドライフルーツ並の水分となったが、その直前に焦げた(表5)。このように、電子レンジのみを用いてドライフルーツを製造することは、試料の焦げやすさや乾燥に長時間を要することから、現実的ではないことが分かった。
リンゴ(ふじ、四つ切り)、セイヨウナシ(ラ・フランス、四つ切り)およびカキ(富有、半切り)の果実片、並びにブドウ(1:ピュアヴェールおよび2:ピュアルージュ、果皮つき)のそれぞれ200gに業務用電子レンジにてマイクロ波を出力1800Wで1分間照射したもの、およびしないものを、定温送風乾燥機にて50℃で乾燥した。いずれの果実も、マイクロ波を照射したものがセミドライフルーツ様の水分となった時に、無処理のものはまだ水分が高かった(表6)。また、マイクロ波処理を行った乾燥物は、透明感のある濃い色彩を呈した(表6)。
Claims (5)
- 果実または果実片にマイクロ波を照射し、加熱・沸騰させた後にも、しばらくマイクロ波を照射するマイクロ波処理工程、マイクロ波処理された果実または果実片に熱風を与えて乾燥させて、水分含量を5%〜30%とする熱風乾燥工程を備えたことを特徴とするドライフルーツの製造方法。
- 前記果実または果実片は、ニホンナシ、セイヨウナシ、リンゴ、カキ(但し、渋柿を除く)、ブドウからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載のドライフルーツの製造方法。
- 前記マイクロ波処理工程においては、10(W・分/g)〜50(W・分/g)の条件でマイクロ波を照射することを特徴とする請求項1または2に記載のドライフルーツの製造方法。
- 前記熱風乾燥工程においては、40℃〜75℃の温度、24時間〜72時間の条件とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載のドライフルーツの製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか一つの製造方法によって製造された水分含量が5%〜30%のドライフルーツ。
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