JP2014133234A - 付着物の除去方法およびこれに用いる付着物の除去装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかる付着物の除去方法は、液滴を含む気体を被処理物に対して吹き付ける、ことを特徴とし、本発明にかかる付着物の除去装置、前記付着物の除去方法に使用する除去装置であって、液滴を含む気体を吹き付けるためのノズルと、気体を送り込む配管と、前記配管に液体を合流させる配管と、気体を送り込む配管の途中に設けられ前記液体の合流前の気体および/または合流後の気体を加熱する少なくとも1つの加熱部と、を含む、ことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
不要となった付着物の例としては、例えば、洗浄の場面では、機械加工の際に使用する加工油、掘削油、機械加工の際に生じるパーティクル、指紋による脂質などといった汚れなど、エッチングの場面では、シリコンウエハにおける酸化珪素膜など、乾燥の場面では、乾燥除去すべき水や有機溶剤などである。特に、半導体分野などでは、微細な付着物が性能に大きく影響するので、付着物を除去することの重要性が高い。
例えば、半導体技術におけるウエハ製造プロセスでは、シリコン基板表面を酸化させて酸化珪素膜を形成させた後、フォトレジストを塗布し、その上に、所望のパターンを有するフォトマスクを密着させ、露光、現像し、次いで、マスクされていない酸化珪素膜をエッチング除去するとともに、不要なフォトレジストを酸洗除去し、水洗、乾燥という操作が行われるが、酸化珪素膜のエッチング、レジスト除去、水洗、乾燥の各工程は、いずれも、付着物を除去する工程である。
そこで、本発明者は、温水による浸漬や放射に代わる別法として、水の液体、蒸気、過熱蒸気の三態の特性を生かすことを考えたのである。具体的には、水を水滴として用いて、この水滴を含む気体を被処理物に吹き付けることを考えたのである。この方法によれば、水滴が被処理物への衝撃力付与による剥離作用を奏し、気体によって前記水滴を保温あるいは昇温することが容易にできるので、温度エネルギーによる除去力の向上も容易であるとともに、その流速を速めることにより水滴の剥離作用を高め、さらに、気体を混合する分、流体全体としての体積が増加するので、水の使用量のさらなる低減が可能となり、省エネルギー化、廃液の低減の点でも、より優れた除去方法となる。
なお、本除去方法で、このように、水以外の液体を用いた場合、水を適用した場合ほどに環境面、安全面に優れたものとはなり難いが、従来の如く、何ら工夫することなく溶剤を大量に使用する除去方法と比較したときには、その環境負荷が低減される可能性もある。
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明にかかる付着物の除去方法は、液滴を含む気体を被処理物に対して吹き付ける、ことを特徴とする。
本発明にかかる付着物の除去装置は、上記付着物の除去方法に使用する除去装置であって、液滴を含む気体を吹き付けるためのノズルと、気体を送り込む配管と、前記配管に液体を合流させる配管と、気体を送り込む配管の途中に設けられ前記液体の合流前の気体および/または合流後の気体を加熱する少なくとも1つの加熱部と、を含む、ことを特徴とする。
特に、液体として水を使用すれば、水は、毒性、燃焼の危険性、大気汚染、温暖化などの問題を生じさせない溶剤であるので、環境への影響が極めて小さい。また、発生する廃液は、水と汚染物の混合物であって、その量も非常に少ないため、後処理が極めて簡易である効果もある。さらに、発火の危険性がなく、防爆対策が不要であるという利点もある。
〔液滴〕
液滴とは、液体が微細な液滴状となったもので、使用する液滴の粒径としては、例えば、10〜1000μmが好ましい。10μm未満では除去効果が低くなってしまうおそれがある。これは、粒径が小さいほど個々の液滴の重量も小さくなるため、被処理物への衝撃力が弱くなることによると推測される。一方、1000μmを超える場合にも除去効果が低くなるおそれがある。これは、被処理物に対して個々の液滴の径が大きくなり、広い面で衝突することとなり、衝突による凹みができにくくなるためと推測される。より好ましくは50〜500μmである。
〔気体〕
本発明で使用する気体としては、特に限定されるものではなく、被処理物の種類などに応じて適宜決定すればよい。具体的には、例えば、被処理物が耐食性の低いものである場合などには、窒素や希ガスや空気などの反応性の小さな気体が好適に挙げられる。特に、特別な気体を準備する必要がなく、コストのかからない点で空気が好ましい。また、窒素や希ガスなどの不活性ガスを用いれば、被処理物が酸化などの変質を起こすことを回避できる。また、例えば、被処理物が耐食性の高いものである場合や、化学的作用により強い除去効果を得たい場合などには、オゾン、酸素、塩素、フッ素などの活性ガスを積極的に選択することもできる。被処理物表面の付着物が油脂膜からなる場合に、オゾンや酸素などを用いれば、油脂膜を酸化させ、水と炭酸ガスに分解させて除去することができる。特に、本方法では、高温状態での除去処理が容易であり、この場合、高い酸化作用が期待できる。また、塩素ガスなどを用いれば、高温状態で除去処理を行う場合における本方法の優れた殺菌作用を助勢する効果が得られる。さらに、フッ素ガスなどを用いれば、水と反応してフッ酸となるので、本発明の除去方法をエッチングの目的で使用することもできる。
〔液滴を含む気体〕
液滴を含む気体は、気体による保温、昇温効果に優れるため、温度エネルギーを利用して除去力を高めることができる。したがって、液滴を含む気体を加温して除去処理することが好ましく、特に、高温状態で除去処理することが好ましい。例えば、液滴として水を用いる場合は、吐出口温度が100〜300℃となるように調整することが好ましい。被処理物や付着物の種類にもよるが、100℃未満では液滴の剥離作用を充分に向上させることができなくなるおそれがあり、300℃を超えると昇温に必要なエネルギーが高く、環境負荷やランニングコストが増大するおそれがあり、また、除去装置や被処理物が熱によって損傷するおそれがある。より好ましくは150〜200℃である。吐出口温度は、処理対象や、液体や気体の種類などに応じて、適宜決定すればよく、例えば、液体としてイソプロピルアルコールの如き低沸点の有機溶剤などを用いる場合などには、液滴が完全に気化してしまわないように、また、オゾンなど、高温下で分解しやすい気体を用いる場合などには、過度の分解が起こらないように、適宜調整すればよい。
〔除去方法〕
液滴を含む気体を被処理物に吹き付ける方法としては、例えば、液滴を含む気体を吹き付けるためのノズルと、気体を送り込む配管と、前記配管に液体を合流させる配管と、気体を送り込む配管の途中に設けられ前記液体の合流前の気体および/または合流後の気体を加熱する少なくとも1つの加熱部と、を含む、除去装置により行うことが好ましく、例えば、図1に示す除去装置10を用いる形態が好適である。
気体と液体の供給量は、流量制御器11,12によって適切に設定される。
単位時間当たりの流量については、例えば、液体の流量を3〜300cc/min、気体の流量を0.3〜30L/minとすることができるが、これらは、被処理物の大きさなどに鑑みて適宜設定すればよい。単位時間当たりの流量が少なすぎると充分な剥離作用が得られなくなるおそれがあり、多すぎると液体の使用量が増え、流体温度が上がりにくくなり、剥離効果も低下する。
液体と気体の使用量の割合は、液体や気体の種類などによっても好ましい範囲が異なるため、特に限定するわけではないが、例えば、液体として水を用いる場合などには、液体の使用量V1と気体の使用量V2との割合が、体積比率で、V1:V2=1:100〜1:200となるようにすることが好ましい。液体の使用量の割合が多すぎる場合(気体の使用量の割合が少なすぎる場合)、液体の微粒化が不充分となったり流体の流速が充分に得られなくなったりするおそれがある。他方、液体の使用量の割合が少なすぎる場合(気体の使用量の割合が多すぎる場合)、液滴の粒径が小さくなりすぎたり、液体がすべて蒸発してしまったりして、液滴による剥離作用が得られなくなるおそれがある。
加熱器13a、13bは温度制御器14によって温度が制御されている。特に、加熱器13bについては、液体の流量を考慮して、温度が高くなり過ぎないように設定する。温度が高くなりすぎると、液体が全て蒸発してしまって、液滴が存在しなくなってしまう。
気体によって速い流速を得た液滴が被処理物表面の付着物に対して衝突することで付着物を剥離する作用が働くが、従来のように液滴だけを用いた場合、吐出口16から吐出されたときの温度が100℃程度であっても、吐出後に直ちに冷却が始まり、付着物に作用する時点では、せいぜい80〜90℃となっている。しかし、本発明では、気体に液滴を含ませるようにしているので、液滴個体の温度が100℃以下であっても、流体全体の見かけの温度は100℃を超えることができ、充分に高い温度で付着物に作用させることができる。そのため、付着物を軟化させる作用や剥離作用が従来よりも高い。
すなわち、まず、液滴が被処理物表面の付着物に対して衝突すると、その衝撃により前記付着物に凹みが生じる。次に、この凹みに液体の気化物が浸入する。液体の気化物は浸透力が高いので、凹みから、被処理物表面と付着物の間に入り込んで浸透していく。液体の気化物は、冷やされて液化するが、そのとき、表面張力が生じる。被処理物表面と付着物の間に浸透した液体の気化物が液体に戻って表面張力を生じることで付着物を押し上げるように作用するので、結果として、良好な剥離作用が得られる。
〔除去システム〕
上記除去方法を含む除去システムを、特に、洗浄システムを例として、以下に説明する。
<ベルトコンベアによる洗浄システム>
ベルトコンベアによる洗浄システムは、大規模な連続洗浄に適している。
1次洗浄の前に温水への浸漬を行うことによって、被処理物を軟化させ、1次洗浄における洗浄効果をより高めるようにしている。
また、被処理物の反転により、被処理物に対する洗浄、乾燥をムラなく行うようにしている。
なお、前記温水供給装置40、高温ガス供給装置50は従来公知の装置を用いればよいが、後述する洗浄槽による洗浄システムで採用しているように、前記温水供給装置40、高温ガス供給装置50として、除去装置10を利用することもできる。
<洗浄槽による洗浄システム>
洗浄槽による洗浄システムは、被処理物が比較的小さい場合に好適である。例えば、粒状物や箔状物などの洗浄に適している。
このメッシュ状のドラム洗浄槽60を回転または揺動させながら用いることで、温水への浸漬、本発明にかかる除去方法、乾燥という一連の処理を簡潔に行うシステムを構築する。
また、図3では、本発明にかかる除去方法のための液滴を含む気体の吹き付けを行うための除去装置10以外に、浸漬のための温水槽41とこの温水を供給するための温水供給装置40、および、乾燥のための高温ガス発生用の高温ガス供給装置50が2点鎖線で示されている。
具体的には、浸漬のために温水を吐出する際には、気体の供給を行わず、水の供給のみを行い、加熱器13bにより水を加熱して吐出口16から温水を吐出するようにしている。また、本発明にかかる除去方法を使用する際には、液体、気体をともに供給し、加熱器13aによる気体の加熱、加熱器13bによる液滴を含む気体の保温もしくは昇温を行い、吐出口16から液滴を含む高温の気体を吐出するようにしている。さらに、乾燥のために高温ガスを吐出する際には、液体の供給を行わず、ガス(乾燥に適したものであれば不活性ガスに限らない)を供給し、加熱器13aおよび/または加熱器13bによりガスを加熱して、吐出口16からこの高温ガスを吐出するようにしている。
このように、この洗浄システムでは、上に述べたベルトコンベアによる洗浄システムと同様の処理を1つのドラム洗浄槽60、1つの除去装置10によって行うことができるので、小規模な設備で済み、非常に低コストである。ただし、1度に洗浄できる量に限界があるので、大量洗浄を行う場合には、上記ベルトコンベアによる連続洗浄の方が好ましいといえる。
なお、この方法でも、高温下で洗浄処理を行うので、乾燥時間が短い。
リングによる洗浄システムは、例えば、棒状の被処理物の洗浄に適している。
図4に示すように、本発明の除去方法を実施できる除去装置(例えば、図1に示す除去装置10)を用いて、その導管部15に連設するようにリング状の吐出口16を配置する。そして、このリング状の吐出口16の内側に被処理物30を配置し、リング状の吐出口16および/または被処理物30を、リングの軸方向にスライドさせるように動かすことで、被処理物全体をまんべんなく洗浄することができる。
本発明にかかる除去方法を施した後に、吐出口16から高温ガスを吐出させることで、上述の洗浄システムと同様に、洗浄後の乾燥も含めた洗浄システムとすることができる。
<管状を利用した洗浄システム>
本発明の除去方法は、図5に示すような容器の内壁の洗浄にも応用することができる。
すなわち、図5に示すように、被処理物30である容器の内側に、除去装置10の導管部15とこれに連設する吐出口16を挿入し、必要に応じて、吐出口16および/または被処理物30を上下動させることにより、被処理物30の内壁をまんべんなく洗浄することができる。
また、高温洗浄であるが故に、洗浄効果とともに殺菌効果も同時に得ることができ、乾燥も迅速になされる利点があることも、上述の洗浄システムと同様である。
<ターンテーブルによる洗浄システム>
その他の洗浄システムとして、ターンテーブルによる洗浄システムなども挙げられる。すなわち、ターンテーブル上に被処理物を載置し、ターンテーブルを回転させながら、上記除去装置10を用いて、その吐出口16から液滴を含む高温の気体を被処理物に吹き付けるようにする。被処理物が比較的大きく、その周囲全体にわたって洗浄したい場合に好適である。
なお、この方法でも、高温下で洗浄処理を行うので、乾燥時間が短い。
〔使用対象〕
本発明にかかる除去方法は、特に限定するわけではないが、例えば、加工油や油脂類などの剥離への使用が好適に挙げられる。本発明においては、特に、高温で処理を行うことで、汚染物を軟化させ、洗浄などの際に要求される剥離効果を高めることができる。
例えば、半導体技術におけるウエハ製造プロセスでは、シリコン基板表面を酸化させて酸化珪素膜を形成させた後、フォトレジストを塗布し、その上に、所望のパターンを有するフォトマスクを密着させ、露光、現像し、次いで、マスクされていない酸化珪素膜をエッチング除去するとともに、不要なフォトレジストを酸洗除去し、水洗、乾燥という操作が行われるが、従来、酸化珪素膜のエッチングにはフッ酸など、レジスト除去には硫酸など、水洗には高温の純水などが使用されてきた。この場合、被処理物にこれらの液を滴下したり、あるいは、被処理物をこれらの液に浸漬したりといった方法が採用されていたが、液の使用量が多いため、廃液の量も多くなり、さらに、大量の液を昇温、保温するのに過大な加熱エネルギーを要する問題があった。また、水洗後の乾燥では、窒素とイソプロピルアルコールの混合ガスを吹き付けて、吹き付けによる物理的衝撃と、イソプロピルアルコールと水との共沸とにより、速やかに乾燥を行うことが知られているが、窒素の加熱と、イソプロピルアルコールの気化、および、これらの温度を維持するためのエネルギーコストが大きく、また、その加熱には、ウォーターバスなどの大掛かりな装置が用いられてきた。本発明は、従来技術における前記問題を生じることなく、エッチング、レジスト除去、水洗、乾燥のいずれの工程にも適用できるものである。例えば、液体を液滴として気体とともに使用するため、その量は非常に少なくて済み、廃液の量も低減できるとともに、加熱する場合に必要なエネルギーも少ない。窒素とイソプロピルアルコールを併用する場合にも、従来のように、大掛かりな装置は必要なく、図1に示す如き装置を用いればよく、簡素化が可能である。
<洗浄への適用例>
〔実施例1〕
40mm角のステンレス試験片「SUS304」の表面に加工油「オマラオイル100」(シェル石油社製)を50mg塗布して24時間放置し、この試験片に対して下記洗浄方法を適用した。
図1に示す除去装置10を用いて、被処理物(試験片)に対して水滴を含む高温の気体を吹き付けた。気体として空気を用いた。
上記洗浄後の試験片について、試験片表面を目視観察して、図6(a)に示すように被処理物(試験片)30表面に加工油70が認められた場合を不合格、図6(b)に示すように被処理物(試験片)30表面に加工油70が認められない場合を合格とする評価(除去効果の評価1)を行った。
つぎに、より厳しい評価、すなわち、前記洗浄後の試験片表面に水0.1ccを滴下し、水の状態を目視観察して、図7(a)に示すように被処理物(試験片)30表面の水80が略球状となった場合を不合格、図7(b)に示すように被処理物(試験片)30表面の水80の接触角が低下し断面が略楕円状となった場合を合格とする評価(除去効果の評価2)を行った。合格であるか否かの具体的判断については、試験片表面の加工油をエタノールで拭き取った後にその表面に水0.1ccを滴下した場合の水の接触角を参考にした。
そこで、前記除去方法における水滴を含む高温の空気の吐出口温度を140℃から184℃に変更して、同様の試験片に対して洗浄を行ったところ、前記除去効果の評価1のみならず、除去効果の評価2においても合格の評価となった。
〔実施例2〕
図1に示す除去装置10を用いて、上記と同様の試験片に対して水滴を含む高温の気体を吹き付けた。気体として空気を用いた。
このとき、水の供給量は水40cc/min、空気の供給量は20L/minであった。空気は水と混合する前に加熱器13aにより184℃に余熱して、水と混合したのちは、水滴を含む高温の空気を加熱器13bにより吐出口温度が184℃(流体全体の見かけの温度)となるように加熱あるいは保温するようにした。
〔実施例3〕
図1に示す除去装置10を用いて、上記と同様の試験片に対して水滴を含む高温の気体を吹き付けた。気体としてオゾンを用いた。
このとき、水の供給量は50cc/min、オゾンの供給量は50L/minであった。オゾンは水と混合する前に加熱器13aにより100℃に余熱して、水と混合したのちは、水滴を含む高温のオゾンを加熱器13bにより吐出口温度が150℃(流体全体の見かけの温度)となるように加熱あるいは保温するようにした。
〔実施例4〕
図1に示す除去装置10を用いて、上記と同様の試験片に対して水滴を含む高温の気体を吹き付けた。気体として塩素を用いた。
このとき、水の供給量は50cc/min、塩素の供給量は50L/minであった。塩素は水と混合する前に加熱器13aにより120℃に余熱して、水と混合したのちは、水滴を含む高温の塩素を加熱器13bにより吐出口温度が140℃(流体全体の見かけの温度)となるように加熱あるいは保温するようにした。
〔比較例〕
図1に示す除去装置10を用いて、上記と同様の試験片に対して高温の水蒸気を吹き付けた。具体的には、空気を使用せず、水の供給量を20cc/minとし、加熱器13bにより充分に加熱を行い、吐出口温度120℃の過熱水蒸気とした。
上記洗浄後の試験片について除去効果を評価したところ、前記除去効果の評価1、除去効果の評価2のいずれにおいても不合格と評価された。
さらに、過熱水蒸気の吐出口温度を185℃に変更して、同様の試験片に対して洗浄を行ったところ、前記除去効果の評価1、除去効果の評価2のいずれにおいても、やはり、不合格と評価された。
〔考察〕
実施例1に示す結果から、本発明にかかる除去方法では、水滴を含む高温の空気の吐出口温度が高温であるほうが、除去効果が高いことが分かった。
実施例2に示す結果から、水と空気の配合量を変更しても優れた除去効果が得られることが分かった。
実施例3,4に示す結果から、空気以外の気体を用いても、優れた除去効果が得られることが分かった。オゾンを用いた実施例3では、前記除去効果の評価2における接触角が、空気を用いた実施例2よりも小さく、加工油の除去効果が特に高いことが分かった。塩素ガスを用いた実施例4でも、他の実施例と同様、優れた除去効果が認められることから、本方法は、塩素ガスなどを用いた殺菌作用の高い除去方法などへの応用も可能であることが分かった。
〔実施例5〕
従来公知の方法により、シリコン基板表面を酸化させて酸化珪素膜を形成させた後、フォトレジストを塗布し、その上に、所望のパターンを有するフォトマスクを密着させ、露光、現像を行った。
次に、フォトレジストによるマスクがされていない酸化珪素膜を、図1に示す除去装置を用いてエッチングした。すなわち、図1に示す除去装置において、気体としてフッ素を用い、液体として水を用いることにより、現像後のシリコン基板に、水滴を含む高温のフッ素ガスを吹き付けた。シリコン基板に吹き付けられた水滴を含む高温のフッ素ガスは、一部がフッ酸となり、酸化珪素膜に対し良好なエッチング除去作用が認められた。この方法では、従来のように薬液を大量に使用する必要がなく、また、加熱するエネルギーを優位に低減することができた。具体的には、従来のようにフッ酸を滴下する場合と比べて、70%(本実施例での水の使用量と、従来技術におけるフッ酸の使用量とを、単位時間当たりの使用量で比較)の薬液低減が実現できた。
上記水洗を終えた後、図1に示す除去装置を用いて乾燥を行った。すなわち、図1に示す除去装置において、気体として窒素を用い、液体としてイソプロピルアルコールを用いることにより、水洗後のシリコン基板に、イソプロピルアルコールの液滴を含む高温の窒素を吹き付けた。従来は、窒素ガスを加熱、保温しておき、これとは別にイソプロピルアルコールを気化しておいたのち、これらを混合して、シリコン基板に吹き付けていたため、窒素ガスを加熱、保温するためのタンクと熱源、イソプロピルアルコールを気化させるためのタンクと熱源が必要であり、保温、昇温に多大なエネルギーコストを要していたが、本方法では、図1に示す除去装置に必要量だけを供給し、加熱、混合するので、エネルギーコストを大幅に削減できた。窒素による液滴の保温、昇温、流速の増加作用により、基板上の水に対して強い物理的衝撃を与えることができ、また、液滴状のイソプロピルアルコールは、水とともに容易に共沸し、これらの結果、十分な乾燥効果が得られた。
11,12 流量制御器
13a、13b 加熱器
14 温度制御器
15 導管部
16 吐出口
20 ベルトコンベア
30 被処理物
40 温水供給装置
41 温水槽
50 高温ガス供給装置
60 ドラム洗浄槽
70 加工油
80 水
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明にかかる付着物の除去方法は、粒径10〜1000μmの液滴を含む気体を被処理物に対して吹き付ける、付着物の除去方法であって、前記液滴を含む気体は、流量3〜300cc/minの水(V1)と流量0.3〜30L/minの気体(V2)をV1:V2=1:100以上の体積比率で合流させることで得られるものであり、前記合流の前の気体を100〜300℃に加熱するとともに前記合流の後の液滴を含む気体をも100〜300℃に加熱することにより、高い温度で被処理物に吹き付けられるようになっている、ことを特徴とする。
本発明にかかる付着物の除去装置は、上記付着物の除去方法に使用する除去装置であって、液滴を含む気体を吹き付けるためのノズルと、気体を送り込む配管と、前記配管に液体を合流させる配管と、気体を送り込む配管の途中に設けられ前記液体の合流前の気体および/または合流後の気体を加熱する少なくとも1つの加熱部と、を含む、ことを特徴とする。
〔気体〕
本発明で使用する気体としては、特に限定されるものではなく、被処理物の種類などに応じて適宜決定すればよい。具体的には、例えば、被処理物が耐食性の低いものである場合などには、窒素や希ガスや空気などの反応性の小さな気体が好適に挙げられる。特に、特別な気体を準備する必要がなく、コストのかからない点で空気が好ましい。また、窒素や希ガスなどの不活性ガスを用いれば、被処理物が酸化などの変質を起こすことを回避できる。また、例えば、被処理物が耐食性の高いものである場合や、化学的作用により強い除去効果を得たい場合などには、オゾン、酸素、塩素、フッ素などの活性ガスを積極的に選択することもできる。被処理物表面の付着物が油脂膜からなる場合に、オゾンや酸素などを用いれば、油脂膜を酸化させ、水と炭酸ガスに分解させて除去することができる。特に、本方法では、高温状態での除去処理が容易であり、この場合、高い酸化作用が期待できる。また、塩素ガスなどを用いれば、高温状態で除去処理を行う場合における本方法の優れた殺菌作用を助勢する効果が得られる。さらに、フッ素ガスなどを用いれば、水と反応してフッ酸となるので、本発明の除去方法をエッチングの目的で使用することもできる。
Claims (4)
- 液滴を含む気体を被処理物に対して吹き付ける、付着物の除去方法。
- 液滴の粒径が10〜1000μmである、請求項1に記載の付着物の除去方法。
- 前記気体が空気である、請求項1または2に記載の付着物の除去方法。
- 請求項1から3までのいずれかに記載の付着物の除去方法に使用する除去装置であって、液滴を含む気体を吹き付けるためのノズルと、気体を送り込む配管と、前記配管に液体を合流させる配管と、気体を送り込む配管の途中に設けられ前記液体の合流前の気体および/または合流後の気体を加熱する少なくとも1つの加熱部と、を含む、付着物の除去装置。
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