JP3544326B2 - 基板処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,基板を処理する基板処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば半導体ウェハ(以下,「ウェハ」という。)のフォトリソグラフィ処理においては,ウェハに対してレジストを塗布し,次いでパターンの露光を行い,その後現像を行う処理が行われる。その後,ウェハからレジストを除去する。
【0003】
かかるレジスト除去の際には洗浄装置が用いられており,この洗浄装置では,SPM(HSO/Hの混合液)と呼ばれる薬液が充填された洗浄槽内にウェハを浸漬させてレジストの剥離を行う。一方,今日においては,環境保全の観点から薬液を使用せずに,廃液処理が容易なオゾン水を用いてレジスト除去を行うことが要望されている。この場合には,オゾン水が充填された洗浄槽内にウェハを浸漬させ,オゾン水中の酸素原子ラジカルによってレジストを酸化反応させて二酸化炭素や水等に分解する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,通常,高濃度のオゾンガスを純水にバブリングして溶解させることによりオゾン水を生成し,その後,このオゾン水を洗浄槽内に充填しているので,その間に,液中のオゾンが消滅していきオゾン濃度が低下していく場合があった。オゾン水の洗浄能力は,オゾン濃度の高低によって影響を受けるので,低濃度のオゾン水では洗浄能力が低く,レジスト除去が十分に行えない場合があった。また,オゾンとレジストの反応は非常に速いため,ウェハをオゾン水に浸漬させた状態では,レジスト表面へのオゾン供給が不十分となり,高い反応速度を得ることができなかった。
【0005】
従って,本発明の目的は,高い処理能力を得ることができる,基板処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために,本発明によれば,基板を処理する方法であって,基板の周囲雰囲気を加圧する工程と,溶媒の液膜を基板の表面に形成する工程と,前記溶媒の液膜に処理ガスを溶解させて基板を処理する工程とを有することを特徴とする,基板処理方法が提供される。
【0007】
本発明の基板処理方法によれば,溶媒の液膜を基板の表面に形成する一方で,溶媒の液膜に処理ガスを溶解させるので,この溶媒の液膜を,基板を処理可能な液体の液膜に変質させることができる。このような液体の液膜は,処理直前で生成されることになるので,濃度低下等が起こらず,処理能力が高い。従って,基板に対して効果的な処理を施すことができる。なお,処理ガスには,例えばオゾンガス,塩素ガス,フッ素ガス,水素ガス,各種反応種(ラジカル,イオン)を有するオゾンガス,塩素ガス,フッ素ガス,水素ガス等がある。
【0009】
本発明の基板処理方法によれば,基板の周囲雰囲気を例えば196kPaに加圧する。そうすれば,溶媒の液膜に対する処理ガスの溶解量を増加させることができ,処理能力の更なる向上を図ることができる。
【0010】
前記溶媒の液膜を基板の表面に形成する工程は,前記溶媒の蒸気を基板の表面に供給して行うことが好ましい。かかる方法によれば,溶媒の蒸気を基板の表面に供給して,基板の表面に膜厚の薄い溶媒の液膜を形成することができる。この場合,前記溶媒の蒸気を基板の表面に凝縮させて行うようにすれば,膜厚の薄い溶媒の液膜を容易に形成することができるようになる。凝縮の方法は,前記基板を前記溶媒の露点温度よりも低い温度に調整して行うようにすると良い。そうすれば,基板に溶媒の蒸気を供給した際に,基板の表面に溶媒の蒸気を簡単に凝縮させることができる。このように溶媒の液膜の膜厚が薄ければ,溶媒の液膜を高濃度の処理可能な液体の液膜に変質させることができ,処理を迅速に行うことができる。
【0011】
基板を処理する方法であって,基板を所定の温度に調整する工程と,基板を所定の温度に調整した後,基板の表面に溶媒の蒸気を供給する工程と,前記溶媒の蒸気を基板の表面に凝縮させて溶媒の液膜を形成し,該溶媒の液膜に処理ガスを溶解させて基板を処理する工程とを有することを特徴とする,基板処理方法を提供する。
【0012】
この基板処理方法では,本発明と同様に,溶媒の蒸気と処理ガスを用いて基板を処理する。ここで,所定の温度を,溶媒の露点温度よりも低く,かつ処理が最適に行われる温度に設定する。溶媒の露点温度と基板温度の温度差が開いていると,溶媒の蒸気を過大に凝縮させることになり,多量の液滴が基板の表面に付着してしまう。そうなると,膜厚の厚い溶媒の液膜を基板上に形成して処理能力の低下を招いてしまう。しかしながら,基板を所定の温度に調整した後,基板の表面に溶媒の蒸気を供給するので,溶媒の蒸気を適切に凝縮させることができ,確実に膜厚の薄い溶媒の液膜を形成して処理能力の低下を防ぐことができる。
【0013】
基板を処理する方法であって,基板を所定の温度に調整する工程と,基板の周囲雰囲気を加圧する工程と,基板を所定の温度に調整した後,基板の表面に溶媒の蒸気を供給する工程と,前記溶媒の蒸気を基板の表面に凝縮させて溶媒の液膜を形成し,該溶媒の液膜に処理ガスを溶解させて基板を処理する工程とを有することを特徴とする,基板処理方法を提供する。
【0014】
この基板処理方法では,本発明と同様に,溶媒の蒸気と処理ガスを用いて基板を処理する。ここで,基板を所定の温度に調整した後,基板の表面に溶媒の蒸気を供給するだけでなく,基板の周囲雰囲気も加圧するので,高い処理能力を得ることができる。
【0015】
前記溶媒の蒸気を基板の表面に供給する工程の前に,前記処理ガスを基板の表面に供給する工程を設けることが好ましい。かかる方法によれば,基板の表面に溶媒の液膜を形成した際に,直ちに溶媒の液膜に処理ガスを溶解させることができ,処理を迅速に行うことができる。
【0016】
基板を所定の温度に調整する工程に際し,温度調整された気流を基板の表面に供給するようにしても良い。かかる方法によれば,直ちに基板を所定の温度に調整することができ,処理を迅速に行うことができる。なお,気流に,空気,不活性ガス(例えばNガス)又は処理ガス等を用いると良い。
前記基板の周囲雰囲気を加圧する工程は,例えば前記基板を収納する処理容器の排気回路に設けられた流量コントローラの調整により行われる。
前記流量コントローラは,例えば前記処理容器に設けられた圧力センサの検出信号に基いて制御部により制御される。
【0017】
なお,基板を処理する装置であって,前記基板の処理が行われる処理容器を備え,前記処理容器内の基板に対し溶媒の蒸気を供給する溶媒蒸気供給手段と,前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給手段とを設けたことを特徴とする,基板処理装置を提供する。
【0018】
この基板処理装置によれば,基板を収納した処理容器内に,溶媒蒸気供給手段によって溶媒の蒸気に供給する。一方,処理ガス供給手段から処理ガスを処理容器内に供給する。このように,溶媒の蒸気と処理ガスとを,個別の手段によって供給する。
【0019】
基板を処理する装置であって,前記基板の処理が行われる処理容器を備え,前記処理容器内の基板に対し溶媒の蒸気を供給する溶媒蒸気供給手段と,前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給手段と,前記処理容器内の雰囲気を排気する排気手段と,前記排気手段の排気量を調整する排気量調整機構とを設けたことを特徴とする,基板処理装置を提供する。
【0020】
この基板処理装置によれば,同様に溶媒の蒸気と処理ガスとを個別に供給する。また,排気量調整機構により排気手段の排気量を絞って処理容器内を所定の加圧雰囲気にする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照して,例えば25枚のウェハを一括して洗浄するように構成された洗浄装置に基づいて説明する。この洗浄装置は,オゾンガスを利用してウェハWからレジストを除去するものであり,図1は,本発明の実施の形態にかかる洗浄装置1の断面説明図である。
【0022】
図1に示すように,洗浄装置1は,ウェハWの洗浄が行われる処理容器2を備えている。この処理容器2は,25枚のウェハWを十分に収納可能な大きさを有する容器本体3と,この容器本体3の上面開口部を開放・閉鎖する蓋体4とを備えている。なお,図示の例のように,蓋体4が容器本体3の上面開口部を閉鎖した際には,蓋体4と容器本体3との間の空隙は,Oリング等のシール部材5で密閉し,容器本体3内の雰囲気が外に漏れないようにする。
【0023】
容器本体3内に,ウェハWを保持する3本の平行な保持部材6a,6b,6cを水平姿勢で設けている。図2に示すように,これら保持部材6a,6b,6cには,何れもウェハWの周縁下部を保持する溝7を等間隔で25箇所形成している。従って,容器本体3は,25枚のウェハWを等間隔で配列させた状態で収納できる構成となっている。
【0024】
また,図1に示すように,容器本体3の上部における内壁には,保持されたウェハWの周囲を囲むようにして,ヒータ8を取り付けている。ヒータ8はCPU9に接続されている。CPU9からの操作信号によりヒータ8の発熱量を調整し,処理容器2内に収納されたウェハW及びウェハWの周囲の雰囲気を所定の温度にさせるようになっている。
【0025】
一方,容器本体3の底部に,処理容器2内に水蒸気10を供給する水蒸気供給手段11を設けている。水蒸気供給手段11は,容器本体3の底部において内壁に固着された熱板12と,熱板12の下面に取り付けられたヒータ13と,熱板12の上面に純水を滴下する純水供給回路14とを有している。ヒータ13はCPU9に接続されている。CPU9からの操作信号によりヒータ13の発熱量を調整するようになっている。純水供給回路14では,その入口を純水供給源15に接続し,その出口を熱板12の上方に開口している。また,純水供給回路14に流量コントローラ16を設けている。流量コントローラ16はCPU9に接続されている。CPU9からの操作信号により流量コントローラ16を制御して純水供給回路14内の純水の流量を調整するようになっている。従って,発熱したヒータ13によって熱を帯びた熱板12に対し,純水供給回路14から純水を滴下すれば,純水が気化して水蒸気10が発生するようになり,処理容器2内を水蒸気10で充満できる構成となっている。なお,気化できなかった純水は,容器本体3の底部において内壁に接続された排液回路17を通じて排液される。
【0026】
蓋体4に,処理容器2内にオゾンガス20を供給するオゾンガス供給回路21を接続している。オゾンガス供給回路21の入口をオゾンガス供給源22に接続し,オゾンガス供給回路21に,流量コントローラ23,UVランプ24を設けている。この流量コントローラ23はCPU9に接続されている。CPU9からの操作信号により流量コントローラ23を制御してオゾンガス供給回路21内のオゾンガス20の流量を調整する構成となっている。また,UVランプ24は,オゾンガス供給回路21を通過するオゾンガス20に紫外線を照射し,オゾンを活性化させる。さらに,蓋体4に,処理容器2内の雰囲気を排気する排気回路25を接続している。
【0027】
洗浄装置1では,水蒸気10を凝縮させて純水の液膜をウェハWの表面に形成する。この場合,CPU9は,ヒータ13に操作信号を送信して水蒸気10を十分に発生できる程度にヒータ13の発熱量を調整する一方で,ヒータ8にも操作信号を送信してウェハWを水蒸気10の温度よりも低い温度に調整し,ウェハWと水蒸気10の露点温度との温度差を制御してウェハWの表面に水蒸気10を最適に凝縮させるようになっている。また,ウェハWの表面に形成された純水の液膜にオゾンガス20を溶解させてオゾン水の液膜を生成し,これによりオゾンを利用した処理を行う。この場合,CPU9は,流量コントローラ16に操作信号を送信して水蒸気10の発生量を調整して純水の液膜の膜厚を調整する一方で,流量コントローラ23にも操作信号を送信して純水の液膜の膜厚に見合うようなオゾンガス20の流量を調整し,純水の液膜の上辺だけしかオゾンガス20が溶解しないような事態を防止し,純水の液膜の中にまで最適かつ確実にオゾンガス20が溶解できる状態にする。
【0028】
その他,ウェハWの表面に純水を吐出してリンス洗浄を行う純水吐出ノズル26や,ウェハWの表面にNガス(不活性ガス)を吐出して乾燥を行うN吐出ノズル27を設ける。
【0029】
次に,以上のように構成された洗浄装置1で行われる本発明の実施の形態にかかる洗浄方法について説明する。図3に示すように,ウェハWの表面にレジスト膜30が形成されている。図1に示したように,このような25枚のウェハWを処理容器2内に収納する。なお,レジスト膜30の厚さを例えば1200nmとする。
【0030】
次いで,ヒータ13を例えば120℃に発熱させると共に,熱板12に対して純水供給回路14から純水を滴下し,120℃の水蒸気10を発生させて処理容器2内に供給する。一方,オゾンガス供給回路21から,例えばオゾンを192g/m(normal)[9vol%(体積百分率)]程度有するオゾンガス20を処理容器2内に供給する。このように,水蒸気10とオゾンガス20とを,個別の手段によって供給する。
【0031】
また,ヒータ8を発熱させてウェハWを所定の温度に温度調整する。この所定の温度を,水蒸気10の露点温度よりも低く,かつオゾンを利用した処理が最適に行われる温度に設定している。ここで,ウェハWを水蒸気10の露点温度よりも低い温度に温度調整しているので,水蒸気10を供給した際には,図4に示すように,ウェハWの表面に水蒸気10を凝縮させて純水の液膜31を形成することができる。この純水の液膜31にオゾンガス20を溶解させる。
【0032】
このとき,純水の液膜31にオゾンガス20を溶解させてオゾン水の液膜をウェハWの表面に生成し,液膜中に酸素原子ラジカルを多量に生成させる。ウェハWの表面で生成された酸素原子ラジカルは,消滅することなく,直ちに酸化反応を起こし,レジストをカルボン酸,二酸化炭素や水等に分解し,図5に示すように,オゾン水の液膜32によってレジスト膜30を十分に酸化分解して水溶性に変質させ,その後の純水によるリンス洗浄で容易に除去することができる。
【0033】
このように,かかる洗浄方法によれば,純水の液膜31をウェハWの表面に形成する一方で,純水の液膜31にオゾンガス20を溶解させるので,純水の液膜31を,レジスト膜30を除去可能なオゾン水の液膜32に変質させることができる。このようなオゾン水の液膜32は,ウェハW上で,かつ反応直前で生成されることになるので,時間的経過によるオゾン濃度の低下等が起こらず,処理能力が高い。従って,ウェハWに対して効果的なオゾンを利用した処理を施すことができる。
【0034】
しかも,水蒸気10の露点温度よりも低い温度に調整されたウェハWの表面に水蒸気10を供給するので,ウェハWの表面に水蒸気10を簡単に凝縮させることができ,ウェハWの表面に膜厚の薄い純水の液膜31を容易に形成することができる。膜厚が薄ければ,純水の液膜31を高濃度なオゾン水の液膜32に変質させることができ,オゾンを利用した処理を迅速に行うことができる。また,オゾンガス供給回路21から新たなオゾンガス20を供給させ,液膜に対する溶解を継続的に行う。このため,反応により消滅した分のオゾンを補い,薄い液膜を通してレジスト膜30へ新たなオゾンを迅速かつ十分に供給し,高い反応速度を維持することができる。純水の液膜31やオゾン水の液膜32等の液膜は,水滴を形成しない程度の薄さであると良い。また,ウェハWを,酸化反応を活発的に行える範囲内で水蒸気10の露点温度よりも低い温度に調整しているので,オゾンを利用した処理の促進を図ることができる。
【0035】
その後,純水吐出ノズル26から純水を吐出させてウェハWから水溶化したレジスト膜を洗い流し(リンス洗浄),N吐出ノズル27からNガス(不活性ガス)を吐出させてウェハWから液滴を取り除いた(乾燥)後,ウェハWを洗浄装置1から搬出する。なお,リンス洗浄や乾燥を,洗浄装置1で行わずに,例えばレジスト膜30を除去した後に洗浄装置1から搬出してリンス専用の洗浄装置や乾燥装置に搬入して行うようにしても良い。
【0036】
かくして,本発明の実施の形態にかかる洗浄方法によれば,洗浄直前に,ウェハWの表面に処理能力が高いオゾン水の液膜32を生成するので,ウェハWに対して効果的なオゾンを利用した処理を施すことができる。その結果,レジスト膜30を十分に除去することができる。また,本発明の実施の形態にかかる洗浄装置1は,以上の洗浄方法を好適に実施することができる。
【0037】
なお,本発明の実施の形態の一例ついて説明したが,本発明はこの例に限らず種々の態様を取りうるものである。例えば,触媒ガスを処理容器内に微量に供給し,液膜中で酸素原子ラジカルの生成を促進させて酸化反応をより活発的に行えるようにするのも良い。この場合,触媒ガスには,NOxガス等が挙げられる。
【0038】
また,処理容器内に水蒸気供給手段を設けて装置内部で水蒸気を発生した場合について説明したが,洗浄装置の外部で水蒸気を発生させ,この水蒸気を処理容器内に供給するようにしても良い。このような構成においては,処理容器内に水蒸気供給手段を設ける必要がないので,その分,洗浄装置の小型化を図ることができる。
【0039】
また,前記洗浄装置1では,排気回路25からそのまま排気を行っていたが,本発明は,図6に示す洗浄装置40のように,排気回路41に流量コントローラ42を設けて処理容器2内の圧力を自在に調整する構成であっても良い。前記CPU9に流量コントローラ42を接続する。また処理容器2内に圧力センサ43を設け,この圧力センサ43からの検出信号をCPU9に送る。そしてCPU9は,この検出信号に基づいて流量コントローラ42を制御して排気回路41の排気量を絞るようになっている。一方,オゾンガス供給源22は,オゾンガスの供給圧を196kPaに設定している。このため,処理容器2内は,所定の加圧雰囲気として例えば196kPaに設定,維持が可能な構成となっている。なお,図1及び図6中において,略同一の機能及び構成を有する構成要素については,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0040】
処理容器2の下部に,水蒸気10を供給する水蒸気供給回路44を接続している。水蒸気供給回路44に流量コントローラ45を設け,水蒸気供給回路44の入口を水蒸気供給源46に接続している。水蒸気供給源46は,水蒸気発生容器47,純水供給源48,純水供給回路49,熱板50,ヒータ51,排液回路52を有している。また,CPU9に流量コントローラ45を接続し,水蒸気10の供給量を調整する構成となっている。
【0041】
前記N吐出ノズル27に,Nガスを供給するN供給回路60を接続している。このN供給回路60は2つに分岐している。一方の分岐先に,Nガスが充填されたN供給源61,流量コントローラ62を設け,他方の分岐先に,所定の温度,例えば150℃に加熱されたNガスが充填されたホットN供給源63,流量コントローラ64を設けている。前記CPU9により,流量コントローラ62,64を制御し,N吐出ノズル27に供給するガスをNガス又はホットNガスに適宜切り換える構成となっている。その他,処理容器2の下部に排液回路65を接続している。
【0042】
次に,以上のように構成された洗浄装置40で行われる洗浄方法について説明する。まず処理容器2内に常温(23℃)のウェハWを収納する。次いで,ヒータ8を例えば115℃に発熱させてウェハWを所定の温度に調整する。一方,オゾンガス供給回路21から196kPaの供給圧でオゾンガス20を処理容器2内に供給する。このとき,N吐出ノズル27から例えば150℃のホットNガスをウェハWの表面に吐出させる。そうすれば,直ちにウェハWを所定の温度に昇温させることができる。
【0043】
ウェハWを所定の温度に調整した後,ホットNガスの供給を停止し,水蒸気供給回路44を通して水蒸気10を処理容器20内に導入してウェハWの表面に供給する。一方,排気回路41の流量コントローラ42を絞って排気量を低くし,処理容器20内を196kPaの加圧雰囲気にする。このような処理容器20内では,オゾンガス20の濃度が高められる。
【0044】
ここで,ウェハWの表面では,水蒸気10を凝縮させて純水の液膜31を形成することになるが,処理容器2内にオゾンガス20を予め供給して充満させているので,直ちに純水の液膜31にオゾンガス20を溶解させてオゾン水の液膜32を生成することができる。こうしてウェハWの表面に形成されたオゾン水の液膜32により,オゾンを利用した処理を迅速に行うことができる。
【0045】
また,ウェハWが常温状態のままで水蒸気10を供給すれば,水蒸気10の露点温度とウェハ温度の温度差が開いているため,水蒸気10を過大に凝縮させることになり,多量の水滴がウェハWの表面に付着してしまう。そうなると,膜厚の厚い純水の液膜31をウェハW上に形成して処理能力の低下を招いてしまう。しかしながら,前述したようにウェハWを所定の温度に昇温させた後,ウェハWの表面に水蒸気10を供給するので,水蒸気10を適切に凝縮させることができ,確実に膜厚の薄い純水の液膜31を形成して処理能力の低下を防ぐことができる。しかもウェハWの周囲雰囲気を196kPaに加圧しているので,純水の液膜31に対するオゾンガス20の溶解量を増加させることができる。ウェハW上に極めて高濃度のオゾン水の液膜32を形成することができる。従って,処理能力の更なる向上を図ることができる。
【0046】
レジスト膜30を除去した後,処理容器2内からウェハWを搬出し,その後にリンス専用の洗浄装置や乾燥装置に順次搬送して,リンス洗浄,乾燥を行う。一方,処理容器2では,水蒸気10及びオゾンガス20の供給を停止させる。処理容器2内の液滴を排液回路65により排液し,流量コントローラ42を全開にさせると共に,N吐出ノズル27によりNパージを行い,処理容器2内からオゾンガス20及び水蒸気10を追い出して内部雰囲気を乾燥させる。そして,次の常温のウェハWを処理容器2内に収納する。ここで,水蒸気10が残存した状態で,常温のウェハWを処理容器2内に収納してしまうと,前述したように多量の水滴がウェハWの表面に付着してしまう。しかしながら,処理容器2と水蒸気供給源46とを個別に設けて,処理容器2内の雰囲気を簡単に置換することができるので,ウェハ昇温後の水蒸気導入までは,ウェハWの表面を乾燥させた状態に保つことができる。
【0047】
かかる洗浄方法によれば,ホットNガスを用いてウェハ昇温時間を短縮させると共に,水蒸気10を供給する前にオゾンガス20を供給してオゾン水の液膜32の生成時間も短縮させるので,オゾンを利用した処理を迅速に行い,スループットを向上させることができる。さらにウェハWの周囲雰囲気を加圧して,純水の液膜30に対するオゾンの溶解度を向上させるので,レジスト膜の除去効率が増し,より一層効果的なオゾンを利用した処理を施すことができる。
【0048】
かかる洗浄装置40によれば,水蒸気供給回路44を通じて処理容器2内に水蒸気10を供給するので,処理容器2内の水分量を容易に調整することができ,内部雰囲気を乾燥させることができる。さらにヒータ51は水蒸気供給源46内で発熱するので,ヒータ51の熱的影響は,処理容器2内のウェハWに及ばない。従って,ウェハWを過加熱することがなく,ウェハ温度が必要以上に上がらない。その結果,例えばウェハ温度が水蒸気10の露点温度を越えてしまい,水蒸気が凝縮し難くなって純水の液膜形成が行われず,オゾンを利用した処理が行えなくなる事態を防止することができる。なお,洗浄装置40に限らず,前記洗浄装置1の排気回路25にも流量コントローラを設け,処理容器2内でウェハWの周囲雰囲気を加圧するようにしても良い。
【0049】
また,オゾンガスを利用してレジスト膜を除去した場合について説明したが,オゾンガスを利用して他の膜を除去するようにしても良い。例えばレジスト膜の下に塗り,解像度を上げるためのような有機物の膜(BARC:ボトム・アンチ・リフレクティブ・コーティング)も除去可能である。さらに,オゾンガス以外の他の処理ガスを利用してウェハの表面に付着した様々な付着物を除去するようにしても良い。
【0050】
例えば,塩素(Cl)ガスを供給し,純水の液膜を塩酸(HCl)の液膜に変質させて液膜中に塩素原子ラジカルを生成させ,ウェハから金属付着物,パーティクルを除去することが可能である。また,水素(H)ガスを供給し,純水の液膜中に水素原子ラジカルを生成させ,ウェハから金属付着物,パーティクルを除去することも可能である。また,フッ素(F)ガスを供給し,純水の液膜をフッ酸(HF)の液膜に変質させて液膜中にフッ素原子ラジカルを生成させ,ウェハから自然酸化膜,パーティクルを除去することが可能である。
【0051】
さらに,予め処理ガスに励起反応を起こさせて,ラジカルを有するようにしても良い。即ち,酸素原子ラジカルを有するオゾンガス,塩素原子ラジカルを有する塩素ガス,水素原子ラジカルを有する水素ガス,フッ素原子ラジカルを有するフッ素ガスを供給し,より多量のラジカルを生成させて洗浄の促進を図ることもできる。
【0052】
本発明は,基板を洗浄する場合だけでなく,基板の表面に所定の処理液を塗布するような処理の場合にも適用することができる。また,複数枚の基板を一括して処理するバッチ式の処理だけでなく,一枚ずつ基板を処理する枚葉式の処理の場合にも適用することができる。また,基板が,上記ウェハWに限定されずにLCD基板,CD基板,プリント基板,セラミック基板等であってもよい。
【0053】
【実施例】
次に,本発明の実施例を行った。まず処理対象を有機物膜(BARC)とし,オゾンガス中のオゾン濃度と有機物膜の除去レートとの関係を調べた。その結果を図7に示す。図7では,横軸をオゾン濃度[g/m(normal)]とし,縦軸を除去レート[nm/s]とした。図7から理解できるように,オゾン濃度が高くなるにつれて除去レートが向上している。
【0054】
次いで,処理容器内を加圧した状態でオゾンを利用した処理を行い,その処理能力について調べた。この処理では,処理容器内の圧力を196kPaに,オゾンガス中のオゾン濃度を約162g/m(normal)[7.6vol%(体積百分率)]に,処理時間を3分間(min)に,有機物膜の膜厚初期値を67.4nmにそれぞれ設定している。また加圧雰囲気の処理容器内では純水の沸点は上がることになる。そこで純水の温度,ひいては水蒸気の温度を,80℃,90℃,100℃,110℃,120℃の5つの場合に設定し,それぞれの場合における有機物除去特性を調べた。その結果を図8に示す。
【0055】
図8では,横軸をウェハ温度[℃]とし,縦軸を処理後の有機物膜の厚さ[nm]とした。図8中のグラフ線aは純水の温度が80℃のときの,図7中のグラフ線bは,純水の温度が90℃のときの,図8中のグラフ線cは,純水の温度が100℃のときの,図8中のグラフ線dは,純水の温度が110℃のときの,図8中のグラフ線eは,純水の温度が120℃のときの有機物除去特性をそれぞれ示す。
【0056】
図8中のグラフ線a〜eから理解できるように,純水の温度が高い方が,全体的に有機物除去特性が良好である。このことから,温度が高い分だけ,反応速度が速まりオゾンを利用した処理が活発に行われると考察される。また,グラフ線b,d,eでは,ウェハ温度が上がるにつれて有機物膜の除去量がそれぞれ増加している。ウェハ温度が水蒸気の温度に近づいて温度差が縮まると,水蒸気が適切に凝縮されて膜厚の薄い純水の液膜が最適に形成される。膜厚が薄ければ薄いほど,純水の上辺だけに止まらずに,純水の液膜の中までオゾンガスが確実に溶解するようになり有機物除去が好適に行われると考察される。また高濃度なオゾン水の液膜が形成されて,先の図7で説明したように,除去レートが増加したと考察される。一方,グラフ線bでは約80℃近辺を境界にし,グラフ線dでは約90℃近辺を境界にし,グラフ線eでは約100℃近辺を境界にして除去量がそれぞれ低下していく。ウェハ温度が,水蒸気の温度に接近し過ぎると,純水の液膜形成が困難な状態になり,オゾンを利用した処理の促進が図れなくなると考察される。
【0057】
また,ウェハWの周囲雰囲気を加圧せずに,純水の温度を90℃に設定して処理を行った。その結果を図8中の点fに示す。一方,ウェハ温度,純水の加熱温度等の条件は変えず,ウェハWの周囲雰囲気を196kPaして処理を行うと,その結果は前記グラフ線b中の点bに移動する。これら点fと点bを比較してみると,点bの方が,有機物膜の除去量が2倍以上になっている。このように,ウェハの周囲雰囲気を加圧する方が高い処理能力を得ることを確認できる。
【0058】
【発明の効果】
発明によれば,処理直前に,基板の表面に処理能力が高い液体の液膜を生成するので,基板に対して効果的な処理を施すことができる。その結果,例えば基板から有機付着物,金属付着物,パーティクル,自然酸化膜等の付着物を十分に除去することができる。
【0059】
特に,処理能力の更なる向上を図り,確実に膜厚の薄い溶媒の液膜を形成して処理能力の低下を防ぐことができる。
【0060】
また,基板の表面に薄膜な溶媒の液膜を形成することができ,溶媒の液膜形成を容易に行えるようになる。従って,処理を迅速に行うことができる。
【0061】
また,直ちに溶媒の液膜に処理ガスを溶解させることができ,直ちに基板を所定の温度に調整することができる。従って,処理を迅速に行い,スループットを向上させることができる。
【0062】
なお,基板処理装置は,本発明の基板処理方法を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる洗浄装置の断面説明図である。
【図2】保持部材の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる洗浄方法で行われる工程を説明する第1の工程説明図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる洗浄方法で行われる工程を説明する第2の工程説明図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる洗浄方法で行われる工程を説明する第3の工程説明図である。
【図6】図1の洗浄装置とは異なる他の実施の形態にかかる洗浄装置の断面説明図である。
【図7】実施例において,オゾン濃度と除去レートの関係を示すグラフである。
【図8】ウェハの周囲雰囲気を加圧した状態でオゾンを利用した処理を行った際の有機物除去特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 洗浄装置
2 処理容器
8 ヒータ
10 水蒸気
11 水蒸気供給手段
20 オゾンガス
21 オゾンガス供給回路
W ウェハ

Claims (10)

  1. 基板を処理する方法であって,
    基板の周囲雰囲気を加圧する工程と,
    溶媒の液膜を基板の表面に形成する工程と,
    前記溶媒の液膜に処理ガスを溶解させて基板を処理する工程とを有することを特徴とする,基板処理方法。
  2. 前記溶媒の液膜を基板の表面に形成する工程は,基板を収納した処理容器内に前記溶媒の蒸気を供給して行うことを特徴とする,請求項1に記載の基板処理方法。
  3. 前記溶媒の液膜を基板の表面に形成する工程は,前記溶媒の蒸気を基板の表面に凝縮させて行うことを特徴とする,請求項1又は2に記載の基板処理方法。
  4. 前記基板を前記溶媒の露点温度よりも低い温度に調整することを特徴とする,請求項1,2又は3に記載の基板処理方法。
  5. 前記溶媒の液膜を基板の表面に形成する工程の前に,基板を収納した処理容器内に処理ガスを供給することを特徴とする,請求項1,2,3又は4に記載の基板処理方法。
  6. 基板を処理する方法であって,
    処理容器内に基板を収納する工程と,
    基板を所定の温度に調整する工程と,
    基板の周囲雰囲気を加圧する工程と,
    基板を所定の温度に調整した後,前記処理容器内に溶媒の蒸気を供給する工程と,
    前記溶媒の蒸気を基板の表面に凝縮させて溶媒の液膜を形成し,該溶媒の液膜に処理ガスを溶解させて基板を処理する工程とを有することを特徴とする,基板処理方法。
  7. 基板を所定の温度に調整する工程に際し,温度調整された気流を処理容器内に供給することを特徴とする,請求項6に記載の基板処理方法。
  8. 前記溶媒の蒸気を処理容器内に供給する工程の前に,前記処理ガスを処理容器内に供給する工程を有することを特徴とする,請求項2,6又は7に記載の基板処理方法。
  9. 前記基板の周囲雰囲気を加圧する工程は,前記基板を収納する処理容器の排気回路に設けられた流量コントローラの調整により行われることを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,7又は8に記載の基板処理方法。
  10. 前記流量コントローラは,圧力センサの検出信号に基いて制御部により制御されることを特徴とする,請求項9に記載の基板処理方法。
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