JP2014132894A - セリ科植物エキスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アレルギー予防や抗酸化作用、抗炎症作用や抗ガン作用等の機能性を有するアピゲニン及び/又はルテオリンを含有する安全な機能性素材を提供する。
【解決手段】 セリ科植物を原料として、該原料をβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理することにより、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有するセリ科植物エキスの製造方法を提供する。さらに、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理すること及び/又は油脂を添加し攪拌処理した後に、該油脂を分離・除去することにより、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有し、かつ、セリ科植物の特徴的な強い臭いや苦味を低減したセリ科植物エキスの製造方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、セリ科植物エキスの製造方法に関する。
セリ科植物(Apiaceae)は、香気成分や抗酸化成分に富むものが多く、古くから香辛料や薬草といったいわゆるハーブとして利用されている。また、セリ科植物の有する機能性成分がもたらす様々な生理活性に着目して、種々の検討が行われている。例えば、セリ科植物であるハマボウフウ、カワラボウフウ、アメリカボウフウ、ボタンボウフウの一種または二種以上の抽出物を含有することを特徴とする血流および脂肪代謝促進剤(特許文献1)や、シソ科、キク科、ショウガ科、バラ科およびセリ科植物からなる群より選ばれた少なくとも1種の植物の抽出物の分画物を有効成分として含有する血小板凝集抑制剤(特許文献2)が開示されている。
アピゲニンは、カミツレやローマカミツレ等の植物に含まれているフラボンであり、アレルギー予防(非特許文献1)や抗酸化作用(非特許文献2)、がん予防(非特許文献3)等の機能性を有する。
ルテオリンは、ローズマリーやスギナ等の植物に含まれているフラボンであり、抗炎症作用(非特許文献4)や抗ガン作用(非特許文献5)等の機能性を有する。
アピゲニンやルテオリンの含有物については、アピゲニン含有植物の抽出物を吸着剤処理して溶出させる製造方法(特許文献3)や、パセリをコウジカビ属の糸状菌を用いて発酵処理したパセリ発酵物(特許文献4)が開示されている。
セリ科植物は、アピゲニンやルテオリンを始めとする機能性成分の多くを配糖体の形で含有している。しかし、これら機能性成分は、配糖体よりもアグリコンの形態で投与する方が有効であるという報告がされている(非特許文献6)。また、セリ科植物は、テルペン類等の成分を含有しており、独特の強い臭気を有するため、セリ科植物に含まれる機能性成分を継続的に摂取する上で制限を受けるという問題がある。このような独特の強い臭気の低減を目的として、例えば、抗酸化成分を含む植物を、アルコール濃度20〜80重量%のアルコール水溶液にて抽出し、得られた植物抽出液のアルコール濃度を10重量%以下とした後に、合成吸着剤に通液することを特徴とする抗酸化剤の製造方法(特許文献5)が開示されている。
このように、アレルギー予防や抗酸化作用、抗炎症作用や抗ガン作用等の機能性を有するアピゲニン及び/又はルテオリンを含有する安全な機能性素材が依然として求められている。
特開2008−100952号公報 特開2012−153671号公報 特開2010−163363号公報 特開2012−135247号公報 特開2002−3840号公報
ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of Agricultural and Food Chemistry)、2006年、第54巻、第14号、p.5203−5207 ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリション(British Journal of Nutrition)、1999年、第81巻、第6号、p.447−455 ニュートリション・アンド・キャンサー(Nutrition and Cancer)、2006年、第54巻、第2号、p.243−251 プランタ・メディカ(Planta Medica)、2007年、第73巻、第3号、p.221−226 インディアン・ジャーナル・オブ・クリニカル・バイオケミストリー(INDIAN Journal of Clinical Biochemistry)、2012年、第27巻、第2号、p.157−163 ザ・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー・アンド・エクスペリメンタル・テラピューティクス(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics)、2001年、第296巻、第1号、p.181−187
本発明の課題は、セリ科植物を原料として、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有するセリ科植物エキスの製造方法を提供することである。さらに、本発明の課題は、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有し、セリ科植物の特徴的な強い臭いや苦味を低減したセリ科植物エキスの製造方法を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、セリ科植物を原料として、該原料をβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理すること、さらに、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理すること及び/又は油脂を添加し攪拌処理した後に、該油脂を分離・除去することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
なお、本明細書におけるセリ科植物とは、セリ科に属する植物又はセリ科の植物のことをいう。
すなわち、本発明は、セリ科植物を原料として、該原料をβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理することにより得られる、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有する、セリ科植物エキスの製造方法を提供するものである。そして、本発明は、さらに、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理すること及び/又は油脂を添加し攪拌処理した後に、該油脂を分離・除去することにより得られる、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有し、かつ、セリ科植物の特徴的な強い臭いや苦味を低減したセリ科植物エキスの製造方法を提供するものである。
本発明には、下記の態様が含まれる。
項(1)
セリ科植物を原料として、該原料をβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理することにより得られる、アピゲニン及び/又はルテオリンを含有することを特徴とするセリ科植物エキスの製造方法。
項(2)
アピゲニン及びルテオリンが遊離のものである、項(1)に記載の製造方法。
項(3)
セリ科植物が、パセリ、セロリ、クミン又はニンジンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、項(1)又は項(2)に記載の製造方法。
項(4)
前記原料が、粉砕物又は抽出物である項(1)乃至項(3)のいずれか1項に記載の製造方法。
項(5)
さらに、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理すること及び/又は油脂を添加し攪拌処理した後に、該油脂を分離・除去することにより、セリ科植物の特徴的な強い臭いや苦味を低減することを特徴とする、項(1)乃至項(4)のいずれか1項に記載の製造方法。
項(6)
オキシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理及び/又は油脂を添加して行う攪拌処理が、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理と並行して又はβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理後に行われる、項(5)に記載の製造方法。
項(7)
項(1)乃至項(6)のいずれか1項に記載の製造方法により得られるセリ科植物エキス。
項(8)
項(7)記載のセリ科植物エキスを含有する飲料、食品、医薬部外品又は飼料。
本発明によれば、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有するセリ科植物エキスを提供することができる。さらに、本発明によれば、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを含有し、かつ、セリ科植物の特徴的な強い臭いや苦味を低減したセリ科植物エキスを提供することができる。
本発明によるセリ科植物エキスを用いることにより、アピゲニン及び/又はルテオリンの機能性を利用した飲料、食品、医薬部外品又は飼料を提供することができる。
本発明において、原料のセリ科植物は、一般に食用に供されるものでセリ科(Apiaceae)に属する植物であればいずれを用いてもよい。例えば、パセリ、セロリ、クミン、ニンジン、セリ、ミツバ、アシタバ、パースニップ、コリアンダー、フェンネル及びチャービル等が挙げられるが、好ましくは、パセリ、セロリ、クミン、ニンジンであり、より好ましくは、パセリ又はセロリである。本発明において使用するセリ科植物は、生の状態のものであっても、乾燥したものであっても、いずれも用いることができる。また、本発明において使用するセリ科植物の部位は、特に限定されず、葉、茎、根、実又は種子等、いずれを用いてもよい。原料のセリ科植物は、1種を単独で用いてもよく、また複数種を併用してもよい。
本発明において、原料のセリ科植物は、粉砕物又は抽出物を用いてもよく、中でも、セリ科植物の抽出物を用いることが好ましい。
セリ科植物の粉砕物は、原料のセリ科植物を単独で、又は水等の溶媒を加えて粉砕処理した粉砕物であればよい。原料のセリ科植物を粉砕処理する方法は、特に限定されず、食材の加工に一般に用いられる方法を単独又は組み合わせて処理することができる。粉砕処理に用いる機器としては、例えば、切断、粉砕、摩擦、空気圧、水圧等を利用して加工する各種の裁断機、粉砕機等が挙げられる。セリ科植物の粉砕物は、粉砕後そのまま又は固液分離して得られた液部を用いることができる。さらに、セリ科植物の粉砕物は、適宜pH調整剤等の添加物を配合することができる。
セリ科植物の抽出物は、原料のセリ科植物を水、アルコール又は水−アルコール混合溶液等で抽出した抽出物であればよい。原料のセリ科植物を抽出する方法は、特に限定されず、公知の手段を単独又は組み合わせて抽出することができる。抽出方法としては、例えば、常温抽出、加熱抽出、加圧抽出、攪拌抽出、超音波抽出等が挙げられる。原料のセリ科植物は、そのままの形状で抽出してもよく、細切処理又は粉砕処理したものを用いてもよい。セリ科植物の抽出物は、抽出後そのまま又は固液分離して得られた液部を用いることができる。中でも、抽出後固液分離して得られた液部が好ましい。また、セリ科植物の抽出物は、その濃縮物を用いることができる。さらに、セリ科植物の抽出物は、適宜pH調整剤等の添加物を配合することができる。セリ科植物の抽出物としては、例えば、パセリエキス、セロリエキス、クミンエキス、ニンジンエキス、セリエキス、ミツバエキス、アシタバエキス、パースニップエキス、コリアンダーエキス、フェンネルエキス、チャービルエキス等が挙げられる。
本発明において、セリ科植物を原料として、該原料をβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理を行う。本発明において用いるβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素は、食品に用いることができるβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素であればいずれでもよく、該酵素を含むものであってもよい。また、酵素製剤の形でも用いることができる。β−グルコシダーゼ活性を有する酵素としては、例えば、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチーム(登録商標)BGA(新日本化学工業株式会社製)、アロマーゼ(登録商標)(天野エンザイム株式会社製)、ラピターゼ(登録商標)AR2000(ディー・エス・エムジャパン株式会社製)等が挙げられる。
本発明において、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する温度は、通常20〜70℃、好ましくは30〜65℃、より好ましくは40〜60℃である。また、本発明において、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する時間は、通常30分間〜30時間、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜20時間である。また、本発明において、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、処理温度及び処理時間により適宜変更することができるが、例えば、酵素製剤として、原料のセリ科植物に対して、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。
本発明において、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する前に、原料のセリ科植物のpHを、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素の至適pH付近に調整することが好ましい。調整するpHは、通常pH2〜8であり、好ましくはpH3〜6である。なお、前記pH調整を行った場合、該酵素処理した後に中和処理を行ってもよい。pHの調整及び中和処理は、pH調整剤として一般に食品に利用されているものを用いることができる。pH調整剤は、食品添加物として指定されたものであれば特に限定されない。pH調整剤としては、例えば、塩酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
本発明において、得られるセリ科植物エキスが含有する機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンの含有量については、少なくとも含有していればよく、好ましくは固形物あたり50ppm以上であり、より好ましくは固形物あたり200ppm以上、さらに好ましくは固形物あたり500ppm以上、特に好ましくは固形物あたり1000ppm以上である。
なお、本発明においてセリ科植物エキスが含有するアピゲニン及びルテオリンとは、アグリコンの状態で存在する、いわゆる遊離の状態のものをいう。
本発明において、原料のセリ科植物を、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理してもよく、油脂を添加し攪拌処理を行ってもよい。本発明において、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理、さらに、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理及び/又は油脂を添加し攪拌処理した後、該油脂の分離・除去を行うことで、機能性成分であるアピゲニン及び/又はルテオリンを効率的に含有させることに加えて、セリ科植物本来の好ましい風味を損なうことなくセリ科植物の特徴的な強い臭いや苦味を効果的に低減した、セリ科植物エキスを製造することができる。
オキシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理を行うとき又は油脂を添加し攪拌処理を行うとき、いずれの処理も、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理と並行して又はβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理後に行うことができる。
また、該攪拌処理後に行われる該油脂の分離・除去は、前記β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理後に行うことができる。
本発明において用いるオキシダーゼ活性を有する酵素は、食品に用いることができるオキシダーゼ活性を有する酵素であればいずれでもよく、該酵素を含むものであってもよい。また、酵素製剤の形でも用いることができる。
オキシダーゼ活性を有する酵素には、ポリフェノールオキシダーゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等が含まれる。オキシダーゼ活性を有する酵素としては、例えば、ポリフェノールオキシダーゼ製剤であるラッカーゼM120(天野エンザイム株式会社製)等、カタラーゼ製剤であるスミチームCTS(新日本化学工業株式会社製)、カタラーゼU5L(エイチビィアイ株式会社製)等、ペルオキシダーゼ製剤であるマキシブライト(ディー・エス・エムジャパン株式会社製)等、グルコースオキシダーゼ製剤であるスミチームGOP(新日本化学工業株式会社製)、スミチームPGO(新日本化学工業株式会社製)等が挙げられる。
本発明において、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する温度は、通常20〜75℃、好ましくは30〜70℃である。また、本発明において、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する時間は、通常1〜24時間、好ましくは2〜20時間である。また、本発明において、オキシダーゼ活性を有する酵素の添加量は、処理温度及び処理時間により適宜変更することができるが、例えば、酵素製剤として、原料のセリ科植物に対して、通常0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
本発明において、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理する前に、原料のセリ科植物のpHを、オキシダーゼ活性を有する酵素の至適pH付近に調整することが好ましい。調整するpHは、通常pH3〜9であり、好ましくはpH4〜8である。なお、前記pH調整を行った場合、該酵素処理した後に中和処理を行ってもよい。pHの調整及び中和処理は、pH調整剤として一般に食品に利用されているものを用いることができる。pH調整剤は、食品添加物として指定されたものであれば特に限定されない。pH調整剤としては、例えば、塩酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
本発明において用いる油脂は、一般に食品に用いることができる油脂であればいずれでもよく、該油脂を含むものであってもよい。本発明において用いる油脂としては、例えば、なたね油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、サフラワー油、米ぬか油、綿実油、オリーブ油、ごま油、落花生油、ブドウ種子油、椿油、シソ油、アマニ油、クルミ油、カラシ油、カボチャ種子油、スイカ種子油、ココナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、カシューナッツ油、ピスタチオ油、小麦胚芽油、茶実油、アボカド油、パパイヤ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオバター等の植物性油脂;ラード、ヘット、鶏油、魚油、馬油、鯨油、アザラシ油、乳脂等の動物性油脂;及びこれらの水素添加油脂、分別油脂等が挙げられる。
本発明において、油脂を添加し攪拌処理する方法は、特に限定されず、一般的に攪拌に使用される公知の手段を用いることが出来る。油脂を添加し攪拌処理する方法としては、例えば、攪拌翼や攪拌子等を用いる機械式又は磁気式の攪拌機により攪拌対象を攪拌処理する方法、空気や窒素等の気体を攪拌対象に吹き込み攪拌処理する方法、また、攪拌対象を収容する容器を振盪、回転等することにより攪拌対象を攪拌処理する方法等が挙げられる。
本発明において、油脂を添加し攪拌処理する温度は、添加する油脂が流動性を有する温度であればいずれでもよいが、通常20〜100℃、好ましくは30〜90℃、より好ましくは35〜80℃である。また、本発明において、油脂を添加し攪拌処理する時間は、少なくとも5分間以上であり、通常10分間〜30時間、好ましくは20分間〜24時間、より好ましくは30分間〜20時間である。また、本発明において、攪拌処理する油脂の添加量は、該処理温度及び該処理時間により適宜変更することができるが、通常、油脂を添加する処理液中の固形物に対して重量比で0.2倍量〜20倍量、好ましくは0.5倍量〜15倍量、より好ましくは1倍量〜10倍量である。
本発明において、油脂を添加し攪拌処理を行った場合、用いた油脂は、分離・除去される。油脂を分離・除去する方法は、特に限定されず、遠心分離、デカンテーション、油吸着剤や油凝集剤の使用等の公知の方法により行うことができる。
本発明において、前記各酵素処理を行った後に、酵素失活処理を行う。酵素失活処理は、最終的に得られるセリ科植物エキスにおいて酵素活性が残存しないように行えばよく、また、酵素失活処理の条件は、前記各酵素処理において用いた酵素が失活する条件であれば特に限定されない。
本発明により得られるセリ科植物エキスは、風味が良好で嗜好性に優れていることから、そのままの形態でも利用することができるが、さらに、該エキスを固液分離した液部として用いることができる。固液分離する方法は、特に限定されず、濾過、遠心分離等の公知の方法により行うことができる。また、本発明により得られるセリ科植物エキスは、そのまま又は固液分離した液部を常法により濃縮機等で処理して濃縮物として用いてもよく、また、乾燥して用いてもよい。乾燥方法は、特に限定されず、公知の手段を用いて乾燥することができる。乾燥方法としては、例えば、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、フリーズドライヤー、エアードライヤー等の公知の手段を用いることができる。また、デキストリン等の賦形剤を添加して乾燥してもよい。さらに、乾燥により得られたものを粉砕後、粉末等として用いてもよく、必要に応じて造粒機等を用いて顆粒品とすることができる。
本発明により得られるセリ科植物エキスは、そのまま又は水等で希釈して利用することができる。さらに、本発明により得られるセリ科植物エキスは、種々の加工食品、例えば、即席食品、乳製品、菓子類、調味料、茶飲料、野菜飲料、大豆飲料、豆乳飲料等の各種の飲料や食品に適宜添加、配合して用いることもできる。また、必要に応じて、通常の飲料又は食品の原料や添加物として使用されているものと併用することもできる。
本発明により得られるセリ科植物エキスは、特定保健用食品、機能性食品、栄養補助食品といった食品や、医薬部外品又は飼料等に用いることができる。形態としては、アンプル、カプセル、丸剤、錠剤、粉末、顆粒、固形、液剤、ゲル、エアロゾル等とすることができるほか、各種製品中に配合することができる。これら製品の調製に当たっては、賦形剤、結合剤、潤沢剤等を適宜配合することができる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本実施例において、各原料及び素材の配合比率、含有比率、濃度は断りのない限り全て重量部基準である。
[調製1]
パセリグラニュール(ヤスマ株式会社製)100gに水1900gを加えて、90℃で30分間抽出した後、濾紙(No.2)を用いて濾過することにより固液分離を行い、得られた液部を減圧濃縮することで、パセリエキス350g(固形分9.8%)(調製1)を得た。得られたパセリエキスについて、機能性成分であるアピゲニン及びルテオリンの含有量を高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という)で以下に示す測定条件にて測定した結果、アピゲニン及びルテオリンは検出されなかった。
<HPLCの測定条件>
検出器:UV検出器(紫外波長254nm)
カラム:InertSustain C18(内径4.6mm、長さ250mm)
移動相A:15容量%アセトニトリル水溶液(0.1容量%酢酸含有)
移動相B:35容量%アセトニトリル水溶液(0.1容量%酢酸含有)
グラジエント:移動相Aから移動相Bへのリニアグラジエント(50分間)
流速:1.0ml/分
カラム温度:35℃
標品:アピゲニン及びルテオリン(いずれも、和光純薬工業株式会社製)をそれぞれ70%エタノール水溶液に溶解して、検量線を作成した。
検体:試料を70%エタノール水溶液で、適宜希釈したもの。
[実施例1]
調製1で得られたパセリエキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.75g添加して、55℃で12時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明のセリ科植物エキス48g(固形分11.4%)(実施例1)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:19850ppm(ルテオリン:不検出)であった。
[調製2]
セロリ(生鮮)1000gに水1000gを加えてミキサーを用いて粉砕し、遠心分離(5000rpm、10分間)にて固液分離を行い、得られた液部を減圧濃縮することで、セロリエキス400g(固形分8.1%)(調製2)を得た。得られたセロリエキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、アピゲニン及びルテオリンは検出されなかった。
[実施例2]
調製2で得られたセロリエキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.1g添加して、60℃で6時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明のセリ科植物エキス48g(固形分8.4%)(実施例2)を得た。得られた本発明の酵素処理セロリエキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:1390ppm、ルテオリン:297ppmであった。
[調製3]
クミン末(株式会社ギャバン製)10gに水190gを加えて、90℃で30分間抽出した後、濾紙(No.2)を用いて濾過することにより固液分離を行うことで、クミンエキス100g(固形分1.5%)(調製3)を得た。得られたクミンエキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、アピゲニン及びルテオリンは検出されなかった。
[実施例3]
調製3で得られたクミンエキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.025g添加して、60℃で18時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明のセリ科植物エキス48g(固形分1.5%)(実施例3)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:6400ppm、ルテオリン:4133ppmであった。
[調製4]
ニンジン葉(生鮮)400gに水1600gを加えて、90℃で30分間抽出した後、濾紙(No.2)を用いて濾過することにより固液分離を行うことで、ニンジン葉エキス1500g(固形分1.3%)(調製4)を得た。得られたニンジン葉エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、アピゲニン及びルテオリンは検出されなかった。
[実施例4]
調製4で得られたニンジン葉エキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.05g添加して、60℃で4時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明のセリ科植物エキス48g(固形分1.4%)(実施例4)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:386ppm、ルテオリン:1193ppmであった。
[実施例5]
調製1で得られたパセリエキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.75g及びポリフェノールオキシダーゼ製剤であるラッカーゼM120を0.1gそれぞれ添加して、55℃で12時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明のセリ科植物エキス48g(固形分11.0%)(実施例5)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:20409ppm(ルテオリン:不検出)であった。
[実施例6]
調製1で得られたパセリエキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.75g添加して、55℃で12時間酵素処理し、次いで、カタラーゼ製剤であるスミチームCTSを0.1g添加して、40℃で4時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理し、本発明のセリ科植物エキス48g(固形分11.0%)(実施例6)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:23018ppm(ルテオリン:不検出)であった。
[実施例7]
調製1で得られたパセリエキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.75g添加して、さらに大豆油(加藤製油株式会社製)を5g添加して、攪拌しながら、55℃で12時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理を行った。次いで、遠心分離(2500×G、5分間)により油相を分離除去することで、本発明のセリ科植物エキス45g(固形分10.8%)(実施例7)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:20875ppm(ルテオリン:不検出)であった。
[官能評価1]
実施例5、実施例6、実施例7及び実施例1で得られた本発明のセリ科植物エキスについて、それぞれ水道水で5倍希釈したものを試料として、パネラー10人による官能評価を実施した。評価は、セリ科植物の特徴的な臭い及び苦味並びに全体の風味について、試料と同様に希釈した調製1のパセリエキスの評点を0点として、各試料と比較することで採点し、その平均値を算出した。結果を表1に示す。
Figure 2014132894
表1に示すとおり、オキシダーゼ活性を有する酵素処理を行った実施例5及び実施例6並びに油脂を添加して攪拌処理を行った実施例7の本発明のセリ科植物エキスは、セリ科植物の特徴的な臭い及び苦味が、酵素処理を行っていない調製1のパセリエキスと比較して、十分に低減され、嗜好性が向上していた。一方、オキシダーゼ活性を有する酵素処理又は油脂を添加した攪拌処理を行わない場合(実施例1)は、酵素処理を行っていない調製1のパセリエキスとほぼ同等の臭い及び苦味、風味を有していた。
[実施例8]
調製2で得られたセロリエキス50gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを0.1g添加して、60℃で6時間酵素処理し、次いで、カタラーゼ製剤であるスミチームCTSを0.1g添加して、37℃で4時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明のセリ科植物エキス45g(固形分8.7%)(実施例8)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:1317ppm、ルテオリン:275ppmであった。
[官能評価2]
実施例8で得られた本発明のセリ科植物エキスについて、水道水で5倍希釈したものを試料として、パネラー10人による官能評価を実施した。評価は、セリ科植物の特徴的な臭い及び苦味並びに全体の風味について、試料と同様に希釈した調製2のセロリエキスの評点を0点として、試料と比較することで採点し、その平均値を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2014132894
表2に示すとおり、オキシダーゼ活性を有する酵素処理を行った実施例8の本発明のセリ科植物エキスは、セリ科植物の特徴的な臭い及び苦味が、酵素処理を行っていない調製2のセロリエキスと比較して、十分に低減され、嗜好性が向上していた。
[実施例9]
セロリ(生鮮)160g及びパセリ(生鮮)40gをミキサーを用いて混合、粉砕した後、90℃で10分間加熱処理することで、セリ科植物粉砕物180gを得た。得られたセリ科植物粉砕物100gを三角フラスコに入れ、β−グルコシダーゼ製剤であるスミチームBGAを1.0g添加して、55℃で6時間酵素処理した後、90℃で10分間酵素失活処理することで、本発明のセリ科植物エキス90g(固形分9.2%)(実施例9)を得た。得られた本発明のセリ科植物エキスについて、調製1と同様にしてHPLCでアピゲニン及びルテオリンの含有量を測定した結果、その固形物あたりの含有量は、アピゲニン:6437ppm、ルテオリン:243ppmであった。

Claims (8)

  1. セリ科植物を原料として、該原料をβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理することにより得られる、アピゲニン及び/又はルテオリンを含有することを特徴とするセリ科植物エキスの製造方法。
  2. アピゲニン及びルテオリンが遊離のものである、請求項1に記載の製造方法。
  3. セリ科植物が、パセリ、セロリ、クミン又はニンジンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記原料が、粉砕物又は抽出物である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. さらに、オキシダーゼ活性を有する酵素を用いて酵素処理すること及び/又は油脂を添加し攪拌処理した後に、該油脂を分離・除去することにより、セリ科植物の特徴的な強い臭いや苦味を低減することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. オキシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理及び/又は油脂を添加して行う攪拌処理が、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理と並行して又はβ−グルコシダーゼ活性を有する酵素を用いた酵素処理後に行われる、請求項5に記載の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製造方法により得られるセリ科植物エキス。
  8. 請求項7記載のセリ科植物エキスを含有する飲料、食品、医薬部外品又は飼料。
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