JP2014129284A - 食後血糖上昇抑制剤 - Google Patents

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真由美 佐藤
Takeshi Okubo
剛 大久保
Satoru Shibata
論 柴田
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Abstract

【課題】植物抽出物由来の食後血糖上昇抑制剤、および該抑制剤を含有する医薬品の提供。
【解決手段】マツ科モミ属植物の樹葉の抽出物、特に、トドマツの抽出物、あるいは該抽出物の有効成分として含まれるレボピマ−ル酸(下式)および/またはネオアビエチン酸を有効成分とする食後血糖上昇抑制剤。

【選択図】なし

Description

本発明は、トドマツ等のマツ科モミ属植物の樹葉の抽出物を含有する食後血糖上昇抑制剤に関する。より詳しくは、糖尿病や、その合併症の予防等に有効な食後血糖上昇抑制剤に関する。
(糖尿病予備群)
近年の国民の健康水準の向上において、糖尿病をはじめとする生活習慣病の増加が特に問題視されている。厚生労働省の平成19年の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」の890万人と「糖尿病の可能性を否定できない人」の1320万人を合わせると、全国に糖尿病患者及びその予備群は2210万人いると推定されている。
糖尿病予備群の段階では、空腹時の血糖値が正常範囲であっても、食後の血糖値が急激に増加し高血糖が持続するという食後高血糖のケースが多いとされる。血液中の糖分増加により、血管内皮細胞がダメージを受け、冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞といったリスクを自覚の無いうちに増加させる(例えば、非特許文献1、2)。
血液中の糖分増加に対して、糖尿病の管理指標において、特に予備群段階での予防・改善の観点から大きな転換がもたらされている。アメリカ糖尿病学会(ADA)では、2010年にガイドラインの改訂を行い、食後経過時間にかかわらず食後血糖値のピーク値を管理する基準を定めている(非特許文献3)。
(食後の血糖値の上昇を抑制する方法)
予備群段階での糖尿病の予防・改善のため、食後血糖値の上昇を抑制する様々な機能性物質が開発されている(例えば、特許文献1)。しかし、これらの多くが、小腸での糖吸収を抑制したり、消化酵素の機能を阻害したりすることによって糖の吸収を緩和するという、いわば対症療法薬である。吸収された糖に対して体内調整を促し、糖負荷に対して血糖値を正常化する機能性物質が望まれている。
{マツ科モミ属(Abies属)}
マツ科の植物に関し、マツ科マツ属の植物は、古くよりアカマツの樹葉を原料とする松葉茶として慣れ親しまれている。これに対して、マツ科モミ属の植物の樹葉は、精油量が豊富で芳香が高いため、逆に茶葉としては顧みられておらず、国内ではほとんど利用されていないが、アビエス油として精油成分が輸入されているに過ぎなかった。
しかし、近年、抗インフルエンザ薬としての利用がようやく試みられているが(特許文献1)、実用には至っていないのが現状である。
また、北海道のマツ科モミ属であるトドマツの材の蓄積は約202百万m3、全樹種の蓄積の27%程度に当たると見積もられている(非特許文献4)。しかし、トドマツの樹葉については、ほとんど利用されていない現状である。このように、未利用資源としてのマツ科モミ属の植物の樹葉の利用が望まれている。
特開2011−173805号公報
山岸ら,血管医学,第9巻,第4号,p.96,2008年 堀本ら,市立千歳市民病院医誌,第6巻,第1号,2010年 Medicine & Science in Sports & Exercise,Volume 42,Issue 12,pp.2282-2303,December 2010 北海道水産林務部,「平成22年度 北海道林業統計」,2012年。
本発明は、マツ科モミ属植物の樹葉の抽出物を有効成分とする食後血糖上昇抑制剤および該抑制剤を含有する医薬品を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、マツ科モミ属植物から抽出された抽出物に食後血糖上昇抑制効果を見出し、さらに該抽出物の有効成分を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の通りである。
「1.マツ科モミ属植物の樹葉の抽出物を有効成分とする食後血糖上昇抑制剤。
2.マツ科モミ属植物がトドマツである前項1に記載の食後血糖上昇抑制剤。
3.下記の式(I)、(II)の化合物および該それらの化合物の医薬上若しくは飲食上許容される塩から選択される少なくとも1を含む前項1または2に記載の食後血糖上昇抑制剤。
4.下記の式(I)、(II)の化合物および該それらの化合物の医薬上若しくは飲食上許容される塩から選択される少なくとも1を含む食後血糖上昇抑制剤。
5.前項1〜4のいずれか1に記載の食後血糖上昇抑制剤を含有する医薬品。」
本発明によれば、天然物由来の食後血糖上昇抑制剤を有効成分として含有する医薬品が提供できる。本発明の食後血糖上昇抑制剤は、糖尿病を予防及び/又は改善する上で、有用である。
トドマツ樹葉粉末のエタノール抽出物を、ヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、n−ブタノールを用いた溶媒分画に供して得られた画分と、さらに該ジエチルエーテル画分を5%塩酸水溶液を用いた溶媒分画(酸性画分)および5%水酸化ナトリウムを用いた溶媒分画(中性画分)に供して得られた画分のPPARγ活性を測定した結果を示す図である。 (a)図1の結果から得られたPPARγ活性画分のGC/MS分析で得られたトータルイオンクロマトを示す図である。(b)各化合物のm/zの相対強度を示す。 レボピマ−ル酸(levopimaric acid)、デヒドロアビエチン酸(dehydroabietic acid)、アビエチン酸(abietic acid)、ネオアビエチン酸(neoabietic acid)のPPARα活性{(a)}およびPPARγ活性{(b)}を測定した結果を示す図である。 GKラットを用いた試験において、体重を測定した結果を示す図である。 GKラットを用いた試験において、臓器でのPPARαとPPARγ活性を測定した結果を示す図である。 トドマツ樹葉抽出物を投与したGKラットを用いた試験において、糖負荷後の血糖値の推移を測定した結果を示す図である。 レボピマール酸又はネオアビエチン酸を投与したKKAYマウスを用いた試験において、糖負荷後の血糖値の推移を測定した結果を示す図である。
本発明の食後血糖上昇抑制剤は、針葉樹植物の樹葉から抽出して得られる抽出物を有効成分とする。
本発明は、針葉樹植物の樹葉から抽出して得られる抽出物を有効成分とする食後血糖上昇抑制剤を提供するものである。
さらに、本発明は、レボピマール酸、ネオアビエチン酸、および医薬上若しくは飲食上許容されるこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含む食後血糖上昇抑制剤を提供するものである。
該針葉樹植物は、特に限定されないが、マツ科モミ属植物が好ましい。特に好ましくはトドマツである。該抽出物は、針葉樹植物の植物体の全部または一部(葉、樹皮、幹、根、球果、松脂など)から抽出したものであれば良い。特に好ましくは、トドマツの樹葉からの抽出物が好ましい。
なお、針葉樹植物の抽出物がPPARγアゴニスト活性化能を有することは、公知のPPAR活性測定法を用いて確認することができる。公知のPPAR活性測定法としては、例えば、Gotoら{T. Goto et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 337 (2005) 440-445}に記載のPPARレポーターアッセイなどが挙げられる。
(抽出物の調製方法)
抽出物は、脂溶性であり、例えば、針葉樹植物の樹葉、または樹葉の乾燥物や凍結乾燥物から疎水性の有機溶媒で抽出することにより取得することができる。疎水性の有機溶媒としては、例えば、エタノールなどのアルコール類、ヘキサンなどの炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハライド等が挙げられる。
特に、好ましいのは、極性の観点からエタノール及びジエチルエーテルである。
マツ科モミ属の抽出物は、例えば以下の方法により調製することができる。例えばトドマツの樹葉を材料とする場合、トドマツの樹葉の粉砕物を調製し、これをエタノールなどのアルコール類、ヘキサンなどの炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類またはジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハライドで抽出する。抽出溶媒の量は原料の粉砕物に対し通常3〜20倍(w/w)である。また抽出温度は室温から使用する溶媒の沸騰点までの範囲のいずれでもよい。抽出液をろ過して残渣と分離したのち、濃縮してエキスを調製する。得られたエキスを、例えばヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、n−ブタノールにより溶媒分画することにより、高PPAR活性を有するジエチルエーテル画分が得られる。さらに、上記で得られたジエチルエーテル画分を5%塩酸、5%水酸化ナトリウム溶液で溶媒分画することにより、高PPAR活性を有するフラクションを調製することができる。
(レボピマール酸およびネオアビエチン酸)
下記化合物(I)はレボピマール酸であり、下記化合物(II)はネオアビエチン酸である。
本発明者らは、トドマツの抽出物には主として化合物(I)と(II)が存在することを確認している。さらに、本発明者らは、これらの化合物がそれぞれ単独でもPPARγ活性化能および/またはPPARα活性化能を有していることを確認している。
なお、レボピマール酸は、トドマツや針葉樹の松脂などから抽出調製したものでもよいし、Winstonらの方法{Organic Syntheses, Coll. Vol. 5, p.699 (1973); Vol. 45, p.64 (1965)}などにより合成したものや市販品なども使用できる。
また、ネオアビエチン酸は、トドマツや針葉樹の松脂などから抽出調製したものでもよいし、合成したものや市販品なども使用できる。
さらに、レボピマール酸、ネオアビエチン酸は、純粋な化合物を使用できるが、医薬品や食品として不適切な不純物を含有しない限り半精製のものも使用することができる。
(食後血糖上昇抑制剤)
本発明の食後血糖上昇抑制剤とは、PPARγアゴニスト活性を有する化合物を含む剤、すなわちPPARγのリガンド結合領域に結合する能力を有する化合物を含む剤である。
PPARsのリガンド活性は、例えば、PPARsリガンド結合領域とGAL4との融合タンパクに対する結合をルシフェラーゼの発現で評価するレポーター・アッセイ(Cell, 1995年, 83巻, 803〜812頁)、PPARγリガンド結合領域を含むタンパクを用いたコンペティション・バインディング・アッセイ(Cell, 1995年,83巻, 813〜819頁)等により測定することができる。これらのアッセイにおいて、サンプルの活性は一般に溶媒対照と比較し、溶媒対照よりも高い活性を示し、なおかつ用量依存性が認められるサンプルを「PPARγリガンド活性あり」と評価する。
本発明の食後血糖上昇抑制剤は、投与対象は特に限定されず、例えば、高血糖状態を緩和させる、または高血糖症の予防として健常者に対して使用することができる。例えば、血糖値が空腹時126mg/dL以上、あるいは経口的ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値が200mg/dL以上の高血糖症のヒトに対する治療の目的で本発明の食後血糖上昇抑制剤を使用することができる。また、対象の血糖値が、OGTT2時間値で140〜199mg/dLである場合(境界型)のヒト、高血糖以外のリスクファクター(例えば、高血圧症、肥満症、アルコール摂取または喫煙などの生活習慣など)を有する場合も本発明の食後血糖上昇抑制剤を使用することができる。
特に、食後の高血糖は動脈硬化につながり心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるため、血糖値が境界型や正常域であっても、リスク低減のために食後の血糖値上昇を抑制することは有用である。したがって、本発明の食後血糖上昇抑制剤は健常人の健康維持のために使用することができる。
(食後血糖上昇抑制剤の投与形態)
血糖上昇抑制剤は、単独又は自体公知の担体と共に飲食用および医薬用として利用することができ、例えば、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、健康食品、栄養補助食品などの飲食品、あるいはOTCなど容易に入手可能な医薬品または医薬部外品などとして利用でき、動物及びヒトに投与することができる。
食後血糖上昇抑制剤の剤形としては特に制限されるものではなく必要に応じて適宜選択すればよいが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられ、好適には非経口剤を挙げることができる。
非経口剤の場合には、患者の年齢、体重、疾患の程度により異なるが、通常、成人で抽出物、レボピマール酸、および/またはネオアビエチン酸の重量として1日あたり0.1 mg〜1000 mgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。この非経口投与剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、大豆油、トウモロコシ油、プロピレングリコール等を用いることができる。
経口投与の場合には、通常、成人で、抽出物、レボピマール酸、および/またはネオアビエチン酸の重量として1日あたり0.1mg〜1000mgを摂取できるようなカプセル、サッシェ(sachets)、ロゼンジ(lozenges)又は錠剤等の個別の単位で、提供され、各々が、粉末又は顆粒として、水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液として、あるいは水中油型又は油中水型エマルションとして所定量の抽出物、レボピマール酸、および/またはネオアビエチン酸を含有し得る。
飲食品として用いる場合は、そのまま直接摂取することができ、また、公知の担体や助剤などの添加剤を使用して、カプセル剤、錠剤、顆粒剤など服用しやすい形態に成型して摂取することができる。また、栄養強化を目的として、ビタミンA、C、D、Eなどの各種ビタミン類を添加、併用して用いることもできる。さらに、飲食物材料に混合して、チューインガム、チョコレート、キャンディー、ゼリー、ビスケット、クラッカーなどの菓子類; アイスクリーム、氷菓などの冷菓類; 茶、清涼飲料、栄養ドリンク、美容ドリンクなどの飲料; うどん、中華麺、スパゲティー、即席麺などの麺類; 蒲鉾、竹輪、はんぺんなどの練り製品; ドレッシング、マヨネーズ、ソースなどの調味料;マーガリン、バター、サラダ油などの油脂類; パン、ハム、スープ、レトルト食品、冷凍食品など、すべての飲食物に使用することができる。
医薬品として用いる場合は、その剤形は特に限定されず、例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、注射剤、座薬、貼付剤などが挙げられる。製剤化においては、薬剤学的に許容される他の製剤素材、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などを適宜添加して調製することができる。
医薬部外品として用いる場合は、必要に応じて他の添加剤などを添加して、例えば、軟膏、リニメント剤、エアゾール剤、クリーム、石鹸、洗顔料、全身洗浄料、化粧水、ローション、入浴剤などに使用することができ、局所的に用いることができる。
また、本発明の糖尿病の予防及び/又は改善する作用を有する食後血糖上昇抑制剤の抽出物の含有量は、0.01重量%以上10重量%以下である。好ましくは0.1重量%以上5重量%以下である。さらに好ましくは、0.3%重量%以上3重量%以下であっても良い。
(本発明の食後血糖上昇抑制剤の適用対象)
本発明の食後血糖上昇抑制剤は、糖尿病、高血糖、耐糖能異常、空腹時血糖異常、および糖尿病の合併症(糖尿病神経障害、糖尿病腎症、糖尿病網膜症)の治療または予防のために使用することができる。また、高血糖値に起因する各種疾患、例えば、ケトアシドーシス、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、異脂肪血症、高リポタンパク質血症、メタボリックシンドローム、肥満、アテローム性動脈硬化症などの予防または治療にも使用することができる。また、好適にはインスリン非依存性の2型糖尿病が対象となる。また、糖尿病合併症とは糖尿病が直接的または間接的な要因で発症する全身性もしくは局所性の疾患を指す。具体的には、糖尿病アシドーシス、糖尿病性黄色腫、糖尿病性筋萎縮症、糖尿病性ケトーシス、糖尿病性昏睡、糖尿病性胃障害、糖尿性壊疽、糖尿病性潰瘍、糖尿病性合併症、糖尿病性下痢症、糖尿病性細小血管症、糖尿病性子宮体硬化症、糖尿病性心筋症、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性腎症、糖尿病性水疱、糖尿病性白内障、糖尿病性皮膚障害、糖尿病性浮腫性硬化症、糖尿病性網膜症、糖尿病性リポイド類壊死症、糖尿病性血流障害などが挙げられる。
(糖尿病の予防)
本発明において、糖尿病の予防とは、日本糖尿病学会が糖尿病治療ガイド2002−2003(2002年5月発行)にて定義している糖尿病の状態または境界域の状態になるのを防ぐまたは遅らせることを指す。また、糖尿病の改善とは、上記の糖尿病の状態または境界域の状態から、上記ガイドにて正常域と定義している状態に近づけることを指す。
以下に具体例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
(トドマツ抽出物のPPARγ活性フラクションの特定)
トドマツ抽出物のPPARγ活性フラクションの特定を行った。詳細は、以下の通りである。
(トドマツ抽出物の調製)
トドマツ(Abies sachalinensis Masters)の樹葉に液体窒素を加え、ホモジナイザー{(株)日本精機製作所}を使用して粉砕した。これにエタノールを粉砕物の4〜5倍容加え、振とう抽出した。抽出操作は3回行い、合わせた抽出液をろ過した。抽出液を濃縮し、ヘキサン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ブタノールにより逐次、溶媒分画を行った。抽出物は1mg/mLに調製し、PPARγ活性の測定に供した。
(PPARγ活性測定)
PPARγ活性測定には、PPARγレポーターアッセイを用いた。レポーターアッセイはDual Luciferase Reporter Assay System{Promega(株)}を用いて行った。
CV−1細胞(アフリカミドリザル腎細胞由来細胞株)で行ったアッセイ系は、PPARγのFull−レングス8ng/well+ヒトRXR8ng/wellとして,レポーターベクター Aox−PPRE TK1を使用した。抽出物溶液は1mg/mLに調製して使用した。コントロールとしてはエタノールを、ポジティブコントロールとしてはPPARγの選択的アゴニストであるトログリタゾン1μMを使用した。活性は、エタノールに対する相対比で評価した。
(PPARγ活性測定結果)
PPARγ活性測定結果を図1に示す。図1から明らかなように、ジエチルエーテル画分に強いPPARγ活性が認められた。
さらに、PPARγ活性が認められたジエチルエーテル画分を5%塩酸水溶液と5%水酸化ナトリウム水溶液により溶媒分画し、得られた画分のPPARγ活性を測定した。ジエチルエーテル画分の酸性画分は、ジエチルエーテル画分の約69%を占めることから、活性成分は、酸性画分に含まれていることを確認した。
{トドマツ抽出物のPPARγ活性画分(酸性画分)中に含有される化合物の同定}
上記実施例1で得られたPPARγ活性画分(酸性画分)中に含有される化合物の同定を行った。詳細は、以下の通りである。
(GC/MS分析)
PPARγ活性画分(酸性画分)のGC/MS分析を行った。一定量の画分に内部標準物質としてヘプタデカン酸(17:0,Sigma−Aldrich社)を加え、これをジアゾメタンによりメチル化した後、GC−MSに供した。カラムにはDB−1MS{30m×0.25mmi.d., film thickness 0.25 μm; Agilent Technologies(株)}を用い、カラム温度は40℃から280℃まで4℃/minで昇温した。ヘリウムをキャリアガスとし、注入口温度は270℃、イオン化電圧は70eVとした。ピークの同定は標品の保持時間およびマススペクトルとの比較によって行った。
(GC/MS分析結果)
GC/MS分析結果を図2に示す。図2に示すとおり、主要成分はレボピマ−ル酸、デヒドロアビエチン酸、アビエチン酸およびネオアビエチン酸であることが明らかとなった。
(PPARαおよびPPARγ活性化を有する化合物の確認)
PPARγ活性画分(酸性画分)の主要成分であるレボピマ−ル酸、デヒドロアビエチン酸、アビエチン酸およびネオアビエチン酸が、PPARαおよびPPARγ活性化能を有するか否かを確認した。詳細は、以下の通りである。
(PPARαおよびPPARγ活性測定)
PPARα活性測定:コントロールとしてエタノールを、ポジティブコントロールとしてPPARαの選択的アゴニストである wy−14643(100μM)を使用して、実施例1と同様にPPARα活性測定を行った。なお、レボピマ−ル酸、デヒドロアビエチン酸、アビエチン酸、およびネオアビエチン酸は100μMで測定した。
PPARγ活性測定:コントロールとしてエタノールを、ポジティブコントロールとしてPPARγの選択的アゴニストであるトログリタゾン1μMを使用して、実施例1と同様にPPARγ活性測定を行った。なお、レボピマ−ル酸、デヒドロアビエチン酸、アビエチン酸、およびネオアビエチン酸は100μMで測定した。
(PPARαおよびPPARγ活性測定結果)
PPARα活性測定結果およびPPARγ活性測定結果を図3(a)および(b)に示した。
図3から明らかなように、レボピマ−ル酸およびネオアビエチン酸のみ、PPARαおよびPPARγ活性化能の両方を有していることを確認した。
さらに、レボピマ−ル酸のPPARγ活性化能はデヒドロアビエチン酸のPPARγ活性化能と比較して約2倍となり、ネオアビエチン酸のPPARγ活性化能はデヒドロアビエチン酸のPPARγ活性化能と比較して約1.6倍という顕著な効果を示した。
(トドマツ樹葉抽出物投与によるGKラットによる評価〕
トドマツ樹葉抽出物投与によるラットの影響を確認した。詳細は、以下の通りである。
(動物および飼育)
10週齢の糖尿病モデルGKラット(♂、日本医科学)に1週間一般飼料を与えて予備飼育した。予備飼育終了後、コントロール群6匹、トドマツ樹葉抽出物摂取群の2群に群分けして高脂肪飼料に切り替えて試験を開始し、2週間摂食試験を行った。トドマツ樹葉抽出物摂取群には、実施例1により得られたPPARγ活性を有する「トドマツ抽出物由来のエタノール抽出物」を加えた飼料を与えた。飼料の配合比は、下記表1の通りである。飼料および水は自由摂取とした。試験期間中の体重の変化を測定した。
(トドマツ樹葉抽出物投与によるGKラットによる評価確認)
試験期間中の体重の変化を図4に示した。ラットは、トドマツ樹葉抽出物を摂食しても体重は増加しており、脾臓の肥大が認められなかった。すなわち、トドマツ樹葉抽出物は毒性が無いことを確認した。
(肝臓中のPPARαとPPARγの発現量の評価)
トドマツ樹葉抽出物投与による肝臓中のPPARαとPPARγの発現量の変化を評価した。詳細は、以下の通りである。
(リアルタイムPCRによる肝臓中のPPARαとPPARγの発現量の測定)
ラット肝臓0.1〜0.15gから、常法によりtotal RNAを抽出した。逆転写反応キットPrimeScript RT reagent Kit{タカラバイオ(株)}を用いて逆転写反応を行い、RNAからcDNAを合成した。このcDNAを鋳型として、TaqMan プローブ法によりLightCycler1.5(Roche社)を用いて、リアルタイムPCRを行なった。内部標準としてRPL32P3(Primer:Hs 00299189_ml,Applied Biosystems社)を用いてPPARα(Rn 00556193_A1,Applied Biosystems社)及びPPARγ(Rn 00440945_A1,Applied Biosystems社)を定量した。
(リアルタイムPCRによる肝臓中のPPARαとPPARγの発現量の測定結果)
コントロール群とトドマツ樹葉抽出物摂取群の肝臓でのPPARαとPPARγの発現量を図5に示す。
図5から明らかなように、トドマツ樹葉抽出物摂取群ではPPARαとPPARγ発現量の増加が同時に認められた。すなわち、トドマツ樹葉抽出物は、PPARα、PPARγデュアルアゴニスト剤であることを確認した。
なお、PPARγ活性剤は糖代謝を改善するが、副作用として体重増加(脂質の蓄積)が報告されている。よって、トドマツ樹葉抽出物が脂質異常を改善するPPARαのアゴニストであることも非常に有用である。
(トドマツ樹葉抽出物投与による血糖値の上昇抑制効果の確認)
レボピマ−ル酸およびネオアビエチン酸を含むトドマツ樹葉抽出物がマウスの血糖値の上昇を抑制することができるかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
{経口糖負荷試験(OGTT、Oral glucose tolerance test)}
試験開始28日目に経口糖負荷試験を実施した。具体的には、マウスを24時間絶食後、尾静脈から採血を行い(これを0分とする)、2g/kg体重となるようにD−(+)−グルコースを経口投与した。以降、30、60、90および120分後にそれぞれ尾静脈から採血を行って血糖値を測定した。
(経口糖負荷試験の結果)
糖負荷後の血糖値の推移を図6に示した。図6から明らかなように、レボピマ−ル酸およびネオアビエチン酸を含むトドマツ樹葉抽出物摂取群は、糖負荷後の血糖値の上昇を有意に抑制した。
以上により、トドマツ樹葉抽出物は、血糖値の上昇を抑制できる効果を有する。
(レボピマ−ル酸またはネオアビエチン酸投与による血糖値の上昇抑制効果の確認)
レボピマ−ル酸またはネオアビエチン酸がマウスの血糖値の上昇を抑制することができるかどうかを確認した。詳細は、以下の通りである。
{経口糖負荷試験(OGTT、Oral glucose tolerance test)}
5週齢の糖尿病モデルKKAYマウス(♂、東京実験動物)に1週間一般飼料を与えて予備飼育した。予備飼育終了後、コントロール群(図7:control)、レボピマール酸群(図7:LA)、ネオアビエチン酸群(図7:NA)の3群に振り分けて試験を開始し、4週間摂食試験を行った(1群4−6匹)。
レボピマール酸及びネオアビエチン酸は純品の試薬を一般げっ歯目用固形飼料に1mg/匹/日になるように染込ませて摂食させた。飼料および水は自由摂取とした。試験期間中の体重の変化を測定した。
上記実施例6と同様に、試験開始28日目に経口糖負荷試験を実施した。具体的には、マウスを24時間絶食後、尾静脈から採血を行い(これを0分とする)、2g/kg体重となるようにD−(+)−グルコースを経口投与した。以降、30、60および90分後にそれぞれ尾静脈から採血を行って血糖値を測定した。
(経口糖負荷試験の結果)
糖負荷後の血糖値の推移を図7に示した。図7から明らかなように、レボピマ−ル酸摂取群およびネオアビエチン酸摂取群は、糖負荷後の血糖値の上昇を抑制した。
以上により、レボピマ−ル酸および/またはネオアビエチン酸は、血糖値の上昇を抑制できる効果を有する。
本発明は、天然物由来の食後血糖上昇抑制剤を有効成分として含有する血糖上昇抑制剤が提供できる。

Claims (5)

  1. マツ科モミ属植物の樹葉の抽出物を有効成分とする食後血糖上昇抑制剤。
  2. マツ科モミ属植物がトドマツである請求項1に記載の食後血糖上昇抑制剤。
  3. 下記の式(I)、(II)の化合物および該それらの化合物の医薬上若しくは飲食上許容される塩から選択される少なくとも1を含む請求項1または2に記載の食後血糖上昇抑制剤。
  4. 下記の式(I)、(II)の化合物および該それらの化合物の医薬上若しくは飲食上許容される塩から選択される少なくとも1を含む食後血糖上昇抑制剤。
  5. 請求項1〜4のいずれか1に記載の食後血糖上昇抑制剤を含有する医薬品。
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