JP2014127316A - リチウム系蓄電デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】コバルト酸リチウムとリチウムリン酸鉄の急速な充放電による容量劣化等の問題を解決して、高エネルギー密度を実現するとともに、寿命が長く信頼性に優れた大容量のリチウム系蓄電デバイスを提供する。
【解決手段】正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在する電解質とを含むリチウム系蓄電デバイスにおいて、正極の正極活物質に、コバルト酸リチウム(LiCoO)および/またはリチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、リチウム金属塩とを含ませる。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム系蓄電デバイスに関し、さらに詳しく言えば、正極活物質にコバルト酸リチウム、リチウムリン酸鉄、活性炭、リチウム金属塩等を含ませてエネルギー密度、容量特性および寿命特性を向上させたリチウム系蓄電デバイスに関するものである。
情報通信機器等の各種電子製品にとって、安定的なエネルギーの供給はきわめて重要であり、通常、エネルギーの供給機能はキャパシタによって行われている。すなわち、キャパシタは、各種電子製品の回路において、電気を蓄えかつ放出する機能を担当し、回路内の電気の流れを安定化する役割を果たしている。
しかしながら、一般的なキャパシタは、充放電が短時間で行われ、寿命が長く、出力密度が高いが、他方においてエネルギー密度が小さいことから、蓄電デバイスとしての使用や用途等に制限がある。
一方、スーパーキャパシタ(またはウルトラキャパシタ)と呼ばれる蓄電デバイスは、速い充放電速度、高い安定性および幅広い使用温度特性を有しているため、次世代エネルギー保存装置として脚光を浴びている。
一般的なキャパシタは、電極構造体、分離膜、電解液等で構成されるが、スーパーキャパシタは、その電極構造体に電力を加えて、電解液内のキャリアイオンを選択的に電極に吸着させる電気化学的反応メカニズムを原理として駆動される。現在、代表的なスーパーキャパシタとしては、電気二重層キャパシタ、疑似キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ等が知られている。
電気二重層キャパシタは、活性炭からなる電極を用いて、電気二重層電荷吸着を反応メカニズムとするスーパーキャパシタである。疑似キャパシタは、遷移金属酸化物もしくは伝導性高分子を電極として用いて、疑似容量を反応メカニズムとするスーパーキャパシタである。ハイブリッドキャパシタは、電気二重層キャパシタと疑似キャパシタとの中間的な特性を有するスーパーキャパシタである。
このようなハイブリッドキャパシタとして、活性炭からなる正極と、グラファイトからなる負極とを用い、リチウムイオンをキャリアイオンとして用いることにより、二次電池の高いエネルギー密度と、電気二重層キャパシタの高い出力特性とを併せ持つリチウムイオンキャパシタが注目されている。
この種のリチウムイオンキャパシタは、リチウムイオンを吸蔵および離脱し得る負極材料をリチウム金属と接触させ、リチウムイオンを化学的方法もしくは電気化学的方法で負極にあらかじめ吸蔵またはドーピングすることによって、負極電位を下げ、耐電圧を大きくして、エネルギー密度を大幅に向上させるようにしている。
一方、コバルト酸リチウム(LiCoO)は、レアメタルの一つであるコバルトを含むものの、その理論容量が274mAh/gと高いことから、リチウムイオン二次電池の代表的な正極活物質として採用されている。
また、リチウムリン酸鉄(LiFePO)は、その理論容量が170mAh/gとコバルト酸リチウムよりは低いものの、400℃の高温状態でも酸素を放出しないため安定性が高く、結晶構造が強固で寿命が長いという特性を有している。
このような特性に注目して、リチウムリン酸鉄を発電所の電力貯蔵等に用いられる中大型蓄電素子の正極材料やリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタの正極材料として活用するための研究開発が行われ、一部で実用化されている。
特開2002−117837号公報 特開2012−89825号公報
しかしながら、コバルト酸リチウム(LiCoO)は、上記したようにエネルギー密度は高いものの、リチウムリン酸鉄(LiFePO)に比べて結晶構造が強固でないため、高温状態では酸素を放出しやすく、安全性の観点では問題がある。
これに対して、リチウムリン酸鉄は、導電率が低く抵抗が大きいため、リチウムリン酸鉄を含む従来の蓄電デバイスは、急速な充放電と言った高入出力的な使用によって、温度が上昇するとともに劣化が発生して寿命が短くなる、と言う問題がある。
特に、リチウムリン酸鉄を含むリチウム二次電池の場合、負極表面のコーティングが破壊され、安定な駆動が損なわれる、と言う問題がある。
そこで、本発明の課題は、コバルト酸リチウムとリチウムリン酸鉄の急速な充放電による容量劣化等の問題を解決して、高エネルギー密度を実現するとともに、寿命が長く信頼性に優れた大容量のリチウム系蓄電デバイスを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、上記正極と上記負極との間に介在する電解質とを含むリチウム系蓄電デバイスにおいて、上記正極活物質に、コバルト酸リチウム(LiCoO)および/またはリチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、リチウム金属塩とが含まれていることを特徴としている。
本発明において、上記正極活物質に対する上記活性炭の配合比が、5〜30質量%であることが好ましい。
また、上記リチウム金属塩が、燐弗化リチウム(LiPF)または硼弗化リチウム(LiBF)もしくはそれらの混合物であることが好ましい。
また、上記正極活物質に対する上記リチウム金属塩の配合比が、1〜5質量%であることが好ましい。
本発明において、上記混合物における上記活性炭の配合比は10〜90質量%の範囲内であることが好ましい。
また、本発明には、コバルト酸リチウム(LiCoO)および/またはリチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、リチウム金属塩とを含むリチウム系蓄電デバイス用正極活物質も含まれる。
本発明によれば、従来の活性炭のみを正極材料として用いたリチウムイオンキャパシタに比べて、より大きな容量が得られ、また、従来のコバルト酸リチウムやリチウムリン酸鉄のみを正極材料として用いたリチウムイオン二次電池に比べて、高入出力、保存特性および安全性が向上することによって、長期間にわたって安定して用いることが可能なリチウム系蓄電デバイスを実現することができる。
次に、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
本発明では、リチウム系蓄電デバイスのエネルギー密度を向上させるため、高容量のリチウム酸化物として、コバルト酸リチウム(LiCoO)とリチウムリン酸鉄(LiFePO)のいずれか一方、もしくはその両方を正極活物質として含む。
リチウム酸化物は、高容量であるが抵抗も高いため、様々な問題が誘発される。そこで、本発明では、正極活物質として、コバルト酸リチウムやリチウムリン酸鉄のようなリチウム酸化物を単独では用いず、これに活性炭を所定量混合したものを用いることによって、正極活物質の抵抗を下げて、相対的に寿命特性を向上させている。
本発明において、正極活物質に対する活性炭の配合比は、5〜30質量%であることが好ましい。
すなわち、正極活物質に対する活性炭の配合比が5質量%未満であると、急速な充放電によるコバルト酸リチウムやリチウムリン酸鉄の構造破壊が問題となる。また、コバルト酸リチウムやリチウムリン酸鉄は高抵抗であるため、リチウム系蓄電デバイスの充放電サイクルが持続的に繰り返されると、リチウム系蓄電デバイスの劣化が深刻化して、寿命が短縮されるおそれがある。
これに対して、正極活物質に対する活性炭の配合比が30質量%を超えると、相対的に質量エネルギー密度の高いコバルト酸リチウムやリチウムリン酸鉄の配合比率が下がるため、リチウムイオン二次電池に近い容量を確保することが困難になる。
また、本発明では、リチウム系蓄電デバイスの保存特性を向上させるために、正極活物質にリチウム金属塩を配合する。
リチウムイオンキャパシタやリチウムイオン二次電池の電解液中のリチウム金属塩は、使用期間中に電極や電解液に含まれる僅かな水分や外部からケース内に浸入してくる水分と反応することで分解し減少してしまう。その分、リチウムイオンの輸送能力が低下するため、充放電特性も低下することになる。正極活物質にリチウム金属塩を配合することにより、この問題が解決される。
本発明において、正極活物質に対するリチウム金属塩の配合比は、1〜5質量%であることが好ましい。
正極活物質に対するリチウム金属塩の配合比が1質量%未満であると、電解液中のリチウム金属塩が電極や電解液に含まれる僅かな水分や外部からケース内に浸入してくる水分と反応することで分解し減少し、充放電特性も低下するおそれがあるので好ましくない。
これに対して、正極活物質に対するリチウム金属塩の配合比が5質量%を超えると、電解液中のリチウム金属塩が電極や電解液に含まれる僅かな水分や外部からケース内に浸入してくる水分と反応することで分解し減少する量は、正極活物質の5%以下にも拘わらず、配合比を高くした分、相対的に質量エネルギー密度の高いコバルト酸リチウムやリチウムリン酸鉄の配合比率が下がるため、容量が少なくなってしまうので好ましくない。
本発明においては、正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO)、リチウムリン酸鉄(LiFePO)、活性炭、リチウム金属塩の中から少なくとも3種以上を用い、負極活物質には、リチウムイオンがプレドーピングされた炭素材料を用いる。
次に、本発明による実施例1〜6と比較例1〜6とを作製し、これらの特性を対比したので、これについて説明する。
〔実施例1〕
〈正極電極の製造〉
正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で65:30:5の割合で混合した(第1混合物)。そして、第1混合物と、ケッチェンブラックと、ポリビニリデンフルオライドとを質量比で91.5:6.0:2.5の割合で混合した(第2混合物)。
続いて、第2混合物を溶媒であるN−メチルピロリドンに投入し撹拌してスラリーとし、このスラリーを15μm厚のアルミニウムホイル上にドクターブレード技法で塗布したのち、真空雰囲気中において150℃で約5時間かけて乾燥させた。乾燥後の電極の厚さは約30μmであった。
〈負極電極の製造〉
負極活物質として、グラファイトと、ケッチェンブラックと、ポリビニリデンフルオライドとを質量比で91.5:6.0:2.5の割合で混合し、溶媒であるN−メチルピロリドンに投入し撹拌してスラリーとし、このスラリーを10μm厚の銅箔上にドクターブレード技法で塗布したのち、真空雰囲気中において150℃で約5時間かけて乾燥させた。乾燥後の電極の厚さは約20μmであった。
〈電解液の製造〉
溶媒としてのエチレンカルボネートと、エチルメチルカルボネートと、リチウム塩としてのLiPFとを20:63:17の質量比で混合して電解液を製造した。
〈負極電極のプレドーピング〉
リチウム金属箔と上記負極電極とを、それらの間にポリエチレン樹脂製の微多孔フィルムからなるセパレータを挟んで対向して接触させることにより、リチウムイオンをドーピングさせた。このドーピングは約1時間行い、リチウムイオンのドーピング量が、負極活物質の理論容量の約30%になるようにした。
〈リチウム系蓄電デバイスの組立〉
上記のようにして製造した正極電極と負極電極とをセパレータを介して渦巻き状に巻回し、外径18.3mm,軸長65mmの円筒ケース内に挿入したのち、ケース内を電解液で満たし封口体で密閉して、リチウム系蓄電デバイスを作製した。
〔実施例2〕
正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で90:5:5の割合で混合した以外は実施例1と同様とした。
〔実施例3〕
正極活物質として、リチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で65:30:5の割合で混合した以外は実施例1と同様とした。
〔実施例4〕
正極活物質として、リチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で90:5:5の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔実施例5〕
正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で94:5:1の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔実施例6〕
正極活物質として、リチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で94:5:1の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔比較例1〕
正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で55:40:5の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔比較例2〕
正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で94:1:5の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔比較例3〕
正極活物質として、リチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で55:40:5の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔比較例4〕
正極活物質として、リチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で94:1:5の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔比較例5〕
正極活物質として、コバルト酸リチウム(LiCoO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で69.5:30:0.5の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
〔比較例6〕
正極活物質として、リチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、燐弗化リチウム(LiPF)を質量比で69.5:30:0.5の割合で混合したこと以外は実施例1と同様とした。
上記実施例1〜6と上記比較例1〜6をそれぞれ15個作製し、これらを5個ずつ3群に分け、第1群については、作製直後における初期容量、第2群については、60℃,90R.H.(相対湿度)の恒温槽で40日間保存後の容量、第3群については、急速充放電後の容量をそれぞれ測定した。その結果を表1に示す。各容量(mAh)は、n=5の平均値である。
なお、急速充放電後の容量は、作製後特に保存期間は置かずに、5Aの定電流充電で30秒充電、短絡で30秒間放電(電動アシスト自転車のブレーキ等の回生エネルギー回収等を想定)という条件で10回急速充放電したものを、30分で4.0Vまで充電した後、30分で3.0Vまで放電して測定した容量である。
Figure 2014127316
実施例1,2と、比較例1の初期容量を対比すると、比較例1の容量が低いことが分かる。これは、比較例1の方が、理論容量が274mAhと高いコバルト酸リチウムの比率が低いことによる。このことから、活性炭の配合比は30%以下が好ましい。
次に、実施例3,4と、比較例3の初期容量を対比すると、比較例3の方が低い。これも、比較例3の方が、理論容量が170mAhと比較的高いリチウムリン酸鉄の比率が低いことによる。このことからも、活性炭の配合比は30%以下が好ましい。
次に、実施例2と比較例2、および、実施例4と比較例4の初期容量に対する急速充放電後の容量を比較すると、実施例2,4に対して、比較例2,4の急速充放電による劣化率が高いことが分かる。
その理由として、比較例2,4は、活性炭の比率が1%と低いため、急速な充放電により活性炭のリチウムイオンの吸脱着量だけでは対応しきれず、急速なリチウムイオンの出入りによりコバルト酸リチウムやリチウムリン酸鉄の結晶構造が一部破壊され、劣化率が高くなったものと推測される。このことから、活性炭の配合比は5%以上が好ましい。
次に、実施例5と比較例5、および、実施例6と比較例6の初期容量に対する保存後の容量(60℃,90R.H.(相対湿度)の恒温槽で40日間保存後の容量)を対比すると、実施例5,6に対して、比較例5,6の方が保存後の劣化率が高いことが分かる。
その理由として、高温多湿保存により、外部からケース内に浸入した水分がリチウム金属塩と反応することにより、リチウム金属塩が分解して減少した分、リチウムイオンの輸送能力が低下したためと推測される。このことから、リチウム金属塩の配合比は1%以上であることが好ましい。
なお、本発明において、リチウム金属塩の配合比の上限を5%としているのは、電極や電解液に含まれている水分および外部からケース内に浸入してくる水分は僅かであるため、その分を補う量としては5%で十分であり、また、リチウム金属塩の配合比を高めれば高めるほど、コバルト酸リチウム等の容量に大きく影響を及ぼす活物質の配合比を下げなければならなくなるためである。これらのことから、リチウム金属塩の配合比は、1%以上、5%以下が好ましい、と言える。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これはあくまで例示であって、制限的に解釈されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、その均等的な技術も当然に含まれるものである。

Claims (5)

  1. 正極活物質を有する正極と、負極活物質を有する負極と、上記正極と上記負極との間に介在する電解質とを含むリチウム系蓄電デバイスにおいて、
    上記正極活物質に、コバルト酸リチウム(LiCoO)および/またはリチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、リチウム金属塩とが含まれていることを特徴とするリチウム系蓄電デバイス。
  2. 上記正極活物質に対する上記活性炭の配合比が、5〜30質量%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム系蓄電デバイス。
  3. 上記リチウム金属塩が、燐弗化リチウム(LiPF)または硼弗化リチウム(LiBF)もしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム系蓄電デバイス。
  4. 上記正極活物質に対する上記リチウム金属塩の配合比が、1〜5質量%であることを特徴とする請求項1または3に記載のリチウム系蓄電デバイス。
  5. コバルト酸リチウム(LiCoO)および/またはリチウムリン酸鉄(LiFePO)と、活性炭と、リチウム金属塩とむリチウム系蓄電デバイス用正極活物質。
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