JP2014126713A - 採光シート、採光装置、及び建物 - Google Patents

採光シート、採光装置、及び建物 Download PDF

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Abstract

【課題】太陽光の直射(直達光)を抑制するとともに効率良く採光でき、室内側から室外側を見ることが可能な採光シートを提供する。
【解決手段】シート面が鉛直となるように建物開口部に配置されるシート状である採光シート(20)であって、透光性を有するシート状の基材層(22)と、基材層の一方の面に形成され、光を偏向する光偏向層(23)と、を備え、光偏向層は、基材層の一方の面に沿って複数並べて配置された光を透過する光透過部(24)と、隣り合う光透過部間に配置され、該光透過部よりも低い屈折率の材料が充填された光偏向部(25)と、を有し、採光シートが建物開口部に配置された姿勢で、光偏向部は採光シートの厚さ方向断面において、その下部となる側の辺(25b)に微小な凹凸形状を有している。
【選択図】図3

Description

本発明は、建物等の内部に日光等の外光を採り入れるための採光シート、採光装置、及びこれを用いた建物に関する。
いわゆる窓ガラスにより、建物の内部に日光等の外光を採り入れて明るく快適な室内空間を形成することはよく知られている。しかし一方で当該窓ガラスに入射した外光をそのまま室内に採り入れると、まぶしさを感じる等の不具合を生じることもある。これに対して、直射日光を制御してより快適な態様で室内側に光を採り入れる技術がいくつか提案されている。
特許文献1には、太陽光を建物内に取り入れる部位に配置される太陽光取り入れ制御用の光制御シートが開示されている。これは太陽光を透過する光透過性部と、太陽光を吸収する遮光部群とからなり、遮光部群はシート内の一方向に所定ピッチで、遮光部を複数配列させているものである。
また特許文献2には、太陽光を採り入れるよう建物の開口部に設けられる板状の採光用光学素子が開示されている。これは、同一平面上に詰めて設けられた多数のプリズム部から成り、各プリズム部の斜面は、太陽の仰角が臨界仰角より小さい場合には太陽光を透過させ臨界仰角以上の場合には全反射させる角度となっており、太陽の仰角が臨界仰角以上の場合の全体の採光量は、臨界仰角より小さい場合の全体の採光量に比べて少なくなる形態を備えている。
特開2010−259406号公報 特開2003−157707号公報
しかしながら、特許文献1に開示されているような構成の光制御シートでは、外光(太陽光)の一部を遮光部群が吸収してしまうため、該光制御シートを建物等の窓に適用した場合、外光を吸収してしまい外光を効果的に室内に採り入れることが難しかった。
また、特許文献2に開示されている技術では、外側から入射する光について制御することができるが、室内側から外を見たときに像が屈折するため、外の景色を見るための鮮明さに不足があった。さらに、特許文献2に開示されている採光用光学素子は、プリズム状の凹凸が室内側に露出しているため、設置場所によっては損傷を受けやすく、耐久性に問題があった。
そこで本発明は上記した問題点に鑑み、太陽光の直射(直達光)を抑制するとともに効率良く採光でき、室内側から室外側を見ることが可能な採光シートを提供することを課題とする。また、これを用いた採光装置及び建物を提供する。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、これにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、シート面が鉛直となるように建物開口部に配置されるシート状である採光シート(20)であって、透光性を有するシート状の基材層(22)と、基材層の一方の面に形成され、光を偏向する光偏向層(23)と、を備え、光偏向層は、基材層の一方の面に沿って複数並べて配置された光を透過する光透過部(24)と、隣り合う光透過部間に配置され、該光透過部よりも低い屈折率の材料が充填された光偏向部(25)と、を有し、採光シートが建物開口部に配置された姿勢で、光偏向部は採光シートの厚さ方向断面において、その下部となる側の辺(25b)に微小な凹凸形状を有している、採光シートである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の採光シート(20)において、微小な凹凸が、下部となる側の片(25b)に沿った階段状の凹凸である。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の採光シート(20)において、光偏向部(25)には光を散乱させる材料が含有されている。
請求項4に記載の発明は、透光性を有する板状のパネル(13)と、パネルの一方の面に貼付される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の採光シート(20)と、少なくともパネルの周囲を囲むように配置される枠(11)と、を備える採光装置(10)である。
請求項5に記載の発明は、壁に形成された開口部に請求項4に記載の採光装置が設置された建物(1)である。
本発明によれば、太陽光の直射(直達光)を抑制するとともに効率良く採光でき、室内側から室外側を見ることが可能となる。また、室内側の様子が伺える反射を防止することができる。
第一の形態を説明する図で、建物1の外観斜視図である。 採光装置10を正面視した図である。 採光パネル12の層構成を説明する図である。 光偏向層23の形態を説明する図である。 辺25bの形態を説明する図である。 図6(a)は光偏向部の上部となる側の辺が下に凸の曲線である例、図6(b)は光偏向部の上部となる側の辺が2つの直線により形成された下に凸状である例を表した。 光偏向部の室外側に面する部位が凹状である例である。 採光シート20の効果を説明する1つの図である。 金型ロール30の外観斜視図である。 金型ロール30の表面に形成された突起32及び溝33を拡大して示した図である。 チップの形態を説明する図である。 金型ロールの突起32及び溝33を形成する1つの図である。 金型ロールの突起32及び溝33を形成する他の図である。 金型ロールの突起32及び溝33を形成するさらなる他の図である。 突起32の面32bに形成される階段状の凹凸を模式的に表した図である。 光偏向部を基材層に積層する場面を説明する図である。 第二の形態を説明する図で、図8に相当する図である。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明は当該実施形態に限定されるものではない。なお、以下に示す各図では、分かりやすさのためその構造を誇張して記載することがある。また、各図では見易さのため、繰り返しとなる符号は一部を省略することがある。
図1は第一の形態を説明する図であり、採光シート20(図3参照)が備えられた建物1の外観斜視図である。建物1はいわゆるオフィスビルであり、南側に面する外壁には室内外を連通する複数の開口部が設けられ、ここに採光シート20を具備する採光装置10が配置されている。
図2には1つの採光装置10を室外側から正面視した図を表した。このように採光装置10は、枠11と該枠11の枠組み内に配置された採光パネル12とを備えており、いわゆる窓として構成されている。そして当該採光装置10が上記のように建物1の開口部に配置される。
図3には図2にIII−IIIで示した線に沿った採光装置10の鉛直方向断面のうち、採光パネル12の層構成を模式的に表した。図3では採光パネル12のパネル面が鉛直になるように建物1に取り付けられた姿勢で表されており、図3の紙面左が室外側、紙面右が室内側、紙面上方が天側、紙面下方が地側となる。
採光パネル12は、図3からわかるように、パネル13、及び該パネル13の室内側面に貼合された採光シート20を備えている。また、採光シート20は、室内側からハードコート層21、基材層22、光偏向層23、及び接着層27を備えている。以下、これらの各層について説明する。
パネル13は、ガラスパネルや樹脂パネル等、通常の建物や乗り物の窓等に用いられる透光性を有する板状の透光パネルである。従って、パネル13を構成する部材としては公知の板ガラスや樹脂板を用いることができる。上記した枠11は少なくとも当該パネル13の周囲に配置されることにより、採光パネル12が枠11の枠組み内に取り付けられる。
ハードコート層21は、表面保護を目的として、採光シート20のうちパネル13とは反対側の最表面に設けられる層である。ハードコート層21は透明な樹脂層として形成することができ、擦り傷、表面汚染に対する耐性の観点から、硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成することが好ましい。
具体的には電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等が挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー乃至は(メタ)アクリル酸エステルプレポリマーなどからなる。さらに3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等がある。
また、ハードコート層21には、耐汚染性向上の機能を追加してもよい。これは例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物などを添加することにより可能となる。さらにその他の機能として帯電防止性向上、撥水性向上の機能を有するものとしてもよい。
帯電防止性向上のために用いることができる材料としては、電子伝導タイプではPEDOT−PSS(PEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)とPSS(poly(styrenesulfonate);スチレンスルホン酸ポリマー)とを共存)などが挙げられ、イオン導電タイプではリチウム塩系材料等が挙げられる。
また、撥水性向上のために用いることができる材料としては、フッ素系化合物等が挙げられる。
基材層22は、光偏向層23を形成するための基材となる層である。
従って基材層22は、透光性を有するとともに光偏向層23の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層22を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層22の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層22の厚さがこの範囲を外れると、加工性に問題を生じる虞がある。例えば、基材層22が薄過ぎればしわが生じやすくなる。また、基材層22が厚過ぎれば、採光シート20を製造する工程のうち中間工程において巻き取りが困難になる。
光偏向層23は光透過部24、及び光偏向部25を有している。光透過部24は、図3に示した断面を有して基材層22の面に沿った一方向(建物1に配置された姿勢で水平方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向とは異なる方向(建物1に配置された姿勢で鉛直方向)の基材層22の面に沿って複数の光透過部24が所定の間隔で配列されている。本実施形態では隣り合う光透過部24は基材層22側の端部で連結され、一体化されている。
一方、光偏向部25は隣り合う光透過部24の間に配置されている。
図4には光偏向層23の一部を拡大した図を示した。
光透過部24は、光を透過する部位であり、光偏向層23のうち光透過部24が配置された部位における基材層22側の面とその反対側面(接着層27側の面)とは平行、平滑に形成されていることが好ましい。これによって、後に説明するように採光シート20を通して室外側の景色がさらに見やすくなる。さらに好ましくは光透過部24は光を散乱させることなく透過する。これにより背面側の景色の見易さが向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、材料中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
本形態では光透過部24は図3、図4に表れる断面で隣り合う光偏向部25の間において略台形の断面を有しており、室外側が短い上底、室内側が長い下底であり光偏向部25との界面を構成する辺が脚部となっている。ただし、脚部は後述するように光偏向部25の形状に沿った形状となるので、必ずしも一直線状とは限らない。
光透過部24を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
ここで光透過部24を構成する材料の屈折率は、基材層22の屈折率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。ここで光透過部24を形成する材料の屈折率は原材料の汎用性から1.49以上1.56以下の範囲が好ましく、1.49以上1.50以下であることがより好ましい。
光偏向部25は、隣り合う2つの光透過部24間に形成される部位である。すなわち、上記したように光透過部24はシート面に沿った方向に所定の間隔で並列され、光透過部24間には、所定の形状を有する溝状の凹部が形成されている。本形態における凹部は、光偏向部25の断面形状に応じた断面形状を有する溝であり、ここに光偏向部25を構成する材料が充填されることにより光偏向部25が形成されている。従って光偏向部25は当該凹部に基づいた断面形状を具備している。
光偏向部25は、ここに照射された光を全反射して偏向可能に構成された部位である。そのため、光偏向部25は光透過部24よりも屈折率が低い材料が充填されている。これによれば、光偏向部25と光透過部24との屈折率差、及びその界面に入射する光の角度の関係により、該入射した光が全反射条件を満たせばここでその光を全反射して偏向することができる。後で詳しく説明するが、偏向された光は、その向きが変わり、例えば天井に照射されるなどしてまぶしさを与える直達光でなくなることができる。光偏向部25を形成する材料の屈折率は原材料の汎用性から1.49以上1.56以下の範囲が好ましく、1.49以上1.50以下であることがより好ましい。
また、そのときにおける光透過部24と光偏向部25との屈折率差は、0.03以上0.07以下、より好ましくは0.05以上0.06以下である。屈折率差が0より大きく0.03より小さい範囲では、全反射時の波長分散(波長により全反射角度が異なることによる分散。)が生じた際に長波長の成分が全反射せず、短波長の成分のみが全反射することがあり、色彩の変化が生じる虞がある。一方、屈折率差が0.07より大きいと、短波長の成分の屈折率が長波長の屈折率の成分の屈折率に対して大きくなる傾向にあり、虹状のムラが顕著に表れる虞がある。
さらに、本形態では光偏向部25は次のような形状を構成を備えている。図4を参照しつつ説明する。
光偏向部25は図4に表れる断面において、台形を有している。長い下底が室外側(光透過部24の上底側)、短い上底が室内側(光透過部24の下底側)となり、上下が脚部となる台形である。
脚部のうち、上側となる辺25aは、図4に表された姿勢とされたとき、その傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θで室外側(太陽側)上方に向けて傾斜している。
一方、辺25aとは反対側となる下部の脚部となる側の辺25bは、その傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して所定の角度で室外側下方に向けて傾斜している。当該辺25bの傾斜角は特に限定されることはないが、製造の観点から0°以上30°以下とすることが好ましい。
さらに辺25bは、ここで全反射する光を散乱して反射するように構成されている。これにより後述するように室外側から採光シート20を見上げたときに室内側の様子を伺い知ることができるという不具合を防止することができる。
光を散乱して反射するための具体的形態は特に限定されることはないが、例えば辺25bが微小な凹凸を有するように構成してもよい。微小な凹凸の形成方法は後で詳しく説明する。
このような凹凸面の例を図5に示した。このように、凹凸面は辺25bの傾斜に沿って階段状であることが好ましい。具体的には次のとおりである。凹凸の厚さ方向の大きさ(図5にTで示した大きさ)は1μm以上、50μm以下であることが望ましい。1μmより小さいと光の波長程度になり、幾何光学上の全反射の効果が得られなくなる可能性がある。一方、光偏向部25の厚さ方向大きさは50μm以上300μm以下が加工上の観点から望ましく、このとき、Tが50μmより大きくなると階段状にならない場合がある。
また、凹凸の幅方向大きさ(図5にSで示した大きさ)は、0.5μm以上、より望ましくは1.0μm以上である。一方、幅方向大きさは10μm以下であることが望ましい。10μm以上になると、光偏向部25の幅に近くなりすぎ、適切な階段状にならない虞がある。
光偏向部25が並列されるピッチは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。当該ピッチが狭すぎると微細形状になるので製造の際に加工が困難になる。一方、ピッチが広すぎると、金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
また、光偏向部25の断面のうち、室外側(基材層22と反対側で光透過部24間の凹部の開口側)の大きさは特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。この幅が狭すぎると微細形状になるので加工が困難になる。一方、この幅が広すぎると金型で成形する際に材料の離型性が低下する傾向にある。
光偏向部25の厚さ方向の大きさ(図4の紙面左右方向)は特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。これが小さすぎると、光偏向部25の加工自体が困難になる虞がある。一方、これが大きすぎると光偏向部25を形成するための金型の製造、及び金型からの材料の離型性が低下し、生産性が悪くなる虞がある。
図6、図7には、変形例に係る光偏向部の断面形状を表した。図6(a)は、上部となる側の辺が下に凸の曲線状である光偏向部25’の例を示した。この例では、最も室外側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θ、最も室内側となる部位における接線の傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θである。この場合はθとθとの平均をθとする。
図6(b)は、上部となる側の辺が室外側から2つの辺25’’a、25’’bにより形成されて下に凸となる折れ線状の光偏向部25’’の例である。この例では、最も室外側となる辺25’’aの傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θ、最も室内側となる辺25’’bの傾斜角が水平面(採光シート20のシート面の法線)に対して角度θとなる。この場合もθとθとの平均をθとする。ここでは2つの辺25’’a、25’’bからなる光偏向部の例を説明したが、これに限らずさらに多くの辺により形成されていてもよい。
これら図6(a)、図6(b)に記載のような光偏向部によっても図4で示した形状の光偏向部と同様の効果を奏するものとなる。さらに図6(a)、図6(b)による形状によれば、上部の辺における全反射による波長分散に起因する虹状のムラの発生を抑制することが可能となる。
図7は、光偏向部のうち、光透過部間に形成される溝の開口側(本実施形態では室外側に面する辺)が窪んだ形状に形成されている例の光偏向部25’’’を表した。この場合、当該窪みの内側には隣接する接着層27の接着剤が充填される。これによれば、さらに当該凹部において太陽光を偏向させ、光を制御することができる。
図3に戻って他の構成についても説明を続ける。
接着層27は、パネル13に採光シート20を接着するための層である。接着層27を構成する材料としては、パネル13に採光シート20を接着できるものであれば特に限定されず、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。より具体的な例としては、接着層27として、例えばアクリル系の粘着剤を用いることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤を挙げることができる。ただし、接着層27を構成する材料は、採光シート20の性質上、透光性、耐候性に優れた材料によることが好ましい。
接着層27の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層27が薄過ぎるとパネル13と採光シート20との密着性が低下する虞がある。また、接着層27が厚過ぎると該接着層27の厚さを均一にすることが困難になる。
以上説明した採光シート20を具備する採光パネル12により採光装置10を形成し、これを図1に示したように建物1の開口部に配置する。次に、このように採光シート20が配置された場面における作用、及び上記説明した角度θの好ましい値について、主要な光路に基づいて説明する。説明に必要な光路例を以下に示す図面に適宜表した。なお各図面に表した光路例は概念的なものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。
図8に1つの光路例である太陽からの光LS1を示した。図8からわかるようにLS1はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS1で採光パネル12に照射される。採光パネル12に入射した光LS1は採光パネル12を透過するうちに光偏向層23の光透過部24内を進む。光透過部24内では、該光透過部24の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS1は、式(1)で表される太陽光進行角θP1で進む。
Figure 2014126713
太陽光進行角θP1で進行した太陽光が光透過部24と光偏向部25の界面に達したとき、光透過部24と光偏向部25との屈折率差、及び太陽光進行角θP1の関係が全反射臨界角以上であれば図8のように界面で全反射する。これにより太陽光が偏向されて、まぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。すなわち、採光シート20によれば、光LS1のように太陽光の少なくとも一部を全反射で偏向させて室内側に提供することができ、太陽光の室内への入射量を大きく減じることなく、かつ、少なくとも一部の直達光(いわゆる直射日光)をなくすことが可能となる。これにより明るく、快適な室内空間を形成することができる。
一方、例えば夜間において、室内側の方が室外側よりも明るい場合、図8にLN1で示したような光が室内側から室外側に出光する。この光は室内側の様子を伺える情報を含んでおり、光透過部と光偏向部との界面で全反射して室外にこの情報が明確に見える形で出射される虞がある。しかしながら本発明では、光偏向部25の下部の辺25bに光を散乱する手段が具備されているので、図8に光LN1で示したように、室内側の様子を伺える情報を含む光を散乱して室外側に出射する。従って、採光シート20によれば、光透過部と光偏向部との界面で反射する光については、室内側からの光が明確さを喪失して室外に出射されるので、室外側から室内の様子を伺える状態が解消される。
さらに、採光シート20には上記したように光透過部24が備えられており、光透過部24が配置される部位の光偏向層23の表裏面は平行、平滑に形成されている。これにより、図8に示したように室外側の景色を伴う光LK1は室内に入射することができ、これは室内側から室外側の景色を視認することができることを意味する。従って、採光シート20は、さらに室外側の景色を視認し易い構造を具備している。
以上のような採光シート20において、偏向される太陽光の向きは界面に入射する角度である太陽光進行角θP1、及び光偏向部の傾斜角であるθに依存する。従って、ここで全反射した光が最終的に水平より上向きとなるようにθが決められることが好ましい。ただし、より効果的に太陽光を光透過部24と光偏向部25との界面で全反射させ、太陽光を偏向して室内側に出射させる観点から好ましいθを規定することができる。以下に詳しく説明する。
θを例えば一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHに基づいて設定することができる。すなわち、仰角θSHとしたときの光透過部内の太陽光進行角θPHは次式(2)で表されるので、この角度θPHで進行する光を全反射することができるようにθを設定する。
Figure 2014126713
ただし、仰角θSHは緯度により異なるので、異なる緯度を跨ぐように広がる所定の領域(例えば国や地域等)におけるθSH1乃至θSH2により(θSH1<θSH2)、θの範囲を規定することができる。すなわち、式(3)をθの好ましい範囲とすることができる。
Figure 2014126713
ここで日本国内では、札幌におけるθSHは70.5°、沖縄におけるθSHは87.5°であることから、θは式(4)の範囲にあることが好ましい。
Figure 2014126713
一方、θを例えば一年のうちで最も南中高度が低いときの仰角θSLに基づいて設定することもできる。すなわち、仰角θSLとしたときの光透過部内の太陽光進行角θPLは次式(5)で表されるので、この角度θPLで進行する光を全反射することができるようにθを設定する。
Figure 2014126713
ただし、仰角θLHは緯度により異なるので、異なる緯度を跨ぐように広がる所定の領域(例えば国や地域等)におけるθSL1乃至θSL2により(θSL1<θSL2)、θの範囲を規定することができる。ここで、θは0°より小さくなる(図4とは反対に傾く。)と製造が困難になることから、0°以上であることが好ましい。以上より、式(6)をθの好ましい範囲とすることもできる。
Figure 2014126713
ここで日本国内では、沖縄におけるθSLは40.5°であることから、θU2は式(7)の範囲にあることが好ましい。
Figure 2014126713
採光シート20には上記した各層のいずれかに、他の機能を付加させるための構成を備えてもよい。これには例えば、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、又は近赤外線吸収剤を添加し、紫外線吸収機能、熱線吸収機能、又は近赤外線吸収機能を備えさせることが考えられる。
近赤外線吸収機能は、近赤外線吸収剤(近赤外線吸収色素)を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。近赤外線吸収色素としては、800nm以上1100nm以下の波長領域を吸収するものを用いることが好ましい。該波長領域の近赤外線の透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。一方で、近赤外線吸収色素は可視光領域、即ち、380nm以上780nm以下の波長領域で、十分な透過率を有することが好ましい。
紫外線吸収機能は、以下に例示する紫外線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、全てBASFジャパン株式会社製)や、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 1577 ED、BASFジャパン株式会社製)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CHIMASSORB 81、CHIMASSORB 81 FL、全てBASFジャパン株式会社製)、ベンゾエート系紫外線吸収剤(TINUVIN 120、BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
熱線吸収機能は、以下に例示する熱線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。熱線吸収剤としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)またはスズドープ酸化インジウム(ITO)、フタロシアニン化合物などの金属酸化物超微粒子などが挙げられる。
以上説明した採光パネル12は例えば次のように製造する。すなわち、採光パネル12は、パネル13に採光シート20を貼合することによって製造することができる。ここで採光シート20は、例えば次のように作製することが可能である。
採光シート20のうち光偏向層23は金型ロールを用いる方法により形成することができる。ここに、光偏向層23のの光透過部24を形成するためのロール金型30について説明する。図9は、ロール金型30の外観を概略的に示した斜視図である。図10は、図9に示したロール金型30の外周面に形成された環状突起32及び溝33の断面の一部を拡大して示した図である。当該断面は環状突起32及び溝33が延在する方向に直交する断面で、ロール金型30の回転軸に沿った方向の断面である。
図9に示すように、ロール金型30は、円柱状のいわゆるロール状の金型であり、円柱状のロール基体31の外周面から突出する複数の環状突起32、及び該環状突起32間に形成される溝33を有している。ここで環状突起32及び溝33は、ロール金型30においてその円周方向に延び、これがさらに幅方向(ロール回転軸方向)に並列されるように具備されている。さらに詳しくは次の通りである。
ロール基体31は、ベースとなる基体及び該基体外表面に積層された被加工層を有している。
基体は、ロール基体31の剛性を確保するための部位で、ロール基体31の大部分を占めている。かかる観点から基体は、機械構造用の鉄系材料が用いられることが好ましい。また、必要な剛性を確保しつつも軽量化をする観点から、基体は両端に底を有する有底の円筒状であってもよい。また、ロール金型30表面の温度調節ができるようにロール基体31の内部に冷水や温水、蒸気又は高温の油を循環できるように2重構造にするのが一般的である。
一方、被加工層は、基体の外表面を被覆するように積層された層である。基体は上記したように構造上の観点からその材料が選択されるので、加工が困難である場合が多い。そこで、実際に加工するのはロール基体31の表面付近のみでよいことから、加工される部分に比較的加工のしやすい被加工層を設ける。従って、被加工層は、銅メッキ層、ニッケルメッキ層等の加工が容易な材料によるメッキ層であることが好ましい。被加工層の厚さは、その性質上、加工されるべき形状により決められる。例えば銅メッキ層の厚さは、必要な形状の高さ以上あれば問題ないが、通常は0.3mm乃至1.0mmである。
環状突起32及び溝33は、光偏向層23に具備される光透過部24及び隣り合う光透過部24間に形成される溝状の凹部に対応する形状となっている。すなわち環状突起32が凹部の形状であり、溝33が光透過部24の形状となっている。ここで環状突起32の一方の側面である面32aが光偏向部25の辺25aを形成し、その反対側の側面である面32bが光偏向部25の辺25bを形成する。従って面32bには辺25bに形成されている凹凸に対応する凹凸が具備されている。
光散乱層23に微細な凹凸を形成するための当該ロール金型30では、溝33及び環状突起32自体が非常に微細であるとともに、この溝33及び環状突起32がロール金型30の周方向に延びるとともに、ロール金型30の幅方向(ロール回転軸方向)全長に亘って並ぶように密に形成されている。また、ロール金型30は光学的な部材を成形するためのものであるため、溝33及び環状突起32の精度を十分に確保する必要がある。従って、ロール金型30を製造する際には、精度を保ちつつも長く効率よく環状突起32及び溝33を形成することが必要である。以下、ロール金型30の製造方法について説明する。
基体上に被加工層が積層されたロール基体31を準備し、これをロール回転軸により回転させる。はじめに基準面を得るための前加工として、所定の切削工具(Rバイト)により、必要な切り込み深さ及び送りで鏡面加工をおこなう。Rバイトとは、先端の形状が円弧状のバイトであり、曲率半径が2mmから10mmのダイヤモンドバイトがよく用いられる。送りピッチは0.1mmから0.2mmが一般的である。ここで、ロール基体31の直径は特に限定されることはないが、300mm以上500mm以下であることが好ましい。
その後、得られた基準面に基づいてロール基体31を回転させつつ切削工具により溝33を形成する。ここで切削工具は例えば次のような形状を具備している。図11に使用される切削工具の一例である切削チップ40の概略的な図を示した。図11ではすくい面を符号41、前逃げ面を符号42、横逃げ面を符号43でそれぞれ表わしている。図11(a)は斜視図、図11(b)はすくい面41側からみた図、図11(c)は前逃げ面42側から見た図、及び図11(d)は横逃げ面43側から見た図である。
切削チップ40の主要な寸法は、溝33の形状を形成できるように設定される。
また、図11に表わしたバイト角度θa1、θa2、横逃げ角θ、及び前逃げ角θは、次の通りである。ここでバイト角度θa1とθa2との和を頂角と呼ぶ。頂角は、製造されるべき光学シートの形状により決められる角度である。図11(b)のwはバイト先端幅である。頂角及びバイト先端幅は形成されべき溝の形状により適宜変更する。
横逃げ角θは、2度以上5度以下が好ましい。当該横逃げ角θを2度以上にすることにより、切削チップ40の切れ性が向上し、切削チップへの負担が減少するので、摩耗を減らすことができ、1つの切削チップで精度良く加工することができる。すなわち、溝33の深さを深くしたり、ピッチを小さくして切削本数を増やすことが可能となる。従って、切削チップを交換することなく、又はその交換回数を抑制して光学シートのロール金型を製造することができる。すなわち、ロール金型30の製造の効率及び精度を向上させ、最終製品である採光シート20の光偏向層23の凹凸形状も高精度に製造することが可能となる。また、横逃げ角θを5度よりも大きくすると、前逃げ角も大きくする必要があり、切削チップ40の強度が低下する懸念が出てくる。
前逃げ角θは、通常5度以上20度以下にすることが多い。5度より小さいと横逃げ角と同様に切れ性が悪くなる傾向にある。一方、20度よりも大きくすると切削チップ先端の剛性がなくなり、欠けやチッピングが生じやすい。
切削チップ40の材質は被加工層の材質、加工形状等により適宜選択できる。これには例えば超硬合金、CBN(立方晶窒化ホウ素)、ダイヤモンド等を挙げることができる。このなかでも高い精度を得ることができる観点からダイヤモンドであることが好ましい。ダイヤモンドには天然及び合成のものがあるが特に限定されることはない。
切削時におけるロール基体31の回転速度は特に限定されるものではないが、300rpm以上600rpm以下であることが好ましい。ロール基体31の直径にもよるが、例えば直径が400mmの場合、300rpm未満だと切削速度が遅いため、切削チップへの負担が大きくなり精度良く加工することができなくなる虞がある。600rpmはおおよそ旋盤の最大回転速度である。ロール基体31の回転速度を上げていくとロール基体の振れが生じやすくなり、かかる観点から400rpm程度が好ましい。
上記した切削チップ40を用いて次のように溝33及び環状突起32を形成する。図12、図13、図14に模式図を示した。図12(a)、図12(b)、図13(a)、図13(b)、図14の順に切削が進められていく。
図12(a)に示したように切削チップ40によりロール基体31の外周面からロール基体31の回転軸の軸心方向に向けていわゆる切り込みをおこなう。このとき、切り込みの方向は、ロール基体31の回転軸の軸心方向に向かいつつ、送り方向(紙面左方向)にも進むような斜め方向とする。より具体的には、図12(a)にXIで示したように、切削チップ40のうち、切削時において送り方向と反対側(紙面右方向)となるバイト角度θa1と同じ角度となるように送りつつ、回転軸の軸心方向に切り込んでいく。そして図12(b)の位置にまで切り込んで1つの溝33が形成される。
このように斜めに切り込みをおこなうことによって、この部分を微視的に誇張して表すと図15に示したように面32bを階段状に形成することができ、微小な凹凸を構成することが可能となる。上記のようにこれが光偏向部25の辺25bの微小な凹凸を形成する。
またこのような斜めに切り込みを行うことによって、形成されつつある環状突起32を図12(a)にEで示した方向に倒そうとする切削チップ40からの力を小さく抑え、環状突起32がEの方向に曲がるように倒れることを抑制することができる。特に切削が進むにつれて切削チップ40の切れ性が低下するにともない、環状突起32にかかる当該倒そうとする力が大きくなる傾向にある。これに対して、切削の開始部位から終了部位の全部に亘って当該倒そうとする力を抑制できるので、切削ロールの部位によって溝形状が異なることを抑制し、形状安定性を向上させることができる。
次に、図12(b)に示した状態から、切削チップ40を溝33からロール基体31の半径方向に後退させる。そして、溝33のピッチの半ピッチ分送り、図13(a)に示したように環状突起32の外周部位置までロール基体31の半径方向に切り込む。これにより環状突起32の外周部が形成される。
そのあと、切削チップ40をロール基体31の半径方向に後退させ、次の溝33を切削するために切削チップ30を送る。このときの送り量r(mm)は、図13(b)に示したように、溝33のピッチp(mm)の半ピッチ(p/2)分から、上記した斜め方向に切り込む分を考慮した量s(mm)を差し引いた量とする。ここで差し引く量s(mm)は、溝33の底面と、切削チップ40を切り込みのために移動を開始する位置と、の距離をt(mm)としたとき、
s=t・tan(θa1
で表わされる。従って送り量r(mm)は、
r=p/2−(t・tan(θa1))
となる。
そして図13(a)、図13(b)で説明したと同様に切り込み、図14のように溝33及び環状突起32を形成する。
ここで、切り込み速度は、2(μm/回転)以上、5(μm/回転)以下であることが好ましい。さらに、切削チップ(切削工具)が切り込み深さに達したとき、そのままの姿勢でロール基体31を1回転以上させてから切削チップ40を後退させることが好ましい。これにより、ロール基体31の円周方向全周にわたり所定の切り込み深さになる。1回転未満で切削チップ40を後退させると、円周方向で部分的に所定の切り込み深さまで達していない箇所ができてしまう虞があり、外観不良や光学性能にばらつきが生じることがある。
以上のようにしてロール基体31の周方向に延びるとともに、ロール基体31の回転軸方向(幅方向)全長に亘って並列されるように環状突起32及び溝33を形成する。本製造方法では、上記したように、切り込みの方向が、送り方向を含みつつロール基体31の回転軸に近付ける方向であり、その角度をバイト角度に合わせてマクロ的に見て斜めに切削することで、微視的には突起32の面32bに微小の凹凸形状を形成することができる。これによりこの面が転写された光偏向部25の下部の面に凹凸の光散乱面が形成される。
上記切削により環状突起32及び溝33が形成された後には、ロール金型の表面が腐食することを防止したり、後述する光透過部構成組成物の離型性向上などの観点から、ロール金型の表面をクロム等でメッキすることが好ましい。
次に、上記ロール金型30を用いて光偏向層23の作製する方法を説明する。図16に概要図を示した。はじめに基材層22上に光透過部24を形成する。すなわち、図16からわかるようにロール金型30とこれに対向するように配置されたニップロール50との間に、基材層22となる基材22’を挿入する。このとき、基材22’とロール金型30との間に光透過部を構成する組成物を矢印XVaで示したように供給しながらロール金型30及びニップロール50を回転させてシートを矢印XVbの方向に送る。これによりロール金型30の表面に形成された溝33内に光透過部を構成する組成物が充填され、該組成物がロール金型30の表面形状に沿ったものとなる。
ここで、光透過部を構成する組成物としては、例えば、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部24の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S1)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性及びコストの観点から、光透過部を構成する組成物の全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。一般に、光重合開始剤は少なくとも部分的に可溶性(例えば、樹脂の処理温度で)であり、重合された後、実質的に無色である。光重合開始剤を着色(例えば、黄色に着色)していてもよいが、光透過部を構成する組成物を硬化させて光透過部を形成したときに実質的に無色になることを条件とする。
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(S1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ロール金型30と基材22’との間に挟まれ、ここに充填された光透過部を構成する組成物に対し、基材22’側から不図示の光照射装置により矢印XVcのように光を照射する。これにより、光透過部構成組成物を硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、矢印XVbのようにシートを送りつつ離型ロールによりロール金型30から基材層22及び成形された光透過部24を離型する。これにより基材層22に光透過部24が積層された中間シートEを得る。
次に、中間シートEに対して光透過部24間の凹部に光偏向部25を構成する組成物を過剰に供給し、余剰分をドクターブレードで掻き落とす。これにより光透過部24間の凹部に光偏向部を構成する組成物を押し込んで充填させるとともに、余剰な組成物を除去することができる。このようにして充填された組成物を適切な方法で硬化させることによって、光偏向部25を形成することができる。このようにして、基材層22上に光偏向層23を形成することが可能である。
形成された光散乱層23上に接着剤を積層して接着層27とし、基材層22にハードコート層21を接着剤等により貼り付ける。これにより採光シート20となる。
図17は第二の形態を説明する図であり、図8に相当する図である。第二の形態では、光偏向部25の代わりに光偏向部125が適用された光偏向層123を有する採光シート120が形成されている。そして、採光シート120がパネル13に貼付されて採光パネル112となる。従って、採光シート120は、光偏向部25の代わりに光偏向部125が適用され、他の構成は採光シート20と同じなので、ここでは光偏向部125について説明し、他の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
光偏向部125は、上記した光偏向部25の形態に加え、光を散乱して反射又は散乱して透過するための材料が充填されている。光を散乱させるための材料は特に限定されることはないが、例としては、散乱反射については、白色顔料や銀色顔料等の光散乱剤を混ぜた硬化性樹脂が挙げられる。白色顔料は、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。これにより効率よく光を散乱反射させることができる。また、硬化性樹脂は光透過部24を構成する材料と同様のものを用いることができる。
一方、散乱反射、散乱透過のための構成については、光偏向部125を透明なバインダー樹脂と該バインダー樹脂とは屈折率が異なる透明な光散乱剤とを混合させた材料で構成することができる。透明なバインダー樹脂としては光透過部24と同様なものを用いることができる。一方、当該透明な光散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、アイカ工業株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、光散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、光散乱剤は中空粒子にすることも可能である。
このような光偏向部125を有する採光シート120では、上記したLS1、LS2のような光路の加え、太陽光LS3のように光を導くことができる。図17にLS3の光路を示した。
図17からわかるように光LS3はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS3で採光パネル112に照射される。採光パネル112に入射した光LS3は採光パネル112を透過するうちに光偏向層123の光透過部24内を進む。光透過部24内では、該光透過部24の屈折率をN、室外の屈折率をNとすれば、光LS3は、式(8)で表される太陽光進行角θP3で進む。
Figure 2014126713
太陽光進行角θP3で進行した太陽光が光透過部24と光偏向部125との界面に達したとき、光透過部24と光偏向部125との屈折率差、及び太陽光進行角θP3の関係が全反射臨界角以下であれば図17のように界面を超えて光偏向部125内に進行する。ここで、光偏向部125は光を散乱させて室内側に出射することができるので、太陽光を散乱してまぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
このように、採光シート120では、入射光の条件により全反射することなく光偏向部内に入った光も散乱して直達光でなくしてから室内側に出射することができる。他の効果については上記採光シート20と同様である。
従来の技術は、太陽光が拡散せずに、室内に直接達する光(直達光)が多い場合があり、室内の人がまぶしさを感じてしまう不具合があった。結果として、室内が明るくなったとしても、まぶしさ防止のため、カーテンやブラインドをしてしまい、室内が暗くなってしまう不具合があった。本発明によればこれを抑制することができ、室内を従来のように暗くすることなく、まぶしさをも防止することができる。
1 建物
10 採光装置
11 枠
12 採光パネル
13 パネル
20 採光シート
21 ハードコート層
22 基材層
23 光偏向層
24 光透過部
25 光偏向部
27 接着層

Claims (5)

  1. シート面が鉛直となるように建物開口部に配置されるシート状である採光シートであって、
    透光性を有するシート状の基材層と、
    前記基材層の一方の面に形成され、光を偏向する光偏向層と、を備え、
    前記光偏向層は、
    前記基材層の一方の面に沿って複数並べて配置された光を透過する光透過部と、
    隣り合う前記光透過部間に配置され、該光透過部よりも低い屈折率の材料が充填された光偏向部と、を有し、
    前記採光シートが前記建物開口部に配置された姿勢で、前記光偏向部は前記採光シートの厚さ方向断面において、その下部となる側の辺に微小な凹凸形状を有している、採光シート。
  2. 前記微小な凹凸が、前記下部となる側の片に沿った階段状の凹凸である請求項1に記載の採光シート。
  3. 前記光偏向部には光を散乱させる材料が含有されている請求項1又は2に記載の採光シート。
  4. 透光性を有する板状のパネルと、
    前記パネルの一方の面に貼付される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の採光シートと、
    少なくとも前記パネルの周囲を囲むように配置される枠と、を備える採光装置。
  5. 壁に形成された開口部に請求項4に記載の採光装置が設置された建物。
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