JP2014125608A - 導電性熱可塑性樹脂組成物及びその成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】材料の比重の増加を抑えるべく、導電性フィラーの添加量を低減した配合において、安定して10Ω/□以下、好ましくは10〜10Ω/□の表面固有抵抗率をバラツキなく得ることができる導電性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)20〜70質量%と、ゴム質重合体の存在下に芳香族アルケニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体をグラフト重合したグラフト共重合体(Bg)と、シアン化ビニル化合物単量体および芳香族アルケニル化合物単量体を共重合してなる硬質共重合体(Br)とを含むスチレン系樹脂(B)80〜30質量%との合計100質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、導電性無機充填剤(C)5.0〜10.0質量部と、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)1.5〜30質量部とを配合してなる導電性熱可塑性樹脂組成物及びその成形品。
【選択図】図1

Description

本発明は、導電性熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に関するものである。詳しくは、優れた導電性(表面固有抵抗率)を有すると共に、この良導電性を成形品内で安定して発現する樹脂製品を得ることができる導電性熱可塑性樹脂組成物と、この導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる導電性熱可塑性樹脂成形品に関する。
熱可塑性樹脂等の有機高分子材料は一般的に極めて電気絶縁性が高く、導電性に乏しい樹脂本来の性質のため、静電気の発生が避けられず、一端発生した静電気は逃げずに蓄積される傾向がある。このため、この静電気の蓄積により熱可塑性樹脂製部品が空気中のほこりを吸引付着して故障の原因となったり、熱可塑性樹脂製部品の組立工程中にその生産能率を低下させたりしていた。また、静電気が原因で電子部品が損傷する問題も生じていた。
この問題を防止するために、例えば、パチンコ台レール、ATMの電気機器等において、静電気除去のために要求される表面固有抵抗率は概ね10Ω/□以下とされ、重要部品によっては10Ω/□以下、更には10Ω/□以下が要求されている。
そこで、従来、有機高分子材料の帯電を防止する対策として、帯電防止剤の添加、或いは、金属粉、金属繊維、金属メッキしたガラス繊維、炭素繊維などの導電性フィラーを添加する方法が採用されている(例えば、特許文献1〜4)。
特開2004-331710号公報 特開2008-274029号公報 特開2002-309006号公報 特開2008-248056号公報
しかし、帯電防止剤の添加によって得られる導電性能は、表面固有抵抗率として10〜1012Ω/□程度であって、例えば表面固有抵抗率10Ω/□や10Ω/□以下、更には10Ω/□以下を満たすことは出来ない。また、導電性フィラーを添加した場合には、10Ω/□以下の表面固有抵抗率を発現することも可能であるが、表面固有抵抗率を下げるために導電性フィラーの添加量を増加させると、フィラー添加量の増加による成形品の外観低下の問題や、樹脂組成物の比重が主要なエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート樹脂の1.2g/cmを超えてしまうと、最終製品の重量増加に伴う製品設計の見直しを要するなど欠点が生じる。
また、比重の増加を懸念して導電性フィラーの添加量を抑制すると、成形品の測定箇所によっては表面固有抵抗率が10〜10Ω/□といったように大きくばらつく結果となる。
本発明は、材料の比重の増加を抑えるべく、導電性フィラーの添加量を低減した配合において、安定して10Ω/□以下、好ましくは10〜10Ω/□の表面固有抵抗率をバラツキなく得ることができる導電性熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とからなる樹脂成分に対して、導電性付与成分として、導電性無機充填剤(C)と、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)とを併用することにより、導電性無機充填剤(C)の配合量を抑えた上で、バラツキのない安定な表面固有抵抗率を得ることができることを見出した。
本発明はこのような知見の基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] ポリカーボネート樹脂(A)20〜70質量%と、ゴム質重合体の存在下に芳香族アルケニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体をグラフト重合したグラフト共重合体(Bg)と、シアン化ビニル化合物単量体および芳香族アルケニル化合物単量体を共重合してなる硬質共重合体(Br)とを含むスチレン系樹脂(B)80〜30質量%との合計100質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、導電性無機充填剤(C)5.0〜10.0質量部と、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)1.5〜30質量部とを配合してなることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
[2] [1]において、グラフト共重合体(Bg)のゴム質重合体の量が、スチレン系樹脂(B)中において5〜25質量%であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
[3] [1]又は[2]において、グラフト共重合体(Bg)は、アセトン溶媒に対する不溶分を50〜99質量%含み、かつ、グラフト共重合体(Bg)のアセトン溶媒に対する可溶分の0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.3〜0.7dl/gであることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、硬質共重合体(Br)の重量平均分子量が、50,000〜300,000であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、グラフト共重合体(Bg)と硬質共重合体(Br)との合計におけるアセトン可溶分の重量平均分子量が100,000〜600,000であり、シアン化ビニル系単量体と芳香族アルケニル化合物単量体の重量組成比が、20/80〜35/65の範囲であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、導電性無機充填剤(C)が炭素繊維であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
[7] [1]ないし[6]のいずれかに記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、導電性無機充填剤(C)の配合量を抑えた上で、10Ω/□以下、好ましくは10〜10Ω/□の表面固有抵抗率をバラツキなく安定して得ることができる。このため、導電性無機充填剤(C)の高充填による材料比重の増加や外観不良の問題を防止して、良好な導電性熱可塑性樹脂製部品を提供することができる。
実施例における表面固有抵抗率の測定点を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
〔導電性熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)(以下「(A)成分」と称す場合がある。)20〜70質量%と、ゴム質重合体の存在下に芳香族アルケニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体をグラフト重合したグラフト共重合体(Bg)と、シアン化ビニル化合物単量体および芳香族アルケニル化合物単量体を共重合してなる硬質共重合体(Br)とを含むスチレン系樹脂(B)(以下「(B)成分」と称す場合がある。)80〜30質量%との合計100質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、導電性無機充填剤(C)5.0〜10.0質量部と、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)1.5〜30質量部とを配合してなることを特徴とする。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシジアリールアルカンから得られる樹脂であり、任意に枝別れしていてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は公知の方法により製造される。例えば、ジヒドロキシまたはポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させる方法や溶融重合法により製造される。また、コンパクトディスク等からリサイクルしたものを使用してもよい。
ジヒドロキシジアリールアルカンとしては、例えば、ヒドロキシ基に対してオルトの位置にアルキル基を有するものが使用される。ジヒドロキシジアリールアルカンの好ましい具体例としては、4,4−ジヒドロキシ−2,2−ジフェニルプロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールAおよびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
また、分岐したポリカーボネートは、例えば、反応に用いるジヒドロキシ化合物の一部、例えば0.2〜2モル%をポリヒドロキシ化合物で置換することにより製造される。ポリヒドロキシ化合物の具体例としては、フロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼンなどが挙げられる。
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は15,000〜35,000であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が15,000以上であれば、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性がより高くなり、35,000以下であれば、本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物の成形性がより高くなる。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)は、機械的強度、耐衝撃性、流動性のバランスが特に優れることから、17,000〜25,000であることがより好ましい。
なお、本発明において、粘度平均分子量(Mv)とは、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度[ηsp]を次式に挿入して求めた値である(但し[η]は極限粘度)。
[ηsp]/c=[η]+0.45×[η]
[η]=1.23×10−4×M0.83
c=0.7(濃度)
ポリカーボネート樹脂(A)は1種を単独で使用してもよいし、原料組成や粘度平均分子量(Mv)などの異なるものの2種以上を混合して使用してもよい。
本発明において、樹脂成分中のポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量を100質量%とした際の、20〜70質量%であり、20〜50質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の含有量が20質量%未満であると、表面固有抵抗率が大きくなり導電性能が得られない。また、70質量%を超えても表面固有抵抗率が大きくなり、導電性能が得られない。
[スチレン系樹脂(B)]
スチレン系樹脂とは、スチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどの芳香族アルケニル化合物およびこれと共重合可能な単量体を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合、沈殿重合または乳化重合に供することにより得られる樹脂である。
本発明では、スチレン系樹脂(B)として、ゴム質重合体の存在下に芳香族アルケニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体をグラフト重合したグラフト共重合体(Bg)と、シアン化ビニル化合物単量体および芳香族アルケニル化合物単量体を共重合してなる硬質共重合体(Br)とを用いる。
<グラフト共重合体(Bg)>
グラフト共重合体(Bg)は、ゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)およびシアン化ビニル化合物単量体(b)をグラフト重合させて得られるものである。また、必要に応じて共重合可能な他の単量体(c)をグラフト重合させてもよい。グラフト共重合体(Bg)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(ゴム質重合体(B1))
グラフト共重合体(Bg)におけるゴム質重合体(B1)としては、例えば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン(ポリシロキサン)−アクリル複合ゴムなどが挙げられる。これらの中では、得られる成形品の耐衝撃性が良好になることから、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、ジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン−アクリル複合ゴムが好ましい。ゴム質重合体(B1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ここで、上記ジエン−アクリル複合ゴムのジエン成分は、ブタジエン単位を50質量%以上含むものが好ましく、具体的には、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等である。
ジエン−アクリル複合ゴムにおけるアクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性単量体とが重合されたものである。
ここで、アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性単量体としては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジエン−アクリル複合ゴムの複合化構造としては、ジエン系ゴムのコア層の周囲がアルキル(メタ)アクリレート系ゴムで覆われたコアシェル構造、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムのコア層の周囲がジエン系ゴムで覆われたコアシェル構造、ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが相互にからみあっている構造、ジエン系単量体とアルキル(メタ)アクリレート系単量体がランダムに配列した共重合構造等が挙げられる。
上記シリコーン−アクリル複合ゴムのシリコーン成分は、ポリオルガノシロキサンを主成分とするものであり、中でも、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましい。シリコーン−アクリル複合ゴムにおけるアクリルゴム成分は、ジエン−アクリル複合ゴムのアクリルゴム成分と同様である。
シリコーン−アクリル複合ゴムの複合化構造としては、ポリオルガノシロキサンゴムのコア層の周囲がアルキル(メタ)アクリレート系ゴムで覆われたコアシェル構造、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムのコア層の周囲がポリオルガノシロキサンゴムで覆われたコアシェル構造、ポリオルガノシロキサンゴムとアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが相互に絡み合っている構造、ポリオルガノシロキサンのセグメントとポリアルキル(メタ)アクリレートのセグメントが互いに直線的および立体的に結合しあって網目状のゴム構造となっている構造等が挙げられる。
ゴム質重合体(B1)は、例えば、ゴム質重合体(B1)を形成する単量体に、ラジカル重合開始剤を作用させて乳化重合することによって調製される。乳化重合法による調製方法によれば、ゴム質重合体(B1)の粒子径を制御しやすい。
ゴム質重合体(B1)の平均粒子径は、得られる成形品の耐衝撃性をより高くできることから、0.1〜0.6μmであることが好ましい。
また、ゴム質重合体(B1)の含有量は、スチレン系樹脂(B)中において5〜25質量%であることが好ましい。ゴム質重合体(B1)の含有量が5質量%以上であれば、得られる成形品の耐衝撃性をより高くでき、25質量%以下であれば、成形性がより高くなり、成形品の外観が良好になる。
(芳香族アルケニル化合物単量体(a))
芳香族アルケニル化合物単量体(a)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。芳香族アルケニル化合物単量体(a)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(シアン化ビニル化合物単量体(b))
シアン化ビニル化合物単量体(b)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルである。シアン化ビニル化合物単量体(b)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(その他の共重合可能な化合物単量体(c))
芳香族アルケニル化合物単量体(a)やシアン化ビニル化合物単量体(b)と共重合可能なその他の化合物単量体(c)としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。その他の共重合可能な化合物単量体(c)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(単量体の割合)
グラフト共重合体(Bg)における芳香族アルケニル化合物単量体(a)と、シアン化ビニル化合物単量体(b)、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能な化合物単量体(c)の割合には特に制限はないが、耐衝撃性と成形性のバランスに優れることから、好ましくは、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位が50〜90質量%、シアン化ビニル化合物単量体(b)単位が10〜50質量%、その他の共重合可能な化合物単量体(c)単位が0〜40質量%である(ただし、(a)と(b)と(c)の合計が100質量%)。
(グラフト共重合体(Bg)のアセトン不溶分、アセトン可溶分)
グラフト共重合体(Bg)は、アセトン溶媒に対する不溶分(アセトン不溶分)を50〜99質量%含み(即ち、アセトン可溶分の含有量が1〜50質量%)、かつ、アセトン溶媒に対する可溶分(アセトン可溶分)の0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.3〜0.7dl/gであることが好ましい。アセトン不溶分が50質量%以上であれば、得られる成形品の外観および成形性がより向上する。また、アセトン可溶分の上記還元粘度が0.3dl/g以上0.7dl/g以下であれば、得られる成形品の外観および成形性がより向上する。
なお、アセトン可溶分の測定方法は以下のとおりである。
グラフト共重合体2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱後、遠心分離機を用い1500rpmにて30分間遠心分離する。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤する。その質量差分([グラフト共重合体2.5g]−[乾燥後の試料の質量])より、グラフト共重合体に対するアセトン可溶分の含有比率(%)を求めることができる。
また、アセトン可溶分の還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定する。
ここで、アセトン可溶分は、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を有する重合体であって、ゴム質重合体(B1)にグラフトしていない重合体である。アセトン可溶分は、ゴム質重合体(B1)に芳香族アルケニル化合物単量体(a)およびシアン化ビニル化合物単量体(b)をグラフト重合させる際に同時に生成することが多い。
(グラフト共重合体(Bg)の製造方法)
グラフト共重合体(Bg)は、ゴム質重合体(B1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)と、シアン化ビニル化合物単量体(b)と、必要に応じて、その他の共重合可能な化合物単量体(c)とをグラフト重合させることにより得られる。
グラフト共重合体(Bg)の重合方法には制限はないが、乳化重合法が好ましい。また、グラフト重合時には、グラフト共重合体(Bg)の分子量やグラフト率を調整するために、各種連鎖移動剤を添加してもよい。
<硬質共重合体(Br)>
本発明では、耐熱性や流動性などの特性改良のため、スチレン系樹脂(B)は、シアン化ビニル化合物単量体と芳香族アルケニル化合物単量体を共重合してなる硬質共重合体(Br)を含む。
硬質共重合体(Br)を形成する単量体成分としては、先のグラフト共重合体(Bg)で紹介した芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)、および、必要に応じて用いられるその他の共重合可能な化合物単量体(c)が挙げられる。また、硬質共重合体(Br)を形成する単量体成分のシアン化ビニル化合物単量体および芳香族アルケニル化合物単量体、必要に応じて用いられるその他の共重合可能な化合物単量体の重量比率は、上記のグラフト共重合体(Bg)における重量比率と同様の範囲とすることができる。
硬質共重合体(Br)の重量平均分子量は、50,000〜300,000の範囲が好ましく、さらに好ましくは100,000〜250,000の範囲である。硬質共重合体(Br)の重量平均分子量がこの範囲よりも低い場合には、得られる成形品の耐衝撃性が不足し、また、この範囲を超えた場合には成形加工性が低下する。
尚、硬質共重合体(Br)の重量平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)を用いて測定し、標準ポリスチレン換算法にて算出される値とする。測定装置としては、例えば東ソー(株)製のGPCを用いることができる。
硬質共重合体(Br)についても1種を単独で用いても良く、異なる組成、分子量のものを2種以上混合して用いても良い。
本発明においては、スチレン系樹脂(B)、即ち、グラフト共重合体(Bg)と硬質共重合体(Br)との合計におけるアセトン可溶分の重量平均分子量が100,000〜600,000、特に100,000〜550,000、とりわけ150,000〜450,000の範囲であることが好ましい。さらに、シアン化ビニル系単量体と芳香族アルケニル化合物単量体の重量組成比は、20/80〜35/65の範囲が好ましく、より好ましくは25/75〜30/70である。この範囲外では分散性や熱安定性が低下する。
また、スチレン系樹脂(B)中のグラフト共重合体(Bg)と硬質共重合体(Br)は、スチレン系樹脂(B)のゴム質重合体(B1)の含有量が、前述の如く、5〜25質量%となるように用いることが好ましい。
<スチレン系樹脂(B)の含有量>
本発明において、これらグラフト共重合体(Bg)と硬質共重合体(Br)からなるスチレン系樹脂(B)の樹脂成分中の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量を100質量%とした際、80〜30質量%であり、80〜50質量%であることが好ましい。スチレン系樹脂(B)の含有量が30質量%未満であると、表面固有抵抗率が大きくなり導電性能が低下し、80質量%を超えても表面固有抵抗率が大きくなり導電性能が低下する。
[導電性無機充填材(C)]
本発明で用いる導電性無機充填材(C)の形態は、繊維または粉末であって、例えば、炭素繊維等の無機繊維、無機繊維に金属コーティングしたもの、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の無機粉末、金属繊維、金属メッキしたガラス繊維、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属や合金、およびそれらの酸化物の繊維または粉末などが挙げられる。
これらの導電性無機充填材(C)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性無機充填材(C)の好ましい形態としては繊維状のものが挙げられ、これらの中でも、少ない配合量で良好な帯電防止性を発揮する上に、剛性等の機械的特性の向上効果も奏されることから、炭素繊維が好ましい。また、炭素繊維の中でもチョップドファイバーであることがより好ましい。さらに好ましくは、水性ポリウレタン樹脂や水溶性ポリアミドで表面を処理されたものが好ましい。
ここで、表面処理剤としての水性ポリウレタン樹脂としては、エーテル系、エステル系、カーボネート系、アジペート系等を特に制限なく用いることができる。また、水溶性あるいは水分散性(水エマルジョン系)のいずれを用いても良い。また、水分散性としては、自己乳化タイプ、乳化剤を含む強制乳化タイプのいずれを用いても良い。
自己乳化タイプのポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂中に水との親和性を有するエチレンオキサイドブロックを導入したノニオン系タイプや、アニオン性官能基を導入したアニオン系タイプ、これらの両方を合わせ持つノニオン/アニオン共存系タイプ等が挙げられる。
後述のように、表面処理剤としてシランカップリング剤を併用する場合は、シランカップリング剤の凝集を抑制し、エマルジョン安定性に優れるノニオン系あるいはノニオン/アニオン共存系タイプが特に好適である。
強制乳化タイプに用いる乳化剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系のいずれを用いても良いが、一般的なウレタン系乳化剤であるノニオン系あるいはアニオン系が好適である。また、後述のように、表面処理剤としてシランカップリング剤を併用する場合は、ノニオン系あるいはノニオン/アニオン共存系が、シランカップリング剤の凝集を抑制し、エマルジョン安定性が良好な点から特に好適である。
また、ポリウレタン樹脂の中でも無黄変性タイプを用いることが、得られる成形品の耐候性向上の点から好ましい。
水性ポリウレタン樹脂の表面処理剤を調製する際には、ポリウレタン樹脂水溶液あるいは水分散溶液(以下、単にポリウレタン溶液と称す。)を原料に用いることが好ましいが、このポリウレタン溶液中に、アミノシランカップリング剤等のシランカップリング剤を配合して用いることにより、炭素繊維束の集束性を向上できることは公知であり、本発明においても採用可能である。しかしながら、表面処理剤中に、不定量の反応性官能基を有する成分が存在することは、架橋反応の制御を阻害する恐れがあるため、好ましくない。
また、表面処理剤としてのポリウレタン溶液中のポリウレタン樹脂成分量は、ポリウレタン溶液の水以外の総成分量100質量%に対して、70〜99質量%であることが好ましい。これは、水性ポリウレタン樹脂成分が、炭素繊維束の集束性の中的役割を果たしていることによるもので、その配合量が70質量%未満では、十分な集束性を付与することができず、99質量%を超えると、樹脂との接着性を向上させる表面処理剤としての有効成分量が不十分となる恐れがある。
このような表面処理剤としてのポリウレタン溶液としては、大日本インキ化学製の水性ウレタン樹脂ハイドランシリーズ(HW−301、311、312B、337、111、112、920、930、935、940、AP−70、ボンディック1940NS、2210)、吉村油化学製ユカレジンU−004、007、009、バイエル製インプラニールDLS等の市販品を用いることができる。
表面処理剤としての水溶性ポリアミドとしては、主鎖または側鎖に第3級アミンを有するポリアミド、主鎖にポリアルキレングリコール成分を有するポリアミドが挙げられる。
第3級アミンを有するポリアミドを得るためには、第3級アミンを主鎖に含むモノマー(例えば、アミノエチルピペラジン、ビスアミノプロピルピペラジン等)、側鎖に第3級アミンを含むモノマー(例えば、α−ジメチルアミノε−カプロラクタム等)を用いればよい。
水溶性ポリアミドにはさらに界面活性剤が添加されたものがより好ましい。界面活性剤の一例としては、ベタイン型のもの等が挙げられる。
このような水溶性ポリアミドとしては、例えば、松本油脂製薬(株)製「KP2007」や「KP2021A」、東レファインケミカル社製「AQナイロン」等が市販されている。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物において、導電性無機充填材(C)の含有量は、樹脂成分であるポリカーボネート樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100質量部に対して5.0〜10.0質量部であり、好ましくは7.0〜10.0質量部である。導電性無機充填材(C)の含有量が上記下限未満であると、表面固有抵抗率が大きくなり導電性を発現しなくなり、上記上限を超えると、比重が増加し、製品重量が増加してしまう。
[アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)]
本発明で使用されるアルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)のアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、ヘキサメチレンオキサイド等が挙げられ、好ましくはエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドである。
アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)の具体例としては、上記アルキレンオキサイドから選ばれた1
種又は2 種以上の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。具体的には、ポリエチレンオキサイドやエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体が好ましく用いられる。
また、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)のその他の例としては、ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールとジカルボン酸からなるポリエーテルエステル成分とポリアミド形成成分との反応によって得られるポリエーテルエステルアミドやポリ(アルキレンオキサイド)グリコールの両末端をアミノ化又はカルボキシル化したものとジカルボン酸又はジアミンからなるポリエーテル形成成分とポリアミド形成成分との反応によって得られるポリエーテルアミド等のポリアミドエラストマーも挙げられる。
上記のポリ(アルキレンオキサイド)グリコールとして、ポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキサイド)グリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック又はランダム共重合体及びエチレンオキサイドとテトラヒドロフランとのブロック又はランダム共重合体、及びこれらの化合物の両末端がアミノ化又はカルボキシル化したものなどが用いられる。これらの中でも、帯電防止性が優れる点で特にポリ(エチレンオキサイド)グリコール、及びその両末端をアミノ化又はカルボキシル化したものが好ましく用いられる。
また、このポリアミドエラストマーで用いられるジカルボン酸成分としては、炭素原子数4〜20のものが好ましい。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、及び3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸のなどの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジ酸(デカンジカルボン酸)などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、特にテレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカンジ酸が重合性、色調及び物性の点から好ましく用いられる。
上記ジアミン成分としては、例えば芳香族ジアミン、脂環族ジアミン、脂肪族ジアミンが挙げられる。その中で、脂肪族ジアミンのヘキサメチレンジアミンが経済的理由から好ましく用いられる。
ポリアミド形成成分としては、具体的にはω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸、或いはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム及びラウロラクタムなどのラクタム、及びヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩及びヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩などのジアミン−ジカルボン酸の塩が挙げられ、特にカプロラクタム、12−アミノドデカン酸、ヘキサメチレンジアミノ−アジピン酸塩が好ましく用いられる。
上記アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)に適当なポリアミドエラストマーは、商業的に入手出来るか、又は公知の技術を使用して公知の商業的に入手し得るモノマ−から製造することができる。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物において、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)の含有量は、樹脂成分であるポリカーボネート樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)との合計100質量部に対して、1.5〜30質量部であり、好ましくは1.5〜10質量部である。アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)の配合量が上記上限を超える場合には所望の表面固有抵抗率が安定して得られなくなる。また、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)の配合量が上記下限未満の場合には、得られる成形品の表面固有抵抗率が大きくなり、静電気を抑制する効果が低下する。
[その他の成分]
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、上記のポリカーボネート樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、導電性無機充填剤(C)、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)以外の成分を含有していてもよく、例えば、必要に応じて、他の改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、染料、滑剤、顔料等を含有していてもよい。
[製造方法]
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、スチレン系樹脂(B)、導電性無機充填剤(C)及びアルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)と、必要に応じて用いられる他の成分とを、混合装置(例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、ナウターミキサー等)を用いて混合することにより得られる。さらに、混練装置(例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、コニーダ等)を用いて混練してもよい。
〔導電性熱可塑性樹脂成形品〕
本発明の成形品は、上記の本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物よりなる本発明の成形品は、低い表面固有抵抗率が成形品内で安定して得られ、導電性に優れ、しかも導電性無機充填剤(C)の低配合で良好な導電性が安定して得られるため、比重を小さくすることができる。また、安定な樹脂材料からなるため、2次加工性にも優れる。
本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物の成形法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらの中でも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下において、「部」は「重量部」を示す。
[使用材料]
以下の実施例及び比較例で用いた材料の詳細は以下の通りである。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
出光興産(株)製「FN1700A」(粘度平均分子量(Mv):17300)
<導電性無機充填材(C)>
三菱レイヨン(株)製「TR06U」(表面処理炭素繊維チョップドファイバー、表面処理剤:ポリウレタン)
<アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)>
日本ゼオン(株)製「ZEOSPAN8100」(エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体)
<他の導電性ポリマー(E)>
三洋化成(株)製「ペレスタットNC6321」(ポリエーテルエステルアミドエラストマー)
[硬質共重合体(Br−1)の製造]
以下のように、懸濁重合法により硬質共重合体(Br−1)を合成した。
窒素置換した反応器に水120部、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ0.002部、ポリビニルアルコール0.5部、アゾイソブチルニトリル0.3部、tert−ドデシルメルカプタン0.5部と、アクリロニトリル(AN)27部、スチレン(ST)73部からなるモノマー混合物を使用し、開始温度60℃から5時間昇温加熱後、120℃に到達させた。更に、120℃で4時間反応した後、重合物を取り出し、硬質共重合体(Br−1)を得た。
この硬質共重合体(Br−1)は、AN:ST(重量比)=27:73、重量平均分子量=105000であった。
[グラフト共重合体(Bg−1)の製造]
グラフト共重合体(Bg)としては、以下の方法で合成したグラフト共重合体(Bg−1)を用いた。
固形分濃度が35重量%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス100部(固形分として)に、n−ブチルアクリレート単位85重量%、メタクリル酸単位15重量%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス2部(固形分として)を攪拌しながら添加した。次いで、30分間攪拌を続けて、平均粒子径0.28μmの肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを得た。
得られた肥大化ブタジエン系ゴム質重合体ラテックスを反応器に仕込み、更に蒸留水100部、ウッドロジン乳化剤4部、デモールN(商品名、花王(株)製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)0.4部、水酸化ナトリウム0.04部、デキストローズ0.7部を添加した。次いで、攪拌しながら昇温させ、内温60℃の時点で、硫酸第一鉄0.1部、ピロリン酸ナトリウム0.4部、亜ジチオン酸ナトリウム0.06部を添加した後、下記成分を含む混合物を90分間にわたり連続的に滴下し、その後1時間保持して冷却した。
<滴下成分組成>
アクリロニトリル:30部
スチレン:70部
クメンハイドロパーオキサイド:0.4部
tert−ドデシルメルカプタン:1部
これにより得られたグラフト共重合体ラテックスを希硫酸で凝固した後、洗浄、濾過、乾燥して、グラフト共重合体(Bg−1)の乾燥粉末を得た。
このグラフト共重合体(Bg−1)のアセトン可溶分の含有量は27質量%であった。また、かかるアセトン可溶分の還元粘度は0.3dl/gであった。
なお、アセトン可溶分の測定方法は以下のとおりである。
グラフト共重合体(Bg−1)2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱後、遠心分離機を用い1500rpmにて30分間遠心分離した。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤した。その質量差分([グラフト共重合体2.5g]−[乾燥後の試料の質量])より、グラフト共重合体(Bg−1)に対するアセトン可溶分の含有比率(%)を求めた。
還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定した。
[評価方法]
得られた成形品の表面固有抵抗率及び比重は以下の方法で評価した。
<表面固有抵抗率>
(サンプルの準備)
100mm×100mm×2mmtの角板成形品を、射出成形機(日鋼製鋼所J75EII−P)を使用し、成形温度260℃、金型温度80℃の条件で作製し、表面固有抵抗率の測定に用いた。
(測定機器・測定方法)
上記成形品を用いて測定箇所を下記の5箇所に変更した以外はJIS K 7194(導電性プラスチックの4探針法(測定箇所5点)に準拠して測定を行った。
表面固有抵抗率は、三菱化学(株)製「ロレスターGP」を用い、20×35mmの測定端子を当てて測定した。
また、表面固有抵抗率は、5点の測定値の平均とバラツキ(最小値〜最大値)で表した。
(測定箇所)
測定箇所は、図1に示すA〜Eの5箇所とした。
(導電性能判定基準)
以下の基準で導電性能の良否を判定した。
○:成形品内で表面固有抵抗率10Ω/□以下を安定して測定できる。即ち、5箇所の測定箇所の表面固有抵抗率が何れも10Ω/□以下である。
△:1箇所のみ表面固有抵抗率10Ω/□を超えるが、その他の4箇所は表面固有抵抗率10Ω/□以下。
×:成形品内で表面固有抵抗率が大きくバラツク。
[比重]
射出成形機(日鋼製鋼所J75E−P)を使用して成形温度250℃、金型温度60℃で80mm×10mm×4mmのサンプル作製を行い、ISO 1183に準じて比重を測定した。
[実施例1〜13、比較例1〜7]
表1に示す配合割合で、各成分を混合した後、180〜260℃で2軸押出機(日本製鋼所製「KTX−30」)にて溶融混合し、ペレット化して導電性熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂ペレットを用いて前述の方法で評価を行い、結果を表1〜4に示した。
Figure 2014125608
Figure 2014125608
Figure 2014125608
Figure 2014125608
以上の結果より、樹脂成分としてポリカーボネート樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とを所定の割合で用い、導電性付与成分として導電性無機充填剤(C)とアルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)とを併用した本発明の導電性熱可塑性樹脂組成物によれば、表面固有抵抗率10Ω/□以下の低い表面固有抵抗率を成形品内でバラツキなく安定に得ることができ、また、導電性無機充填剤(C)配合量を少なくして比重を小さくすることができることが分かる。
これに対して、スチレン系樹脂(A)が多くポリカーボネート樹脂(B)が少ない比較例1や、逆に、ポリカーボネート樹脂(A)が多くスチレン系樹脂(B)が少ない比較例2では表面固有抵抗率が高い。
また、導電性無機充填剤(C)の配合量が少ない比較例3では表面固有抵抗率が高く、逆に導電性無機充填剤(C)の配合量の多い比較例4では、表面固有抵抗率は低いが高比重となる。
また、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)の配合量が少ない比較例5では、表面固有抵抗率のバラツキが大きく、逆にアルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)の配合量が多い比較例6では、表面固有抵抗率が大きいと共にバラツキも大きい。
アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)とは異なる導電性ポリマー(E)を用いた比較例7では、表面固有抵抗率が大きくそのバラツキも大きい。
1 成形品
A,B,C,D,E 表面固有抵抗率の測定箇所

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)20〜70質量%と、ゴム質重合体の存在下に芳香族アルケニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体をグラフト重合したグラフト共重合体(Bg)と、シアン化ビニル化合物単量体および芳香族アルケニル化合物単量体を共重合してなる硬質共重合体(Br)とを含むスチレン系樹脂(B)80〜30質量%との合計100質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、導電性無機充填剤(C)5.0〜10.0質量部と、アルキレンオキサイドを単量体単位として含む導電性ポリマー(D)1.5〜30質量部とを配合してなることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  2. 請求項1において、グラフト共重合体(Bg)のゴム質重合体の量が、スチレン系樹脂(B)中において5〜25質量%であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2において、グラフト共重合体(Bg)は、アセトン溶媒に対する不溶分を50〜99質量%含み、かつ、グラフト共重合体(Bg)のアセトン溶媒に対する可溶分の0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.3〜0.7dl/gであることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、硬質共重合体(Br)の重量平均分子量が、50,000〜300,000であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、グラフト共重合体(Bg)と硬質共重合体(Br)との合計におけるアセトン可溶分の重量平均分子量が100,000〜600,000であり、シアン化ビニル系単量体と芳香族アルケニル化合物単量体の重量組成比が、20/80〜35/65の範囲であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、導電性無機充填剤(C)が炭素繊維であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の導電性熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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