JP2014121811A - 水性ボールペン - Google Patents

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貴史 大野
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和彦 秋山
Hidenori Kudo
秀憲 工藤
Tenko Suzuki
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Abstract

【課題】本発明の課題は、水性ボールペンにおいて、潤滑性を向上し、ボール抱持部の摩耗を抑制する水性ボールペンを提供することである。
【解決手段】インキ収容筒の先端部に、チップ本体のボール抱持部にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、前記インキ収容筒内に、少なくとも顔料、顔料分散剤、溶剤、潤滑界面層形成性化合物からなる水性インキ組成物を直に収容する水性ボールペンであって、前記ボール表面、または前記ボール抱持部の前記ボールとの接触部分の少なくとも一方に炭素質膜が形成されるとともに、前記炭素質膜が炭素原子及び該炭素原子と結合した酸素原子とを有することを特徴とする水性ボールペン。
【選択図】 なし

Description

本発明は水性ボールペンに関し、さらに詳細には、潤滑性を向上し、ボール抱持部の摩耗を抑制する水性ボールペンに関するものである。
従来、軸筒内に、水性ボールペン用インキを収容したインキ収容筒を配設し、ボールをボール抱持部の底壁に載置し、チップ先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ先端縁より突出させて回転自在に抱持してなるボールペンチップを具備してなる水性ボールペンについてよく知られていた。
ボールペンは、インキ収容筒から流出してくるインキがボールの回転により紙等の記録体に転写されたり、浸透したりすることにより筆記が行われるものである。ボール及びボール抱持部内面が摩耗すると、ボールが滑らかに回転しなくなり筆記特性が大きく低下し、最終的には筆記ができなくなる。このため、ボール及びボール抱持部の摩耗の低減は重要な課題である。
こうした課題に鑑みて、ボールやボール抱持部の摩耗を低減するため、セラミックス製ボールを用いたり、金属製ボールの表面をダイヤモンド状炭素膜などの硬質の材料によりコーティングしたりすること(例えば特許文献1)などが試みられている。また、ボールによるボール抱持部の摩耗を低減するために、ボールだけでなくボール抱持部の表面を硬質材料によりコーティングすることも試みられている。
特開2004−338134号公報
しかし、特許文献1のように、ボールまたはボール抱持部の硬度だけを高くしても、それらの摩耗を防止して十分な耐久性を実現することは困難である。これは、ボールとボール抱持部との接触部位をミクロ的に見た場合には、ボールとボール抱持部との界面に筆記具用インキが介在することなく直接接触する境界潤滑の状態となる場合があるためである。このような現象は、低粘度のインキを用いた場合に生じやすい傾向がある。
さらに、顔料系インキでは、顔料粒子によって、ボールおよびボール抱持部の摩耗を促進しやすいため、筆記不良となる原因にもなりえるため、顔料系の水性ボールペン用インキでは、潤滑性を向上する対策が必要とされる。
こうした、ボール及びボール抱持部の摩耗を低減するためには、ボールとボール抱持部との界面に適量のインキが存在し、ボールとボール抱持部とが直接に接触していない状態とすることが重要である。
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.インキ収容筒の先端部に、チップ本体のボール抱持部にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、前記インキ収容筒内に、少なくとも顔料、顔料分散剤、溶剤、潤滑界面層形成性化合物からなる水性インキ組成物を直に収容する水性ボールペンであって、前記ボール表面、または前記ボール抱持部の前記ボールとの接触部分の少なくとも一方に炭素質膜が形成されるとともに、前記炭素質膜が炭素原子及び該炭素原子と結合した酸素原子とを有することを特徴とする水性ボールペン。
2.前記潤滑界面層形成性化合物が、有機酸基または有機酸残基を有することを特徴とする第1項に記載の水性ボールペン。
3.前記有機酸基が、ホスホリル基またはカルボキシル基であることを特徴とする第2項に記載の水性ボールペン 。
4.前記顔料が、金属顔料、金属酸化物顔料の中から1種以上選択することを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
5.前記顔料分散剤が、酸性樹脂であることを特徴とする第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の水性ボールペン 。
6.前記筆記具用水性インキ組成物に、剪断減粘性付与剤を含有し、20℃環境下、剪断速度0.001(sec-1)で、インキ粘度が、1000〜5000Pa・sであることを特徴とする第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
7.前記炭素質膜に含まれるsp炭素−炭素結合のsp炭素−炭素結合に対する比率が0.3以上である、第1項ないし第6項のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
8.前記炭素質膜に含まれる、炭素の全結合に対する酸素を含む結合の割合が、0.1〜0.5である、第1項ないし第7項に記載の水性ボールペン。
9.前記炭素質膜が、前記ボール表面、または前記ボール抱持部の少なくとも一方に、前記ボールとの接触部分に中間層を介して形成されており、前記中間層が、炭素及びケイ素を含むものである、第1項ないし第8項のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
10.前記水性ボールペンのボール径が、0.5mm以下であることを特徴とする第1項ないし第9項のいずれか1項に記載の水性ボールペン。」
とする。
本発明は、水性ボールペンにおいて、ボール及びボール抱持部の摩耗を低減する効果を奏するものである。
従来から、染料系のインキとは異なり、着色剤として顔料を用いると、インキ中で染料のように溶解せずに分散された状態で存在し、その顔料粒子によって、ボールおよびボール抱持部の摩耗を促進し、筆記不良となる原因にもなるため、本発明は、顔料系のインキにおいて、上記問題を解決するものである。
上記問題を解決するため、本発明の特徴としては、ボール表面、またはボール抱持部の前記ボールとの接触部分の少なくとも一方に炭素質膜が形成されるとともに、前記炭素質膜が炭素原子及び該炭素原子と結合した酸素原子とを有するボールペンチップを用いて、インキ収容筒内に、少なくとも顔料、顔料分散剤、有機溶剤、潤滑界面層形成性化合物からなる水性インキ組成物を直に収容する水性ボールペンであることを特徴とするものである。
・炭素質膜
前記ボール表面、または前記ボール抱持部の前記ボールとの接触部分の少なくとも一方に炭素質膜が形成されている。前記ボール表面と前記接触部分の両方に炭素質膜が形成されていてもよい。なお、ボール抱持部に炭素質膜が形成される場合には、ボールと接触する部分だけに炭素質膜が形成されていればよいが、製造の容易さや、使用による変形などの観点から、実際の接触部分よりも広い範囲に炭素質膜が形成されていてもよい。さらには、ボール抱持部の内面全部に炭素質膜が形成されていてもよい。
本発明において炭素質膜は、炭素原子及び該炭素原子と結合した酸素原子を有している。このため、ボールまたはボール抱持部の耐久性が高くなる。さらに本発明における炭素質膜はインキとの親和性が高いため、ボールとボール抱持部内部との隙間にインキが保持され、ボールとボール抱持部との直接の接触が生じにくくなる。この結果、ボールとボール抱持部とが直接に接触することによるボール及びボール抱持部内部の摩耗を低減でき、耐久性がさらに改良される。そして耐久性改良により使用に伴う書き味の劣化が生じにくいため、長期にわたり安定した筆記性能を満足するボールペンを実現することができる。また、ボール表面に炭素質膜を形成させた場合には、ボール表面とインキとの親和性が向上することにより、筆記時におけるボールと紙面との接触部へのインキの供給を安定化することができるので、より均一な筆跡及び良好な筆感を実現することが可能となる。
尚、炭素質膜において炭素原子は種々の形態で酸素原子と結合する。具体的には、C−O、O=C−O、およびC=Oの形態で炭素原子と酸素原子とが結合していると考えられる。ここで、C−Oは水酸基及びエーテル等を主に構成し、C=Oはカルボニル基及びケトン等を主に構成し、O=C−Oは主にカルボキシル基及びエステル等を主に構成していると考えられる。これらの結合によってインキとの親和性が高くなると考えられる。
また、炭素原子は、その他、炭素や水素とC−CまたはC−Hの形態で結合している。したがって、炭素の全結合(C−O、O=C−O、C=O、C−C、およびC−H)に対する酸素を含む結合(C−O、O=C−O、およびC=O)の割合(以下、COtotalという)が大きくなるほど、炭素質膜の表面における炭素質膜とインキとの親和性が高くなると考えられる。COtotalの値は炭素質膜とインキとの親和性が高まり、長期及び長距離にわたり安定した筆記性能を維持しやすいので0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。一方、COtotalの値が大きくなりすぎると、炭素同士の結合が減少して硬度が低下する傾向があるため、0.5以下とすることが好ましく、0.45以下であることがより好ましい。
本発明において炭素質膜は、任意の方法により、ボール表面、またはボール抱持部のボールとの接触部分に形成させることができる。炭素質膜は、ボール表面またはボール抱持部のいずれか一方に形成させればよいが、両方に形成させてもよい。ただし、ボール表面に炭素質膜を形成させると、ボールとボール抱持部との間の摩耗低減に加え、前記した通りインキの供給が安定化されるので、少なくともボール表面に炭素質膜を形成させることが好ましい。
尚、炭素質膜を形成する方法は、特に制限されない。例えば、炭化水素ガスを原料として用いるプラズマ化学気相堆積法(プラズマCVD法)又は触媒化学気相堆積法(CAT−CVD法)等により形成することができる。また、固体グラファイトを原料とするスパッタリング法、アークイオンプレーティング法等により形成することもできる。さらに、他の方法により形成してもよく、複数の方法を組み合わせて形成してもよい。
本発明において用いられる炭素質膜は、ダイヤモンド様膜(DLC膜)に代表されるsp炭素−炭素結合(グラファイト結合)及びsp炭素−炭素結合(ダイヤモンド結合)を含む膜である。DLC膜のようなアモルファス状態の膜であっても、ダイヤモンド膜のような結晶状態の膜であってもよい。しかしながら、本発明において炭素質膜は、sp炭素−炭素結合のsp炭素−炭素結合に対する比率が高いほうが、炭素質膜の硬度が高くなるので好ましい。具体的には、sp炭素−炭素結合のsp炭素−炭素結合に対する比率が0.3以上であることが好ましい。また、炭素質膜中にsp炭素が多く存在する場合、炭素質膜表面に存在する未結合手が相対的に多くなり、その結果、その結合手と反応する潤滑界面層形成性化合物が多くなり、十分な潤滑界面層が形成されるものと推測される。
また、通常、炭素質膜はsp炭素−水素結合及びsp炭素−水素結合を含んでいるが、本発明における炭素質膜には炭素−水素結合は必須の構成要素ではない。また、炭素質膜には本発明の効果を損なわない範囲でシリコン(Si)又はフッ素(F)等が添加されていてもよい。
また、炭素質膜へ炭素−酸素結合を導入する方法は、例えば酸素プラズマ又は酸素を含むガスのプラズマ等の照射により行えばよい。酸素を含むガスとしては水蒸気、空気等を用いることができる。また、酸素原子を含む有機物化合物等のガスを用いることもできる。さらに、酸素を含む雰囲気において炭素質膜に紫外線を照射したり、炭素質膜を酸化性の溶液に浸漬したりすることによって、酸素を導入することもできる。また、炭素質膜を成膜する際に雰囲気中の酸素濃度を高くすることにより、炭素質膜を成膜する際に炭素−酸素結合を導入することも可能である。炭素質膜の成膜直後にはその表面に未結合手が存在している。このため、成膜直後の炭素質膜を酸素を含む雰囲気に放置することにより未結合手と酸素とを反応させて炭素−酸素結合を導入することも可能である。また、炭素−酸素結合を導入してあれば、未結合手の炭素原子が存在していてもよい。
炭素質膜の膜厚は、特に限定されないが、0.001μm〜3μmの範囲が好ましく、0.005μm〜1μmの範囲であることがより好ましい。また、炭素質膜はボールまたはボール抱持部の表面に直接形成することができるが、ボールまたはボール抱持部と炭素質膜とをより強固に密着させるために、中間層を設けることが好ましい。中間層の材質としては、ボールまたはボール抱持部の種類に応じて種々のものを用いることができるが、例えばケイ素(Si)と炭素(C)、チタン(Ti)と炭素(C)又はクロム(Cr)と炭素(C)からなるアモルファス膜等の公知のものを用いることができる。その厚みは特に限定されるものではないが、0.001μm〜0.3μmの範囲が好ましく、0.005μm〜0.1μmの範囲であることがより好ましい。中間層は、例えば、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法、溶射法、イオンプレーティング法又はアークイオンプレーティング法等を用いて形成することができる。
・水性ボールペン用インキ組成物
本発明による水性ボールペンに用いられるインキは、顔料、顔料分散剤、潤滑界面層形成性化合物を含有することを特徴とする。ここで、潤滑界面層形成性化合物とは、ボールとボール抱持部内面との間に潤滑界面層を形成する作用を有する化合物である。顔料系の水性ボールペン用インキにおいて、この潤滑界面層はボールとボール抱持部とが直接接触して境界潤滑となることを抑制する作用を有する層である。
潤滑界面層形成性化合物は、上記のようにボールとボール抱持部との間に潤滑界面層を形成することができるものであれば特に限定されないが、具体的には、有機酸基または有機酸残基を有する有機化合物が挙げられる。
本発明において、有機酸基とは、例えばカルボキシル基(−COOH)、ホスホリル基(−P(=O)(OH))、スルホ基(−SOH)、スルフィノ基(−SOH)、またはヒドロキシフェニル基(−COH)などの、有機性の酸性基である。これらのうち、カルボキシル基またはホスホリル基が好ましく、カルボキシル基が特に好ましい。これらの基はより優れた摩耗防止効果を奏するが、これらの基が炭素質膜に対する親和性が特に高いためと考えられる(詳細後述)。また、有機酸残基とは、これらの有機酸基の水素が脱落した基、例えば−COO−、−P(=O)(OH)O−、−P(=O)(O−)、−SO−、−SO−、−CO−などである。これらの有機酸残基は、有機酸基が他の金属原子などの有機化合物と反応することによって形成される。本発明における潤滑界面層形成性化合物は、これらの有機酸基または有機酸残基を2つ以上、または2種類以上含んでいてもよい。
また、前記の有機酸基または有機酸残基に結合している有機基は目的とするインキに応じて適宜選択することができるが、特に限定されない。一般に、このような有機基は飽和または不飽和の炭化水素基であるが、例えば水性インキに用いられる潤滑界面層形成性化合物は、水溶性が高いことが望ましいので、水溶性を高める置換基を有することが好ましい。このような置換基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、ケトン基、アミノ基、アミド基、アルキレンオキシ基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられる。すなわち、前記の有機酸基が水溶性を高くする機能も発揮することがある。
このような潤滑界面層形成性化合物としては、脂肪酸、アルキルベンゼンスルホン酸、リン酸エステル、アミノ酸、N−アシルアミノ酸、脂肪族アミドアルキレンオキサイド付加物、テルペノイド酸誘導体、およびそれらの塩などが挙げられる。より具体的には、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル、アラニン、グリシン、リジン、スレオニン、セリン、プロリン、サルコシン、N-アシルサルコシン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドおよびそれらの塩などが好ましい潤滑界面層形成性化合物として挙げられる。これらは2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
また、有機酸基に、カルボキシル基(−COOH)、ホスホリル基(−P(=O)(OH))を有するものとしては、脂肪酸、リン酸エステルなどが挙げられるが、特に、ホスホリル基を有するリン酸エステル系界面活性剤を用いる方が、好ましい。これは、ホスホリル基が金属などに吸着しやすく、ボールとボール抱持部との間に強固な潤滑界面層を形成することで、より潤滑性を向上しやすく、ボールおよびボール抱持部の摩耗を抑制しやすくなるためである。リン酸エステルの種類としては、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、ラウリルアルコール系、トリデシルアルコール系、オクチルフェノール系、短鎖アルコール系等が上げられる。この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に影響が出やすいため、フェニル骨格を有さないリン酸エステルを用いる方が、好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
また、潤滑界面層形成性化合物の含有量は、0.1質量%未満になると所望の書き味が得られず、含有量が5.0質量%を超えるとインキ経時安定性が劣る可能性があるので、インキ組成物全質量に対し0.1質量%〜5.0質量%にすることが好ましい。よりに好ましくは、0.5〜3.0質量%である。
本発明において、潤滑界面層形成性化合物は、インキと炭素質膜との親和性を高める作用があると考えられる。例えば従来のボールペンに用いられていたインキには、水や、アルコールやグリコールエーテル等の親水性官能基を有する成分が含まれているものがあった。このような成分を含むインキは、従来使用されていたボール、例えば表面処理がなされていない炭化ケイ素からなるボールとは親和性が低く、ボールとボール抱持部との接触部分が境界潤滑となり易い傾向があった。しかしながら、本発明においてはボールまたはボール抱持部のいずれかに炭素−酸素結合を有する炭素質膜が形成されており、それと親和性の高いインキを用いることでボールとボール抱持部との間がより流体潤滑となりやすい。そのため、炭素−酸素結合を有する炭素質膜と親和性の高い潤滑界面層形成性化合物を含むインキを用いることでボールとボール抱持部との間に潤滑界面層を形成させ、ボール等の摩耗を抑制する効果を高めることを可能としている。このように潤滑界面層が形成されるのは、炭素質膜の表面に炭素の未結合手が存在すると、それと潤滑界面層形成性化合物とがボールの回転によって化学吸着のような反応によって結合し、炭素質膜の表面が潤滑界面層形成性化合物で被覆されて層が形成されるためと考えられる。
本発明で用いる顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられ、具体的にはアニリンブラック、群青、黄鉛、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、金属顔料、金属酸化物顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独または2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
前記顔料の中でも、金属顔料、金属酸化物顔料は、ボールおよびボール抱持部の摩耗をしやすいため、本発明においては顕著な効果が得られ、特に、金属顔料として アルミニウム顔料や金属酸化物顔料として、酸化チタンを用いた顔料については、最も顕著な効果が得られる。顔料の平均粒子径については、50μmを越えると、ボール及びボール抱持部内部の摩耗の低減が十分得られづらいため、50μm以下が好ましい。さらに、より考慮すれば、25μm以下が好ましく、また、筆跡の視認性や発色性を考慮すれば、顔料の平均粒子径は3μm以上が好ましいため、顔料の平均粒子径については3〜25μmが最も好ましい。また、平均粒子径は、レーザー回折法(MICROTRAC 9320-X100 Honeywell製)による体積基準法によって求められる。
金属顔料、金属酸化物顔料としては、金属粉顔料を用いるものがあり、具体的には、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、ブロンズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムなどの金属粉顔料をそのまま用いても良く、それらの金属粉顔料に着色剤を吸着した顔料などでも良い。また、アルミニウム、酸化チタンなどの前記金属粉顔料を予め界面活性剤、樹脂、溶剤などで加工処理して分散させて、ペースト状にした顔料分散体や液体状の顔料分散体などにしても良い。さらに、また、アルミニウム、酸化チタンなどの前記金属粉顔料をワックス、界面活性剤、樹脂などで加工処理はするが、溶剤を含有してない固形状顔料などにしても良い。前記金属顔料の中でも、溶剤を含有してない固形状顔料が好ましい、これは、金属顔料中に溶剤を含有しなければ、本発明で用いる多価アルコールや酸性樹脂との相性による顔料分散性やインキ経時安定性に影響もないため、より効果的である。ここでは、固形状顔料とは、顔料固形分量が80質量%以上の顔料のことを示し、固形状とは、常温にて一定の形をもっているものとする。さらに、より顔料分散性やインキ経時安定性を考慮すれば、溶剤を含有しない顔料固形分量が90〜99質量%の顔料が最も好ましい。特に、前記金属顔料、金属酸化物顔料は、生産性を考慮すれば粉末状よりも、粉末を固めて顆粒状(平均粒子径0.1〜2.0mm)にしたものを用いる方が好ましい。
金属顔料の中でも、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプとあるが、リーフィングタイプが、好ましい。これは、金属顔料がインキ膜の表層に浮いて配列するため、金属光沢性が良くなるためであり、特に、アルミニウムを用いたものが好ましいが、これは金属の中でも比重が比較的に小さいため、インキ膜の表層に配列しやすいことで金属光沢性が良く、筆跡に美感が得られやすく、顔料の沈降も起こりにくいためである。また、金属顔料の形状については、鱗片形状であると、光の拡散率が高く、金属光沢性がより鮮明であるために好ましい。
また、顔料の含有量は、インキ組成物全量に対し、20.0質量%を超えると、インキ経時に影響しやすいため、0.1〜20.0質量%が好ましい。さらに、顔料の含有量は、1.0質量%未満だと、所望の筆跡の視認性や発色性が得らにくく、10.0質量%を超えると、ボール及びボール抱持部の摩耗に影響を及ぼしやすいため、1.0〜10.0質量%が好ましく、より考慮すれば、2.0〜7.0質量%が好ましい。
金属顔料については、具体的には、アルミニウムペースト状のものとしては、WXM0630、WB0230、400SW、FM4010WG(以上、東洋アルミニウム(株)製)などや、着色アルミニウム顔料としては、F503RG、F503BG、F500SI、F500RE、F500RE、F500BL(以上、東洋アルミニウム(株)製)などや、固形状のRotosafe Aqua 250 042、同250 022、同260 003など(以上、ECKART(株)製)が挙げられる。金属酸化物顔料については、具体的には、酸化チタン分散体としてLIOFAST WHITE H201、EM WHITE H、EMWHITE FX9048(以上、東洋インキ(株)社製)、ポルックスホワイトPC−CR(住友カラー(株)社製)、FUJISP WHITE 11、同1011、同1036、同1051(以上、富士色素(株)社製)などが挙げられる。
また、顔料分散性を向上し、顔料沈降や凝集を抑制する目的で使用する顔料分散剤として、酸性樹脂、塩基性樹脂、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などが挙げられるが、長期間顔料分散安定性を考慮すると、酸性樹脂を用いる方が好ましい。酸性樹脂については、カルボキシル基、フェニル基、スルホン酸基などを有する酸性樹脂が挙げられるが、具体的には、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレンーマレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリビニル−スルホン酸樹脂などが挙げられ、その中でも、カルボキシル基を有する酸性樹脂が好ましい。より金属顔料を吸着しやすく、金属顔料を長期間顔料分散安定する傾向があるため、カルボキシル基を有する酸性樹脂が好ましく、さらに好ましくは、スチレン基の立体構造による障害によって、金属顔料を反発させやすくすることで、金属顔料を分散安定しやすい傾向があるため、スチレン基とカルボキシル基を有するスチレン−アクリル樹脂が最も好ましい。
なお、炭素質膜がボールまたはボール抱持部のいずれかだけに形成されている場合、炭素質膜によって被覆されていない部分が露出していることとなる。ここでその露出部分にインキが接触した場合、ボールまたはボール抱持部に含有されている金属成分、例えばボールに用いられている金属性結合材が経時的に溶出することがある。溶出した金属成分は、酸化してインキに対して不溶性となり、ボール表面等に付着することがある。これらの溶出および付着によって、表面の平滑性が損なわれ、ボールの回転が阻害され書き味が重くなったり、インキのスムーズな流出が阻害されて筆跡がかすれたりする等の不具合を生じることがある。こうした事実に鑑みて、ボールペンの経時安定性を考慮して、特に水性ボールペン用インキを用いる場合には、アミンに代表される塩基性化合物などのpH調整剤を添加することができる。この場合、一般に酸性である潤滑界面層形成性化合物の炭素質膜表面への吸着が阻害される傾向にあるが、経時後の金属成分溶出による筆記性能劣化を抑制することができるので、総合的にボールペンの経時安定性の改良することができる場合がある。
インキのpHについては、を7〜13にすることが好ましい、これは、インキをアルカリ性または弱アルカリ性にすることで、水性ボールペン用インキ中の潤滑界面層形成性化合物の溶解安定性が得られ、炭素質膜表面において潤滑界面層形成性化合物の官能基吸着による潤滑界面層の経時安定性がさらに改良される。特に、顔料の中でも、金属顔料を用いる場合では、pH7〜10にすることがより好ましい。これは、pH値7未満の酸性側に近づいたり、pH値10を超えて強アルカリ側に近づくと、金属顔料が腐食しやすくなるためで、また、pH値10を超えて強アルカリ側に近づくと、顔料の分散性に影響しやすくなるためである。特に、アルミニウム顔料を用いる場合は、アルミニウムの腐食を考慮すれば、pH値が7.0〜9.0がより好ましい。また、長期間放置していると、空気中の二酸化炭素によって、pH値が酸性側に寄りやすいが、尿素を含有することで、長期間経時によっても、pH値が7未満になるのを抑制するため、より効果的に用いることが可能である。
なお、pHについては、IM−40S型pHメーターを用いて、20℃にて測定した値を示すものである。
pH調整剤として、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンや、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等のアルカリ性無機塩、乳酸、酢酸、クエン酸等の有機酸等が挙げられる。その中でも、インキ経時安定性を考慮すると、より弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましいが、顔料分散剤として酸性樹脂を用いる場合は、前記酸性樹脂を中和するのには、十分な効果が得られづらいため、前記酸性樹脂を用いる場合には、トリエタノールアミンより強い塩基性を持つ、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のトリエタノールアミン以外のpH調整剤を用いて中和する方が好ましく、少量含有することで、pHが7.0以上にしやすくすることが可能である。しかし、トリエタノールアミン以外のpH調整剤を単独で用いると、塩基性が強過ぎて、pHが10.0を超えやすいので、トリエタノールアミンを併用する方が好ましい。トリエタノールアミン以外のpH調整剤としては、インキ経時安定性を考慮すれば、ジエタノールアミン又はジメチルエタノールアミンを用いるのが、好ましい。そのため、本発明においては、2種以上のpH調整剤を用いる方が好ましく、最も好ましくは、2種以上のアルカノールアミンを用いる方が好ましい。
また、pH調整剤の含有量について、トリエタノールアミンの含有量は、インキ経時安定性を考慮して0.1質量%〜10.0質量%が好ましい。また、トリエタノールアミン以外のジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のpH調整剤の含有量は、0.1質量%未満だと酸性樹脂に対して中和効果が得られにくく、5.0質量%を超えると塩基性が強くなり、インキ経時安定性が劣る可能性があるため、0.1〜5.0質量%がより好ましい。
また、水分の溶解安定性、水分蒸発乾燥防止等を考慮し、溶剤を用いる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール溶剤、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t−ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、3―メトキシブタノール、3―メトキシー3―メチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。その中でも、カルボキシル基を有する酸性樹脂やpH調整剤との溶解安定性や、ドライアップ性能が向上することを考慮すれば、多価アルコール溶剤を用いる方が好ましい。また、多価アルコール溶剤とは、二個以上の水酸基が脂肪族あるいは脂環式化合物の相異なる炭素原子に結合した化合物である溶剤であり、その中でも、ドライアップ性能を向上する傾向を考慮すれば、脂肪族の多価アルコールが好ましく、その傾向を最も考慮すれば、2価または3価の水酸基を有する多価アルコールを少なくとも含有することが、最も好ましい。これらは、単独または2種以上混合して使用してもよい。
また、本発明では、球状樹脂粒子を含有することで、ボールとボール座間でクッションのような働きをし、前記顔料粒子による回転阻害を抑制しやすくする効果があり、ボールの回転をスムーズにしやすくし、ドライアップ性能の向上やボール座の摩耗の抑制をしやすい効果がある。特に、本発明で用いる前記炭素質膜、前記潤滑界面層形成性化合物、球状樹脂粒子との相互作用によって、より潤滑性を高め、ボール等の摩耗を抑制する効果を高めることが可能である。前記顔料の固形分量をA、球状樹脂粒子の固形分量をBとした場合、AとBとの関係が、1.0≦B/A≦3.0が好ましい、1.0>B/Aだと、前記顔料粒子による回転阻害を抑制しづらく、ドライアップ性能に影響しやすく、3.0<B/Aだと、金属光沢性や筆跡視認性が劣りやすいためである。よりその傾向を考慮すれば、1.0≦B/A≦2.0が最も好ましい。
球状樹脂粒子は、着色されたものでもよく、例えば市販の樹脂粒子を用いることができる。材質は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、又はポリオレフィン等を含有する球状樹脂粒子を用いることができる。また、球状樹脂微粒子は、粉体や水分散体であってもよい。また、球状樹脂粒子は、真球状に限定されるものではなく、略球状の樹脂粒子や、略楕円球状の樹脂粒子などでも良く、中空樹脂粒子、中実樹脂粒子、マイクロカプセル樹脂粒子に限定されるものでもない。市販の球状樹脂微粒子としては、ルミコール(商品名、日本蛍光化学社製)、ケミパール(商品名、三井化学社製)などが挙げられる。
また、顔料分散性の向上を考慮して、剪断減粘性付与剤を使用しても良い。剪断減粘性付与剤としては、架橋型アクリル酸重合体、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ−カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガム等が挙げられ、これらを含有することで、インキ中で三次元網目構造を形成することで、顔料分散を安定しやすくなる。これらの剪断減粘性付与剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
インキ粘度については、20℃環境下、剪断速度0.001(sec-1)で、インキ粘度は、1000〜5000(Pa・s)が好ましい。前記インキ粘度が1000(Pa・s)未満だと、インキ粘度が低過ぎて、顔料分散性に影響しやすく、5000(Pa・s)を越えると、ドライアップ性能やインキ追従性が劣りやすいためである。より顔料分散性、ドライアップ性能やインキ追従性を向上する傾向を考慮すれば、1000〜3000(Pa・s)が好ましい。
これらの剪断減粘性付与剤を用いる場合、アミノカルボン酸を用いる方が好ましい、これは、金属顔料は、インキ中において金属イオンが溶出しており、該金属イオンによって三次元網目構造を形成するのを妨害しやすく、インキ粘度を減粘してしまうおそれがあり、アミノカルボン酸を含有することで、金属イオンをアミノカルボン酸が包み込むことで、剪断減粘性付与剤の三次元網目構造を安定形成しやすくなり、顔料分散性を安定化しやすくするためである。また、インキ中において金属イオンが溶出することで、該金属イオンが他の添加剤と反応して金属塩析出物を生ずる可能性があるため、上記同様に、金属イオンをアミノカルボン酸が包み込むことで、金属塩析出物を抑制しやすくする効果も得られやすい傾向がある。
その他の添加剤は、所望により添加剤を含有することができる、具体的には、シリコ−ン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの潤滑剤、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤、ベンゾトリアゾールなどの防錆剤、尿素、ソルビットなどの保湿剤、ベンゾトリアゾールなどの防錆剤、アミノカルボン酸などのキレート剤などを添加することができる。また、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等を添加することができる。これらは単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
・ボールペンチップ
ボールペンチップは、インキ流通孔などを有するチップ本体の先端に設けられたボール抱持部内の底壁にボール載置し、チップ本体の先端部を内側にかしめることにより、ボールの一部をチップ本体の先先端縁より突出させて回転可能にボールが抱持された構造を有している。また、ボールペンチップは、ステンレス鋼線材をドリルによって切削加工して形成した切削タイプのボールペンチップやステンレス鋼製パイプを押圧加工等して形成したパイプタイプのボールペンチップが例示できる。ここで、先端部かしめ角度は、紙当たり角度やインキ流路を考慮して50度〜100度とされるのが一般的である。
尚、前記ボールの材料としては、例えば、例示したタングステンカーバイドの焼結体、ジルコニア、アルミナ、シリカ、炭化珪素等のセラミックス、またはステンレス鋼等が挙げられる。金属製の線材やパイプの材料としては、例えばステンレス、銅、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
ボールペンチップに抱持されているボールの材質は特に限定されないが、一般に金属またはセラミックスからなるものが用いられる。本発明による筆記具には耐久性が求められるために、高度の高い材料が選択されることが好ましい。例えば、炭化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、炭化ケイ素などのセラミックスやステンレス鋼などの金属が用いられる。また、セラミックスと金属性結合材とからなる超硬合金を用いてもよい。このような超硬合金としては、タングステンカーバイトと、コバルトまたはニッケルなどの金属性結合材とからなるものが知られている。特に、ボール表面に前記炭素質膜を形成したものは、長距離筆記することによって、前記炭素質膜が剥がれる場合がある。その際、ボールの素材が金属であると、腐食する可能性があるため、セラミックスボールを用いる方が好ましい。ボールの腐食を抑制することを考慮すれば、硫黄系化合物を含有することが好ましい。
本発明で用いるボールペンにおいては、直径0.5mmの炭化タングステン(ISO K−10相当)のボールを用いている。ボールの大きさは、その筆記具の用途や筆記時に要求される描線の幅などによって決められるが、一般に0.1〜2.0mmの範囲から選択される。本発明は、直径が小さいボール、例えば直径が0.5mm以下である小径ボールを用いた場合に、より好ましい効果を発揮できる。これは、同一距離の筆記をする場合にボールの直径が小さいほどボールの回転数が多くなるので、ボール抱持部が摩耗し易い傾向であるためである。
また、ボールとボール抱持部内面とのクリアランスは、筆記性に大きく影響する。このため、クリアランスは適切に調整されることが好ましい。適切なクリアランスは、用いられる筆記具用インキの粘度などによって変化する。例えば、筆記距離0m(筆記具未使用)であるときのクリアランスは、狭すぎると十分なインキ消費量が得られず、所望の筆跡の視認性や発色性が得られづらく、広すぎるとインキの垂れ下がりが発生するおそれがある。このため、クリアランスは、10〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、20〜45μm以下であることがより好ましくは、さらに、顔料として金属顔料、金属酸化物顔料を用いる場合には、筆跡の視認性や発色性を考慮するため、30〜45μm以下であることが最も好ましい。
・炭素質膜の形成方法 本発明による筆記具においては、ボールまたはボール抱持部の少なくとも一方に炭素質膜が形成されている。次に、炭素質膜の形成方法について説明する。ここでは、例としてボール表面に炭素質膜を形成させる方法を説明する。ボール抱持部に炭素質膜を形成させる場合にも同様の方法を応用することができる。
ボール表面に炭素質膜を形成させるのに先立って、中間層を形成することができる。ここでは、ボールの表面にSiとCとを含むアモルファス膜からなる中間層を形成させる場合を説明する。中間層の成膜には例えばイオン化蒸着法を用いることができる。この方法では、真空ポンプを用いてイオン化蒸着用のチャンバー内を所定の圧力に調整すると共に、チャンバー内にテトラメチルシラン(Si(CH)を導入し、ボールにバイアス電圧(例えば1kV)を印加して、放電(例えば30分間)を行う。成膜の際にチャンバー内においてボールを回転させることにより、ボールの表面全面に中間層を形成することができる。
中間層の形成後、チャンバー内に供給するガスをベンゼンに変更し、炭素質膜を形成する。チャンバー内を真空ポンプを用いて所定の圧力に調整した後、ボールにバイアス電圧(例えば1kV)を印加して、放電(例えば90分間)を行う。成膜の際にチャンバー内においてボールを回転させることによりボールの表面全面に炭素質膜を形成することができる。
この後、必要に応じて酸素を含む雰囲気においてプラズマ照射を行い、炭素質膜への炭素−酸素結合の導入を行う。チャンバー内を例えば100Paの圧力に調整し、出力を例えば10Wとしてプラズマ照射を行い、目的のボールを得ることができる。
得られた炭素質膜に含まれる炭素−酸素結合の割合は、X線光電子分光(XPS)測定により評価することができる。測定条件は、形成させる炭素質膜の種類、厚さなどによって調整されるが、例えば、試料に対する検出角度を90°とし、X線源にはAlを用い、X線照射エネルギーを100Wとすることができる。1回の測定の時間は0.1ms程度とされるのが一般的である。また、測定精度を高めるために、1つの試料について複数回、例えば64回測定を行ってその平均値を測定結果とすることがある。
炭素質膜中のC−O、C=O及びO=C−Oの割合を求めるために、XPS測定により得られた炭素1s(C1s)ピークを、炭素同士が結合したspC−C及びspC−C、炭素と水素とが結合したspC−H及びspC−H、炭素と酸素とが結合したC−O、C=O及びO=C−Oの7つの成分にカーブフィッティングにより分解する。カーブフィッティングにあたり、spC−Cの結合エネルギーは283.8eV、spC−Cの結合エネルギーは284.3eV、spC−Hの結合エネルギーは284.8eV、spC−Hの結合エネルギーは285.3eV、C−Oの結合エネルギーは285.9eV、C=Oの結合エネルギーは287.3eV、O=C−Oの結合エネルギーは288.8eVとするのが適当である。カーブフィッティングにより得られた各ピークの面積をC1sピーク全体の面積により割った値を、各成分の組成比とした。C−O、C=O及びO=C−Oの組成比の和を炭素−酸素結合した炭素原子の全炭素原子に対する割合(COtotal)とする。
炭素質膜が形成されたボールを オージェ電子分光分析装置 アルバックファイ株式会社製PHI−660型(商品名))により分析することで、中間層および炭素質膜の厚さを測定することができる。具体的には、炭素質膜が形成されたボールの表面を段階的にエッチングし、各段階でオージェ電子分光分析法により表面分析を行う。測定条件は、例えば、電子銃の加速電圧を10kV、試料電流を500nm、アルゴンイオン銃の加速電圧を2kVとする。この測定条件により、ボール表面の40μm角の領域について、各深さにおける分析を行うことで、中間層や炭素質膜の厚さを測定することができる。
前記した方法により製造した炭素質膜付きのボールについて分析した場合には以下の結果が得られた。炭素質膜が形成されたボールの表面から80nm程度の深さまではほぼ炭素原子(C)だけが存在しており、炭素質膜が形成されていた。80nm〜120nmの深さにおいては、Si原子が存在しており、SiCからなる中間層が形成されていた。100nm以上の深さの部分では炭化タングステン(WC)だけが検出され、ボールである炭化タングステンの表面に、中間層および炭素質膜が形成されていることが確認された。
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例
前記した方法により、ボール表面に炭素質膜を形成させたボール(DLC−1)と、プラズマ照射条件を変えることにより、炭素−酸素結合の割合が異なる炭素質膜を得たボール(DLC−2)を作成した。具体的には、DLC−1は、高周波電源の出力を10Wとし、60秒秒間酸素プラズマを照射した。DLC−2は、高周波電源の出力を50Wとし、60秒間酸素プラズマを照射した。これらのボールに形成された炭素質膜に含まれる各結合の割合を前記した方法で測定した。得られた結果は表1に示す通りであった。
Figure 2014121811
酸素原子と結合した炭素原子の全炭素原子に対する比率(COtotal)は、DLC−1では0.16であり、DLC−2では0.43であった。酸素プラズマを照射する際の電源出力が高いDLC−2の方がDLC−1よりもCOtotalの値が大きくなった。COtotalをさらに詳しくみると、C−Oの全炭素に対する比率は、DLC−1とDLC−2とでほぼ同じとなったが、C=Oの比率は、DLC−2においてDLC−1の約6倍となり、O=C−Oの比率は、DLC−2においてDLC−1の約9倍となった。また、これらの炭素質膜におけるsp炭素−炭素結合のsp炭素−炭素結合に対する比率は0.3以上であった。
実施例1
金属顔料(アルミニウム顔料40%含有物) 10.0質量部
顔料分散剤(酸性樹脂) 2.0質量部
水 64.4質量部
溶剤(エチレングリコール) 15.0質量部
デキストリン 1.0質量部
尿素 1.0質量部
pH調整剤(ジエタノールアミン) 1.0質量部
pH調整剤(トリエタノールアミン) 3.0質量部
エチレンジアミン四酢酸(EDTA) 0.5質量部
潤滑界面層形成性化合物(ホスホリル基を有するもの)1.0質量部
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量部
剪断減粘性付与剤(架橋型アクリル酸重合体) 0.60質量部
金属顔料、顔料分散体、水、溶剤、デキストリン、尿素、pH調整剤、エチレンジアミン四酢酸、潤滑界面層形成性化合物、防錆剤をマグネットホットスターラーで加温撹拌等してベースインキを作成した。
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌した後、濾紙を用い濾過を行って、実施例1に用いる水性ボールペン用インキ組成物を得た。
また、直径が0.5 mmで前記したDLC−1、または前記したDLC−2のボールを用いて、ボールを回転自在に抱持したステンレス鋼材からなるボールペンチップをチップホルダーを介して装着し、前記水性ボールペン用インキ組成物をインキ収容筒内部に直詰めしたレフィルを、(株)パイロットコーポレーション製のゲルインキボールペン(商品名:G−knock)に装着して、本発明の水性ボールペンを得た。尚、実施例1のインキ粘度は、TAインスツルメント社製レオメーターAR−G2粘度計(コーンプレート40mm・角度2°)を用いて、20℃の環境下で、剪断速度0.001(sec-1)にてインキ粘度を測定したところ、1500Pa・sであった。また、実施例1のpHは、IM−40S型pHメーターを用いて、20℃にて測定したところ、pH=8.0であった。
実施例2〜8
インキ配合を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜8の水性ボールペンを得た。表2に測定、評価結果を示す。
Figure 2014121811
比較例1〜6
インキの配合と、ボールを炭素質膜を形成していない未処理ボール(DLC−0)に変更した以外は、実施例1と同様な手順で比較例1〜6の水性ボールペンを得た。表3に測定、評価結果を示す。
Figure 2014121811
試験および評価
実施例1〜8及び比較例1〜6で作製した水性ボールペンを用いて、以下の試験および評価を行った。尚、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用い、以下のような試験方法で評価を行った。
耐摩耗試験:荷重100gf、筆記角度65°、4m/minの走行試験機にて筆記試験後のボール座の摩耗を測定した。
DLC−1ボールを用いて試験したものを耐摩耗試験1、DLC−2ボールを用いて試験したものを耐摩耗試験2として、DLC−0ボールを用いて試験したものを耐摩耗試験0として、表に示す。
ボール座の摩耗が10μm未満のもの ・・・◎
ボール座の摩耗が10〜20μmのもの ・・・○
ボール座の摩耗が20〜30μmを越えるもの・・・△
ボール座の摩耗が30μmを越えるもの ・・・×
顔料分散性試験:直径15mmの密開閉ガラス試験管に各筆記具用水性インキ組成物を入れて、常温にて1か月放置後、適量採取し、顕微鏡で顔料の分散状態を観察した。
顔料が均一分散されたもの ・・・◎
顔料の沈降が一部確認されたが、実用上問題ないレベルのもの ・・・○
顔料の沈降がひどく、筆記不良になるレベルのもの ・・・×
表1の結果より、実施例1〜8では、耐摩耗試験1、2は、顔料分散性試験良好もしくは、実用上問題のないレベルの性能が得られた。
表2の結果より、比較例1〜4では、炭素質膜を形成していない未処理ボール(DLC−0)を用いたため、耐摩耗試験において、ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になるものもあった。
比較例5では、潤滑界面層形成性化合物を用いなかったため、耐摩耗試験1,2において、ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になるものもあった。
比較例6では、顔料分散剤を用いなかったため、顔料分散の崩れがひどかった。
本発明は水性ボールペン用インキ組成物として利用でき、さらに詳細には、該水性ボールペン用インキ組成物を充填した、キャップ式、ノック式等の水性ボールペンとして広く利用することができる。

Claims (10)

  1. インキ収容筒の先端部に、チップ本体のボール抱持部にボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、前記インキ収容筒内に、少なくとも顔料、顔料分散剤、溶剤、潤滑界面層形成性化合物からなる水性インキ組成物を直に収容する水性ボールペンであって、前記ボール表面、または前記ボール抱持部の前記ボールとの接触部分の少なくとも一方に炭素質膜が形成されるとともに、前記炭素質膜が炭素原子及び該炭素原子と結合した酸素原子とを有することを特徴とする水性ボールペン。
  2. 前記潤滑界面層形成性化合物が、有機酸基または有機酸残基を有することを特徴とする請求項1に記載の水性ボールペン。
  3. 前記有機酸基が、ホスホリル基またはカルボキシル基であることを特徴とする請求項2に記載の水性ボールペン。
  4. 前記顔料が、金属顔料、金属酸化物顔料の中から1種以上選択することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
  5. 前記顔料分散剤が、酸性樹脂であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
  6. 前記筆記具用水性インキ組成物に、剪断減粘性付与剤を含有し、20℃環境下、剪断速度0.001(sec-1)で、インキ粘度が、1000〜5000Pa・sであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
  7. 前記炭素質膜に含まれるsp炭素−炭素結合のsp炭素−炭素結合に対する比率が0.3以上である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
  8. 前記炭素質膜に含まれる、炭素の全結合に対する酸素を含む結合の割合が、0.1〜0.5である、請求項1ないし7に記載の水性ボールペン。
  9. 前記炭素質膜が、前記ボール表面、または前記ボール抱持部の少なくとも一方に、前記ボールとの接触部分に中間層を介して形成されており、前記中間層が、炭素及びケイ素を含むものである、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
  10. 前記水性ボールペンのボール径が、0.5mm以下であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の水性ボールペン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016216622A (ja) * 2015-05-21 2016-12-22 株式会社パイロットコーポレーション ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン
JP2018012315A (ja) * 2016-07-23 2018-01-25 株式会社パイロットコーポレーション ボールペン
CN113969079A (zh) * 2021-11-22 2022-01-25 上海晨光文具股份有限公司 一种颜料型水性墨水及含有该墨水的圆珠笔

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