JP2014121667A - バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置およびこれを用いた逆浸透膜ろ過プラントの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バイオフィルム量をより簡便にモニタリングする装置、およびそれを用いた逆浸透膜ろ過プラントの運転方法を提供する。
【解決手段】バイオフィルム形成基材60をその内部に有する通水容器54からなり、通水容器54が着脱可能な蓋64、および水の供給口から排出口に至る水路に1以上の折り返し部を有し、前記水路に1以上のバイオフィルム形成基材60を保持する手段(62,63)を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】バイオフィルム形成基材60をその内部に有する通水容器54からなり、通水容器54が着脱可能な蓋64、および水の供給口から排出口に至る水路に1以上の折り返し部を有し、前記水路に1以上のバイオフィルム形成基材60を保持する手段(62,63)を有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、海水、かん水、下廃水処理水等を、逆浸透膜を用いて脱塩処理し、淡水を得る、逆浸透膜ろ過プラントの運転方法に関する。特に、逆浸透膜非透過側を流れる原水のバイオフィルム形成速度をモニタリングするバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置、およびその評価結果に基づき、逆浸透膜ろ過部でのバイオファウリング発生防止あるいは軽減するための、逆浸透膜ろ過プラントの運転を制御することを目的とした運転技術に関する。
膜プロセスは、逆浸透膜による海水の淡水化をはじめ、多くの産業や水処理分野で応用され、競合する分離操作に比べて、分離性能やエネルギー効率などの点で、優位性が実証されてきている。他方で、膜プロセスでは、被処理水側の膜面上で微生物がバイオフィルムのかたちで増殖し、膜の操作圧力を上昇させたり、膜の透水量や分離性能を低下させたりすること、すなわちバイオファウリングが運転上問題となる。
バイオファウリングの対策としては、被処理水にバイオフィルムの増殖を抑制する薬剤(以下、「殺菌剤」という)を添加する技術が、有効な手法として数多く提案されている。例えば特許文献1には、被処理水に2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはこれらの塩およびこれらの混合物を有効成分とする殺菌剤を添加してバイオフィルムの増殖を抑制する膜分離法が開示されている。これは殺菌剤を連続あるいは間欠で膜に接触させ、バイオフィルムの増殖を抑制する方法であり、それなりの効果を奏するものである。
一方、特許文献2や特許文献3に示されているように、逆浸透膜ろ過部に供給される原水、あるいは、逆浸透膜ろ過部を非透過で排出された濃縮原水から分岐させた分流に、通水カラムを取り付け、バイオフィルム形成基材を通水カラムの内部に通水の流れに沿って配置し、定期的にバイオフィルム形成基材を通水容器から取り出して、基材上のバイオフィルム量を評価し、その評価結果を基に逆浸透膜ろ過プラントの運転制御を行う方法も提案されている。これはバイオフィルム量に応じて殺菌剤の添加量を制御する方法であり、殺菌剤の過剰な添加を避け、適度な量を添加することによりバイオフィルム量の増加を防ぐ効果的な方法である。
例えば特許文献2では、バイオフィルム量の評価のため、図6に示すようなバイオフィルム形成評価用装置が提案されている。また、バイオフィルム形成評価用装置に装填するバイオフィルム形成基材としては、例えば図7〜図9に記載のものが提案されている。
図6に示す従来技術のバイオフィルム形成評価用装置では、バイオフィルム形成基材であるテフロン(登録商標)リング55aを収容した通水容器54と、通水容器54の上流側の流量調節バルブ56と、下流側の流量計51とで構成され、それぞれホース50で接続される。通水容器54の両端には、ワンタッチ式ジョイント52が設けられ、バイオフィルム形成評価用装置から通水容器54を着脱することができる構造となっている。なお矢印58は、原水または濃縮原水が流れる方向を表す。
通水容器54の内部には、通水容器とは独立のバイオフィルム量測定用の表面を提供するバイオフィルム形成基材が収容されている。バイオフィルム形成基材としては、図7,図8に示すようなテフロン(登録商標)リング55aや、図9に示すような逆浸透膜片55bが挙げられる。
テフロン(登録商標)リング55aは、図8に示すように、片方にリングフックのついたステンレス棒57に挿入され、通水容器54内に積み重ねて収容し通水容器開閉部53で密閉され、外表面及び内表面が通水可能な構造にする。バイオフィルム量の評価に際しては、流量調整バルブ56を閉止し、通水容器54の通水容器開閉部53を開け、ステンレス棒57をつまみ上げ、必要な量のテフロン(登録商標)リング55a(通常2〜3個ずつ)をピンセットで取出し、そのリング内表面と外表面のバイオフィルム量を測定する。残りのテフロン(登録商標)リング55aは通水容器54内に再収容し、通水を再開する。
また、バイオフィルム形成基材として逆浸透膜片を用いるときは、図9に示すように、短冊状の逆浸透膜片55bの分離機能層表面(ろ過時の原水側)が内側になるようにロールさせ、通水容器54内の内壁に沿わせて、通水容器54内に押し込み収容する。バイオフィルム量の評価に際しては、逆浸透膜片55bの上端をピンセットでつまみ出し、一定量を切り出しサンプリングした後、残りを通水容器54内に再収容し、通水を再開する。切り出した逆浸透膜片についてバイオフィルム量を測定する。
しかし、開示されているバイオフィルム量の評価法では、通水容器内部からのバイオフィルム形成基材の出し入れに時間がかかる上に作業が煩雑であった。
また通水容器には、逆浸透膜モジュール内と同等の流水速度を維持した水量を流す必要があるが、プラントでの生産水量を維持するために、通水容器への通水量をできる限り少なくする必要がある。そのため、通水容器が細長い筒状の形状で、上下がバイオフィルム形成基材の取り出し口となっている。しかし、この形状では取り出し口が狭く、バイオフィルム形成基材を取り出しにくいという問題があった。
一方、取り出し口を広くする為、通水容器を太い筒状の形状にすると、それに伴い通水量を増加させる必要があるため、プラント全体の生産水量が低下し、特に小規模プラントやパイロットプラントなどでは水量制御が困難になるという問題があった。
また、通水容器が細長い形状であるため、容器設置時や上下の通水容器開閉部を開閉する時に通水容器が折れやすいという問題もあった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、逆浸透膜ろ過プラントの運転制御において、より簡便に測定可能なバイオフィルム形成速度のモニタリング方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(3)に記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置および(4)に記載の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法からなる。
(1)バイオフィルム形成基材をその内部に有する通水容器からなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置であって、前記通水容器が着脱可能な蓋、および水の供給口から排出口に至る水路に1以上の折り返し部を有し、前記水路に1以上のバイオフィルム形成基材を保持する手段を有することを特徴とするバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
(2)前記通水容器が水路内に保持溝を有し、バイオフィルム形成基材が、前記保持溝に嵌合されていることを特徴とする(1)に記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
(3)前記バイオフィルム形成基材が逆浸透膜から成る(1)または(2)に記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を使用する逆浸透膜ろ過プラントの運転方法であって、
前記逆浸透膜ろ過プラントが、原水取水口を備えた原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを備えた逆浸透膜ろ過部をこの順に有し、前記逆浸透膜モジュールを透過した逆浸透膜透過水を系外に取り出す透過水出口と、前記逆浸透膜モジュールを透過しなかった逆浸透膜非透過水を系外に取り出す濃縮水出口とを有し、前記原水取水口より下流かつ前記濃縮水出口より上流の間の少なくとも1つの場所を流れる水を分取し、前記分取した水を前記バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置に通水し、少なくとも一つのバイオフィルム形成基材を取り出し、バイオフィルム形成基材のバイオフィルム量を測定する操作を継続的に行い、前記バイオフィルム量の推移に基づいて、前記原水取水部、前処理部、および逆浸透膜ろ過部からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程の運転制御を行うことを特徴とする逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。
(1)バイオフィルム形成基材をその内部に有する通水容器からなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置であって、前記通水容器が着脱可能な蓋、および水の供給口から排出口に至る水路に1以上の折り返し部を有し、前記水路に1以上のバイオフィルム形成基材を保持する手段を有することを特徴とするバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
(2)前記通水容器が水路内に保持溝を有し、バイオフィルム形成基材が、前記保持溝に嵌合されていることを特徴とする(1)に記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
(3)前記バイオフィルム形成基材が逆浸透膜から成る(1)または(2)に記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を使用する逆浸透膜ろ過プラントの運転方法であって、
前記逆浸透膜ろ過プラントが、原水取水口を備えた原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを備えた逆浸透膜ろ過部をこの順に有し、前記逆浸透膜モジュールを透過した逆浸透膜透過水を系外に取り出す透過水出口と、前記逆浸透膜モジュールを透過しなかった逆浸透膜非透過水を系外に取り出す濃縮水出口とを有し、前記原水取水口より下流かつ前記濃縮水出口より上流の間の少なくとも1つの場所を流れる水を分取し、前記分取した水を前記バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置に通水し、少なくとも一つのバイオフィルム形成基材を取り出し、バイオフィルム形成基材のバイオフィルム量を測定する操作を継続的に行い、前記バイオフィルム量の推移に基づいて、前記原水取水部、前処理部、および逆浸透膜ろ過部からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程の運転制御を行うことを特徴とする逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。
本発明のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置によれば、通水容器の内部に折り返し蛇行させた水路を形成し、この水路にバイオフィルム形成基材を配置したので、通水容器への必要な通水量を増やすことなく、かつ通水容器からのバイオフィルム形成基材の取り出しが容易になり、バイオフィルム量の評価が簡便化し、作業効率が向上する。
また、通水容器内の水路を折り返し蛇行させた形状にすることで、細長い形状よりも耐久性が向上する上、外的応力により折れる危険がなくなり、プラント内においても設置が容易となり、作業効率が向上する。
本発明の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法は、上述したバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を用いることにより、バイオフィルム量測定の評価時間も短縮でき、評価結果に基づいた原水取水部、前処理部、および逆浸透膜ろ過部からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程の運転制御も簡便に行うことができる。
以下、本発明のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置、および同装置を用いた逆浸透膜ろ過プラントの運転方法について説明する。
図1に本発明のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置の実施形態の一例を模式図で示す。
図1において、バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置70は、バイオフィルム形成基材60を収容した通水容器54からなり、任意に流量調整バルブ56、流量計51、ワンタッチ式ジョイント52、配管部材(ホース50)等の接続手段を有する。流量調整バルブ56および流量計51は、通水容器54の上流側または下流側にそれぞれホース50やステンレス製の配管部材で接続することができ、また通水容器54の両端には、ワンタッチ式ジョイント52が設けられ、バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置70からの通水容器54の着脱が容易な構造となっている。
図1では、着脱可能な蓋を取り外した通水容器54の斜視図を模式的に記載している。通水容器54の内部には、バイオフィルム量測定用の表面を提供するバイオフィルム形成基材60が収容されている。通水容器54は、水の供給口71から排出口72に至る水路73が、1以上の折り返し部74を有する。水路73が、矢印58で示す水の流れ方向になるため、バイオフィルム形成基材60と上下に間隔をあけて隣り合うバイオフィルム形成基材60と互い違いに配置され、通水容器54の一つの内壁との間に間隙が形成される。水路73は、上下に隣り合うバイオフィルム形成基材60間の空間およびバイオフィルム形成基材60の端部とこれに対向する通水容器54の一つの内壁との間の空間によって形成される。また通水容器54の内壁とバイオフィルム形成基材60の端部との間隙が、水路73の折り返し部74になる。このようにバイオフィルム形成基材60を、互い違いに配置することにより、折り返し蛇行した水路が形成され、必要な線速度を確保しながら、通水容器への通水量を増加させることなくバイオフィルム形成ポテンシャルの評価を行うことが可能となる。さらに、通水容器内の水路を折り返し蛇行させることで、細長い形状よりも耐久性が向上する上、外的応力により折れたり曲がったりする危険がなくなり、プラント内においても設置が容易となり、作業効率が向上する。
この水路73に1以上のバイオフィルム形成基材60が保持される。バイオフィルム形成基材60は、通水容器54とは独立した部材である。また、バイオフィルム形成基材60は、図2に通水容器54の横断面における一段のバイオフィルム形成基材60を示すように、支持板62の片側または両側の表面に逆浸透膜の膜片61が固定された構造になっている。バイオフィルム形成基材60の最も好適な態様として、膜片61に逆浸透膜ろ過部で使用されている膜と同種の膜を用い、支持板62の表面に逆浸透膜の膜片を膜の機能層側(供給水側)の膜面が外向きになるようにして固定・配置するのがよい。ここで、支持板62の材質は水路73を形成するのに耐えうる固さを有するものであれば、特に限定されるものではなく、通水容器と同じ素材を用いても構わない。
本発明では、図3(a)(b)に例示するように、通水容器54は着脱可能な少なくとも1つの蓋64を有する。蓋64を取り外すことにより、通水容器54からのバイオフィルム形成基材60の取り出しが容易になる。すなわち、バイオフィルム形成基材60の取り出す度に、通水容器54を装置の配管から外す必要がなくなる。また通水容器内のバイオフィルム形成基材の充填率を維持しつつ、所定の水路および折り返し部を維持することができる。これにより、バイオフィルム量の評価作業が簡便化し、作業効率が向上することができる。
蓋64は、図3(b)に示すように、流れに対して平行、もしくは蛇行する流れの一部が平行で、かつバイオフィルム形成基材の一片と垂直方向となる通水容器の片面を覆うもので、通水容器54に着脱可能に装着するための固定部65を有する。図3(b)の例では蓋64を、図示した通水容器54の下側の面に配置しているが、蓋64の位置はこの例に限定されることはなく、図面の上側の面、左側の面、右側の面、上下或いは左右に対向する二つの面、互いに隣り合う任意の二つの面、または任意の三つの面に配置することができる。また蓋64には、通水容器54へ固定するため、保持用の溝もしくは部材を複数有することができる。さらに、蓋64の周囲には通水時に水漏れしないよう通水容器54と嵌合するような溝またはパッキン66を設けることができる。
また、図4に例示するように、バイオフィルム形成基材60を、通水容器54内の内壁に設けた凹型の保持溝63に、1枚ずつはめ込み固定することができる。保持溝63はバイオフィルム形成基材をはめ込むことにより、蛇行した水路が形成されるよう隣り合う保持溝が、互い違いになるよう設けておくとよい。また、バイオフィルム形成基材とバイオフィルム形成基材との間隔が、通水可能な流量と水の流れに対して垂直方向の断面積から算出される線速度が所定の範囲内になるように計算して、保持溝63の配置を決めることが好ましい。また、保持溝63は、蓋64の内側の壁面にも設けることができる。
保持溝63は、通水容器の内壁をバイオフィルム形成基材の厚さと略同等の幅に削った凹部として形成することができる。或いは通水容器の内壁にバイオフィルム形成基材の厚さと略同等の間隔で2本の突条を平行に配置することにより、バイオフィルム形成基材の端部と嵌合する凹型の保持溝を形成することができる。このような保持溝63は、バイオフィルム形成基材の上下方向の水路側および蓋側を除く2辺に嵌合するように対向する内壁面に設けることができる。
通水容器への流量については、バイオフィルム形成基材設置後の水路での線速度が逆浸透膜モジュールの非透過水が流れる膜表面上の平均線速度と同等になるようにすることが、逆浸透膜モジュールと同様の生育環境やせん断環境となるため好ましい。線速度は特に限定するものではないが、一般的に5〜30cm/sの範囲である。ここで、このような線速度を実現する為には、バイオフィルム形成基材60を互い違いに配置し、水路を折り返し蛇行させることで、バイオフィルム形成基材を平行に並べて配置した場合に比べ、通水容器への通水量を低減できるとともに、容器の小型化が可能となるため、好適である。
通水容器、蓋、配管部材、ホース、流量調節バルブの材質は、水圧等への強度要件を満たすものであり、また、殺菌や薬品洗浄などで使用される薬品に対して耐性を有し、有機物の溶出や吸着の少ないものであればいずれでもよい。通水容器や蓋の材質は、硬質で内部の状態を確認できる透明なガラスやポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンでもよいし、遮光性のあるステンレスなどの金属製でも構わない。配管部材の材質としては、テフロン(登録商標)、塩ビ、ステンレスなどがあり、ホースの材質としては、テフロン(登録商標)、塩ビ、シリコン、ポリウレタン、軟質塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。通水容器の内径は特に限定されるものではないが、前記線速度の条件を実現しやすいように取水可能な流量に応じて決めるとよい。
通水容器、蓋、配管部材などの部材に遮光性の低い部材を使用する際は、藻類の増殖をさけるため、測定操作のとき以外、外側から全体を暗幕等で遮光することが望ましい。
バイオフィルム量の測定に際しては、図1のバルブ56により通水容器54への通水を停止し、通水容器の蓋64を開け、中から必要な数(通常1〜2枚程度)のバイオフィルム形成基材60を取り外す。この際、バイオフィルム形成基材60は、蓋64をあけた通水容器の開口部に垂直に配置されているため、容易に取り出すことが可能であり、操作時間の短縮につながる。
取り出すバイオフィルム形成基材の位置や数については、特に限定されるものではないが、上流側あるいは下流側から1回の測定に必要な数(通常2〜3個)連続して取り出す態様などを好適な方法として例示することができる。
バイオフィルム形成基材を取り出した後は、必要に応じて新しいバイオフィルム形成基材を補充した後、通水容器の蓋64を閉め、通水容器54に再び通水を開始し、取り出したバイオフィルム形成基材60については、膜面上に形成されたバイオフィルム量を測定する。
バイオフィルム量の測定頻度は、継続的実施する限り、状況に応じて決定すればよく、毎日行ってもよいし、1週間に1回程度で行なってもよい。また、間隔は不規則的でも、規則的でもよい。測定頻度は4時間より短くしても、作業が増える労力の割に情報量が増えず、効果的ではない。ただし、例えば、殺菌や洗浄剤などの効果を作用前後で短時間に評価する場合などはこの限りではなく、4時間より短い時間内に評価を行ってもよい。一方、測定頻度が少なすぎるとモニタリングの有効性が下がることから、6ヶ月に1回以上は実施する必要があり、より好ましくは1ヶ月に1回以上、さらに好ましくは1週間に1回以上である。
ここで、バイオフィルムには、生命活動を行っているバクテリアや不活化した細菌や多糖類やタンパク質などのそれらの代謝生成物、さらには死骸や核酸などの分子が含まれる。従って、バイオフィルムの定量化法としては種々考えられ、タンパク質、糖、核酸、細菌の全菌数、ATP(アデノシン三リン酸)量などにより定量化することが可能であり、任意の方法を用いてよいが、この中ではATP測定法が、感度、簡便性、迅速性に優れ、ポータブルなキットや試薬等も市販されているため特に好ましい。
基材表面のバイオフィルム中のATPの回収・分散方法は、回収率が高く定量的な方法であれば特に限定されるものではないが、取り出したバイオフィルム形成基材の通水面に付着したバイオフィルムを滅菌綿棒(ATPフリーの清潔なものが市販され入手容易)等のふき取り用具を用いて回収した後、ふき取り用具を純水に浸漬し、付着したバイオフィルム破片を分散させる方法を好ましい態様として例示することができる。
懸濁液のATP測定も特に限定されるものでないが、各社から試薬キット、発光光度計が市販されており、それぞれメーカー推奨の測定条件に準拠した方法で測定を実施すればよい。
バイオフィルムを分散させる純水は、蒸留水、精製直後の逆浸透膜精製水、精製直後のイオン交換水、市販の超純水などのATPを含有しないもの(10ng/l以下)を用いるのが、測定への不純物による誤差が少なく好ましい。市販の医療用ディスポーザブルな蒸留水も便利である。水道水をオートクレーブ滅菌して使用してもよい。
サンプルを入れるチューブなどの容器もATPに汚染されていない清澄なものであればいずれでもよいが、予め滅菌済のものを使用しても、非滅菌品をオートクレーブして使用してもよい。
測定用のチューブに純水を分注し、逆浸透膜に付着したバイオフィルムを拭き取った綿棒を1〜2分ずつ浸漬、撹拌して懸濁液を得る。この操作は1回実施してもよいが、拭き取ったバイオフィルムをできるだけ多く綿棒から分散・懸濁させるために、1回目の液に分散・懸濁させた綿棒を、別の液に浸漬、撹拌することを繰り返し、数回に分けて実施した方が、正確な値が得られ、値自体が安定化するため好ましい。
なお、ATP測定を用いた評価法は、優れた方法であるが、塩により阻害を受けるため、予め塩濃度が発光量に与える影響に関する相関式を得ておき、バイオフィルム懸濁液の塩濃度を導電率計で測定し、得られた相関式に基づき、塩阻害の影響を排除した真のATP濃度を算出するなどし、必要に応じて塩阻害の影響を考慮に入れた測定を実施する必要がある。
以上のバイオフィルム量の評価を継続的に実施することで、バイオフィルム量の推移をもとに、バイオフィルム形成速度を算出することができる。
本発明の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法は、上述したバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を使用してバイオフィルム量の測定を継続的に実施し、測定されたバイオフィルム量の推移を、逆浸透膜ろ過プラントの運転にフィードバックする方法であるが、本発明のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置の使用方法はこれに限定されるものではない。
本発明の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法は、原水取水口より下流かつ逆浸透膜濃縮水出口より上流の間の少なくとも1つの場所を流れる水を分取し、この分取した水の通水容器流水下に、バイオフィルム形成基材を配しておき、バイオフィルム形成基材上のバイオフィルム量を継続的に測定し、そのバイオフィルム量の推移に基づいて、プラントの運転を制御する運転方法である。特に通水容器として、上述したバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を使用することを特徴とする。
図5に、本発明の運転方法を採用している海水淡水化用の逆浸透膜プラントのフロー図の一例を示す。
図5において、逆浸透膜ろ過プラントは、原水取水部100、前処理部200および逆浸透膜ろ過部300を有し、さらに詳しくは水の流れる順に沿って上流側から、原水取水口501、取水管1、取水ポンプ2、砂ろ過装置6、中間槽7、保安フィルター8、高圧ポンプ29、逆浸透膜モジュール11、透過水出口502、濃縮水出口503の順に接続、構成されている。原水取水部100は、取水管1、取水ポンプ2、必要に応じて次亜塩素酸溶液貯槽3および次亜塩素酸溶液供給ポンプ21を含む。前処理部200は、砂ろ過装置6、浮上分離装置、限外ろ過膜や精密ろ過膜、ルース逆浸透膜などの分離膜装置等からなる前処理装置と、中間槽7、必要に応じて凝集剤溶液貯槽4、pH調整溶液貯槽5、凝集剤溶液供給ポンプ22、pH調整溶液供給ポンプ23を含む。また逆浸透膜ろ過部300は、高圧ポンプ29、逆浸透膜モジュール11、必要に応じて保安フィルター8、亜硫酸水素ナトリウム溶液貯槽9、殺菌剤溶液貯槽10、亜硫酸水素ナトリウム溶液供給ポンプ24、殺菌剤溶液供給ポンプ25を含む。また原水取水口501は取水管1の先端部、濃縮水出口503は逆浸透膜非透過水が逆浸透膜ろ過プラントから系外へ排出される出口のことである。
上記原水取水部100において、取水は直接、海の表層部分から行ってもよいし、いわゆる深層水をくみ出しても構わない。表層取水の場合は、砂ろ過等の前処理を行うに先立ち、スクリーン等を用いて処理し、海草やクラゲ、魚類の侵入を阻止しておくことが好ましい。また、海底砂層などをフィルターとして用いる浸透取水法により取水してもよい。くみ出した海水は、一旦沈殿池などで砂などの粒子を分離しておいてもよい。
取水ポンプ2の上流の地点では、取水管1やその下流工程の配管におけるバイオフィルム形成や貝や海草などの海棲生物の固着を防止する目的で、必要に応じて殺菌剤として次亜塩素酸溶液貯槽3の次亜塩素酸溶液が、連続的に、または、間欠的に次亜塩素酸溶液供給ポンプ21により添加される。用いる殺菌剤としては、酸化性の殺菌剤、たとえば、遊離塩素を発生させ得る薬剤である次亜塩素酸ナトリウム溶液が一般に用いられているが、同等の目的が達成されるものであれば、次亜塩素酸溶液以外の殺菌剤や硫酸などの薬品を用いてもよい。
取水ポンプ2と砂ろ過装置6との間の地点では、砂ろ過やUF膜、浮上分離装置による固液分離などの前処理の促進用に必要に応じて、凝集剤溶液貯槽4の凝集剤溶液が凝集剤溶液供給ポンプ22により添加される。また、凝集を効率的に行うためのpH条件の調整や、逆浸透膜モジュール11の非透過水側流路における硫酸カルシウムなどのスケール生成を抑制する目的で、pH調整溶液貯槽5から硫酸などのpH調整溶液がpH調整溶液供給ポンプ23により海水(取水原水)に添加される。凝集剤としては、塩化第二鉄やポリ塩化アルミニウムなどを用いることができる。前処理としては、砂ろ過装置6以外に、浮上分離装置、限外ろ過膜や精密ろ過膜、ルース逆浸透膜などの膜による処理を行っても構わない。この前処理は、下流の各工程に負荷をかけないように、必要な程度まで取水原水を精製する目的を有し、取水原水の汚濁の程度により適宜選択すればよい。
前処理を終えた取水原水は、前処理水となり、必要に応じて水量や水質調節機能を有する中間槽7に貯留される。
中間槽7の下流には、異物混入による高圧ポンプ29や逆浸透膜モジュール11の破損を防ぐ為に、必要に応じて保安フィルター8が設けられる。
次いで、保安フィルター8を通った前処理水には、必要に応じて亜硫酸水素ナトリウム溶液供給ポンプ24により亜硫酸水素ナトリウム溶液貯槽9の亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤が添加される。これは、原水取水部などの上流の工程で酸化性殺菌剤を添加した場合に行うもので、残留塩素などが逆浸透膜を劣化させることを防ぐためのものであり、同様の効果を有するものであれば、亜硫酸水素ナトリウム溶液以外の薬品を使用してもよい。
さらに前処理水には、必要に応じて殺菌剤溶液供給ポンプ25により殺菌剤溶液貯槽10の殺菌剤が添加される。殺菌剤を添加する装置については、殺菌剤の添加条件を制御するために、添加量や添加時間、添加頻度などがコントロールできるバルブやポンプを有する制御機構を備えていることが好ましい。殺菌剤等の薬剤の添加位置は任意に決定すればよいが、好ましくは、保安フィルター8の前、または後の地点である。この他、必要に応じてスケール防止剤などを添加しても良い。
また逆浸透膜モジュール11の上流には、薬品洗浄の為に、洗浄剤溶液供給ポンプ28により洗浄剤溶液貯槽15の洗浄剤を添加する管路が設けられている。洗浄剤を添加する地点は、特に限定されるものではないが、洗浄剤の種類によっては、高圧ポンプ29などを腐食させるおそれがあるため、その下流が好ましい。
上記処理がなされた前処理水(海水)は、高圧ポンプ29により加圧され、逆浸透膜モジュール11に供給される。
逆浸透膜モジュール11に供給された供給水は、透過水と非透過水とに分離され、そのうち非透過水は、必要に応じて逆浸透膜非透過水無害化溶液貯槽31、逆浸透膜非透過水無害化溶液供給ポンプ34を備えた逆浸透膜非透過水無害化処理槽32でpHを調整したり、殺菌剤を無害化する処理を経た後、逆浸透膜非透過水排水管33、濃縮水出口503を通って海へ廃棄される。
一方、逆浸透膜透過水は、逆浸透膜モジュール11の下流の透過水出口502から排出し、逆浸透膜透過水水槽12に蓄えられる。その後、例えば、下流側でpH調整溶液供給ポンプ26によりpH調整溶液貯槽13のpH調整溶液、また、カルシウム溶液供給ポンプ27からカルシウム溶液貯槽14のカルシウム溶液がそれぞれ添加され、飲料水基準に適合するような淡水として、透過水送水管18より取り出される。
なお、ここで逆浸透膜モジュール11を構成する逆浸透膜とは、供給水中の一部の成分、例えば水等の溶媒を透過させ、他の成分を透過させない半透性の膜をいい、いわゆるナノフィルトレーション膜やルース逆浸透膜なども含まれる。素材としては、酢酸セルロース系ポリマーやポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子材料を用いることが好ましい。また、その膜構造としては、少なくとも片面に徴密層を持ち、徴密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称構造としたり、非対称膜の徴密層の上に別の素材で形成された分離機能層を有する複合膜構造とすることもできる。膜厚としては、10μm〜1mmの範囲内であると好ましい。代表的な逆浸透膜としては、たとえば、酢酸セルロース系やポリアミド系の非対称膜およびポリアミド系やポリ尿素系の分離機能層を有する複合膜などがあるが、中でも、本発明においては、ボリアミド系の複合膜を用いると効果が高く、特開昭62−121603号公報や特開平8−138658号公報、米国特許第4277344号明細書に記載されている芳香族系のボリアミド複合膜を好適なものとして挙げられる。
また、逆浸透膜モジュールとは、上記した逆浸透膜などを実際に使用するために筐体に組み込んだものであり、平膜形態の膜を用いる場合は、スパイラル型モジュールや、チューブラー型モジュール、プレート・アンド・フレーム型モジュールとするとよい。上記の内、スパイラル型モジュールは、たとえば、特開平9−141060号公報や特開平9−141067号公報に記載されるように、供給水流路材や透過水流路材などの部材を組み込んでおり、溶質濃度の高い海水を取水原水として用いたり、高圧で装置を運転する場合などに高い効果がある。
高圧ポンプの運転圧力は、供給水の種類や運転方法などにより適宜設定できるが、かん水や超純水など浸透圧の低い溶液を供給水とする場合には0.1〜3.0MPa程度の比較的低圧で、海水淡水化や廃水処理、有用物の回収などの場合には2.5〜15.0MPa程度の比較的高圧で使用するのが、電力等のエネルギーの無駄がなく、かつ良好な透過水の水質を得ることができ好ましい。また、適当な供給圧力、運転圧力を得るために、任意の経路にポンプを設置することができる。
また、逆浸透膜ろ過部の運転温度は、0℃よりも低いと供給水が凍結して使用できず、100℃よりも高い場合には供給水の蒸発が起こり使用できないため、0〜100℃の範囲内で適宜設定するが、装置や逆浸透膜の性能を良好に維持するためには、5〜50℃の範囲とするのが好ましい。詳細は、メーカー提供の技術資料の条件に従えばよい。
逆浸透膜ろ過部の回収率は、5〜98%の範囲内で適宜設定することができる。ただし、供給水や非透過水の性状、濃度、浸透圧に応じて前処理条件や運転圧力などを考慮する必要がある(特開平8−108048号公報参照)。たとえば、海水淡水化の場合には、通常10〜40%、高効率の装置の場合には40〜70%の回収率を設定する。また、かん水淡水化や超純水製造の場合には70%以上、さらには90〜95%の回収率で運転することもできる。
また、逆浸透膜ろ過部における逆浸透膜モジュールは1段とすることも、また多段とすることもでき、さらに、供給水に対して逆浸透膜モジュールを直列でも並列に配しても構わない。直列に配列する場合は、モジュール間に昇圧ポンプを設置してもよい。
逆浸透膜の非透過水は圧力エネルギーを有しており、運転コストの低減化のためには、このエネルギーを回収することが好ましい。エネルギー回収の方法としては任意の部分の高圧ポンプに取り付けたエネルギー回収装置で回収することもできるが、高圧ポンプの前後や、モジュール間に取り付けた専用のタービンタイプのエネルギー回収ポンプで回収することが好ましい。また、造水装置の処理能力は一日当たり水量で0.5〜100万m3の範囲内とすることができる。
逆浸透膜ろ過部の配管は、できるだけ滞留部の少ない構造とすることが好ましい。さらに、回収率を高くしたい場合は、スケールの生成を防止する目的から、供給水のpHは酸性にすることが好ましく、また、殺菌や洗浄剤として各種性質の薬剤を使用するケースも想定されるため、そのような薬剤が流れる配管やバルブその他の部材には、ステンレス鋼や2相ステンレス鋼などの耐薬品性を有する材料を用いることが好ましい。
本発明の逆浸透膜ろ過プラントの運転方法は、精密ろ過膜を用いた液体と固形分の分離や濃縮、限外ろ過膜を用いた濁質成分の分離や濃縮を行うにあたっても適用できるものであるが、特に、逆浸透膜やナノろ過膜を用いて溶解成分の分離や濃縮を行うのに適している。中でも、海水やかん水の淡水化、工業用水の製造、水道における高度処理などに好適である。
本発明における原水取水部100とは、原水取水口501、取水管1、取水ポンプ2などからなる原海水をプラントに取水するための工程をさす。前処理部200とは、取水された海水に砂ろ過装置6などの前処理装置により処理し、得られた前処理水を中間槽7に一旦貯えるまでの工程をさす。逆浸透膜ろ過部300とは、一つまたは複数の逆浸透膜モジュール11と、前処理水を逆浸透膜モジュール11に供給する前に施される一連の処理工程をさす。ここで、一連の処理とは、必要に応じて任意に実施される保安フィルター8によるろ過、亜硫酸水素ナトリウム溶液などの還元剤の添加、逆浸透膜モジュール部のファウリング防止のための殺菌剤の添加、スケール防止剤の添加などを指す。
本発明の運転方法では、原水取水口501より下流かつ逆浸透膜濃縮水出口503より上流の間の少なくとも1つの場所を流れる水を分取し、この分取した水を水路が蛇行した通水容器(16a〜16e)に通水し、継続的に所定の頻度で、通水容器の蓋を開け、中からバイオフィルム形成基材を取り出し、通水面上に形成されたバイオフィルム量を測定する。バイオフィルム量測定を継続的に実施することで、通水している水のバイオフィルム量の推移を測定し、得られたバイオフィルム量の推移に基づいて、原水取水部100、前処理部200、および逆浸透膜ろ過部300からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程の運転制御を行う。
ここで、原水取水口501より下流かつ逆浸透膜濃縮水出口503より上流の間の少なくとも1つの場所を流れる水とは、海水(取水原水)、逆浸透膜供給水(前処理水)および逆浸透膜非透過水からなる群から選ばれる少なくとも1つの水をいう。海水(取水原水)とは、原水取水口501から取水された水である。逆浸透膜供給水(前処理水)とは、前処理部200より下流で、逆浸透膜ろ過部300内にあり、逆浸透膜モジュール11が複数ある場合は、先頭の逆浸透膜モジュール11より上流の管路から分取され、逆浸透膜供給水と成分が同等、温度が同レベル(−3℃〜+5℃)の水である。逆浸透膜モジュール11が単一の場合、逆浸透膜供給水は、その上流の管路から分取され、その分取された場所の水と成分が同等、温度が同レベル(−3℃〜+5℃)の水である。また、逆浸透膜非透過水とは、逆浸透膜モジュール11より下流の管路から分取され、その分取された場所の逆浸透膜非透過水と成分が同等、温度が同レベル(−3℃〜+5℃)の水である。
海水(取水原水)、逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水の分取地点としては、例えば原水取水部100では、原水取水口501より下流で前処理部200より上流から枝分かれする配管17d、前処理部200では、中間槽7より下流で保安フィルター8より上流の管路からの枝分かれ配管17e、逆浸透膜ろ過部300では、保安フィルター8より下流で高圧ポンプ29より上流の管路からの枝分かれ配管17a、高圧ポンプ29より下流で最初の逆浸透膜モジュール11より上流の管路からの枝分かれ配管17b、逆浸透膜モジュール11から排出された逆浸透膜非透過水を通水する管路からの枝分かれ配管17c、を挙げることができる。
いずれの分取地点(枝分かれ配管17a〜17e)においても、それぞれ分岐した配管の下流に、バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を構成する、通水容器16a〜16e、流量調節バルブ19a〜19e、および必要に応じて流量計を配置することができる。
ここで、分取地点の少なくとも一つを、殺菌剤や洗浄剤の添加地点の下流に設けておけば、逆浸透膜モジュール内の逆浸透膜の膜面状態をモニター可能となり、殺菌や洗浄の効果を直接的に迅速に検証することが可能となり、その結果、逆浸透膜ろ過部300をより安定・効率的に運転することが可能となるため、好ましい。
また、高圧ポンプ29より下流の高圧の管路から逆浸透膜供給水を分取する場合、バイオフィルム形成基材を収容した通水容器16b、16cへの通水は、減圧後の通水下で形成されるバイオフィルム量の評価結果に基づいても、高圧下の逆浸透膜ろ過部の運転制御を良好に行えることを見出したため、測定に際する安全性、簡便性などを考慮、減圧後に通水することが好ましい。逆浸透膜供給水および/または逆浸透膜非透過水は、枝分かれ配管17a、17b、17cより、パイプ、ホースなどを用いてバイオフィルム形成基材を収容した通水容器16a,16b,16cに通水する。
測定されたバイオフィルム量の推移、或いはバイオフィルム形成速度の値を、逆浸透膜ろ過プラントの運転にフィードバックする方法について、以下に例示するが、本発明の運転方法はこれに限定されるものではない。
原水取水部100に通水容器16dからなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を設置した場合、バイオフィルム量の推移に基づいて、取水部の殺菌条件や前処理部の運転条件を制御することが可能である。例えば、浮上分離装置、砂ろ過装置、あるいは、中空糸膜ろ過装置を用いて取水原水の前処理を行う場合、バイオフィルム量が最小になるような凝集剤(塩化第二鉄)添加量を評価・決定することが可能である。また、例えば、前処理部が浮上分離装置と砂ろ過装置の2段で構成されるシステムの場合、取水原水のバイオフィルム量の値が高い場合にのみ浮上分離装置を稼動させ、バイオフィルム量の値が低い場合は省エネのために浮上分離装置のエアレーションを停止するなどの運転も可能である。取水配管1に殺菌剤を添加する場合は、必要最低限、例えば、バイオフィルム形成速度が5pg−ATP/cm2/d以下となるような殺菌頻度を決定するのにバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を用いてバイオフィルム量の推移を測定することができる。
少なくとも1工程の前処理を経た前処理部200に通水容器16eからなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を設置した場合や、逆浸透膜ろ過部300に通水容器16aからなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を設置した場合も、それらのバイオフィルム量および/またはその推移に基づいて、前述の方法と同様に、前処理部200の運転条件や逆浸透膜部300の運転条件を、最適化制御することが可能である。なお、例えば、取水原水に殺菌剤が間欠的に添加されるようなプラントにおいて、純粋に前処理部200の水質安定化効果を原水取水部100や前処理部200に設置した通水容器16d,16eでのバイオフィルム量の値および/またはその推移に基づき評価する場合は、殺菌剤添加の間は、各通水容器16d,16eへの通水を停止し、通水容器16d,16e内に形成されたバイオフィルムの殺菌を防止する必要があることは言うまでもない。
また逆浸透膜ろ過部300において、殺菌剤や薬液洗浄注入点より下流で逆浸透膜モジュールより上流に通水容器16bからなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を設置したり、逆浸透膜モジュールより下流に通水容器16cからなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を設置した場合には、バイオフィルム量の値および/またはその推移に基づいて、殺菌剤や薬液洗浄条件を最適に制御することが可能である。
本発明の運転方法は、逆浸透膜ろ過プラントにおける逆浸透膜ろ過部でのバイオファウリング発生防止あるいは軽減を目的に、逆浸透膜非透過側を流れる原水のバイオフィルム形成速度をモニタリングし、その評価結果に基づき、逆浸透膜ろ過プラントの運転を制御する際に好適に用いることができる。
1:取水管
2:取水ポンプ
3:次亜塩素酸溶液貯槽
4:凝集剤溶液貯槽
5:pH調整溶液貯槽
6:砂ろ過装置
7:中間槽
8:保安フィルター
9:亜硫酸水素ナトリウム溶液貯槽
10:殺菌剤溶液貯槽
11:逆浸透膜モジュール
12:逆浸透膜透過水水槽
13:pH調整溶液貯槽
14:カルシウム溶液貯槽
15:洗浄剤溶液貯槽
16a,16b,16c,16d,16e:通水容器
17a,17b,17c,17d,17e:枝分かれ配管
18:透過水送水管
19a,19b,19c,19d,19e:流量調節バルブ
21:次亜塩素酸溶液供給ポンプ
22:凝集剤溶液供給ポンプ
23:pH調整溶液供給ポンプ
24:亜硫酸水素ナトリウム溶液供給ポンプ
25:殺菌剤溶液供給ポンプ
26:pH調整溶液供給ポンプ
27:カルシウム溶液供給ポンプ
28:洗浄剤溶液供給ポンプ
29:高圧ポンプ
30:送液ポンプ
31:逆浸透膜非透過水無害化溶液貯槽
32:逆浸透膜非透過水無害化処理槽
33:逆浸透膜非透過水排水管
34:逆浸透膜非透過水無害化溶液供給ポンプ
50:ホース
51:流量計
52:ワンタッチ式ジョイント
53:通水容器開閉部
54:通水容器
55a:テフロン(登録商標)リング
55b:逆浸透膜片
56:流量調節バルブ
57:ステンレス棒
58:流れの方向
60:バイオフィルム形成基材
61:逆浸透膜の膜片
62:支持板
63:保持溝
64:蓋
65:固定部
66:パッキン
70:バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置
71:供給口
72:排出口
73:水路
74:折り返し部
100:原水取水部
200:前処理部
300:逆浸透膜ろ過部
501:原水取水口
502:透過水出口
503:濃縮水出口
2:取水ポンプ
3:次亜塩素酸溶液貯槽
4:凝集剤溶液貯槽
5:pH調整溶液貯槽
6:砂ろ過装置
7:中間槽
8:保安フィルター
9:亜硫酸水素ナトリウム溶液貯槽
10:殺菌剤溶液貯槽
11:逆浸透膜モジュール
12:逆浸透膜透過水水槽
13:pH調整溶液貯槽
14:カルシウム溶液貯槽
15:洗浄剤溶液貯槽
16a,16b,16c,16d,16e:通水容器
17a,17b,17c,17d,17e:枝分かれ配管
18:透過水送水管
19a,19b,19c,19d,19e:流量調節バルブ
21:次亜塩素酸溶液供給ポンプ
22:凝集剤溶液供給ポンプ
23:pH調整溶液供給ポンプ
24:亜硫酸水素ナトリウム溶液供給ポンプ
25:殺菌剤溶液供給ポンプ
26:pH調整溶液供給ポンプ
27:カルシウム溶液供給ポンプ
28:洗浄剤溶液供給ポンプ
29:高圧ポンプ
30:送液ポンプ
31:逆浸透膜非透過水無害化溶液貯槽
32:逆浸透膜非透過水無害化処理槽
33:逆浸透膜非透過水排水管
34:逆浸透膜非透過水無害化溶液供給ポンプ
50:ホース
51:流量計
52:ワンタッチ式ジョイント
53:通水容器開閉部
54:通水容器
55a:テフロン(登録商標)リング
55b:逆浸透膜片
56:流量調節バルブ
57:ステンレス棒
58:流れの方向
60:バイオフィルム形成基材
61:逆浸透膜の膜片
62:支持板
63:保持溝
64:蓋
65:固定部
66:パッキン
70:バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置
71:供給口
72:排出口
73:水路
74:折り返し部
100:原水取水部
200:前処理部
300:逆浸透膜ろ過部
501:原水取水口
502:透過水出口
503:濃縮水出口
Claims (4)
- バイオフィルム形成基材をその内部に有する通水容器からなるバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置であって、前記通水容器が着脱可能な蓋、および水の供給口から排出口に至る水路に1以上の折り返し部を有し、前記水路に1以上のバイオフィルム形成基材を保持する手段を有することを特徴とするバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
- 前記通水容器が前記水路内に保持溝を有し、前記バイオフィルム形成基材が、前記保持溝に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
- 前記バイオフィルム形成基材が逆浸透膜から成る請求項1または2に記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のバイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置を使用する逆浸透膜ろ過プラントの運転方法であって、
前記逆浸透膜ろ過プラントが、原水取水口を備えた原水取水部、前処理部、逆浸透膜モジュールを備えた逆浸透膜ろ過部をこの順に有し、前記逆浸透膜モジュールを透過した逆浸透膜透過水を系外に取り出す透過水出口と、前記逆浸透膜モジュールを透過しなかった逆浸透膜非透過水を系外に取り出す濃縮水出口とを有し、前記原水取水口より下流かつ前記濃縮水出口より上流の間の少なくとも1つの場所を流れる水を分取し、該分取した水を前記バイオフィルム形成ポテンシャル評価用装置に通水し、少なくとも一つのバイオフィルム形成基材を取り出し、バイオフィルム形成基材のバイオフィルム量を測定する操作を継続的に行い、前記バイオフィルム量の推移に基づいて、前記原水取水部、前処理部、および逆浸透膜ろ過部からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程の運転制御を行うことを特徴とする逆浸透膜ろ過プラントの運転方法。
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
JP2017042692A (ja) * | 2015-08-24 | 2017-03-02 | 株式会社日本トリム | 電解水生成装置 |
-
2012
- 2012-12-20 JP JP2012278425A patent/JP2014121667A/ja active Pending
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