JP2016190212A - 分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスクを評価するにあたり、正確かつ迅速に膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握し、分離膜の酸化劣化を予測し対策を講じるための分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法を提供すること。【解決手段】分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法であって、膜ろ過供給水を連続分取し、該分取した水を通水容器に通水し、該通水容器内に配置した、該分離膜ろ過プラントの膜素材に対して酸化性物質感受性が同等あるいは高い物質を含む酸化性物質感受性部材の一部を取出して、該酸化性物質感受性部材の酸化分解度を測定する操作を行い、該酸化分解度および/または該酸化分解度から算出される酸化速度に基づき、膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。【選択図】図1
Description
分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法に関するものである。
近年、気体分離膜、逆浸透膜、ナノ濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜など、様々な分離膜を用いた水処理技術は、高精度で省エネルギーの処理プロセスとして注目され、各種水処理への適用が進められている。例えば、逆浸透膜を用いた逆浸透分離法では、塩分等の溶質を含んだ溶液を該溶液の浸透圧以上の圧力で逆浸透膜を透過させることで、塩分等の溶質の濃度が低減された液体を得ることが可能であり、例えば、海水やかん水の淡水化、超純水の製造、有価物の濃縮回収など幅広く用いられている。
特に、逆浸透膜は、世界の海水淡水化で非常に多く適用されており、水処理用膜分離技術の中核をなしている。逆浸透膜を水処理に適用するにあたっての大きな問題がファウリングと呼ばれる分離膜表面の汚染と分離膜の化学的な劣化である。前者は、逆浸透膜の供給水中に含有する不純物質が表面や流路に堆積もしくは吸着して、分離膜の性能を低下させるものである。これを防止するために、凝集剤を添加した上で、加圧浮上、凝集沈殿、フィルターなどの前処理を行い、不純物質を予め除去しておくことが一般的である。しかし、凝集剤を添加した場合、凝集廃棄物が発生するため、該廃棄物の処理費用、環境への影響が問題となってきている。一方、後者については、逆浸透膜の供給水中に時折含有する酸化性物質、また、配管や装置内の微生物汚染を防止するために添加される次亜塩素酸などの酸化剤によって分離膜やエレメント構成部材が化学的に劣化する。
膜ろ過供給水の酸化リスクを評価するにあたって、従来から用いられている指標として、残留塩素濃度、溶存酸素(Dissolved Oxygen;DO)濃度、酸化還元電位(Oxidation-reduction Potential;ORP)などが用いられている。しかし、これら指標では膜ろ過供給水中の微量で検出困難な酸化性物質や、酸化性物質ではないが酸化反応過程で重要な役割を果たす物質、例えば、ある種の遷移金属に代表される酸化反応促進物質や種々の酸化反応阻害物質などが含有している場合には、これら物質の酸化反応への寄与を測定することができないことから、膜ろ過供給水の総合的な酸化リスクを把握することが困難であった。
特許文献1では、分離膜ろ過プラントの分離膜と同素材の部材を用いて、分離膜の酸化劣化を判定する方法が開示されているが、この方法では分離膜ろ過プラントの分離膜と同じ速度で同素材の部材の酸化劣化が進行するため、適切なタイミングで迅速に分離膜の酸化劣化を防止するための対策を講じることが困難であった。また、特許文献2では、水の酸化ポテンシャルを高分子化合物の特性変化から判定する方法が開示されているが、分離膜ろ過プラントの分離膜との関連性が十分に取られておらず、正確に膜の酸化劣化を予測し対策を講じることができるものではなかった。
特に、逆浸透膜は、世界の海水淡水化で非常に多く適用されており、水処理用膜分離技術の中核をなしている。逆浸透膜を水処理に適用するにあたっての大きな問題がファウリングと呼ばれる分離膜表面の汚染と分離膜の化学的な劣化である。前者は、逆浸透膜の供給水中に含有する不純物質が表面や流路に堆積もしくは吸着して、分離膜の性能を低下させるものである。これを防止するために、凝集剤を添加した上で、加圧浮上、凝集沈殿、フィルターなどの前処理を行い、不純物質を予め除去しておくことが一般的である。しかし、凝集剤を添加した場合、凝集廃棄物が発生するため、該廃棄物の処理費用、環境への影響が問題となってきている。一方、後者については、逆浸透膜の供給水中に時折含有する酸化性物質、また、配管や装置内の微生物汚染を防止するために添加される次亜塩素酸などの酸化剤によって分離膜やエレメント構成部材が化学的に劣化する。
膜ろ過供給水の酸化リスクを評価するにあたって、従来から用いられている指標として、残留塩素濃度、溶存酸素(Dissolved Oxygen;DO)濃度、酸化還元電位(Oxidation-reduction Potential;ORP)などが用いられている。しかし、これら指標では膜ろ過供給水中の微量で検出困難な酸化性物質や、酸化性物質ではないが酸化反応過程で重要な役割を果たす物質、例えば、ある種の遷移金属に代表される酸化反応促進物質や種々の酸化反応阻害物質などが含有している場合には、これら物質の酸化反応への寄与を測定することができないことから、膜ろ過供給水の総合的な酸化リスクを把握することが困難であった。
特許文献1では、分離膜ろ過プラントの分離膜と同素材の部材を用いて、分離膜の酸化劣化を判定する方法が開示されているが、この方法では分離膜ろ過プラントの分離膜と同じ速度で同素材の部材の酸化劣化が進行するため、適切なタイミングで迅速に分離膜の酸化劣化を防止するための対策を講じることが困難であった。また、特許文献2では、水の酸化ポテンシャルを高分子化合物の特性変化から判定する方法が開示されているが、分離膜ろ過プラントの分離膜との関連性が十分に取られておらず、正確に膜の酸化劣化を予測し対策を講じることができるものではなかった。
本発明の目的は、分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスクを評価するにあたり、正確かつ迅速に膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握し、分離膜の酸化劣化を予測し対策を講じるための分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法は、次の特徴を有するものである。
(1)分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法であって、膜ろ過供給水を連続分取し、該分取した水を通水容器に通水し、該通水容器内に配置した、該分離膜ろ過プラントの膜素材に対して酸化性物質感受性が同等あるいは高い物質を含む酸化性物質感受性部材の一部を取出して、該酸化性物質感受性部材の酸化分解度を測定する操作を行い、該酸化分解度および/または該酸化分解度から算出される酸化速度に基づき、膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(2)前記通水容器が単位通水容器を複数連結して形成され、前記単位通水容器は流れ方向の両端に接続部が設けられており、前記各単位通水容器内部に酸化性物質感受性部材が設置されていることを特徴とする、(1)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(3)前記分離膜ろ過プラントの分離膜が半透膜であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(4)前記酸化性物質感受性部材が、ポリアミド化合物もしくは酢酸セルロース化合物を含むことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(5)前記酸化性物質感受性部材表面の付着物を物理的手法で回収・除去した後、酸化分解度の測定に供することを特徴とする、(1)〜(4)いずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(6)前記付着物のATP(アデノシン三リン酸)量を測定して膜ろ過供給水のバイオファウリング発生リスクを評価することを特徴とする、(5)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(7)分取した膜ろ過供給水に、遷移金属イオンを所定量添加した後、通水容器に通水することを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(8)前記酸化性物質感受性部材が、分離膜であることを特徴とする、(1)〜(7)いずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法
(9)前記酸化分解度を、前記酸化性物質感受性部材の物理的特性、表面特性あるいは、分離特性の変化から算出することを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(10)前記物理的特性が、引張強度、引張伸度であることを特徴とする、(9)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(11)前記表面特性が、表面官能基であることを特徴とする、(9)または(10)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(12)前記分離特性が、阻止率、透過流束、溶媒透過係数および溶質透過係数であることを特徴とする、(9)〜(11)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(1)分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法であって、膜ろ過供給水を連続分取し、該分取した水を通水容器に通水し、該通水容器内に配置した、該分離膜ろ過プラントの膜素材に対して酸化性物質感受性が同等あるいは高い物質を含む酸化性物質感受性部材の一部を取出して、該酸化性物質感受性部材の酸化分解度を測定する操作を行い、該酸化分解度および/または該酸化分解度から算出される酸化速度に基づき、膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(2)前記通水容器が単位通水容器を複数連結して形成され、前記単位通水容器は流れ方向の両端に接続部が設けられており、前記各単位通水容器内部に酸化性物質感受性部材が設置されていることを特徴とする、(1)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(3)前記分離膜ろ過プラントの分離膜が半透膜であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(4)前記酸化性物質感受性部材が、ポリアミド化合物もしくは酢酸セルロース化合物を含むことを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(5)前記酸化性物質感受性部材表面の付着物を物理的手法で回収・除去した後、酸化分解度の測定に供することを特徴とする、(1)〜(4)いずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(6)前記付着物のATP(アデノシン三リン酸)量を測定して膜ろ過供給水のバイオファウリング発生リスクを評価することを特徴とする、(5)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(7)分取した膜ろ過供給水に、遷移金属イオンを所定量添加した後、通水容器に通水することを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(8)前記酸化性物質感受性部材が、分離膜であることを特徴とする、(1)〜(7)いずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法
(9)前記酸化分解度を、前記酸化性物質感受性部材の物理的特性、表面特性あるいは、分離特性の変化から算出することを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(10)前記物理的特性が、引張強度、引張伸度であることを特徴とする、(9)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(11)前記表面特性が、表面官能基であることを特徴とする、(9)または(10)に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
(12)前記分離特性が、阻止率、透過流束、溶媒透過係数および溶質透過係数であることを特徴とする、(9)〜(11)のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
本発明の目的は、分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスクを評価するにあたり、正確かつ迅速に膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握し、分離膜の酸化劣化を予測し対策を講じるための分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法を提供することにある。
以下、図面を例示し、本発明について詳細説明するが、本発明の内容はこの図に限定されるものではない。図1に、本発明の評価方法を適用する分離膜ろ過プラントのフローを示す。
図1において分離膜ろ過プラントは、原水を貯留する原水貯留槽1と、原水を供給する原水供給ポンプ2と、原水をろ過する前処理膜ろ過ユニット3と、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を貯留する前処理膜ろ過水貯留槽4と、半透膜ろ過ユニット5と、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を半透膜ろ過ユニット5に供給するブースターポンプ6と、更に前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を半透膜ろ過ユニット5で透過水と濃縮水に分離するために昇圧する昇圧ポンプ7から構成されている。
また、原水貯留槽1と前処理膜ろ過ユニット3は原水配管8で、前処理膜ろ過ユニット3と前処理膜ろ過水貯留槽4は前処理膜ろ過水配管9で、前処理膜ろ過水貯留槽4と半透膜ろ過ユニット5は半透膜ろ過供給水配管10で接続されている。分離膜ろ過プラントでは、原水を前処理膜ろ過ユニット3で処理し、前処理膜ろ過水は、一時的に前処理膜ろ過水貯留槽4に貯留された後、ブースターポンプ6によって昇圧ポンプ7に供給され、昇圧ポンプ7で昇圧された後、半透膜ろ過ユニット5に供給され、塩分などの溶質が除去された透過水と、塩分などの溶質が濃縮された濃縮水に分離される。さらに、半透膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価のための酸化性物質感受性部材を収容した酸化性物質感受性部材通水ユニット11と、半透膜ろ過供給水配管10から酸化性物質感受性部材通水ユニット11に半透膜ろ過供給水を連続分取するための酸化性物質感受性部材通水配管12が接続されている。
本発明では、膜ろ過供給水を連続分取し、該分取した膜ろ過供給水を酸化性物質感受性部材通水ユニット11に通水し、酸化性物質感受性部材通水ユニット11内に配置した、半透膜ろ過ユニット5の膜素材に対して酸化性物質感受性が同等あるいは高い物質を含む酸化性物質感受性部材の一部を取出して、該酸化性物質感受性部材の酸化分解度を測定する操作を行い、該酸化分解度および/または該酸化分解度から算出される酸化速度に基づき、膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする。
本発明の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法は、前処理膜ろ過ユニット3に適用される精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)などにも適用できるが、特に、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜を用いて溶質成分の分離や濃縮するプラントに好適で、海水やかん水の淡水化、工業用水の製造、果汁などの濃縮、水道における高度処理などにより好適である。
分離膜ろ過プラントの分離膜が、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜の場合、半透膜ろ過供給水の代わりに、CuイオンやCoイオンなどの遷移金属に代表される酸化反応促進物質は半透膜を透過されず、半透膜ろ過濃縮水中に濃縮されるため、半透膜ろ過供給水の節約および酸化ポテンシャルをより短期間で評価することができるため好ましい。
本発明で使用する酸化性物質感受性部材は、酸化性物質に鋭敏に反応して分離膜ろ過プラントの分離膜よりも物理的特性、表面特性あるいは、分離特性が鋭敏に変化するものが好ましい。物理的特性については、引張強度や引張伸度が挙げられ、酸化性物質感受性部材の形状としては、ダンベル状、短冊状、繊維状、中空糸状のいずれでも構わない。引張強度と引張伸度の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば、引張試験機を用い、測定長50mmの酸化性物質感受性部材を引張速度50mm/分で引張試験を、酸化性物質感受性部材を変えて5回以上行い、引張強度の平均値と、引張伸度の平均値を求めることで算出することができる。また、表面特性については、X線光電子分光分析(ESCA)、エネルギー分散型X線分析(EDS)、波長分散型X線分析(WDS)などを用いて測定される表面官能基、例えば、ハロゲン系物質のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などの濃度や存在比、C−O(エーテル、ヒドロキシ基)やC=O(カルボニル基)やCOOH(カルボン酸)などの濃度や存在比が挙げられる。また、以下で詳しく説明するFujiwara Testなどの比色法での呈色有無から判定する。
本発明において、酸化性物質感受性部材の形状は限定されるものではないが、分離膜であることが好ましく、より好ましくは精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜であり、特に半透膜は酸化性物質に対して感受性が高く、分離特性が変化するため好ましい。分離特性については、分離膜の形状でろ過試験を行ない、阻止率、透過流束、溶媒透過係数および溶質透過係数などを評価した後、これらの分離特性の変化から膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価する。分離膜がナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜の場合、阻止率、透過流束、溶媒透過係数および溶質透過係数は、一般的に公知の計算式を用いて行えば良く、例えば、次式から算出する。
R=(1−(Cp/Cf))×100・・・(1)
Jv=Lp(ΔP−π(Cm))・・・(2)
Js=P(Cm−Cp)・・・(3)
(Cm−Cp)/(Cf−Cp)=exp(Jv/k)・・・(4)
Cp=Js/Jv・・・(5)
Lp=α×Lp25×μ25/μ・・・(6)
P=β×P25×μ25/μ×(273.15+T)/(298.15)・・・(7)
R :阻止率(見かけの阻止率) [%]
Cf :半透膜供給水濃度 [mg/l]
Cm :膜面濃度 [mg/l]
Cp :透過水濃度 [mg/l]
Js :溶質透過流束 [kg/m2/s]
Jv :純水透過流束 [m3/m2/s]
k :物質移動係数 [m/s]
Lp :溶媒透過係数 [m3/m2/Pa/s]
Lp25 :25℃での溶媒透過係数 [m3/m2/Pa/s」
P :溶質透過係数 [m/s]
P25 :25℃での溶質透過係数 [m/s]
T :温度 [℃]
α :運転条件による変動係数 [−]
β :運転条件による変動係数 [−]
ΔP :運転圧力 [Pa]
μ :粘度 [Pa・s]
μ25 :25℃での粘度 [Pa・s]
π(Cm):浸透圧 [Pa]
溶質透過係数は、全蒸発残留物(TDS)から算出しても良いが、B(ホウ素)から算出した方が、酸化性物質に対してより鋭敏に反応することから好ましい。また、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)の場合、分画分子量から阻止率を算出しても構わない。分画分子量測定は、溶液粘度法、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、浸透圧法、光散乱法、超遠心法などで行うことができる。
酸化分解度は物理的特性、表面特性あるいは、分離特性の絶対値で評価しても構わないが、膜ろ過供給水に非接触の酸化性物質感受性部材との相対値で評価しても構わない。また、酸化速度は不規則的でも、規則的でも構わないが、複数回酸化分解度を測定し、物理的特性、表面特性あるいは、分離特性の変化から算出する。
酸化性物質感受性部材の素材としては、酢酸セルロース化合物、ポリアミド化合物、ポリエステル化合物、ポリイミド化合物などが挙げられ、特に半透膜素材として広く使用されている酢酸セルロース化合物やポリアミド化合物が好ましく、酸化性物質への感受性が高いポリアミド化合物がより好ましい。例えば、ポリアミド系逆浸透膜よりも酸化耐久性が高いと言われている酢酸セルロース系逆浸透膜ろ過プラントの場合、酸化性物質感受性部材としてポリアミド化合物を使用できる。また、同素材でも製膜条件が異なると界面重合反応に影響を及ぼし、酸化性物質への感受性が変化する。例えば、モノマー濃度を低くしたり、種々の添加物を界面重合時に添加したりして製膜した分離膜の方が酸化性物質への感受性が高くなるため好ましい。また、酸化性物質感受性部材と分離膜ろ過プラントの分離膜の酸化に対する物理的特性、表面特性あるいは、分離特性変化の差異を予め測定することで、分離膜ろ過プラントの分離膜における酸化リスクを正確に評価でき、好ましい。
本発明では、単位通水容器を複数連結して形成され、流れ方向の両端に接続部が設けられて、流れ方向に分割可能な酸化性物質感受性部材通水ユニット11内部に、酸化性物質感受性部材が設置された通水容器を用いることで、酸化性物質感受性部材の酸化ポテンシャルを測定する操作を簡便に実施することが可能となるため、好ましい。
酸化性物質感受性部材の酸化ポテンシャルの測定頻度は、不規則的でも、規則的でも構わないが、規則的に1日〜1週間に1回の頻度で実施することが、突発的な酸化性物質などの発生時期の絞込みができ、迅速に対策を講じることができるため好ましい。
ここで、流れ方向に分割可能とは、図2に例示するように、ネジ構造や嵌合構造(ジョイントなど)の接続部剤を介し、ある単位構造物を連続して結合および分離可能であること、あるいは、ホースなどハサミなどを用いて容易に切断可能、または一部分離可能な構造を有することを意味する。前者のような通水容器としては、図3、図4に例示するような、円筒状であり長手方向(通水方向)の両端にネジ溝が設けられ、連結可能な構造を有する単位通水容器60aを、複数連結して形成した通水容器60を好ましい形態として例示することができる。接続部には、形状に応じて、パッキン、シールテープ、O−リングなどの水漏れ防止対策を施しておくことが好ましい。
また、簡易的な通水容器としては、後者のようなホースなどの部材を用いることが可能である。この場合、通水容器は軟質素材で形成された円筒状であることが好ましい。これによって、ハサミなどを用いて容易に切断し、酸化性物質感受性部材を取り出すことが可能である。
図3に示した単位通水容器60aでは、円筒形状の上方の端部にオネジ、下方にはメネジが形成され、お互いに隣接する単位通水容器60a同士が連結可能な構造になっている。また連結された単位通水容器60aが、通水容器60を形成し、その上端および下端が、それぞれの通水容器開閉部53に接続している。円筒形状の単位通水容器60aの通水面側には、酸化性物質感受性部材61を設置する。なお、酸化性物質感受性部材61が分離膜(特に半透膜)の場合、酢酸セルロース化合物やポリアミド化合物からなる分離機能層が内向きになるように設置する。
通水容器、ホース、接続部剤(ジョイント)、流量計、流量調整バルブの材質は、水圧などへの強度要件を満たすものであり、また、殺菌や薬品洗浄などで使用されている薬品に対して耐性を有し、有機物の溶出や吸着の少ないものであれば構わない。さらに、表面が平滑であるものが好ましい。好適な材質としては、ガラスやポリカーボネート、“テフロン”(登録商標)、ステンレス、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、水道配管に使用される硬質ポリ塩化ビニル(HIVP)などが挙げられる。
通水容器60の内径は特に限定されるものではないが、膜ろ過供給水量と以下で詳しく説明する通水容器内の線速度条件と照らし合わせて決定すると良い。
通水容器60およびホースなどの部材は、藻類増殖を抑制するためにも遮光性があることが好ましく、特に、通水容器60は遮光性を有することが好ましい。遮光性のない、あるいは、低い部材を使用する場合は、酸化性物質感受性部材61の取出時以外は、通水容器60外側を遮光性のある部材で覆い隠し、遮光することが好ましい。
酸化性物質感受性部材に膜ろ過供給水を通水すると、酸化性物質感受性部材表面に、膜ろ過供給水中の有機物や無機物などの汚れ成分が付着蓄積する。これら付着物存在下では、酸化性物質感受性部材の表面特性および分離特性を正確に把握することが難しくなるが、酸やアルカリなどで薬品洗浄すると酸化性物質感受性部材が薬品洗浄によって化学的に劣化することが懸念される。そこで、本発明では、酸化性物質感受性部材表面の付着物を物理的手法で回収・除去した後、酸化分解度測定に供することを特徴とする。さらに、回収した付着物のATP(アデノシン三リン酸)を測定し、膜ろ過供給水のバイオファウリング発生リスクを併せて評価することを特徴とする。
なお、バイオファウリング発生リスクの評価法の1つに、膜ろ過供給水をバイオフィルム形成基材に通水し、基材表面のバイオフィルム量を測定評価し、その結果を基にリスク評価する方法がある。バイオフィルム量の評価、測定条件の詳細は、国際2008/038575号公報に開示されているが、概要は以下の通りである。
通水容器60への通水流量は、酸化性物質感受性部材(=バイオフィルム形成基材)収容後の通水容器内の線速度を、半透膜ろ過ユニット5の半透膜表面上の平均線速度と同等にすることが、酸化性物質との接触、微生物の生育環境およびせん断環境となるため好ましい。線速度は、特に限定するものではないが、一般的に5〜30cm/sの範囲になるように調整する。
バイオフィルム量の測定は、図2の円筒ネジ式通水容器の場合を例に説明する。図2において、流れ方向58に流量調整バルブ56、分割可能な通水容器60、流量計51がホース50により連通している。分割可能な通水容器60は、ホース50とワンタッチ式ジョイント52を介して接続している。また、分割可能な通水容器60は、両端に通水容器開閉部53を有し、その間を複数の単位通水容器60aを連結して構成されている。
バイオフィルム量を測定するときは、流量調整バルブ56を閉にして通水容器60への通水を停止し、上部または下部のワンタッチ式ジョイント52を外し、必要数の単位通水容器60aを回転させて取り外す。単位通水容器を取り出した後は、残りの通水容器60を再接続して通水開始する。取り出した単位通水容器60aについては、単位通水容器60a内に設置した酸化性物質感受性部材61表面上のバイオフィルム量を測定する。
本発明では、バイオフィルム量の測定を継続的に行うが、バイオフィルム量の測定頻度は、通常、4時間〜6ヶ月に1回の頻度で実施する。また、測定頻度は、不規則的でも、規則的でも構わない。
ここで、バイオフィルムには、生命活動を行っているバクテリアや不活化した細菌や多糖類やたんぱく質などのそれら代謝生成物、さらには死骸や核酸などの分子が含有されている。従って、バイオフィルムの定量化方法としては、たんぱく質、多糖類、核酸、細菌の全菌数、ATP(アデノシン三リン酸)量などにより定量化することが可能であり、任意の方法を用いても良いが、この中もATP量を測定することが、感度、簡便性、迅速性に優れ、ポータブル機器や試薬なども市販されているため好ましい。
酸化性物質感受性部材61表面の付着物を物理的手法で回収・除去方法としては、回収率が高く定量的な方法であれば特に限定されないが、効率性の高い方法を選択すれば良く、取り出した酸化性物質感受性部材を純水に浸漬し、超音波破砕により付着物を純水中に分散させ回収する方法が開示されている。また、酸化性物質感受性部材に固着した付着物を微生物の生存率に影響を与えず測定するために確実に剥離させ回収する方法としては、取り出した酸化性物質感受性部材の付着物を拭取り用具を用いて回収した後、拭取り用具を純水に浸漬し、付着物を純水中に分散させ回収する方法が最も好ましい。
拭取り用具としては、以下で詳細を説明するATP(アデノシン三リン酸)が検出されない清潔で、かつ酸化剤系消毒液を含有していない綿棒が好適な用具として挙げられるが、特に限定されない。
付着物を分散させる純水は、蒸留水、精製直後の逆浸透膜(RO膜)水およびイオン交換水、市販の超純水などのATPを含有しないもの(10ng/L以下)を用いることが、測定精度向上のため好ましいが、水道水をオートクレープ滅菌して使用しても構わない。
サンプルを入れるチューブなどの容器もATPに汚染されていない清澄なものであれば良いが、予め滅菌したものを使用しても、非滅菌品をオートクレープ滅菌しても構わない。
測定用チューブに純水を分注し、酸化性物質感受性部材61表面の付着物を拭取った綿棒を1〜2分間ずつ浸漬・攪拌して分散液を得る。この操作を1回実施しても良いが、正確な値を得るためには、拭取った付着物からバイオフィルムをできるだけ多く綿棒から分散・回収させるために、分散液に一度浸漬・攪拌させた綿棒を、別の分散液に浸漬・攪拌させることを繰り返し、数回に分けて実施した方が、正確な値が得られ、値自体が安定化するため好ましい。
以上のようなバイオフィルム量の測定を継続的に実施することで、バイオフィルム量の推移を算出したり、バイオフィルム量の経時変化を基に、バイオフィルム形成速度を算出したりすることができる。
図4に、本発明の評価方法を適用する他の分離膜ろ過プラントのフローを示す。近来、Cuイオンなどの遷移金属を含有する海水に重亜硫酸ナトリウムを添加すると酸化還元電位が上昇し、特に次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加しない場合でも、塩素が発生する現象が報告されている。しかしながら、海水中にCuイオンなどの遷移金属は微量にしか含まれないため、正確に測定するには高度な分析技術が必要であり、さらに海水中には遷移金属に代表される酸化反応促進物質や酸化反応阻害物質など様々な物質が共存しているため、特定イオンのみモニタリングしても酸化反応を正確に把握することが困難であった。一方で、逆浸透膜ろ過プラントの膜表面付着物中に、海水中に微量にしか含まれない遷移金属が含有していることが多々あることから、逆浸透膜表面では遷移金属イオンが濃縮して存在し、酸化反応を促進させている可能性が考えられる。そこで、本発明では、分取した膜ろ過供給水に、遷移金属イオン含有溶液貯留タンク13に貯留された遷移金属イオン溶液を遷移金属イオン溶液添加ポンプ14で所定濃度となるように添加後、通水容器に通水することで、酸化反応促進物質共存下における膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握でき、分離膜の酸化劣化を予測し適切な対策を講じることが可能となる。添加する遷移金属イオンについては、Cuイオン、Coイオン、Feイオン、Mnイオンなど共存下で酸化反応が促進され易く、これら遷移金属イオンを添加することが好ましい。添加する遷移金属イオン濃度は、遷移金属イオンの種類によって様々であるが、1〜100ppbが好ましく、10〜100ppbがより好ましい。さらに、遷移金属イオンによる酸化促進は瞬間的に発生せず数分〜数十分の反応時間を要することから、通水停止時間が数分〜数十分のサイクルでON/OFF制御することが酸化反応促進物質共存下における膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握する上で好ましく、通水停止時間が10〜20分間がより好ましい。また、図1と図4の態様を同時に実施することで、半透膜ろ過ユニット5の膜ろ過供給水と、酸化反応促進物質共存下における膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルが把握できるため好ましく、直列でも並列でも構わないが、半透膜ろ過ユニット5の膜ろ過供給水の節約の観点から、酸化性物質感受性部材通水ユニット11を2ユニット直列接続し、中間に遷移金属イオン溶液を添加することがより好ましい。
酸化剤としては、ハロゲン系物質のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む化合物、シュウ酸、過酸化水素、オゾンなどが挙げられ、ハロゲン系酸化剤であると以下で説明するFujiwara Testによって、酸化物質感受性部材が水中に含有するハロゲン系酸化性物質および/またはハロゲン系酸化剤と接触したか、すなわち表面特性が変化したか簡易判定でき、ハロゲン系酸化剤の中でも、次亜塩素酸ナトリウムやクロラミン、またはニ酸化塩素が一般的に水処理分野で殺菌として用いられることが多いため、さらに好ましい。
Fujiwara Testとは、有機ハロゲン化合物の簡易テストなどで用いられる分析法で、有機ハロゲン化合物とピリジン/アルカリ水溶液を混合して加熱すると、ピリジン層が赤色に呈色する反応を応用している。本発明では、酸化性物質感受性部材が水中に含有するハロゲン系酸化性物質および/またはハロゲン系酸化剤と接触することで、酸化性物質感受性部材表面に有機ハロゲン化合物が生成し蓄積し、ピリジン法で赤色呈色した場合、分離膜の酸化リスクがあると判定する。Fujiwara Testの実施法としては、例えばAlice Anthony et al., Journal of Membrane Science, 347, 2010, 159-164に記載されている以下の方法が挙げられるが、本発明においてはこの方法に限定されない。
(1)ピリジン/水酸化カリウム(10M)をそれぞれ10mlずつ混ぜ、混合水溶液を試験管内で調製する。
(2)酸化性物質感受性部材を調製した混合水溶液中に浸漬する。
(3)試験管を密閉し、湯浴の中で2分間温める。
(4)混合水溶液中の酸化性物質感受性部材の赤色呈色有無を確認する。呈色が有る場合、酸化性物質感受性部材がハロゲン系酸化剤に接触した可能性が高く、分離膜に酸化リスクがあると判定する。
半透膜とは原水中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性を有する膜であり、ナノろ過膜(NF膜)と逆浸透膜(RO膜)を包含する。その素材には酢酸セルロース化合物、ポリアミド化合物、ポリエステル化合物、ポリイミド化合物、ビニルポリマー化合物などのよく使用されている。またその膜構造は膜の少なくとも片面に分離緻密層を持ち、分離緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合膜などを適宜使用できる。膜形態には中空糸膜、平膜がある。また、膜素材、膜構造や膜形態によらず実施することができいずれも効果があるが、代表的な膜としては、例えば酢酸セルロース化合物やポリアミド化合物の非対称膜およびポリアミド化合物、ポリ尿素化合物の分離機能層を有する複合膜などがあり、造水量、耐久性、塩排除率の観点から、酢酸セルロース化合物の非対称膜、ポリアミド化合物の複合膜を用いることが好ましい。
図1や図4に示すように、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を貯留する前処理膜ろ過水貯留槽4(中間槽)を省き、前処理ろ過ユニット3のろ過水を直接半透膜ろ過ユニット5に供給することで、中間槽での微生物増殖による後段のROバイオファウリングを抑制できると共に、前処理膜ろ過水貯留槽4(中間槽)やブースターポンプ6を省くことができるため、設備費削減や省スペース性に繋がるため好適である。前処理ろ過水貯留槽(中間槽)4とブースターポンプ6を省く場合において、昇圧ポンプ7でキャビテーションが発生しないように、ろ過膜のろ過水に0.05〜0.2MPaの圧力を持たせて、昇圧ポンプ7に供給することで、半透膜ろ過ユニット5で透過水と濃縮水に分離するため、前処理膜ろ過ユニット3を複数本並列に設置し、一部をオンライン洗浄している場合は他の前処理膜ろ過ユニット3で補い、分離膜ろ過プラント全体として連続運転可能な状態にすることが好ましい。
半透膜ろ過ユニット5の供給圧力は0.1MPa〜15MPaであり、被処理原水の種類、運転方法などで適宜使い分けられる。かん水や超純水などの浸透圧の低い水を供給水とする場合には比較的低圧で、海水淡水化や廃水処理、有用物の回収などの場合には比較的高圧で使用される。
また、本発明において、半透膜ろ過ユニット5としては、特に制約はないが、取り扱いを容易にするため中空糸膜状や平膜状の半透膜を筐体に納めて流体分離素子(エレメント)としたものを耐圧容器に充填したものを用いることが好ましい。流体分離素子は、平膜で形成する場合、例えば、多数の孔を穿設した筒状の中心パイプの周りに、半透膜を流路材(ネット)とともに円筒状に巻回したものが一般的であり、市販品としては、東レ(株)製逆浸透膜エレメントTM700シリーズやTM800シリーズを挙げることができる。これら流体分離素子は1本でも、また複数本を直列あるいは並列に接続して半透膜ろ過ユニットを構成することも好ましい。
図1において分離膜ろ過プラントは、原水を貯留する原水貯留槽1と、原水を供給する原水供給ポンプ2と、原水をろ過する前処理膜ろ過ユニット3と、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を貯留する前処理膜ろ過水貯留槽4と、半透膜ろ過ユニット5と、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を半透膜ろ過ユニット5に供給するブースターポンプ6と、更に前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を半透膜ろ過ユニット5で透過水と濃縮水に分離するために昇圧する昇圧ポンプ7から構成されている。
また、原水貯留槽1と前処理膜ろ過ユニット3は原水配管8で、前処理膜ろ過ユニット3と前処理膜ろ過水貯留槽4は前処理膜ろ過水配管9で、前処理膜ろ過水貯留槽4と半透膜ろ過ユニット5は半透膜ろ過供給水配管10で接続されている。分離膜ろ過プラントでは、原水を前処理膜ろ過ユニット3で処理し、前処理膜ろ過水は、一時的に前処理膜ろ過水貯留槽4に貯留された後、ブースターポンプ6によって昇圧ポンプ7に供給され、昇圧ポンプ7で昇圧された後、半透膜ろ過ユニット5に供給され、塩分などの溶質が除去された透過水と、塩分などの溶質が濃縮された濃縮水に分離される。さらに、半透膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価のための酸化性物質感受性部材を収容した酸化性物質感受性部材通水ユニット11と、半透膜ろ過供給水配管10から酸化性物質感受性部材通水ユニット11に半透膜ろ過供給水を連続分取するための酸化性物質感受性部材通水配管12が接続されている。
本発明では、膜ろ過供給水を連続分取し、該分取した膜ろ過供給水を酸化性物質感受性部材通水ユニット11に通水し、酸化性物質感受性部材通水ユニット11内に配置した、半透膜ろ過ユニット5の膜素材に対して酸化性物質感受性が同等あるいは高い物質を含む酸化性物質感受性部材の一部を取出して、該酸化性物質感受性部材の酸化分解度を測定する操作を行い、該酸化分解度および/または該酸化分解度から算出される酸化速度に基づき、膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする。
本発明の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法は、前処理膜ろ過ユニット3に適用される精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)などにも適用できるが、特に、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜を用いて溶質成分の分離や濃縮するプラントに好適で、海水やかん水の淡水化、工業用水の製造、果汁などの濃縮、水道における高度処理などにより好適である。
分離膜ろ過プラントの分離膜が、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜の場合、半透膜ろ過供給水の代わりに、CuイオンやCoイオンなどの遷移金属に代表される酸化反応促進物質は半透膜を透過されず、半透膜ろ過濃縮水中に濃縮されるため、半透膜ろ過供給水の節約および酸化ポテンシャルをより短期間で評価することができるため好ましい。
本発明で使用する酸化性物質感受性部材は、酸化性物質に鋭敏に反応して分離膜ろ過プラントの分離膜よりも物理的特性、表面特性あるいは、分離特性が鋭敏に変化するものが好ましい。物理的特性については、引張強度や引張伸度が挙げられ、酸化性物質感受性部材の形状としては、ダンベル状、短冊状、繊維状、中空糸状のいずれでも構わない。引張強度と引張伸度の測定方法は特に限定されるものではないが、例えば、引張試験機を用い、測定長50mmの酸化性物質感受性部材を引張速度50mm/分で引張試験を、酸化性物質感受性部材を変えて5回以上行い、引張強度の平均値と、引張伸度の平均値を求めることで算出することができる。また、表面特性については、X線光電子分光分析(ESCA)、エネルギー分散型X線分析(EDS)、波長分散型X線分析(WDS)などを用いて測定される表面官能基、例えば、ハロゲン系物質のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などの濃度や存在比、C−O(エーテル、ヒドロキシ基)やC=O(カルボニル基)やCOOH(カルボン酸)などの濃度や存在比が挙げられる。また、以下で詳しく説明するFujiwara Testなどの比色法での呈色有無から判定する。
本発明において、酸化性物質感受性部材の形状は限定されるものではないが、分離膜であることが好ましく、より好ましくは精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜であり、特に半透膜は酸化性物質に対して感受性が高く、分離特性が変化するため好ましい。分離特性については、分離膜の形状でろ過試験を行ない、阻止率、透過流束、溶媒透過係数および溶質透過係数などを評価した後、これらの分離特性の変化から膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価する。分離膜がナノろ過膜(NF膜)や逆浸透膜(RO膜)などの半透膜の場合、阻止率、透過流束、溶媒透過係数および溶質透過係数は、一般的に公知の計算式を用いて行えば良く、例えば、次式から算出する。
R=(1−(Cp/Cf))×100・・・(1)
Jv=Lp(ΔP−π(Cm))・・・(2)
Js=P(Cm−Cp)・・・(3)
(Cm−Cp)/(Cf−Cp)=exp(Jv/k)・・・(4)
Cp=Js/Jv・・・(5)
Lp=α×Lp25×μ25/μ・・・(6)
P=β×P25×μ25/μ×(273.15+T)/(298.15)・・・(7)
R :阻止率(見かけの阻止率) [%]
Cf :半透膜供給水濃度 [mg/l]
Cm :膜面濃度 [mg/l]
Cp :透過水濃度 [mg/l]
Js :溶質透過流束 [kg/m2/s]
Jv :純水透過流束 [m3/m2/s]
k :物質移動係数 [m/s]
Lp :溶媒透過係数 [m3/m2/Pa/s]
Lp25 :25℃での溶媒透過係数 [m3/m2/Pa/s」
P :溶質透過係数 [m/s]
P25 :25℃での溶質透過係数 [m/s]
T :温度 [℃]
α :運転条件による変動係数 [−]
β :運転条件による変動係数 [−]
ΔP :運転圧力 [Pa]
μ :粘度 [Pa・s]
μ25 :25℃での粘度 [Pa・s]
π(Cm):浸透圧 [Pa]
溶質透過係数は、全蒸発残留物(TDS)から算出しても良いが、B(ホウ素)から算出した方が、酸化性物質に対してより鋭敏に反応することから好ましい。また、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)の場合、分画分子量から阻止率を算出しても構わない。分画分子量測定は、溶液粘度法、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、浸透圧法、光散乱法、超遠心法などで行うことができる。
酸化分解度は物理的特性、表面特性あるいは、分離特性の絶対値で評価しても構わないが、膜ろ過供給水に非接触の酸化性物質感受性部材との相対値で評価しても構わない。また、酸化速度は不規則的でも、規則的でも構わないが、複数回酸化分解度を測定し、物理的特性、表面特性あるいは、分離特性の変化から算出する。
酸化性物質感受性部材の素材としては、酢酸セルロース化合物、ポリアミド化合物、ポリエステル化合物、ポリイミド化合物などが挙げられ、特に半透膜素材として広く使用されている酢酸セルロース化合物やポリアミド化合物が好ましく、酸化性物質への感受性が高いポリアミド化合物がより好ましい。例えば、ポリアミド系逆浸透膜よりも酸化耐久性が高いと言われている酢酸セルロース系逆浸透膜ろ過プラントの場合、酸化性物質感受性部材としてポリアミド化合物を使用できる。また、同素材でも製膜条件が異なると界面重合反応に影響を及ぼし、酸化性物質への感受性が変化する。例えば、モノマー濃度を低くしたり、種々の添加物を界面重合時に添加したりして製膜した分離膜の方が酸化性物質への感受性が高くなるため好ましい。また、酸化性物質感受性部材と分離膜ろ過プラントの分離膜の酸化に対する物理的特性、表面特性あるいは、分離特性変化の差異を予め測定することで、分離膜ろ過プラントの分離膜における酸化リスクを正確に評価でき、好ましい。
本発明では、単位通水容器を複数連結して形成され、流れ方向の両端に接続部が設けられて、流れ方向に分割可能な酸化性物質感受性部材通水ユニット11内部に、酸化性物質感受性部材が設置された通水容器を用いることで、酸化性物質感受性部材の酸化ポテンシャルを測定する操作を簡便に実施することが可能となるため、好ましい。
酸化性物質感受性部材の酸化ポテンシャルの測定頻度は、不規則的でも、規則的でも構わないが、規則的に1日〜1週間に1回の頻度で実施することが、突発的な酸化性物質などの発生時期の絞込みができ、迅速に対策を講じることができるため好ましい。
ここで、流れ方向に分割可能とは、図2に例示するように、ネジ構造や嵌合構造(ジョイントなど)の接続部剤を介し、ある単位構造物を連続して結合および分離可能であること、あるいは、ホースなどハサミなどを用いて容易に切断可能、または一部分離可能な構造を有することを意味する。前者のような通水容器としては、図3、図4に例示するような、円筒状であり長手方向(通水方向)の両端にネジ溝が設けられ、連結可能な構造を有する単位通水容器60aを、複数連結して形成した通水容器60を好ましい形態として例示することができる。接続部には、形状に応じて、パッキン、シールテープ、O−リングなどの水漏れ防止対策を施しておくことが好ましい。
また、簡易的な通水容器としては、後者のようなホースなどの部材を用いることが可能である。この場合、通水容器は軟質素材で形成された円筒状であることが好ましい。これによって、ハサミなどを用いて容易に切断し、酸化性物質感受性部材を取り出すことが可能である。
図3に示した単位通水容器60aでは、円筒形状の上方の端部にオネジ、下方にはメネジが形成され、お互いに隣接する単位通水容器60a同士が連結可能な構造になっている。また連結された単位通水容器60aが、通水容器60を形成し、その上端および下端が、それぞれの通水容器開閉部53に接続している。円筒形状の単位通水容器60aの通水面側には、酸化性物質感受性部材61を設置する。なお、酸化性物質感受性部材61が分離膜(特に半透膜)の場合、酢酸セルロース化合物やポリアミド化合物からなる分離機能層が内向きになるように設置する。
通水容器、ホース、接続部剤(ジョイント)、流量計、流量調整バルブの材質は、水圧などへの強度要件を満たすものであり、また、殺菌や薬品洗浄などで使用されている薬品に対して耐性を有し、有機物の溶出や吸着の少ないものであれば構わない。さらに、表面が平滑であるものが好ましい。好適な材質としては、ガラスやポリカーボネート、“テフロン”(登録商標)、ステンレス、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、水道配管に使用される硬質ポリ塩化ビニル(HIVP)などが挙げられる。
通水容器60の内径は特に限定されるものではないが、膜ろ過供給水量と以下で詳しく説明する通水容器内の線速度条件と照らし合わせて決定すると良い。
通水容器60およびホースなどの部材は、藻類増殖を抑制するためにも遮光性があることが好ましく、特に、通水容器60は遮光性を有することが好ましい。遮光性のない、あるいは、低い部材を使用する場合は、酸化性物質感受性部材61の取出時以外は、通水容器60外側を遮光性のある部材で覆い隠し、遮光することが好ましい。
酸化性物質感受性部材に膜ろ過供給水を通水すると、酸化性物質感受性部材表面に、膜ろ過供給水中の有機物や無機物などの汚れ成分が付着蓄積する。これら付着物存在下では、酸化性物質感受性部材の表面特性および分離特性を正確に把握することが難しくなるが、酸やアルカリなどで薬品洗浄すると酸化性物質感受性部材が薬品洗浄によって化学的に劣化することが懸念される。そこで、本発明では、酸化性物質感受性部材表面の付着物を物理的手法で回収・除去した後、酸化分解度測定に供することを特徴とする。さらに、回収した付着物のATP(アデノシン三リン酸)を測定し、膜ろ過供給水のバイオファウリング発生リスクを併せて評価することを特徴とする。
なお、バイオファウリング発生リスクの評価法の1つに、膜ろ過供給水をバイオフィルム形成基材に通水し、基材表面のバイオフィルム量を測定評価し、その結果を基にリスク評価する方法がある。バイオフィルム量の評価、測定条件の詳細は、国際2008/038575号公報に開示されているが、概要は以下の通りである。
通水容器60への通水流量は、酸化性物質感受性部材(=バイオフィルム形成基材)収容後の通水容器内の線速度を、半透膜ろ過ユニット5の半透膜表面上の平均線速度と同等にすることが、酸化性物質との接触、微生物の生育環境およびせん断環境となるため好ましい。線速度は、特に限定するものではないが、一般的に5〜30cm/sの範囲になるように調整する。
バイオフィルム量の測定は、図2の円筒ネジ式通水容器の場合を例に説明する。図2において、流れ方向58に流量調整バルブ56、分割可能な通水容器60、流量計51がホース50により連通している。分割可能な通水容器60は、ホース50とワンタッチ式ジョイント52を介して接続している。また、分割可能な通水容器60は、両端に通水容器開閉部53を有し、その間を複数の単位通水容器60aを連結して構成されている。
バイオフィルム量を測定するときは、流量調整バルブ56を閉にして通水容器60への通水を停止し、上部または下部のワンタッチ式ジョイント52を外し、必要数の単位通水容器60aを回転させて取り外す。単位通水容器を取り出した後は、残りの通水容器60を再接続して通水開始する。取り出した単位通水容器60aについては、単位通水容器60a内に設置した酸化性物質感受性部材61表面上のバイオフィルム量を測定する。
本発明では、バイオフィルム量の測定を継続的に行うが、バイオフィルム量の測定頻度は、通常、4時間〜6ヶ月に1回の頻度で実施する。また、測定頻度は、不規則的でも、規則的でも構わない。
ここで、バイオフィルムには、生命活動を行っているバクテリアや不活化した細菌や多糖類やたんぱく質などのそれら代謝生成物、さらには死骸や核酸などの分子が含有されている。従って、バイオフィルムの定量化方法としては、たんぱく質、多糖類、核酸、細菌の全菌数、ATP(アデノシン三リン酸)量などにより定量化することが可能であり、任意の方法を用いても良いが、この中もATP量を測定することが、感度、簡便性、迅速性に優れ、ポータブル機器や試薬なども市販されているため好ましい。
酸化性物質感受性部材61表面の付着物を物理的手法で回収・除去方法としては、回収率が高く定量的な方法であれば特に限定されないが、効率性の高い方法を選択すれば良く、取り出した酸化性物質感受性部材を純水に浸漬し、超音波破砕により付着物を純水中に分散させ回収する方法が開示されている。また、酸化性物質感受性部材に固着した付着物を微生物の生存率に影響を与えず測定するために確実に剥離させ回収する方法としては、取り出した酸化性物質感受性部材の付着物を拭取り用具を用いて回収した後、拭取り用具を純水に浸漬し、付着物を純水中に分散させ回収する方法が最も好ましい。
拭取り用具としては、以下で詳細を説明するATP(アデノシン三リン酸)が検出されない清潔で、かつ酸化剤系消毒液を含有していない綿棒が好適な用具として挙げられるが、特に限定されない。
付着物を分散させる純水は、蒸留水、精製直後の逆浸透膜(RO膜)水およびイオン交換水、市販の超純水などのATPを含有しないもの(10ng/L以下)を用いることが、測定精度向上のため好ましいが、水道水をオートクレープ滅菌して使用しても構わない。
サンプルを入れるチューブなどの容器もATPに汚染されていない清澄なものであれば良いが、予め滅菌したものを使用しても、非滅菌品をオートクレープ滅菌しても構わない。
測定用チューブに純水を分注し、酸化性物質感受性部材61表面の付着物を拭取った綿棒を1〜2分間ずつ浸漬・攪拌して分散液を得る。この操作を1回実施しても良いが、正確な値を得るためには、拭取った付着物からバイオフィルムをできるだけ多く綿棒から分散・回収させるために、分散液に一度浸漬・攪拌させた綿棒を、別の分散液に浸漬・攪拌させることを繰り返し、数回に分けて実施した方が、正確な値が得られ、値自体が安定化するため好ましい。
以上のようなバイオフィルム量の測定を継続的に実施することで、バイオフィルム量の推移を算出したり、バイオフィルム量の経時変化を基に、バイオフィルム形成速度を算出したりすることができる。
図4に、本発明の評価方法を適用する他の分離膜ろ過プラントのフローを示す。近来、Cuイオンなどの遷移金属を含有する海水に重亜硫酸ナトリウムを添加すると酸化還元電位が上昇し、特に次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加しない場合でも、塩素が発生する現象が報告されている。しかしながら、海水中にCuイオンなどの遷移金属は微量にしか含まれないため、正確に測定するには高度な分析技術が必要であり、さらに海水中には遷移金属に代表される酸化反応促進物質や酸化反応阻害物質など様々な物質が共存しているため、特定イオンのみモニタリングしても酸化反応を正確に把握することが困難であった。一方で、逆浸透膜ろ過プラントの膜表面付着物中に、海水中に微量にしか含まれない遷移金属が含有していることが多々あることから、逆浸透膜表面では遷移金属イオンが濃縮して存在し、酸化反応を促進させている可能性が考えられる。そこで、本発明では、分取した膜ろ過供給水に、遷移金属イオン含有溶液貯留タンク13に貯留された遷移金属イオン溶液を遷移金属イオン溶液添加ポンプ14で所定濃度となるように添加後、通水容器に通水することで、酸化反応促進物質共存下における膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握でき、分離膜の酸化劣化を予測し適切な対策を講じることが可能となる。添加する遷移金属イオンについては、Cuイオン、Coイオン、Feイオン、Mnイオンなど共存下で酸化反応が促進され易く、これら遷移金属イオンを添加することが好ましい。添加する遷移金属イオン濃度は、遷移金属イオンの種類によって様々であるが、1〜100ppbが好ましく、10〜100ppbがより好ましい。さらに、遷移金属イオンによる酸化促進は瞬間的に発生せず数分〜数十分の反応時間を要することから、通水停止時間が数分〜数十分のサイクルでON/OFF制御することが酸化反応促進物質共存下における膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握する上で好ましく、通水停止時間が10〜20分間がより好ましい。また、図1と図4の態様を同時に実施することで、半透膜ろ過ユニット5の膜ろ過供給水と、酸化反応促進物質共存下における膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルが把握できるため好ましく、直列でも並列でも構わないが、半透膜ろ過ユニット5の膜ろ過供給水の節約の観点から、酸化性物質感受性部材通水ユニット11を2ユニット直列接続し、中間に遷移金属イオン溶液を添加することがより好ましい。
酸化剤としては、ハロゲン系物質のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む化合物、シュウ酸、過酸化水素、オゾンなどが挙げられ、ハロゲン系酸化剤であると以下で説明するFujiwara Testによって、酸化物質感受性部材が水中に含有するハロゲン系酸化性物質および/またはハロゲン系酸化剤と接触したか、すなわち表面特性が変化したか簡易判定でき、ハロゲン系酸化剤の中でも、次亜塩素酸ナトリウムやクロラミン、またはニ酸化塩素が一般的に水処理分野で殺菌として用いられることが多いため、さらに好ましい。
Fujiwara Testとは、有機ハロゲン化合物の簡易テストなどで用いられる分析法で、有機ハロゲン化合物とピリジン/アルカリ水溶液を混合して加熱すると、ピリジン層が赤色に呈色する反応を応用している。本発明では、酸化性物質感受性部材が水中に含有するハロゲン系酸化性物質および/またはハロゲン系酸化剤と接触することで、酸化性物質感受性部材表面に有機ハロゲン化合物が生成し蓄積し、ピリジン法で赤色呈色した場合、分離膜の酸化リスクがあると判定する。Fujiwara Testの実施法としては、例えばAlice Anthony et al., Journal of Membrane Science, 347, 2010, 159-164に記載されている以下の方法が挙げられるが、本発明においてはこの方法に限定されない。
(1)ピリジン/水酸化カリウム(10M)をそれぞれ10mlずつ混ぜ、混合水溶液を試験管内で調製する。
(2)酸化性物質感受性部材を調製した混合水溶液中に浸漬する。
(3)試験管を密閉し、湯浴の中で2分間温める。
(4)混合水溶液中の酸化性物質感受性部材の赤色呈色有無を確認する。呈色が有る場合、酸化性物質感受性部材がハロゲン系酸化剤に接触した可能性が高く、分離膜に酸化リスクがあると判定する。
半透膜とは原水中の一部の成分、例えば溶媒を透過させ他の成分を透過させない半透性を有する膜であり、ナノろ過膜(NF膜)と逆浸透膜(RO膜)を包含する。その素材には酢酸セルロース化合物、ポリアミド化合物、ポリエステル化合物、ポリイミド化合物、ビニルポリマー化合物などのよく使用されている。またその膜構造は膜の少なくとも片面に分離緻密層を持ち、分離緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い分離機能層を有する複合膜などを適宜使用できる。膜形態には中空糸膜、平膜がある。また、膜素材、膜構造や膜形態によらず実施することができいずれも効果があるが、代表的な膜としては、例えば酢酸セルロース化合物やポリアミド化合物の非対称膜およびポリアミド化合物、ポリ尿素化合物の分離機能層を有する複合膜などがあり、造水量、耐久性、塩排除率の観点から、酢酸セルロース化合物の非対称膜、ポリアミド化合物の複合膜を用いることが好ましい。
図1や図4に示すように、前処理膜ろ過ユニット3のろ過水を貯留する前処理膜ろ過水貯留槽4(中間槽)を省き、前処理ろ過ユニット3のろ過水を直接半透膜ろ過ユニット5に供給することで、中間槽での微生物増殖による後段のROバイオファウリングを抑制できると共に、前処理膜ろ過水貯留槽4(中間槽)やブースターポンプ6を省くことができるため、設備費削減や省スペース性に繋がるため好適である。前処理ろ過水貯留槽(中間槽)4とブースターポンプ6を省く場合において、昇圧ポンプ7でキャビテーションが発生しないように、ろ過膜のろ過水に0.05〜0.2MPaの圧力を持たせて、昇圧ポンプ7に供給することで、半透膜ろ過ユニット5で透過水と濃縮水に分離するため、前処理膜ろ過ユニット3を複数本並列に設置し、一部をオンライン洗浄している場合は他の前処理膜ろ過ユニット3で補い、分離膜ろ過プラント全体として連続運転可能な状態にすることが好ましい。
半透膜ろ過ユニット5の供給圧力は0.1MPa〜15MPaであり、被処理原水の種類、運転方法などで適宜使い分けられる。かん水や超純水などの浸透圧の低い水を供給水とする場合には比較的低圧で、海水淡水化や廃水処理、有用物の回収などの場合には比較的高圧で使用される。
また、本発明において、半透膜ろ過ユニット5としては、特に制約はないが、取り扱いを容易にするため中空糸膜状や平膜状の半透膜を筐体に納めて流体分離素子(エレメント)としたものを耐圧容器に充填したものを用いることが好ましい。流体分離素子は、平膜で形成する場合、例えば、多数の孔を穿設した筒状の中心パイプの周りに、半透膜を流路材(ネット)とともに円筒状に巻回したものが一般的であり、市販品としては、東レ(株)製逆浸透膜エレメントTM700シリーズやTM800シリーズを挙げることができる。これら流体分離素子は1本でも、また複数本を直列あるいは並列に接続して半透膜ろ過ユニットを構成することも好ましい。
分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスクを評価するにあたり、正確かつ迅速に膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを把握し、分離膜の酸化劣化を予測し対策を講じるための分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法を提供することが可能となる。
1:原水貯留槽
2:原水供給ポンプ
3:前処理膜ろ過ユニット
4:前処理膜ろ過水貯留槽
5:半透膜ろ過ユニット
6:ブースターポンプ
7:昇圧ポンプ
8:原水配管
9:前処理膜ろ過水配管
10:半透膜ろ過供給水配管
11:酸化性物質感受性部材通水ユニット
12:酸化性物質感受性部材通水配管
13:遷移金属イオン含有溶液貯留タンク
14:遷移金属イオン溶液添加ポンプ
50:ホース
51:流量計
52:ワンタッチ式ジョイント
53:通水容器開閉部
54:流量調整バルブ
58:流れ方向
60:通水容器
60a:単位通水容器
61:酸化性物質感受性部材
2:原水供給ポンプ
3:前処理膜ろ過ユニット
4:前処理膜ろ過水貯留槽
5:半透膜ろ過ユニット
6:ブースターポンプ
7:昇圧ポンプ
8:原水配管
9:前処理膜ろ過水配管
10:半透膜ろ過供給水配管
11:酸化性物質感受性部材通水ユニット
12:酸化性物質感受性部材通水配管
13:遷移金属イオン含有溶液貯留タンク
14:遷移金属イオン溶液添加ポンプ
50:ホース
51:流量計
52:ワンタッチ式ジョイント
53:通水容器開閉部
54:流量調整バルブ
58:流れ方向
60:通水容器
60a:単位通水容器
61:酸化性物質感受性部材
Claims (12)
- 分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法であって、膜ろ過供給水を連続分取し、該分取した水を通水容器に通水し、該通水容器内に配置した、該分離膜ろ過プラントの膜素材に対して酸化性物質感受性が同等あるいは高い物質を含む酸化性物質感受性部材の一部を取出して、該酸化性物質感受性部材の酸化分解度を測定する操作を行い、該酸化分解度および/または該酸化分解度から算出される酸化速度に基づき、膜ろ過供給水の酸化ポテンシャルを評価することを特徴とする分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記通水容器が単位通水容器を複数連結して形成され、前記単位通水容器は流れ方向の両端に接続部が設けられており、前記各単位通水容器内部に酸化性物質感受性部材が設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記分離膜ろ過プラントの分離膜が半透膜であることを特徴とする、請求項1または2に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記酸化性物質感受性部材が、ポリアミド化合物もしくは酢酸セルロース化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記酸化性物質感受性部材表面の付着物を物理的手法で回収・除去した後、酸化分解度の測定に供することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記付着物のATP(アデノシン三リン酸)量を測定して膜ろ過供給水のバイオファウリング発生リスクを評価することを特徴とする、請求項5に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 分取した膜ろ過供給水に、遷移金属イオンを所定量添加した後、通水容器に通水することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記酸化性物質感受性部材が、分離膜であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記酸化分解度を、前記酸化性物質感受性部材の物理的特性、表面特性あるいは、分離特性の変化から算出することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記物理的特性が、引張強度、引張伸度であることを特徴とする、請求項9に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記表面特性が、表面官能基であることを特徴とする、請求項9または10に記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
- 前記分離特性が、阻止率、透過流束、溶媒透過係数および溶質透過係数であることを特徴とする、請求項9〜11のいずれかに記載の分離膜ろ過プラントにおける分離膜の酸化リスク評価方法。
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Cited By (2)
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WO2019022321A1 (ko) * | 2017-07-28 | 2019-01-31 | 한국전력공사 | 이산화탄소 분리막 모듈 성능 평가 시스템 및 이를 위한 장치 |
WO2024111627A1 (ja) * | 2022-11-25 | 2024-05-30 | 東レ株式会社 | 分離膜の酸化リスク評価方法、酸化リスク評価プログラム、記録媒体、および評価装置 |
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2015
- 2015-03-31 JP JP2015072321A patent/JP2016190212A/ja active Pending
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