JP2014188385A - 造水方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜面におけるバイオファウリングの進行状態を、膜差圧、透過性、分離性といった膜の運転データに現れる前に、簡便に把握・検知することが可能な手段を提供する。
【解決手段】被処理水1を半透膜3によって処理し、透過水4と濃縮水5に分離する造水方法において、半透膜3の洗浄実施可否、または半透膜3の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を決定するに際し、被処理水1及び/又は濃縮水5のATP(アデノシン−5´−三リン酸)値を、ATPが10−11M濃度に対して、100RLU以上の発光量を示すルシフェラーゼを使用して測定し、得られたATP値から導かれる運転基準指標値が所定値を上回った際に、半透膜3の洗浄を実施する、または半透膜3の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を強化する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行うことにより淡水を得たり、下廃水処理水や工業排水等を浄化して再利用水を得たりする造水方法に関するものである。
半透膜を用いた造水システムは、海水の淡水化を始め、多くの産業や水処理分野で応用され、他の分離方法と比較し、分離性能やエネルギー効率等の点で優位性が実証されてきている。一方、該造水システムでは、膜面での微生物増殖、あるいは膜面への生物膜(バイオフィルム)の付着、あるいは膜面への無機スケールの付着、あるいは膜面への有機物の付着、すなわちファウリングにより、膜差圧が急上昇し、膜の透過性、分離性が低下するという問題がある。
ファウリングにより、膜差圧が上昇したり、膜の透過性、分離性が低下したりした場合は、膜を、洗浄剤を用いて洗浄する(薬品洗浄)ことが一般的である。洗浄剤としては、クエン酸、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン−4−酢酸(EDTA)などのキレート剤、界面活性剤などがあり、これらは単独あるいは組み合わせて使用される。
しかし、ファウリングがいったん進行すると、たとえ薬品洗浄を行ったとしても膜差圧、透過性、分離性が完全に回復せず、次第に薬品洗浄の頻度が多くなり、ついには運転不可能となり、膜の交換が必要となる。よって、ファウリングが進行する前の適切な段階で膜を洗浄し、ファウリングの進行を抑えることが重要である。
また、ファウリングの進行を抑える手段として、ファウリング物質がバイオフィルムの場合は被処理水にバイオフィルムの増殖を抑制する薬剤(以下、「殺菌剤」という)を添加する技術が有効な手法として数多く提案されている。例えば、被処理水に2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたは5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンまたはこれらの塩およびこれらの混合物を有効成分とする殺菌剤を添加してバイオフィルムの増殖を抑制する方法(特許文献1)や、被処理水に殺菌剤として、酸や銀イオンを添加する方法などが開示されている(特許文献2、3)。これらスケール防止剤や殺菌剤等の薬剤添加濃度、頻度、時間等は少なすぎればファウリングの進行を抑えることができない。一方、多すぎればファウリングの進行を抑えることはできるものの、薬品コストの増大を招く。よって、ファウリングの進行を抑えるための薬剤添加の適正な濃度、頻度、時間を把握することが重要である。
以上の課題を解決するには、膜面におけるファウリングの進行状態を、膜差圧、透過性、分離性といった膜の運転データに現れる前に把握・検知することにより、膜の洗浄あるいは薬剤添加の条件を決定する技術が必要である。このような技術として、特許文献4では、逆浸透膜供給水及び/又は逆浸透膜非透過水を逆浸透膜ろ過部の逆浸透膜モジュール内の非透過水線速度と同等の線速度で流水させた条件下に、バイオフィルム形成基材を配しておき、バイオフィルム形成基材上のバイオフィルム量を1日〜6ヶ月に1回の頻度でATP測定法により測定し、バイオフィルム形成基材の単位面上あたりのアデノシン−5´−三リン酸(以下、「ATP」という)の量が200pg/cm以下となるように膜の洗浄や殺菌剤添加条件を決定する技術が開示されている。しかしながら、特許文献4の技術では、常に逆浸透膜モジュール内の非透過水線速度と同等の線速度で流水させる必要があるため、何かのトラブルで流水が止まったり、線速度が大きくずれたりした場合、正当な評価ができなくなる恐れがある。
また、特許文献5では、海水淡水化装置に供給する水の有機物量を示す水質項目を計測することで海水淡水化装置の逆浸透膜の目詰まりを低減させる技術を提示している。しかし、特許文献5の技術では、水温、pH、導電率、吸光度、ATPを測定して計算することでバイオファウリング生成能を算出しているため、多数の項目を測定する必要があり、様々な測定機器の設置や維持管理を行わなければならない。さらに、海水のような塩分濃度が高い供給水は、そのままATPを測定すると誤差が大きくなるため、塩分濃度が影響しないように希釈をしてからATPを測定しなければならないが、供給水の中に含まれたATPの濃度が低い場合、前記希釈によってATP濃度が検出限界以下となり、正確なバイオファウリング生成能を算出することが難しい問題があった。
また、特許文献6では、海水中の微生物を培養し、コロニー数の計数の代わりに細胞内のATPを定量して生菌数に換算することで、海水中に含まれる、微生物が資化可能な有機物(同化可能有機炭素)を測定する技術を提示している。しかし、特許文献6の技術では、微生物培養の際に使用する培地の選択による微生物スクリーニングが生じ、正確なバイオファウリング生成能を知ることが困難である上、培養やコロニーの計数に時間や努力が必要になるなど、より簡便に把握・検知することが可能な技術が求められていた。
特開平8−229363号公報 特開平12−354744号公報 特開平10−463号公報 国際公開WO2008/038575号パンフレット 特開2011−177604公報 特開2001−194364公報
半透膜を用いた造水方法は、例えば図1に例示されるように、被処理水1を半透膜3によって処理し、透過水4と濃縮水5に分離する造水システムにおいて実施される。
ここで、半透膜3での処理を継続すると、バイオファウリングとは、半透膜3の膜面での微生物増殖、あるいは膜面への生物膜(バイオフィルム)の付着、いわゆるバイオファウリングが発生する。バイオファウリングが発生すると、半透膜3での処理能力が低下し、さらに、バイオファウリングが進行すると、膜面に付着していた微生物やバイオフィルムが膜面上の流れにより剥離し、濃縮水5中にこれらの固形物が混入するようになる。よって被処理水1及び/又は濃縮水5の微生物量またはその活性を示すATPを測定することでバイオファウリングの進行を把握することが重要となる。
しかし、被処理水1及び/又は濃縮水5には、例えば塩類やイオンなど、ATP測定を阻害する様々な物質が存在する。これらの測定阻害物質の影響を避けるためには、被処理水1及び/又は濃縮水5の塩類やイオン濃度を、阻害を起こさない濃度まで希釈した後、ATPを測定することが考えられるが、この場合、前記希釈によってATP濃度も希釈され、ATPも測定できなくなっていた。また、被処理水1及び/又は濃縮水5に阻害物質などが入ってない場合にも、水の中に存在する微生物量が少なく、運転に関連がある微生物量を適切に検出して把握することが難しい場合が多い。特にバイオファウリングは、微量の微生物濃度の変化により大きく左右されるため、今まで行われていたATP測定方法ではバイオファウリングを察知することが困難であった。
さらに、バイオファウリングが進行すると、膜面に付着していた微生物やバイオフィルムが膜面上の流れにより剥離し、濃縮水5中にこれらの固形物が混入するようになるため、濃縮水5のATP測定はバイオファウリングを検知するために非常に重要である。しかし、半透膜3のろ過により濃縮水5中のATP測定を阻害する物質の濃度はさらに増加するため、ATPの測定のためには被処理水1より希釈倍率を上げる必要があった。
そこで本発明は、膜面におけるバイオファウリングの進行状態を、膜差圧、透過性、分離性といった膜の運転データに現れる前に、簡便に把握・検知することが可能な手段を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明における造水方法は、以下の構成のいずれかからなる。
(1)被処理水を半透膜によって処理し、透過水と濃縮水に分離する造水方法において、前記半透膜の洗浄実施可否、または半透膜の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を決定するに際し、前記被処理水及び/又は前記濃縮水のATP(アデノシン−5´−三リン酸)値を、ATPが10−11M濃度に対して、100RLU以上の発光量を示すルシフェラーゼを使用して測定し、得られたATP値から導かれる運転基準指標値が所定値を上回った際に、前記半透膜の洗浄を実施する、または前記半透膜の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を強化することを特徴とする造水方法。
(2)前記被処理水及び/又は前記濃縮水を電気伝導度が10,000μS/cm以下になるように希釈してから前記ATP値を測定することを特徴とする(1)に記載の造水方法。
(3)前記ATP値が、細胞内ATPの測定値であることを特徴とする(1)または(2)に記載の造水方法。
(4)前記運転基準指標値が、前記濃縮水のATP値をX、前記被処理水のATP値をY、前記被処理水を前記半透膜によって処理したときの前記透過水の回収率をReとした場合に、”X−Y/(1−Re)”で表される指標値であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の造水方法。
本発明によれば、膜面におけるバイオファウリングの進行状態を、膜差圧、透過性、分離性といった膜の運転データに現れる前に、把握することが可能となり、バイオファウリングが運転性能を低下させる前にバイオファウリングに対して対応することができ、安定かつ効率良い膜ろ過運転が可能となる。
本発明に係る造水方法の一例を示す概略図である。 本発明に係る造水方法の別の一例を示す概略図である。 比較例1における、半透膜供給水のATP、濃縮水のATP、および半透膜の運転差圧の経時変化を示す図である。 実施例1における、濃縮水のATP、および半透膜の運転差圧の経時変化を示す図である。 実施例2における、濃縮水のATP、および半透膜の運転差圧の経時変化を示す図である。
以下、図1を用いて本発明について詳しく説明するが、本発明の内容はこの図の態様に限定されるものではない。
本発明の造水方法は、被処理水1を半透膜3によって処理し、透過水4と濃縮水5に分離する造水システムにおいて実施される。
被処理水1の例としては、例えば海水、河川水、湖沼水、地下水、下水、下水二次処理水、生物処理水等が挙げられる。通常は被処理水1には濁質などの固形成分が含まれているため、直接半透膜3でろ過した場合、膜表面に付着する固形成分が多くなり、差圧が急上昇し、運転不可能となる。そのため、あらかじめ被処理水1を前処理することが一般的であり、最も良く用いられる前処理方法は被処理水1に凝集剤を添加し、固形成分をフロック化させ、砂やアンスラサイト等でろ過する凝集砂ろ過法である。但し、この方法では原水変動の影響を受けやすく処理水質が不安定であるため、精密ろ過膜や限外ろ過膜で被処理水1を処理する膜前処理も採用することができる。また、被処理水1が下水等の有機性廃水の場合は、廃水中に含まれる有機物を低減するため、活性汚泥処理を行った後、活性汚泥を分離するために固液分離を行う前処理を実施することもできる。固液分離の方法は、従来から用いられている沈殿池を用いた沈殿分離でも良く、処理水質の向上などを目的として、精密ろ過膜や限外ろ過膜などの分離膜を用いて固液分離する方法も採用することができる。
前処理された被処理水1は、高圧ポンプ2によって、ろ過に必要な圧力まで昇圧された後で半透膜3に供給され、透過水4と濃縮水5に分離される。供給配管の途中では、半透膜3におけるファウリングの進行を抑えるための薬剤10が添加される。薬剤10を添加する装置については、薬剤の添加条件を制御するために、添加量や添加時間、添加頻度などがコントロールできるバルブやポンプを有する制御機構を備えていることが好ましい。
また半透膜3の上流には、薬品洗浄のために、洗浄剤11を導入する管路が設けられる。洗浄剤11を導入する地点は特に限定されるものではないが、洗浄剤11の種類によっては、高圧ポンプ2を腐食させるおそれがあるため、その下流が好ましい。また通常は、洗浄剤11は濃縮水5の配管の途中から導出され、循環される。
半透膜3は、被処理水1を飲料水、工業用水、都市用水などに利用できるように、塩濃度を下げることができるものであれば、いかなる素材のものを用いても良いが、例えば、酢酸セルロース系、ポリアミド系の素材により構成されるものが挙げられる。この中でも、本発明の方法において特に有効であるのは、ポリアミド系の素材により構成されるものである。ポリアミド系の膜は、バイオフィルムの増殖を防ぐために殺菌剤として最も一般的に用いられる塩素に対する耐性が低く、わずかな濃度の塩素であっても膜劣化が顕著に起こるため、バイオファウリングを防止することが難しい。よって本発明を実施することによる効果が顕著に現れる。
本発明の造水方法は、半透膜3の洗浄実施可否、または半透膜3の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を決定するに際し、被処理水1及び/又は濃縮水5のATP値を、ATPが10−11M濃度に対して、100RLU以上の発光量を示すルシフェラーゼを使用して測定し、得られたATP値から導かれる運転基準指標値が所定値を上回った際に、半透膜3の洗浄を実施する、または半透膜3の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を強化することを特徴とする。
ここで、バイオファウリングとは、半透膜3の膜面での微生物増殖、あるいは膜面への生物膜(バイオフィルム)の付着を表すものであり、バイオファウリングの発生については、被処理水1の性状と共に半透膜3に供給される微生物量が一つの重要な鍵となる。さらに、バイオファウリングが進行すると、膜面に付着していた微生物やバイオフィルムが膜面上の流れにより剥離し、濃縮水5中にこれらの固形物が混入するようになる。よって被処理水1及び/又は濃縮水5の微生物量またはその活性を示すATPを測定することでバイオファウリングの進行を把握することが重要となる。
上述のとおり、従来行われていたATP測定方法ではバイオファウリングを察知することが困難であったが、本発明では、被処理水1及び/又は濃縮水5のATP値を、ATPが10−11M濃度に対して、100RLU以上の発光量を示すルシフェラーゼを使用して測定することで、前記のように希釈を行っても、もしくは微生物量が微量であっても有効なATP値を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
ここで、ATPの測定方法について説明する。アデノシン三リン酸(ATP)は、多くの生物体のエネルギー代謝に関与している。生体内で起こる種々の化学反応には、ATPが加水分解されてアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン一リン酸(AMP)となる際に放出されるエネルギーを利用して行われるものが多い。また、ATPは、生体内においてリボ核酸(RNA)の前駆体、生体内リン酸化反応におけるリン酸供与体などとしても利用される。ATP量を測定する方法として、蛍の発光原理でもあるルシフェリン−ルシフェラーゼ反応を利用した生物発光法が一般的であり、ATP検査装置にも広く用いられている。この方法は、試料から抽出したATPにルシフェリンおよびルシフェラーゼを作用させることで発光させる。この発光は、1分子あたり1個のフォトンが放出されるので、発光時間に対する値を積分することによってATPを定量的に検出できる。
ATP測定の具合的な方法としては、全ての生物がもつ生命活動のエネルギー物質であるATP(アデノシン−5’−三リン酸)を菌体から抽出し、ホタルの発光酵素ルシフェラーゼを利用して発光させ、発光量(RLU:Relative Light Unit)を測定するものである。発光量はATP量に比例するため、発光量を測定することで微生物量を評価することができる。測定時間が数分と短く、測定試薬もキットが市販されている。また、発光光度計装置も、検出感度が高く、持ち運び可能で機動性に優れたものが市販されている。ATPは生命活動に関連した物質であるため、バイオファウリングが発生したと思われる現場で明確に評価でき、高感度、簡便、迅速に評価可能であり、特に、実験室などに戻る必要ない。
また、発光量の測定には、発光光度計が必要であるが、コンセント不要のコンパクトなバッテリー式の携帯型装置でありながら、据え置き型と同性能の高感度な検出器を備えた機器が市販されており、推奨される。例えば、測定に必要な試薬一式を含むキットとしては、「ルシフェール(登録商標)HSセット」(キッコーマン製)が、また、携帯型装置としては、「ルミテスター(登録商標)C−100」(キッコーマン製)がある。試薬キットには、ルシフェラーゼ(発光酵素)を含む発光試薬、リン酸緩衝液などを含む発光試薬溶解液、界面活性剤を含む細胞からATPを抽出する試薬などで構成される。高発光量ルシフェラーゼは、微量のATP濃度に対しても十分な発光量を持つルシフェラーゼを使用しても良い。
ここで、本発明における発光量は、ATPが10−11M濃度に対して、100RLU以上の発光量を示すものとすることが重要である。このような高発光量を持つルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、ヘイケボタルルシフェラーゼの344位に相当するアミノ酸がアラニンに変異され、287位に相当するアミノ酸がアニリンに変異され、326位に相当するアミノ酸がセリンに変異され、467位に相当するアミノ酸がイソロイシンに変異され、かつ75位に相当するアミノ酸がアニリンに変異させることで得ることができる(特開2011−188787公報)。また、ホタルルシフェリン、ルシフェラーゼ、D−システイン、2価金属イオン、ルシフェリン再生酵素、CoA(補酵素A)、ピロリン酸、ピリドキサールリン酸もしくはこれらの誘導体から選ばれる一種以上を添加することで発光反応を増加させることもできる(特開2002−191396公報)。また、ホタルルシフェラーゼのアミノ酸配列において、ヘイケボタルルシフェラーゼの287位に相当するアミノ酸がアニリンに置換させるか、392位に相当するアミノ酸がイソロイシンに変異させることで安定性が向上したホタルルシフェラーゼを得ることができ、高発光量でも安定なルシフェラーゼを得ることができる(特開2011−120559公報)。
また、ATPは、全ATP、細胞内ATP値、細胞外ATP値を得ることができる。ATPはすべての生命体に含まれる物質なので、あらゆる所にATPが浮遊している。このため、サンプル中に入っている全てのATPである全ATPを測定すると共に、別途、細胞外ATPを除去した後、細胞を界面活性剤で構成した抽出剤で細胞を破壊して、抽出した細胞内ATP量を生物発光法で測定する方法で細胞内と細胞外のATPを測定することができる。生体膜はタンパク質と脂質とが結合しているが、界面活性剤がこのタンパク質と疎水基結合をして界面活性剤の親水基の部分がタンパク質の表面をおおい、タンパク質を溶かす。これによって、細胞の生体膜が破壊され、ATPを含む細胞内物質が抽出できる。細胞外ATPの除去には、ATP分解酵素を利用したATP消去剤が使用されている。ATP分解酵素は疎水基部分を有しているため、ATP分解の際に、この疎水基部分とATPとが結合してATP分解酵素内に埋もれてしまう。ATP分解酵素には、アピラーゼ、アデノシントリホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、ATPピロフォスファターゼ等が知られており、特にアデノシンリン酸デアミナーゼを主として、1つあるいは複数のATP分解酵素を組み合わせて使用したATP消去剤が製品化されている(特開平9−182600号公報)。このように市販のATP消去剤を用いることで細胞内ATP値と細胞外ATP値を得ることができる。
また、ATP測定の際に行うサンプル、試薬の分注は、少量の液量を精度良く正確に定量できるものであればいずれの機器を用いても良く、ピペットマン(登録商標)(ギルソン製、1000μL用、200μL用)などを例示できる。ここで、サンプルや試薬の取り扱いに使用する器具はサンプル以外のATP汚染を防ぐため、滅菌処理したものを使用する。ピペットマン(登録商標)で使用するチップは、予めオートクレーブ(121℃、15分)で滅菌処理する。
ここで、サンプルを希釈する純水は、蒸留水、精製直後の逆浸透膜精製水、精製直後のイオン交換水、市販の超純水などのATPを含有しないもの(10ng/L以下)を用いるのが、測定への不純物による誤差が少なく好ましい。市販の医療用ディスポーザブルな蒸留水も便利で好ましい。水道水をオートクレーブ滅菌して使用してもよい。
サンプルを入れるチューブなどの容器もATPに汚染されていない清澄なものであればいずれでも良いが、予め滅菌済みのものを使用しても、非滅菌品をオートクレーブして使用しても良い。また、「ルミテスター(登録商標)C−100」には、発光定量用ATPフリーのセル「ルミチューブ(登録商標)」(キッコーマン製、3mL)が市販されており、本セルを統一的に使用しても良い。一度使用したチップやチューブ、容器類は使い捨てが好ましいが、洗浄、滅菌後に再使用しても良い。
また、ATP測定の際には、サンプルの電気伝導度が10,000μS/cm以下になるようにサンプルを希釈することが好ましい。測定サンプルの電気伝導度が10,000μS/cmより高いと、サンプル中の電解質によりATP測定に関与する酵素が阻害を起こし、適切な測定を行うことができない。電気伝導度は市販の装置を用い、補正を行って使用することで適切に測定することができる。
また、本発明のATP値は、全ATP、細胞外ATP、細胞内ATPを測定して使用することができるが、その中でも細胞内ATPの測定値であることが好ましい。細胞内ATPは微生物の細胞内にあるATPを示すため、これによって半透膜に供給される、または半透膜から排出される微生物濃度を把握することで、バイオファウリングを引き起こす可能性がある微生物量を把握することができるためである。微生物量の測定については、ATPの測定以外でも様々な方法があるが、サンプル中の微生物量が微量である場合は測定によって得られた値のばらつきも大きいなど、微生物量を明確に把握することが難しい。本発明で提案している細胞内ATPを高感度ATP測定試薬で測定することにより、微量の濃度、阻害物質の存在下でも有効なATP値を得ることができるため、前記細胞内ATPを測定し、バイオファウリングに係わる微生物量を把握することが重要である。
また、本発明では、上述したATPの測定方法で得られたATP値から運転基準指標値を導き、前記運転基準指標値が所定値を上回った際に、半透膜3の洗浄を実施する、または半透膜3の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を強化することが重要である。ここで、前記運転基準指標値は、上述したATP測定方法から得られた全ATP値、細胞内ATP値、細胞外ATP値など、測定値をそのまま運転基準指標値として使用しても良い。例えば、被処理水1から検出された細胞外ATPが増加し、濃縮水5から検出された細胞内ATPが増加した場合、分解された微生物が被処理水1から半透膜3に供給されたことで被処理水1中の細胞外ATPが増加し、分解された微生物の死骸を摂取して半透膜3中で微生物が増殖したことで濃縮水5中の細胞内ATPが増加したのだと考えられる。このようにして、ATP値から導かれる運転基準指標値を、洗浄頻度や洗浄強化を行う指標として使うことができる。
また、本発明では、全ATPの中の細胞内ATPの比率、細胞外ATPと細胞内ATPの比率など、得られたATP値を用いて算出を行い、その結果得られた値を運転基準指標値として使用することもできる。例えば、被処理水1に対してATP値を測定し、濃縮水5のATP値と被処理水1のATP値の関係を解析することで、ファウリング状況に対するより明確な運転基準指標を提示することができる。濃縮水5のATP値をX、被処理水1のATP値をYとした場合、XとYから計算される値(例えば”X−Y”の式から得られる計算値)を運転基準指標とし、それが所定の基準値に達した際に、半透膜3の洗浄を実施する、または半透膜3の洗浄条件および/または薬剤注入条件を強化することができる。
また、前記指標と、半透膜3による処理の回収率を用いた計算値を運転基準指標として、ファウリングの進行状態を把握することができる。特に、本発明では、濃縮水5のATP値をX、被処理水1のATP値をY、半透膜3による処理の回収率をReとした場合、”X−Y/(1−Re)”の式から得られる計算値を運転基準指標とし、それが所定の基準値に達した際に、半透膜3の洗浄を実施する、または半透膜3の洗浄条件および/または薬剤注入条件を強化することが好ましい。これは、運転基準指標に、半透膜3の運転回収率により発生した濃縮率を加味することができ、さらに、濃縮水5から得られた指標と被処理水1から得られた指標の差を加味することで、より正確なファウリングの運転基準指標を提供することができるからである。
前記のような指標により微生物量の増加を予測することが可能となる。バイオファウリングが懸念される場合は、注入する薬剤として殺菌剤を選択することが好ましい。殺菌剤としては、例えば2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、これらの塩およびこれらの混合物から選ばれた成分を有効成分とする殺菌剤や2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、硫酸などが挙げられる。さらに、洗浄剤としてアルカリを用いて半透膜の洗浄を行うことにより、微生物の蓄積を防ぐことが可能である。膜洗浄に用いるアルカリとしては、例えば0.1%の水酸化ナトリウム溶液などが挙げられる。
つまり、本発明では、バイオファウリングの状況を把握し、状況に応じた適切な薬剤あるいは洗浄剤を選択することができるものである。適切な薬剤あるいは洗浄剤を選択する際には、供給水温やろ過差圧など、膜ろ過の運転条件から判断することもできるが、被処理水1、濃縮水5から得られた全ATP、細胞内ATP、細胞外ATPの測定値に基づいて判断することもできる。例えば、被処理水1の細胞内ATPが急激に増加した場合は、半透膜3に供給される微生物濃度の増加が考えられるため、殺菌剤を注入することで供給される微生物を死滅させ、半透膜3への付着を防ぐことができる。また、例えば、濃縮水5の細胞内ATPが増加した場合、半透膜3で微生物が増殖したことが考えられるため、半透膜3に付着した微生物を取り除く効果が高いアルカリを注入することで対応することができる。
また、適切な薬剤あるいは洗浄剤を選択した場合、測定したATP値から導かれる運転基準指標値から所定値を決定し、前記運転基準指標値が所定値を超えた場合、薬剤あるいは洗浄剤の注入条件を強化することができる。例えば、運転中に得られたATP値から導かれる運転基準指標値が、運転初期に得られたATP値から導かれる運転基準指標値から10倍を超えると、薬剤あるいは洗浄剤の注入条件を強化することができる。
半透膜3を洗浄する方法としては、例えば、前記のように図1に示す半透膜3の上流に設けられた管路から、洗浄剤11を導入することにより、薬品洗浄を実施する方法などが挙げられる。洗浄剤11は、通常、洗浄用タンクなどに入れられ、ポンプで高圧ポンプ2の下流から配管に導入され、濃縮水5の配管の途中から導出され、循環される。洗浄条件としては、ファウリングの程度にもよるが、例えば1時間程度洗浄剤11を循環して洗浄した後、循環を止めて、半透膜3を洗浄剤に2〜24時間浸漬し、最後にリンスをして洗浄を完了する。場合によっては、この操作を2〜3回繰り返す。
また、半透膜3の洗浄条件を強化する手段としては、半透膜3の洗浄を定期的に行う場合において、予め設定した定常的な条件よりも、洗浄の頻度を増加する方法や洗浄剤の濃度を増やす方法などが挙げられる。
薬剤を注入する方法としては、例えば、前記のように図1に示す供給配管の途中から薬剤10が添加される。注入方法としては、連続的に添加しても良いし、1日に1回などの頻度で間欠的に添加しても良いが、通常は連続的に添加される。薬剤注入条件を強化する手段としては、予め設定した定常的な条件よりも、薬剤の添加濃度を増やす方法、添加頻度を上げる方法などが挙げられる。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例の態様のみに限定されるものではない。
(比較例1)
海水12を図2に示すような処理方法で処理を行った。まず海水12を取水し、海水貯槽14に貯めた。取水点においては、取水配管中の微生物繁殖を抑えるため、2日に1回、5〜15mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム13を60分間添加した。なお、次亜塩素酸ナトリウム13の添加濃度は、後述する半透膜供給水貯槽17中の遊離残留塩素濃度が約1mg/L程度となるように調整した。次に海水12を、供給ポンプ15により加圧して、海水貯槽14から限外ろ過膜16(ポリフッ化ビニリデン製中空糸限外ろ過膜、東レ製HFU−1010、膜面積:28m)に供給し、ろ過を行うことにより、海水12の前処理を行った。ろ過流束は2m/日で行った。
限外ろ過膜16を用いて前処理された海水12は、いったん半透膜供給水貯槽17に貯められた後、送水ポンプ18で高圧ポンプ21に送られ、高圧ポンプ21で加圧された後、半透膜24でろ過され、透過水25と濃縮水26に分離された。送水ポンプ18と高圧ポンプ21の間の被処理水中に遊離残留塩素が含まれていたため、塩素を除去するために重亜硫酸ソーダ(Sodium Bisulfite(SBS))19を2mg/L程度添加した。SBSの添加は、被処理水に遊離塩素が残っていることによる半透膜の塩素劣化を防ぐことが目的であり、必要に応じて行うことができる。半透膜24は、膜材質がポリアミド、脱塩率が99.75%、膜面積が7.8mのスパイラル型の逆浸透膜(東レ製TM810C)を用い、7本直列で運転を行った。運転は膜ろ過流束14L/m/hr、回収率37%に設定した。ここで、回収率は、透過水25の流量/(透過水25の流量+濃縮水26の流量)で算出される。また、半透膜24の運転に際して、半透膜供給水22と濃縮水26との圧力差(以下、運転差圧)をモニタリングし、運転差圧の変化を観察した。また、高圧ポンプ21と半透膜24の間には、後述する洗浄剤23を導入する管路を設け、薬品洗浄が行えるようにした。濃縮水26の配管の途中に洗浄剤23を導出する管路を設け、循環洗浄が行えるようにした。
このような半透膜24の運転において、半透膜供給水22の全ATPと濃縮水26の全ATPを、それぞれ1週間に2〜3回測定し続けた。ATP量測定は、次の手順で行った。
採集した半透膜供給水22および濃縮水26のサンプルに対して、それぞれの電気伝導度を測定した。電気伝導度は100mLのビーカに70mL程度のサンプルを取り、HORIBA社のD54ポータブル電気伝導度測定器を用いて測定した。得られた電気伝導度から、電気伝導度が10,000μS/cm以下になるように蒸留水を用いて希釈した。得られた半透膜供給水22および濃縮水26の電気伝導度は半透膜供給水22が40,000〜55,000μS/cm、濃縮水26が60,000〜90,000μS/cmであった。
蒸留水を用いて希釈したサンプルを100μL取り、ATP量測定用チューブ(「ルミチューブ(登録商標)」、キッコーマン製、3mL用)分注し、そこにATP抽出試薬を100μL添加し、20秒後に発光試薬100μLを添加した後、キッコーマン製携帯型ATP分析装置「ルミテスター(登録商標)」で発光量を測定した。なお、ATP抽出試薬および発光試薬は、キッコーマン製専用試薬キット「ルシフェール(登録商標)HSセット」を使用した。前述のように、「ルシフェール(登録商標)HSセット」は高感度ルシフェラーゼを使用し、発光量は、ATPが10−11M濃度に対して、100RLU以上の発光量を示すものである。そして、予め、既知ATP濃度の液の評価により求めておいた、ATP量と発光量の相関式から、ATP量を算出した。
また、比較例1では、半透膜の運転差圧が150kPa以上となった時点で半透膜24の洗浄を実施することとした。
半透膜供給水22のATP、濃縮水26のATP、および半透膜24の運転差圧の経時変化を図3に示す。まず半透膜供給水22のATPは、運転期間中、30〜35pg/mLの間で大きな変化が見られなかった。次に濃縮水26のATPは、初期は50pg/mL前後であったが、徐々に上昇し、運転開始後40日を過ぎると、ATPが初期の10倍である500pg/mLを超えるようになった。一方、半透膜24の運転差圧は、運転開始から2ヶ月間はほとんど変化がなかったが、2ヶ月を過ぎると、運転差圧が急上昇し、その後の2週間で運転上限差圧150kPaに達した。矢印は薬液洗浄実施を意味する。そこで、洗浄剤23(水酸化ナトリウム水溶液、pH=12)を半透膜24に通し、1時間循環洗浄/2時間浸漬/1時間循環洗浄の順で洗浄を行った後、運転を再開したところ、運転差圧は120kPa程度までしか回復せず、その後の2週間で再び運転上限差圧に達した。これにより半透膜24の交換を余儀なくされた。
(比較例2)
比較例2では、ATP測定に一般的に使用され、発光感度が「ルシフェール(登録商標)HSセット」(キッコーマン)より低いキッコーマン製試薬キット「ルシフェール(登録商標)250プラス」を使用して測定を行ったこと、全ATPと細胞内ATPの、2種類のATP項目を測定したこと以外は、比較例1と同様に実験を行った。なお、細胞内ATP測定は次のように行った。
蒸留水を用いて希釈したサンプルを300μL取り、ATP量測定用チューブ(「ルミチューブ(登録商標)」、キッコーマン製、3mL用)分注し、そこに「ルシフェール(登録商標)ATP消去試薬セット」(キッコーマン)の消去試薬を30μL入れた後、30分間反応させた。その後、新たに用意したATP量測定用チューブに、前記消去試薬を入れて反応させた試料を100μL取り、そこにATP抽出試薬を100μL添加し、20秒後に発光試薬100μLを添加した後、キッコーマン製携帯型ATP分析装置「ルミテスター(登録商標)」で発光量を測定した。そして、予め、既知ATP濃度の液の評価により求めておいた、ATP量と発光量の相関式から、ATP量を算出した。
上記のように実験を行った結果、発光感度が「ルシフェール(登録商標)HSセット」(キッコーマン)より低いキッコーマン製試薬キット「ルシフェール(登録商標)250プラス」の試薬を用いて既知ATP濃度の液を測定した際、ATPが10−11M濃度に対して、発光量は35RLUであった。該試薬を用いて、半透膜供給水22のATPの測定した結果、検出限界以下であり、濃縮水26のATP測定した結果、検出限界以下、もしくはばらつきにより有効な値が得られず、適切なATP値を得ることができなかった。
(実施例1)
実施例1では、濃縮水26のATPのみを測定したこと、ATP値が運転初期ATP値の10倍を超えた際に薬液洗浄を行ったこと以外は、比較例1と同様に実験を行った。運転の結果、図4に示すように、濃縮水のATPは初期が50pg/mL程度だったが、その後、徐々に上昇し、運転開始後1.5ヶ月で500pg/mLを超えたため、比較例1と同様に半透膜の洗浄を実施した。矢印は薬液洗浄実施を意味する。その結果、濃縮水26のATPはほぼ50pg/mLまで回復した。その後も同様に濃縮水26のATPが500pg/mLを超えた際に洗浄を実施し、運転を400日程度続けた。その間、半透膜24の運転差圧はほとんど変化せず、安定的に運転が行えた。
(実施例2)
実施例2では、半透膜24の洗浄頻度を減らすため、薬剤20の添加を開始した以外には、実施例1と同様に運転を行った。薬剤20としては、殺菌剤である2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド(以下DBNPA)を使用し、送水ポンプ18と高圧ポンプ21の間に10mg/LのDBNPAを週1〜3回、1時間添加した。そして、実施例2では、実施例1と同様に、濃縮水26のATP値が運転初期ATP値の10倍を超えた際に薬液洗浄を行った。運転結果を図5に示す。
期間IではDBNPAの注入がなく、期間IIでは1回/週、期間IIIでは2回/週、期間IVでは3回/週の頻度でDBNPAの注入を行った。矢印は薬液洗浄実施を意味する。DBNPAの添加頻度が増えるに従い、濃縮水ATPの上昇は緩やかになり、バイオファウリングの進行が遅くなっていることが示唆された。またこれにより、半透膜24の洗浄頻度も少なくなった。これらの運転結果に基づき、コスト条件等から殺菌剤の添加頻度を決定した。このように濃縮水のATPをモニタリングすることにより、半透膜24の運転差圧上昇のリスクを冒すことなく、殺菌剤の添加条件を最適化することができた。
(実施例3)
実施例3では、比較例1と同様に運転を行い、海水12から透過水25および濃縮水26を得ると共に、半透膜供給水22および濃縮水26の全ATP値を得た。また、濃縮水26のATP値をX、半透膜供給水22のATP値をY、半透膜24の回収率をReとし、”X−Y/(1−Re)”の式から得られる値を運転基準指標とした。その結果、運転開始から3週間程度で、上記式で算出した運転基準指標が運転初期と比べて10倍値を超えた。これで、ファウリングが起こっていると判断し、薬剤20の添加を開始した。薬剤20としては、殺菌剤であるDBNPAを使用し、送水ポンプ18と高圧ポンプ21の間に10mg/LのDBNPAを週1〜3回、1時間添加した。さらに運転を継続し、運転開始から2ヶ月程度後、前記運転基準指標が運転初期と同じ程度まで低下したため、殺菌剤であるDBNPAの添加を中止した。
さらに運転を継続し、運転開始から3ヶ月程度後、前記運転基準指標が急激に上昇し、運転初期の15倍まで増加した。これで、ファウリングが起こっていると判断し、比較例1と同様に水酸化ナトリウム水溶液(pH=12)で膜洗浄を行い、運転を再開したところ、前記運転基準指標がほぼ運転開始時の値に戻った。
その後、前記運転基準指標の初期値の10倍を第1の基準値、初期値の15倍を第2の基準値として運転を行った。前記運転基準指標が運転初期と比べて10倍までに増加すると、DBNPAを週1〜3回、1時間添加し、15倍以上までに増加すると水酸化ナトリウム水溶液(pH=12)で膜洗浄を行った。この方法で、2年程度の運転で半透膜24の運転差圧はほとんど変化せず、安定的に運転が行えた。
(実施例4)
実施例4では、細胞内ATPのみを測定したこと、サンプルの希釈基準電気伝導度を10,000μS/cmと、20、000μS/cmの二通りの基準にして、希釈基準が異なるそれぞれのATPを測定した以外には、実施例1と同様に運転を行った。
上記のように実験を行った結果、サンプルの希釈基準電気伝導度を20,000μS/cmにした場合、ATP測定結果に検出限界以下もしくはばらつきが大きく、有効な値が得られなかったが、サンプルの希釈基準電気伝導度を20,000μS/cmにした場合、適切なATP値を得ることができた。そこで、サンプルの希釈基準電気伝導度を10,000μS/cmにして希釈を行い、得られたATP値をモニタリングしながら運転を行った。
運転の結果、濃縮水26のATPは初期が40pg/mL程度だったが、その後、徐々に上昇し、運転開始後2ヶ月で400pg/mLを超えたため、実施例1と同様に半透膜24の洗浄を実施した。その結果、濃縮水26のATPはほぼ40pg/mLまで回復した。その後も同様に濃縮水26のATPが400pg/mLを超えた際に洗浄を実施し、運転を300日程度続けた。その間、半透膜24の運転差圧はほとんど変化せず、安定的に運転が行えた。
本発明は、膜面におけるバイオファウリングの進行状態を、膜差圧、透過性および分離性といった膜の運転データに現れる前に、簡便に把握することが可能な手段を提供する。そのため、本発明は、膜を用いて海水やかん水などの脱塩を行うことにより淡水を得たり、下廃水処理水や工業排水等を浄化して再利用水を得たりする際に、好適に用いることができる。
1 被処理水
2 高圧ポンプ
3 半透膜
4 透過水
5 濃縮水
6 ろ過手段
7 流量調整手段(もしくは圧力調整手段)
8 圧力測定手段
9 流量測定手段
10 薬剤
11 洗浄剤
12 海水
13 次亜塩素酸ナトリウム
14 海水貯槽
15 供給ポンプ
16 限外ろ過膜
17 半透膜供給水貯槽
18 送水ポンプ
19 重亜硫酸ソーダ
20 薬剤
21 高圧ポンプ
22 半透膜供給水
23 洗浄剤
24 半透膜
25 透過水
26 濃縮水
35 流量計

Claims (4)

  1. 被処理水を半透膜によって処理し、透過水と濃縮水に分離する造水方法において、前記半透膜の洗浄実施可否、または半透膜の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を決定するに際し、前記被処理水及び/又は前記濃縮水のATP(アデノシン−5´−三リン酸)値を、ATPが10−11M濃度に対して、100RLU以上の発光量を示すルシフェラーゼを使用して測定し、得られたATP値から導かれる運転基準指標値が所定値を上回った際に、前記半透膜の洗浄を実施する、または前記半透膜の洗浄条件及び/又は薬剤注入条件を強化することを特徴とする造水方法。
  2. 前記被処理水及び/又は前記濃縮水を電気伝導度が10,000μS/cm以下になるように希釈してから前記ATP値を測定することを特徴とする請求項1に記載の造水方法。
  3. 前記ATP値が、細胞内ATPの測定値であることを特徴とする請求項1または2に記載の造水方法。
  4. 前記運転基準指標値が、前記濃縮水のATP値をX、前記被処理水のATP値をY、前記被処理水を前記半透膜によって処理したときの前記透過水の回収率をReとした場合に、”X−Y/(1−Re)”で表される指標値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の造水方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015166068A (ja) * 2014-03-04 2015-09-24 三浦工業株式会社 水処理装置
JP2016185520A (ja) * 2015-03-27 2016-10-27 栗田工業株式会社 逆浸透膜装置の薬品洗浄方法及び薬品洗浄装置

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