JP4804176B2 - 海水の濾過処理法 - Google Patents

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本発明は、港湾内等の濁度の高い海水を魚介類の養殖用海水等として利用できるようにするための濾過処理法に関する。
海水を魚介類の養殖用海水、洗浄用水等として利用する場合、沖合から清浄な海水を運搬することは現実的ではなく、通常は、港湾内や沿岸付近の海水から汚れを除去し、除菌処理したものを利用することになる。このような技術として、特許文献1〜4が知られている。
特許文献1には、閉鎖性水域の海水の浄化処理方法の発明であり、海水中の植物プランクトンの90%以上を、塩素、オゾン、紫外線照射により滅菌処理した後に、生物膜濾過、砂濾過、活性炭濾過等により濾過する方法が開示されている。
特許文献2には、海水をオゾン処理した後に濾過する方法が開示され、処理水は、魚介類の養殖場や水族館に利用されることが開示されている。
特許文献3には、海水を濾過する濾過膜を、塩素剤を含む海水と、酸を含む海水で通水洗浄する方法が開示されている。
特許文献4には、濾過膜を用いて、海水を循環処理する方法であり、次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて逆圧洗浄できることが開示され、処理水は、魚介類の洗浄や水産加工品の洗浄に利用することが開示されている。
特開平5−277470号公報 特開平8−80493号公報 特開2001−252536号公報 特開2003−154360号公報
特許文献1〜3の発明では、除菌手段としてオゾンや薬剤を用いているため、処理水に残留するオゾンや薬剤の問題があり、安全性の点で改良の余地がある。特許文献4の発明では、膜モジュールを用いて膜濾過することが記載されているが、膜についての具体的な記載はなく、薬液を用いた通常の逆圧洗浄では、短期間で濾過性能が低下してしまう。
本発明は、長期間安定した濾過運転により、海水の浄化処理をすることができ、処理海水が魚介類の養殖用海水として利用できるようになる、海水の濾過処理法を提供することを課題とする。
本発明は、課題の解決手段として、海水を限外濾過して魚介類の養殖用海水として利用するための濾過処理法であって、
24時間の濾過処理運転の間、限外濾過膜を3〜200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1〜3時間浸漬した後、水で逆圧洗浄する処理を含む、海水の濾過処理法を提供する。
本発明の海水の濾過処理法によれば、長期間、安定した濾過性能を維持したままで連続運転することができるため、清浄な海水を養殖用海水として安定供給することができる。
以下、本発明の海水の濾過処理法の実施形態について、処理フローを示した図1に従って説明する。
本発明の濾過処理法の適用対象となる海水は、有機物等による汚れや細菌汚染等の問題により、そのままでは魚介類の養殖用海水として利用できない海水であり、例えば、港湾等の閉鎖海域の海水、沿岸付近の海水である。より具体的には、本発明の濾過処理法は、濁度(日本水道協会上水試験方法に記載の散乱光測定法による)が2以上の海水に適用することが好ましく、濁度が2〜6の海水に適用することが特に好ましい。
濾過運転時には、膜入口自動弁26を開放し、透過水自動弁13を開、洗浄水排出自動弁14と逆洗自動弁19は閉の状態で、海水を海水供給ポンプ11により限外濾過膜モジュール12に供給して濾過を行い、生成した透過水を透過水タンク17に貯留する。濾過膜モジュール12を透過しない海水は、循環経路16、海水供給ポンプ11を経て、再び濾過膜モジュール12に送られる。濾過膜モジュール12における濾過は、クロスフロー濾過でもよいし、全量濾過でもよい。また、濾過運転中、定期的に(例えば、30分から1時間の濾過運転の間に1回)透過水を用いて膜の逆圧洗浄を行う。
海水は、限外濾過膜モジュール12に送って濾過処理する前に、必要に応じてプレフィルター等により、最大径が100μm程度以上の異物(ゴミ)を除去しておくことが望ましい。
限外濾過膜モジュール12は、図1では少なくとも3つの液出入口を有するケースハウジング内に所要量の限外濾過膜が収容・固定されたものである。
限外濾過膜は公知のものを用いることができ、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ナイロン、酢酸セルロース等からなる、中空糸状、管状、スパイラル状、平膜状のものを用いることができる。
濾過運転を継続して行くと、濾過膜モジュール12内の限外濾過膜が目詰まりして濾過能力が低下して行くため、濾過膜を洗浄する。
本発明では、30分から1時間の濾過運転の間に1回の透過水を用いた逆圧洗浄を行う以外に、濾過運転24時間に1度の割合で、限外濾過膜を次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1〜3時間浸漬した後(以下「薬液浸漬洗浄」と称する。)、水(好ましくは透過水である。)で逆圧洗浄する。
次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた薬液浸漬洗浄は、次の手順で行う。海水供給ポンプ11を停止し、逆洗自動弁19を開とし、逆洗水供給ポンプ18及び薬液供給ポンプ22を作動させ、薬液タンク21内の次亜塩素酸ナトリウム水溶液と透過水タンク17の透過水(必要に応じて水道水を併用してもよい)が混合された洗浄水を得る。
次に、前記洗浄水の所定量(限外濾過膜モジュール12内の限外濾過膜の全体が洗浄水中に浸漬される量)を限外濾過膜モジュール12に供給した後、逆洗水供給ポンプ18及び薬液供給ポンプ22を停止し、逆洗自動弁19を閉として、限外濾過膜モジュール12内に洗浄水を満たし、限外濾過膜の全体を洗浄水中に1〜3時間浸漬する。
洗浄水中の次亜塩素酸ナトリウム濃度(質量基準)は3〜200ppmであり、好ましくは10〜150ppm、より好ましくは20〜100ppmである。
浸漬洗浄の終了後、逆洗自動弁19を開とし、逆洗水供給ポンプ18を作動させ、透過水(必要に応じて水道水を併用してもよい)を用いて逆圧洗浄を行う。逆圧洗浄に用いる水は、次亜塩素酸ナトリウムを含まないものであることが好ましい。逆圧洗浄は、好ましくは流束3〜16m/日、より好ましくは流束6〜12m/日で、好ましくは60〜180秒間、より好ましくは60〜120秒間である。
実施例1
図1に示すフローに従って、クロスフロー濾過により、海水を連続濾過処理した。濾過速度は、流束で約2.5m/日とした。
海水として、閉鎖海域の岸から約20mで水深約5mの海水(濁度5)を用いた。限外濾過膜として、ポリエーテルスルホン中空糸膜(有効膜面積16m、膜内径0.8mm、膜外径1.3mm、分画分子量15万)を用いた。
22時間の濾過運転後(但し、濾過運転30分ごとに、透過水を用いて、流束0.1m/日で60秒間逆圧洗浄した。)、2時間の薬液浸漬洗浄(次亜塩素酸ナトリウム濃度15ppm)をした後、透過水(次亜塩素酸ナトリウムを含まない)を用いて、流束10m/日で60秒間の逆圧洗浄をした。この条件にて濾過運転を90日継続した。
濾過処理開始から1日経過後の透過水の濁度は0.1以下であり、濾過処理開始から90日経過後の透過水の濁度は0.1以下であった。また、膜間差圧にも変化は見られなかった。
比較例1
22時間の濾過運転後(但し、実施例1と同様にして逆圧洗浄した。)、薬液(次亜塩素酸ナトリウム濃度5ppm)を用いた逆圧洗浄を流束10m/日で60秒間行った後、透過水を用いた逆圧洗浄を流束10m/日で60秒間行った。この条件にて濾過運転を30日継続した。
濾過処理開始から1日経過後の透過水の濁度は0.1以下であり、濾過処理開始から30日経過後の透過水の濁度は0.1以下を維持したが、膜間差圧が運転開始から7日経過後から上昇し、透過水量が減少した。このため、加圧ポンプ(図1の海水供給ポンプ11)により、徐々に運転時の圧力を上昇させて行き、透過水量を維持した。
本発明の海水の濾過処理法を説明するためのフロー図。
符号の説明
12 限外濾過膜モジュール
17 透過水タンク
21 薬液タンク

Claims (2)

  1. 濁度(日本水道協会上水試験方法に記載の散乱光測定法による)が2〜6の海水を限外濾過して魚介類の養殖用海水を製造する方法であって、
    限外濾過膜がポリエーテルスルホン膜であり、
    24時間の濾過処理運転の間、限外濾過膜を3〜200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1〜3時間浸漬した後、次亜塩素酸ナトリウムを含まない水を用いて、流束3〜16m/日で、60〜180秒間逆圧洗浄する処理を含む、魚介類の養殖用海水を製造する方法
  2. 24時間の濾過処理運転の間、限外濾過膜を10〜150ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液中に1〜3時間浸漬した後、次亜塩素酸ナトリウムを含まない水を用いて、流束6〜12m/日で、60〜120秒間逆圧洗浄する処理を含む、請求項1記載の魚介類の養殖用海水を製造する方法
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