本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし本発明は当該実施形態に限定されるものではない。なお、以下に示す各図では、分かりやすさのため、構成要素の大きさの比率や形状等を誇張して記載することがある。また、各図では見易さのため、繰り返しとなる符号は一部を省略することがある。
図1は一つの実施形態を説明する図であり、採光シート20(図3参照)が備えられた建物1の外観斜視図である。建物1はいわゆるオフィスビルである。建物1の南側などに面する外壁には室内外を連通する複数の採光部(開口部)が設けられている。採光シート20を具備する採光装置10は当該採光部に配置されている。
図2には1つの採光装置10を室外側から正面視した図を表した。図2に示したように、採光装置10は枠11と該枠11の枠組み内に配置された採光パネル12とを備えている。採光装置10はいわゆる窓として構成されており、当該採光装置10が上記のように建物1の採光部に配置される。
図3には図2にIII−IIIで示した線に沿った採光装置10の鉛直方向断面のうち、採光パネル12の層構成を模式的に表した。図3では採光パネル12のパネル面が鉛直になるように建物1に取り付けられた姿勢で表されている。図3の紙面左が室外側、紙面右が室内側、紙面上方が天側、紙面下方が地側である。
採光パネル12は、図3からわかるように、パネル13、及び該パネル13の室内側面に貼合された採光シート20を備えている。また、採光シート20はパネル13側から接着層26、光散乱層23、基材層22、およびハードコート層21を備えている。以下、これらについて説明する。
パネル13は、ガラスパネルや樹脂パネル等、通常の建物や乗り物の窓等に用いられる透光性を有する板状の透光パネルである。従って、パネル13を構成する部材としては公知の板ガラスや樹脂板を用いることができる。上記した枠11は少なくとも当該パネル13の周囲に配置されることにより、採光パネル12が枠11の枠組み内に取り付けられる。
ハードコート層21は、採光シート20の表面保護を目的として、採光シート20のうちパネル13に貼合される側とは反対側の最表面に設けられる層である。ハードコート層21は透明な樹脂層として形成することができる。採光シート20の表面の擦り傷、表面汚染に対する耐性の観点から、ハードコート層21は硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化層として形成することが好ましい。
ハードコート層21を構成する材料としては、例えば電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂等を要求性能に応じて適宜採用すればよい。ハードコート層21に用いることができる電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等の電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。
また、ハードコート層21には、耐汚染性向上の機能を追加してもよい。これは例えばシリコーン系化合物、フッ素系化合物などを添加することにより可能となる。さらにその他の機能として帯電防止性向上、撥水性向上の機能を有するものとしてもよい。
帯電防止性向上のために用いることができる材料としては、電子伝導タイプではPEDOT−PSS(PEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene);3,4−エチレンジオキシチオフェンポリマー)とPSS(poly(styrenesulfonate);スチレンスルホン酸ポリマー)とを共存)などが挙げられ、イオン導電タイプではリチウム塩系材料等が挙げられる。
また、撥水性向上のために用いることができる材料としては、フッ素系化合物等が挙げられる。
次に、基材層22について説明する。基材層22は、光散乱層23を形成するための基材となる層である。従って基材層22は、透光性を有するとともに光散乱層23の変形を防止できるように支持する。かかる観点から、基材層22を構成する材料の具体例として例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等のうちの1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
基材層22の厚さは特に限定されないが、25μm以上300μm以下であることが好ましい。基材層22の厚さを25μm以上とすることによって、採光シート20に製造過程において基材層22に皺が生じ難くなる。また、基材層22の厚さを300μm以下とすることによって、採光シート20の製造過程において基材層22を含むシートを巻き取りやすくなる。
次に、光散乱層23について説明する。光散乱層23は光透過部24及び光散乱部25を有している。光透過部24は、図3に示した断面を有して基材層22の面に沿った一方向(建物1に配置された姿勢で水平方向)に延びるように配置されるとともに、基材層22の面に沿った該一方向とは異なる方向(建物1に配置された姿勢で鉛直方向)に所定の間隔で複数配列されている。本実施形態では隣り合う光透過部24は基材層22側の端部で連結され、一体化されている。
一方、光散乱部25は隣り合う光透過部24の間に配置されている。
図4には光散乱層23の一部を拡大した図を示した。
光透過部24は光を透過する部位である。光散乱層23が光透過部24を備えていることによって、採光シート20を通して室外側の景色が見やすくなる。また、光散乱層23のうち光透過部24が配置された部位における基材層22側の面とその反対側面(接着層26側の面)とは平行且つ平滑に形成されている。これによって、採光シート20を通して室外側の景色がさらに見やすくなる。光透過部24は、光を散乱させることなく透過する部位であることが好ましい。これにより背面側の景色の見易さがさらに向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する部位」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、当該部位中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
本実施形態の光透過部24は図3、図4に表れる断面で2つの光散乱部25間において略台形の断面を有しており、室内側(基材層22側)が長い下底、室外側(接着層26側)が短い上底であり、光散乱部25との界面を構成する辺が脚部となっている。
光透過部24を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
ここで光透過部24を構成する材料の屈折率は、基材層22の屈折率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。
光散乱部25は、隣り合う2つの光透過部24間に形成される部位である。上記したように光透過部24はシート面に沿った方向に所定の間隔で並列され、光透過部24間には、略台形断面を有する凹部が形成されている。本実施形態における当該凹部は、室内側(基材層22側)に短い上底、室外側(接着層26側)に長い下底を有する略台形断面の溝であり、ここに光散乱部25を構成する材料が充填されることにより光散乱部25が形成されている。従って光散乱部25は上記凹部に基づいた略台形の断面を具備している。
また、光散乱部25は、光散乱部位25’及び光吸収部位25’’を備えている。光散乱部位25’は、ここに照射された光を散乱させることができるように構成された部位である。そのため、光散乱部位25’は光を散乱させるための材料で構成されている。光を散乱させるための材料は特に限定されることはないが、例としては、樹脂(硬化性樹脂)に白色顔料や銀色顔料等の光を散乱させる光散乱剤を分散させた組成物が挙げられる。上記白色顔料としては、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。上記銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。上記組成物で光散乱部位25’を構成することによって、光散乱部位25’で効率よく光を散乱させることができる。なお、光散乱部位25’に用いる上記硬化性樹脂としては、光透過部24を構成する樹脂と同様のものを用いることもできる。
また、透明な樹脂(硬化性樹脂)に該樹脂とは屈折率が異なる透明な光散乱剤を分散させた組成物で光散乱部位25’を構成してもよい。上記透明な硬化性樹脂としては光透過部24を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。一方、上記透明な光散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、アイカ工業株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、上記透明な光散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、上記透明な光散乱剤は中空粒子にすることも可能である。
光散乱部位25’に用いる硬化性樹脂の屈折率は特に限定されることはないが、汎用性から1.56から1.49の範囲が好ましい。また、光透過部24と光散乱部位25’との界面に全反射臨界角より大きい角度で入射した外光を全反射して偏向させる観点からは、光散乱部位25’に用いる硬化性樹脂の屈折率は光透過部24を構成する樹脂の屈折率より低いことが望ましく、1.50から1.49であることがより好ましい。上記のように偏向された光は、その向きが変わり、例えば天井に照射されるなどして室内に居る人に眩しさを与える直達光(いわゆる直射日光)でなくすことができる。
ただし、これに限らず光散乱部位25’に用いる硬化性樹脂の屈折率と光透過部24を構成する樹脂の屈折率とを同じ、又は近い大きさとしてもよい。
一方、光吸収部位25’’はここに照射された光を吸収できるように構成された部位である。光散乱部25は隣り合う光透過部24間の凹部に形成されるが、上記光散乱部位25’は、該凹部内のうち開口側(図4の紙面右側)の一部には形成されない。そしてこの光散乱部位25’が形成されない部位に光吸収部位25’’を構成する組成物が充填されることによって、光吸収部位25’’が形成される。
光吸収部位25’’は可視光線(360nm以上830nm以下の波長の光)を10%以上吸収できる部位である。光吸収部位25’’における可視光線の吸収率が10%以上でなければ光吸収部位25’’が後述する機能を発揮し難い。また、光吸収部位25’’における可視光線の吸収率は90%以下であることが好ましい。光吸収部位25’’における可視光線の吸収率は90%以下とすれば、光吸収部位25’’を構成する組成物の調整が容易になる。
また、光吸収部位25’’の厚さ(図4の紙面左右方向)の大きさは1μm以上10μm以下であることが好ましい。光吸収部位25’’をこの程度の厚さにすることによって、光吸収部位25’’の可視光線の吸収率を均一にしやすくなる。
光吸収部位25’’は、例えば、光透過性を有する樹脂中に光吸収性を有する粒子(光吸収粒子)が分散された組成物によって構成することができる。
当該光透過性を有する樹脂としては光透過部24を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。
一方、上記光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられる。ただし、これに限定されず、例えば吸収すべき光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を光吸収粒子として用いてもよい。着色粒子の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。これらの中では、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から着色した有機微粒子が好ましい。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましい。
本実施形態では光吸収部位25’’を上記のように構成したが、光吸収部位は光を吸収することができればその形態は限定されることない。例えば、顔料や染料で着色した樹脂で光吸収部位を構成してもよい。
さらに、本実施形態では光散乱部25が次のような構成を備えている。図4を参照しつつ説明する。
2つの光散乱部25の間には上記のように光透過部24が配置される。従って、図4にIVaで示したように光透過部24の対角線に相当する線を定義することができる。より詳しくは、採光シート20が建物1の採光部に配置された姿勢での光散乱層23の厚さ方向に平行な鉛直断面において、隣り合う光散乱部25の向かい合う辺について、一方の辺の室内側端部と、他方の辺の室外側端部とを結ぶ線を見込み線IVaとする。また、当該見込み線IVaが採光シート20のシート面の法線となす角のうち90°より小さい方の角を見込み角θ1とする。本実施形態では当該θ1が所定の値をとることが好ましい。θ1の具体的な説明は太陽光の光路に関係するので、後で光路例とともに説明する。
また、光散乱部25の台形断面における脚部は、図4からわかるように、一方の脚部は採光シート20のシート面の法線に対してθUを有して傾斜し、他方の脚部は同様にθDを有して傾斜している。
θUおよびθDは、光散乱層23の作製を容易にする等の観点から0°以上30°以下とすることが好ましい。
光散乱部25が並列されるピッチは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。光散乱部25のピッチを10μm以上とすることによって、光散乱部25が微細形状になり過ぎることを防止でき、光散乱層23の作製が容易になる。一方、光散乱部25のピッチを200μm以下とすることによって、後述するようにして金型を用いて光透過部24を成形する際に、該金型から光透過部24を離型しやすくなる。
また、光散乱部25の鉛直断面のうち、室外側(基材層22とは反対側で光透過部24間の凹部の開口側)の大きさ(幅)は特に限定されないが、5μm以上150μm以下であることが好ましい。当該幅を5μm以上とすることによって、光散乱部25が微細形状になり過ぎることを防止でき、光散乱層23の作製が容易になる。一方、当該幅を150μm以下とすることによって、後述するようにして金型を用いて光透過部24を成形する際に、該金型から光透過部24を離型しやすくなる。
光散乱部25の厚さ方向(図4の紙面左右方向)の大きさは特に限定されないが、10μm以上200μm以下であることが好ましい。この大きさを10μm以上とすることによって、光散乱部25の形成が容易になる。一方、この大きさを200μm以下とすることによって、光透過部24を成形する際に用いる金型の製造が容易になる。また、後述するようにして金型を用いて光透過部24を成形する際に、該金型から光透過部24を離型しやすくなる。
本実施形態では光散乱部25の断面が等脚台形の例を説明したが、必ずしもこれに限らず、光散乱部の台形断面の2つの脚部のシート面に対する角度が異なっていてもよい。また、光散乱部の台形断面の脚部は曲線状や折れ線状であってもよい。図5に各例の光散乱部の断面形状を表した。
図5(a)は台形断面の脚部が凸状の曲線の光散乱部25aの例、図5(b)は台形断面の脚部が凹状の曲線の光散乱部25bの例、及び図5(c)は台形断面の脚部が折れ線状の光散乱部25cの例である。
図5(d)には、光散乱部の台形断面のうち下底側(光透過部間に形成される溝の開口側)が凹状に形成されている例の光散乱部25dを表した。この場合、当該凹状の内側には隣接する接着層26を構成する材料が充填される。
また、光散乱部25と光透過部24との界面で光を散乱させ易くするという観点からは、光散乱部25と光透過部24との界面を微小な凹凸が無数に形成された面であるマット面としてもよい。
図3に戻って他の構成についても説明を続ける。
接着層26は、パネル13に採光シート20を接着するための層である。接着層26を構成する材料としては、パネル13に採光シート20を接着できるものであれば特に限定されない。すなわち、接着層26を構成する材料としては、公知の粘着剤、接着剤、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を挙げることができる。接着層21を構成する材料のより具体的な例としては、アクリル系の粘着剤を挙げることができ、さらに具体的にはアクリル系共重合体とイソシアネート化合物とを組み合わせた粘着剤を挙げることができる。ただし、接着層21を構成する材料は、採光シート20の性質上、透光性、耐候性に優れた材料であることが好ましい。
接着層26の厚さは特に限定されないが、10μm以上100μm以下であることが好ましい。接着層26の厚さを10μm以上とすることによって、パネル13と採光シート20との密着性を向上させやすくなる。また、接着層26の厚さを100μm以下とすることによって、接着層26の厚さを均一にしやすくなる。
以上説明した採光シート20を具備する採光パネル12を用いて採光装置10を構成し、これを図1に示したように建物1の採光部に配置する。次に、このように採光シート20が配置された場面における作用、及び上記見込み角θ1の好ましい値について、主要な光路に基づいて説明する。説明に必要な光路例を以下に示す図面に適宜表した。なお各図面に表した光路例は概念的なものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。
図6に1つの光路例である太陽からの光LS1を示した。図6からわかるように光LS1はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS1で採光パネル12に照射される。採光パネル12に斜め上方から入射した光LS1は採光パネル12を透過するうちに光散乱層23の光透過部24内を進む。光透過部24内では、光透過部24の屈折率をNP、室外の屈折率をN0とすれば、光LS1は、式(1)で表される太陽光進行角θP1で進む。
太陽光進行角θP1で進行した光LS1が光透過部24と光散乱部位25との界面に達したとき、光透過部24と光散乱部25との屈折率差、及び太陽光進行角θP1の関係が全反射臨界角以上であれば図6のように光LS1は当該界面で全反射する。これにより光LS1が偏向されて、まぶしさの原因となる直達光を抑制することが可能となる。
ここで、偏向される向きは光透過部24と光散乱部25との界面に入射する角度である太陽光進行角θP1、及び光散乱部25の傾斜角であるθUに依存する。従って、ここで全反射した光が水平より上向きとなるようにθUが決められることが好ましい。その中でも、全反射光の全てが上向きとなるように偏向させるためには、θU=0°にすることが考えられる。
図7には他の光路例である太陽からの光LS2を示した。図7からわかるように光LS2はそのときの太陽高度に基づいて仰角(水平面からなす角)θS2で採光パネル12に照射される。採光パネル12に斜め上方から入射した光LS2は採光パネル12を透過するうちに光散乱層23の光透過部24内を進む。光透過部24内では、光透過部24の屈折率をNP、室外の屈折率をN0とすれば、光LS2は、式(2)で表される太陽光進行角θP2で進む。
太陽光進行角θP2で進行した光LS2が光透過部24と光散乱部位25’との界面に達したとき、光透過部24と光散乱部位25’との屈折率差、及び太陽光進行角θP2の関係が全反射臨界角未満であれば図7のように光LS2は光散乱部位25’内に侵入し、ここで散乱されて室内側に出射される。また、光透過部24と光散乱部位25’との間に屈折率差が無ければ、光透過部24と光散乱部位25’との界面に達した全ての光は光散乱部位25’内に入射して同様に散乱して室内側に出射される。
以上からわかるように、採光シート20によれば見込み角θ1によらず光LS1、LS2のように太陽光の少なくとも一部を全反射で偏向させ、及び/又は散乱させて室内側に提供することができる。これにより、太陽光の室内への入射量を大きく減じることなく、且つ少なくとも一部の直達光をなくすことができる。これにより明るく、快適な室内空間を形成することができる。
また、採光シート20には上記したように光透過部24が備えられており、光透過部24が配置される部位の光散乱層23の表裏面は平行且つ平滑に形成されている。これにより、図6に示したように室外側の景色を伴う光LK1は歪が抑制されて室内に入射することができる。これは室内側から室外側の景色を視認することができることを意味する。
一方、上記したように光散乱部25には光吸収部位25’’が形成されているので、採光シート20のシート面に対して略垂直に採光シート20に入射する外光の一部は、図6に示した光LK2のように光吸収部位25’’に入射して吸収される。このように光吸収部位25’’が光LK2を吸収することによって、室外側から室内側を見たときに不自然に白く見えることを防止し、自然な暗さで室内側を見ることができる。光吸収部位25’’が備えられていなければ、光LK2は光散乱部位25’に入射して散乱される。このように光LK2が散乱されると、室外側から室内側を見たときに不自然に白く見える虞がある。上記のように光吸収部位25’’が光LK2を吸収することによって、光LK2が光散乱部位25’に入射して散乱することを抑制し、室外側から室内側を見たときに不自然に白く見えることを抑制できる。
以上説明したように、採光シート20は、反対側を透視しやすい構造も具備している。
上述したように採光シート20によれば、見込み角θ1によらず、効率よく室内に太陽光を取り入れつつも斜め上方から入射する直達光の少なくとも一部をなくすことができる。ただし、より効果的に直達光を光散乱部位25’で散乱させて室内側に出射させる観点から、見込み角θ1を所定の角度範囲に規定することが好ましい。以下に詳しく説明する。
図8に説明のための図を示した。ここでは、一年のうち最も南中高度が高いときの仰角θSHを考える。すなわち、少なくとも一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHで太陽光が斜め上方から採光パネル12に入射したときに、太陽光からの直接光を全て光散乱部位25’に到達させる観点からθ1を規定することができる。図8からわかるように、仰角θSHで入射した光LSHが必ず光散乱部位25’に達するための限度は、光透過部24内を光LSHが見込み線IVa(図4参照)に沿って進む状況である。すなわち、光透過部24内における太陽光進行角θPHが見込み角θ1と同じとなっていればよい。従って、これは、空気の屈折率をN0、光透過部24の屈折率をNpとしたとき、屈折率、及び入射角の関係式により下記式(3)で表される。
式(3)から、見込み角θ1が下記式(4)を満たすように構成することにより、少なくとも一年のうちで最も南中高度が高いときの仰角θSHで太陽光が斜め上方から採光パネル12に入射したときに、太陽光からの直接光を全て光散乱部位25’に到達させることができる。
θSHは、所定の場所における南中高度が最も高い位置における仰角であるから、当該所定の場所ではこれ以上角度の大きい仰角は存在しない。従って、これより低い所定の仰角の太陽光までをも同様に光散乱部位25’に全て到達させるためには、式(3)、式(4)を満たしつつ、さらに式(3)、式(4)のθSHのかわりに当該所定の仰角を代入すれば同様にθ1のとるべき値を得ることができる。
例えば、一年のうち南中高度が最も高い時の仰角θSHと、一年のうち南中高度が最も低い時の仰角θSLとの間の仰角θSM以上の仰角からの直接の太陽光を光散乱部25に到達させたいときには、式(4)を満たしつつ下記式(5)を満たすように見込み角θ1を形成すればよい。
このように見込み角θ1を所定の角度にするための手段は、光散乱部25のピッチ、光散乱部25の脚部の角度(図4のθU、θD)、光散乱部25の厚さ方向(図4の紙面左右方向)の大きさ、光透過部24の屈折率を変更することを挙げることができる。これらを単独、又は複数組み合わせてθ1を所定の角度に調整することが可能である。
このようにθ1を小さくすることにより、季節による南中高度の違いだけでなく、一日のうちにおける太陽の高さの移動に伴う仰角の変化に対しても対応することができ、より多くの太陽光を光散乱部に到達させて全反射や散乱をさせて、室内側に提供することが可能となる。
一方で、θ1を小さくすることにより光散乱層23が厚くなったり、光透過部24が小さくなったりすることもある。これらにより、室内側からの室外側の視認性が低下する虞もある。かかる観点から、θ1の下限は例えば、図9に示したように一年のうち最も南中高度が低いときの仰角θSLからの直接の太陽光を全て光散乱部25に到達させる観点からθ1の下限を決めてもよい。図9に説明のための図を示した。
基本的な考え方は式(3)、式(4)の算出と同様であるから、図9からわかるように、仰角θSLによる太陽光LSLが見込み線VIa(図4参照)に沿うように進むことを考えればよいので、下記式(6)を得ることができる。
ここで、θPLは、仰角θSLのときの光透過部24内の太陽光進行角である。従って、式(4)及び式(6)を求めた趣旨から下記式(7)を得ることができる。
ここでより具体的な例を挙げる。日本国内を考えたとき、札幌、東京、沖縄における一年のうち南中高度が最も高い時の仰角(θSH)、一年のうち南中高度が最も低いときの仰角(θSL)をそれぞれ表1に示した。
表1に基づいて、日本国内におけるθ1の範囲を下記式(8)又は下記式(9)のように構成してもよい。
式(8)によれば、日本国内の概ね全域において少なくとも夏至における南中高度からの太陽光の全ての直射光を光散乱部位に到達させることができる。また、式(9)によれば、さらに高い反対側の視認性を有しつつ、多くの太陽光を光散乱部位に到達させることが可能である。
採光シート20には上記した各層のいずれかに、他の機能を付加させるための構成を備えてもよい。これには例えば、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、又は近赤外線吸収剤を添加し、紫外線吸収機能、熱線吸収機能、又は近赤外線吸収機能を備えさせることが考えられる。
近赤外線吸収機能は、近赤外線吸収剤(近赤外線吸収色素)を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。近赤外線吸収色素としては、800nm以上1100nm以下の波長領域を吸収するものを用いることが好ましい。該波長領域の近赤外線の透過率が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。一方で、近赤外線吸収色素は可視光領域、即ち、380nm以上780nm以下の波長領域で、十分な透過率を有することが好ましい。
紫外線吸収機能は、以下に例示する紫外線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(TINUVIN P、TINUVIN P FL、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 326 FL、TINUVIN 328、TINUVIN 329、TINUVIN 329 FL、全てBASFジャパン株式会社製)や、トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN 1577 ED、BASFジャパン株式会社製)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(CHIMASSORB 81、CHIMASSORB 81 FL、全てBASFジャパン株式会社製)、ベンゾエート系紫外線吸収剤(TINUVIN 120、BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
熱線吸収機能は、以下に例示する熱線吸収剤を上記した各層の1つ又は複数に添加したり、塗布したりすることにより向上させることができる。熱線吸収剤としては、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)またはスズドープ酸化インジウム(ITO)、フタロシアニン化合物などの金属酸化物超微粒子などが挙げられる。
以上説明した採光パネル12は例えば次のように製造することができる。すなわち、採光パネル12は、パネル13に採光シート20を貼合することによって製造することができる。ここで採光シート20は、例えば次のように作製することができる。
採光シート20のうち光散乱層23は金型ロールを用いる方法により形成することができる。すなわち、円筒状であるロールの外周面に光散乱層23の光透過部24を転写可能な凹凸が設けられた金型ロールを準備する。そして金型ロールとこれに対向するように配置されたニップロールとの間に、基材層22となる基材を挿入する。このとき、当該基材の光透過部24を成形する側とは反対の面側には、ハードコート層21を形成しておいてもよい。ただし、ハードコート層21は光散乱層23を形成した後に形成してもよい。そして、基材と金型ロールとの間に光透過部24を構成する組成物を供給しながら金型ロール及びニップロールを回転させる。これにより金型ロールの表面に形成された凹凸の凹部内に光透過部24を構成する組成物が充填され、該組成物が金型ロールの凹凸の表面形状に沿ったものとなる。
ここで、光透過部24を構成する組成物としては、上記したものが好ましいが、さらに具体的には次の通りである。すなわち、光硬化型プレポリマー(P1)に、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)を配合した光硬化型樹脂組成物を用いることができる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(I1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置及び光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。なお、光透過部24の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドである。
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)及び光重合開始剤(I1)は、それぞれ、1種類で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金型ロールと基材との間に挟まれ、ここに充填された光透過部24を構成する組成物を適切な方法(例えば、基材側から光照射装置により光を照射する。)によって硬化させ、その形状を固定させることができる。そして、離型ロールにより、基材層22上に成形された光透過部24を金型ロールから離型する。
次に、光透過部24間の凹部に光散乱部25を形成する。より具体的には、まず、光散乱部位25’を構成する組成物を光透過部24間の凹部に過剰に供給する。次にこれをブレードによりスキージして余分な組成物を掻き取って除去するとともに、当該凹部内に組成物を充填する。このようにして凹部に充填された組成物に対して適切な硬化方法を適用して硬化させ、光散乱部位25’を形成する。ここでスキージの際に、ブレードを光透過部に少し強く押し当てる。これにより組成物が凹部の内容積よりも少なくなるように掻き出され、凹部内の開口部付近に空間が形成され、凹部の開口部側が窪んだ形状の光散乱部位25’が形成される。そして当該凹部内の空間に光吸収部位25’’となる組成物を過剰に供給し、再度ブレードによりスキージして余分な組成物を掻き取って除去するとともに、該空間内に組成物を充填する。次いで充填された組成物に対して適切な硬化方法を適用して硬化させ、光吸収部位25’’を形成する。
このように少なくとも2回にわたって光透過部24間の凹部にそれぞれの組成物を供給、スキージ、及び硬化することで光散乱部25を形成することができる。
上記のようにして基材層22上に光散乱層23を形成した後、該光散乱層23上に接着層26を形成することによって、採光シート20を作製することができる。
図10は他の実施形態を説明する図である。図10は、採光パネル212の水平方向断を概略的に示す図であり、採光パネル212の層構成を模式的に表している。採光パネル212も上述した採光パネル12と同様に、パネル面が鉛直になるように建物1に取り付けられる。図10では、採光パネル212のパネル面が鉛直になるように建物1に取り付けられた姿勢で表されており、図10の紙面左が室外側、紙面右が室内側、紙面手前が天側、紙面奥が地側となる。
採光パネル212は、上述した採光パネル12と一部異なる構成を具備し、他の一部は採光パネル12と同様である。当該同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
採光パネル212は、パネル13と、該パネル13の室内側に配置された採光シート220と、を具備している。パネル13への採光シート220の取り付けは採光パネル12と同様に接着層26により行われている。
採光シート220は、室内側からハードコート層21、基材層22、光散乱層223、および接着層26を備えている。以下、光散乱層223について説明する。
光散乱層223は光透過部224及び光散乱部225を有している。光透過部224は、図10に示した断面を有して基材層22の面に沿った一方向(建物1に配置された姿勢で鉛直方向)に延びるように配置されるとともに、該一方向とは異なる方向(建物1に配置された姿勢で水平方向)の基材層22の面に沿って所定の間隔で複数並列されている。本実施形態では隣り合う光透過部24は基材層22側の端部で連結され、一体化されている。
一方、光散乱部225は隣り合う光透過部224の間に配置されている。
図11には光散乱層223の一部を拡大した図を示した。
光透過部224は光を透過する部位である。光散乱層223が光透過部224を備えていることによって、採光シート220を通して室外側の景色が見やすくなる。また、光散乱層223のうち光透過部224が配置された部位における基材層22側の面とその反対側面(接着層26側の面)とは平行且つ平滑に形成されている。これによって、採光シート220を通して室外側の景色がさらに見やすくなる。光透過部224は、光を散乱させることなく透過する部位であることが好ましい。これにより背面側の景色の見易さがさらに向上する。ここに「光を散乱させることなく透過する部位」とは、意図的に散乱させる材料等を添加することなく形成された部位であることを意味し、当該部位中を光が透過するときに不可避的に散乱が生じることは許容される。
本実施形態の光透過部224は図10、図11に表れる断面で2つの光散乱部225間において略台形の断面を有しており、室外側(基材層22側)が長い下底、室内側(接着層26側)が短い上底であり、光散乱部225との界面を構成する辺が脚部となっている。
光透過部224を構成する材料としては、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の1つ以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を挙げることができる。
ここで光透過部224を構成する材料の屈折率は、基材層22の屈折率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし両者間で屈折率差があるとその界面で光が偏向されてしまう可能性が高まるので、同じ材料であること、又は異なる材料であっても屈折率差が小さい、あるいは屈折率差がないことが好ましい。
光散乱部225は、隣り合う2つの光透過部24間に形成される部位である。すなわち、上記したように光透過部24はシート面に沿った方向に所定の間隔で並列され、光透過部224間には、略台形断面を有する凹部が形成されている。本実施形態における凹部は、室外側(パネル13側)に長い下底、室内側(基材層22側)に短い上底を有する断面の溝であり、ここに光散乱部225を構成する材料が充填されることにより光散乱部225が形成されている。従って光散乱部225は光透過部224間の凹部に基づいた断面を具備している。
また、光散乱部225は、光散乱部位225’及び光吸収部位225’’を備えている。光散乱部位225’は、ここに照射された光を散乱することができるように構成された部位である。そのため、光散乱部位225’は光を散乱させるための材料で構成されている。光を散乱させるための材料は特に限定されることはないが、例としては、樹脂(硬化性樹脂)に白色顔料や銀色顔料等の光を散乱させる光散乱剤を分散させた組成物が挙げられる。上記白色顔料としては、例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。上記銀色顔料としては、例えば、アルミニウム、クロムなどの金属が挙げられる。上記組成物で光散乱部位225’を構成することによって、光散乱部位225’で効率よく光を散乱させることができる。なお、光散乱部位225’に用いる上記硬化性樹脂としては、光透過部224を構成する樹脂と同様のものを用いることもできる。
また、透明な樹脂(硬化性樹脂)に該樹脂とは屈折率が異なる透明な光散乱剤を分散させた組成物で光散乱部位225’を構成してもよい。上記透明な硬化性樹脂としては光透過部224を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。一方、上記透明な光散乱剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンを中心としたモノマーを重合して得られた架橋粒子が挙げられる。当該架橋粒子の具体例としては、アイカ工業株式会社製のガンツパール(登録商標)が挙げられる。上記架橋粒子は、アクリル酸エステル及びスチレンとの混合比を変えることによって、屈折率を制御することができる。例えば、アクリル比を高くすることで屈折率を1.49程度にすることができ、スチレン比を高くすることで屈折率を1.59程度にすることができる。また、上記透明な光散乱剤にはウレタン架橋粒子を用いることも可能である。当該ウレタン架橋粒子の具体例としては、根上工業株式会社製のアートパール(登録商標)が挙げられる。また、上記透明な光散乱剤は中空粒子にすることも可能である。
光散乱部位225’に用いる硬化性樹脂の屈折率は特に限定されることはないが、汎用性から1.56から1.49の範囲が好ましい。
なお、光透過部224側から光透過部224と光散乱部位225’との界面に達した光を該界面で全反射させずに光散乱部位225’に入射させやすくする観点から、光透過部224を構成する材料の屈折率と光散乱部位225’に用いる硬化性樹脂の屈折率との差が小さい、又は、光透過部224を構成する材料の屈折率が光散乱部位225’に用いる硬化性樹脂の屈折率より小さいことが好ましい。例えば、光透過部224を構成する材料の屈折率をNPとし、光散乱部位225’に用いる硬化性樹脂の屈折率をNBとすると、−0.07≦NB−NP≦0.07であることが好ましく、0.00≦NB−NP≦0.07であることがより好ましい。
一方、光吸収部位225’’はここに照射された光を吸収できるように構成された部位である。光散乱部225は隣り合う光透過部224間の凹部に形成されるが、上記光散乱部位225’は、該凹部内のうち開口側(図10の紙面右側)の一部には形成されない。そしてこの光散乱部位225’が形成されない部位に光吸収部位225’’を構成する組成物が充填されることによって、光吸収部位225’’が形成される。
光吸収部位225’’は可視光線(360nm以上830nm以下の波長の光)を10%以上吸収できる部位である。光吸収部位225’’における可視光線の吸収率が10%以上でなければ光吸収部位225’’が後述する機能を発揮し難い。また、光吸収部位225’’における可視光線の吸収率は90%以下であることが好ましい。光吸収部位225’’における可視光線の吸収率は90%以下とすれば、光吸収部位225’’を構成する組成物の調整が容易になる。
また、光吸収部位225’’の厚さ(図4の紙面左右方向)の大きさは1μm以上10μm以下であることが好ましい。光吸収部位225’’をこの程度の厚さにすることによって、光吸収部位225’’の可視光線の吸収率を均一にしやすくなる。
光吸収部位225’’は、例えば、光透過性を有する樹脂中に光吸収性を有する粒子(光吸収粒子)が分散された組成物によって構成することができる。
当該光透過性を有する樹脂としては光透過部224を構成する樹脂と同様のものを用いることができる。
一方、上記光吸収粒子としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられる。ただし、これに限定されず、例えば吸収すべき光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を光吸収粒子として用いてもよい。着色粒子の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。これらの中では、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から着色した有機微粒子が好ましい。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましい。
本実施形態では光吸収部位225’’を上記のように構成したが、光吸収部位は光を吸収することができればその形態は限定されることない。例えば、顔料や染料で着色した樹脂で光吸収部位を構成してもよい。
さらに、本実施形態では光散乱部225が次のような構成を備えている。図11を参照しつつ説明する。
2つの光散乱部225の間には上記のように光透過部224が配置される。従って、図11にXIaで示したように光透過部224の対角線に相当する線を定義することができる。より詳しくは、採光シート220が建物1の採光部に配置された姿勢での光散乱層223の厚さ方向に平行な鉛直断面において、隣り合う光散乱部225の向かい合う辺について、一方の辺の室内側端部と、他方の辺の室外側端部とを結ぶ線を見込み線XIaとする。また、当該見込み線XIaが採光シート220のシート面の法線となす角のうち90°より小さい方の角を見込み角θ21とする。本実施形態では当該θ21が所定の値をとることが好ましい。θ21の具体的な説明は太陽光の光路に関係するので、後で光路例とともに説明する。
また、光散乱部225の台形断面における脚部は、図11からわかるように、一方の脚部は採光シート20のシート面の法線に対してθEを有して傾斜し、他方の脚部は同様にθWを有して傾斜している。
θEおよびθWは、光散乱層223の作製を容易にする等の観点から0°以上30°以下とすることが好ましい。
光散乱部225が並列されるピッチは特に限定されず、上述した光散乱部25と同様とすることができる。また、光散乱部225の水平断面のうち、室外側(基材層22と反対側で光透過部224間の凹部の開口側)の大きさも特に限定されず、上述した光散乱部25の鉛直断面における室外側(基材層22と反対側で光透過部24間の凹部の開口側)の大きさと同様とすることができる。さらに、光散乱部225の厚さ方向の大きさ(図11の紙面左右方向)も特に限定されず、上述した光散乱部25と同様とすることができる。
本実施形態では光散乱部225の断面がθW=θEである等脚台形の例を説明したが、必ずしもこれに限らず、上述した光散乱部25と同様に様々な形状とすることができる(図5参照)。
また、光散乱部225と光透過部224との界面で光を散乱させ易くするという観点からは、光散乱部225と光透過部224との界面を微小な凹凸が無数に形成された面であるマット面としてもよい。
以上説明した採光シート220を具備する採光パネル212を用いて、上述した採光パネル12と同様にして採光装置を形成し、これを採光パネル12と同様にして図1に示したように建物1の採光部に配置する。次に、このように採光シート220が配置された場面における作用、及び上記説明した見込み角θ21の好ましい値について、主要な光路例に基づいて説明する。説明に必要な光路例を以下に示す図面に適宜表した。なお、各図面に表した光路例は概念的なものであり、屈折、反射の程度等を厳密に表したものではない。
図12に1つの光路例である太陽からの光LS3を示した。後述するように、採光シート220によれば、日の出の後や日の入りの前のように低い位置に太陽があるときの斜め横方向から射す日光が直接室内に照射されることを抑制できる。日の出の後や日の入りの前のように低い位置に太陽があるときに斜め横方向から射す日光が射すのは主に東側、南側、西側などに面した窓である。図12では、紙面左を南、紙面上を西、紙面下を東と仮定し、西日が射している場合を想定している。
図12からわかるようにLS3はそのときの太陽の位置に基づく入射角(採光シート220のシート面の法線方向に対する角)θS3で採光パネル212に入射する。採光パネル212に入射した光LS3は採光パネル212を透過するうちに光散乱層223の光透過部224内を進む。光透過部224の屈折率をNP、室外の屈折率をN0とすれば、光透過部224内で光LS3は下記式(10)で表される太陽光進行角θP3で進む。
太陽光進行角θP3で進行した太陽光が光透過部224と光散乱部位225’との界面に達した場合、その多くは光散乱部位225’に入射する。上述したように、光透過部224を構成する材料の屈折率と光散乱部位225’に用いる硬化性樹脂の屈折率との差が小さい、又は、光透過部224を構成する材料の屈折率が光散乱部位225’に用いる硬化性樹脂の屈折率より小さくなっているからである。光散乱部位225’に入射した太陽光は、図12に示したように、光散乱部位225’に含まれる光散乱剤によって散乱され、まぶしさの原因となる直達光が室内に照射されることを抑制できる。
以上からわかるように、採光シート220によれば、見込み角θ21によらず光LS3のように太陽光の少なくとも一部を散乱させて室内側に提供することができ、太陽光の室内への入射量を大きく減じることなく、かつ、少なくとも一部の直達光をなくすことが可能となる。これにより明るく、快適な室内空間を形成することができる。
また、採光シート220には上記したように光透過部224が備えられており、光透過部224が配置される部位の光散乱層223の表裏面は平行且つ平滑に形成されている。これにより、図12に示したように室外側の景色を伴う光LK3は歪が抑制されて室内に入射することができる。これは室内側から室外側の景色を視認することができることを意味する。
一方、上記したように光散乱部225には光吸収部位225’’が形成されているので、採光シート220のシート面に対して略垂直に採光シート220に入射する外光の一部は、図12に示した光LK4のように光吸収部位225’’に入射して吸収される。このように光吸収部位225’’が光LK4を吸収することによって、室外側から室内側を見たときに不自然に白く見えることを防止し、自然な暗さで室内側を見ることができる。光吸収部位225’’が備えられていなければ、光LK4は光散乱部位225’に入射して散乱される。このように光LK4が散乱されると、室外側から室内側を見たときに不自然に白く見える虞がある。上記のように光吸収部位225’’が光LK4を吸収することによって、光LK4が光散乱部位225’に入射して散乱することを抑制し、室外側から室内側を見たときに不自然に白く見えることを抑制できる。
以上説明したように、採光シート220は、反対側を透視しやすい構造も具備している。
上記のように採光シート220によれば、見込み角θ21によらず、効率よく室内に太陽光を取り入れつつも直達光の少なくとも一部をなくすことができる。ただし、より効果的に太陽光を光散乱部位225’に入射させ、太陽光を散乱させて室内側に出射させる観点から、見込み角θ21を所定の角度範囲に規定することが好ましい。以下に詳しく説明する。
図13に説明のための図を示した。図13では、紙面左が南、紙面上が西、紙面下が東である。
建物内にいる人にとって日の光が眩しいと感じやすいのは、太陽が低い位置にある日の出の後や日の入りの前である。ここでは、冬至の夕日(日の入り直前の太陽)の光の入射角θSSを考える。すなわち、少なくとも一年のうちで日の入り直前の太陽からの光の入射角が最も小さいときの入射角θSSで太陽光が採光パネル212に入射したときに、直達光の全てを光散乱部位225’に到達させる観点からθ21を規定することができる。図13からわかるように、入射角θSSで入射した光LSSが必ず光散乱部位225’に達するための限度は、光透過部224内を光LSSが見込み線XIa(図11参照)に沿って進む状況である。すなわち、光透過部224内における太陽光進行角θPSが見込み角θ21と同じとなっていればよい。従って、これは、空気の屈折率をN0、光透過部の屈折率をNpとしたとき、屈折率、及び入射角の関係式により下記式(11)で表される。
式(11)から、見込み角θ21を下記式(12)を満たすように構成することにより、少なくとも一年のうちで日の入り直前の太陽からの光の入射角が最も小さいときの入射角θSSで太陽光が採光パネル212に入射したときに、太陽からの直接光を全て光散乱部位225’に到達させることができる。
θSSは、所定の場所における一年のうちで日の入り直前の太陽からの光の入射角が最も小さいときの入射角であるから、当該所定の場所では、日の入り直前の太陽からの光の入射角を考えたときにこれ以下の入射角とはならない。従って、θ21をθSSとしたとき、当該所定の場所では一年中、日の入り直前の直達光を全て光散乱部位225’に到達させることができる。なお、より太陽の位置が高い(太陽光の入射角が小さくなる)ときの直達光までをも同様に光散乱部位225’に全て到達させるためには、式(11)、式(12)を満たしつつ、さらに式(11)、式(12)のθSSのかわりに当該所定の入射角を代入すれば同様にθ21のとるべき値を得ることができる。
このように見込み角θ21を所定の角度にするための手段としては、例えば、光散乱部のピッチ、光散乱部の脚部の角度(図11のθW、θE)、光散乱部の厚さ方向(図11の紙面左右方向)の大きさ、光透過部の屈折率を変更することを挙げることができる。これらを単独、又は複数組み合わせてθ21を所定の角度に調整することが可能である。
θ21を小さくすることにより、季節による太陽光の入射角の違いだけでなく、一日のうちにおける太陽の移動に伴う入射角の変化に対しても対応することができ、より多くの太陽光を光散乱部位に到達させて散乱させ、室内側に提供することが可能となる。
ここでより具体的な例を挙げる。日本国内を考えたとき、札幌(北緯43度)、東京(北緯35.5度)、沖縄(北緯26度)における一年のうち日の入り直前の太陽光の入射角が最も小さい時の入射角(θSS)はそれぞれ、約32°、約29°、約26°となる。これに基づいて、日本国内におけるθ21の範囲を下記式(13)のように構成してもよい。
式(13)によれば、日本国内の概ね全域において少なくとも日の入り直前の直達光の全てを光散乱部位に到達させることができる。
なお、夕日を例にしてこれまで説明したが、朝日(日の出直後の太陽光)についても、これまでに示した図の紙面を上下反対することによって同様に考えることができる。
採光シート20と同様に、採光シート220は上記した各層のいずれかに、他の機能を付加させるための構成を備えてもよい。
以上説明した採光パネル212は、光散乱層223の光透過部224及び光透過部225の延在方向及び並列方向が上述した光散乱層23の光透過部24及び光透過部25の延在方向及び並列方向異なるが、上述した採光パネル12の製造方法と同様にして製造することができる。
これまでの採光シートの説明では、光散乱層の光透過部及び光散乱部が、鉛直方向に延在するとともに水平方向に並列する、または水平方向に延在するとともに鉛直方向に並列する形態について説明した。しかしながら、本発明は係る形態に限定されない。光散乱層の光透過部及び光散乱部は、採光シートの正面視において水平方向または鉛直方向に対してある程度傾斜した方向に並列されてもよい。
また、これまでの採光シートの説明では、光透過部及び光散乱部が鉛直方向に延在するとともに水平方向に並列する光散乱層、または透過部及び光散乱部が水平方向に延在するとともに鉛直方向に並列する光散乱層を形態について説明した。しかしながら、本発明は係る形態に限定されない。例えば、光透過部及び光散乱部が鉛直方向に延在するとともに水平方向に並列する光散乱層と、透過部及び光散乱部が水平方向に延在するとともに鉛直方向に並列する光散乱層と、を備えた形態としてもよい。かかる形態とすることによって、斜め上方及び斜め横方向からの直達光を減らすことができる。ただし、この場合は、透過部及び光散乱部が水平方向に延在するとともに鉛直方向に並列する光散乱層が、光透過部及び光散乱部が鉛直方向に延在するとともに水平方向に並列する光散乱層より室外側に備えられることが好ましい。
上述したように、光散乱層23では、光透過部24を構成する材料の屈折率を光散乱部25に用いる硬化性樹脂の屈折率より大きくすることによって、光透過部24と光散乱部25との界面で、斜め上方から入射した外光を全反射させて偏向させることが好ましい。一方、上述したように、光散乱層223では、斜め横方向から光透過部224と光散乱部225との界面に到達した外光を全反射させずに光散乱部225で散乱させることが好ましい。このような光散乱層23が光散乱層223より室内側に備えられる形態とした場合は、光散乱層223で散乱された光が光散乱層23に到達することとなり、上記のように光透過部24と光散乱部25との界面で外光を適切に全反射させて偏向できるように設計することが難しくなる。
(実施例1)
実施例1では採光シート20を備える採光パネル12の例による採光パネルを作製した。図14に実施例1における光散乱層の形状を表した。実施例1にかかる採光パネルの詳細は下記の通りである。
(1)光透過部構成組成物の調整
ビスフェノールAエチレンオキシド/キシリレンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)=30:15:50:5:0.02で混合し、80℃で10時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P1)を得た。
一方、ビスフェノールAエチレンオキシド/イソホロンジイソシアネート/フェノキシエチルアクリレート/ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)=30:20:50:0.02で混合し、80℃で10時間反応させ、光硬化性プレポリマー(P2)を得た。
次に、光硬化性プレポリマー(P1)を30質量部、光硬化性プレポリマー(P2)を30質量部、反応性希釈モノマー(M1)としてのフェノキシエチルアクリレートを10質量部、反応性希釈モノマー(M2)としてのビスフェノールAエチレンオキシドを30質量部、金型離型剤(S1)としてのテトラデカノールエチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステルを0.03質量部、金型離型剤(S2)としてのステアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物を0.03質量部、及び光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、メーカー名:BASF)を3質量部混合し、均一化して、光透過部構成組成物を得た。
なお、この光透過部構成組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
(2)基材
基材としてはPETフィルム、商品名:A4300、東洋紡績社製、厚さ100μmを用いた。
(3)金型ロールの作製
光散乱層の作製に供される金型ロールを次のように作製した。すなわち、金型ロールは円柱状であり、銅メッキが施され、当該銅メッキ部分をバイトにより切削して光透過部に対応する溝を形成した。バイトとしてはダイヤモンドバイトを用いた。ロール軸方向の所定ピッチで金型ロールの銅メッキ層の外周を切削して溝を形成し、クロムメッキをした。
(4)光透過部の形成
上記(3)で作製した金型ロールとニップロールとの間に、上記(2)で説明した基材を搬送した。この基材の搬送に合わせ、上記(1)で得られた光透過部構成組成物を基材の基材層上に供給装置から供給し、金型ロールおよびニップロール間の押圧力により、基材層と金型ロールとの間に光透過部構成組成物を充填した。その後、基材側から高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させて、光透過部を形成した。その後、剥離ロールにより、金型ロールから光透過部を離型し、光透過部を含むシート(中間部材)を作製した。
この光透過部について、圧縮式微小硬度計(FISCHER HM2000)を用いて微小圧子材料に負荷をかけ、これを除荷することによって弾性率を測定した。このとき、負荷力は100mN、負荷速度は4μm/10秒、保持時間は60秒とした。その結果、光透過部の弾性率は800MPaであった。
(5)光散乱部位構成組成物の調整
光硬化性プレポリマー(P3)としてウレタンアクリレートを42質量部、光硬化性プレポリマー(P4)としてエポキシアクリレートを18質量部、反応性希釈モノマー(M3)としてのトリプロピレングリコールジアクリレートを35質量部、反応性希釈モノマー(M4)としてのメトキシトリエチレングリコールアクリレートを5質量部、光散乱剤(D1)としての酸化チタンを5質量部、光重合開始剤(I1)としての1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、メーカー名:BASF)を7質量部混合し、均一化して、光散乱部を構成する組成物を得た。
なお、この光散乱部を構成する組成物の光散乱剤を除いた成分を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折率計(株式会社アタゴ製)を用いて、589nmの屈折率を測定したところ、1.490であった。
(6)光散乱部位の形成
上記(5)で得られた光散乱部位を構成する組成物を、上記(4)で作製した中間部材上に供給装置から供給した。また、中間部材の進行方向と略垂直に配置されたドクターブレードを用いて、中間部材上に供給した光散乱部位を構成する組成物を中間部材に形成された略V字形状の溝(光透過部間の溝)内に充填するとともに、余剰分の光散乱部位を構成する組成物を掻き落とした。その後、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光散乱部位構成組成物を硬化させ、硬化した組成物によって光散乱部位を形成した(これを1回目の充填と記載することがある。)。この状態では、光散乱部位の表面には、深さ6μmの窪みができていた。
(7)光吸収部位構成組成物の調整
光散乱部位構成組成物の酸化チタンをカーボンブラック5重量%に変更した以外は同様にして、光吸収部位構成組成物を調整した。
(8)光吸収部位の形成
(6)で作製した中間部材の光散乱部位の表面に形成された窪みに、(7)で調整した組成物を、(6)の1回目の充填と同様にして充填および硬化させ、光吸収部位を形成した。このとき、光吸収部位の表面には、深さ3μmの窪みができていた。
以上のようにして、基材層上に光散乱層を形成した。
(9)粘着剤層の形成
アクリル系樹脂の粘着剤(商品名:SKダイン2094、綜研化学株式会社、固形分25.0%、溶剤は酢酸エチルとメチルエチルケトン)を100質量部と、架橋剤(E−5XM、L−45、綜研化学株式会社、固形分5.0%)を0.28質量%と、1,2,3−ベンゾトリアゾールを0.25質量部と、希釈溶剤(トルエン/メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=27.69g/27.69g/4.61g)を32.0質量部と、を混合して粘着剤組成物を得た。
この組成物を離型フィルム(商品名:E7007、東洋紡績社製、厚さ38μm)に塗布して乾燥させ、上記光散乱層の面と貼り合わせた。
なお、この粘着剤層について、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.490であった。また、この粘着剤層の貯蔵弾性率は0.22MPaであった。
(9)採光パネルの作製
上記のようにして形成した接着層によって、透光性を有する板状のパネルに光散乱層を含む採光シートを貼合し、採光パネルを作製した。その後、光透過部および光散乱部が水平方向に延在するとともに鉛直方向に並列されるようにして、採光パネルを建物の南面の開口部に配置した。
(比較例1)
光吸収部位を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1にかかる採光パネルを作製した。
(比較例2)
光散乱部に相当する部分を全て光吸収部位を構成する材料で形成した以外は実施例1と同様にして、比較例2にかかる採光パネルを作製した。
(評価)
以上に示した各例の採光パネルについて、斜め上方(パネル13に対する入射角が31°の方向)から太陽光を入射させ、採光効率および外観を評価した。参考例として透光性を有する板状のパネルのみの(採光シートを貼合していない)例についても同様に評価した。表2に結果を表した。なお、採光効率の評価は、室内の明るさを主観評価し、明るいと感じた場合を○、暗いと感じた場合を×とし、その中間を△とした。また、直達光の評価は、室内におけるまぶしさを主観評価した。すなわち、室内側から太陽光が照射された方向を見て、まぶしくないと感じた場合を○、直視できないと感じた場合を×とした。また、外観の評価は、室外から室内を見たときの見え方を主観評価し、不自然な白さがないと感じた場合を○、不自然に白く見えたと感じた場合を×とし、その中間を△とした。
表2に示した結果からわかるように、実施例1のように光散乱部に光吸収部位を設けることによって、高い採光効率を維持しつつ、室外側から室内側を見たときに不自然に白く見えることがなくなった。
一方、比較例1では光吸収部位が備えられていないことによって、室外側から室内側を見たときに外光が散乱されて不自然に白く見えた。また、比較例2では吸収された太陽光が多く、採光効率が悪くなった。
なお、採光シートを使用しなかった参考例1では採光効率も外観も優れていたが、直達光によってまぶしかった。