JP2014113780A - 液体噴射装置、および、吸引制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より少ない消費量でより効果的な吸引を行うことが可能な液体噴射装置、および、吸引制御方法を提供する。
【解決手段】記録ヘッド4にインクを供給する供給路の一部である接続流路40を開閉する供給側バルブ41と、記録ヘッドのノズル32からインクを吸引する吸引路の一部である排液チューブ49を開閉する吸引側バルブ47と、吸引路を通じてノズルからインクの吸引を行うポンプと、を備え、供給側バルブを閉じるとともに吸引側バルブを開いた状態で吸引動作を行わせた後、吸引側バルブを閉じてから供給側バルブを開く。
【選択図】図5
【解決手段】記録ヘッド4にインクを供給する供給路の一部である接続流路40を開閉する供給側バルブ41と、記録ヘッドのノズル32からインクを吸引する吸引路の一部である排液チューブ49を開閉する吸引側バルブ47と、吸引路を通じてノズルからインクの吸引を行うポンプと、を備え、供給側バルブを閉じるとともに吸引側バルブを開いた状態で吸引動作を行わせた後、吸引側バルブを閉じてから供給側バルブを開く。
【選択図】図5
Description
本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置、および、液体噴射ヘッド内の液体を吸引する吸引制御方法に関するものである。
上記プリンターに搭載される液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッド)では、液体供給源であるインクカートリッジに貯留されているインクをヘッド内部のインク流路(液体流路)に導入し、圧電素子などの圧力発生手段を作動させることでインク流路内のインクをノズルから噴射させるように構成されている。この構成では、インク流路がインクのみで満たされている状態が理想的である。しかしながら、液体噴射ヘッドの構造上、気泡の浸入を完全に防止することは困難である。インク流路内の気泡は、インク噴射時の圧力変動を吸収することによって圧力損失を生じさせたり、インク流路を塞ぐことによる噴射不良(所謂ノズル抜け)等の不具合を招いたりする原因となる。
このようなインク流路内への気泡の混入による不具合を防止するため、或いは、インクカートリッジのインクをインク流路内に充填させるため、この種のプリンターでは、記録ヘッドのノズル形成面をキャップ部材で封止した状態で、封止空部内を負圧化してノズルから吸引を行う吸引動作を実行し、これによりインク流路内の気泡を排出したり、インク流路内にインクを充填する初期充填を行ったりしている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、インク流路内の内壁に付着した比較的小さな気泡は、インクの流れの抵抗を受けにくく排出しにくいため、このような気泡を排出させるには、従来の吸引動作ではインクの流速や排出量を大きくする必要があり、これにより、インクを無駄に消費してしまう問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より少ない消費量でより効果的な吸引を行うことが可能な液体噴射装置、および、吸引制御方法を提供することにある。
本発明の液体噴射装置は、上記目的を達成するために提案されたものであり、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給路を開閉する第1の弁と、
前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を吸引する吸引路を開閉する第2の弁と、
前記吸引路を通じて前記ノズルから液体の吸引を行う吸引手段と、
前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じてから前記第1の弁を開く制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする。
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給路を開閉する第1の弁と、
前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を吸引する吸引路を開閉する第2の弁と、
前記吸引路を通じて前記ノズルから液体の吸引を行う吸引手段と、
前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じてから前記第1の弁を開く制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、第1の弁を閉じるとともに第2の弁を開いた状態で吸引手段により吸引動作を行わせた後、第2の弁を閉じてから第1の弁を開く制御を行うことにより、第1の弁が開かれる直前の状態では第1の弁の上流側と下流側とでより大きな圧力差が生じているので、この圧力差によって、供給路側からの液体が液体供給路内に勢いよく流入すると共に液体流路内の液体および気泡がノズルから排出される。この際、第2の弁が閉じられているので、液体が必要以上に排出されることが防止される。これにより、従来よりも少ない吸引量で気泡を効率良く排出することができ、或いは、供給路側から液体流路内に液体をより確実に充填することができる。その結果、吸引動作における液体の消費を抑えることが可能となる。
また、上記構成において、前記第1の弁から前記ノズルまでの容積は、前記ノズルから前記第2の弁までの容積よりも小さいことが望ましい。
また、上記構成において、前記ノズルから液体が噴射されていない状態の前記第1の弁の上流側位置における液体の圧力をA、前記第1の弁が閉じ前記第2の弁が開いた状態でのノズルからの液体吸引時における前記第2の弁の上流側位置での気圧をB、前記第1の弁から前記ノズルまでの容積をV、前記ノズルから前記第2の弁までの容積をWとしたとき、
(W−V)/W≧B/A
を満たすまで吸引動作が行われる構成を採用することが望ましい。
(W−V)/W≧B/A
を満たすまで吸引動作が行われる構成を採用することが望ましい。
上記構成によれば、液体流路内の液体や気泡をより確実に排出させることが可能となる。
また、上記構成において、前記制御部は、前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じ、その状態で予め設定された所定時間待機した後、前記第1の弁を開く構成を採用することが望ましい。
上記構成によれば、減圧状態を維持させて気泡を膨張させるので、気泡の排出性が向上する。
この構成において、前記待機状態を2.5秒以上継続する構成を採用することが望ましく、前記待機状態を5秒以上継続する構成を採用することがより望ましい。
上記構成によれば、気泡が液体流路の内壁から一層離れやすくなり、気泡の排出性をさらに向上させることが可能となる。
本発明の吸引制御方法は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給路を開閉する第1の弁と、
前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を吸引する吸引路を開閉する第2の弁と、
前記吸引路を通じて前記ノズルから液体の吸引を行う吸引手段と、を備える液体噴射装置の吸引制御方法であって、
前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じてから前記第1の弁を開くことを特徴とする。
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給路を開閉する第1の弁と、
前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を吸引する吸引路を開閉する第2の弁と、
前記吸引路を通じて前記ノズルから液体の吸引を行う吸引手段と、を備える液体噴射装置の吸引制御方法であって、
前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じてから前記第1の弁を開くことを特徴とする。
以下、本発明の実施形態の例を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明では、本発明の液体噴射装置としてインクジェット式記録装置(プリンター)を例に挙げる。
図1は、このプリンター1の基本構成を説明する斜視図である。この図1に示すように、プリンター1は、ガイド軸2に取り付けられたキャリッジ3を有し、その下面には記録ヘッド4(本発明の液体噴射ヘッドの一種)が取り付けられている。また、このキャリッジ3の内部にはインクカートリッジ17(図5参照)を着脱可能に保持するカートリッジホルダ部が設けられている(何れも図示せず)。そして、キャリッジ3は、キャリッジモーター(パルスモーター)5の回転軸に接合された駆動プーリー6と遊転プーリー7との間に掛け渡されたタイミングベルト8に接続されているので、キャリッジモーター5の駆動によって記録紙9の幅方向(主走査方向)に移動する。
上記のインクカートリッジ17は、インク(本発明の液体の一種)を貯留する貯留部材(液体貯留源の一種)である。このインクは、インク溶媒中に色材を溶解或いは分散させたものであり、例えば、色材として顔料や染料が用いられ、インク溶媒として水が用いられる。そして、このインクカートリッジ17がキャリッジ3に装着されると、後述する接続流路40(図5参照)を通じてインクカートリッジ内のインクが記録ヘッド4内のインク流路に供給可能な状態になる。そして、インクカートリッジ内のインクを記録ヘッド4内のインク流路に充填するために、後述する初期充填が行われる。なお、インクカートリッジとしては、プリンター本体(筐体)側に配置され、インク供給チューブを通じて記録ヘッド4に供給するタイプを採用することもできる。
また、ガイド軸2の下方には、プラテン11が設けられている。このプラテン11は、記録紙9を下方から支持する板状部材である。このプラテン11にはスポンジ等の吸液部材12が配設されている。また、この吸液部材12よりも紙送り上流側には、ガイド軸2と平行に紙送りローラー13が配置されている。この紙送りローラー13は、記録紙9の搬送時において、紙送りモーター14(ステッピングモーター又はDCモーター)からの駆動力によって回転される。
キャリッジ3の移動範囲内であってプラテン11よりも外側の位置には、ホームポジションが設定されている。記録ヘッド4は、待機状態においてホームポジションに位置付けられる。このホームポジションには、記録ヘッド4のノズル形成面を払拭するためのワイパー機構15と、非記録状態においてノズル形成面を封止可能なキャッピング機構16とがガイド軸2に沿って横並びに配設されている。
次に、記録ヘッド4について説明する。図3に示すように、記録ヘッド4は、ケース23と、流路ユニット24と、振動子ユニット25とから概略構成されている。ケース23は、内部に収容空部27が高さ方向を貫通する状態で形成された合成樹脂製のブロック状部材であり、その先端面には流路ユニット24が接合されている。また、収容空部27内には、各圧電素子28の先端を先端側開口に臨ませた状態で振動子ユニット25が収容されている。さらに、収容空部27の側方には、インク供給針と流路ユニット24の間を連通するインク供給路10が形成されている。
流路ユニット24は、流路形成板29とノズルプレート30と振動板31とから構成されている。ノズルプレート30は、ドット形成密度に対応したピッチで多数(例えば、180個)のノズル32を列状に開設した薄い板状部材であり、例えば、ステンレス板或いはシリコン基板によって構成している。この列設されたノズル32によってノズル列(ノズル群)が構成されている。そして、このノズルプレート30の下面(プラテン11と対向する側の面)がノズル形成面となる。上記の流路形成板29には、インク供給路10を通して供給されたインクが流入するリザーバー33(共通液体室)と、ノズル32からインクを噴射させるために必要なインク圧力を発生させる圧力室34と、これらのリザーバー33と圧力室34を連通するインク供給口35等が形成されている。上記の圧力室34は、ノズル列方向とは略直交する方向に細長い空部であり、ノズル列方向にノズル32に対応する数だけ形成されている。上記の振動板31は、弾性体膜を支持板上にラミネートした二重構造である。
この流路ユニット24では、インク供給路10からリザーバー33、インク供給口35、圧力室34、及びノズル連通口38を通ってノズル32に至る一連のインク流路20(本発明における液体流路に相当)が形成されている。このインク流路20において、インク供給口35からノズル連通口38の部分は、ノズル32毎に設けられる個別インク流路を構成している。
上記の振動子ユニット25は、櫛歯状に形成された複数の圧電素子28からなる振動子群36と、この振動子群36の基端部分が接合される固定板37等により構成されている。この振動子群36を構成する各圧電素子28は、例えば、50μm〜100μm程度の極めて細い幅に切り分けられている。また、各圧電素子28は、自由端部が固定板37の縁よりも外側に位置しており、片持ち梁の状態で固定板37に接合されている。そして、圧電素子28の自由端部を素子長手方向に伸縮させると、振動板が圧力室34側に押されたり、圧力室34から離隔する側に引っ張られたりする。これにより、圧力室34の容積が変動し、圧力室34内のインク圧力が変化する。このインク圧力を利用してノズル32からインク(インク滴)を噴射させることができる。
図5は、インクカートリッジ17から記録ヘッド4のインク流路20を通ってキャッピング機構16に至るまでの一連のインク経路を説明する模式図である。
インクカートリッジ17のインク貯留空間と記録ヘッド4のインク流路20とは、例えば、インク導入針等の接続流路40を介して液密状態で連通されている。インクカートリッジ17から接続流路40を通ってインク流路20に至るまでの経路は、本発明における供給路に相当する。そして、接続流路40の途中には、供給側バルブ41(本発明における第1の弁の一種)が設けられている。この供給側バルブ41の開閉は、後述するプリンターコントローラー50の制御部66によって制御される。
インクカートリッジ17のインク貯留空間と記録ヘッド4のインク流路20とは、例えば、インク導入針等の接続流路40を介して液密状態で連通されている。インクカートリッジ17から接続流路40を通ってインク流路20に至るまでの経路は、本発明における供給路に相当する。そして、接続流路40の途中には、供給側バルブ41(本発明における第1の弁の一種)が設けられている。この供給側バルブ41の開閉は、後述するプリンターコントローラー50の制御部66によって制御される。
キャッピング機構16は、図2、図4、及び図5に示すように、トレイ状のキャップ部材46と、記録ヘッド4のノズル形成面に対しキャップ部材46を近接又は離隔する方向に移動させるキャップ移動機構(図示せず)と、封止空部45と排液タンク48との間を連通する可撓性の排液チューブ49と、この排液チューブ49の途中に配設されたポンプ50とから構成される。
上記のキャップ部材46は、底部51と、この底部51の周縁から起立する側壁部52とを有する上面開放のトレイ状部材であり、底部51と側壁部52とで囲まれた空間が封止空部45となる。このキャップ部材46は、ゴム等の弾性部材により作製され、合成樹脂又は金属からなる支持部材53に取り付けられている。キャップ部材46の底部には、貫通口が開設されており、この貫通口に排液チューブ49が液密状態で連結されている。また、これとは別の貫通口がキャップ部材46の底部に開設されており、この貫通口には、大気開放路を構成する大気開放用チューブ57が接続されている。そして大気開放用チューブ57の途中には、大気開放バルブ58が設けられている。即ち、この大気開放バルブ58を開閉することにより、ノズル形成面を封止した状態における封止空部45の密閉状態と大気開放状態とを切り替えることができるようになっている。
上記の排液チューブ49は、耐薬品性が高く弾性を有するシリコンチューブによって構成されている。この廃液チューブ49は、ポンプ50を介して排液タンク48に連結されている。ノズル形成面がキャッピングされた状態における封止空部45から廃液チューブ49を通って排液タンク48に至るまでの経路は、本発明における吸引路に相当する。そして、廃液チューブ49におけるキャップ部材46とポンプ50との間、すなわち、吸引路の途中には、吸引側バルブ47(本発明における第2の弁の一種)が設けられている。この吸引側バルブ47の開閉により、封止空部45と排液タンク48との間の連通状態あるいは非連通状態を切り替えることができるように構成されている。そして、この吸引側バルブ47の開閉は、後述するプリンターコントローラー50の制御部66によって制御される。ポンプ50は、駆動モーターと共にポンプ機構(本発明における吸引手段の一種)を構成する。本実施形態におけるポンプ機構は、ポンプ50を駆動するための駆動モーターとして紙送りモーター14を利用している。即ち、図示しないクラッチによって紙送り時と吸引制御時で切り替えている。なお、駆動モーターとしては、ポンプ50のみを駆動するための専用のものを別途設けても良い。
そして、上記ポンプ機構は、制御部66(図6参照)によって制御される。即ち、例えば、紙送りモーター14がステッピングモーターで構成されている場合、制御部66は、紙送りモーター14に対する駆動パルスの印加数を調整することで紙送りモーター14の回転制御を行い、これにより、ポンプ50による吸引を制御する。
上記キャップ部材46によって記録ヘッド4のノズル形成面を封止した封止状態では、ノズル形成面のノズル32が封止空部45内に臨み、且つ、キャップ部材46の先端とノズル形成面とが液密状態で密着する(図5参照)。そして、この封止状態で、吸引側バルブ47を開き、且つ、大気開放バルブ58を閉じた状態でポンプ50を作動させると、封止空部45内が減圧されるので、ノズル32を通じて記録ヘッド4内のインクが吸引されて、ヘッド外部に排出される。これを利用して、インクカートリッジ17が記録ヘッド4に新たに装着された際にこのインクカートリッジ17内のインクを記録ヘッド4のインク流路20に充填する初期充填や、インク流路20内の増粘インクや気泡を除去するためのクリーニング処理において、この吸引制御が行われる。この吸引制御の詳細については、後述する。なお、供給側バルブ41から当該供給側バルブ41よりも下流側の接続流路40、インク供給路20、およびノズル32に至るまでの容積Vは、ノズル32からキャップ部材46の封止空部45、廃液チューブ49を通って吸引側バルブ47に至るまでの容積Wよりも小さくなるように設計されている。
次に、プリンター1の電気的構成について説明する。図6に示すように、例示したプリンター1は、プリンターコントローラー60と、プリントエンジン61とを備えている。プリンターコントローラー60は、図示しないホストコンピュータ等からの印刷データ等を受信するインタフェース62(外部I/F62)と、各種データの記憶等を行うRAM63と、各種データ処理のための制御ルーチン等を記憶したROM64と、CPU等からなる制御部66と、記録ヘッド4に供給する駆動信号を発生可能な駆動信号発生回路67と、クロック信号を生成する発振回路68と、記録動作の駆動信号及びメンテナンス動作の制御信号等をプリントエンジン61側に送信するためのインタフェース69(内部I/F69)等を備えている。そして、これらの各部は、内部バスを介して電気的に相互に接続されている。また、プリントエンジン61は、キャリッジ3を移動させるキャリッジモーター(パルスモーター)5と、紙送りローラー13を回転させる紙送りモーター14と、記録ヘッド4(電気駆動系)等を備えている。
制御部66は、このプリンター1における各種制御を行う部分であり、プリントエンジン61の各部を制御する。例えば、記録動作の制御では、図示しないホストコンピュータからの印刷データに基づいてドットパターンデータを生成し、生成したドットパターンデータを記録ヘッド4に転送する。また、キャリッジモーター5を動作させてキャリッジ3(即ち、記録ヘッド4)を移動させ、紙送りモーター14を動作させて記録紙9を搬送させる。さらに、初期充填時やクリーニング時においても紙送りモーター14を作動させてポンプ50による吸引を制御する。そして、この吸引制御では、制御部66は、供給側バルブ41および吸引側バルブ47の開閉を制御する。また、図6において図示していないが、制御部66は、大気開放バルブ58の制御も行う。
次に、上記の構成において、初期充填時やクリーニング時における吸引制御について説明する。
図7は、吸引制御の流れを示したフローチャートである。
まず、制御部66は、キャリッジモーター5を制御してキャリッジ3をホームポジションに移動させると共に、記録ヘッド4のノズル形成面をキャッピング機構16によってキャッピングする(S1)。この際、大気開放バルブ58を閉じることにより、キャッピングした状態における封止空部45内を密閉状態(液密・気密状態)に切り替える。このキャッピング状態で、制御部66は、供給側バルブ41を閉じるとともに吸引側バルブ47を開く(S2)。すなわち、ノズル32を通じてインク流路20内のインクや気泡の吸引が可能であるが、インクカートリッジ17側からインク流路20にはインクが流入しない状態とされる。
まず、制御部66は、キャリッジモーター5を制御してキャリッジ3をホームポジションに移動させると共に、記録ヘッド4のノズル形成面をキャッピング機構16によってキャッピングする(S1)。この際、大気開放バルブ58を閉じることにより、キャッピングした状態における封止空部45内を密閉状態(液密・気密状態)に切り替える。このキャッピング状態で、制御部66は、供給側バルブ41を閉じるとともに吸引側バルブ47を開く(S2)。すなわち、ノズル32を通じてインク流路20内のインクや気泡の吸引が可能であるが、インクカートリッジ17側からインク流路20にはインクが流入しない状態とされる。
続いて、制御部66は、紙送りモーター14に対し駆動パルスを印加してポンプ50の駆動を開始し、吸引動作を開始する(S3)。これにより、封止空部45およびインク流路20内が減圧される。ここで、供給側バルブ41が閉じられているので、この段階ではインク流路20内のインク等の一部のみがノズル32を通じてキャップ部材46の封止空部45内に排出される。この吸引動作は、所定の条件を満たすまで行われる。具体的には、記録ヘッド4のノズル32からインクの噴射や吸引が行われていない定常状態における供給側バルブ41の上流側(図5におけるPaで示す部分)における圧力をA、供給側バルブ41が閉じ且つ吸引側バルブ47が開いた状態での吸引動作時の吸引側バルブ47の上流側の位置(図5におけるPbで示す部分)での圧力をBとし、供給側バルブ41から当該供給側バルブ41よりも下流側の接続流路40、インク供給路20、およびノズル32に至るまでの容積をV、ノズル32からキャップ部材46の封止空部45、廃液チューブ49を通って吸引側バルブ47に至るまでの容積をWとしたとき、Aに対するBの比が、Wに対するWとVとの差の比以下となる、すなわち、(W−V)/W≧B/Aを満たすまで吸引が行われる。これにより、以下で説明する供給側バルブ41の開放時に、インク流路20内の液体や気泡をより確実に排出させることが可能となる。
吸引動作が停止されると(S4)、続いて吸引側バルブ47が閉じられる(S5)。そして、負圧状態が所定時間、具体的には2.5秒以上維持される(S6)。その後、供給側バルブ41が開かれる(S7)。供給側バルブ41が開かれる直前の状態では供給側バルブ41の上流側と下流側とでより大きな圧力差が生じているので、この圧力差によって、インクカートリッジ17側からのインクが記録ヘッド4のインク供給路20内に勢いよく流入すると共に供給側バルブ41から当該供給側バルブ41よりも下流側の接続流路40、インク供給路20、およびノズル32に至るまでの容積分のインクおよび気泡がノズル32から排出される。また、この段階では、吸引側バルブ47が閉じられているので、インクが必要以上に排出されることが防止される。これにより、従来よりも少ない吸引量で気泡を効率良く排出することができ、或いは、インク流路20内にインクをより確実に充填することができる。その結果、吸引動作におけるインクの消費を抑えることが可能となる。
図8は、上記のステップS6における負圧維持工程におけるインク流路20内の気泡Bの変化を説明する模式図である。インク流路20の内壁に微小な気泡Bが付着している場合(図8(a))において、インク流路20内が減圧されると、これに伴って気泡Bが膨張する(図8(b))。気泡Bが膨張してより球形に近い状態となることで(図8(c))、インク流路20の内壁に対する接触面積が小さくなり、気泡Bがインク流路20の内壁から剥がれやすくなる。そして、この状態となるまで待機した後、ステップS7で供給側バルブ41が開かれてインク流路20内にインクの流れが生じると、当該インクの流れによって気泡Bが排出されやすくなる。
ここで、上記負圧維持工程における維持時間を変化させたときのインク流路20内のインク充填率について検証した。この実験では、180個のノズル32からなる1本のノズル列を有する記録ヘッドに常温(例えば、25℃)における粘度が4mPa・sの水系インクを充填後、例えば、インク流路内に人為的に気泡を混入させる等して全てのノズル32について圧電素子28を作動させてもインクが噴射されない状態とし、この状態で吸引動作を行い、インクが正常に噴射されるまでに回復したノズルの数を調査した。すなわち、全ノズル数に対する噴射が回復したノズルの数の割合を充填率としている。なお、1回の吸引動作では合計1gのインクを排出させる。この実験で、上記の吸引後の負圧を維持しない(吸引時に供給側バルブ41を閉じない)場合、負圧状態を2.5秒維持した場合、負圧状態を5秒維持した場合の3通りについて検証したところ、吸引後の負圧を維持しない場合では、1回の吸引動作で回復したノズルの数が180ノズル中、103となり、充填率は57%であった。これに対し、負圧状態を2.5秒維持した場合、1回の吸引動作で回復したノズルの数が180ノズル中、174となり、充填率は97%となった。さらに、負圧状態を5秒維持した場合、1回の吸引動作で回復したノズルの数が180ノズル中、180となり、充填率は100%であった。このため、上記の負圧維持工程では、負圧状態を5秒以上維持することが望ましい。これにより、気泡の排出性が一層向上する。
供給バルブ41が開かれた後、インク流路20内の古いインクや気泡がノズル32から排出され、インク流路20内に新たなインクが充填されるまで待機(S8)され、その後、大気開放バルブ58が開かれる(S9)。これにより、キャップ部材46の封止空部45内が大気開放される。また、吸引側バルブ47が開かれる(S10)。封止空部内45には、ノズル32から排出されたインクが溜まっているので、続いて吸引動作が行われ(S11)、これにより封止空部45内のインクが排液タンク48側に排出される。封止空部45内のインクが排出されたならば、キャッピング機構16によるノズル形成面に対するキャッピングが開放される(S12)。
このように、本発明に係るプリンター1では、供給側バルブ41が閉じられるとともに吸引側バルブ47が開かれた状態でノズル32に対して吸引動作が行われた後、吸引側バルブ47を閉じてから供給側バルブ41を開く制御が行われるので、吸引動作によるインクの消費を抑えつつ、従来よりも効率良くインク流路20内の気泡を排出して噴射不良を回復させることができ、或いは、インク流路20内にインクを充填させることができる。また、吸引動作後の負圧状態を維持することにより、気泡の排出性を向上させることが可能となる。
なお、以上では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンター1を例に挙げて説明したが、本発明は、液体噴射ヘッドのノズルから吸引動作を行う構成を採用する他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,極く少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。
1…プリンター,4…記録ヘッド,16…キャッピング機構,17…インクカートリッジ,28…圧電素子,32…ノズル,34…圧力室,40…接続流路,41…供給側バルブ,45…封止空部,46…キャップ部材,47…吸引側バルブ,48…廃液タンク,49…廃液チューブ,50…ポンプ,58…大気開放バルブ,66…制御部
Claims (7)
- ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給路を開閉する第1の弁と、
前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を吸引する吸引路を開閉する第2の弁と、
前記吸引路を通じて前記ノズルから液体の吸引を行う吸引手段と、
前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じてから前記第1の弁を開く制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。 - 前記第1の弁から前記ノズルまでの容積は、前記ノズルから前記第2の弁までの容積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
- 前記ノズルから液体が噴射されていない状態の前記第1の弁の上流側位置における液体の圧力をA、前記第1の弁が閉じ前記第2の弁が開いた状態でのノズルからの液体吸引時における前記第2の弁の上流側位置での気圧をB、前記第1の弁から前記ノズルまでの容積をV、前記ノズルから前記第2の弁までの容積をWとしたとき、
(W−V)/W≧B/A
を満たすまで吸引動作が行われることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。 - 前記制御部は、前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じ、その状態で予め設定された所定時間待機した後、前記第1の弁を開くことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射装置。
- 前記制御部は、前記待機状態を2.5秒以上継続することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
- 前記制御部は、前記待機状態を5秒以上継続することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。
- ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに液体を供給する供給路を開閉する第1の弁と、
前記液体噴射ヘッドのノズルから液体を吸引する吸引路を開閉する第2の弁と、
前記吸引路を通じて前記ノズルから液体の吸引を行う吸引手段と、を備える液体噴射装置の吸引制御方法であって、
前記第1の弁を閉じるとともに前記第2の弁を開いた状態で前記吸引手段により吸引動作を行わせた後、前記第2の弁を閉じてから前記第1の弁を開くことを特徴とする吸引制御方法。
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JP2012270514A JP2014113780A (ja) | 2012-12-11 | 2012-12-11 | 液体噴射装置、および、吸引制御方法 |
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