JP2014107172A - 非水系二次電池用電極板、非水系二次電池、移動体、および非水系二次電池用電極板の製造方法 - Google Patents

非水系二次電池用電極板、非水系二次電池、移動体、および非水系二次電池用電極板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本願発明者は、十分な非水系二次電池の電池性能は従来の技術によってまだ得られていないことに気付いた。たとえば、従来の非水系二次電池においては、サイクル特性が悪化し、最悪の場合にはその熱安定性が低下して過熱発火に至ることがあるからである。
【解決手段】 負極集電体11と、負極集電体11の表面に形成された、活物質を含む負極合剤層12と、負極合剤層12の表面に形成された、フィラーを含む負極表面層13と、を備え、フィラーの負極合剤層12への浸入深さは、1μm以上であり、活物質の平均粒子径以下であることを特徴とする、非水系二次電池用電極板である。
【選択図】 図2

Description

本発明は、たとえばリチウムイオン電池などの非水系二次電池に使用される非水系二次電池用電極板、非水系二次電池、移動体、および非水系二次電池用電極板の製造方法に関する。
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっている非水系二次電池としてのリチウム二次電池は、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極にLiCoO等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量のリチウム二次電池を実現している。
そして、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、更なるリチウム二次電池の高容量化や充放電サイクル特性の向上が、望まれている。
その一方で、このような電池の高性能化にともない、安全性の更なる向上が求められている。
たとえば、生産時の異物混入などが原因で内部短絡が起こると、瞬時に発生する短絡反応熱により異常過熱してしまうことがあり、これは保護回路で防ぐことが困難であるため、電池単体での対策が望まれる。
そこで、安全性を確保するために、合剤層上に表面層を形成し、この絶縁層によって、電極板表面などに付着した異物起因で誘発される電池の内部短絡を防止し、高い信頼性を得ることができる技術がある(たとえば、特許文献1参照)。
特許第3371301号
しかしながら、本願発明者は、十分な非水系二次電池の電池性能は上述の如き従来の技術によってもまだ得られていないことに気付いた。
たとえば、従来の非水系二次電池においては、サイクル特性が悪化し、最悪の場合にはその熱安定性が低下して過熱発火に至ることがあるからである。
そして、本願発明者は、その原因をつぎのように分析している。
すなわち、たとえば、負極合剤層上に負極表面層を形成する際に、負極合剤層と負極表面層との境界面が乱れ、負極表面層のフィラーが負極合剤層に浸入し、負極合剤層の膜厚が不均一になってしまうことがある。
ここに、負極合剤層の膜厚が不均一になった場合には、電池の充放電の際に負極合剤層が厚い箇所にくらべ薄い箇所に金属リチウムが析出しやすくなるので、前述のようなサイクル特性の悪化が発生しやすい。
なお、正極板と負極板とをセパレータを介して巻回した際に曲率半径の小さい内面側の負極合剤層の厚みが曲率の大きい外面側の負極合剤層の厚みより大きくなってしまった場合には、負極板にかかる応力が内面側に集中し、負極合剤層の脱落や、最悪の場合には負極板の破断が発生することもある。
そこで、本発明は、上述された従来の課題を考慮し、より優れた電池性能を得られる非水系二次電池用電極板、非水系二次電池、移動体、および非水系二次電池用電極板の製造方法を提供することを目的とする。
第1の本発明は、正極用または負極用の集電体と、
前記集電体の表面に形成された、活物質を含む合剤層と、
前記合剤層の表面に形成された、フィラーを含む表面層と、
を備え、
前記フィラーの前記合剤層への浸入深さは、1μm以上であり、前記活物質の平均粒子径以下であることを特徴とする、非水系二次電池用電極板である。
第2の本発明は、前記合剤層は、前記集電体の両面に形成されており、
前記表面層は、前記両面の少なくとも何れか一方の側に形成されていることを特徴とする、第1の本発明の非水系二次電池用電極板である。
第3の本発明は、前記フィラーは、無機物および有機物の少なくとも何れか一方であり、
前記表面層は、多孔質絶縁層であることを特徴とする、第1または第2の本発明の非水系二次電池用電極板である。
第4の本発明は、前記合剤層および前記表面層には、同一の溶媒によって溶解可能な、結着材、増粘材、および添加剤が含まれていることを特徴とする、第1から第3の何れかの本発明の非水系二次電池用電極板である。
第5の本発明は、巻回された際に外面側となる前記合剤層の厚みは、内面側となる前記合剤層の厚みより大きいことを特徴とする、第2から第4の何れかの本発明の非水系二次電池用電極板である。
第6の本発明は、第1から第5の何れかの本発明の非水系二次電池用電極板がセパレータを介在させて巻回された電極群が、電解液とともに外装体に封入されたことを特徴とする、非水系二次電池である。
第7の本発明は、第6の本発明の非水系二次電池を備えたことを特徴とする、移動体である。
第8の本発明は、第1の本発明の非水系二次電池用電極板の製造方法であって、
前記合剤層を形成するための合剤層塗料を作製する合剤層塗料作製ステップと、
前記表面層を形成するための表面層塗料を作製する表面層塗料作製ステップと、
を備え、
前記合剤層塗料作製ステップにおいては、前記浸入深さが1μm以上であり前記活物質の前記平均粒子径以下となるように、前記合剤層塗料の重量固形分率を所定値とすることを特徴とする、非水系二次電池用電極板の製造方法である。
本発明によって、より優れた電池性能を得られる非水系二次電池用電極板、非水系二次電池、移動体、および非水系二次電池用電極板の製造方法を提供することができる。
本発明における実施の形態の非水系二次電池の模式的な一部切欠斜視図 本発明における実施の形態の非水系二次電池の負極板の模式的な断面図 本発明における実施の形態の巻回時における非水系二次電池の負極板およびセパレータの模式的な断面図 本発明における比較例2および3の非水系二次電池の負極板の模式的な断面図 本発明における比較例2および3の巻回時における非水系二次電池の負極板およびセパレータの模式的な断面図
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、同じ構成要素については、同じ符号を付して適宜説明を省略している。
本実施の形態の非水系二次電池においては、たとえば図1に示したように、複合リチウム酸化物を正極活物質とする正極板1と、リチウムを保持しうる材料を負極活物質とする負極板2と、が多孔質絶縁体としてのセパレータ3を介して渦巻状に巻回された電極群4が構成されている。
ここに、図1は、本発明における実施の形態の非水系二次電池の模式的な一部切欠斜視図である。
電極群4を有底円筒形の電池ケース5の内部に絶縁板6と共に収容し、電極群4の下部より導出した負極リード7を電池ケース5の底部に接続し、次いで電極群4の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース5に所定量の非水溶媒からなる非水電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース5の開口部に封口ガスケット10を周縁に取り付けた封口板9を挿入し、電池ケース5の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口した。
つぎに、本実施の形態の非水系二次電池を構成する負極板2の構成について、主として図2を参照しながらより詳しく説明する。
ここに、図2は、本発明における実施の形態の非水系二次電池の負極板2の模式的な断面図である。
まず、負極集電体11には、特に限定されないが、厚みが5μm〜25μmである銅または銅合金製の金属箔を用いることができる。
負極集電体11の上に負極合剤層12が形成されているが、負極合剤層12を形成するために塗布する負極合剤層塗料は、負極活物質、結着材、ならびに必要に応じて導電材および増粘剤を溶媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させて作製される。
すなわち、まず負極活物質および結着材を適切な溶媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、負極集電体11への塗布に最適な粘度に調整して混練を行うことで、負極合剤層塗料を作製することができる。
負極活物質としては、たとえば、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、ならびに各種合金組成材料を用いることができる。
このときの結着材としては、たとえば、PVdFおよびその変性体をはじめ各種結着材を用いることができるが、リチウムイオン受入れ性向上の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体にカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等を併用したり少量添加したりするのがより好ましい。
上記のように作製した負極合剤層塗料を複数本のロールを使用して負極集電体11へ塗膜状に転写する製造方法を用いて形成することで、負極合剤層12が得られる。
さらに、負極合剤層12の上に負極表面層13が形成されている。
負極合剤層12への負極表面層13のフィラーの浸入深さは、1μm以上、負極活物質の平均粒子径以下とするようにしている。
なお、浸入深さとは、たとえば、負極表面層13の最表層から最も離れた負極合剤層12までの距離と最表層から最も近い負極合剤層12までの距離の差である。
負極表面層13を形成するために塗布する負極表面層塗料は、特に、限定されるものではないが、たとえば、(一)アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素および窒化ケイ素等の無機物粒子と、(二)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリイミド等の有機物粒子と、(三)上記の無機物粒子および上記の有機物粒子の混合物と、の内の少なくとも一つから選ばれるフィラー、結着材、ならびに必要に応じて導電材および増粘材を、溶媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させて作製される。
負極表面層塗料に使用する結着材、増粘材および各種添加剤としては、負極合剤層塗料に含まれる溶媒にて溶解可能であること、つまり負極合剤層塗料と負極表面層塗料とに同一溶媒で溶解可能な結着材、増粘材および各種添加剤が含まれていることが好ましい。
負極表面層塗料は、(一)アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ジルコニア、炭化ケイ素および窒化ケイ素等の無機物粒子と、(二)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリイミド等の有機物粒子と、(三)上記の無機物粒子および上記の有機物粒子の混合物と、の内の少なくとも一つから選ばれるフィラー、ならびに結着材を適切な溶媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、最適な粘度に調整して混練を行うことで作製することができる。
このときの結着材としては、PVdFおよびその変性体をはじめ各種結着材を用いることができるが、リチウムイオン受入れ性向上の観点から、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)およびその変性体にカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等を併用したり少量添加したりするのがより好ましいといえる。
ダイコーターを用いて上記のように作製した負極表面層塗料を負極合剤層12の上に塗布し、次いで乾燥することで、負極表面層13が得られる。
ここに、負極表面層13は、負極合剤層12が形成されている負極集電体11の両面の少なくとも何れか一方の側に形成されていればよい。
そして、負極表面層13は、多孔質絶縁層であることが好ましい。
その後プレスにて所定の厚みまで圧縮することで、負極合剤層12と負極表面層13とを形成した負極板2が得られる。
以上で説明したように、負極合剤層12への負極表面層13のフィラーの浸入深さが1μm以上、負極活物質の平均粒子径以下とすることで、負極合剤層12と負極表面層13との境界部が乱れることなく、負極合剤層12の膜厚ばらつきを抑えることが可能となる。
なお、浸入深さが1μmよりも小さくなった場合には、負極合剤層12と負極表面層13との境界部の凹凸がなく平滑になるため、両層の接着におけるアンカー効果が弱くなり、負極表面層13が負極合剤層12から脱落する可能性が高い。
また、浸入深さが負極活物質の平均粒子径より大きくなった場合には、負極合剤層12の膜厚ばらつきが大きくなりサイクル特性に影響を与える可能性が高い。
負極合剤層12と負極表面層13とに同一溶媒で溶解可能な結着材、増粘材および各種添加剤が含まれることで、結着材および増粘材などがそれぞれの溶媒によって分離したりゲル化したりすることなどがなく、負極合剤層12と負極表面層13とを所定の形状にて形成することが可能となる。
つぎに、本実施の形態の巻回時における非水系二次電池を構成する負極板2の構成について、主として図3を参照しながらより詳しく説明する。
ここに、図3は、本発明における実施の形態の巻回時における非水系二次電池の負極板2およびセパレータ3の模式的な断面図である。
負極集電体11の両面に、負極合剤層12aおよび12bと、その表面に負極表面層13aおよび13bと、が形成されており、負極板2は負極板2と正極板1との間にセパレータ3を介在させて渦巻状に巻回して構成されている。
なお、図3では、正極板1の図示は省略している。
曲率半径の大きい外面側の負極合剤層および負極表面層を負極合剤層12aおよび負極表面層13aとし、曲率半径の小さい内面側の負極合剤層および負極表面層を負極合剤層13bおよび負極表面層13bとする。
負極合剤層12aの膜厚は、負極合剤層12bの膜厚より大きくなるようにしている。
これは、負極合剤層12aと負極合剤層12bとに巻回時にかかる応力には曲率半径の違いにより差があることを考慮して、曲率半径の小さい負極合剤層12bに応力が集中することを緩和するためである。
しかしながら、たとえ負極合剤層12aの膜厚を負極合剤層12bの膜厚より厚く設計したとしても、もしも負極合剤層12と負極表面層13との境界面が乱れると、負極合剤層12aの膜厚と負極合剤層12bの膜厚との大小関係が局所的に逆転してしまう可能性がある。
そこで、負極合剤層12と負極表面層13との境界面の乱れを制御することで、負極合剤層12の膜厚ばらつきを抑え、負極合剤層12aの膜厚が負極合剤層12bの膜厚より大きくなるようにしている。
ここで、正極板1の構成についても、説明を行う。
まず、正極集電体には、特に限定されないが、厚みが5μm〜30μmであるアルミニウム、アルミニウム合金またはニッケルやニッケル合金製の金属箔を用いることができる。
この正極集電体の上に塗布する正極合剤層塗料は、正極活物質、導電材および結着材を溶媒中にプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散させて作製される。
すなわち、まず正極活物質、導電材および結着材を適切な溶媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散して、正極集電体への塗布に最適な粘度に調整して混練を行うことで、正極合剤層塗料を作製することができる。
正極活物質としては、たとえば、コバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムおよび/またはマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部のニッケルをコバルト置換させたものなど)、ならびにマンガン酸リチウムおよびその変性体などの、複合酸化物を用いることができる。
導電材としては、たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックおよびサーマルブラック等のカーボンブラック、ならびに各種グラファイトを、単独または組み合わせて用いてもよい。
このときの結着材としては、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマーまたはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させてもよい。
ダイコーターを用いて上記のように作製した正極合剤層塗料をアルミニウム箔からなる正極集電体の上に塗布し、次いで乾燥した後にプレスにて所定の厚みまで圧縮することで、正極合剤層が形成された正極板1が得られる。
以上においては、負極板2および正極板1の構成について詳しく説明を行った。
なお、非水電解液については、電解質塩としてLiPFおよびLIBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。
また、溶媒については、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)を、単独または組み合わせて用いることができる。
また、正負極上に良好な皮膜を形成させたり過充電時の安定性を保証したりするために、ビニレンカーボネート(VC)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)、およびこれらの変性体を用いることも好ましい。
また、セパレータ3については、リチウムイオン二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを単一または複合して用いるのが一般的であり、好ましい。そして、このセパレータ3の厚みは、特に限定されないが、10〜25μmとすればよい。
もちろん、以上においては負極合剤層12の上に負極表面層13が形成されている図2に示すような構成を説明したが、たとえば、負極表面層13を形成する代わりに、正極合剤層の上に同様な正極表面層を形成してもよい。
つぎに、主として図2および3を参照しながら、実施例1〜3について具体的に説明する。
(実施例1)
負極活物質として平均粒子径20μmである人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を負極活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを負極活物質100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量(すなわち、負極活物質100重量部に対して32.5重量部)の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、重量固形分率が75%の負極合剤層塗料を作製した。
ここに、水の量は、以下同様であるが、100重量部の負極活物質、1重量部の結着材、および1重量部の増粘剤が与える固形分についての重量固形分率が75%となるように逆算によって決定される。
つぎに、フィラーとしてアルミナを100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)をフィラー100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースをフィラー100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌することで、負極表面層塗料を作製した。
そして、つぎに説明されるタイプA(その1)の形成方法によって塗布、乾燥およびプレスを実施し、負極合剤層12および負極表面層13を形成する。
すなわち、図3に示すように、上述の負極合剤層塗料を厚みが10μmの銅箔よりなる負極集電体11に複数本のロールを使用して塗膜状に転写する工法にて間欠的に塗布し、さらに上述の負極表面層塗料を負極合剤層12上にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
これを両面実施した後にプレスすることで、負極合剤層12aの厚みが82μm、負極合剤層12bの厚みが80μm、負極表面層13aおよび13bの厚みが10μm、負極合剤層12aおよび12bへの負極表面層13aおよび13bのフィラーの浸入深さが10μmの負極板2を作製した。
その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して、負極板2を作製した。
さらに、図1に示すように、負極板2の負極集電体11が露出した部分に負極リード7を接続し、負極リード7を被覆するように負極保護テープを貼り付けることで負極板2を構成した。
一方、正極活物質としてニッケル酸リチウムを100重量部、導電剤としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して1重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを活物質100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤層塗料を作製した。
そして、上述の正極合剤層塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体に間欠的に塗布し、乾燥を両面実施した後にプレスすることで、片面側の合剤厚みが70μmの正極板1を作製した。
その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工し、熱処理を施して、正極板1を作製した。
さらに、正極板1の正極集電体が露出した部分に正極リード8を接続し、正極リード8を被覆するように正極保護テープを貼り付けることで正極板1を構成した。
以上のようにして作製した正極板1と負極板2とを用いて、図1に示すように、20μm厚みのポリエチレン微多孔フィルムをセパレータ3とし、巻回して渦巻状の電極群4を構成した。
電極群4を、図1に示すように、有底円筒形の電池ケース5の内部に絶縁板6と共に収容し、電極群4の下部より導出した負極リード7を電池ケース5の底部に接続した。
次いで、電極群4の上部より導出した正極リード8を封口板9に接続し、電池ケース5に所定量のEC、DMC、MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部溶解させた非水電解液(図示せず)を注液した。
その後、電池ケース5の開口部に封口ガスケット10を周縁に取り付けた封口板9を挿入し、電池ケース5の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口し、本実施例における円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例2)
負極活物質として平均粒子径20μmである人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を負極活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを負極活物質100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量(すなわち、負極活物質100重量部に対して24重量部)の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、重量固形分率が80%の負極合剤層塗料を作製した。
つぎに、フィラーとしてアルミナを100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)をフィラー100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースをフィラー100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極表面層塗料を作製した。
そして、実施例1の場合と同様であるが、つぎに説明されるタイプA(その1)の形成方法によって塗布、乾燥およびプレスを実施し、負極合剤層12および負極表面層13を形成する。
すなわち、実施例1の場合と同様に、上述の負極合剤層塗料を厚みが10μmの銅箔よりなる負極集電体11に複数本のロールを使用して塗膜状に転写する工法にて間欠的に塗布し、さらに上述の負極表面層塗料を負極合剤層12上にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
これを両面実施した後にプレスすることで、負極合剤層12aの厚みが82μm、負極合剤層12bの厚みが80μm、負極表面層13aおよび13bの厚みが10μm、負極合剤層12aおよび12bへの負極表面層13aおよび13bのフィラーの浸入深さが1μmの負極板2を作製した。
その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して、負極板2を作製した。
さらに、図1に示すように、負極板2の負極集電体11が露出した部分に負極リード7を接続し、負極リード7を被覆するように負極保護テープを貼り付けることで負極板2を構成した。
一方、正極板1は、実施例1の場合と同様に作製した。
以上のようにして作製した正極板1と負極板2とを用いて、実施例1の場合と同様にして本実施例における円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例3)
負極活物質として平均粒子径20μmである人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を負極活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを負極活物質100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量(すなわち、負極活物質100重量部に対して42.2重量部)の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、重量固形分率が70%の負極合剤層塗料を作製した。
つぎに、フィラーとしてアルミナを100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)をフィラー100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースをフィラー100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極表面層塗料を作製した。
そして、実施例1の場合と同様であるが、つぎに説明されるタイプA(その1)の形成方法によって塗布、乾燥およびプレスを実施し、負極合剤層12および負極表面層13を形成する。
すなわち、実施例1の場合と同様に、上述の負極合剤層塗料を厚みが10μmの銅箔よりなる負極集電体11に複数本のロールを使用して塗膜状に転写する工法にて間欠的に塗布し、さらに上述の負極表面層塗料を負極合剤層12上にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
これを両面実施した後にプレスすることで、負極合剤層12aの厚みが82μm、負極合剤層12bの厚みが80μm、負極表面層13aおよび13bの厚みが10μm、負極合剤層12aおよび12bへの負極表面層13aおよび13bのフィラーの浸入深さが20μmの負極板2を作製した。
その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して、負極板2を作製した。
さらに、図1に示すように、負極板2の負極集電体11が露出した部分に負極リード7を接続し、負極リード7を被覆するように負極保護テープを貼り付けることで負極板2を構成した。
一方、正極板1は、実施例1の場合と同様に作製した。
以上のようにして作製した正極板1と負極板2とを用いて、実施例1の場合と同様にして本実施例における円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
つぎに、主として図4および5を参照しながら、比較例1〜3について具体的に説明する。
ここに、図4は本発明における比較例2および3の非水系二次電池の負極板2の模式的な断面図であり、図5は本発明における比較例2および3の巻回時における非水系二次電池の負極板2およびセパレータ3の模式的な断面図である。
(比較例1)
負極活物質として平均粒子径20μmである人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を負極活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを負極活物質100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量(すなわち、負極活物質100重量部に対して100.5重量部)の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、重量固形分率が50%の負極合剤層塗料を作製した。
つぎに、フィラーとしてアルミナを100重量部、結着材としてポリアクリロニトリル変性ゴム分散体(固形分8重量%)をフィラー100重量部に対して37.5重量部(結着材の固形分換算で3重量部)それぞれ用意し、これらを適量のNMPとともに双腕式練合機にて攪拌し、負極表面層塗料を作製した。
そして、つぎに説明されるタイプBの形成方法によって塗布、乾燥およびプレスを実施し、負極合剤層12および負極表面層13を形成する。
すなわち、実施例1の場合と同様に、上述の負極合剤層塗料を厚みが10μmの銅箔よりなる負極集電体11にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
そして、これを両面実施した後にプレスした。
さらに、上述の負極表面層塗料を負極合剤層12上にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
これを両面実施した後にプレスすることで、負極合剤層12aの厚みが82μm、負極合剤層12bの厚みが80μm、負極表面層13aおよび13bの厚みが10μm、負極合剤層12aおよび12bへの負極表面層13aおよび13bのフィラーの浸入深さが0.5μmの負極板2を作製した。
その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して、負極板2を作製した。
さらに、図1に示すように、負極板2の負極集電体11が露出した部分に負極リード7を接続し、負極リード7を被覆するように負極保護テープを貼り付けることで負極板2を構成した。
一方、正極板1は、実施例1の場合と同様に作製した。
以上のようにして作製した正極板1と負極板2とを用いて、実施例1の場合と同様にして本比較例における円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例2)
負極活物質として平均粒子径20μmである人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を負極活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを負極活物質100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量(すなわち、負極活物質100重量部に対して100.5重量部)の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、重量固形分率が50%の負極合剤層塗料を作製した。
つぎに、フィラーとしてアルミナを100重量部、結着材としてポリアクリロニトリル変性ゴム分散体(固形分8重量%)をフィラー100重量部に対して37.5重量部(結着材の固形分換算で3重量部)それぞれ用意し、これらを適量のNMPとともに双腕式練合機にて攪拌し、負極表面層塗料を作製した。
そして、つぎに説明されるタイプCの形成方法によって塗布、乾燥およびプレスを実施し、負極合剤層12および負極表面層13を形成する。
すなわち、図5に示すように、上述の負極合剤層塗料を厚みが10μmの銅箔よりなる負極集電体11にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
そして、これを両面実施した。
さらに、上述の負極表面層塗料を負極合剤層12上にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
これを両面実施した後にプレスすることで、負極合剤層12aの厚みが82μm、負極合剤層12bの厚みが80μm、負極表面層13aおよび13bの厚みが10μm、負極合剤層12aおよび12bへの負極表面層13aおよび13bのフィラーの浸入深さが21μmの負極板2を作製した。
なお、図4に示すように、負極合剤層12と負極表面層13との境界面が乱れており、負極合剤層12の膜厚はばらついている。
その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して、負極板2を作製した。
さらに、図1に示すように、負極板2の負極集電体11が露出した部分に負極リード7を接続し、負極リード7を被覆するように負極保護テープを貼り付けることで負極板2を構成した。
一方、正極板1は、実施例1の場合と同様に作製した。
以上のようにして作製した正極板1と負極板2とを用いて、実施例1の場合と同様にして本比較例における円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
なお、図5に示すように、巻回時においても負極合剤層12と負極表面層13との境界面は乱れており、局所的に負極合剤層12aの厚みより負極合剤層12bの厚みの方が大きくなってしまっている。
(比較例3)
負極活物質として平均粒子径20μmである人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を負極活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを負極活物質100重量部に対して1重量部それぞれ用意し、これらを適量(すなわち、負極活物質100重量部に対して100.5重量部)の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、重量固形分率が50%の負極合剤層塗料を作製した。
つぎに、フィラーとしてアルミナを100重量部、結着材としてポリアクリロニトリル変性ゴム分散体(固形分8重量%)をフィラー100重量部に対して37.5重量部(結着材の固形分換算で3重量部)それぞれ用意し、これらを適量のNMPとともに双腕式練合機にて攪拌し、負極表面層塗料を作製した。
そして、つぎに説明されるタイプA(その2)の形成方法によって塗布、乾燥およびプレスを実施し、負極合剤層12および負極表面層13を形成する。
すなわち、図5に示すように、上述の負極合剤層塗料を厚みが10μmの銅箔よりなる負極集電体11にダイコート工法などで間欠的に塗布し、さらに上述の負極表面層塗料を負極合剤層12上にダイコート工法などで間欠的に塗布し、その後乾燥した。
これを両面実施した後にプレスすることで、負極合剤層12aの厚みが82μm、負極合剤層12bの厚みが80μm、負極表面層13aおよび13bの厚みが10μm、負極合剤層12aおよび12bへの負極表面層13aおよび13bのフィラーの浸入深さが40μmの負極板2を作製した。
なお、図4に示すように、負極合剤層12と負極表面層13との境界面が乱れており、負極合剤層12の膜厚はばらついている。
その後、円筒形のリチウムイオン二次電池の規定されている幅にスリッタ加工して、負極板2を作製した。
さらに、図1に示すように、負極板2の負極集電体11が露出した部分に負極リード7を接続し、負極リード7を被覆するように負極保護テープを貼り付けることで負極板2を構成した。
一方、正極板1は、実施例1の場合と同様に作製した。
以上のようにして作製した正極板1と負極板2とを用いて、実施例1の場合と同様にして本比較例における円筒形のリチウムイオン二次電池を作製した。
なお、図5に示すように、巻回時においても負極合剤層12と負極表面層13との境界面は乱れており、局所的に負極合剤層12aの厚みより負極合剤層12bの厚みの方が大きくなってしまっている。
以上において詳しく説明された実施例1〜3および比較例1〜3における円筒形のリチウムイオン二次電池に対して、負極合剤層12への負極表面層13のフィラーの浸入深さ測定、サイクル性能評価としての容量維持率測定、安全性評価としての内部短絡試験、をそれぞれ実施した結果についてつぎの(表1)に示す。
Figure 2014107172
なお、負極合剤層12への負極表面層13のフィラーの浸入深さ測定については、負極板2の断面を電子顕微鏡にて観察し(倍率500倍、横幅約250μm)、負極表面層13の最表層から最も離れた負極合剤層12までの厚み方向の距離と、最も近い負極合剤層12までの厚み方向の距離と、を測長し、その差を浸入深さとした。
また、容量維持率測定については、充放電サイクルを500回繰り返し、初期の容量に対する500サイクル後の容量比を容量維持率とした。
また、内部短絡試験については、円筒形のリチウムイオン二次電池をそれぞれ5セルずつ準備し、充電を行った後に電池ケース5内から電極群4を取り出し、任意の大きさの金属片を電極群4の最外周に位置する正極板1とセパレータ3との間に介在させ、その金属片を介在させた電極群4を電池ケース5内に再度収納し、リチウムイオン二次電池を所定の圧力で押圧し、短絡したセル数(短絡したセル数/5セル)を確認した。
(表1)から明らかなように、負極合剤層12への負極表面層13のフィラーの浸入深さが規定の範囲内である実施例1〜3については、負極合剤層12の膜厚ばらつきが抑えられ、一般的に好ましい数値である80%以上の容量維持率を確保できていることから、充放電の際の局所的な金属リチウムの析出はなく、内部短絡試験のおける不良がないことから、安全性に問題はないことがわかる。
かくして、負極合剤層12への負極表面層13のフィラーの浸入深さは1μm以上であり20μm以下であることが好ましく、要するに、平均粒子径が20μmの負極活物質が使用された点を想起すると、負極合剤層12への負極表面層13のフィラーの浸入深さは1μm以上であり負極活物質の平均粒子径以下であることが好ましいことがわかった。
もちろん、以上においては負極合剤層12の上に負極表面層13が形成されている構成を説明したが、たとえば、正極合剤層の上に同様な正極表面層を形成してもよく、その場合にも同じ効果が得られる。
なお、浸入深さが1μmよりも小さい比較例1については、サイクル性能および安全性の両方が実施例1〜3のそれらと比較して低下している。たとえば、内部短絡試験にて不良が発生しており、安全性を確保できていないことがわかる。負極合剤層12と負極表面層13との境界面の凹凸がなく平滑になり、負極合剤層12と負極表面層13との接着におけるアンカー効果が弱くなって、負極表面層13が一部脱落し、この脱落部分に金属リチウムが析出するために、サイクル性能の低下が発生し、絶縁性の低下にともなう内部短絡が発生したと考えられる。
また、浸入深さが20μm(すなわち、活物質の平均粒子径)よりも大きい比較例2についても、サイクル性能および安全性の両方が実施例1〜3のそれらと比較して低下している。負極合剤層12と負極表面層13との境界面が乱れ、(1)負極合剤層12の膜厚ばらつきが発生し、負極合剤層12が薄くなった箇所に金属リチウムが析出したり、(2)負極板2の巻回時に負極合剤層12aの膜厚より負極合剤層12bの膜厚の方が局所的に大きくなり、巻回時の応力集中により負極合剤層12bが一部脱落し、この脱落部分にも金属リチウムが析出したりするために、サイクル性能の低下が発生し、絶縁性の低下にともなう内部短絡が発生したと考えられる。
また、やはり浸入深さが20μm(すなわち、活物質の平均粒子径)よりも大きい比較例3についても、サイクル性能および安全性の両方が実施例1〜3のそれらと比較して低下している。その原因は比較例2の場合と同様であるが、低下の程度が比較例2のそれよりも顕著であることから、負極合剤層12と負極表面層13との境界面の乱れが大きいほど、サイクル性能および安全性の両方への悪影響は大きいことがわかる。
このように、集電体に形成された活物質を含む合剤層と、その表面に形成された表面層と、を備えた非水系二次電池用電極板において、表面層のフィラーが合剤層へ浸入しにくい工法で合剤層および表面層を形成すると、ばらつきを抑えて所望の均一な合剤層の膜厚を得ることができ、絶縁性を確保した上で充放電の際の局所的な金属リチウムの析出を抑えることが可能となり、優れた電池性能が実現できる。
なお、上記の非水系二次電池は、たとえば、電子機器(パーソナルコンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、ディジタルスチルカメラ、テレビ、およびビデオカメラ等)、電動工具(電動ドリル、および電動ドライバ等)、ならびに車両(車椅子、自転車、スクータ、オートバイ、車、福祉車両、電車、および汽車等)などの移動体に有用であるが、非常時用の電源としての電力貯蔵システムに適用することが可能であるので、要するに電源を必要とする全てのものに使用することができる。
本発明における非水系二次電池用電極板、非水系二次電池、移動体、および非水系二次電池用電極板の製造方法は、より優れた電池性能を得ることが可能であり、たとえばリチウムイオン電池などの非水系二次電池に使用される非水系二次電池用電極板、非水系二次電池、移動体、および非水系二次電池用電極板の製造方法に利用する目的に有用である。
1 正極板
2 負極板
3 セパレータ
4 電極群
5 電池ケース
6 絶縁板
7 負極リード
8 正極リード
9 封口板
10 封口ガスケット
11 負極集電体
12、12a、12b 負極合剤層
13、13a、13b 負極表面層

Claims (8)

  1. 正極用または負極用の集電体と、
    前記集電体の表面に形成された、活物質を含む合剤層と、
    前記合剤層の表面に形成された、フィラーを含む表面層と、
    を備え、
    前記フィラーの前記合剤層への浸入深さは、1μm以上であり、前記活物質の平均粒子径以下であることを特徴とする、非水系二次電池用電極板。
  2. 前記合剤層は、前記集電体の両面に形成されており、
    前記表面層は、前記両面の少なくとも何れか一方の側に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の非水系二次電池用電極板。
  3. 前記フィラーは、無機物および有機物の少なくとも何れか一方であり、
    前記表面層は、多孔質絶縁層であることを特徴とする、請求項1または2に記載の非水系二次電池用電極板。
  4. 前記合剤層および前記表面層には、同一の溶媒によって溶解可能な、結着材、増粘材、および添加剤が含まれていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の非水系二次電池用電極板。
  5. 巻回された際に外面側となる前記合剤層の厚みは、内面側となる前記合剤層の厚みより大きいことを特徴とする、請求項2から4の何れかに記載の非水系二次電池用電極板。
  6. 請求項1から5の何れかに記載の非水系二次電池用電極板がセパレータを介在させて巻回された電極群が、電解液とともに外装体に封入されたことを特徴とする、非水系二次電池。
  7. 請求項6に記載の非水系二次電池を備えたことを特徴とする、移動体。
  8. 請求項1に記載の非水系二次電池用電極板の製造方法であって、
    前記合剤層を形成するための合剤層塗料を作製する合剤層塗料作製ステップと、
    前記表面層を形成するための表面層塗料を作製する表面層塗料作製ステップと、
    を備え、
    前記合剤層塗料作製ステップにおいては、前記浸入深さが1μm以上であり前記活物質の前記平均粒子径以下となるように、前記合剤層塗料の重量固形分率を所定値とすることを特徴とする、非水系二次電池用電極板の製造方法。
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