JP2014101832A - 動弁装置におけるラッシュアジャスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】高回転型のエンジンに適用された場合でも、バルブクリアランスの増加を確実に防止することができるラッシュアジャスタの提供。
【解決手段】プランジャ26を雄ねじ部材28とスライド部材27とに分割し、捩りコイルばね40により雄ねじ部材にスライド部材に向けて移動する方向の回転トルクを付与する。スライド部材に設けられた軸方向の孔部30の後端部内に押圧子31と、コイルばね32とを組込み、孔部30の開口端部内に組み込まれたストッパ33により押圧子を、その後端部に設けられた突軸部31aの端部がスライド部材の後端面から突出する状態で抜止めして、雄ねじ部材とスライド部材の対向部間に突軸部の突出長さに相当する軸方向すきまGを形成する。押圧子における突軸部の後端面を球面31bとし、その球面を雄ねじ部材の先端面に当接させて雄ねじ部材の回転抵抗を低減し、ラッシュアジャスタの伸長方向の作動性を向上させる。
【選択図】図2
【解決手段】プランジャ26を雄ねじ部材28とスライド部材27とに分割し、捩りコイルばね40により雄ねじ部材にスライド部材に向けて移動する方向の回転トルクを付与する。スライド部材に設けられた軸方向の孔部30の後端部内に押圧子31と、コイルばね32とを組込み、孔部30の開口端部内に組み込まれたストッパ33により押圧子を、その後端部に設けられた突軸部31aの端部がスライド部材の後端面から突出する状態で抜止めして、雄ねじ部材とスライド部材の対向部間に突軸部の突出長さに相当する軸方向すきまGを形成する。押圧子における突軸部の後端面を球面31bとし、その球面を雄ねじ部材の先端面に当接させて雄ねじ部材の回転抵抗を低減し、ラッシュアジャスタの伸長方向の作動性を向上させる。
【選択図】図2
Description
この発明は、内燃機関における動弁装置のバルブクリアランスを自動調整するラッシュアジャスタに関する。
カムの回転によって吸気バルブあるいは排気バルブ(以下、単にバルブという)を開閉させる動弁装置には、アームによってバルブステムを押し下げるアーム型と、カムによってバルブステムを押し下げるダイレクト型とがあり、上記アーム型動弁装置にはスイングアーム式(エンドピボット式)とロッカアーム式とが存在する。
ここで、スイングアーム式動弁装置においては、カムの下方に配置されたアームの端部をピボットで支持し、そのアームをカムの回転によりピボットを中心に揺動させ、その揺動側の端部でバルブステムを押し下げてバルブを開放させるようにしている。
一方、ロッカアーム式動弁装置においては、カムの上方に設けられたロッカシャフトを中心にしてアームを揺動自在に支持し、上記カムの回転によりアームの一端部を押し上げ、アームの他端部でバルブステムを押し下げてバルブを開放させるようにしている。
上記いずれの動弁装置においても、ラッシュアジャスタの組込みによってバルブクリアランスを自動調整している。
上記ラッシュアジャスタとして、油圧式のものが知られている。しかし、油圧式ラッシュアジャスタにおいては、エンジンオイルを作動油としているため、エンジンの回転数による油圧の変化や、エンジンオイルに混入するコンタミや気泡の影響を受け易く、また、構造が複雑で組立に手間がかかり、コスト的にも不利である。
特許文献1乃至3に記載されたラッシュアジャスタは機械式であるため、上記のような問題の発生がなく、動弁装置への組込みに有利である。ここで、特許文献1乃至3に記載された機械式ラッシュアジャスタにおいては、捩りコイルばねからなるばね部材によって互いにねじ係合する雌ねじ部材と雄ねじ部材の相互間に捩りモーメントを与え、その雌ねじ部材と雄ねじ部材が伸長する方向への相対移動によりバルブクリアランスを吸収するようにしている。
一般に、エンジンにおいては、エンジンブロックがアルミ製とされ、バルブが鋼製とされて、エンジンブロックの線膨張係数がバルブの線膨張係数より大きくなっている。このようなエンジンの動弁系に上記特許文献1乃至3に記載の機械式ラッシュアジャスタが組み込まれた場合、エンジンの運転停止後における温度低下時、エンジンブロックがバルブより大きく収縮するため、バルブが完全に閉じられなくなって、エンジンの再始動時に圧縮漏れが生じ、エンジンを再始動することができなくなるおそれが生じる。
そのような不都合を解消するため、特許文献4に記載された機械式ラッシュアジャスタにおいては、ボディ内に組込まれたプランジャを先端プランジャ部材と雄ねじ部材とに分割し、その先端プランジャ部材と雄ねじ部材間にスペーサばねを組込んで、先端プランジャ部材と雄ねじ部材の対向面間に軸方向すきまを形成し、その軸方向すきまの範囲内でスペーサばねを弾性変形させ、そのスペーサばねの弾性変形により、エンジンブロックとバルブの線膨張係数の相違による収縮差を吸収してバルブが不完全に閉鎖するのを防止するようにしている。
しかし、特許文献4に記載された機械式ラッシュアジャスタにおいては、長期の使用によってスペーサばねがへたり、自由長さが変化すると、先端プランジャ部材と雄ねじ部材の対向面間に形成された軸方向すきまが変化して、エンジン性能に影響を与えるおそれがある。
また、大きな荷重を受ける先端プランジャ部材と雄ねじ部材の接触面が摩耗した際には、その摩耗により軸方向すきまが変化して、エンジン性能に影響を与えるおそれがある。
さらに、スペーサばねは、無負荷時に自由長さとなる組込みであるため、軸方向すきまを高精度に管理するために、ばね公差を非常に小さく設定する必要があり、量産時のコストアップの要因となるばかりでなく、スペーサばねと先端プランジャ部材、若しくは、先端プランジャ部材と雄ねじ部材の接触部で摩耗が生じると、上記軸方向すきまが変化し、エンジン性能に影響を与えるおそれがある。
ここで、エンジン性能への影響とは、軸方向すきまの減少による圧縮漏れ、軸方向すきまの拡大によるメカニカルノイズの増大および出力低下をいう。
上記の不都合の発生を未然に防止するため、特許文献5に記載されたラッシュアジャスタにおいては、ボディ内に組み込まれたプランジャをねじ部材とスライド部材とに分割し、そのスライド部材のねじ部材に対する対向面に凹部を形成し、その凹部内に押圧子と、その押圧子の後端がねじ部材に当接する方向に向けて押圧子を付勢する弾性部材とを組込み、上記弾性部材が押圧子を付勢する弾性変形状態において押圧子の後端部がスライド部材のねじ部材に対する対向面より突出する状態で押圧子を抜止めするストッパを設けて、ねじ部材上のスペーサとスライド部材の対向面間に押圧子の突出長さに相当する大きさの軸方向すきまを確保するようにしている。
特許文献5に記載されたラッシュアジャスタにおいては、押圧子をねじ部材に向けて付勢する弾性部材が弾性変形する状態での組込みであるため、弾性部材にへたりが生じても軸方向すきまが変化することがなく、安定したバルブリフト高さを得ることができる。
上記特許文献5に記載されたラッシュアジャスタの場合、押圧子の後端面とねじ部材の先端面の接触部における摩擦力がねじ部材の回転抵抗となり、その回転抵抗によってねじ部材の突出する方向への回転が妨げられ、ラッシュアジャスタの伸長方向の作動性が低下する。そのようなラッシュアジャスタを平均ピストンスピードの速い高回転型エンジンに組み込んだ場合、バルブクリアランスの増加に対し、ラッシュアジャスタの伸長が追従できなくなる恐れがある。
ここで、バルブクリアランスの増加に対してラッシュアジャスタの伸長が追従できなくなると、最悪の場合、バルブクリアランスがカムのランプ高さを超え、バルブがバルブシートに衝撃的に着座して、異音が発生する可能性がある。
この発明の課題は、高回転型のエンジンに適用された場合でも、バルブクリアランスの増加を確実に防止することができるようにしたラッシュアジャスタを提供することである。
上記の課題を解決するために、第1の発明においては、内周に雌ねじが形成された筒状のボディ内にプランジャを組込み、そのプランジャを前記雌ねじにねじ係合される雄ねじ部材と、先端部が前記ボディの先端開口から外部に臨むスライド部材とに分割し、前記ボディ内に組込まれたばね部材により雄ねじ部材にスライド部材に向けて移動する方向の回転トルクを付与し、前記スライド部材の後端面から軸方向に延びる孔部内に、軸方向にスライド可能な押圧子と、その押圧子を前記雄ねじ部材に向けて付勢する弾性部材とを組込み、前記孔部の開口端部内には、前記押圧子の後端部に設けられた小径の突軸部の端部が前記スライド部材の後端面から突出する状態で押圧子を抜止めするストッパを設けて、雄ねじ部材とスライド部材の対向部間に前記突軸部の突出長さに相当する軸方向すきまを形成した動弁装置におけるラッシュアジャスタにおいて、前記押圧子における突軸部の後端面を凸形球面として前記雄ねじ部材の先端面に点接触させ、または、突軸部の後端部を後端が小径端とされる錐台形として、後端の小径端面を前記雄ねじ部材の先端面に接触させた構成を採用したのである。
上記のように、押圧子における突軸部の後端面を凸形球面とし、または、突軸部の後端部を後端が小径端とされる錐台形とすることにより、雄ねじ部材の先端面に対する突軸部の接触面積の低減を図ることができ、雄ねじ部材の回転抵抗を小さくすることができる。
このため、雄ねじ部材はスライド部材を押圧する方向に向けてスムーズに回転移動することになり、ラッシュアジャスタの伸長方向の作動性が向上する。
ここで、エンジンが高回転で運転しているとき、カムの1回転当たりに、カムのベース円がアームのローラと接触している時間は極めて短く、ラッシュアジャスタはバルブクリアランスの増加に対し、その僅かな時間の間に伸長する必要が生じる。
第1の発明に係るラッシュアジャスタにおいては、上記のように、伸長方向にスムーズに作動するため、高回転型のエンジンに適用されても、バルブクリアランスの増加を確実に防止することになる。
ここで、押圧子における突軸部の後端面と雄ねじ部材の先端面の少なくとも一方に低摩擦表面処理を施して低摩擦皮膜を設けることにより、雄ねじ部材の回転抵抗をより低減することができ、ラッシュアジャスタの伸長方向の作動性をより向上させることができる。
上記の課題を解決するため、第2の発明においては、押圧子における突軸部の後端面を凸形球面としたり後端部を錐台形とすることなく、突軸部の後端面と雄ねじ部材の先端面の少なくとも一方に低摩擦表面処理を施して低摩擦皮膜を設けた構成を採用したのである。
上記第2の発明の場合においても、雄ねじ部材の回転抵抗を低減することができ、ラッシュアジャスタの伸長方向の作動性を向上させることができる。
ここで、低摩擦皮膜として、ダイヤモンドライクカーボン皮膜、セラミックコーティング皮膜、フッ素樹脂コーティング皮膜、二硫化モリブデンのショットブラスト処理による低摩擦皮膜を挙げることができる。
第1の発明および第2発明のいずれの発明においても、雄ねじ部材の回転抵抗を低減することができるため、ラッシュアジャスタの伸長方向の作動性を向上させることができ、高回転型のエンジンへの採用において、バルブクリアランスの増加を確実に防止することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係るラッシュアジャスタを組込んだスイングアーム式動弁装置を示す。スイングアーム式動弁装置においては、シリンダブロック1に形成された嵌合孔2にラッシュアジャスタAを組込み、そのラッシュアジャスタAによって一端部が支持された揺動可能なアーム3の中途にローラ4を回転自在に支持し、そのローラ4をカムシャフト5に設けられたカム6の回転により押し下げてアーム3を揺動させ、そのアーム3の他端部でバルブステム7を押し下げて、バルブステム7の下端に設けられたバルブ8を開放させるようにしている。
ここで、バルブステム7は、上端にスプリングリテナ9を有し、そのスプリングリテナ9に負荷されるバルブスプリング10の押圧力によってバルブステム7は下端のバルブ8がバルブシート11に着座する方向に付勢されている。また、アーム3の一端部には、下面に半球状の凹形球面座12と、上面からその凹形球面座12に至るオイル供給孔13とが形成されている。
図2乃至図6に示すように、ラッシュアジャスタAは、図1に示す嵌合孔2に嵌合される筒状のボディ21を有し、そのボディ21の内周に雌ねじ22が形成されている。雌ねじ22は、圧力側フランク23のフランク角が遊び側フランク24のフランク角より大きい鋸歯状ねじとされ、その鋸歯状雌ねじ22の後端側に雌ねじ22の谷の径より大径のばね収容孔25が形成されている。
なお、鋸歯状雌ねじに代えて三角ねじを採用してもよい。その三角ねじの採用においては、リード角が小さく、ねじ係合面での相対滑りが生じることのないようなねじ諸元としておく。
ボディ21の内部にはプランジャ26が組込まれている。プランジャ26は、スライド部材27と雄ねじ部材28とに分割され、上記スライド部材27はボディ21内において軸方向にスライド自在とされ、ボディ21の先端面から外部に臨む先端にアーム3の凹形球面座12を支持する凸形球面部29が形成されている。
また、スライド部材27には、その軸心上に孔部30が形成されている。孔部30は段付き孔からなってスライド部材27の先端凸形球面部29と後端面とで開口しており、スライド部材27の後端面で開口する大径孔部30aの内部には、肌焼鋼(SCM420)等の鋼材を素材とする押圧子31が摺動自在に組み込まれ、先端の凸形球面側には、小径孔部30bが設けられている。押圧子31は、その上側に組み込まれた弾性部材としてのコイルばね32により雄ねじ部材28に向けて付勢されている。
孔部30における大径孔部30aの後端開口部には、押圧子31を抜止めするリング状のストッパ33が設けられている。ストッパ33は圧入あるいは接着による手段により固定されている。このストッパ33は、押圧子31の後端面に設けられた小径の突軸部31aの後端部がスライド部材27の後端面から突出する状態で押圧子31を抜止めしている。
ボディ21の先端部には抜止めリング34が嵌合されている。抜止めリング34は後端部の内方への加締めによって固定され、先端部には内向きフランジ34aが設けられ、その内向きフランジ34aの内周部はスライド部材27の後端部外周に形成された段部35と軸方向で対向し、上記内向きフランジ34aの内周部に対する段部35の当接によってスライド部材27は抜止めされる。
雄ねじ部材28は、押圧子31と同様に、肌焼鋼(SCM420)等の鋼材を素材としている。この雄ねじ部材28は、ボディ21の内周に設けられた鋸歯状雌ねじ22にねじ係合する鋸歯状雄ねじ36を外周に有し、上記押圧子31と対向する先端面は平坦面とされ、その平坦な先端面に押圧子31の突軸部31aの後端が当接している。
ここで、突軸部31aの後端は凸形球面31bとされ、雄ねじ部材28の平坦な先端面に点接触する状態で当接しており、その当接によってスライド部材27の後端面と雄ねじ部材28の先端面間に軸方向すきまGが形成されている。図2および図3に示すδは、その軸方向すきまGの大きさを示している。
雄ねじ部材28の後端面にはトルク伝達軸38が設けられている。トルク伝達軸38は角軸からなり、その後端面にはレンチ係合孔39が設けられている。
ボディ21のばね収容孔25内にはばね部材としての捩りコイルばね40が組み込まれている。捩りコイルばね40は、一端に角形コイル部41を有し、その角形コイル部41がトルク伝達軸38にスライド自在に嵌合されて相対回転するのが防止されている。また、捩りコイルばね40の他端には角形の折曲げ連結片42が設けられている。
ボディ21の内周下部に形成されたばね収容孔25の下部開口内には、捩りコイルばね40を抜止めするキャップ部材43が組み込まれている。キャップ部材43は底板44の外周に円筒部45を設けた構成とされ、上記円筒部45がばね収容孔25の下部開口の内周に圧入されている。
キャップ部材43の底板44には中心孔46が形成され、その中心孔46の内周対向位置に一対の切り起こし片47が設けられ、その一対の切り起こし片47の外側に捩りコイルばね40の他端に形成され上述の折曲げ連結片42が係合している。
ここで、捩りコイルばね40は、捩り力が付与された状態での組込みとされ、その捩りコイルばね40の復元弾性力によってトルク伝達軸38に、雄ねじ部材28がスライド部材27に向けて移動する方向の回転トルクが負荷されている。
雄ねじ部材28のトルク伝達軸38には筒状の初期セット部材48の先端部が嵌合されている。初期セット部材48の内周は、トルク伝達軸38の外周に適合する角形とされ、そのトルク伝達軸38に対する嵌合によって初期セット部材48はスライド自在とされ、かつ、トルク伝達軸38に対して相対的に回転不能とされている。
初期セット部材48の後端部はキャップ部材43の中心孔46内に挿入され、その中心孔46の内周と初期セット部材48の外周の相互間に、初期セット部材48の先端部が中心孔46に配置される状態で、その初期セット部材48を相対回転不能な状態でスライド自在に支持し、また、初期セット部材48の後端部が中心孔46内に配置される状態で、その初期セット部材48を相対回転可能に支持する案内手段50が設けられている。
案内手段50は、中心孔46の内周対向位置に形成された一対の切り起こし片47の対向面を互いに平行する平坦面51とし、初期セット部材48には、その先端部に二面幅部52を設け、かつ、後端部に円筒部53を形成し、上記二面幅部52を上記中心孔46と同一形状としてその中心孔46内に嵌合可能とし、一方、円筒部53の外径を一対の平坦面51の対向間隔と同径または小径としている。
初期セット部材48は、金属パイプの圧造品からなり、その後端部における内径面には周方向の係合溝49が設けられている。
実施の形態で示すラッシュアジャスタAは上記の構造からなり、そのラッシュアジャスタAのエンジンにおける動弁装置への組み付けに際しては、図10に示すように、スライド部材27がボディ21内に押し込まれた収縮状態とされ、かつ、初期セット部材48の後端部がキャップ部材43の後端面から外部に突出して、先端部がキャップ部材43の中心孔46内に配置される初期セット状態を形成して組み付けるようにする。
ラッシュアジャスタAの上記のような初期セット状態において、初期セット部材48の二面幅部52は切り起こし片47に係合して回り止めされ、その回り止めされた初期セット部材48の角孔に角軸からなる雄ねじ部材28のトルク伝達軸38が嵌合されているため、雄ねじ部材28はボディ21に対して相対的に回転不能とされ、捩りコイルばね40は捩り力が付与された状態に保持される。
上記のようにして初期セット状態とされたラッシュアジャスタAを、図1に示すシリンダブロック1に形成された嵌合孔2に嵌合し、図10に示すように、初期セット部材48の後端がその嵌合孔2の底面で支持される組付け状態で、図1に示すアーム3およびカムシャフト5の組付けを行ない、図示省略したカムホルダをシリンダブロックにボルト止めすると、ラッシュアジャスタAの初期セットが自動的に解除される。
すなわち、カムホルダをシリンダブロック1にボルト止めすることによって、そのカムホルダからカムシャフト5のカム6およびアーム3を介してスライド部材27に押し込み力が負荷され、ボディ21が下降する。そのボディ21の後端面が嵌合孔2の底面で支持される位置まで下降すると、上記底面で支持されていた初期セット部材48がボディ21内に押し込められ、その初期セット部材48の後端の円筒部53がキャップ部材43の中心孔46内に配置されてキャップ部材43に対して回転可能となり、捩りコイルばね40からトルク伝達軸38に負荷される回転トルクにより雄ねじ部材28がスライド部材27に向けて回転移動して、ラッシュアジャスタAの初期セットが解除され、図2に示す使用状態とされる。
図1および図2に示すラッシュアジャスタAの動弁装置への組込み状態において、エンジンの定常運転状態では、カム6のカム片6aがローラ4に接触して、そのローラ4が押し下げられることにより、アーム3がスライド部材27の凸形球面部29を中心にして他端が下方に移動する方向に向けて揺動し、そのアーム3の他端でバルブステム7が押し下げられ、バルブ8が開放する。
このとき、バルブスプリング10が圧縮変形し、そのバルブスプリング10の反力がアーム3を介してスライド部材27に入力される。その入力荷重によりスライド部材27が下降し、そのスライド部材27と雄ねじ部材28の対向部間に形成された軸方向すきまGに相当する量だけ下降すると、そのスライド部材27の後端面が雄ねじ部材28の先端面に当接し、上記入力荷重は雌ねじ22と雄ねじ36のねじ係合部に作用する。
この場合、雌ねじ22と雄ねじ36は、ねじ係合部において滑りが生じることのないねじ諸元に設定されているため、スライド部材27は雄ねじ部材28に当接すると停止する。また、スライド部材27の下降により、押圧子31は、コイルばね32の弾性に抗して大径孔部30a内に押し込められる状態となる。
カム6が回転してカム片6aがローラ4から離れ、カム6のベース円6bがローラ4と接触すると、バルブスプリング10の押圧により、バルブステム7が上方に移動し、バルブ8がバルブシート11に密着してバルブ8は閉鎖する。
このとき、スライド部材27に負荷されていたバルブスプリング10の反力が抜ける状態となるため、コイルばね32の弾性力によりスライド部材27が上昇し、その移動に伴って押圧子31がストッパ33に当接する位置までスライド部材27に対して相対移動し、スライド部材27と雄ねじ部材28の対向部間に軸方向すきまGが形成される。
このように、カム6の一回転毎にスライド部材27は軸方向すきまGに相当する分だけ上下動し、ラッシュアジャスタAはそれ以上に伸縮するようなことはない。実際には、雌ねじ22と雄ねじ36のねじ係合部に入力荷重が作用する瞬間に、ねじ係合部に僅かな相対滑りが生じるが、上記入力荷重が抜ける瞬間に、捩りコイルばね40の弾性により雄ねじ部材28が回転してスライド部材27に向けて移動して元の位置に戻ることになる。
バルブシート11の摩耗など、バルブクリアランスが収縮しつつある時は、ボディ21と雄ねじ部材28のねじ係合部におけるねじ係合面に滑りが生じて、雄ねじ部材28がスライド部材27から離反する方向に移動し、ラッシュアジャスタAが収縮して、バルブクリアランスの変化を吸収する。
一方、バルブステム7のエンドの摩耗などにより、バルブクリアランスが拡大しつつある場合は、捩りコイルばね40の弾性力により雄ねじ部材28が回転しつつスライド部材27に向けて移動すると共にスライド部材27も雄ねじ部材28と同方向に移動し、ラッシュアジャスタAが伸長して、バルブクリアランスの変化を吸収する。
ここで、エンジンが高回転で運転されている場合、カム6の1回転当たり、カム6がベース円6bでアーム3のローラ4と接触している時間は極めて短く、ラッシュアジャスタAがバルブクリアランスの増加を補正するための時間も短い。
実施の形態で示すラッシュアジャスタAでは、押圧子31の突軸部31aの下端面を凸形球面31bとし、その球面31bを雄ねじ部材28の平坦な先端面に点接触させるようにしているため、押圧子31の突軸部31aの下端面に対する雄ねじ部材28の先端面の回転抵抗が小さく、ラッシュアジャスタは伸長方向にスムーズに作動してバルブクリアランスの増加分を確実に補正する。
また、実施の形態で示すラッシュアジャスタAにおいては、スライド部材27と雄ねじ部材28の対向面間に軸方向すきまGを設けているため、シリンダブロック1とバルブ8の線膨張係数の相違による収縮差をその軸方向すきまGで吸収することができる。このため、バルブ8が不完全に閉鎖するようなことはない。
図3では、押圧子31の突軸部31aの下端を凸形球面31bとして雄ねじ部材28の回転抵抗を低減させるようにしたが、回転抵抗を低減させる低減手段はこれに限定されるものではない。
図7乃至図9は、雄ねじ部材28の回転抵抗を低減させる低減手段の他の例を示す。図7においては、押圧子31の突軸部31aの後端部31cを、その後端を小径とする錐台形として、後端の小径端面を前記雄ねじ部材28の先端面に接触させ、雄ねじ部材28の回転抵抗を低減するようにしている。
図8では、低摩擦表面処理によって押圧子31における突軸部31aの凸形球面31bおよび雄ねじ部材28の平坦な先端面のそれぞれに低摩擦皮膜31dを形成して、雄ねじ部材28の回転抵抗を低減し、また、図9では、押圧子31における突軸部31aの平坦な後端面と雄ねじ部材28の平坦な先端面のそれぞれを低摩擦表面処理により低摩擦皮膜31dを形成して、雄ねじ部材28の回転抵抗を低減するようにしている。
ここで、低摩擦皮膜31dは、ダイヤモンドライクカーボン皮膜、セラミックコーティング皮膜、フッ素樹脂コーティング皮膜、二硫化モリブデンのショットブラスト処理による低摩擦皮膜のいずれでもよい。
因みに、摩擦係数μが0.100とされた肌焼鋼(SCM420)を素材とする4枚のディスク状試験片および4枚のリング状試験片を形成し、そのディスク状試験片とリング状試験片を対として、その対の試験片のそれぞれに、ダイヤモンドライクカーボン処理、セラミックコーティング処理、フッ素樹脂コーティング処理および二硫化モリブデンのショットブラスト処理の各種の処理を施し、エンジンオイル中において、同一処理されたディスク状試験片とリング状試験片を一定荷重で押し付けて回転させることにより両試験片を摺動させ、押し付け荷重と、計測した摺動抵抗力とから摩擦係数を算出したところ、下記に示す測定結果をえた。
[測定結果]
ダイヤモンドライクカーボン処理による摩擦係数μは、 μ=0.050
セラミックコーティング処理による摩擦係数μは、 μ=0.055
フッ素樹脂コーティング処理による摩擦係数μは、 μ=0.039
二硫化モリブデンのショットブラスト処理による摩擦係数μは、μ=0.050
[測定結果]
ダイヤモンドライクカーボン処理による摩擦係数μは、 μ=0.050
セラミックコーティング処理による摩擦係数μは、 μ=0.055
フッ素樹脂コーティング処理による摩擦係数μは、 μ=0.039
二硫化モリブデンのショットブラスト処理による摩擦係数μは、μ=0.050
上記の試験結果から、各種の処理による皮膜形成によって、雄ねじ部材28の回転抵抗が低減することが理解することができる。
なお、図8および図9では、押圧子31における突軸部31aと雄ねじ部材28の双方に低摩擦皮膜31dを形成するようにしているが、押圧子31における突軸部31aと雄ねじ部材28のいずれか一方にのみ低摩擦皮膜31dを形成するようにしてもよい。
21 ボディ
22 雌ねじ
26 プランジャ
27 スライド部材
28 雄ねじ部材
30 孔部
30a 大径孔部
31 押圧子
31a 突軸部
31b 凸形球面
31c 後端部
31d 低摩擦皮膜
32 コイルばね(弾性部材)
33 ストッパ
40 捩りコイルばね(ばね部材)
22 雌ねじ
26 プランジャ
27 スライド部材
28 雄ねじ部材
30 孔部
30a 大径孔部
31 押圧子
31a 突軸部
31b 凸形球面
31c 後端部
31d 低摩擦皮膜
32 コイルばね(弾性部材)
33 ストッパ
40 捩りコイルばね(ばね部材)
Claims (7)
- 内周に雌ねじ(22)が形成された筒状のボディ(21)内にプランジャ(26)を組込み、そのプランジャ(26)を前記雌ねじ(22)にねじ係合される雄ねじ部材(28)と、先端部が前記ボディ(21)の先端開口から外部に臨むスライド部材(27)とに分割し、前記ボディ(21)内に組込まれたばね部材(40)により雄ねじ部材(28)にスライド部材(27)に向けて移動する方向の回転トルクを付与し、前記スライド部材(27)の後端面から軸方向に延びる孔部(30)内に、軸方向にスライド可能な押圧子(31)と、その押圧子(31)を前記雄ねじ部材(28)に向けて付勢する弾性部材(32)とを組込み、前記孔部(30)の開口端部内には、前記押圧子(31)の後端部に設けられた小径の突軸部(31a)の端部が前記スライド部材(27)の後端面から突出する状態で押圧子(31)を抜止めするストッパ(33)を設けて、雄ねじ部材(28)とスライド部材(27)の対向部間に前記突軸部(31a)の突出長さに相当する軸方向すきま(G)を形成した動弁装置におけるラッシュアジャスタにおいて、
前記押圧子(31)における突軸部(31a)の後端面(31b)を凸形球面として前記雄ねじ部材(28)の先端面に点接触させ、または、突軸部(31a)の後端部を後端が小径端とされる錐台形として、後端の小径端面を前記雄ねじ部材(28)の先端面に接触させたことを特徴とする動弁装置におけるラッシュアジャスタ。 - 前記押圧子(31)における突軸部(31a)の後端面と前記雄ねじ部材(28)の先端面の少なくとも一方に低摩擦皮膜を設けた請求項1に記載の動弁装置におけるラッシュアジャスタ。
- 内周に雌ねじ(22)が形成された筒状のボディ(21)内にプランジャ(26)を組込み、そのプランジャ(26)を前記雌ねじ(22)にねじ係合される雄ねじ部材(28)と、先端部が前記ボディ(21)の先端開口から外部に臨むスライド部材(27)とに分割し、前記ボディ(21)内に組込まれたばね部材(40)により雄ねじ部材(28)にスライド部材(27)に向けて移動する方向の回転トルクを付与し、前記スライド部材(27)の後端面から軸方向に延びる孔部(30)内に、軸方向にスライド可能な押圧子(31)と、その押圧子(31)を前記雄ねじ部材(28)に向けて付勢する弾性部材(32)とを組込み、前記孔部(30)の開口端部内には、前記押圧子(31)の後端部に設けられた小径の突軸部(31a)の端部が前記スライド部材(27)の後端面から突出する状態で押圧子(31)を抜止めするストッパ(33)を設けて、雄ねじ部材(28)とスライド部材(27)の対向部間に前記突軸部(31a)の突出長さに相当する軸方向すきま(G)を形成した動弁装置におけるラッシュアジャスタにおいて、
前記押圧子(31)における突軸部(31a)の後端面と前記雄ねじ部材(28)の先端面の少なくとも一方に低摩擦皮膜を設けた動弁装置におけるラッシュアジャスタ。 - 前記低摩擦皮膜が、ダイヤモンドライクカーボン皮膜からなる請求項2又は3に記載の動弁装置におけるラッシュアジャスタ。
- 前記低摩擦皮膜が、セラミックコーティング皮膜からなる請求項2又は3に記載の動弁装置におけるラッシュアジャスタ。
- 前記低摩擦皮膜が、フッ素樹脂コーティング皮膜からなる請求項2又は3に記載の動弁装置におけるラッシュアジャスタ。
- 前記低摩擦皮膜が、二硫化モリブデンのショットブラスト処理による低摩擦皮膜からなる請求項2又は3に記載の動弁装置におけるラッシュアジャスタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012255220A JP2014101832A (ja) | 2012-11-21 | 2012-11-21 | 動弁装置におけるラッシュアジャスタ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2012255220A JP2014101832A (ja) | 2012-11-21 | 2012-11-21 | 動弁装置におけるラッシュアジャスタ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2014101832A true JP2014101832A (ja) | 2014-06-05 |
Family
ID=51024544
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2012255220A Pending JP2014101832A (ja) | 2012-11-21 | 2012-11-21 | 動弁装置におけるラッシュアジャスタ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2014101832A (ja) |
-
2012
- 2012-11-21 JP JP2012255220A patent/JP2014101832A/ja active Pending
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