JP2014101579A - Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法 - Google Patents

Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法に用いるCu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 Cu,In,GaおよびSeを不活性ガス中で加熱、溶解してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程と、四元系合金溶湯を鋳造してインゴットを作製する工程と、インゴットを粉砕して四元系合金粉末を作製する工程とを有し、四元系合金溶湯を作製する工程で、InとGaとが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とが共存する第1の溶解工程S1と、該第1の溶解工程後に四元系合金の融点以上の温度に加熱して四元系合金溶湯を作製する第2の溶解工程S2と、を有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池の光吸収層を形成するためのCu−In−Ga−Se四元系合金膜を形成するために用いるCu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法に関するものである。
近年、化合物半導体による薄膜太陽電池が実用に供せられるようになり、この化合物半導体による薄膜太陽電池は、ソーダライムガラス基板の上にプラス電極となるMo電極層を形成し、このMo電極層の上にCu−In−Ga−Se四元系合金膜からなる光吸収層が形成され、このCu−In−Ga−Se四元系合金膜からなるこの光吸収層の上にZnS、CdSなどからなるバッファ層が形成され、このバッファ層の上にマイナス電極となる透明電極層が形成された基本構造を有している。
上記Cu−In−Ga−Se四元系合金膜からなる光吸収層の形成方法として、蒸着法により成膜する方法が知られており、この方法により得られたCu−In−Ga−Se四元系合金膜からなる光吸収層は高いエネルギー変換効率が得られるものの、基板の大型化に伴い蒸着法による成膜においては、膜厚の面内分布の均一性が未だ十分とはいえない。そのために、スパッタ法によってCu−In−Ga−Se四元系合金膜からなる光吸収層を形成する方法が提案されている。
このCu−In−Ga−Se四元系合金膜をスパッタ法により成膜する方法として、まず、Inターゲットを使用してスパッタによりIn膜を成膜し、このIn膜の上にCu−Ga二元系合金ターゲットを使用してスパッタすることによりCu−Ga二元系合金膜を成膜し、得られたIn膜およびCu−Ga二元系合金膜からなる積層膜をSe雰囲気中で熱処理してCu−In−Ga−Se四元系合金膜を形成する方法(いわゆる、セレン化法)が提案されている(特許文献1参照)。
特許第3249408号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記従来のCu−In−Ga−Se四元系合金膜の成膜方法は、InターゲットおよびCu−Ga二元合金ターゲットの2枚のターゲットを使用し、さらに、Se雰囲気中で熱処理するための熱処理炉および積層膜を熱処理炉に搬送する工程を必要とするなど多くの装置および工程を必要とすることから、コストの削減は難しかった。そこで、Cu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを作製し、このターゲットを用いて1回のスパッタリングによりCu−In−Ga−Se四元系合金膜の成膜しようとする試みがなされている。しかしながら、金属Cu、金属In、金属Ga、金属Seなどの原料をるつぼに装入し、通常の方法で溶解してCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを製造しようとすると、InとSeとが直接反応して爆発を起こすことから通常の溶解法でCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを製造することはできない。一方、Cu粉末、In粉末、Ga粉末、Se粉末などを原料粉末として配合し混合してプレス成形することにより圧粉体を作製し、この圧粉体を焼結してCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを製造しようとすると、製造時に各々の原料粉末の融点の違いから焼結は難しく、また得られたターゲットの組成偏析が大きくなって、均一な組成分布を有するCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットが得られない。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法に用いるCu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、組成偏析の少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを製造するべく研究を行った。その結果、原料の加熱、溶解を所定の温度範囲で段階的に行うことで、InとSeとの直接反応を抑えると共に組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットが得られることを突き止めた。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法は、Cu,In,GaおよびSeを不活性ガス中で加熱、溶解してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程と、前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を鋳型に鋳造してインゴットを作製する工程と、前記インゴットを粉砕して前記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を作製する工程とを有し、前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程で、InとGaとが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とを共存させる第1の溶解工程と、該第1の溶解工程後に前記Cu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱して前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する第2の溶解工程とを有していることを特徴とする。
また、第一の溶解工程は、溶解するに際し、Cu、In、GaおよびSeの全量を坩堝に投入して、その後加熱してもよいし、In、Ga、Seの全量、あるいは更にCuの一部を添加して加熱してもよい。ここで不足したCuは、第一の溶解工程終了から第二の溶解工程終了までの間に添加すればよい。
このCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法では、Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する前に、まずIn,GaおよびSeをIn、Gaが全て溶解する温度であってSeが融解する前の温度(例えば150〜220℃以下)に加熱して少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とを共存させる。なお、その後の加熱過程にいて、InとGaとからなる溶湯にSeが溶解し、InとSeとが直接反応することがないので、InとSeとの急激な反応にともなう爆発を防ぐことができる。この後に、必要に応じてCuを添加し、溶湯をCu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製するので、各原料が完全に溶解したCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯が得られる。したがって、この作製したCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を用いれば、実質的にCu−In−Ga−Se四元系合金の単相からなる組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを作製することができる。
また、Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法は、前記第1の溶解工程と前記第2の溶解工程との間に、溶湯をSeの融点(221℃)以上の温度であってSeの沸点(684.9℃)以下の温度に加熱して保持し液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製する工程を有していることを特徴とする。
すなわち、このCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法では、第1の溶解工程と第2の溶解工程との間に、Seの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して保持し液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製するので、第二の溶解工程への加熱時にSeの蒸発や突沸を防ぐことができ4元素を溶解させることができる。
本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末は、上記本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法により作製されたことを特徴する。
すなわち、このCu−In−Ga−Se四元系合金粉末では、上記本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法により作製されているので、このCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を用いれば、従来の製法では得ることのできなかった実質的にカルコパイライト型CuInSe相とCuGaSe相との固溶体合金相からなるターゲットを作製することができる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法によれば、Cu,In,GaおよびSeをInとGaとが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して、少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とを共存させ、この後にCu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製するので、InとSeとが直接反応することがなく、急激な反応にともなう爆発を防ぐと共に、この作製したCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を用いれば、実質的に固溶体合金相からなる組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを作製することができる。
したがって、作製された本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を使用したCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを用いてスパッタ法により光吸収層を成膜することで、スパッタリングにより均一な組成分布を有した薄膜太陽電池の光吸収層を提供することができる。
本発明に係るCu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法の一実施形態において、溶解工程における時間・温度条件を示すグラフである。 本発明に係るCu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法の実施例において、焼結体による粉砕粉の粉末X線回折(XRD)結果を示すグラフである。 本発明に係る実施例において、焼結体による粉砕粉とスパッタ膜との粉末X線回折(XRD)結果を比較して示すグラフである。 本発明に係る実施例において、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による組成像(COMP像)(a)、Cuの元素マッピング像(b)、およびGaの元素マッピング像(c)を示す写真である。 本発明に係る実施例において、電子線マイクロアナライザ(EPMA)によるInの元素マッピング像(a)、およびSeの元素マッピング像(b)を示すグラフである。
以下、本発明に係るCu−In−Ga−Se四元系合金粉末及びその製造方法の一実施形態を説明する。
本実施形態のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法は、Cu,In,GaおよびSeを不活性ガス中で加熱、溶解してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程と、前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を鋳型に鋳造してインゴットを作製する工程と、前記インゴットを粉砕して前記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を作製する工程とを有し、前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程で、InとGaとが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とを共存させる第1の溶解工程と、該第1の溶解工程後に前記Cu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱して前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する第2の溶解工程とを有している。
また、本実施形態のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法は、前記第1の溶解工程と前記第2の溶解工程との間に、溶湯をSeの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して保持し液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製する工程を有している。
上記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法で作製されたCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を用いたCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットは、粉末X線回折の定性分析において、カルコパイライト型CuInSe相とCuGaSe相との固溶体合金相からなるものである。さらにEPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いた組成分析において、主相である上記固溶体合金相中に、Cu−Ga二元系合金およびCu−In−Ga三元系合金の少なくとも一方の第二相を含有する組織であってもよい。このようにして本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットは、実質的に固溶体合金相からなる、組織偏析の極めて少ないターゲットとして製造することができる。
上記XRDの分析条件は、以下のように設定している。
ホットプレスにて得られた焼結体を、ハンマーで1mm程度まで粗粉砕した後、さらにメノウ製乳鉢で粉砕し、目の開き120μmの篩に通過する粉末を回収しXRD分析の分析試料とした。使用したX線回折装置は理学(株)製 RINT UltimaIII。測定条件は:X線CuKa;管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲10〜90°、サンプリング幅0.02°、Scan Speed 2.である。
また、上記EPMAの分析条件は、以下のように設定している。
EPMA用サンプルはホットプレス体から1mm程度の破片を採取し、精密断面試料作製装置(CP)によって断面を加工したものを用いた。EPMAによる観察では該加工面を用いた。EPMA観察時の加速電圧は15kVであった。
このCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットにおける各元素の含有量は、例えば以下の組成範囲に設定される。以下は元素原子数比(atomic比)。
Cu:0.95〜1.1
In:0.5〜0.9
Ga:0.1〜0.5
Se:1.8〜2
このCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法は、上記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスする工程を有している。
上記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程では、原料のCu,In,GaおよびSeを所定割合で石英ルツボに装入して、加熱を行う。
この溶解工程は、図1に示すように、Cu,In,GaおよびSeをIn、Gaが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して固相のCu、Seと液相のInとGaとからなる溶湯を作製する第1の溶解工程S1と、該第1の溶解工程S1後に溶湯を上記Cu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱して上記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する第2の溶解工程S2と、を有している。
さらに、上記第1の溶解工程S1と第2の溶解工程S2との間に、溶湯をSeの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製する中間溶解工程Smを有している。
例えば、まず、150〜200℃の温度まで1時間をかけて加熱し、第1の溶解工程S1では、150〜200℃の温度に5時間保持する。次に、500〜650℃の温度まで1時間をかけて加熱し、中間溶解工程Smでは、500〜650℃の温度に1時間保持する。さらに、1000〜1100℃の温度まで2時間をかけてゆっくり加熱し、第2の溶解工程S2では、1000〜1100℃の温度に1時間保持する。なお、Cu−In−Ga−Se四元系合金の融点は980℃前後であるので、1000℃以上であれば十分に全量溶解させることができる。また、第2の溶解工程S2の温度上限は、石英ルツボの軟化点よりも低く、1100℃に設定している。
また、上記粉砕工程では、得られたCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を鋳型に鋳造して作製したインゴットを、乾式粉砕機にて例えば100メッシュアンダーまで粉砕してCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を作製する。
さらに、上記ホットプレスの工程では、上記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を、例えばAr雰囲気中で、圧力:60MPa、温度:200℃、1.5時間保持の条件でホットプレスする。これにより、例えばCu:26原子%、Se:48原子%、In:18原子%、Ga:8原子%からなる成分組成を有する組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットが作製される。
このように本実施形態のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法では、第2の溶解工程S2でCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する前に、まず第1の溶解工程S1において、Cu,In,GaおよびSeをIn、Gaが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して固相のCuおよびSeと液相のInとGaとからなる溶湯を作製するので、その後の加熱過程において、InとGaとからなる溶湯にSeが溶解し、InとSeとが直接反応することがないので、急激な反応にともなう爆発を防ぐことができる。
そして、この後に、第2の溶解工程S2において、溶湯をCu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製するので、各原料が完全に溶解状態で混合されたCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯が得られる。したがって、この作製されたCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を使用すれば、実質的にCu−In−Ga−Se四元系合金の固溶体合金相からなる組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを作製することができる。
また、第1の溶解工程S1と第2の溶解工程S2との間に、中間溶解工程Smにおいて、Seの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製するので、加熱時にSeの蒸発や突沸を防ぐことができ4元素を溶解させることができる。
また、このように本実施形態のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を使用して作製されたCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットは、従来の製法では得ることのできなかった実質的にCu−In−Ga−Se四元系合金の固溶体合金相からなるターゲットからなるので、スパッタリングにより均一な組成分布を有したCu−In−Ga−Se四元系合金膜を成膜することができる。
さらに、このCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットは、電子線マイクロアナライザを用いた組成分布観察において、主相である固溶体合金相に、Cu−Ga二元系合金およびCu−In−Ga三元系合金の少なくとも一方の第二相を含有する組織であってもよい。
なお、このCu−Ga二元系合金およびCu−In−Ga三元系合金の少なくとも一方の第二相の面積率は、次のように測定している。すなわち、
1)フィールドエミッションのEPMAにより500倍のCOMP像(60μm×80μm)10枚を撮影する。
2)市販の画像解析ソフトにより、撮影した画像をモノクロ画像に変換するとともに、単一しきい値を使用して二値化する。
これにより、Seが含まれないCu−Ga合金またはCu−Ga−In合金含有量が多い領域ほど、黒く表示されることとなる。
なお、画像解析ソフトとしては、例えば、WinRoof Ver5.6.2(三谷商事社製)などが利用できる。また、二値化とは、画像の各画素の輝度(明るさ)に対してある“しきい値”を設け、しきい値以下ならば“0”、しきい値より大きければ“1”として、領域を区別化することである。
3)この画像すべてを選択しない最大のしきい値を100%としたとき、32%のしきい値を使用し黒い側の領域を選択する。
そして、この選択した領域を4回収縮し、3回膨張させたときの領域をCu−GaまたはCu−In−Ga相の領域とし、この領域の面積率を計算する。
収縮および膨張の倍率としては、例えば、2.3%である。
上記本実施形態に基づいて作製した実施例のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を使用し、実際に作製したCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットについて、XRDによる評価を行った結果を図2および図3に示すと共に、EPMAによる評価を行った結果を図4および図5に示す。
なお、XRDについては、粉末X線回折法を用いた定性分析において焼結体を粉砕した粉末と作製したターゲットを用いて成膜したスパッタ膜とについて分析した。また、上記EPMAの画像は、いずれも元画像がカラー像であるが、グレースケールによる白黒画像に変換して記載しており、図4(b)および(c)、図5(a)および(b)においては、明度が高い程、含有量が高い傾向にある。
本実施例の製造は、以下の条件で行った。
Cu, In, Ga, Seそれぞれ純度99.99%以上のバルク状原料を2mm角程度の粒状に切断し用意する。以上の各原料Cu 195g、In 248g、Ga 65g、Se 485gを全量石英製坩堝に入れ、Ar雰囲気中で、下記の条件にて溶解した。
Step1 室温→195℃ 昇温スピード3℃/min
Step2 195℃ 4時間キープ
Step3 195℃→650℃ 昇温スピード3℃/min
Step4 650℃ 1時間キープ
Step5 650℃→1050℃ 昇温スピード10℃/min
Step6 1050℃ 1時間キープ
Step7 黒鉛製鋳型に鋳込む
作製されたインゴットは、乾式粉砕機(中央化工機商事製 ディスククラッシャ)にて100メッシュアンダーまで粉砕して、その後、目の開き100メッシュの篩で篩い、Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を作製する。
さらに、上記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を、黒鉛のモールドに充填し、Ar雰囲気中で、圧力:60MPa、温度:700℃、1.5時間保持の条件でホットプレスする。これにより、組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットが作製される。
上記焼結したターゲットの一部を粉砕し、120μm以下に分級し得られた合金粉用いてX線回折を行った。また、一部の焼結体を用いてEPMAによる組成分布観察を行った。
上記XRDの結果から、粉砕粉、ホットプレス体およびスパッタ膜は、いずれもX線回折パターンにCu(In0.7Ga0.3)Se四元系合金の結晶ピークだけが見られ、XRD上、Cu−In−Ga−Se四元系合金の固溶体合金相の単相からなることがわかる。すなわち、従来の製法では得ることができなかった実質的にCu−In−Ga−Se四元系合金の固溶体合金相の単相からなるターゲットが得られている。
また、EPMAの結果から、主相であるCu−In−Ga−Se四元系合金の単相中に、Cu−Ga二元系合金またはCu−In−Ga三元系合金の第二相が微量に含有されていることがわかる。すなわち、主相中にSeを含まない合金の第二相が僅かに含まれている。
このCu−Ga二元系合金またはCu−In−Ga三元系合金の第二相は、面積率で、1%であった。
次に、本実施例のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末で作製したCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを用いて実際にスパッタリングを行ってCu−In−Ga−Se四元系合金膜を成膜した結果を示す。
この際のスパッタリングは、以下の条件で行った。
Cu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットは直径:76mm、厚さ:3mmに機械加工され、Inを用いて無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングされる。スパッタは高周波電源(RF電源)を使用し、到達真空度が5×10−4Pa以下、スパッタ時の投入電力は100W、スパッタガスはArのみで、Ar全圧は0.67Paとした。基板はMo膜付き青板ガラスでMo膜はスパッタによって成膜され、膜厚は800nmである。成膜時基板温度500℃、成膜時間は20min、得られた膜の厚みは200nmであった。
得られた膜をX線回折によって分析し、Cu(In0.7Ga0.3)Se単相であることを確認した。
本実施例のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末で作製したCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットにより、Cu−In−Ga−Se四元系合金の単相からなる良好なCu−In−Ga−Se四元系合金膜が得られた。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
S1…第1の溶解工程、S2…第2の溶解工程、Sm…中間溶解工程

Claims (3)

  1. Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法であって、
    Cu,In,GaおよびSeを不活性ガス中で加熱、溶解してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程と、
    前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を鋳型に鋳造してインゴットを作製する工程と、
    前記インゴットを粉砕して前記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を作製する工程とを有し、
    前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程で、InとGaとが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とを共存させる第1の溶解工程と、
    該第1の溶解工程後に前記Cu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱して前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する第2の溶解工程とを有していることを特徴とするCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法。
  2. 請求項1に記載のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法において、
    前記第1の溶解工程と前記第2の溶解工程との間に、溶湯をSeの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して保持し液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製する工程を有していることを特徴とするCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のCu−In−Ga−Se四元系合金粉末の製造方法により作製されたことを特徴とするCu−In−Ga−Se四元系合金粉末。
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