JP5418832B2 - Cu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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Description
上記従来のCu−In−Ga−Se四元系合金膜の成膜方法は、InターゲットおよびCu−Ga二元合金ターゲットの2枚のターゲットを使用し、さらに、Se雰囲気中で熱処理するための熱処理炉および積層膜を熱処理炉に搬送する工程を必要とするなど多くの装置および工程を必要とすることから、コストの削減は難しかった。そこで、Cu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを作製し、このターゲットを用いて1回のスパッタリングによりCu−In−Ga−Se四元系合金膜の成膜しようとする試みがなされている。しかしながら、金属Cu、金属In、金属Ga、金属Seなどの原料をるつぼに装入し、通常の方法で溶解してCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを製造しようとすると、InとSeとが直接反応して爆発を起こすことから通常の溶解法でCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを製造することはできない。一方、Cu粉末、In粉末、Ga粉末、Se粉末などを原料粉末として配合し混合してプレス成形することにより圧粉体を作製し、この圧粉体を焼結してCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットを製造しようとすると、製造時に各々の原料粉末の融点の違いから焼結は難しく、また得られたターゲットの組成偏析が大きくなって、均一な組成分布を有するCu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットが得られない。
また、第一の溶解工程は、溶解するに際し、Cu、In、GaおよびSeの全量を坩堝に投入して、その後加熱してもよいし、In、Ga、Seの全量、あるいは更にCuの一部を添加して加熱してもよい。ここで不足したCuは、第一の溶解工程終了から第二の溶解工程終了までの間に添加すればよい。
すなわち、このCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法では、第1の溶解工程と第2の溶解工程との間に、Seの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して保持し液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製するので、第二の溶解工程への加熱時にSeの蒸発や突沸を防ぐことができ4元素を溶解させることができる。
すなわち、このCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットでは、上記本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法により作製されているので、従来の製法では得ることのできなかった実質的にカルコパイライト型CuInSe2相とCuGaSe2相との固溶体合金相からなるターゲットとなる。
すなわち、このCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットでは、粉末X線回折法による定性分析において、カルコパイライト型CuInSe2相とCuGaSe2相との固溶体合金相からなるので、スパッタリングにより均一な組成分布を有したCu−In−Ga−Se四元系カルコパイライト型合金膜を成膜することができる。
すなわち、本発明に係るCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法によれば、Cu,In,GaおよびSeをInとGaとが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して、少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とを共存させ、この後にCu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製するので、InとSeとが直接反応することがなく、急激な反応にともなう爆発を防ぐと共に、実質的に固溶体合金相からなる組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを作製することができる。
したがって、上記製法で作製された本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットを用いてスパッタ法により光吸収層を成膜することで、スパッタリングにより均一な組成分布を有した薄膜太陽電池の光吸収層を提供することができる。
ホットプレスにて得られた焼結体を、ハンマーで1mm程度まで粗粉砕した後、さらにメノウ製乳鉢で粉砕し、目の開き120μmの篩に通過する粉末を回収しXRD分析の分析試料とした。使用したX線回折装置は理学(株)製 RINT UltimaIII。測定条件は:X線CuKa;管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲10〜90°、サンプリング幅0.02°、Scan Speed 2.である。
また、上記EPMAの分析条件は、以下のように設定している。
EPMA用サンプルはホットプレス体から1mm程度の破片を採取し、精密断面試料作製装置(CP)によって断面を加工したものを用いた。EPMAによる観察では該加工面を用いた。EPMA観察時の加速電圧は15kVであった。
Cu:0.95〜1.1
In:0.5〜0.9
Ga:0.1〜0.5
Se:1.8〜2
この溶解工程は、図1に示すように、Cu,In,GaおよびSeをIn、Gaが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して固相のCu、Seと液相のInとGaとからなる溶湯を作製する第1の溶解工程S1と、該第1の溶解工程S1後に溶湯を上記Cu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱して上記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する第2の溶解工程S2と、を有している。
さらに、上記第1の溶解工程S1と第2の溶解工程S2との間に、溶湯をSeの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製する中間溶解工程Smを有している。
さらに、上記ホットプレスの工程では、上記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を、例えばAr雰囲気中で、圧力:60MPa、温度:200℃、1.5時間保持の条件でホットプレスする。これにより、例えばCu:26原子%、Se:48原子%、In:18原子%、Ga:8原子%からなる成分組成を有する組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットが作製される。
1)フィールドエミッションのEPMAにより500倍のCOMP像(60μm×80μm)10枚を撮影する。
2)市販の画像解析ソフトにより、撮影した画像をモノクロ画像に変換するとともに、単一しきい値を使用して二値化する。
これにより、Seが含まれないCu−Ga合金またはCu−Ga−In合金含有量が多い領域ほど、黒く表示されることとなる。
なお、画像解析ソフトとしては、例えば、WinRoof Ver5.6.2(三谷商事社製)などが利用できる。また、二値化とは、画像の各画素の輝度(明るさ)に対してある“しきい値”を設け、しきい値以下ならば“0”、しきい値より大きければ“1”として、領域を区別化することである。
3)この画像すべてを選択しない最大のしきい値を100%としたとき、32%のしきい値を使用し黒い側の領域を選択する。
そして、この選択した領域を4回収縮し、3回膨張させたときの領域をCu−GaまたはCu−In−Ga相の領域とし、この領域の面積率を計算する。
収縮および膨張の倍率としては、例えば、2.3%である。
Cu, In, Ga, Seそれぞれ純度99.99%以上のバルク状原料を2mm角程度の粒状に切断し用意する。以上の各原料Cu 195g、In 248g、Ga 65g、Se 485gを全量石英製坩堝に入れ、Ar雰囲気中で、下記の条件にて溶解した。
Step1 室温→195℃ 昇温スピード3℃/min
Step2 195℃ 4時間キープ
Step3 195℃→650℃ 昇温スピード3℃/min
Step4 650℃ 1時間キープ
Step5 650℃→1050℃ 昇温スピード10℃/min
Step6 1050℃ 1時間キープ
Step7 黒鉛製鋳型に鋳込む
作製されたインゴットは、乾式粉砕機(中央化工機商事製 ディスククラッシャ)にて100メッシュアンダーまで粉砕して、その後、目の開き100メッシュの篩で篩い、Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を作製する。
さらに、上記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を、黒鉛のモールドに充填し、Ar雰囲気中で、圧力:60MPa、温度:700℃、1.5時間保持の条件でホットプレスする。これにより、組成偏析の極めて少ないCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットが作製される。
上記焼結したターゲットの一部を粉砕し、120μm以下に分級し得られた合金粉用いてX線回折を行った。また、一部の焼結体を用いてEPMAによる組成分布観察を行った。
このCu−Ga二元系合金またはCu−In−Ga三元系合金の第二相は、面積率で、1%であった。
この際のスパッタリングは、以下の条件で行った。
Cu−In−Ga−Se四元系合金ターゲットは直径:76mm、厚さ:3mmに機械加工され、Inを用いて無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングされる。スパッタは高周波電源(RF電源)を使用し、到達真空度が5×10−4Pa以下、スパッタ時の投入電力は100W、スパッタガスはArのみで、Ar全圧は0.67Paとした。基板はMo膜付き青板ガラスでMo膜はスパッタによって成膜され、膜厚は800nmである。成膜時基板温度500℃、成膜時間は20min、得られた膜の厚みは200nmであった。
得られた膜をX線回折によって分析し、Cu(In0.7Ga0.3)Se2単相であることを確認した。
本発明のCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットにより、Cu−In−Ga−Se四元系合金の単相からなる良好なCu−In−Ga−Se四元系合金膜が得られた。
Claims (2)
- Cu,In,GaおよびSe、を不活性ガス中で加熱、溶解してCu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程と、
前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を鋳型に鋳造してインゴットを作製する工程と、
前記インゴットを粉砕してCu−In−Ga−Se四元系合金粉末を作製する工程と、
前記Cu−In−Ga−Se四元系合金粉末を真空または不活性ガス雰囲気中でホットプレスする工程と、を有し、
前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する工程で、InとGaとが全て溶解する温度であってSeの融点未満の温度に加熱して少なくとも固相のSeと、液相のInとGaとからなる溶湯とを共存させる第1の溶解工程と、
該第1の溶解工程後に前記Cu−In−Ga−Se四元系合金の融点以上の温度に加熱して前記Cu−In−Ga−Se四元系合金溶湯を作製する第2の溶解工程と、を有していることを特徴とするCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法。 - 請求項1に記載のCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法において、
前記第1の溶解工程と前記第2の溶解工程との間に、溶湯をSeの融点以上の温度であってSeの沸点以下の温度に加熱して保持し液相のSe,In,Gaからなる溶湯を作製する工程を有していることを特徴とするCu−In−Ga−Se四元系合金スパッタリングターゲットの製造方法。
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