JP2014101577A - 希土類元素の回収方法及び希土類元素の回収装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】作業工程を簡素化しつつも、回収される希土類元素の品質を向上させる希土類元素の回収方法及び希土類元素の回収装置を提供する。
【解決手段】鉄族元素及び希土類元素を含有する資源から希土類元素を回収する希土類元素の回収方法において、前記資源から鉄族元素及び希土類元素を酸溶液であるアミド溶液へと溶解させる溶解工程と、前記溶解工程後、前記アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物を前記アミド溶液から分離する鉄族化合物分離工程と、前記鉄族化合物分離工程後、前記アミド溶液を濃縮させることにより希土類金属塩を生成する塩生成工程と、前記希土類金属塩から希土類元素を電解析出させる電解析出工程と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類元素の回収方法及び希土類元素の回収装置に関し、詳しくは、鉄族元素を選択的に分離して希土類元素を回収する希土類元素の回収方法及び希土類元素の回収装置に関する。
レアメタルは資源的価値の高い白金族レアメタル6種、国家備蓄レアメタル9種、偏在性の高いレアアース(以降、「希土類元素」と示す)17種を総称する。レアメタルの中でも希土類元素はランタノイド系列の周期内で化学的性質が類似しており、電気化学的に極めて卑な元素群であることから、相互分離や金属精錬に困難を伴ってきた。近年、環境省では循環型社会形成推進研究事業として、2013年4月1日から施行された小型家電リサイクル法に基づき、使用済小型電子機器類からの希少金属の再資源化及び廃棄物処理技術の開発が重点化されてきている。
また、希土類元素は自動車排ガス触媒、高性能研磨剤、強磁性磁石部材としての需要量が高く、製造工程内の二次廃棄物を産出させることなく、有用希少金属を再資源化する技術開発が重要視されている。このような時代の趨勢から、強磁性磁石部材としての再資源化には、希土類元素回収の対象媒体として、使用済小型電子機器類を利用する方法が有効である。この希土類元素を巡る需給バランスの安定化は、国家規模で重要な課題となっており、可能な限り、自国内で希土類元素を確保する手法が望まれている。
使用済小型電子機器類における有効部材の一つが、Hard Disk Drive(HDD)の磁気ヘッドの駆動に用いられているVoice Coil Motor(VCM)である。このVCMは、扁平磁石とバックヨーク及びヨーク間を支える継鉄(ヨーク)とネオジム−鉄−ボロン(Nd−Fe−B)系希土類磁石から構成されている。VCMに使用されている希土類磁石重量は、HDDの厚みに応じてある程度の幅を有する。ただ、2.5inch−HDD用のVCMで1〜2g×2枚、3.5inch−HDD用のVCMで2〜10g×2枚に相当する重量が、標準的な希土類磁石重量である。また、VCM部材中の希土類含有量は生産された年代に大きく依存するものの、ネオジム含有量は重量平均で約26.0%、ジスプロシウム(Dy)含有量は約1.6%に相当する。このような希土類磁石部材中から希土類元素を回収する手法に関しては、環境負荷の低い回収方法が望まれている。
なお、「希土類磁石」とは、希土類金属と3d遷移金属である鉄(Fe)やコバルト(Co)との金属間化合物を主成分とする磁石のことである。現在、我が国で実用化されている希土類磁石の組成としては、
1.NdFe14Bを代表とする2−14−1型ネオジム−鉄−ボロン系
2.SmCoを代表とする1−5型サマリウム−コバルト系
3.SmFe17を代表とするサマリウム−鉄−窒化化合物系
4.PrCoを代表とする1−5型プラセオジム−コバルト系
という4種類の磁石がある。
この中でネオジム−鉄−ボロン系磁石は最も強磁性であり、その保磁力増大の添加元素として重希土類元素(例えば、ジスプロシウム(Dy))が利用されている。
一方、鉄族元素は、希土類磁石の被覆材に含まれていることが多い。ここで言う「鉄族元素」とは、周期表上で第4周期の第8、9、10族の元素、すなわち、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の三元素の総称である。この鉄族元素は全て3d遷移金属であり、常温、常圧で強磁性を示すことを特長とする。
上記のような希土類磁石から希土類元素を金属もしくはイオン種の形態で回収する技術として、いくつかの手法が知られている。以下、その手法を列挙する。
まず、希土類元素を金属の形態で回収する溶融塩電解法が挙げられる(特許文献1参照)。
溶融塩電解法とは、アルカリ金属ハロゲン化物等の無機塩類を高温の溶融状態にした上で、希土類元素を含む化合物を電解析出させる方法である。電解浴温度が高いため、希土類酸化物を電解浴中に直接溶解できる利点もある。特許文献1に記載の技術においては、溶融塩電解に際し、希土類金属合金から成るバイポーラー電極型隔膜によって陽極と陰極の間を分画し、陽極室と陰極室を形成している。この陽極室に希土類金属イオンを供給しながら、陽極と陰極の間に電圧を印加して、電解により希土類金属を回収している。
次に、イオン液体と呼ばれる難燃性・難揮発性の液体に対し希土類元素を含有する資源を溶解させ、必要に応じて電気泳動を行って希土類元素を濃縮させた上で、このイオン液体に対して鉄族元素を電解除去した後、希土類元素を電解析出させる方法が挙げられる(特許文献2参照)。
なお、「イオン液体」とは、カチオン種とアニオン種の組合せからなる100℃以下の融点を有するイオン性化合物の総称であり、100℃以下の温度で液相を形成する融解塩のことを指す。イオン液体の蒸気圧は非常に低く、イオン液体は実質上、有害な蒸気を発生させない。その上、イオン液体はアニオン種を適切に選定することにより疎水性を発現し、かつイオン液体自体の高極性により無極性物質の溶解性を高める。
最後に、ジアミド系抽出剤と疎水性イオン液体とを希土類金属イオンの効率的な抽出として使用する方法もある(特許文献3参照)。
この方法は、希土類元素を含む水溶液からなる水相と疎水性イオン液体である有機相を二相分離させた状態で、分配平衡により希土類元素をイオン種として有機相へ抽出する方法である。
特開2009−287119号公報 特開2012−87329号公報 特開2007−327085号公報
希土類磁石から希土類元素を回収する技術は日々進化を遂げている一方、現在であっても種々の改善すべき点が存在する。
例えば、特許文献1などの溶融塩電解法では、希土類磁石からネオジムを効率的に電解回収するために、実用的観点ではフッ化ネオジム−アルカリ金属フッ化物をベースとする電解浴を使用することが適当である。この場合、フッ化ネオジムは高融点物質であり、電解浴温度が1000℃以上と極めて高温に設定する必要がある。そのため、高温での腐食反応を抑制できる電解装置など安全面に各段の配慮を施した装置設計が必要となる。
また、高温腐食に耐えるセラミックス系材料は一般に高価であり、設備費を要すること、及び熱エネルギーが多大になることも改善点として挙げられる。
確かに、特許文献1に記載の技術は、希土類合金を電解析出させる手段としては優れた方法である。しかしながら、浴温度は500〜900℃、電解電圧は最大20Vを必要としており、熱エネルギー及び電解エネルギーが大きい点を考慮する必要がある。
次に、特許文献2に記載の技術においては、イオン液体(例えば水分量50ppm以下)を活用した技術が記載されている。ただ、VCMの前処理工程で適切な脱鉄処理を実施せず、直接溶解させた場合、イオン液体中に、遷移金属種(特に鉄族元素)が希土類元素とともに混在する。この場合、最終的に希土類金属を電解析出させる際、電気化学的に貴な鉄族元素も必然的に還元されるため、希土類電析物中に鉄族元素は共析し、高品質の希土類金属を回収することが困難となる。
鉄族元素を事前に電解回収することも可能であるが、希土類磁石中の鉄の含有量が大きいため、電解析出工程のエネルギー投与量が多大になる。また、鉄族金属の電解回収から希土類金属の電解回収を連続させる連携工程に複雑化を招来してしまう。その結果、作業工程における経済性に関し、改善すべき大きな点を有している。
また、特許文献2に記載の技術では、イオン液体中の希土類濃度に応じて希土類元素を濃縮させる必要性を生じ、電気泳動処理を行わなければならない。電気泳動処理は30〜50V程度の印加電圧を必要とする。そのため、泳動処理に必要となるエネルギーが膨大となり、作業工程における経済性に関し、改善すべき大きな点を有している。
最後に、特許文献3に記載の技術であって、水溶液とイオン液体の分配平衡を利用した溶媒抽出法の場合、無水ジグリコール酸を抽出剤とすることにより、希土類元素を効率的に抽出できる。また、溶媒抽出装置を多段構成にした場合、希土類種を濃縮させることも可能となる。しかしながら、溶媒抽出法では希土類種はいずれの場合もイオン種の形態であり、安定した希土類固形物に転換するためには、蓚酸塩もしくは炭酸塩などに沈殿形成させる必要がある。更には、希土類種を蓚酸塩もしくは炭酸塩として回収した場合でも、金属の形態に変えるためには、希土類塩を電解浴にして電解させるか、もしくは熱還元により活性金属と反応させる必要がある。すなわち、溶媒抽出法を単独で適用した場合では、金属の形態として希土類種を回収できない点が最大の課題である。
以上、希土類磁石から希土類元素を回収する技術は、多くの技術者たちの手により日々進化を遂げている一方、上記の改善点もまた明らかになりつつある。上記の改善点を克服できれば、自国内で希土類元素を確保するための確固たる手法を確立することにつながり、産業の発達にも大きく寄与することになる。
そこで本発明は、作業工程を簡素化しつつも、回収される希土類元素の品質を向上させる希土類元素の回収方法及び希土類元素の回収装置を提供することを、主たる目的とする。
上記の課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を行った。この鋭意検討に際し、本発明者は、希土類磁石から希土類元素を回収する手法としては以下の手法に着目した。すなわち、電解析出による希土類元素の回収段階の電解浴に含まれる元素において、希土類元素以外の元素としては、希土類元素よりも電気化学的に卑な元素のみが含まれるようにするという手法に着目した。つまり、希土類元素を最も電解析出しやすくする状況を作り出す手法に着目した。また、この電解浴を構成する電解析出媒体(以降、単に「媒体」とも言う。)としては、「イオン液体を構成するアニオン種から成る希土類金属塩の融解物」もしくは「希土類金属塩を溶解できるイオン液体」が有効であると判断した。
上述の電解析出工程において、希土類金属塩の融解物を電解浴として利用する場合は「希土類融解物電析工程」と称し、希土類金属塩を溶解させたイオン液体を利用する場合は「イオン液体電析工程」と称する。
そして、本発明者は、以下の知見を得た。すなわち、希土類融解物電析工程及びイオン液体電析工程を遂行するためには、希土類元素よりも電気化学的に貴な元素(例えば鉄族元素)を電解析出工程よりも前工程で分離しておく必要がある。この電気化学的に貴な元素の中で特に鉄元素を選択的に分離する手法として、沈殿形成を利用した湿式分離処理に、本発明者は着目した。また、鉄元素を選択的に湿式分離した後、希土類元素とイオン液体由来のアニオン種とで構成される希土類金属塩の生成工程までの一連の湿式工程をアミド溶液という媒体で完結させる点にも着目した。この点を改善すれば、他の改善すべき点も自ずと改善されると、本発明者は考えた。その理由は以下の通りである。
まず、鉄族元素を希土類元素から事前に湿式分離することができれば、鉄族元素を含む溶液もしくは金属塩中から電気化学的に貴な元素種を除外し、溶液もしくは金属塩中の電気化学的に卑な元素種の比率が高くなる。このような場合、希土類元素を含む溶液から希土類元素の比率が高い金属塩を生成することが可能になる。すなわち、特許文献2に記載のある希土類元素を濃縮するための電気泳動工程が不要になる。
上述の通り、鉄族元素を電解析出工程の前工程で事前に分離せず、鉄族元素を別途電解析出工程で除去する場合は、電解析出工程の回数が増えることにより電解析出工程に多大なエネルギーを投与することになる。それだけでなく、電解析出工程ではNernst式の理論的観点から見ると、分離すべき金属濃度が希薄になるに従い、金属の析出電位が卑な側に移行する。そのため、対象金属を100%に近い分離率で除去することは困難となる。そこで、電解析出工程以外の方法で、効率よく鉄族元素を希土類元素から分離する手法が望まれる。
本発明者は、まずは資源に含有される希土類元素をアミド溶液に対して溶解させ、その際に鉄族元素もアミド溶液に溶解したとしても、アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成し、この化合物をアミド溶液から湿式分離するという手法を想到した。つまり、資源に含有される鉄族元素と希土類元素をアミド溶液に溶解させた後、例えば鉄族イオン種の酸化状態を変えることで、鉄族イオン種と希土類イオン種の各沈殿形成条件の溶解度積の差を利用して、より効率的にアミド溶液中で湿式分離するという知見を本発明者は得た。更には、鉄族イオン種を湿式分離した後、希土類イオン種を希土類金属塩として生成させる工程までをアミド溶液で統一させることで、効率的に回収し、希土類金属塩の融解物又は希土類金属塩をイオン液体に溶解させたもの(媒体)を希土類元素回収のための電解浴として用い、希土類元素を電解析出させるという知見を本発明者は得た。
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
鉄族元素及び希土類元素を含有する資源から希土類元素を回収する希土類元素の回収方法において、
前記資源から鉄族元素及び希土類元素を酸溶液であるアミド溶液へと溶解させる溶解工程と、
前記溶解工程後、前記アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物を前記アミド溶液から分離する鉄族化合物分離工程と、
前記鉄族化合物分離工程後、前記アミド溶液を濃縮させることにより希土類金属塩を生成する塩生成工程と、
前記希土類金属塩から希土類元素を電解析出させる電解析出工程と、
を有することを特徴とする希土類元素の回収方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記溶解工程、前記鉄族化合物分離工程、及び前記塩生成工程が、アミド溶液中で行う湿式分離処理に含まれる工程であり、
前記電解析出工程が、前記希土類金属塩の融解物を電析媒体として利用し、希土類元素を電解析出させる希土類融解物電析処理に含まれる工程であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記溶解工程、前記鉄族化合物分離工程、及び前記塩生成工程が、アミド溶液中で行う湿式分離処理に含まれる工程であり、
前記電解析出工程が、前記希土類金属塩をイオン液体に溶解させたものを電解浴として利用し、希土類元素を電解析出させるイオン液体電析処理に含まれる工程であることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第2又は第3の態様に記載の発明において、
前記鉄族元素は少なくとも鉄元素であり、
前記電解析出工程において回収される希土類元素は、少なくともネオジム元素及びジスプロシウム元素であり、
前記湿式分離処理の前に酸化焙焼が行われた前記資源に対して前記溶解工程を行うことにより、前記資源からの鉄元素の溶出率を10%以下とし、ネオジム元素とジスプロシウム元素の溶出率を90%以上とすることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第3に記載の発明において、
前記イオン液体電析処理の後に残存した前記イオン液体を電解浴として再利用する、ことを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記溶解工程における前記アミド溶液は、イオン液体を構成可能な疎水性アニオン種を含有する酸溶液であることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の発明において、
前記鉄族化合物分離工程は、前記アミド溶液中の鉄族元素を水酸化物とすることにより、当該水酸化物を沈殿させ且つ分離する鉄族水酸化物沈殿分離工程であることを特徴とする。
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の発明において、
前記鉄族水酸化物沈殿分離工程においては、アルカリ金属水酸化物の水溶液、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液、アンモニア水溶液、希土類水酸化物の水溶液及びそれらの混合液の少なくともいずれかを用いて鉄族元素を水酸化物とすることを特徴とする。
本発明の第9の態様は、第7又は第8の態様に記載の発明において、
前記鉄族水酸化物沈殿分離工程は、
イオン化した鉄族元素に対する酸化処理を行う酸化処理工程と、
前記酸化処理工程後、前記アミド溶液中の鉄族元素を滴定剤により水酸化物へと変化させて、当該水酸化物を沈殿させる沈殿滴定工程と、
を有することを特徴とする。
本発明の第10の態様は、第8又は第9の態様に記載の発明において、
前記鉄族元素は少なくとも鉄元素であることを特徴とする。
本発明の第11の態様は、第9の態様に記載の発明において、
前記酸化処理工程においては、2価の鉄イオンを3価に酸化させることを特徴とする。
本発明の第12の態様は、第1〜第3、第5〜第11のいずれかの態様に記載の発明において、
前記電解析出工程において回収される希土類元素は、ランタン元素、セリウム元素、プラセオジム元素、ネオジム元素、サマリウム元素、ユウロピウム元素、ガドリニウム元素、テルビウム元素及びジスプロシウム元素から選択される一つまたは二つ以上の元素であることを特徴とする。
本発明の第13の態様は、
鉄族元素及び希土類元素を含有する資源から希土類元素を回収する希土類元素の回収装置において、
前記資源から鉄族元素及び希土類元素を溶解させた酸溶液であるアミド溶液から鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物を前記アミド溶液から分離する第1処理部と、
前記化合物が分離された後、希土類元素と前記アミド溶液を構成するアニオン種とで構成される希土類金属塩から希土類元素を電解析出させる第2処理部と、
を有することを特徴とする希土類元素の回収装置である。
本発明によれば、作業工程を簡素化しつつも、回収される希土類元素の品質を向上させる希土類元素の回収方法及び希土類元素の回収装置を提供できる。
本実施形態における湿式分離処理と希土類融解物電析処理から希土類元素を回収する方法を示すフローチャートである。 Fe−HOとNd−HOのpH−電位図である。 アミド溶液中の各金属イオン濃度と沈殿形成開始pHの相関図である。 本実施例にて使用する二極式電解試験装置を示す概略図である。 別の実施形態における湿式分離処理とイオン液体電析処理から希土類元素を回収する方法を示すフローチャートである。 実施例3において得られた電析物に対しXPS分析した結果を示すグラフである。 実施例3において得られた実施例番号No.3−6の電析物に対し、深さ方向でXPS分析した結果を示すグラフである。 実施例4において得られた実施例番号No.4−6及び実施例番号No.4−7の電析物に対し、深さ方向でXPS分析した結果を示すグラフである。 実施例4において得られた電析物に対しXRD分析した結果を示すグラフである。 実施例8及び9において使用される三極式電解試験装置を示す概略図である。 実施例8において得られた電析物に対し、深さ方向でXPS分析した結果を示すグラフである。 実施例9において電解析出工程(その1)及び(その2)を行う前後における、電解浴及び陽極を示す写真である。 実施例9において得られた電析物に対しXPS分析した結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照しつつ、次の順序で説明を行う。図1は、本実施形態における希土類元素の回収方法を示すフローチャートである。
1.希土類元素の回収方法
1−A)解体・分別工程
1−B)熱減磁工程
1−C)メッキ剥離工程
1−D)酸化焙焼工程
1−E)溶解工程
1−F)鉄族水酸化物沈殿分離工程
1−F−a)酸化処理工程
1−F−b)沈殿滴定工程
1−G)塩生成工程
1−H)電気化学工程
1−H−a)陽極溶解工程
1−H−b)電解析出工程(その1)
1−H−c)電解析出工程(その2)
2.希土類元素の回収装置
3.実施の形態による効果
4.変形例等
なお、1−E)〜1−G)までを「湿式分離処理」と総称する。
また、1−H−a)〜1−H−c)までの工程において希土類金属塩の融解物を電解浴とした場合は、1−H−a)〜1−H−c)までを「希土類融解物電析処理」と総称する。
一方、<4.変形例等>にて述べるが、1−H−a)〜1−H−c)までの工程において希土類金属塩をイオン液体に溶解させた媒体を電解浴とした場合は、1−H−a)〜1−H−c)までを「イオン液体電析処理」と総称する。
なお、以下に記載が無い構成については、特許文献2(特開2012−87329号公報)等、公知の文献に記載の構成を採用しても構わない。
また、本実施形態においては、HDDのヘッド、モーター又はボイスコイルモーター(VCM)、ハイブリッド自動車の駆動モーター、空調機のコンプレッサー等、希土類磁石を含む実廃棄物から希土類元素を回収する方法、及び、そのための装置について説明する。もちろん、磁石の形で希土類元素が使用されている場合以外であっても、鉄族元素と希土類元素とが混在する資源から希土類元素を回収する場合全般に対して、本発明は適用可能である。
<1.希土類元素の回収方法>
1−A)解体・分別工程
解体・分別工程においては、実廃棄物を解体・分別する。そして、解体・分別された各部材から、希土類磁石としての部材を回収する。別の言い方をすると、希土類磁石としての部材以外の部材(例えばアルミニウム(Al)系の金属部材)を取り除く。なお、希土類磁石としての部材が他の部材と接した状態にない場合には、本工程を行わなくとも構わない。
1−B)熱減磁工程
熱減磁工程においては、希土類磁石としての部材を加熱し、当該部材の磁性を減少させる。希土類磁石の磁力は、極めて強力である場合が多い。そのため、希土類元素の回収の際に、他の部材を引き寄せたり作業に用いる機器に固着してしまったりする。これは、作業を煩雑化するのみならず、作業員の安全を確保する上でも考慮すべき事項である。
そこで、本工程を行うことにより、希土類磁石としての部材の磁性を完全に減磁させる。本工程の具体例としては、希土類磁石としての部材を、キュリー温度付近の温度まで加熱することが挙げられる。そして、Feヨーク等、不要な部材を取り除く。なお、希土類磁石としての部材が強く磁性を帯びていない場合は、本工程を行わなくとも構わない。
1−C)メッキ剥離工程
次に、希土類磁石としての部材の主表面にメッキ層が形成されている場合は、メッキ剥離工程を行う。最終的に希土類元素を回収するという目的の関係上、本工程により、希土類元素以外の元素を含むもの(すなわちメッキ層)を取り除いておく。
なお、メッキ層を取り除く手法は、メッキ層を構成する物質に合わせて選択すれば良い。例えば、メッキ層が鉄族元素により構成されている場合は、アルカリ系メッキ剥離剤を使用する。一方、メッキ層が白金族元素により構成されている場合は、硝酸と塩酸の混合液又は王水を剥離剤として使用する。なお、希土類磁石としての部材から希土類元素が剥離剤によって浸出されないように、剥離剤の濃度、pH及び処理時間を調節し、メッキ層のみを選択的に溶解させる。
もちろん、剥離剤を使用せず、物理的研磨処理を行ってメッキ層を取り除いても構わない。例えば、メッキ層がNi−Cu−Niの3層からなる場合、Ni層はアルカリ系メッキ剥離剤で除去しつつ、中間層であるCu層に対して物理的研磨処理を行っても構わない。なお、希土類磁石としての部材の主表面にメッキ層が形成されていない場合は、本工程を行わなくとも構わない。
1−D)酸化焙焼工程
メッキ層を溶解後の希土類磁石部材は蒸留水でメッキ剥離剤を十分に希釈・除去した後、酸化焙焼工程を行う。酸化焙焼工程の目的は、後述の溶解工程において、希土類磁石としての部材から鉄族元素の溶解量を抑制することにある。後述の溶解工程においては、希土類元素とともに鉄族元素もアミド溶液に溶解されることになる。ただ、酸化焙焼工程を行うことにより、鉄族元素の溶解量を抑制することが可能となる。この場合、鉄族元素の量が減少することになり、鉄族元素と希土類元素との分離が容易となる。酸化焙焼を行うことによりもたらされる効果の具体的な内容については、1−F−b)沈殿滴定工程にて後述する。
酸化焙焼の手法としては、公知の酸化焙焼手法を用いても構わない。具体例を挙げれば、以下のものが挙げられる。まず、希土類磁石としての部材を乾燥機内で乾燥させる。希土類磁石としての部材は自動乳鉢等を利用して粉砕する。その後、大気雰囲気下もしくは高濃度酸素雰囲気下において酸化焙焼処理を行い、当該部材を焼結させる。なお、焼結時に、当該部材を構成する粒子が粒成長を伴うなど、酸化反応による重量増加の理論値に達していない場合、すなわち酸化焙焼処理が不十分である場合は、再度、微粉末化させた後、酸化焙焼処理を繰り返し実施しても構わない。
1−E)溶解工程
溶解工程においては、鉄族元素及び希土類元素を含有する資源であって、メッキ剥離工程を経た後の希土類磁石としての部材(以降、単に「資源」とも言う。)から、少なくとも鉄族元素及び希土類元素を、酸溶液であるアミド溶液へと溶解させる。本実施形態において、溶解工程の「溶解」とは、少なくとも、希土類元素をアミド溶液によりイオン化させつつ、鉄族元素が化合物(Fe(OH)等)へと変化可能になるように、鉄族元素をアミド溶液によりイオン化させることを指す。もちろん、当該資源を全てアミド溶液へと溶解させても構わない。
なお、本明細書において「アミド溶液」とは、アミドを含有する酸溶液のことを指す。そして、「アミド」とは、アンモニア或いは1級、2級アミンとオキソ酸とが脱水縮合した構造を有する化合物である。具体的には、本明細書の「アミド」は、カルボン酸アミド、スルホンアミド、リン酸アミド等を含むものである。
なお、このアミド溶液は、酸溶液であって、当該鉄族元素及び希土類元素をアミド溶液へと溶解することが可能ならば、任意のものでも構わない。例示するならば、特許文献2に記載の各化合物やその他イオン液体として知られているアミドを含む溶液が挙げられる。具体名を挙げるとすれば、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)アミド(N[SO(CFCF)、ビス(フルオロスルホニル)アミド(N(SOF))(以降、「HFSA」とも言う。)、トリフルオロメチルスルホニルアミド((CFSONH)(以降、「HTFSA」とも言う。)などを含むアミド溶液を用いても構わない。なお、「HTFSA」は、1,1,1−トリフルオロ−N−[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタンスルホンアミドとも言う。
なお、上記のアミド溶液を構成する他の化合物としては、イオン液体を構成するものとして知られているものを用いても構わない。例えば、イオン液体を構成するアニオン種と同種のアニオン種から成る酸、例えばテトラフルオロホウ酸(HBF)、ヘキサフルオロリン酸(HPF)、トリフルオロ酢酸(CFCOOH)、メタンスルホン酸(CHSOH)、トリフルオロメタンスルホン酸(CFSOH)、チオシアン酸(HSCN)等が含まれていても構わない。上記のアミド溶液ならば、環境に与える負荷を比較的少なくしつつも、当該資源のうち鉄族元素及び希土類元素を比較的容易に溶解し、最終的に希土類元素を効率よく回収することが可能である。
ちなみに、ここで言う「イオン液体を構成するアニオン種と同種のアニオン種からなる酸」とは、別の言い方をすると、プロトン(H)とイオン結合した場合に、イオン性の塩を構成可能なアニオン種である。つまり、アミドを含みつつイオン性の塩を水溶液にしたものが、本実施形態におけるアミド溶液(酸溶液)となる。なお、このアニオン種は疎水性であるのが好ましい。そのため、このようなアニオン種を「疎水性種(疎水性アニオン種)」とも呼ぶ。この「疎水性種」とは、具体的に言うと、カチオン前駆体及びアニオン前駆体からメタセシス反応によりイオン液体を合成する際、ハロゲン等の前駆体由来の不純物除去処理後の合成収率が80%以上を維持できるアニオン種を示す。
なお、溶解工程で溶解される資源は、希土類金属酸化物、希土類金属炭酸塩、希土類金属及び希土類金属の合金いずれの形態であっても良い。資源における希土類金属塩がカチオン−アニオン相互作用の弱いアニオン種から成る希土類金属塩である場合、それよりも相互作用の強いアニオン種から成るアミド溶液に対して容易に溶解可能となる。
なお、溶解の手法としては、資源から効率よくアミド溶液へ鉄族元素及び希土類元素を溶解させられる方法であれば特に制限されない。具体例を挙げると、アミド溶液に当該資源を浸漬させることによって、溶解工程を行っても構わない。また、アミド溶液の濃度やアルカリ又は酸溶液の添加等により、pHを調節しても構わない。pHの調節により、当該資源が溶解する速度を制御することが可能となる。
例えば、アミド溶液がHTFSA溶液の場合、溶解工程は以下の反応により進行する。
希土類酸化物の場合:
RE+6HTFSA→2RE3++6HTFSA+3HO(RE=Pr、Nd、Dy)
酸化鉄の場合:
Fe+4HTFSA→2Fe2++4HTFSA+2HO+1/2O
上記2つの溶解反応の進行状況によりFeと希土類種の溶出率が決まる。ここで、例えば鉱酸による溶解の場合のpHを考えると、酸溶液におけるpHを、2を超え且つ7未満に調整することにより、酸化鉄の溶出量は抑制されることになる。その理由は以下の通りである。
図2はFe−HOとNd−HOのpH−電位図であり、各金属種があるpHの溶液中でどの電位でどのような状態として最も安定に存在できるかを示したものである。ここで、2<pH<7の領域では、FeはFeが最も安定であり、NdはNd3+が最も安定である。その結果、希土類種のイオン化度合(すなわち溶出率)が向上することを、図2は示している。一方、pH<2の条件ではFeはFe3+として安定化するため、Feの溶出率を増加させることになる。すなわち、この条件に合う酸溶液を調製して、溶解させることで希土類種の溶出率を高め、Feの溶解を抑制できる。
なお、アミド溶液の場合、このpH−電位図がそのまま適用されるわけではないが、FeとNdの溶解性の傾向、つまりpHが小さすぎるとイオン化し、pHが大きすぎると酸化物又は水酸化物化するという傾向は類似であると判断される。だからこそ、電解析出工程の前にFeを分離することは困難であると考えられる。このように困難と考えられている状況を解決するための手法が、後述の1−F)鉄族水酸化物沈殿分離工程である。水酸化物化することによりFeとNdとを明確に分離することができる理由については、1−F−b)沈殿滴定工程にて詳述する。
なお、溶解工程のアミド溶液は、80〜90℃の範囲の温度条件とするのが好ましい。その理由としてはアミド溶液の蒸発を伴うことなく、溶解反応速度を高め、なおかつ酸化鉄の溶解度を低く抑えるためである。なお、本実施形態においては「〜」は所定の値以上且つ所定の値以下のことを指す。
また、アミド溶液における濃度は0.5M〜1.0Mとするのも好ましい。その理由としては磁石部材中の希土類成分の溶解量が高く、かつ後続の沈殿滴定工程において、終点までに滴定剤の滴下量が多量にならないようにするためである。つまりは、アミド溶液の濃度が高過ぎる場合、滴定剤の滴下量が増加し、希土類成分の含有率が減少することを避けることにある。
また、反応時間は9h〜12hとするのが好ましい。その理由としては酸化焙焼処理後の磁石部材は難溶性の希土類酸化物であり、溶解工程に9h以上の時間を要するため、且つ、12時間を超えるような長時間の反応を行う場合、鉄族酸化物の溶解量が増加してしまい、それを抑えるためである。
また、別の具体例を挙げると、特許文献2に記載のように、資源に電圧を印加して陽極溶解させることにより、資源に含有される鉄族元素及び希土類元素をアミド溶液へ溶解させる方法が挙げられる。
1−F)鉄族水酸化物沈殿分離工程
本実施形態においては、鉄族元素及び希土類元素が溶解しているアミド溶液に対し、アミド成分より酸化力が高い強酸(例えば濃硝酸)を用いて、鉄族イオン種を2価から3価に酸化させるのに必要な量を添加する。それにより、希土類水酸化物の沈殿を伴うことなく、鉄族元素のみを水酸化物として沈殿させる処理を行う。なお、鉄族イオン種を2価から3価に酸化させるのに必要な強酸の量は、鉄族イオン種の含有量よりモル比で1.2倍程度の量を添加すると効率良く酸化処理が進行する。その後、この水酸化物を、アミド溶液(ひいてはその中に溶解している希土類元素)に対して固液分離する。
なお、本実施形態では鉄族元素のうち鉄(Fe)を水酸化物へと変化させた例について述べている。その一方、結局のところ、アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成し、当該化合物をアミド溶液から分離することができれば、水酸化物へと変化させなくとも構わない。その際、生成されることになる当該化合物が液体であっても、相分離等を利用して当該化合物をアミド溶液から分離可能ではある。ただ、アミド溶液からの分離の容易性を考慮すると、当該化合物は固体であるのが好ましい。つまり、当該化合物をアミド溶液から固液分離するのが好ましい。
更に、固体の当該化合物が沈殿しなくとも構わず、液中に浮遊している状態であっても構わない。その場合、ろ過や遠心分離等の公知の技術により、鉄族元素を含む化合物と希土類元素が含まれるアミド溶液とを固液分離することが可能となる。
つまり、上記の「鉄族水酸化物沈殿分離工程」は具体例の一つであり、アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物を分離する「鉄族化合物分離工程」に含まれる。
ただ、本実施形態においては、「鉄族化合物分離工程」が「鉄族水酸化物沈殿分離工程」である場合について述べる。
なお、特許文献2に記載のような「鉄族元素を電解析出にて分離する技術」と本明細書に記載の記述が相違することを明確にすべく、鉄族化合物分離工程においては「アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成」という表現を用いている。その一方で、後述する電解析出工程においては「希土類元素の電解析出」という表現を用いている。つまり、鉄族化合物分離工程においては鉄族元素のイオンとそれ以外のイオンとの結合という、酸化還元を伴わない化学反応が生じている。その一方、電解析出工程においては希土類元素のイオンが0価となる酸化還元を伴う金属析出が生じている。
本実施形態の好適な例においては、イオン液体のアニオン種由来である酸性の「水溶液」を用いて適切な酸化剤により、鉄族元素を3価に酸化させた後に水酸化物とすることにも特徴がある。
更に、本工程においては、アルカリ金属水酸化物の水溶液、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液、アンモニア水溶液、希土類水酸化物の水溶液及びそれらの混合液の少なくともいずれかを用いて鉄族元素を水酸化物とするのが好ましい。これらの水溶液を滴定剤として用いても構わない。これらの水溶液ならば、鉄族元素の水酸化物を比較的容易に沈殿させることが可能であり、pHの調節が容易である。また、アルカリ金属水酸化物(特にKOH)の水溶液やアルカリ土類金属水酸化物の水溶液のように、電気化学的に希土類種よりも卑な金属を含有する水酸化物水溶液を適宜選定することにより、後で生成される「希土類金属塩」から希土類元素を電解析出する際の電析物中の希土類含入率を上げることができる。例えば、カリウムのように、希土類元素を電解析出させる際に共に還元析出することがほとんどない物質を、当該水溶液として使用することも考えられる。もちろん、これら以外の物質を用いて鉄族元素を水酸化物化させても構わない。
また、アルカリ金属水酸化物同士の混合物やアルカリ金属水酸化物と希土類水酸化物の混合物もしくはアンモニウムと希土類水酸化物の混合物を鉄族元素の沈殿形成のための滴定剤として用いることには、以下の利点がある。すなわち、鉄族水酸化物を沈殿除去した後、後続の塩生成工程において、共晶塩に近い組成の塩組成を有している場合は、電解浴となる金属塩の融点を低温化できるため、希土類金属の低温電析に適している。
なお、本実施形態における鉄族元素には特に制限はない。本実施形態においては鉄族元素がFeの場合について述べるけれども、Fe以外の鉄族元素を含んでいてももちろん構わない。つまり、本実施形態においては、鉄族元素として少なくともFeが含まれる場合について説明している。また、鉄族元素はFe、Co、Niの3種を指しているが、廃希土類磁石のメッキ成分であるNiの剥離処理が不十分な磁石部材をアミド溶液に溶解させた場合、すなわち、Fe、Niの両イオン種がアミド溶液中に含有している場合、酸化剤の投与により、速やかにFeイオンのみが3価に酸化される。また、上記滴定剤を使用した上でpH調整を適切に行うことで、3価の水酸化鉄のみを選択的に沈殿分離できる。なお、ここで残留するNiイオンについては、水相溶液中で定電位電解を行うことで比較的容易に除去することが可能となる。
1−F−a)酸化処理工程
鉄族元素をFeとする場合、アミド溶液中に酸化剤を添加しておく必要がある。すなわち、酸化剤投与工程を別途行うことが必要である。また、アミド溶液へのFeの溶解処理において、資源中のFeは2価の金属イオンとして溶解する。その一方、2価のFeイオンが水酸化物となって沈殿を形成するpH領域は、希土類元素が水酸化物となって沈殿形成するpH領域と重複する範囲が大きい。これは、2価のFeの水酸化物が希土類元素の水酸化物と共沈する傾向があることを意味する。これを避けるために、Feイオンを2価から3価に酸化させておく必要がある。
なお、酸化剤としては、上記のアミドより酸化力の強い鉱酸が望ましい。この鉱酸としては、例えば濃硝酸が挙げられる。濃硝酸を用いた場合は以下の反応により、3価のFeイオンに転換される。
Fe2++2HNO→Fe3++NO +NO+H
なお、上記の反応は比較的緩やかに進行し、反応温度を70〜90℃、反応時間を7h以上と設定することが望ましい。その他、オゾンや塩素によるバブリングにより、Feイオンを2価から3価へと酸化させても構わないし、その他の公知の酸化方法を用いても構わない。また、酸化剤の投与量としては、Feイオンの含有量よりモル比で1.2倍程度とするのが好ましい。また、場合によっては、加熱を行っても構わない。これにより、アミド溶液中のFeの全量を3価のイオンへと酸化させることが確実となる。
1−F−b)沈殿滴定工程
本実施形態の場合、例えば滴定剤としてKOH濃度の割合を高くしたNaOHとKOHとの混合水溶液を使用する。沈殿滴定工程においては、鉄族元素をFeとする場合、酸化剤の投与後、アルカリ金属の混合水酸化物の水溶液を滴定剤とすることにより、以下の酸−塩基中和反応から沈殿形成反応を経由することにより、Fe(OH)を沈殿させ且つ分離する。
+TFSA+M+OH→MTFSA+HO (M=Na、K)
Fe3++3TFSA+3M+3OH→Fe(OH)+3MTFSA
この沈殿滴定工程では、滴定剤として使用する全OHモル量の約85%をアミド溶液中の酸成分の酸−塩基中和反応に使用する。酸−塩基中和反応の後で、全OHモル量の約15%をFe(OH)の沈殿形成反応に使用する。ここで、沈殿形成の開始pHと各種金属の溶解濃度の関係を図3に示す。図3のlog[Mn+]はアミド溶液中での各金属の溶解濃度を対数表示で示している。また、pHは、KOH濃度の割合を高くしたNaOHとKOHとの混合水溶液を滴定剤として使用した場合のFe(OH)の沈殿形成開始pHを示している。
図3中のVCMおよびoxidizedVCMは、酸化焙焼工程の有無による各金属の溶解濃度の相違を示している。すなわち、1−D)酸化焙焼工程を導入することでFeの溶解量を約0.5倍に減少させ、かつNdの溶解量を約1.3倍増加させることができることがわかる。
そして、以下の表1に示す各種酸溶液(酸媒体)に対して、上記の酸化焙焼済VCMを表1に記載の投入量で投入した後の、後述の1−E)溶解工程を模した溶出試験の結果を、同じく表1に示す。
なお、溶出試験の方法としては、所定の濃度の酸媒体に酸化焙焼済VCM粉末を投入後、溶解量が飽和に至るまで70℃,700rpmで撹拌した。48時間の反応後、未反応の残留物を濾過・遠心分離処理により除去し、採取した溶液に対してICP−AES分析(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectroscopy:誘導結合プラズマ発光分光分析)を行い、各種金属イオン濃度を分析した。各種金属イオンの溶出率は以下の式から算出した。
溶出率(%)=各金属の溶解量(g)/投入した酸化焙焼済VCMの各金属量(g)×100
また、投入した酸化焙焼済VCMの各金属量は王水に溶解させた後、ICP−AESで分析を行い、溶解量を算出した。
表1の結果より、本実施形態において挙げている「酸溶液であるアミド溶液」の一例であるHTFSAを酸媒体として用いるならば、前記資源から鉄元素の溶出率を10%以下に抑えた上で、NdとDyの溶出率を90%以上に高められることがわかる。加えて、鉱酸の場合と比較した場合、Feの溶出率が低く、希土類種の溶出率が高いことがわかる。
また、図3から明らかなように、Fe3+はFe2+,Pr3+,Nd3+,Dy3+に対して、酸性側のpH(1<pH<3)で沈殿形成反応が開始される。一方、Fe2+,Pr3+,Nd3+,Dy3+の沈殿形成開始pHは比較的中性側〜塩基性の領域であることがわかる。なお、沈殿形成の終点pHは、アミド溶液中のFeが、アルカリ金属の混合水溶液の投入によりFe(OH)沈殿へと変化するpHなら任意のもので構わない。ただし、pHが酸性側に近い場合はFeがアミド溶液中に残りやすく、pHが中性側に近い場合は希土類種の共沈が生じやすい傾向がある。これを踏まえると、滴定剤がアルカリ金属の混合水溶液の場合、好ましい沈殿形成の終点pHは3.8〜4.7である。
ところで、先に挙げた1−E)溶解工程において、FeとNdの溶解性の傾向は類似であると判断されると述べた。だからこそ、電解析出工程の前にFeを分離することは困難である一方、水酸化物化することによりFeとNdとを明確に分離することができることについて述べた。このような明確な分離は、金属水酸化物の沈殿傾向を示す「HSAB則」及び「絶対的硬さη」、そして「熱力学的溶解度積(Ksp)」を用いて説明可能である。以下、詳述する。
「HSAB則」とは、硬い酸と硬い塩基では、イオン結合性が大きく、安定な錯体・錯塩を生成しやすく、その一方、軟らかい酸と軟らかい塩基では、共有結合性が大きく、安定な錯体・錯塩を生成しやすいという法則である。ここで、硬い酸は体積が小さく、正電荷が大きい、逆に、軟らかい酸は体積が大きく、正電荷が小さい。また、硬い塩基は分極しにくく、軟らかい塩基は分極しやすい。
ここで、硬い酸の性質を定量的に示す指標として「絶対的硬さη」があり、η=(I−A)/2の式で定義される。ここで、Iはイオン化ポテンシャル、Aは電子親和力である。各金属イオンの絶対的硬さを表2に示す。
絶対的硬さはFe2+<Pr3+<Nd3+<Dy3+<Fe3+の順序であり、Fe3+が最も高い値である。一方、OHは硬い塩基に属するため、Fe3+との間で沈殿形成しやすいことがわかる。更に、Fe2+,Pr3+,Nd3+,Dy3+はFe3+以外の鉄族金属イオンであるCo2+(η=8.2)、Ni2+(η=8.5)と同様に中間の硬さに属する金属イオン種であるため、水酸化物沈殿を形成しにくいことがわかる。このような各金属イオンの絶対的硬さの相違からFe3+のみを選択的に水酸化物として沈殿形成させることができる。
沈殿形成反応において、もう1つの重要な指標として「熱力学的溶解度積(Ksp)」があり、この値は難溶性塩の溶解により生じる構成イオンの活量の積の最大値に相当する。すなわち、金属イオンと対象のアニオンとの活量の積がKspの値に達したところで飽和溶液となり、それ以上の濃度では対象となる沈殿が析出する。各金属イオンの熱力学的溶解度積は、Ksp[Fe(OH)]=1.0×10−15、Ksp[Fe(OH)]=1.0×10−38、Ksp[Pr(OH)]=7.9×10−22、Ksp[Nd(OH)]=3.2×10−22、Ksp[Dy(OH)]=7.9×10−24である。Kspの順序は、Fe(OH)<<Dy(OH)<Nd(OH)〜Pr(OH)<Fe(OH)である。すなわち、Fe(OH)のKspは格段に値が小さく、最も沈殿形成しやすいため、選択的分離が可能であることがわかる。なお、Fe2+はηの値が小さく、Fe(OH)として、Kspの値が大きいため、希土類イオン種との選択的分離は困難であるが、アミド溶液中の溶存酸素により、4Fe(OH)+O→FeO(OH)+2HO,FeO(OH)+HO →Fe3++3OHの反応を経由して、Fe3+が形成されやすくなり、ひいてはFe(OH)が形成されることとなる。
1−G)塩生成工程
塩生成工程は、鉄族水酸化物沈殿分離工程と、後述する電解析出工程との間に行われる。そして塩生成工程では、アミド溶液を濃縮させることにより、希土類元素を含有する塩を生成する。具体的な手法としては、溶液から塩を生成するための公知の手法を用いても構わない。一例を挙げると、アミド溶液に対してエバポレーションを行った後、アミド溶液中の水分及び酸成分を除去し、希土類元素を含む金属塩を得る。更に、金属塩中の水分除去のため、金属塩の融点以上まで金属塩を加熱して金属塩を液相状態とし、その状態を保持した後、真空乾燥処理を実施しても構わない。
1−H)電気化学工程
電気化学工程においては、希土類元素を回収するための電解処理を行う。本工程では、陽極溶解工程に加え、電解析出工程を行う。この電解析出工程は、希土類元素の種類ごとに条件を変化させて行う。以下、説明する。
1−H−a)陽極溶解工程
陽極溶解工程においては、希土類元素の電解析出のために、上記の金属塩は希土類金属塩であるため、電解浴としてそのまま使用する。なお、希土類金属塩ではなく、イオン液体を電解浴とする場合の具体的な手法については、後述の<4.変形例等>にて述べるが、特許文献2の手法や公知の手法を用いても構わない。また、溶解させる液体としては、公知のイオン液体でも構わないし、本実施形態における希土類金属塩の融解物であっても構わない。
金属塩を電解浴としてそのまま用いる手法について、図4を用いて説明する。なお、図4は後述の実施例にて使用する二電極式電解試験装置1Aを説明するための概略図である。ここで、減磁処理済の廃磁石部材7を陽極部4に取り付ける。そして、上記の希土類金属塩を融解物にした後、直流電源1の陰極部5とともに、当該陽極部4を希土類融解物に浸漬させる。そして、直流電源の陽極部4と陰極部5とを導通させ、陽極溶解を行い、減磁処理済の廃磁石部材7を希土類融解物へと溶解させる。ここで、廃磁石部材のメッキ剥離の有無に限らず、希土類磁石成分中の鉄もしくはメッキ成分が希土類融解物(電解浴)10中に拡散しないように、陽極部4を希土類融解物(電解浴)10からVycor glass(ガラスフィルター9)を介した状態で隔離しておく必要がある。なお、陰極部5としては、後述の実施例のように銅板を略円筒状に加工したものを用いても構わないし、析出させる希土類金属と結晶構造が同類の金属元素からなる不活性電極を用いても構わない。
以降、詳しくは実施例にて後述し、符号については省略する。
1−H−b)電解析出工程(その1)
電解析出工程では、希土類融解物から希土類元素を電解析出させる。そして、本工程である電解析出工程(その1)では、ネオジム(Nd)を析出させる。具体的な手法については、特許文献2の手法や公知の手法を用いても構わない。なお、希土類元素を電解析出させ、電極に付着した物質を取り出してみると、後述の<実施例6>や<実施例7>に示すように、希土類元素以外の元素(例えば炭素や酸素)が含まれている場合もある。しかしながら、希土類元素が電解析出されていることに変わりはない。しかも、本実施形態においては、希土類元素の品質を低下させる大きな要因となっていた鉄族元素と希土類元素とを分離することが可能となっている。そのため、本明細書において「希土類元素の電解析出」とは、「少なくとも希土類元素を電解析出する」状態を指す。
簡単に上記の手法を説明すると、直流電源と電気的に接続された陽極部としては、回収する希土類元素と同種の元素(すなわちNd)もしくは減磁処理済の廃磁石部材から構成される可溶性電極を用いる。陰極部としては希土類元素よりも電気化学的に貴な元素であり、かつ析出させる希土類金属と結晶構造が同類の金属電極を用いる。また、減磁処理済の廃磁石部材を陽極部に用いることができるので、上記陽極溶解工程を陽極部で実施し、電解析出工程(その1)を陰極部で実施することが効率的である。
1−H−c)電解析出工程(その2)
本工程である電解析出工程(その2)では、ジスプロシウム(Dy)を析出させる。具体的な手法については、電解析出工程(その1)と同様であり、Dyに応じた条件で電解析出を行う。また、減磁処理済の廃磁石部材を陽極部に用いることができるので、上記陽極溶解工程を陽極部で実施し、電解析出工程(その2)を陰極部で実施することが効率的である。
以上の手法により、資源から鉄族元素を取り除きつつ、品質の高い(すなわち鉄族元素の含有量が少なく、純度が高い)希土類元素を回収する。
<2.希土類元素の回収装置>
上記の技術思想は、希土類元素の回収装置へと反映させることも可能である。具体的に言うと、本実施形態における希土類元素の回収装置は、以下の構成を有する。
・資源から鉄族元素及び希土類元素を溶解させたアミド溶液から鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物をアミド溶液から分離する第1処理部(鉄族化合物分離部)
・化合物が分離された後、希土類元素と上記アミド溶液を構成するアニオン種とで構成される希土類融解物を電解浴として利用し、希土類元素を電解析出させる第2処理部(希土類元素電解析出処理部)
更に具体的に言うと、第1処理部(鉄族化合物分離部)は、アミド溶液中の鉄族元素を水酸化物とすることにより、当該水酸化物を沈殿させ且つ分離する鉄族水酸化物沈殿分離部である。
以上の構成は、<1.希土類元素の回収方法>で述べた手法と同様の効果を奏する。すなわち、第1処理部(鉄族元素を含む化合物の沈殿分離)及び第2処理部(電解析出)という比較的簡素な構成により、回収される希土類元素の品質を向上させることが可能となる。
<3.実施の形態による効果>
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
まず、鉄族元素を沈殿分離というシンプル且つ効率的な手法により取り除くことができるため、回収される希土類元素の品質を向上させることが可能となる。しかも、実施例の項目にて後述するが、本実施形態に記載の手法ならば、希土類元素の回収量を増加させることが可能となる。更には、回収した希土類元素の純度を向上させることが可能になる。詳しく言うと、回収した希土類元素の最表面は酸化していたり炭素が不純物として付着していたりしていたとしても、最表面以外の部分(すなわち最表面からわずかに深い部分)では、比較的高い純度の希土類元素となっており、最終的に高純度の希土類元素を多量に獲得することが可能になる。
そして、特許文献1のような溶融塩電解法とは異なり、高温での腐食反応を抑制できる電解装置など安全面に各段の配慮を施した装置設計が不要となる。その結果、設備費を抑制することが可能になり、かつ加えるべき(熱及び電解)エネルギーも少量で済む。
また、特許文献2とは異なり、鉄族元素を別途電解析出する必要がなくなり、電解析出工程の回数の増加を抑制することが可能になる。また、鉄族元素を沈殿分離させることにより、アミド溶液中の希土類元素の構成比率を従来の回収方法と比べて相対的に増加させることができる。それにより、希土類元素の濃縮を目的とする電気泳動処理を行う必要性がなくなる。その結果、作業工程における経済性を向上させることができる。
また、特許文献3のような溶媒抽出法とも異なり、アミド溶液中の希土類元素の構成比率が従来の回収方法と比べて高くなる。そのため、溶媒抽出装置を多段構成にする必要がなくなる。更に、鉄族元素を別途電解析出する必要がなくなり、電解析出工程の回数の増加を抑制することが可能になる。その結果、作業工程における経済性を向上させることができる。
以上の通り、作業工程を簡素化しつつも、回収される希土類元素の品質を向上させることが可能となる。
<4.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
(希土類元素の回収装置におけるその他の構成)
第1処理部(鉄族化合物分離部)及び第2処理部(希土類元素電解析出処理部)以外にも、本実施形態においては、以下の構成のいずれか又はその組み合わせたものを備えても構わない。
・上記の溶解工程を行う溶解処理部(場合によっては資源陽極溶解処理部)
・上記の塩生成工程を行う塩生成処理部
・上記の塩生成工程により生成した金属塩を陽極溶解させる金属塩陽極溶解処理部
・鉄族元素回収後のアミド溶液に対して電気泳動処理を行う電気泳動処理部
・その他、希土類元素の回収装置に用いられる公知の構成
なお、電気泳動処理は、適宜行っても構わないが、経済性を考慮すると省略するのが好ましい。
また、上記の電解析出工程(その1)及び電解析出工程(その2)については、電解析出処理部(その1)及び電解析出処理部(その2)というように、別々の処理部を設けても構わないし、希土類元素の種類の数に合わせて電解析出処理部(その3、4・・・)等を設けても構わない。
(希土類元素の種類)
上記の実施形態においては、希土類元素における元素の種類に制限は無いが、実用性や作業の容易性を考慮するならば、ランタン元素(La)、セリウム元素(Ce)、プラセオジム元素(Pr)、ネオジム元素(Nd)、サマリウム元素(Sm)、ユウロピウム元素(Eu)、ガドリニウム元素(Gd)、テルビウム元素(Tb)及びジスプロシウム元素(Dy)から選択される一つまたは二つ以上の元素であることが好ましい。
(鉄族元素を含む化合物)
上記の実施形態では、鉄族元素を水酸化物へと変化させた例について述べた。その一方、結局のところ、アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物(固体)を生成し、当該化合物を上記アミド溶液から分離することができれば、水酸化物へと変化させなくとも構わない。具体例を挙げるとすれば、鉄族元素を酸化物としたり、スルホン化物もしくは鉄族錯塩類としたりして、鉄族元素を含む化合物を生成し、当該化合物を分離しても構わない。
(「イオン液体電析処理」を採用した場合、すなわち、希土類金属塩をイオン液体に溶解させた媒体を電解浴とした場合)
以下、イオン液体電析処理を採用した場合について説明する。
図5は、別の実施形態における希土類元素の回収方法を示すフローチャートである。また、図5においては、1−E)溶解工程〜1−G)塩生成工程までをまとめて「湿式分離処理」と称し、1−H)電気化学工程のことを「イオン液体電析処理」と称する。
塩をイオン液体に溶解させた後に電解析出工程を行う場合、上記の実施形態と同様に1−E)溶解工程〜1−G)塩生成工程すなわち「湿式分離処理」を行う。そして、塩生成工程により生成された希土類金属塩を、イオン液体に溶解させる。
なお、1−H)電気化学工程において電解浴として用いられるイオン液体としては、
『式PRで表される四級ホスホニウムのカチオン成分、又は式NRで表される四級アンモニウムのカチオン成分もしくは下記式で表されるカチオン成分と、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド(N[SOCF)、ビス(フルオロスルホニル)アミド(N[SOF])、トリフルオロメタンスルホネート(SOCF)、メタンスルホネート(SOCH)、トリフルオロ酢酸(CFCOO)、チオシアネート(SCN)、ジシアナミド(N(CN))、ジアルキルリン酸((RO)POO))、ジアルキルジチオリン酸((RO)PSS))、脂肪族カルボン酸(RCOO)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)、テトラフルオロボレート(BF)及びハロゲン等からなる群から選択される少なくとも一種のアニオン成分とから構成されるもの。』などがある。
なお、上記のオニウムカチオンの式の中の記号に当てはまる基の条件としては以下の通りである。
・Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基である。
・Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基である。
・複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
・RとRとは互いに異なる基であり、ホスホニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。
・Rは置換基を有していてもよい炭素数2〜6の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基である。
・Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜14の直鎖状、分岐状、又は脂環状のアルキル基である。
・複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
・RとRとは互いに異なる基であり、アンモニウムカチオンの有する炭素数の総数は20以下である。
・Rは炭化水素基である。
・Rは炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rはメチル基またはエチル基を示す。
・mは4または5の整数であり、nは1〜4の整数である。
ここで、イオン液体が電解浴媒体として使用される温度において、液相状態を維持できれば特に制限されないが、カチオン成分としては、低炭素鎖のホスホニウムカチオン、アニオン成分としては、これらの中でビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド及びビス(フルオロスルホニル)アミドが低粘性を発現するという点で好ましい。
なお、上記のイオン液体の例は、アミド溶液を構成するアニオン種にも適用可能である。上述の通り、溶解工程において用いるアミド溶液は、イオン液体を構成するアニオン種を含有する溶液であることが好ましい。そのため、溶解工程において用いるアミド溶液のアニオン種を上記のイオン液体のアニオン種のうちの一つを用いても構わない。
(溶解工程の省略)
上記の実施形態においては溶解工程を行った。その一方、上記のアミド溶液に資源を溶解させておいたものを別途用意しておくのならば、溶解工程を省略しても構わない。以下、溶解工程を省略した場合の希土類元素の回収方法を記載する。
『鉄族元素及び希土類元素を含有する資源から希土類元素を回収する希土類元素の回収方法において、
前記資源から鉄族元素及び希土類元素を溶解させた酸溶液であるアミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物を前記アミド溶液から分離する鉄族化合物分離工程と、
前記鉄族化合物分離工程後、前記アミド溶液を濃縮させることにより希土類金属塩を生成する塩生成工程と、
前記希土類金属塩から希土類元素を電解析出させる電解析出工程と、
を有することを特徴とする希土類元素の回収方法。』
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例においては、鉄族元素がFeの場合について詳述する。
また、<実施例1>及び<実施例2>においては、本発明の具体例の一つであるところの「実廃棄物VCMからの希土類電解試験」を行った結果について記載する。
そして、<実施例3〜5>においては、Feを沈殿分離する際に用いられる滴定剤を変化させたとしても、希土類元素のうちNdの回収量及び品質が向上する例について記載する。
そして、<実施例6>においては、<実施例3>の手法を基にしつつ、Nd以外の希土類元素(Dy)を回収した結果について記載する。
そして、<実施例7>においては、<実施例3>の手法を基にしつつ、9種の希土類元素を回収した結果について記載する。
また、1−G)塩生成工程により生成した希土類金属塩をイオン液体に溶解させた後に電解析出工程を行う例を適用した。<実施例8>においてはNdを回収した結果について記載し、<実施例9>においてはNd及びDyを回収した結果について記載する。
以下、実施例の番号順に説明する。
<実施例1>(実廃棄物VCMからの希土類電解試験その1)
本実施例においては、図1に示すフローチャートに従い、3.5inch−HDD用の使用済みVCMを使用して、希土類元素の回収工程を実施した。
1−A)解体・分別工程
まず、実廃棄物を解体し、VCMを分別した上で、当該VCMから希土類磁石としての部材のみを回収した。
1−B)熱減磁工程
熱減磁工程は、以下のように行った。すなわち、希土類磁石としての部材を、焼成セッター上に設置し、アルミナ製の坩堝内に保持した上で、電気炉内に投入した。熱減磁工程の温度プログラムとしては、大気雰囲気下においてキュリー温度(310℃)までの昇降温速度を100℃/hにセットした。この熱減磁工程により、希土類磁石としての部材の表面上に酸化物被膜の形成を抑えつつ、初期磁束密度:410〜445mTを残留磁束密度:0.01mT(減磁率:99.9%以上)まで下げた。これにより、希土類磁石としての部材のその後の取扱いを容易なものとした。
1−C)メッキ剥離工程
メッキ剥離工程は、希土類磁石としての部材の表面のNiメッキ層を、アルカリ系メッキ剥離剤を用いて溶解させた。アルカリ系メッキ剥離剤を含む水溶液をpH12以上に調製後、希土類磁石としての部材(減磁済)を当該水溶液に投入した。そして、ホットスターラー上で50〜70℃、100rpmで撹拌を行い、メッキ層を溶解させた。希土類磁石としての部材のメッキ層はNi層(表面層)、Cu(中間層)、Ni(最深層)の順に積層された三層構造を形成していた。そのため、表面層のNiをメッキ剥離剤で溶解させた後、Cu層は研磨処理を行って除去した。その後、最深層のNiは、上記と同様にメッキ剥離剤を使用して溶解させた。
1−D)酸化焙焼工程
蒸留水でメッキ剥離剤を十分に希釈・除去した後、メッキ層を溶解した後の希土類磁石としての部材を乾燥機内で乾燥させた。希土類磁石としての部材を、自動乳鉢等を利用して粉砕した。その後、粉砕された希土類磁石としての部材をアルミナ容器に敷き詰め、大気雰囲気下において860℃、2hという条件で酸化焙焼工程を行った。なお、上記の条件においては、焼結時に粒径が大きくなり、酸化処理が不十分であると判断した。そして、再度、希土類磁石としての部材を微粉末化させた後、860℃、2hという条件で酸化焙焼工程を実施した。
1−E)溶解工程
溶解工程においては、アミド溶液としてHTFSA(1M)300mlを使用した。微粉末化された希土類磁石としての部材(資源)40gを、HTFSAへと投入した。そして、ホットスターラー上にて、75〜85℃、pH0.4〜0.7程度の範囲内に設定して、HTFSAと資源とを反応させた。
1−F)鉄族水酸化物沈殿分離工程
1−F−a)酸化処理工程
上記の実施形態で述べたように、2価のFeイオンと希土類種との共沈を避けるべく、濃硝酸を添加してFeを3価のイオンへと酸化させた。具体的には、以下のように酸化処理工程を行った。すなわち、アミド溶液中のFe含有量をICP−AES分析(Inductively Coupled Plasma−Atomic Emission Spectroscopy:誘導結合プラズマ発光分光分析)から決定した。その後、Fe含有量に応じて、濃硝酸3.0mlを添加した。そして、ホットスターラー上で100℃、300rpm、9h以上12h未満という条件で、Feイオンを反応させた。これにより、アミド溶液中のFeを3価のイオン種に酸化させた。
1−F−b)沈殿滴定工程
アミド溶液中への滴定剤としては、NaOHを使用した。そして、pH4.1を終点と設定して、Fe(OH)の沈殿滴定を実施した。最終的に沈殿形成の終点はpH=4.7となった。沈殿形成後の分離方法としては、溶液のロスが少ない遠心分離法を採用した。具体的な遠心分離条件は、12000rpm、10minとし、沈殿物であるFe(OH)とアミド溶液とを分離した。
1−G)塩生成工程
沈殿滴定工程後、アミド溶液をエバポレーションにより濃縮させた後、自動乳鉢上で100〜150℃に保持し、水溶液中の水分及び酸成分を除去した。そして、希土類元素を含む金属塩を得た。更に、金属塩中の水分除去のため、融点以上まで加熱して液相状態を保持した後、真空乾燥処理を3h以上実施した。このようにして、希土類金属塩を生成した。
1−H)電気化学工程
本実施例における電気化学工程で用いられる電解試験装置を図4に示す。
本実施例における二電極式電解試験装置1Aは、直流電源2、積算電量計3、陽極部4、陰極部5、電解槽6を有している。
直流電源2と陽極部4とが電気的に接続されている。そして、積算電量計3と陰極部5とが電気的に接続されている。そして、積算電量計3と直流電源2とが電気的に接続されており、積算電量計3の結果に応じて直流電源2の電流量が変動可能となっている。
減磁処理済みの廃磁石部材7が、陽極リード線(図示せず)を用いて陽極部4に固定されている。そして、中空のガラス部材8の中に、陽極部4及び減磁処理済の廃磁石部材7が配置されている。なお、ガラス部材8の先端(天地の地側)には、ガラスフィルター9(ガラスウール部)が設置されている。
電解槽6に対し、電解浴となる希土類融解物(電解浴)10が投入されている。それと共に、ガラス部材8の中に希土類融解物(陽極側)11を配置し、希土類融解物(陽極側)11の中に、減磁処理済の廃磁石部材7を浸漬させている。最終的には、希土類融解物(陽極側)11が収められたガラス部材8を、希土類融解物(電解浴)10へと浸漬させる。
なお、希土類融解物(電解浴)10及び希土類融解物(陽極側)11は、両者とも、1−G)塩生成工程にて生成された希土類金属塩から分けたものである。
なお、ガラスフィルター9の機能性により、希土類融解物(陽極側)11は、電解槽6に投入されて電解浴となる希土類融解物(電解浴)10中に拡散せず、陽極部4で溶解する減磁処理済の廃磁石部材7及び不溶性物質は、陽極部4の近傍に保持される。このように、本実施例における二電極式電解試験装置1Aを設計した。なお、ガラスフィルター9は、印加電圧を高めることで電流が流れるようになる構造となっている。
1−H−a)陽極溶解工程、及び、1−H−b)電解析出工程(その1)
本実施例においては、作業効率を向上させるべく、1−H−a)陽極溶解工程、及び、1−H−b)電解析出工程(その1)を同時に行った。
本実施例における電解析出工程(その1)では、陽極部4をNdロッド、陰極部5をTa基板とした。なお、陰極部5は、Ta基板を円筒状にすることで電極面積を大きくする構造とした。そして、浴塩温度:190℃(金属塩の融点よりも10℃以上、上の温度)、電解雰囲気:Ar、印加電圧:3.2V、総電気量:580Cの条件下でNdの析出を行った。その結果、陽極電流効率:91.6%、陰極析出物:215.8mgであり、電解析出物がNdのみで構成されると仮定した場合、陰極回収率は65.2%であった。極めて高い陽極電流効率が得られた。なお、陽極電流効率は、総電気量から算出される陽極(Nd電極)の理論的な重量減少量に対する実際の重量変化量の割合から算出した(以降、同様)。
つまり、総電気量が高いほど、一定の電解時間内で、陽極と陰極の間に流れる電流値が大きいことを意味する。つまりは、単位時間当たりの陰極へのNdの析出量が多くなることを意味する。
また、陽極電流効率が高ければ、想定する陽極側での溶解反応通り、電解析出が行われることを意味する。結局のところ、陽極側での溶解イオン種が陰極側での析出反応に影響を及ぼすことなく、Ndの電解析出が行われることを意味する。
そして、得られた電析物をXPS分析(X線光電子分光分析法:X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)した結果、Nd3d5/2スペクトルにおいて、最表面層から0.2μmの深さでは981.5eVにピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から1.5μmの深さでは980.7eVにピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、電析物の深さ方向分析を行った結果、炭素濃度及び酸素濃度は減少していくことが確認できた。つまり、最表面層からわずかの深さの内部では、比較的純度の高いNdが析出物として形成されていた。
1−H−c)電解析出工程(その2)
電解析出工程(その2)では、陽極部4をDyロッド、陰極部5をTa基板とし、浴塩温度:190℃、電解雰囲気:Ar、印加電圧:3.7V、総電気量:520Cの条件下でDyの析出を行った。なお、電解浴としては、ii)電解析出工程(その1)で用いた後の希土類融解物(電解浴)10を用いた。
その結果、陽極電流効率:90.3%、陰極析出物:209.9mgであった。
そして、得られた電析物をXPS分析した結果、Dy3d5/2スペクトルにおいて、最表面層から0.35μmの深さでは1297.5eVにピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から1.75μmの深さでは1296.7eVにピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、電析物の深さ方向分析を行った結果、炭素濃度及び酸素濃度は減少していくことが確認できた。つまり、Ndと同様、最表面層からわずかの深さの内部では、比較的純度の高いDyが析出物として形成されていた。
<実施例2>(実廃棄物VCMからの希土類電解試験その2)
使用済3.5inch−HDD2台のVCM2体(希土類磁石部材片:53.96g)を出発物質として1−A)解体・分別工程〜1−D)酸化焙焼工程(860℃、2h処理を2回)までを行った結果、微粉化処理した酸化磁石粉末59.37gが得られた。
次に、1−E)溶解工程にて5回連続で1M−HTFSA(200ml×5回=1000ml)へ溶解処理を行った結果、希土類磁石部材片に対するアミド溶液への溶解量は以下の表3の通りであった。なお、溶解量については、ICP−AES分析結果から判断した。
その後、希土類磁石部材1片に相当する量の溶液:250ml(アミド溶液1000mlの1/4量)を用いて、1−G)塩生成工程を実施した結果、79.20gの金属塩が得られた。この金属塩中に含まれている希土類元素濃度はICP−AES分析の結果、以下の表4の通りであった。
この金属塩:79.20gを全て電解浴として、1−H)電気化学工程の1−H−a)陽極溶解工程及び1−H−b)電解析出工程(その1)を実施した。
そして、ガラスフィルター9と希土類融解物(電解浴)10との接触界面での液間抵抗を測定した上で、陰極側への正味の電圧が3.2Vとなるようにして、Ndの定電位電解を190℃で実施した。1回目の定電位電解では1004Cの電気量を通電させて、陰極析出物:0.275gを得た。次に、陽極側で生じている不溶性物質及び溶解生成物を適宜除去した後、2〜4回目の定電位電解では1146C、966C、924Cの電気量を通電させて、陰極析出物:0.291g、0.241g、0.230gを得た。最終的に陰極析出物:1.037gが得られており、Ndの回収率は62.9%であった。なお、各電解析出工程での陰極析出物をEDX分析(エネルギー分散型X線分析:Energy Dispersive X−ray spectroscopy:EDX)した結果、Ndのピークが確認された。
<実施例3>(滴定剤:NaOHを用いた沈殿滴定工程後に得られた希土類融解物を利用したNd電解析出試験)
まず、<実施例1>と同様、希土類磁石としての部材に対して、860℃、2hという条件にて酸化焙焼工程を行った。そして、得られた酸化磁粉を自動乳鉢にて微粉化した。微粉化された酸化磁粉40gをアミド溶液(1M HTFSA)300mlに投入し、70℃(ホットスターラーは100℃に設定)、700rpm、12h以上という条件で両者を反応させた。
未反応の酸化磁粉をろ過した後、酸化剤として濃硝酸を投入した。その後、90℃、200rpm、7h以上という条件で反応させた。この工程により、アミド溶液中のFe2+をFe3+へと酸化させた。
次に、アミド溶液50ml中に滴定剤:1M NaOHを用いてpH=4.7までNaOHを徐々に滴下させ、Fe(OH)の沈殿滴定を行った。ここで生じたFe(OH)沈殿は、遠心分離(7600rpm,5min)により除去した。これにより、Feを含まないアミド溶液が得られた。
次に、アミド溶液を150℃に加熱したホットプレート上で酸成分を除去することにより、希土類成分から成る金属塩を合成した。得られた金属塩については、ICP−AESにて定量分析を行った。その結果として、複数のサンプルにおける金属塩組成の一例を表5に示す。
なお、各サンプルにおいては、実施例番号に対応させた番号を付与している。例えば、以下の表5においては、5個のサンプルに対して金属塩組成を調査している。そのため、各サンプルに対して、実施例番号No.3−1,実施例番号No.3−2というように、3−1の3は実施例番号に対応させ、その後の番号は連番となるように番号を付与している(以降、同様)。なお、表中の各元素に対応する数値はmol%である。
なお、表中の「MTFSA」及び「n」の項目の意味は、以下の通りである。まず、ICP−AESにおいて、金属カチオンの全種類を定量的に判断可能である。また、<実施例5>で述べるが、NH が存在する場合はイオンクロマトグラフを使用することにより、最終的にはカチオンの総量が判断可能である。そして、カチオンの総量=アニオンの総量となる。その結果、アニオンをTFSAに起因するものとして考え、そこからMTFSAの分子量を算出している。なお、Mは金属を意味する。そして、TFSA自体は、分子量が固定であることから、nの項目の値は、MTFSAが示す分子量から決定される。
上記により得られた金属塩に対し、100℃、48hという条件で真空乾燥処理を行った。次に、この金属塩融解物にKTFSA(すなわちTFSAのカリウム塩)融解物を少量添加し、希土類金属塩濃度を0.1Mに設定した上で、電解雰囲気をArとしつつ、Ndの電解析出試験を実施した。電解条件及び電解試験結果は表6の通りである。なお、以下の実施例番号No.3−6は、上記の実施例番号No.3−3を用いてNdの電解析出試験を実施した結果物である。また、実施例番号No.3−7は、上記の実施例番号No.3−5を用いてNdの電解析出試験を実施した結果物である。
以上の通り、非常に高い総電気量となり、極めて高い陽極電流効率が得られ、多量の陰極析出量が得られた。
得られた電析物をXPS分析した結果を図6に示す。Nd3d5/2スペクトルにおいて、実施例番号No.3−6の場合、最表面層から0.24μmの深さでは981.5eVにピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から1.25μmの深さでは980.7eVにピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、実施例番号No.3−6に対して電析物の深さ方向分析を行った結果を図7に示す。1.25μmの深さでは炭素濃度:0.40%、酸素濃度:1.75%まで減少することが確認できた。実施例番号No.3−7に対して電析物の深さ方向分析を行った結果、1.0μmの深さでは炭素濃度:0%、酸素濃度:0.16%まで減少することが確認できた。つまり、最表面層からわずかの深さの内部では、比較的純度の高いNdが析出物として形成されていた。
<実施例4>(滴定剤:(Na,K)OHを用いた沈殿滴定工程後に得られた希土類融解物を電解浴とした場合のNd電解析出試験)
本実施例において、特記のない場合は、<実施例3>と同様の手法を用いている。
本実施例においては、滴定剤を1M(Na,K)OH(Na:K=60:40の滴定剤、及び、Na:K=25:75の滴定剤の混合液、単位:mol%)とし、pH=2.6〜3.9を終点として(Na,K)OHを徐々に滴下させ、Fe(OH)の沈殿滴定を行った。ここで生じたFe(OH)沈殿は遠心分離(7600rpm,5min)により沈降させて、Feを含まないアミド溶液が得られた。その後、アミド溶液に対してホットプレート上で酸成分を除去することにより、希土類成分から成る金属塩を生成した。得られた金属塩については、ICP−AESにて定量分析を行った。その結果として、複数のサンプルにおける金属塩組成の一例を表7に示す。なお、表中の各元素に対応する数値はmol%である。
上記により得られた希土類金属塩に対し、100℃、48hという条件で真空乾燥処理を行った。それに加え、本実施例では、真空乾燥処理後、石英管内で加熱し、溶融状態にしたまま、真空脱水処理を行った。得られた希土類金属塩をDSC分析した結果、融点は198.8℃であることを確認した。
次に、この希土類融解物にはKTFSA融解物を添加せず、そのまま電解浴として、Ndの電解析出試験を実施した。電解条件及び電解試験結果は表8の通りである。電解析出物がNdのみで構成されると仮定した場合の実施例番号No.4−6及び実施例番号No.4−7における陰極回収率は30.9%及び42.3%であった。連続的な電解試験を実施することで陰極回収率は向上することが見込まれる。なお、以下の実施例番号No.4−6は、上記の実施例番号No.4−2を用いてNdの電解析出試験を実施した結果物である。また、実施例番号No.4−7は、上記の実施例番号No.4−3を用いてNdの電解析出試験を実施した結果物である。
以上の通り、非常に高い総電気量となり、極めて高い陽極電流効率が得られ、多量の陰極析出量が得られた。
得られた電析物をXPS分析した結果、Nd3d5/2スペクトルにおいて、実施例番号No.4−6の場合、最表面層から0.24μmの深さでは981.5eVにピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から1.25μmの深さでは980.7eVにピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、実施例番号No.4−6及びNo.4−7で電析物の深さ方向分析を行った結果を図8に示す。1.0μmの深さでは、炭素濃度は検出限界以下、酸素濃度は0.16%まで減少することが確認できた。また、XRD分析(X線回折:X‐Ray Diffraction:XRD)の結果を図9に示す。No.4−6の試料ではNd金属相における結晶性のピークが確認できた。つまり、最表面層からわずかの深さの内部では、純度の高いNdが析出物として形成されており、結晶性の良いNdを獲得することができた。
<実施例5>(滴定剤:アンモニア水溶液を用いた沈殿滴定工程後に得られた希土類融解物を電解浴とした場合のNd電解析出試験)
本実施例において、特記のない場合は、<実施例3>と同様の手法を用いている。
本実施例においては、滴定剤を1Mアンモニア水溶液とし、pH=4.82を終点として徐々に滴下させ、Fe(OH)の沈殿滴定を行った。ここで生じたFe(OH)沈殿は遠心分離(7600rpm,5min)により沈降させて、Feを含まないアミド溶液が得られた。その後、アミド溶液に対してホットプレート上で酸成分を除去することにより、希土類成分から成る金属塩を生成した。得られた金属塩については、ICP−AESにて定量分析を行った。その結果として、金属塩組成の一例を表9に示す。なお、表中の各元素に対応する数値はmol%である。
上記により得られた金属塩(実施例番号No.5)に対し、100℃、48hという条件で真空乾燥処理を行った。それに加え、本実施例では、真空乾燥処理後、石英管内で加熱し、溶融状態にしたまま、真空脱水処理を行った。得られた金属塩をDSC分析した結果、融点は170.1℃であることを確認した。
次に、浴塩温度:190℃、印加電圧:3.2V、総電気量:450Cの条件下で電解試験を行った結果、陽極電流効率:92.1%、陰極析出物:168.2mgから判断した陰極回収率は30.0%であった。
得られた電析物をXPS分析した結果、Nd3d5/2スペクトルにおいて、最表面層から0.1μmの深さでは981.5eVにピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から1.7μmの深さでは980.7eVにピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、電析物の深さ方向分析を行った結果、深さ方向の増加とともに電析物中の炭素濃度、酸素濃度が減少することが確認できた。つまり、最表面層からわずかの深さの内部では、非常に純度の高いNdが析出物として形成されており、極めて品質の高いNdを獲得することができた。
<実施例6>(滴定剤:[アンモニア水溶液]+[Ca(OH)]を用いた沈殿滴定工程後に得られた希土類融解物を電解浴とした場合のNd電解析出試験)
本実施例において、特記のない場合は、<実施例3>と同様の手法を用いている。
本実施例においては、滴定剤を[1M アンモニア水溶液]+[1M Ca(OH)](但しNH:Ca=94.8:5.2、単位:mol%)を用いてpH=4.09を終点として徐々に滴下させ、Fe(OH)の沈殿滴定を行った。ここで生じたFe(OH)沈殿は遠心分離(7600rpm,5min)により沈降させて、Feを含まないアミド溶液が得られた。その後、アミド溶液に対してホットプレート上で酸成分を除去することにより、希土類成分から成る金属塩を生成した。得られた金属塩については、ICP−AESにて定量分析を行った。その結果として、複数のサンプルにおける金属塩組成の一例を表10に示す。なお、表中の各元素に対応する数値はmol%である。
金属塩中のNH:Ca=96.8:3.2であり、滴定剤とほぼ同等の組成比を維持できた。実施例番号No.6−2のFe(OH)中の希土類種の割合をICP−AES分析により測定した結果、Fe:RE=98.2:1.8(RE=Pr,Nd,Dy)であり、このpH条件下ではREの共析は僅かであることが確認できた。
上記により得られた金属塩に対し、100℃、48hという条件で真空乾燥処理を行った。それに加え、本実施例では、真空乾燥処理後、石英管内で加熱し、溶融状態にしたまま、真空脱水処理を行った。得られた金属塩をDSC分析した結果、融点は169.34℃であることを確認した。
次に、浴塩温度:190℃、印加電圧:3.2V、総電気量:505Cの条件下で電解試験を行った結果、陽極電流効率:94.7%、陰極析出物:188.7mgから判断した陰極回収率は33.7%であった。
得られた電析物をXPS分析した結果は表11の通りである。なお、表中の各元素に対応する数値はwt%である。なお、以下の実施例番号No.6−3は、上記の実施例番号No.6−1を用いてNd及びDyの電解析出試験を実施した結果物である。
得られた電析物をXPS分析した結果、Nd3d5/2スペクトルにおいて、最表面層から0.15μmの深さでは981.5eVにピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から1.2μmの深さでは980.7eVにピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、電析物の深さ方向分析を行った結果、深さ方向の増加とともに電析物中の炭素濃度、酸素濃度が減少することが確認できた。つまり、電析物中には特にNdとDyの割合が高く、最表面層からわずかの深さの内部では、比較的純度の高いNdとDyが析出物として形成されていた。
<実施例7>(9種の希土類TFSA溶融物に対する希土類電解析出試験)
本実施例において、特記のない場合は、<実施例3>と同様の手法を用いている。
本実施例においては、9種の希土類TFSA塩(La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy)及びFeTFSAを実廃棄物の磁石組成に合わせて1M HTFSAに溶解させた。ただし、La,Ce,Sm,Eu,Gd,TbはDyの含有率と同じ割合とした。
酸化剤として濃硝酸を投入し、アミド溶液50ml中に滴定剤:1M NaOHを使用し、pH=4.62を終点として徐々に滴下させ、Fe(OH)の沈殿滴定を行った。ここで生じたFe(OH)沈殿は遠心分離(7600rpm,5min)により沈降させて、Feを含まないアミド溶液が得られた。
次に、その後、アミド溶液に対してホットプレート上で酸成分を除去することにより、希土類成分から成る金属塩を生成した。得られた金属塩については、ICP−AESにて定量分析を行った。その結果として、金属塩組成の一例を表12に示す。なお、表中の各元素に対応する数値はmol%である。
Fe(OH)沈殿中の希土類種との割合をICP−AES分析により測定した結果、Fe:RE=81.2:18.8(RE=La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy)であり、上記のpH条件下ではREの共析が若干生じることが確認された。
上記により得られた金属塩(実施例番号No.7−1)に対し、100℃、48hの条件で真空乾燥処理を行った。真空乾燥処理後、金属塩を石英管内で加熱し、金属塩を溶融状態にしたまま、金属塩に対して真空脱水処理を行った。得られた金属塩をDSC分析した結果、融点は251.53℃であることを確認した。
次に、浴塩温度:270℃、印加電圧:3.2V、総電気量:166Cの条件下で電解試験を行った結果、陽極電流効率:90.7%、陰極析出物:62.7mgであった。
電析物をEDX分析した結果を表13に示す。なお、表中の各元素に対応する数値はwt%である。なお、以下の実施例番号No.7−2は、上記の実施例番号No.7−1を用いてNdの電解析出試験を実施した結果物である。また、電析物中の希土類含有率としては、Ndの含有量が最も高かった。
得られた電析物をXPS分析した結果、La4d,Ce3d5/2,Pr3d5/2,Nd3d5/2,Sm3d5/2,Eu3d5/2,Gd3d5/2,Tb3d5/2,Dy3d5/2の9種すべてについて、エネルギースペクトルが観測された。つまり、本実施例を考慮すると、希土類元素として、以上の9種の元素から選択される一つまたは二つ以上の元素を回収するのが好適であることが判明した。
特にNd3d5/2スペクトルにおいて、最表面層から0.12μmの深さでは981.5eVにピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から1.5μmの深さでは980.7eVにピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、電析物の深さ方向分析を行った結果、1.5μmの深さでは炭素濃度:0.25%、酸素濃度:1.95%まで減少することが確認できた。つまり、電析物中には9種の希土類が含有されており、特にPr,Nd,Sm,Dyの割合が高くなっていた。そして、最表面層からわずかの深さの内部では、比較的純度の高いNdとDyが析出物として形成されていた。
<実施例8>(希土類金属塩をイオン液体に溶解させた場合の、Nd電解析出試験)
本実施例においては、塩生成工程により生成した希土類金属塩をイオン液体に溶解させた後に電解析出工程を行う例を適用した。そして、本実施例には、Ndを回収した結果について記載した。なお以降、特記の無い事項については、<実施例1>と同様とする。
1−A)解体・分別工程〜1−F)鉄族水酸化物沈殿分離工程までは、<実施例1>と同様とした。
なお、1−D)酸化焙焼工程前の磁石粉末の重量は60.353gであった。1回目の酸化焙焼後、磁石酸化物の重量は81.375gであり、重量増加率は1.348%であった。2回目の酸化焙焼後、磁石酸化物の重量は81.452gであり、重量増加率は1.350%であった。この結果から2回の酸化焙焼工程で重量増加率の変化量が変わらないことから磁石粉末の酸化度が十分であることを確認した。
また、1−F−b)沈殿滴定工程において、沈殿形成の終点はpH=4.4とした。沈殿形成後、遠心分離(10000rpm,5min)により、Fe(OH)沈殿物を完全に分離した。
1−G)塩生成工程においては、アミド溶液をエバポレーションにより濃縮させた後、自動乳鉢上で150℃に保持し、水溶液中の水分及び酸成分を除去した。そして、希土類元素を含む金属塩を得た。更に、金属塩中の水分除去のため、融点以上まで加熱して液相状態を保持した後、真空乾燥処理を12h以上実施した。このようにして、希土類金属塩を生成した。得られた金属塩については、ICP−AESにて定量分析を行った。その結果として、複数のサンプルにおける金属塩組成の一例を表14に示す。
本実施例においては、上記により得られた金属塩を、0.1Mの濃度でイオン液体(P2225TFSA)に溶解させて電解浴とした。
なお、電解試験装置における電極構成としては、図10に示す三電極方式(作用極:Cu板,対極:減磁済Nd−Fe−Bロッド,擬似参照極:Ptワイヤー)とした。以下、概要を説明する。
本実施例における三電極式電解試験装置1Bは、陽極部4、陽極部4を納めたガラス部材8、陰極部5、擬似参照電極部12、これらを収納自在な電解セル13を有している。また、図示しないが、積算電気量を計測可能な電解試験装置も備えている。
電解試験装置から陽極部4、陰極部5、が擬似参照極12の電位基準で電気的に接続されている。擬似参照極を追加することで、印加する電位の精度が高められる。
なお、その他には、電解セル13を覆う耐熱ウール14、その外側にマントルヒーター15、これらの下部にはホットスターラー16が備えられている。電解セル13の内部には撹拌子17が設けられている。また、電解セル13の上部はシリコン栓18により密閉状態に保持されている。シリコン栓18を貫通する形でガラス部材8(陽極部4)、陰極部5、擬似参照電極部12及び電解浴の温度測定のための熱電対19が設けられている。
本実施例においては、減磁処理済みの廃磁石部材が陽極部4として使用される。そして、当該廃磁石部材は、陽極リード線(図示せず)から所定の印加電圧が供給されている。そして、ソーダ石灰ガラスからなり且つ中空のガラス部材8の中に、陽極部4が配置されている。なお、ガラス部材8の先端(天地の地側)には、ガラスフィルター9(バイコールガラスフィルター)が設置されている。
電解セル13に対し、電解浴となる希土類塩溶解イオン液体(電解浴)21が投入されている。それと共に、ガラス部材8の中に希土類塩溶解イオン液体(陽極側)22を投入しておき、希土類塩溶解イオン液体(陽極側)22の中に、減磁処理済の廃磁石部材である陽極部4を浸漬させている。最終的には、希土類塩溶解イオン液体(陽極側)22が収められたガラス部材8を、希土類塩溶解イオン液体(電解浴)21へと浸漬させる。
なお、ガラスフィルター9の機能性により、希土類塩溶解イオン液体(陽極側)22は、電解セル13に投入されて電解浴となる希土類塩溶解イオン液体(電解浴)21中には拡散せず、陽極部4として溶解する減磁処理済の廃磁石部材及び不溶性物質は、陽極部4の近傍に保持される。このように、本実施例における三電極式電解試験装置1Bを設計した。
そして、水分量1ppm以下のグローブボックス中で電解試験を行った。電解試験中は、撹拌子により600rpmで電解浴を攪拌させた。電解の進行に伴い、各電極では次の反応が進行する。
(アノード反応)
Fe→Fe(II)+2e
RE→RE(III)+3e(RE=Pr,Nd,Dy)
(カソード反応)
Nd(III)+3e→Nd
当該アノード反応から生じるFe(II)は電解浴中に拡散せず、Vycor glass filterにより拡散が抑制されている。また、アノード側でのNd溶解はNd−Fe−Bロッド成分からの溶解であり、カソードのNd析出は電解浴中の希土類金属イオン(VCM成分)からのNd(III)の析出である。
そして、電解雰囲気をArとしつつ、Ndの電解析出試験を実施した。なお、電解試験は2回行い、試験ごとに作用極のCu板を交換した。電解条件及び電解試験結果は表15の通りである。
なお、陰極析出物が全てNd金属であると仮定した場合の平均陰極電流効率は71.7%であった。また、初期投入量から計算したNd回収率は39.5%であった。
次に、得られた電析物(実施例番号No.8−2)をXPS分析した結果、Nd3d5/2スペクトルにおいて、最表面層では981.5eVのピークが顕著であり、酸化物相と金属相の中間状態であった。一方、最表面層から0.9μmの深さでは980.7eVのピークが顕著であり、金属相の形成が確認できた。また、電析物の深さ方向解析を行った結果を図11に示す。図11を見ると、電析物中にKの析出はほとんど認められなかった。炭素濃度及び酸素濃度は深さ方向とともに減少していき、0.9μmの深さでC<1.0%, O<1.0%であることを確認できた。
<実施例9>(希土類金属塩をイオン液体に溶解させた場合のNd,Dy電解析出試験)
本実施例においては、Nd及びDyを回収した結果について記載する。なお、特記の無い限り、<実施例8>と同様とする。
電解条件及び電解試験結果は表16の通りである。
得られた陰極電析物(実施例番号No.9−1)をEDX分析した結果、Nd,Dyの混合相であることを確認した。Nd,Dyの混合析出割合から評価した平均陰極電流効率は73.7%であった。なお、本電解試験において、図12に示す通り、陽極側のFe(II)の電解浴中への拡散が抑制されており、かつイオン液体の分解が生じていないことを確認した。すなわち、連続的な電解試験が実施可能であり、かつ電解試験後のイオン液体を再利用することにより、二次廃棄物の発生を抑制することもできる。
得られた電析物をXPS分析した結果を図13に示す。実施例番号No.9−1の場合、Dy3d5/2スペクトルにおいて、最表面層から0.8μmの深さでは1295.5〜1297.0eVの範囲内にピークを生じており、最表面層から0.8μmの深さの組成はDy金属相であることを確認できた。その後、深さ方向を1.5μmまで増加させた場所もDy金属相であることが確認できた。
1A…二電極式電解試験装置、1B…三電極式電解試験装置、2…直流電源、3…積算電量計、4…陽極部、5…陰極部、6…電解槽、7…減磁処理済の廃磁石部材、8…ガラス部材、9…ガラスフィルター、10…希土類融解物(電解浴)、11…希土類融解物(陽極側)、12…擬似参照電極部、13…電解セル、14…耐熱ウール、15…マントルヒーター、16…ホットスターラー、17…撹拌子、18…シリコン栓、19…熱電対、21…希土類塩溶解イオン液体(電解浴)、22…希土類塩溶解イオン液体(陽極側)

Claims (13)

  1. 鉄族元素及び希土類元素を含有する資源から希土類元素を回収する希土類元素の回収方法において、
    前記資源から鉄族元素及び希土類元素を酸溶液であるアミド溶液へと溶解させる溶解工程と、
    前記溶解工程後、前記アミド溶液中の鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物を前記アミド溶液から分離する鉄族化合物分離工程と、
    前記鉄族化合物分離工程後、前記アミド溶液を濃縮させることにより希土類金属塩を生成する塩生成工程と、
    前記希土類金属塩から希土類元素を電解析出させる電解析出工程と、
    を有することを特徴とする希土類元素の回収方法。
  2. 前記溶解工程、前記鉄族化合物分離工程、及び前記塩生成工程が、アミド溶液中で行う湿式分離処理に含まれる工程であり、
    前記電解析出工程が、前記希土類金属塩の融解物を電析媒体として利用し、希土類元素を電解析出させる希土類融解物電析処理に含まれる工程であることを特徴とする請求項1に記載の希土類元素の回収方法。
  3. 前記溶解工程、前記鉄族化合物分離工程、及び前記塩生成工程が、アミド溶液中で行う湿式分離処理に含まれる工程であり、
    前記電解析出工程が、前記希土類金属塩をイオン液体に溶解させたものを電解浴として利用し、希土類元素を電解析出させるイオン液体電析処理に含まれる工程であることを特徴とする請求項1に記載の希土類元素の回収方法。
  4. 前記鉄族元素は少なくとも鉄元素であり、
    前記電解析出工程において回収される希土類元素は、少なくともネオジム元素及びジスプロシウム元素であり、
    前記湿式分離処理の前に酸化焙焼が行われた前記資源に対して前記溶解工程を行うことにより、前記資源からの鉄元素の溶出率を10%以下とし、ネオジム元素とジスプロシウム元素の溶出率を90%以上とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の希土類元素の回収方法。
  5. 前記イオン液体電析処理の後に残存した前記イオン液体を電解浴として再利用する、ことを特徴とする請求項3に記載の希土類元素の回収方法。
  6. 前記溶解工程における前記アミド溶液は、イオン液体を構成可能な疎水性アニオン種を含有する酸溶液であることを特徴とする請求項1に記載の希土類元素の回収方法。
  7. 前記鉄族化合物分離工程は、前記アミド溶液中の鉄族元素を水酸化物とすることにより、当該水酸化物を沈殿させ且つ分離する鉄族水酸化物沈殿分離工程であることを特徴とする請求項6に記載の希土類元素の回収方法。
  8. 前記鉄族水酸化物沈殿分離工程においては、アルカリ金属水酸化物の水溶液、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液、アンモニア水溶液、希土類水酸化物の水溶液及びそれらの混合液の少なくともいずれかを用いて鉄族元素を水酸化物とすることを特徴とする請求項7に記載の希土類元素の回収方法。
  9. 前記鉄族水酸化物沈殿分離工程は、
    イオン化した鉄族元素に対する酸化処理を行う酸化処理工程と、
    前記酸化処理工程後、前記アミド溶液中の鉄族元素を滴定剤により水酸化物へと変化させて、当該水酸化物を沈殿させる沈殿滴定工程と、
    を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の希土類元素の回収方法。
  10. 前記鉄族元素は少なくとも鉄元素であることを特徴とする請求項8又は9に記載の希土類元素の回収方法。
  11. 前記酸化処理工程においては、2価の鉄イオンを3価に酸化させることを特徴とする請求項9に記載の希土類元素の回収方法。
  12. 前記電解析出工程において回収される希土類元素は、ランタン元素、セリウム元素、プラセオジム元素、ネオジム元素、サマリウム元素、ユウロピウム元素、ガドリニウム元素、テルビウム元素及びジスプロシウム元素から選択される一つまたは二つ以上の元素であることを特徴とする請求項1〜3、5〜11のいずれか1つの項に記載の希土類元素の回収方法。
  13. 鉄族元素及び希土類元素を含有する資源から希土類元素を回収する希土類元素の回収装置において、
    前記資源から鉄族元素及び希土類元素を溶解させた酸溶液であるアミド溶液から鉄族元素を含む化合物を生成することにより、当該化合物を前記アミド溶液から分離する第1処理部と、
    前記化合物が分離された後、希土類元素と前記アミド溶液を構成するアニオン種とで構成される希土類金属塩から希土類元素を電解析出させる第2処理部と、
    を有することを特徴とする希土類元素の回収装置。
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