JP2014099367A - 非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一般式:LiaMbSiOc(ただし、a=0.02〜4、b=0.5〜2、c=1.4〜4、Mは遷移元素であり、Co、Mn、Ni及びFeからなる群から選択される少なくとも一種以上である)で表されるリチウム・ケイ酸塩化合物粒子において、リチウム・ケイ酸塩化合物粒子の粒子表面が、リン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆する工程を特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質およびその製造方法。
【選択図】図1
Description
このような二次電池として、リチウムイオン二次電池が挙げられる。
このリチウムイオン二次電池は、負極および正極と電解液等で構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
このため、安全性で問題を起こす原因となる過放電や過充電に強く、高温での安定性も高い。さらに、サイクル寿命や急速充放電でも優位性がある。
さらに、Liの拡散性が低く、そのままでは十分な性能が出せないことから、数十nm 径に微粒子化し、拡散距離を短くするとともに表面積を増やしている。一方、微粒子化されたLiFePO4粒子は、高密度に充填することが難しく、放電容量を十分に向上できない。
例えば、正極活物質としてリチウム・ケイ酸塩化合物を使用した非水電解液二次電池において、非水電解質にフルオロシラン化合物を含有させることにより高温保存又は高温充放電を経ても小さな内部抵抗と高い電気容量を維持する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
さらに、リン酸塩皮膜の外側を炭素で被覆することにより粒子間の導電性を確保して高容量で充放電サイクル特性が良好な非水電解質二次電池用正極活物質に至り、この正極活物質を用いて正極板を構成した非水電解質二次電池が得られることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
ここで、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質の技術的特徴は、リチウム・ケイ酸塩化合物粒子の表面をリン酸処理してリン酸塩皮膜で被覆し、さらに、炭素皮膜で被覆した構造にある。
<1.正極活物質>
本発明の非水電解質二次電池用正極活物質について図面を参照しながら、具体的に説明する。
図1は、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質の実施形態を具体的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質11は、リチウム・ケイ酸塩化合物粒子3の表面に、リン酸処理によるリン酸塩皮膜2が形成され、さらに、そのリン酸塩皮膜の表面に炭素皮膜1が形成されているリチウム・ケイ酸塩化合物粒子である。
本発明の正極活物質を主として構成するリチウム・ケイ酸塩化合物粒子3は、一般式LiaMbSiOc(ただし、a=0.02〜4、b=0.5〜2、c=1.4〜4、Mは遷移元素であり、Co、Mn、Ni及びFeからなる群から選択される少なくとも一種以上である)で表されるリチウム・ケイ酸塩化合物粒子である。
本発明のリン酸塩皮膜2は、上記リチウム・ケイ酸塩化合物粒子3の表面を被覆し、充電時の高温環境下におけるリチウム・ケイ酸塩化合物粒子のFe等の遷移金属の溶出抑制するものであればよい。
すなわち、リチウム・ケイ酸塩化合物粒子を正極とした場合、充電時にはリチウム・ケイ酸塩化合物粒子からLiが引き抜かれるため、構造が不安定となり、ケイ酸塩化合物粒子と電解液との界面で、Fe等の遷移金属の溶出が起こってしまう。
さらに、リチウム・ケイ酸塩化合物粒子表面と連続的につながり、剥離しにくい構造でLiイオンの拡散が容易であればよい。
炭素皮膜1による被覆は、上記リン酸塩皮膜2で被覆されたリチウム・ケイ酸塩化合物粒子の表面を被覆し、電子伝導性を向上させるものである。
その炭素源には、酢酸、クエン酸等の有機酸や、セルロース、グルコース、スクロース、ラクトース、マルトース等の糖、ポリビニルアルコール等のポリマー等を用いることができる。なお、リン酸塩皮膜で被覆されたリチウム・マンガン複合酸化物粒子に対する炭素材料の質量比率は限定されるものではないが、炭素材料の質量比率は低いほど正極活物質量を低減できる。
[リチウム・ケイ酸塩化合物粒子]
リチウム・ケイ酸塩化合物粒子の製造方法は特に限定されず、Liに遷移金属を固溶させられる方法であれば良く、溶融炭酸塩法、固相反応法、水熱合成法など種々の方法により合成する。
例えば、水熱合成法では所定比で混合したLi源、遷移金属源、非晶質SiO2を蒸留水に分散させ耐圧容器に入れ、水熱処理を経てリチウム・ケイ酸塩化合物粒子を作製する方法などが挙げられる。
リン酸塩皮膜による被覆方法は、リン酸存在下の有機溶剤中で粉砕する方法が使用できる。
この方法によれば、アトライタ等によってリチウム・ケイ酸塩化合物粒子を粉砕する際にリン酸を添加することにより、粉砕によって凝集粒子に新生面が生じても瞬時に溶媒中のリン酸と反応し、粒子表面に安定なリン酸塩皮膜が形成される。その後、粉砕されたリチウム・マンガン複合酸化物粒子が凝集しても、接触面はすでに安定化されており、解砕により被覆の不完全領域が生じることはない。
このリン酸塩皮膜の平均厚みが5nm未満であると、十分なFe等の遷移金属の溶出抑制が得られず、また、100nmを越えると電池特性が低下する。
そのリン酸の添加方法は、特に限定されず、例えば、アトライタ等でリチウム・マンガン複合酸化物粒子を粉砕するに際し、溶媒として用いる有機溶剤にリン酸を添加する。リン酸は、最終的に所望のリン酸濃度になれば良く、粉砕開始前に一度に添加しても粉砕中に徐々に添加しても良い。
即ち、0.1mol/kg未満であるとリチウム・ニッケル複合酸化物粒子の表面処理が十分に行なわれないためにFe等の遷移金属の溶出抑制が十分ではない。
たとえば、リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ケイ酸塩化合物粒子をアセトンに溶解した酢酸セルロース溶液に含浸する。乾燥後、加熱炉でアルゴン雰囲気中にて昇温して保持する。次いで、アルゴン雰囲気中にて段階的に冷却する。この工程によりリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ケイ酸塩化合物粒子表面を、さらに、炭素皮膜で被覆することができる。
上記非水電解質二次電池用正極活物質を用いて、例えば、以下のようにして正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。
その正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、二次電池の性能を決定する重要な要素であり、溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を50〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜30質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが望ましい。
作製したシート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
ただし、本発明の二次電池は、上記正極活物質を用いる点に特徴を有するものであり、その他の構成要素は特に限定されるものではない。
この負極を構成する負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。
また負極結着剤としては、正極同様、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これら活物質および結着剤を分散させる溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
このセパレータは、正極と負極とを分離し電解質を保持するものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な穴を多数有する膜を用いることができる。
さらに、上記非水系電解液には、ラジカル補足剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、この電極体に上記非水系電解液を含浸させる。正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、並びに負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を集電用リード等で接続する。以上の構成のものを電池ケースに密閉して電池を完成させることができる。
(1).リチウム・ケイ酸塩化合物粒子の作製
窒素雰囲気下でLiOH・H2O、FeCl2・4H2O、非晶質SiO2を、Li :Fe:Siのモル比率が2 : 1 : 1 となるように、イオン交換水中に加えて攪拌し、混合した後、テフロン(登録商標)製耐圧容器に入れ、反応温度150℃、反応時間72hrで水熱合成を行ってLi2FeSiO4の組成を有するリチウム・ケイ酸塩化合物粒子を得た。
次に、容器内部を窒素で置換したアトライタを用い、回転数200rpmで、リチウム・ケイ酸塩化合物粒子1kgを1.5kgのイソプロパノール中で2時間粉砕し、平均粒径3μmのリチウム・ケイ酸塩化合物粒子を作製した。
この粉砕途中または粉砕後に、表1の記載に従って所定量の85%オルトリン酸水溶液をリチウム・ケイ酸塩化合物粒子に添加、混合した。
その後、リチウム・ケイ酸塩化合物粒子を真空中120℃で4時間乾燥させリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ケイ酸塩化合物粒子を得た。
リン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ケイ酸塩化合物粒子をアセトンに溶解した酢酸セルロース(アセチル基の含有率:39.7質量%、重量平均分子量Mw50000)溶液に含浸する。
添加した酢酸セルロースの量は、処理したリン酸塩皮膜で被覆したリチウム・ケイ酸塩化合物粒子の5質量%である。
図1に、この炭素皮膜1およびリン酸塩皮膜2で被覆した実施例1に係る非水電解質二次電池用正極活物質となるリチウム・ケイ酸塩化合物粒子11aの断面図を示す。3aは、リン酸塩及び炭素による被覆前のリチウム・ケイ酸塩化合物粒子である。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
得られたリチウム・ケイ酸塩化合物粒子のリン酸塩皮膜厚みは、XPSにてP、Oスペクトルをモニターした。
皮膜のPのプロファイルから、最大強度の50%に低下する位置を皮膜と下地の界面位置とし、表面から界面位置までのスパッタリング時間L(sec)を読み取った。このLに標準試料であるSiO2におけるスパッタリング速度5nm/minを乗じてSiO2換算膜厚とした。
表1にその結果を示す。
正極活物質粉末60質量部にアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製)30質量部およびPTFE(ダイキン工業株式会社製)10質量部を混合し、ここから150mgを取り出して、圧力100MPaで直径11mmのペレットを作製し、正極とした。
負極としてリチウム金属を用い、電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の等量混合溶液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
これらを用いて、露点が−80℃ に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
正極缶9と負極缶8との間にはガスケット7が配置され、正極缶9と負極缶8が短絡するのを防ぐとともに、2032型のコイン電池10の内部を外界から遮蔽している。
作製した電池は24時間程度放置し、OCVが安定した後、60℃環境下において、放電容量の測定を行った。
放電容量については、正極に対する電流密度を0.5mAとし、カットオフ電圧を1.5〜4.6Vとして充放電試験を行い評価した。
表1に初期放電容量、20サイクル目の放電容量の測定結果および容量維持率を示す。
それらの結果を表1に示す。
それらの結果を表1に示す。
実施例1においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は、全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例1と同様の方法で行なった。
初期放電容量の測定結果を表1に示す。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
初期放電容量の測定結果を表2に示す。
実施例4においてリン酸塩皮膜による被覆工程を省いた以外は、全て同様の方法にてコイン電池を製造した。
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例4と同様の方法で行った。
初期放電容量の測定結果を表2に示す。
この試料は、1質量%の炭素を含み、これは酢酸セルロースの炭化効率20%に相当する。
初期放電容量の測定結果を表3に示す。
それらの結果を表3に示す。
それらの結果を表3に示す。
(比較例3)
作製した電池の初期放電容量の測定は、実施例7と同様の方法で行った。
初期放電容量の測定結果を表3に示す。
2 リン酸塩皮膜
3 リチウム・ケイ酸塩化合物粒子
3a 実施例1に係るリチウム・ケイ酸塩化合物粒子
3b 実施例4に係るリチウム・ケイ酸塩化合物粒子
3c 実施例7に係るリチウム・ケイ酸塩化合物粒子
4 リチウム金属負極
5 セパレータ(電解液含浸)
6 正極(評価用電極)
7 ガスケット
8 負極缶
9 正極缶
10 2032型のコイン電池
11 本発明に係る非水電解質二次電池用正極活物質(リン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆されたリチウム・ケイ酸塩化合物粒子)
11a 実施例1に係るリン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆されたリチウム・ケイ酸塩化合物粒子
11b 実施例4に係るリン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆されたリチウム・ケイ酸塩化合物粒子
11c 実施例7に係るリン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆されたリチウム・ケイ酸塩化合物粒子
Claims (4)
- リチウム・ケイ酸塩化合物粒子であって、
前記リチウム・ケイ酸塩化合物粒子の粒子表面が、リン酸塩皮膜、炭素皮膜の順に被覆されていることを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。 - 前記リチウム・ケイ酸塩化合物粒子が、一般式LiaMbSiOc(ただし、a=0.02〜4、b=0.5〜2、c=1.4〜4、Mは遷移元素であり、Co、Mn、Ni及びFeからなる群から選択される少なくとも一種以上である)で表されるリチウム・ケイ酸塩化合物の粒子であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- リチウム・ケイ酸塩化合物粒子の粒子表面をリン酸処理によりリン酸塩皮膜で被覆する工程と、前記リン酸塩皮膜により被覆された粒子表面を炭素皮膜により被覆する工程を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記リチウム・ケイ酸塩化合物粒子が、一般式LiaMbSiOc(ただし、a=0.02〜4、b=0.5〜2、c=1.4〜4、Mは遷移元素であり、Co、Mn、Ni及びFeからなる群から選択される少なくとも一種以上である)であることを特徴とする請求項3に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
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