JP2014096459A - 太陽電池用半導体基板の表面処理方法、太陽電池用半導体基板の製造方法、太陽電池の製造方法及び太陽電池製造装置 - Google Patents
太陽電池用半導体基板の表面処理方法、太陽電池用半導体基板の製造方法、太陽電池の製造方法及び太陽電池製造装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】太陽電池用半導体基板表面に面内均一なテクスチャーを形成し、高い発電効率を有する太陽電池を高い歩留まりで得ること。
【解決手段】スライスにより生じたn型単結晶シリコン基板1などの半導体基板表面のダメージ層102を除去するエッチング工程の前後に酸化膜106を形成する酸化膜形成工程(S211)(S215)と酸化膜106を除去する酸化膜除去工程(S213)(S217)を少なくとも1回実施し、その後、アルカリ性水溶液にn型単結晶シリコン基板1を浸漬して異方性エッチングを行い、表面にテクスチャー構造を形成する。
【選択図】図2−3
【解決手段】スライスにより生じたn型単結晶シリコン基板1などの半導体基板表面のダメージ層102を除去するエッチング工程の前後に酸化膜106を形成する酸化膜形成工程(S211)(S215)と酸化膜106を除去する酸化膜除去工程(S213)(S217)を少なくとも1回実施し、その後、アルカリ性水溶液にn型単結晶シリコン基板1を浸漬して異方性エッチングを行い、表面にテクスチャー構造を形成する。
【選択図】図2−3
Description
本発明は、太陽電池用半導体基板の表面処理方法、太陽電池用半導体基板の製造方法、太陽電池の製造方法及び太陽電池製造装置に係り、特に半導体インゴットからスライスされた太陽電池用半導体基板の表面処理方法に関する。
従来、シリコン太陽電池は、無尽蔵のエネルギー源である太陽光を電気エネルギーに変換する装置であるため、クリーンなエネルギー源である。シリコン太陽電池の製造においては、発電効率の向上に加え、量産における特性のばらつきを出来るだけ抑え、高い発電効率を有する太陽電池を安定的に製造することが重要である。太陽電池の性能向上には、太陽光を、効率よく光起電力装置内部に取り込むことが大切である。
太陽電池用半導体基板として用いられるシリコン(単結晶シリコン、多結晶シリコンを含む)基板は、半導体インゴットをワイヤソーカッターなどでスライスしてウェハ(以下ウェハと呼ぶ)に加工するため、基板表面に数μmの機械加工変質層(以下、ダメージ層と呼ぶ)を有する。ダメージ層が残存したままセルを作製すると特性が劣化するため、ウェットエッチング処理するのが一般的である。具体的には水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムを含む高温のアルカリ性水溶液あるいは弗酸と硝酸の混合液等のエッチング液に、数分程度浸漬することにより、ウェットエッチング処理がなされる。
半導体インゴットからスライス加工した半導体基板表面には砥粒、スラリー、シリコン粉が残存するため、界面活性剤等を含む洗浄剤によって洗浄される。このときに、洗浄が不十分であったり、あるいは洗浄剤自体が残存すると、半導体基板表面に重金属(Fe、Cu、Ni等)及び有機物が付着し、上記のウェット工程においては、エッチングを阻害する要因となる。そのため、基板表面にダメージ層が残存する領域が発生して、基板表面の状態が面内で不均一となり、さらに基板間でエッチング状態にばらつきが生じる。このため、次工程の光吸収率を高めるための微小な凹凸部すなわちテクスチャーを形成する工程において、テクスチャー形成不良を引き起こすことがある。このようなテクスチャー形成不良基板を用いて太陽電池セルを作製した場合、光電変換効率の低下や歩留まりの低下を招くことがあった。
従来、このようなウェットエッチング処理工程に阻害をもたらす原因である半導体基板表面に付着した有機物を除去するために、酸化性水溶液洗浄によって除去する技術が開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、半導体インゴットからスライス加工した半導体基板表面には有機物だけでなく、再付着したパーティクル、酸化膜、金属不純物原子が多数存在しており、さらには、有機物上に重金属あるいは酸化膜が積層している場合もある。このため、酸化性水溶液洗浄だけでは積層した重金属下あるいは酸化膜下に存在する有機物を除去することができず、有機物が半導体基板表面に残存し、エッチングの阻害要因となる。そのため半導体基板表面でエッチング速度の異なる状態が発生し、結晶面がそろわず、半導体基板面内で不均一な結晶面が形成されることとなり、次工程のテクスチャー形成に影響を与える。また、ダメージ層をエッチング除去するアルカリ性水溶液中には、ダメージ層に含まれる重金属あるいはエッチング装置の構成材料からの溶出物、使用する薬液、使用する純水、さらにバッチ式のエッチング装置の場合は基板を充填するカセットなどからの溶出物の混入があり、エッチング後の半導体基板表面に重金属が再付着する。半導体基板表面にテクスチャーを形成する場合、半導体基板表面に付着した重金属がテクスチャー形成阻害要因となり、均一なテクスチャーを得ることが難しいという問題があり、場合によってはエッチングが全く進行しない場合がある。
このように、従来技術においては、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層に付着した重金属あるいは有機物、アルカリ性水溶液中に溶出した重金属などが半導体基板表面に再付着する影響を十分に排除するのが困難であった。従って、半導体基板表面に、安定して均一なテクスチャーを形成できないため、このような半導体基板を用いて太陽電池セルを作製すると、特性劣化あるいは歩留まり低下を招き、最終的に太陽電池の変換効率の向上を妨げる原因となり得る。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、太陽電池用半導体基板の製造工程におけるダメージ層を除去する工程において、均一にダメージ層をエッチング除去でき、エッチング除去した後の半導体基板表面の重金属の再付着を抑制し、より清浄な表面状態を得ることができる表面処理方法を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の太陽電池用半導体基板の表面処理方法は、少なくとも、スライスされた半導体基板において、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程の前後に、前処理工程と、後処理工程とを含み、これら前処理工程及び後処理工程が、酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を少なくとも1回実施し、前記半導体基板表面を清浄化する工程であることを特徴とする。
本発明の表面処理方法によれば、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層に付着した重金属あるいは有機物を除去することで、均一にダメージ層をエッチング除去することができる。従って、基板間のエッチングばらつきが低減され、高歩留まりを得られるという効果を奏する。また、ダメージ層をエッチング除去した後の半導体基板表面の重金属の再付着を抑制しているため、エッチング後に清浄な半導体基板表面を得ることができる。従って、結晶シリコン表面に均一なテクスチャーと清浄度の高い半導体基板表面が形成でき、太陽電池表面における光反射率を低下させ、欠陥あるいは界面準位の発生によるキャリアの再結合が低減される。その結果、良好な界面構造が形成されるため、短絡電流が向上し、変換効率の向上を図ることができるという効果を奏する。
以下に、本発明にかかる太陽電池用半導体基板の表面処理方法の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。各図面間においても同様である。
実施の形態1.
図1−1〜図1−5は、本発明にかかる太陽電池用半導体基板の表面処理方法の実施の形態1を模式的に示す工程断面図である。まず、本発明に用いる、太陽電池用半導体基板としてのシリコン基板について説明する。ここで用いられるシリコン基板には、導電性を持たせるためにシリコンに対して電荷を供給する不純物を含有させるため、リン原子などのn型不純物を供給したn型と、ボロン原子などのp型不純物を供給したp型とがある。本実施の形態1においては、使用するシリコン基板としては、n型単結晶シリコン基板を用いた。
図1−1〜図1−5は、本発明にかかる太陽電池用半導体基板の表面処理方法の実施の形態1を模式的に示す工程断面図である。まず、本発明に用いる、太陽電池用半導体基板としてのシリコン基板について説明する。ここで用いられるシリコン基板には、導電性を持たせるためにシリコンに対して電荷を供給する不純物を含有させるため、リン原子などのn型不純物を供給したn型と、ボロン原子などのp型不純物を供給したp型とがある。本実施の形態1においては、使用するシリコン基板としては、n型単結晶シリコン基板を用いた。
本発明者らは種々の実験結果から、テクスチャー形成後の基板表面におけるFe,Ni,Cuなどの重金属量とキャリアライフタイムに大きな相関があることを発見した。そしてさらなる考察の結果、本発明者等は、テクスチャーエッチング前の半導体基板表面状態とエッチング後の基板表面形状、及びテクスチャーエッチング後の半導体基板の表面状態と基板表面の重金属量に大きな差があることを発見した。そこで、この点に着目し、テクスチャー形成のためのエッチングに先立ち、確実に重金属などの汚染を除去することで均一なテクスチャー構造を形成すべく、なされたものである。つまりテクスチャー形成の直前工程であるダメージ層除去工程において、その前後に前処理工程及び後処理工程を実施し、確実な重金属汚染を除去する。この重金属汚染除去のための前処理工程及び後処理工程を、酸化膜の形成、酸化膜の除去を少なくとも1回繰り返すことで効率よく重金属汚染を除去し、清浄な表面を得る。
すなわち、この方法は、シリコンインゴットからスライシング工程によりn型単結晶シリコン基板1(ウエハ)を形成しテクスチャー構造を形成するに際し実施される。図2−1〜図2−4にそのフローチャートを示す。まず、スライシング工程(S1)によるダメージ層除去のためのアルカリ性水溶液を用いたエッチング工程(ダメージ層除去工程:S2)の前後にn型単結晶シリコン基板表面に膜厚1nm程度の酸化膜を形成する工程と、酸化膜を除去する工程とを複数回繰り返し、表面の清浄化をはかる前処理工程S21及び後処理工程S24を実行するようにした。特にバッチ式の処理装置の場合は基板を充填するカセットなどからの溶出物の混入があり、エッチング後の基板表面に重金属が再付着し易いため、特にこの方法が重要となる。
このダメージ層除去工程S2は、図3に示す装置を用い、バッチ処理を行なうものである。ここでは、酸化膜の膜厚を測定する測定部34によって、酸化膜の膜厚が1nm程度となるまでオゾン水洗浄を行ない、1nmとなると停止し、弗酸による酸化膜除去を行ない、これを繰り返すことで前処理S21を実施し、この後ダメージ層除去を行なう。ダメージ層除去S22は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液或いは弗酸と硝酸の混合液などを用いて、シリコン基板表面をエッチングするアルカリエッチングによって行なう。通常、ダメージ層除去工程S2では、基板スライシング工程S1で生じたシリコン基板表面の機械加工変質層及び汚れを取り除くため、およそ5〜20μm程度、シリコン基板表面をエッチングする。特に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を用いてエッチングする場合は、表面に付着したり、ダメージ層中に取り込まれたりしている銅あるいは鉄などはエッチング後、直ちにシリコン基板表面に再付着する。また、工業用グレード等の理由により、薬品の品質が低い場合、エッチング液からのコンタミネーションにより、基板表面が金属汚染することがある。そして最後に再度後処理工程24として図3に示す装置で同様の酸化膜生成241、酸化膜除去工程243を2ループ繰り返し実施する。
上記図2−3に示したフローチャートに基づき、前処理工程を工程断面図とともに説明する。図1−1に示すように、n型単結晶シリコン基板1表面には、ダメージ層102が発生している。さらに、スライシング工程で付着した有機物103あるいは金属104が、容易に除去しにくい状態でシリコン基板の表面に残存する。このとき、図1−2に示すように、酸化膜形成工程S211で濃度及び浸漬時間を制御しつつオゾン水に浸漬することにより、表面に1nm程度の酸化膜が形成される。このとき、基板表面の有機物103あるいは金属104も酸化膜106中に取り込まれる。そして図1−3に示すように、この第1水洗S212で洗浄液を除去し、酸化膜除去工程S213で弗化水素酸によりエッチング除去することにより、酸化膜106とともに有機物103あるいは金属104も除去し、第2水洗S214を行う。こののち、図1−4に示すように、再び酸化膜形成工程S215で濃度及び浸漬時間を制御しつつオゾン水に浸漬することにより、表面に1nm程度の酸化膜が形成される。このとき、さらに基板表面の有機物103あるいは金属104も酸化膜106中に取り込まれる。そして第3水洗S216後この酸化膜を酸化膜除去工程S217で弗化水素酸によりエッチング除去し、第4水洗S218でエッチング液を除去することにより、酸化膜106とともに金属104あるいは有機物103も除去され、図1−5に示すように、ダメージ層102をもつ清浄な基板表面を得ることができる。このS211からS214を複数回繰り返すことにより、より清浄な表面を得ることができる。
図3は、本実施の形態1の太陽電池製造装置のダメージ層除去装置における、本実施の形態の前処理工程及び後処理工程を実行するための、洗浄部30を示す図である。この洗浄部30は、前処理工程及び後処理工程において酸化膜形成を行なうのに用いられる。この洗浄部30は、n型単結晶シリコン基板1表面の酸化膜の膜厚を測定する分光エリプソメーターからなる測定部34とこの測定結果に基づき、酸化膜形成を停止し、水洗を経て酸化膜除去を行なう、ように切り替えを指示する制御部32を含む。
本実施の形態のダメージ層除去のための酸化膜形成のためのオゾン水洗浄を実現するための洗浄部は、酸化膜の膜厚を測定する測定部34を備えている。そして洗浄部は、洗浄槽22と、オゾン水供給管23と、該洗浄槽22にオゾン水供給管23からオゾン水24を供給し、オーバーフローさせる、排出部25とを具備している。オゾン水供給管23の上流にはオゾン水生成部31が接続されている。排出部25はオゾン水出口配管を構成している。洗浄槽22内に底面内に沿って配置されたオゾン水供給管23にはオゾン水供給孔26が複数個上向きに形成されている。
さらに、オゾン濃度モニタ33がオゾン濃度モニタ配管35を介して洗浄槽22に接続され、洗浄槽22の外部でオゾン濃度をモニターできるようになっている。オゾン水生成部31とオゾン濃度モニタ33は信号線36及び制御部32を介してそれぞれ接続されている。制御部32は、酸化膜形成と酸化膜除去を複数回繰り返し、半導体基板表面を清浄化するように、測定部34で得られた酸化膜の膜厚に基づき、酸化膜の膜厚が所定の値となったところで、洗浄を止め、酸化膜を除去するように操作を繰り返すように制御を行なう。ここで、洗浄部では、120枚のn型単結晶シリコン基板1をカセットKにセットして、洗浄槽22に浸漬する。
続いてこのダメージ層除去のための洗浄部30の動作について詳細に説明する。洗浄槽22の上方には酸化膜の膜厚を測定する測定部34が設けられ、酸化膜の膜厚をモニターしている。そしてオゾン水生成部31で製造された所定濃度、流量のオゾン水24は、オゾン水供給管23を介して洗浄槽22にオゾン水供給孔26から連続的に供給される。オゾン水24は洗浄槽22内に貯留され、排出部25を介して排出される。オゾン水出口配管からなる排出部25は、オゾン水24をオーバーフローさせるための出口であり、これによって所望の濃度に制御されたオゾン水24をオゾン水供給管23から常時供給できるようになる。洗浄槽22内のオゾン水24はポンプPによって(ポンプは無い場合もある)オゾン濃度モニタ配管35を介して、オゾン濃度モニタ33に送水され、オゾン濃度が測定される。ここで測定されたオゾン濃度の値は信号線36を介して制御部32に送られ、この値と測定部34で測定された酸化膜の膜厚に基づいてオゾン水生成部31のオゾン発生量は例えば、PID制御等によってコントロールされる。
このようにオゾン濃度が制御された洗浄槽22にダメージ層除去S22のためのアルカリエッチング前のn型単結晶シリコン基板1がロボットアーム等(図示しない)を介して浸漬され、オゾン水洗浄が実施される(前処理S21)。オゾン水洗浄(酸化膜形成S211)後は水洗された後((S212)無くても良い)、弗化水素酸と接触させて酸化膜を除去し(酸化膜除去S213)、さらに水洗される工程(S214)が2ループ繰り返され最終的に乾燥される。なお、ここでオゾン水供給孔26の径を下流ほど大きくして、オゾン水供給管23から供給されるオゾン水24を洗浄槽22の底部から均一に排出することが可能となる。
このように、制御部34の操作により、繰り返し酸化膜の形成(S211,S215)、除去(S213,S217)を行なうことで、良好な表面状態を得ることができる。なお、これらの各処理の間には水洗(S212,S214,S216,S218)を実行する。また、酸化膜の形成工程S211に先立ち酸化膜の除去工程S210を行なってもよい。この工程において、酸化膜の形成、除去を繰り返し行なうことにより、より効率よく表面の清浄化をはかることができるが酸化膜の形成、除去をそれぞれ1回行なうことによっても表面の清浄化をはかることができる。
そしてダメージ層除去工程後も同様に後処理として同様の繰り返し酸化膜の形成(S241,S245)、除去(S243,S247)を行なうことで、良好な表面状態を得ることができる。この工程では、図2−4にフローチャートを示したように、なお、これらの各処理の間には水洗(S242,S244,S246,S248)を実行する。また、酸化膜の形成工程S241に先立ち酸化膜の除去工程S240を行なってもよい。この工程において、酸化膜の形成、除去を繰り返し行なうことにより、より効率よく表面の清浄化をはかることができるが酸化膜の形成、除去をそれぞれ1回行なうことによっても表面の清浄化をはかることができる。
比較のために、前工程において、酸化膜の膜厚が1nm程度となるようにオゾン濃度及び浸漬時間を制御し、複数回の酸化膜形成、酸化膜除去を繰り返すことを行なわない、従来例の方法で、ダメージ層除去を行なった。その場合、基板表面に酸化膜106の一部とともに有機物103あるいは金属104が残存してしまい、完全にダメージ層除去を行なうことができず、ダメージ層が残留してしまった。又、ダメージ層除去工程の後処理工程においても、酸化膜の膜厚が1nm程度となるようにオゾン濃度及び浸漬時間を制御し、酸化膜形成、酸化膜除去を行なわない、従来例の方法で、ダメージ層除去を行なった。その場合、基板表面に酸化膜106の一部とともに有機物103あるいは金属104が残存してしまい、シリコン基板1の清浄度を高められなかった。
次に、このようにして得られた、清浄な表面をもつn型単結晶シリコン基板1を形成し、太陽電池を製造する方法について説明する。本実施の形態の太陽電池の製造方法は、図2−1のフローチャートに示すように、S1−S2−S3−S4−S5−S6−S7の手順により行われる。以下にその詳細を簡単に説明する。ここではインゴットをスライスしてn型単結晶シリコン基板1を形成するところから簡単に説明する。
図2−1において、まず基板スライシング工程(ステップS1)を実施する。この基板スライシング工程S1は、例えば引き上げ法により製造される単結晶インゴットをスライスし、厚さ数百μm程度のシリコン基板を作製する工程である。太陽電池用のn型単結晶シリコン基板1のスライスには、切断機としてマルチワイヤーソーが用いられることが多い。このマルチワイヤーソーのワイヤーの材料は鉄であり、さらに腐食防止のために銅などの種々の金属もしくは合金がコーティングされている。そのため、スライスの進行に伴い、ワイヤーが摩耗し、上述したワイヤーの材料である鉄あるいは銅の合金の一部が、n型単結晶シリコン基板1表面に付着したり、ダメージ層中に取り込まれたりする。尚、本実施の形態において、切断機はワイヤーソーに限定されるものではなく、他の装置によってスライスされてもよい。また上記単結晶インゴットに代えて、キャスト法などにより製造された多結晶シリコンインゴットを用いてもよい。
次に、ダメージ層除去工程(ステップS2)を実施する。このダメージ層除去工程S2は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液或いは弗酸と硝酸の混合液などを用いて、シリコン基板表面をエッチングする工程である。
図2−2は本実施の形態にかかるダメージ層除去工程(ステップS2)を詳細に示すフローチャートである。順に、基板スライシング工程S1を経た基板を基板表面汚染除去洗浄工程(前処理ステップS21)、アルカリエッチング工程(ダメージ層除去ステップS22)、水洗工程(ステップS23)、再付着汚染除去洗浄工程(後処理ステップS24)、乾燥工程(ステップS25)とからなる。この後、テクスチャー形成工程S3が実行される。
本実施の形態において、図2−2のアルカリエッチング工程(ダメージ除去ステップS2)による処理は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性水溶液(濃度は例えば1〜50wt%)に、70〜90℃程度の温度でこのn型単結晶シリコン基板を数分又は数十分程度浸漬させることが好ましい。また、弗酸と硝酸の混合液を用いても良い。
この工程では、上述した図2−3の前処理を実行した後、基板スライシング工程S1で生じたn型単結晶シリコン基板表面の機械加工変質層及び汚れを取り除くため、およそ5〜20μm程度、基板表面をエッチングする。特に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を用いてエッチングする場合は、表面に付着したり、ダメージ層中に取り込まれたりしている銅、鉄などはエッチング後、直ちに基板表面に再付着する。また、工業用グレード等の理由により、薬品の品質が低い場合、エッチング液からのコンタミネーションにより、基板表面が金属汚染することがある。そこでさらに後処理として前処理と同様に繰り返し酸化膜の形成、酸化膜除去工程を繰り返す。これにより極めて良好な表面を得ることができる。
さらに、テクスチャー形成工程(ステップS3)を実施する。このテクスチャー形成工程S3は、シリコン基板表面にテクスチャー構造と呼ばれる凹凸部1Tを形成する工程である。テクスチャー構造とするのは、入射光の多重反射を利用した光閉じ込め技術であり、太陽電池の性能を高めるために行われる。このようなテクスチャー構造を得るために、湿式エッチングによる方法、或いは機械的な方法でグルーブ加工する方法などを実施する。しかしながら、前者は工程S2の説明で、後者は工程S1の説明で述べたのと同様の理由から、金属汚染の可能性がある。湿式エッチングによる方法としては例えば、ダメージ層除去工程S2で用いたのと同様のアルカリ性水溶液に1乃至30重量%のイソプロピルアルコールを添加した溶液あるいは炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液等を用いた工程がある。
図4−1及び4−2は、テクスチャーエッチングを模式的に示す工程断面図である。図4−1に示すn型単結晶シリコン基板1は、ダメージ層除去工程S2を経たものである。ダメージ層除去のためのアルカリエッチングS22の後、上述したようにn型単結晶シリコン基板1の表面には付着物が付着している場合もあるが、図2−4にフローチャートを示した後処理工程S24によって、この付着物は、洗浄がなされ、付着物が除去されている。続いてアルカリ性水溶液に所定時間浸漬されテクスチャーエッチングがなされる。図4−2に示すように清浄なテクスチャー表面を持つn型単結晶シリコン基板1となる。
このようにして、図4−2に示すように清浄なテクスチャー表面を持つn型単結晶シリコン基板1を得ることができる。なおここではピラミッド状の凹凸部1Tが均一に形成されている。
しかる後に、この洗浄されたn型単結晶シリコン基板1上に図5に断面図を示す太陽電池を形成する。このn型単結晶シリコン基板1の両面に、まずはCVD法などによりi型非晶質シリコン層2i,3iを形成する(i層形成工程:ステップS4)。
この受光面側のi型非晶質シリコン層2i上にはCVD法などによりp型非晶質シリコン層2pが成膜され、裏面側のi型非晶質シリコン層3i上にはCVD法などによりn型非晶質シリコン層3nが成膜される(p層およびn層形成:ステップS5)。ここでi型非晶質シリコン層2i,3iは、n型単結晶シリコン基板1のパッシベーション作用を有する他、その上に形成される非晶質シリコン層と単結晶シリコン基板との間でドーパントが相互に混入することを防ぐものである。
そしてこれらp型非晶質シリコン層2pおよびn型非晶質シリコン層上3nにITOなどの透光性導電膜7a,7bを形成する(透光性導電膜形成:ステップS6)。
最後に、そして受光面側の透光性導電膜7aには銀からなる集電電極5が、裏面側の透光性導電膜7b上には銀からなる集電電極6が形成され(集電電極作製:ステップS7)、図5に断面図を示すような太陽電池が完成する。
このようにして形成された太陽電池では、太陽電池の表面側から、pn接合面(n型単結晶シリコン基板1とp型非晶質シリコン層2pとの接合面)をもつn型単結晶シリコン基板1の光が照射されると、ホールと自由電子とが生成される。pn接合部の電界の作用により、生成された自由電子はn型単結晶シリコン基板1に向かって移動し、ホールはp型非晶質シリコン層2pに向かって移動する。これにより、n型単結晶シリコン基板1は電子が過剰となり、p型非晶質シリコン層2pはホールが過剰となって光起電力が発生する。この光起電力は、pn接合を順方向にバイアスする向きに生じ、n型非晶質シリコン層3nに透光性導電膜7bを介して接続した裏面側の集電電極6がマイナス極となり、p型非晶質シリコン層2pに透光性導電膜7aを介して接続した集電電極5がプラス極となって、不図示の外部回路に電流が流れる。
なお、太陽電池用半導体基板の製造において、表面にテクスチャーを有する半導体基板(以下、テクスチャー基板)は、ダメージ層除去工程S2のなされた半導体基板をエッチング用の溶液(以下、エッチング液)、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性水溶液(濃度は例えば0.05〜2.0mol/l)と、イソプロピルアルコール(濃度は例えば0.05〜2.0mol/l)等の混合溶液に、70〜90℃程度の温度で数分から数十分程度浸漬することにより作製される(テクスチャー形成工程S3)。
図6はテクスチャー基板表面の誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)で測定した重金属量の測定結果とテクスチャー基板上に非晶質シリコンを成膜してライフタイムを評価した結果の相関を示している。図6から分かるように、テクスチャー基板表面の重金属量が1.0E+11atoms/cm2以下の場合、重金属量の差によらず、1.0ms程度のライフタイムが得られている。一方、1.0E+11atoms/cm2以上の場合、0.2msとライフタイムが大きく低下していることが分かる。
この結果から、テクスチャー基板表面の重金属量が1.0E+11atoms/cm2以上の場合、テクスチャー基板を用いて太陽電池セルを作製しても、次工程が熱処理の場合(拡散型太陽電池)、高い特性が期待できない。また、次工程がパッシベーション膜を形成する場合(ヘテロ接合型太陽電池)も同様に高い特性が期待できないということがわかった。
この現象の原因として、次工程が不純物拡散などの熱処理の場合、テクスチャー基板表面に残存する重金属が半導体基板内に拡散してキャリアライフタイムを低下させるようになると考えられる。また次工程がi型非晶質シリコン層などのパッシベーション膜を形成する場合、基板表面の重金属がパッシベーション膜に含まれて欠陥が多くなり、再結合が起こり易くなると考えられる。
テクスチャー基板表面に付着する重金属は主にテクスチャーを形成するエッチング液からの再付着によるものであり、テクスチャーを形成する前の半導体基板に付着する重金属量が多いほどエッチング液に溶出する重金属が多くなり、テクスチャー形成後に再付着し易くなると考えられる。そこで、テクスチャーを形成する前の半導体基板の表面処理を行って清浄にすることにより、テクスチャーを形成するエッチング液中の重金属量を低減させるようにした。テクスチャーを形成する前の半導体基板表面を清浄にするためには、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層が面内均一に除去されており、エッチング後の基板表面が清浄であること、特に、半導体基板表面の重金属量が1.0E+11atoms/cm2以下であることが望ましい。
本実施の形態の表面処理方法は、前述したように、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程において、半導体基板の表面状態とエッチング後の出来栄えとを考察した結果に基づいてなされたものである。考察の結果、本発明者等は、エッチング前の半導体基板表面状態とエッチング後の基板表面形状、及びエッチング後の半導体基板表面状態と基板表面の重金属量に大きな差があることを発見した。
この点について、以下に説明する。図7と図8−1、図8−2はそれぞれ、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程の前に、酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を複数回繰り返す表面処理を行った基板表面と、上記表面処理を行わなかった基板表面、上記表面処理を行わず、目視で白濁ムラとして観察された領域の基板表面の電子顕微鏡写真図である。アルカリ性水溶液は6.3wt%の水酸化ナトリウム水溶液を使用し、エッチング液の温度は80℃、4分間浸漬し、アルカリエッチングを行った。また酸化膜形成工程にはオゾン濃度が15ppm(25℃)のオゾン水、酸化膜除去工程には0.5wt%弗酸(HF)水溶液(25℃)を用いて洗浄し、繰り返し4回実施した。本実施の形態のオゾン水による酸化膜形成工程1回あたりに形成される酸化膜を分光エリプソメーターで測定したところ、2nm程度であった。
図7に見られるように、表面処理後にダメージ層をエッチング除去した場合は等方エッチングが面内均一に進行しており、ファセット{100}面が観察されるのに対して、図8−1あるいは図8−2に見られるように、上記表面処理を行わない場合、平坦な領域が減少しており、特に目視で白濁ムラとして観察された領域は等方エッチングが阻害されていることが分かる。
この結果から半導体基板の表面処理を行わずにダメージ層をエッチング除去した場合、所望のエッチング量が得られず、半導体基板表面にダメージ層が残存する。このため、基板表面の状態が面内で不均一となり、さらに基板間でエッチングのばらつきが生じ、このような半導体基板を用いてテクスチャーを形成しても、面内均一なテクスチャー構造の形成が期待できないものとなる。
また、半導体基板表面にダメージ層が残存するため、テクスチャーを形成するエッチング液中に重金属を持ち込み、テクスチャー形成後の基板表面に重金属が再付着しやすくなる。
この現象の原因として、半導体基板表面に重金属あるいは有機物が残存して、エッチングを阻害するようになると考えられる。そこで、スライスにより生じる半導体基板表面のダメージ層に付着する重金属あるいは有機物を除去することにより、エッチング反応に影響を与えない状態に保持するようにした。これにより、面内均一にダメージ層をエッチング除去することができ、また、テクスチャーを形成するエッチング液中に持ち込む重金属量を低減できた。
図9は、半導体基板表面の誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)の比較結果を示す。実施例は、スライスにより生じる半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程の後に、酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を複数回繰り返す表面処理を行い、乾燥処理を行った半導体基板表面についての分析結果である。比較例は、上記表面処理を行わず、0.5wt%弗酸(HF)水溶液(25℃)を用いて洗浄し、乾燥処理を行った半導体基板表面についての分析結果である。アルカリ性水溶液は6.3wt%の水酸化ナトリウム水溶液を使用し、エッチング液の温度は80℃、4分間浸漬し、アルカリエッチングを行った。また酸化膜形成工程にはオゾン濃度が15ppm(25℃)のオゾン水、酸化膜除去工程には0.5wt%弗酸(HF)水溶液(25℃)を用いて洗浄し、繰り返し4回実施した。本実施の形態のオゾン水による酸化膜形成工程1回あたりに形成される酸化膜を分光エリプソメーターで測定したところ、2nm程度であった。図9より上記表面処理を行うことで、アルカリ性水溶液から再付着する重金属量を低減でき、1.0E+11atoms/cm2以下の清浄な基板表面を得ることができた。
この結果からダメージ層を除去するエッチング工程の後に上記表面処理を行わない場合、半導体基板表面に重金属が残存し、前記半導体基板を用いてテクスチャーを形成しても、均一なテクスチャー構造を期待できない。また、半導体基板表面にダメージ層が残存するため、テクスチャーを形成するエッチング液中に重金属を持ち込み、テクスチャー形成後の基板表面に重金属が再付着しやすくなる。
この現象の原因として、ダメージ層に含まれる重金属がアルカリ性水溶液に溶出し、エッチング後に再付着したためと考えられる。そこで、エッチング後の半導体基板表面の重金属の再付着を抑制するようにした。これにより、より良好なテクスチャーエッチングを実現することができ、テクスチャー基板表面への再付着の影響を低減することができた。本実施の形態の表面処理方法を実施することにより、バッチ処理を行なう場合にも安定して信頼性の高い太陽電池を提供することができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2として、拡散型太陽電池について説明する。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、前記実施の形態1で用いた図3に示した洗浄部で、ダメージ層除去のためのアルカリエッチングS22の前処理工程S21及び後処理工程S24を実施し、テクスチャー処理S3を実施した基板を用いた。ここではp型単結晶シリコン基板1pを用いた。太陽電池は次の工程に従って製作した。基板スライシング工程S1からテクスチャー形成処理S3までは前記実施の形態1とまったく同様であるためここでは説明を省略する。
本発明の実施の形態2として、拡散型太陽電池について説明する。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、前記実施の形態1で用いた図3に示した洗浄部で、ダメージ層除去のためのアルカリエッチングS22の前処理工程S21及び後処理工程S24を実施し、テクスチャー処理S3を実施した基板を用いた。ここではp型単結晶シリコン基板1pを用いた。太陽電池は次の工程に従って製作した。基板スライシング工程S1からテクスチャー形成処理S3までは前記実施の形態1とまったく同様であるためここでは説明を省略する。
実施の形態1と同様にして清浄なテクスチャー構造の基板表面をもつp型単結晶シリコン基板1pを得た後、拡散により、p型単結晶シリコン基板1pに、例えばリンを熱的に拡散し、n型シリコン拡散層2を形成する(pn接合形成)。
次に、p型単結晶シリコン基板1pの主面上に反射防止膜4である絶縁膜(例えば、窒化シリコン膜)を適用する。
そして、表面及び裏面に集電電極5,6を形成し、図10に断面図を示すような太陽電池が完成する。裏面側の集電電極6は、p型シリコンに対して銀アルミあるいはアルミニウムペースト、表面側の集電電極5は、n型シリコンに対して銀ペーストをスクリーン印刷法で所定のパターンを形成する。そして、例えば温度650から900℃で数十秒から数分間焼成することで、表面電極6は反射防止膜4を突き破り、n型シリコン拡散層2とのオーミック接触を得る。一方裏面電極側では、アルミニウムがp型単結晶シリコン基板1pの裏面に拡散し、p型シリコン拡散層3を形成し、p型単結晶シリコン基板1pとのオーミック接触を得る。この接合型太陽電池の場合も高い変換効率を得ることができた。
この例においても、拡散工程において高温工程を経るため、ダメージ層除去工程(S2)において前処理工程(S21)及び後処理工程(S24)を実施しない場合、基板表面の重金属が拡散層内に含まれて欠陥が多くなり、再結合が起こりやすくなり、変換効率が低下してしまう。これに対し、ダメージ層除去工程(S2)において前処理工程(S21)及び後処理工程(S24)を実施することで、均一で高精度のテクスチャーを有するシリコン基板を得ることができる。
以上のように、本実施の形態1,2では酸化膜を形成する洗浄液にオゾン水を用いたが、塩酸過水(HPM)、硫酸過水(SPM)硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、過酸化水素水(H2O2)など、酸化膜を形成する洗浄液でもよい。いずれの場合にも、酸化膜形成が少なくとも1nm以上であればよい。より好ましくは、酸化膜形成工程は積層した重金属、酸化膜、有機物などのエッチング阻害要因を除去するため、酸化膜が基板上で均一に少なくとも1nm以上形成されるまで複数回繰り返すことが好ましい。1回の酸化工程における酸化膜の膜厚は2nmを超えないようにするのが望ましい。1回の酸化工程における酸化膜の膜厚が2nmを越えると、酸化膜除去によるエッチング時間を長くすることで、基板にダメージ層が生成されたり、あるいは局所的なエッチング増大が発生したりするおそれがある。
本実施の形態1,2において、図2−3の酸化膜形成工程(ステップS211)による処理は、酸化膜を形成させる洗浄処理、例えばオゾン(O3)水処理又は、塩酸過水(HPM)、硫酸過水(SPM)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、過酸化水素水(H2O2)による洗浄処理であるのが好ましい形態である。また、各水洗工程では、純水、アノード水、カソード水、水素水によるリンス処理などが用いられ、酸化膜除去工程による処理は、酸化膜を除去するために弗酸(HF)水溶液を使用するのが好ましい。
また、本実施の形態1,2においては、図2−3に示したように酸化膜形成工程(ステップS211)にて酸化膜を形成させる洗浄液で半導体基板を洗浄し、さらに水洗する第1水洗工程(ステップS212)を実施し、酸化膜除去工程(ステップS213)にて弗酸(HF)水溶液で半導体基板を洗浄し、さらに水洗する第2水洗工程(ステップS214)を実施する。
この酸化膜形成工程(ステップS211)、第1水洗工程(ステップS212)、及び酸化膜除去工程(ステップS213)を複数回繰り返すことによって重金属及び有機物等が徐々に除去される。すなわち、酸化膜形成工程(ステップS211)で半導体基板の表面を酸化し、重金属及び有機物を含む酸化膜層を形成させる。この酸化膜形成工程(ステップS211)では1nm以下の酸化膜が形成され、この酸化膜は酸化膜を形成する洗浄液で洗浄することで形成される。
酸化膜除去工程(ステップS213)においては、酸化膜形成工程(ステップS211)により形成された酸化膜の厚みにあわせて、弗酸(HF)水溶液の薬液濃度を高くしたり低くしたり、あるいは洗浄時間を長くしたり短くしたりして洗浄を行う。また、酸化膜除去工程(ステップS213)にて弗酸(HF)水溶液を用いて半導体基板を洗浄することで、酸化膜形成工程(ステップS211)で形成された重金属及び有機物を介する酸化膜を除去する。この処理により清浄な半導体基板表面が得られる。
酸化膜形成工程(ステップS211)、酸化膜除去工程(ステップS213)の間には、適宜水洗及び薬液洗浄を実施してもよい。
また、上記した実施の形態における酸化膜形成工程(ステップS211)に入る時点で半導体基板の表面に酸化膜が既に形成されている場合があるため、酸化膜形成工程(ステップS211)の前に弗酸(HF)水溶液で半導体基板に対して酸化膜除去処理(ステップS210)を実施しても良い。
酸化膜形成工程(ステップS211)では少なくとも1nm以上の厚さの酸化膜を形成し、この酸化膜は酸化膜を形成する洗浄液で0.1〜60min洗浄することで形成される。酸化膜形成工程(ステップS211)は、硫酸(H2S04)、硝酸(HNO3)、過酸化水素水(H2O2)、オゾン(O3)水を洗浄液として使用する洗浄や、硫酸(H2S04)、過酸化水素水(H2O2)の混合液を洗浄液として使用するSPM洗浄、塩酸(HCl)、過酸化水素水(H2O2)、純水(H2O)の混合液を洗浄液として使用するHPM洗浄などで酸化膜を形成させる。その薬液濃度は硫酸(H2S04)の場合、96wt%程度、硝酸(HNO3)の場合、30wt%程度、過酸化水素水(H2O2)の場合、31wt%程度、オゾン(O3)水の場合、1〜20ppm程度が望ましい。また、SPM洗浄は硫酸(H2S04)の濃度が96wt%程度、過酸化水素水(H2O2)の濃度は31wt%程度、硫酸対過酸化水素水の比率は5対1が望ましい。HPM洗浄は塩酸(HCl)の濃度が37wt%程度、過酸化水素水(H2O2)の濃度は31wt%程度、塩酸対過酸化水素水対純水の比率は1対1対6が望ましい。薬液濃度がそれ以上高くても、形成される酸化膜の厚みは飽和するため、これ以上の薬液濃度で処理しても追加的な効果は期待できない。又それだけではなく、薬液濃度が高くなることで不要な反応が進み劣化の原因となることがある。
さらに酸化膜形成工程(ステップS211)の後に、処理時間0.1〜60minで、水洗を実施する(ステップS212)のが好ましい。さらに、上記酸化膜形成工程(ステップS211)及び第1水洗工程(ステップS212)は洗浄液が蒸発しない温度である25℃から150℃の間で実施するのが好ましい。洗浄液が蒸発すると濃度が高くなり、酸化膜の膜厚が厚くなり、次工程である酸化膜除去工程(ステップS213)に時間を要することになるためである。
酸化膜除去工程(ステップS213)は上記で酸化膜を形成した半導体基板を、弗酸(HF)を含む純水又は超純水を用いて洗浄する。また、酸化膜除去工程(ステップS213)で使用する洗浄液の弗酸(HF)濃度は0.1〜10wt%程度が好ましく、その処理時間は0.1〜60minで処理し、酸化膜除去工程(ステップS213)の後に水洗を実施する(ステップS214)のが好ましい。それ以上水洗を実施しても、酸化膜形成工程(ステップS211)で形成された酸化膜が完全に除去されているため、洗浄の効果はない。
上記実施の形態1,2においては、酸化膜を形成させる洗浄液によって半導体基板を洗浄することにより酸化膜を成長させる。しかし、その酸化膜の膜厚は処理時間0.1〜60minの間で飽和してそれ以上処理を継続してもさらなる酸化膜の成長は生じない。そのため、酸化膜を形成させる洗浄液による洗浄は、半導体酸化膜が一定量成長する時間より長い時間実施する必要はない。
酸化膜形成工程(ステップS211)、酸化膜除去工程(ステップS213)に使用する溶媒は純水、超純水、アノード水、カソード水、水素水等の機能水を使用することができる。また、酸化膜形成工程(ステップS211)、酸化膜除去工程(ステップS213)の間、及び酸化膜除去工程(ステップS213)の後には水洗及びアノード水、カソード水、水素水等の機能水洗浄、薬液洗浄、超音波洗浄、電解処理等を実施することができる。そして、酸化膜除去工程(ステップS213)及び第2水洗工程(ステップS214)の後には乾燥処理を実施するのが好ましい。これにより、半導体基板表面に付着した純水を蒸発させる。
本実施の形態1,2の表面処理方法では、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を面内均一に除去でき、エッチング後に半導体基板表面に再付着する重金属量を1E+11atoms/cm2以下まで低減できるため、より良好なテクスチャーエッチングを実現することができ、テクスチャー基板表面への再付着の影響を低減することができ、高発電効率の太陽電池セルの製造を高い歩留まりで実現できる。一方で、テクスチャー形成槽へ持ち込む重金属量を低減して、テクスチャーエッチング液の寿命が伸びるため、エッチング液の交換頻度を低減し、エッチング液使用量を削減することができ、薬液コスト、製造コストを削減できる効果がある。
以上のように、本実施の形態1,2の表面処理方法によれば、少なくとも、半導体インゴットからスライスされた半導体基板において、エッチングして、前記スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程の前後に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を少なくとも1回望ましくは複数回繰り返す表面処理方法であって、ダメージ層を均一にエッチング除去でき、エッチング後に半導体基板表面に再付着する重金属量を1E+11atoms/cm2以下まで低減できるため、より良好なテクスチャーエッチングを実現することができ、テクスチャー基板表面への再付着の影響を低減することができ、高発電効率の太陽電池セルの製造を高い歩留まりで実現できる。なお、半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程の前後に酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を複数回繰り返すのが望ましいが、1回でもよいしまた、前工程のみ複数回にしてもよい。
なお、前記実施の形態1,2では、p型及びn型の単結晶シリコン基板について説明したが、多結晶シリコン、シリコンゲルマニウムなど、結晶系シリコン基板、あるいは化合物半導体基板などの半導体基板に適用可能である。
本発明にかかる太陽電池用半導体基板の表面処理方法は、高清浄な半導体基板表面を得るのに有用であり、特に高効率の太陽電池セルの製造に適用されて好適なものである。
1 n型単結晶シリコン基板、1p p型単結晶シリコン基板、1T 凹凸部、2 n型シリコン拡散層、2i i型非晶質シリコン層、2p p型非晶質シリコン層、3 p型シリコン拡散層、3i i型非晶質シリコン層、3n n型非晶質シリコン層、4 反射防止膜、5 表面電極、6 裏面電極、7a,7b 透光性電極、22 洗浄槽、23 オゾン水供給管、24 オゾン水、25 排出部、26 オゾン水供給孔、30 洗浄部、31 オゾン水生成部、32 制御部、33 オゾン濃度モニタ、P ポンプ、34 (酸化膜厚)測定部、35 オゾン濃度モニタ配管、36 信号線、102 ダメージ層、103 有機物、104 金属、106 酸化膜。
Claims (13)
- 表面に、テクスチャー構造を構成する凹凸部を形成するための太陽電池用半導体基板の表面処理方法であって、
少なくとも、スライスされた前記半導体基板において、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程の前後に、
前処理工程と、後処理工程とを含み、
前記前処理工程及び後処理工程が、それぞれ、
酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を少なくとも1回実施し、前記半導体基板表面を清浄化する工程である、
ことを特徴とする太陽電池用半導体基板の表面処理方法。 - 前記前処理工程が、
酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を複数回繰り返し、前記半導体基板表面を清浄化する工程である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用半導体基板の表面処理方法。 - 前記半導体基板は結晶系シリコン基板であり、
前記酸化膜形成工程は、
オゾン水または過酸化水素を含む水溶液に浸漬する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用半導体基板の表面処理方法。 - 前記酸化膜除去工程は、
前記結晶系シリコン基板表面に形成された酸化膜を弗酸水溶液により除去する工程を含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用半導体基板の表面処理方法。 - 前記エッチング工程は、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムを含むアルカリ性水溶液を用いて前記結晶系シリコン基板をエッチングする工程である、
ことを特徴とする請求項4に記載の太陽電池用半導体基板の表面処理方法。 - 前記処理工程は、バッチ洗浄方式の処理工程である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用半導体基板の表面処理方法。 - 少なくとも、スライスされた半導体基板に対し、スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程と、
前記半導体基板の表面に、テクスチャー構造を構成する凹凸部を形成するテクスチャーエッチング工程とを含む太陽電池用半導体基板の製造方法であって、
前記エッチング工程の前後に、
前処理工程と、後処理工程とを含み、
これら前処理工程及び後処理工程が、それぞれ、
酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を少なくとも1回実施し、前記半導体基板表面を清浄化する工程である、
ことを特徴とする太陽電池用半導体基板の製造方法。 - 前記前処理工程が、
酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を複数回繰り返し、前記半導体基板表面を清浄化する工程である、
ことを特徴とする請求項7に記載の太陽電池用半導体基板の製造方法。 - 前記半導体基板は結晶系シリコン基板であり、
前記テクスチャーエッチング工程は、
アルカリ性水溶液に前記結晶系シリコン基板を浸漬して異方性エッチングし凹凸部を形成する工程である、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の太陽電池用半導体基板の製造方法。 - 少なくとも、スライスされた半導体基板に対し、スライスにより生じた第1導電型の半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング工程と、
前記半導体基板の表面に、テクスチャー構造を構成する凹凸部を形成するテクスチャーエッチング工程と、
前記半導体基板の表面に、第2導電型の半導体層を形成する工程とを含む太陽電池の製造方法であって、
前記エッチング工程の前後に、
前処理工程と、後処理工程とを含み、それぞれ、
これら前処理工程及び後処理工程が、
酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を少なくとも1回実施し、前記半導体基板表面を清浄化する工程である、
ことを特徴とする太陽電池の製造方法。 - 前記前処理工程が、
酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を複数回繰り返し、前記半導体基板表面を清浄化する工程である、
ことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池の製造方法。 - 前記半導体基板は、第1導電型の結晶系シリコン基板であり、
前記テクスチャー構造を形成する工程が、
アルカリ性水溶液を用いて前記結晶系シリコン基板の表面に凹凸を形成するエッチング工程を含む、
ことを特徴とする請求項10または11に記載の太陽電池の製造方法。 - 第1導電型の半導体基板表面のダメージ層を除去するダメージ層除去装置と、
前記ダメージ層の除去された前記第1導電型の半導体基板表面にテクスチャー構造を形成し、
前記半導体基板表面に第2導電型の半導体層を形成する半導体層形成装置とを含む太陽電池製造装置であって、
前記ダメージ層除去装置が、
スライスにより生じた半導体基板表面のダメージ層を除去するエッチング部と、
前記エッチング部によるエッチングの前後に行なわれる前処理工程と、後処理工程とを実行する洗浄部とを含み、
前記洗浄部が、
前記半導体基板表面の酸化膜の膜厚を測定する測定部と、
酸化膜を形成する酸化膜形成工程と酸化膜を除去する酸化膜除去工程を少なくとも1回実施し、前記半導体基板表面を清浄化するように、
前記酸化膜の膜厚が所定の値となったところで、洗浄を止め、酸化膜を除去するように操作を実施する制御部とを含む、
ことを特徴とする太陽電池製造装置。
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