JP2014093953A - 1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コリンが低減された1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩の製造法の提供。
【解決手段】特定のリゾホスファチジルコリンとホスホリパーゼD、ナトリウム原子およびカルシウム原子を含有する水溶液中で酵素反応させ、エタノール添加後、0〜8℃で15〜30時間静置し、得られたろ液をNa型の強酸性陽イオン交換樹脂処理することで、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩(式[II])。
Figure 2014093953

(式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩の製造方法に関する。
特開平5−230088号公報(特許文献1)にて、真性粘菌(Physarum polycephalum) の培養液から精製され、構造決定されたユニークな構造のリゾリン脂質である1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸が報告されている。その化合物は、抗癌活性から神経再生など多岐にわたる機能を有しており、ヒト血清中に0. 1μM程度存在するほか、涙液など生体中に普遍的に存在することが明らかとなってきている。
1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の一般的な製造方法として、上記真性粘菌の培養液から精製する方法、リゾホスファチジルコリン(LPC)を酵素であるホスホリパーゼDで処理して得る方法、および化学合成して得る方法が挙げられる。
例えば、リゾホスファチジルコリン(LPC)と酵素の賦活剤である塩化カルシウムを含む水溶液へホスホリパーゼDを添加し、酵素反応(40℃、18時間)により1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を得る製造方法(特許文献2:特開2011−211921号公報)が報告されている。特許文献2では、酵素反応後の溶液は、有機溶媒であるクロロホルムとメタノールの混液によって分液処理されている。
しかし、特許文献2の方法は、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を化粧品分野等へ応用することを考えた場合、クロロホルムなどの有機溶媒を使用している点で健康・安全性の面から好ましくない。また、賦活剤である塩化カルシウムを使用した場合、水溶液中で1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸がカルシウムイオンと錯体を形成するので、沈殿を生じやすく、収率の点で好ましくない。さらに、40℃にて18時間と長時間の酵素反応であるので、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸が過度に酸化されるおそれがある。
また、リゾホスファチジルコリン(LPC)をホスホリパーゼDで処理する方法では、副生成物としてコリンが生成する。コリンは、EU、中国、韓国、アセアンなどで化粧品配合禁止成分とされており、現在のところ、効率よくコリンを低減する方法は報告されていない。コリン低減方法としては、油水分離、シリカゲルなどを使用したカラムクロマトグラフィー、およびイオン交換処理などが挙げられる。しかし、油水分離やカラムクロマトグラフィーでは、有機溶媒(ヘキサン、クロロホルムなど)が使用されるので健康・安全性の面で好ましくなく、またシリカゲルにより1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の環状部分が分解するおそれがあり、効率よくコリンを低減することができない。
特開平5−230088号公報 特開2011−211921号公報
本発明の目的は、効率よくコリンが低減され、過酸化物価が低く、健康・安全性の面で優れた1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩を簡便かつ高収率で、すなわち経済的有利に製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、リゾホスファチジルコリン(LPC)と特定のホスホリパーゼDを使用し、特定の酵素反応工程、反応後処理工程、およびイオン交換樹脂処理工程を組み合わせることによって、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち本発明は、式[I]で表されるリゾホスファチジルコリン(LPC)と放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼDとをナトリウム原子の含有量が0.2質量%以下、およびカルシウム原子の含有量が0.02質量%以下である水溶液中で50〜65℃にて4〜10時間酵素反応させる工程と、
酵素反応の後処理として、エタノールを添加し、0〜8℃で15〜30時間静置保存し、反応液をろ過する工程と、
ろ過して得られたろ液をNa型の強酸性陽イオン交換樹脂により処理する工程とを含むことを特徴とする、式[II]で表される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩の製造方法である。
Figure 2014093953
(式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表す。)
Figure 2014093953
(式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表す。)
本発明の1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩の製造方法によれば、効率よくコリンが低減され、過酸化物価が低く、健康・安全性の面で優れた1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩を簡便かつ高収率で、すなわち経済的有利に製造することができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩の製造方法は、リゾホスファチジルコリン(LPC)と特定のホスホリパーゼDを使用し、特定の酵素反応工程、反応後処理工程、およびイオン交換樹脂処理工程を組み合わせたことを特徴とする。以下、各工程の詳細について説明する。なお、以下では、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩を1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)とも表記する。
〔酵素反応工程〕
本発明における酵素反応工程は、上記式[I]で表されるリゾホスファチジルコリン(LPC)と放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼDとをナトリウム原子の含有量が0.2質量%以下、およびカルシウム原子の含有量が0.02質量%以下である水溶液中で50〜65℃にて4〜10時間酵素反応させる工程である。なお、酵素反応の際に用いる溶媒は水のみである。
本発明に使用されるリゾホスファチジルコリン(LPC)は、上記式[I]で示されるものである。
上記式[I]および[II]中のRは炭素数10〜22のアシル基であり、好ましくは、炭素数12〜20の直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪酸由来のアシル基である。
脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸、およびこれらの混合物であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、大豆リン脂質由来脂肪酸、卵黄リン脂質由来脂肪酸が挙げられる。
リゾホスファチジルコリン(LPC)としては、純品のリゾホスファチジルコリン(LPC)、ホスファチジルコリン(PC)とホスホリパーゼA2との酵素反応によって得られたリゾホスファチジルコリン(LPC)、もしくはリゾレシチンを使用することができる。なお、ホスファチジルコリン(PC)とホスホリパーゼA2との酵素反応では、ホスファチジルコリン(PC)の2つのアシル基の内、C2位のアシル基が分解することで、1つのアシル基を有する(リゾ体)リゾホスファチジルコリン(LPC)となる。
これらのリゾホスファチジルコリン(LPC)の中でも、安価かつ簡単に入手可能なリゾレシチンを用いることが経済的に好ましい。しかし、リゾレシチンを用いた製造では、純品のリゾホスファチジルコリン(LPC)を用いた製造と比較して、粘性が高い反応溶液となるので、反応溶媒の量を調整することなどが必要となる。
リゾレシチンとしては、市販品もしくはレシチンとホスホリパーゼA2との酵素反応によって得られたリゾレシチンを使用することができる。その中でも、大豆由来リゾレシチン、および卵黄由来リゾレシチンが好ましく、更に好ましくは大豆由来リゾレシチンである。
リゾレシチン中のリゾホスファチジルコリン(LPC)の濃度は、好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。10質量%未満では効率よく1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)を得るのが困難となることがある。上記条件を満たすリゾレシチンとしては、例えば、リゾホスファチジルコリン(LPC)を18〜30質量%含有する大豆由来リゾレシチンである「SLP−ホワイトリゾ」(辻製油株式会社製)、リゾホスファチジルコリン(LPC)を65〜75質量%含有する大豆由来リゾレシチンである「SLP−LPC70」(辻製油株式会社製)が挙げられる。
なお、レシチンとは、グリセロリン脂質の一種であり、自然界の動植物においてすべての細胞中に存在し、生体膜の主要構成成分である。レシチンにはホスファチジルコリン(PC)が多く含まれており、工業的には、レシチンは各種のリン脂質を主体とする混合物の一般的な名称である。レシチンは、通常、動植物より得られた油から分離して得られる。
本発明に使用される放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼDとしては、放線菌(Actinomadura属)No.362由来のホスホリパーゼDが好ましく、例えば、「ホスホリパーゼD」(名糖産業株式会社製)が挙げられる。なお、酵素反応に際しては、化粧料や医薬品等の皮膚外用剤に常用されている酸化防止剤などを本発明の効果に影響を及ぼさない程度で使用することも可能である。例えば、ビタミンE、ビタミンCなどが酵素反応溶液中に含まれていてもよい。
酵素反応溶液中のリン脂質の濃度、ホスホリパーゼDの濃度は、効率よく酵素反応が進行するように適宜設定される。酵素反応溶液中のリン脂質の濃度は、好ましくは5〜35質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。5質量%未満では効率よく1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)を得ることが困難となることがあり、35質量%を超えると反応溶液の粘性が高くなるため反応効率が低下することがある。
酵素反応に用いられる水溶液中には、ナトリウム原子、およびカルシウム原子が含まれる。酵素反応溶液中のナトリウム原子、およびカルシウム原子は、原料であるリゾホスファチジルコリン(LPC)由来のもの、リゾレシチン由来のもの、あるいは酵素の賦活剤由来のものである。酵素の賦活剤としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
本発明においては、酵素反応溶液中のナトリウム原子の含有量が0.2質量%以下、好ましくは0.1質量%以下に、カルシウム原子の含量が0.02質量%以下、好ましくは0.01質量%以下になるように、原料や賦活剤の使用量を調整する。
ナトリウム原子の含有量が0.2質量%を超えると、後記のイオン交換樹脂処理が阻害されるおそれがある。カルシウム原子の含有量が0.02質量%を超えると、水溶液中で1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸がカルシウムイオンと錯体を形成して、沈殿を生じるおそれがある。また、後記のイオン交換樹脂処理が阻害されるおそれもある。
ナトリウム原子、及びカルシウム原子の定量方法としては、誘導結合型高周波プラズマ(ICP)を光源に用いた発光分光分析方法が挙げられる。
本発明におけるリゾホスファチジルコリン(LPC)とホスホリパーゼDとの酵素反応は、50〜65℃、好ましくは55〜60℃にて、4〜10時間、好ましくは6〜8時間で反応させて行なわれる。
反応温度が50℃未満の場合、酵素の活性が低下して反応率が低下するおそれがあり、65℃を超えると、高温による酵素失活が進行し反応率が低下するおそれがある。また、反応時間が4時間未満の場合、酵素反応が平衡に到達せず1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)の収率の低下を招くおそれがあり、10時間を越えても酵素反応が平衡に達しているため1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の収率の増加は望めず、経済的に不利となるおそれがある上に、脂質の酸化により品質が悪化するおそれもある。
酸化の度合いは、過酸化物価の測定により確認することができ、測定方法は通常の油脂分析の方法を参考に実施することができる。
酵素反応の進行の確認は、薄層クロマトグラフィー(TLC)により1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットを確認すること、または反応副生成物のコリンを定量することで可能である。定量的であるコリン定量による確認が好ましく、より好ましくは、TLCとコリン定量の両方による確認である。
TLCによる確認方法としては、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の単一スポットが確認できる方法であれば、特に限定されない。通常は、順相クロマトグラフィーで、スポットの発色剤としてヨウ素を用いる。
コリン定量による確認方法は、酵素反応によりリゾホスファチジルコリン(LPC)からコリンが脱離(遊離コリン)し、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸が生成するメカニズムを応用した方法であり、遊離コリン量/総コリン量×100の式より反応率(酵素反応の進行度合い)を算出することができる。ここで、総コリン量とは、遊離コリン量とリゾホスファチジルコリン(LPC)中の結合コリン量からなるものであり、その定量方法は特に限定されない。例えば、ラボアッセイTMリン脂質(コリンオキシダーゼ・DAOS法)キット(和光純薬工業株式会社製)を用いることで、総コリンの定量が可能である。また同様に、遊離コリンのみの定量方法も特に限定されない。例えば、ラボアッセイTMリン脂質(コリンオキシダーゼ・DAOS法)キット(和光純薬工業株式会社製)におけるホスホリパーゼD反応工程を除くことで、遊離コリンのみの定量が可能である。
本発明における酵素反応率は、好ましくは70〜100%であり、より好ましくは80〜100%である。70%未満では効率よく反応が進行していないので、非経済的である。
〔反応後処理工程〕
本発明における上記酵素反応の後処理として、エタノールを添加する酵素失活工程と、0〜8℃で15〜30時間静置保存する澱出し工程と、反応液をろ過して沈殿物(澱)を除去するろ過工程とを行なう。
酵素失活工程においては、酵素反応溶液中の水に対して、60〜80質量%エタノール水溶液となるようにエタノールを添加することが、酵素を失活させる上で好適である。中でも、65〜75質量%エタノール水溶液となるようにエタノールを添加することが好ましい。酵素失活工程は、40〜60℃、好ましくは45〜55℃にて、15〜90分、好ましくは30〜60分で行なわれる。
澱出し工程においては、酵素失活工程後、0〜8℃で15〜30時間の静置保存を行なう。この静置保存時の温度および静置保存時間の設定は、一般に、静置保存温度に応じて、静置保存時間を適宜設定することができる。すなわち静置保存温度が高ければ静置保存時間を長く設定し、静置保存温度が低ければ静置保存時間を短く設定することができる。例えば、静置保存温度が0℃の場合、静置保存時間は15〜20時間が好ましく、静置保存温度が8℃の場合、静置保存時間は25〜30時間が好ましい。より好ましくは、3〜6℃にて18〜26時間の静置を行なう。静置保存温度が0℃未満では、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)の収率が低下するおそれがあり、8℃を超えると静置保存時間が長くなる上、澱出しが不十分となるおそれがある。
ろ過工程においては、澱出し工程を経た酵素反応溶液をろ過して、沈殿物(澱)を除去することで、ろ液を得る。ろ過に際しては公知のろ紙やメッシュなどを用い、失活し変性した酵素残渣などの固形分を除去することで、ろ液が回収される。ろ紙やメッシュなどの素材などは特に限定されない。
〔イオン交換樹脂処理(コリン低減)工程〕
本発明におけるイオン交換樹脂処理工程では、上記ろ過により得られるろ液がイオン交換樹脂処理に使用される。なお、上記ろ液は、濃縮もしくは希釈することなくそのままの状態でイオン交換樹脂処理に使用するのが効率の点で好ましい。
イオン交換樹脂としては、陽イオンであるコリンを低減するため、陽イオン交換樹脂であるNa型の強酸性陽イオン交換樹脂が使用される。例えば、Na型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂である「ダイヤイオンSK 1B」(三菱化学株式会社製)が挙げられる。
なお、Na型の強酸性陽イオン交換樹脂よりもイオン交換能が優れるH型の強酸性陽イオン交換樹脂を使用すると、プロトン(酸性条件下)により1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の環状部分の分解が進行するおそれがあり、好ましくない。
1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の環状部分の分解により、リゾホスファチジン酸(LPA)が生成するので、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)のスポットを確認することで、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の環状部分の分解の確認が可能である。TLCによる確認方法としては、リゾホスファチジン酸(LPA)の単一スポットが確認できる方法であれば、特に限定されない。通常は、順相クロマトグラフィーで、スポットの発色剤としてヨウ素を用いる。
また、酸性陽イオン交換樹脂と塩基性陰イオン交換樹脂との併用では、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸が得られ難いので好ましくない。さらに、弱酸性陽イオン交換樹脂では、イオン交換能が低く効率よくコリンを低減することが困難である。
本発明におけるイオン交換樹脂処理方法としては、コリンが十分に低減できる条件であれば、特に制限されない。なお、コリン低減の進行度合いの確認には、前述の遊離コリン定量を用いることができる。
イオン交換樹脂処理によるコリン低減率((イオン交換樹脂処理前の液の遊離コリン量−イオン交換樹脂処理後の液の遊離コリン量)/イオン交換樹脂処理前の液の遊離コリン量×100)は、好ましくは90〜100%である。90%未満では効率よくコリンが低減できていない。
イオン交換樹脂処理後の液は、粉末化することも可能である。例えば、賦形剤としてシクロデキストリンを用いた凍結乾燥により、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸を含有する粉末が製造できる。賦形剤により、さらさらとした取り扱いやすい脂質とすることが可能である。
本発明の製造方法により得られる1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸は、塩の形態をとることも可能である。すなわち、下記式[III]で示される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸塩であってもよい。
Figure 2014093953
式[III]中のMとしては、アルカリ金属、アンモニウム、有機アンモニウムなどが挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウムが挙げられる。有機アンモニウムとしては、例えば、トリエチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムが挙げられる。なお、式[III]中のRは、式[I]および[II]中のRと同様である。
1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸塩の調製法としては、公知の方法を採用することができる。例えば1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のナトリウム塩を調製する方法としては、例えば、本発明における上記Na型の強酸性陽イオン交換樹脂処理工程やNa塩を用いたpH調整工程などが挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。下記の実施例1〜3および比較例1〜4について、後記の分析を行ない、更に評価を行なった。
〔実施例1〕
リゾホスファチジルコリン(LPC)を24質量%含有する大豆由来リゾレシチン(辻製油株式会社製「SLP−ホワイトリゾ」)30gへ水90gを加え、更に、ビタミンE(理研ビタミン株式会社製「理研Eオイル800」)0.048gを添加し、60℃にて1時間撹拌しリゾレシチン溶液を調製した。
別に、放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)0.5gへ水30gを加え、室温にて30分間撹拌して得られた酵素溶液を上記リゾレシチン溶液へ加え、60℃にて8時間撹拌した。なお、酵素反応の進行は、TLCおよびコリン定量により確認した。また、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことも確認した。
その後、95容量%エタノール(発酵アルコール)300gを加え、50℃にて1時間撹拌した後、5℃にて24時間静置保存し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、5C)を用いてろ過することでろ液を得た。
Na型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオンSK 1B(三菱化学株式会社製)50gを内径1.6cmのカラムへ充填し、80容量%エタノール水溶液50mLで洗浄した後、上記ろ液200mLをカラムへ加え、0.65mL/分の速度で5時間イオン交換処理を行い、イオン交換処理溶液を得た。なお、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことを確認した。
〔実施例2〕
リゾホスファチジルコリン(LPC)を24質量%含有する大豆由来リゾレシチン(辻製油株式会社製「SLP−ホワイトリゾ」)30gへ水90gを加え、更に、ビタミンE(理研ビタミン株式会社製「理研Eオイル800」)0.048gを添加し、60℃にて1時間撹拌しリゾレシチン溶液を調製した。
別に、放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)0.5gへ水30gを加え、室温にて30分間撹拌して得られた酵素溶液を上記リゾレシチン溶液へ加え、50℃にて5時間撹拌した。てお、酵素反応の進行は、TLCおよびコリン定量により確認した。また、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことも確認した。
その後、95容量%エタノール(発酵アルコール)300gを加え、50℃にて1時間撹拌した後、1℃にて17時間静置保存し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、5C)を用いてろ過することでろ液を得た。
Na型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオンSK 1B(三菱化学株式会社製)50gを内径1.6cmのカラムへ充填し、80容量%エタノール水溶液50mLで洗浄した後、上記ろ液200mLをカラムへ加え、0.65mL/分の速度で5時間イオン交換処理を行い、イオン交換処理溶液を得た。なお、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことを確認した。
〔実施例3〕
リゾホスファチジルコリン(LPC)を70質量%含有する大豆由来リゾレシチン(辻製油株式会社製「SLP−LPC70」)21gへ水99gを加え、更に、ビタミンE(理研ビタミン株式会株式会社製「理研Eオイル800」)0.048gを添加し、60℃にて1時間撹拌しリゾレシチン溶液を調製した。
別に、放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)0.5gへ水30gを加え、室温にて30分間撹拌して得られた酵素溶液を上記リゾレシチン溶液へ加え、60℃にて8時間撹拌した。なお、酵素反応の進行は、TLCおよびコリン定量により確認した。また、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことも確認した。
その後、95容量%エタノール(発酵アルコール)300gを加え、50℃にて1時間撹拌した後、5℃にて24時間静置保存し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、5C)を用いてろ過することでろ液を得た。
Na型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオンSK 1B(三菱化学株式会社製)50gを内径1.6cmのカラムへ充填し、80容量%エタノール水溶液50mLで洗浄した後、上記ろ液100mLをカラムへ加え、0.65mL/分の速度で5時間イオン交換処理を行い、イオン交換処理溶液を得た。なお、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことを確認した。
〔比較例1〕
リゾホスファチジルコリン(LPC)を24質量%含有する大豆由来リゾレシチン(辻製油株式会社製「SLP−ホワイトリゾ」)30gへ塩化カルシウム水溶液90g(塩化カルシウム(二水和物)を0.221g含有)を加え、更に、ビタミンE(理研ビタミン株式会社製「理研Eオイル800」)0.048gを添加し、60℃にて1時間撹拌しリゾレシチン溶液を調製した。
別に、放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)0.5gへ水30gを加え、室温にて30分間撹拌して得られた酵素溶液を上記リゾレシチン溶液へ加え、40℃にて18時間撹拌した。なお、酵素反応の進行は、TLCおよびコリン定量により確認した。また、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことも確認した。
その後、95容量%エタノール(発酵アルコール)300gを加え、50℃にて1時間撹拌した後、5℃にて24時間静置保存し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、5C)を用いてろ過することでろ液を得た。
Na型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオンSK 1B(三菱化学株式会社製)50gを内径1.6cmのカラムへ充填し、80容量%エタノール水溶液50mLで洗浄した後、上記ろ液200mLをカラムへ加え、0.65mL/分の速度で5時間イオン交換処理を行い、イオン交換処理溶液を得た。なお、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことを確認した。
〔比較例2〕
リゾホスファチジルコリン(LPC)を24質量%含有する大豆由来リゾレシチン(辻製油株式会社製「SLP−ホワイトリゾ」)30gへ水90gを加え、更に、ビタミンE(理研ビタミン株式会社製「理研Eオイル800」)0.048gを添加し、60℃にて1時間撹拌しリゾレシチン溶液を調製した。
別に、放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)0.5gへ水30gを加え、室温にて30分間撹拌して得られた酵素溶液を上記リゾレシチン溶液へ加え、60℃にて8時間撹拌した。なお、酵素反応の進行は、TLCおよびコリン定量により確認した。また、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことも確認した。
その後、95容量%エタノール(発酵アルコール)300gを加え、50℃にて1時間撹拌した後、5℃にて24時間静置保存し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、5C)を用いてろ過することでろ液を得た。
H型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂である「アンバーライトIR120B H AG」(オルガノ株式会社製)50gを内径1.6cmのカラムへ充填し、80容量%エタノール水溶液50mLで洗浄した後、上記ろ液200mLをカラムへ加え、0.65mL/分の速度で5時間イオン交換処理を行い、イオン交換処理溶液を得た。なお、TLCにより、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットが消失していること、リゾホスファチジン酸(LPA)が生成していることを確認した。
〔比較例3〕
リゾホスファチジルコリン(LPC)を24質量%含有する大豆由来リゾレシチン(辻製油株式会社製「SLP−ホワイトリゾ」)30gへ水90gを加え、更に、ビタミンE(理研ビタミン株式会社製「理研Eオイル800」)0.048gを添加し、60℃にて1時間撹拌しリゾレシチン溶液を調製した。
別に、放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)0.5gへ水30gを加え、室温にて30分間撹拌して得られた酵素溶液を上記リゾレシチン溶液へ加え、60℃にて8時間撹拌した。なお、酵素反応の進行は、TLCおよびコリン定量により確認した。また、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことも確認した。
その後、95容量%エタノール(発酵アルコール)300gを加え、50℃にて1時間撹拌した後、5℃にて24時間静置保存し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、5C)を用いてろ過することでろ液を得た。
H型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂である「アンバーライトIR120B H AG」(オルガノ株式会社製)25gとOH型の強塩基性陰イオン交換樹脂である「アンバーライト IRA402BL OH AG」(オルガノ株式会社製)25gとを良く混ぜ合わせ、内径1.6cmのカラムへ充填し、80容量%エタノール水溶液50mLで洗浄した後、上記ろ液200mLをカラムへ加え、0.65mL/分の速度で5時間イオン交換処理を行い、イオン交換処理溶液を得た。なお、TLCにより、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットが消失していること、リゾホスファチジン酸(LPA)のスポットが無いことを確認した。
〔比較例4〕
リゾホスファチジルコリン(LPC)を24質量%含有する大豆由来リゾレシチン(辻製油株式会社製「SLP−ホワイトリゾ」)30gへ食塩水90g(塩化ナトリウムを3.85g含有)を加え、更に、ビタミンE(理研ビタミン株式会株式会社製「理研Eオイル800」)0.048gを添加し、60℃にて1時間撹拌しリゾレシチン溶液を調製した。
別に、放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼD(名糖産業株式会社製)0.5gへ水30gを加え、室温にて30分間撹拌して得られた酵素溶液を上記リゾレシチン溶液へ加え、60℃にて8時間撹拌した。なお、酵素反応の進行は、TLCおよびコリン定量により確認した。また、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことも確認した。
その後、95容量%エタノール(発酵アルコール)300gを加え、50℃にて1時間撹拌した後、5℃にて24時間静置保存し、ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、5C)を用いてろ過することでろ液を得た。
Na型のスルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換樹脂であるダイヤイオンSK1B(三菱化学株式会社製)50gを内径1.6cmのカラムへ充填し、80容量%エタノール水溶液50mLで洗浄した後、上記ろ液200mLをカラムへ加え、0.65mL/分の速度で5時間イオン交換処理を行い、イオン交換処理溶液を得た。なお、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)が生成していないことを確認した。
〔分析例(酵素反応溶液中のナトリム原子濃度およびカルシウム原子濃度)〕
酵素反応開始直前に少量の酵素反応溶液を精密にサンプリングし、水にて3倍希釈したものを試料溶液とした。誘導結合型高周波プラズマ(ICP)を光源に用いた発光分光分析機(株式会社島津製作所製、ICP−AES)を用いてナトリウム原子、およびカルシウム原子の定量をした。
〔分析例(酵素反応停止直前の反応率)〕
酵素反応溶液へエタノールを加え、酵素反応を停止する直前に、少量の酵素反応溶液を精密にサンプリングし、50容量%エタノール水溶液にて50倍希釈したものをコリン定量用の試料溶液とした。なお、イオン交換処理前後の液の遊離コリン定量は、水にて12.5倍希釈したものを遊離コリン定量用の試料溶液とした。
下記のとおりコリン定量を行い、反応率=遊離コリン量/総コリン量×100の式より酵素反応停止直前の反応率の算出を行った。
遊離コリン定量は下記のとおりに行った。
1.発色液の調製
一つの容器にコリンオキシダーゼ(From Alcaligenes species)(東洋紡株式会社製)、ペルオキシダーゼ(From Horseradish Type-I )(SIGMA社製)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリンナトリウム(DAOS)(同仁化学研究所製)、4−アミノアンチピリン(和光純薬工業株式会社製)をそれぞれ量りとり、50mmoL/LのTris−HCl(pH7.5)緩衝液を加えて、濃度がそれぞれ2unit/mL、42unit/mL、0.77mM、0.24mMとなるように調製した。
2.検量線作成用標準検体の調製
塩化コリンをイオン交換水で希釈し、塩化コリン標準検体200μg/mL、100μg/mLをそれぞれ調製した。
3.発色反応
試験管を用い、下記標準検体と試料溶液をそれぞれ別々のウェルに入れ、それらに発色液を3mLずつ加え、37℃で5分間反応させた。なお、発色液3mLのみのブランクも作成した。
・標準検体(100μg/mL) 20μL
・標準検体(200μg/mL) 20μL
・コリン定量用の試料溶液 20μL
4.コリン濃度の算出
反応後、600nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し、塩化コリン濃度からコリン濃度へ換算した検量線の作成、さらにその検量線から試料溶液中のコリン濃度を算出した。
総コリン定量は、ラボアッセイTMリン脂質(コリンオキシダーゼ・DAOS法)キット(和光純薬工業株式会社製)の測定法に準じて行った。
〔分析例(TLC)〕
試料の固形分が2質量%となるようにメタノールを加え希釈して試料溶液とし、試料溶液の2μLについて、マイクロピペットを用いて正確に薄層プレートに点着し、展開溶媒(クロロホルム:メタノール:酢酸=13:5:2)にて展開した。展開終了後、薄層プレートを風乾して展開溶媒を除去後、発色剤(ヨウ素)を入れた密閉ガラス容器に薄層プレートを静置し、スポットを形成させた。1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のRf値は約0.7であり、リゾホスファチジン酸(LPA)のRf値は約0.4である。
〔分析例(過酸化物価)〕
イオン交換処理後の溶液13g(固形分1.5質量%)を200mL共栓付き三角フラスコに精密に量りとり、酢酸とクロロホルムの混液(3:2)25mLを加え、静かに振り混ぜて試料を完全に溶解させた。飽和ヨウ化カリウム溶液(用時調製)1mLを加え直ちに栓をしてゆるく振り混ぜた後、暗所に正確に10分間放置した。精製水30mLを加え、栓をして激しく振り混ぜる。1質量%デンプン溶液(和光純薬工業株式会社製のテンプン試薬(溶性・生化学用)を使用した)1mLを加えた後、0.01moL/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。次の式より過酸化物価を算出した。
過酸化物価(meq/kg)=A×10/B(A:0.01moL/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定数(mL)、B:試料の固形分量(g))。
Figure 2014093953
Figure 2014093953
1)Na型:強酸性陽イオン交換樹脂「ダイヤイオンSK 1B」(三菱化学株式会社製)
H型:強酸性陽イオン交換樹脂「アンバーライトIR120B H AG」(オルガノ株式会社製)
OH型:強塩基性陰イオン交換樹脂「アンバーライト IRA402BL OH AG」(オルガノ株式会社製)
〔評価項目及び評価基準〕
(1)酵素反応停止直前の反応率
◎:反応率80〜100%(非常に効率よく反応が進行している。)
○:反応率70〜79%(効率よく反応が進行している。)
×:反応率70%未満(効率よく反応が進行していない。)
(2)イオン交換処理によるコリン低減率((イオン交換処理前の液の遊離コリン量−イオン交換処理後の液の遊離コリン量)/イオン交換処理前の液の遊離コリン量×100)なお、表1および2の「イオン交換処理後の液の遊離コリン量」の欄に記載。
○:イオン交換処理によるコリン低減率90〜100%(効率よくコリンが低減できている。)
△:イオン交換処理によるコリン低減率80〜89%(あまり効率よくコリンが低減できていない。)
×:イオン交換処理によるコリン低減率80%未満(効率よくコリンが低減できていない。)
(3)イオン交換処理後の液の1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のTLC
○:イオン交換処理前後で1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットの濃さが無変化
×:イオン交換処理前にはあった1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットがイオン交換処理後に消失
(4)イオン交換処理後の液のLPAのTLC
スポット無し○:LPAのスポットが無く、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットが有る。
スポット無し×:LPAのスポットが無く、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットも無い。
スポット有り×:LPAのスポットが有り、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸のスポットが無い
(5)イオン交換処理後の液の固形分の過酸化物価
○:15meq/kg未満(ほとんど酸化されていない。)
×:15meq/kg以上(過度に酸化されている。)
(6)イオン交換処理翌日の液の外観(室温保存)
イオン交換処理後の液を透明ガラス容器に密閉して25℃で翌日まで保存し、その外観を観察した。
○:透明な液(安定性良好)
△:少量の沈殿(わずかに安定性不良)
×:分離、沈殿(安定性不良)
実施例1、2、3の結果から、本発明の1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)の製造方法によれば、効率よくコリンを低減することができる。なお、各実施例における酵素反応溶液中のナトリウム原子濃度が0.1%では、コリンのイオン交換を阻害していないことがわかる。
また、本発明方法によれば、簡便かつ高収率で、過酸化物価の低い1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)を製造することができ、経済的に有利であることがわかる。さらに、本発明方法では、クロロホルム等の有機溶媒を使用しないので、健康・安全性の面でも優れる。
また、イオン交換処理後翌日の液の外観観察では、沈殿などが見られていないことから安定な物質が得られていることもわかる。実施例1、2、3の比較から、実施例2は反応温度が少し低く、反応時間も少し短いため、実施例1、3よりは反応率が少し低いが、本発明の効果を十分に奏するものである。また、実施例3は、リゾホスファチジルコリン(LPC)の濃度が実施例1、2の濃度の2倍以上濃いが、本発明に効果に悪影響を及ぼしていないことがわかる。
一方、比較例1では、反応温度が低く、反応時間が長時間であることから、反応率が低く、過酸化物価が高い(酸化が進行している)。また、酵素反応溶液中の賦活剤由来のカルシウム原子濃度が0.04%であり、カルシウムイオンによるコリンのイオン交換阻害によって中程度にしかコリンを低減できていない。そのため、イオン交換処理後翌日の液の外観観察では少量の沈殿が見られ、少し不安定な物質であることもわかる。
比較例2では、効率よくコリンを低減でき、反応率もよく、かつ過酸化物価が低い。しかし、H型の強酸性陽イオン交換樹脂処理を用いたため、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の環状部分が分解し、リゾホスファチジン酸(LPA)が生成し、全ての1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸が分解していることがTLCにより確認されている。また、イオン交換処理後翌日の液の外観観察では液が分離しており、非常に不安定な物質であることがわかる。
比較例3では、反応率がよく、かつ過酸化物価が低い。しかし、中程度にしかコリンを低減できておらず、1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸が全て消失していることがTLCにより確認されている。これは、H型の強酸性陽イオン交換樹脂による1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸の環状部分の分解を抑制するために、OH型の強塩基性陰イオン交換樹脂を使用したことにより、陰イオンである1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸(塩)が影響を受けて消失したためと推測される。
なお、TLCによりリゾホスファチジン酸(LPA)のスポットが無いことも確認されており、リゾホスファチジン酸(LPA)が生成していたとしても、リゾホスファチジン酸(LPA)も陰イオンであるため、陰イオン交換樹脂に吸着されていることがわかる。
また、イオン交換処理後翌日の液の外観観察では液が分離しており、非常に不安定な物質であることもわかる。
比較例4では、過酸化物価は低いものの、やや反応率が低く、酵素反応溶液中の賦活剤由来のナトリウム原子濃度が1.0%であり、ナトリウムイオンがコリンのイオン交換を阻害し、結果、コリンがほとんど低減できていないことがわかる。また、イオン交換処理後翌日の液の外観観察では沈殿が見られ、非常に不安定な物質であることもわかる。
本発明方法により製造された式[II]で表される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩は、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等の分野において種々利用することができる。

Claims (1)

  1. 式[I]で表されるリゾホスファチジルコリンと放線菌(Actinomadura属)由来のホスホリパーゼDとをナトリウム原子の含有量が0.2質量%以下、およびカルシウム原子の含有量が0.02質量%以下である水溶液中で50〜65℃にて4〜10時間酵素反応させる工程と、
    酵素反応の後処理として、エタノールを添加し、0〜8℃で15〜30時間静置保存し、反応液をろ過する工程と、
    ろ過して得られたろ液をNa型の強酸性陽イオン交換樹脂により処理する工程とを含むことを特徴とする、式[II]で表される1−アシル−2,3−環状ホスファチジン酸またはその塩の製造方法。
    Figure 2014093953
    (式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表す。)
    Figure 2014093953
    (式中、Rは炭素数10〜22のアシル基を表す。)
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