本発明の方法は、結着樹脂及びワックスを含有する混合物を溶融混練する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法であって、結着樹脂が非晶質樹脂と結晶性樹脂を含有し、非晶質樹脂が第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3又は4の脂肪族ジオール(a)と炭素数が2、4、6又は8のα,ω-直鎖アルカンジオールのいずれか1種以上からなる脂肪族ジオール(b)を含むアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステル(A)を含有し、非晶質樹脂と結晶性樹脂を特定の比率で含有している点に特徴を有しており、本発明の方法によって得られる静電荷像現像用トナーは、良好なグロス及び耐高温オフセット性を有するという効果を奏するものである。
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
非晶質ポリエステル(A)中のα,ω-直鎖アルカンジオールからなる脂肪族ジオール(b)由来の成分は、秩序構造をとりやすく結晶化しやすいが、第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3又は4の脂肪族ジオール(a)由来の成分を特定量含有させることにより、融点を示さない程度に秩序構造が形成され、該非晶質ポリエステルと結晶性樹脂が相溶化した場合においても、相溶部分の粘度低下を適度に抑えることが可能となる。従って、従来の非晶質樹脂と結晶性樹脂を用いた場合に比べ、軟化点の高い樹脂を用いなくても耐高温オフセット性が良好となり、グロスも向上する。
さらに、非晶質ポリエステル(A)中のα,ω-直鎖アルカンジオールからなる脂肪族ジオール(b)由来の部分と結晶性樹脂は、トナー溶融後も秩序的な構造をとりやすいために、定着画像上に凹凸を作り難く、高いグロスの定着画像を得ることが可能になると考えられる。
[結着樹脂]
本発明に用いられる結着樹脂は、非晶質樹脂と結晶性樹脂を含有する。
ここで、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
(非晶質樹脂)
非晶質樹脂は、第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3又は4の脂肪族ジオール(a)と炭素数が2、4、6又は8のα,ω-直鎖アルカンジオールのいずれか1種以上からなる脂肪族ジオール(b)を含むアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステル(A)を含有する。
非晶質ポリエステル(A)の含有量は、トナーのグロス、耐高温オフセット性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質樹脂中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、非晶質樹脂として、非晶質ポリエステル(A)のみを用いることがさらに好ましい。トナーのグロス及び耐高温オフセット性を向上させる効果が損なわれない範囲において、非晶質ポリエステル(A)以外の非晶質樹脂が含有されていてもよい。他の非晶質樹脂としては、他の非晶質ポリエステル、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
非晶質ポリエステル(A)の含有量は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。また、非晶質ポリエステル(A)の含有量は、トナーのグロス及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂中、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい。
第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3又は4の脂肪族ジオール(a)としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール及び2,3-ブタンジオールが挙げられ、これらの少なくとも1種を用いる。トナーのグロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
脂肪族ジオール(a)の含有量は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、35モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましく、65モル%以上がさらに好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。また、脂肪族ジオール(a)の含有量は、トナーのグロス、耐高温オフセット性及び低温定着性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、95モル%以下が好ましく、93モル%以下がより好ましく、90モル%以下がさらに好ましく、85モル%以下がさらに好ましい。
脂肪族ジオール(a)の含有量は、トナーのグロス及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、35〜95モル%が好ましく、35〜93モル%がより好ましく、35〜90モル%がさらに好ましく、35〜85モル%がさらに好ましい。
脂肪族ジオール(a)の含有量は、トナーのグロス、耐高温オフセット性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、35〜95モル%が好ましく、55〜95モル%がより好ましく、60〜93モル%がさらに好ましく、65〜90モル%がさらに好ましく、65〜85モル%がさらに好ましく、70〜85モル%がさらに好ましい。
なお、非晶質樹脂が複数の非晶質ポリエステル(A)を含有する場合の上記脂肪族ジオール(a)の含有量は、各非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)の含有量と各非晶質ポリエステル(A)の質量分率の積の和で求めることができる。
非晶質樹脂が非晶質ポリエステル(A)以外の非晶質ポリエステルを含有する場合、脂肪族ジオール(a)の含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質樹脂に含まれるすべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中、35〜95モル%が好ましく、55〜95モル%がより好ましく、60〜93モル%がさらに好ましく、65〜90モル%がさらに好ましく、65〜85モル%がさらに好ましく、70〜85モル%がさらに好ましい。
なお、すべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)の含有量は、各非晶質ポリエステルのアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)の含有量と各ポリエステルの質量分率の積の和で求めることができる。
炭素数が2、4、6又は8のα,ω-直鎖アルカンジオールのいずれか1種以上からなる脂肪族ジオール(b)としては、エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,8-オクタンジオールが挙げられ、これらの少なくとも1種を用いる。トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,8-オクタンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオールがより好ましい。
脂肪族ジオール(b)の含有量は、トナーのグロス、耐高温オフセット性及び低温定着性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、5モル%以上が好ましく、7モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、15モル%以上がさらに好ましい。脂肪族ジオール(b)の含有量は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、65モル%以下が好ましく、45モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましく、35モル%以下がさらに好ましく、30モル%以下がさらに好ましい。
脂肪族ジオール(b)の含有量は、トナーのグロス及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、5〜65モル%が好ましく、7〜65モル%がより好ましく、10〜65モル%がさらに好ましく、15〜65モル%がさらに好ましい。
脂肪族ジオール(b)の含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、5〜65モル%が好ましく、5〜45モル%がより好ましく、7〜40モル%がさらに好ましく、10〜35モル%がさらに好ましく、15〜35モル%がさらに好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい。
なお、非晶質樹脂が複数の非晶質ポリエステル(A)を含有する場合、上記脂肪族ジオール(b)の含有量は、各非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中の脂肪族ジオール(b)の含有量と各非晶質ポリエステル(A)の質量分率の積の和で求めることができる。
非晶質樹脂が非晶質ポリエステル(A)以外の非晶質ポリエステルを含有する場合、脂肪族ジオール(b)の含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質樹脂に含まれるすべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中、5〜65モル%が好ましく、5〜45モル%がより好ましく、7〜40モル%がさらに好ましく、10〜35モル%がさらに好ましく、15〜35モル%がさらに好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい。
なお、すべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中の脂肪族ジオール(b)の含有量は、各非晶質ポリエステルのアルコール成分中の脂肪族ジオール(b)の含有量と各ポリエステルの質量分率の積の和で求めることができる。
アルコール成分中の脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)の合計含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましい。
非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)のモル比(脂肪族ジオール(a)/脂肪族ジオール(b))は、トナーの耐高温オフセット性、グロスを向上させる観点から、95/5〜35/65が好ましく、93/7〜35/65がより好ましく、90/10〜35/65がさらに好ましく、85/15〜35/65がさらに好ましい。
非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)のモル比(脂肪族ジオール(a)/脂肪族ジオール(b))は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、95/5〜35/65が好ましく、95/5〜55/45がより好ましく、93/7〜60/40がさらに好ましく、90/10〜65/35がさらに好ましく、85/15〜65/35がさらに好ましく、85/15〜70/30がさらに好ましい。
非晶質樹脂が非晶質ポリエステル(A)以外の非晶質ポリエステルを含有する場合、非晶質樹脂に含まれるすべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)のモル比(脂肪族ジオール(a)/脂肪族ジオール(b))は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、95/5〜35/65が好ましく、95/5〜55/45がより好ましく、93/7〜60/40がさらに好ましく、90/10〜65/35がさらに好ましく、85/15〜65/35がさらに好ましく、85/15〜70/30がさらに好ましい。
上記以外のアルコール成分として、2価のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜15のジオールや、式(I):
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
3価以上のアルコールとしては、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜10の3価以上のアルコール等が挙げられる。具体的には、ソルビトール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
本発明において、非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、2価以上のカルボン酸化合物を含有する。
2価のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10のジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、芳香族ジカルボン酸化合物及び脂肪族ジカルボン酸化合物が好ましく、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物がより好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、これらの中ではテレフタル酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられ、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、フマル酸が好ましい。
2価のカルボン酸化合物の含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中、60〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、85〜100モル%がさらに好ましい。
なお、非晶質樹脂が複数の非晶質ポリエステル(A)を含有する場合、上記2価のカルボン酸化合物の含有量は、各非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中の2価のカルボン酸化合物の含有量と各非晶質ポリエステル(A)の質量分率の積の和で求めることができる。
非晶質樹脂が非晶質ポリエステル(A)以外の非晶質ポリエステルを含有する場合、2価のカルボン酸化合物の含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質樹脂に含まれるすべての非晶質ポリエステルのカルボン酸成分中、60〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、85〜100モル%がさらに好ましい。
なお、すべての非晶質ポリエステルのカルボン酸成分中の2価のカルボン酸化合物の含有量は、各ポリエステルのカルボン酸成分中の2価のカルボン酸化合物の含有量と各ポリエステルの質量分率の積の和で求めることができる。
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数4〜10の3価以上のカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられ、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)及びその酸無水物が好ましく、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物(無水トリメリット酸)がより好ましい。
3価以上のカルボン酸化合物の含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、15モル%以下がさらに好ましい。
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
非晶質ポリエステル(A)におけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの酸価を低減する観点から、0.70〜1.15が好ましく、0.75〜1.10がより好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
非晶質ポリエステル(A)の軟化点は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、120℃以上がさらに好ましい。また、トナーのグロス及び低温定着性を向上させる観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、140℃以下がさらに好ましい。
非晶質ポリエステル(A)の軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
非晶質ポリエステル(A)の吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、50℃以上が好ましい。そして、トナーのグロス、低温定着性を向上させ、カブリを抑制する観点から、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
非晶質ポリエステル(A)の吸熱の最高ピーク温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
非晶質ポリエステル(A)のガラス転移温度は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、50℃以上が好ましい。トナーのグロス及び低温定着性を向上させる観点から、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。なお、ガラス転移温度は、非晶質樹脂に特有の物性である。
非晶質ポリエステル(A)のガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
非晶質ポリエステル(A)の酸価は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点、及びトナーの帯電性を向上させ、カブリを抑制する観点から、60mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましい。
非晶質ポリエステル(A)の酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
本発明では、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂として非晶質ポリエステルを2種以上用いてもよい。
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
(結晶性樹脂)
結晶性樹脂としては、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結晶性ポリエステル及び縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂が好ましく、結晶性ポリエステルがより好ましい。
結晶性ポリエステルもしくは結晶性複合樹脂の含有量又は結晶性樹脂が両者を含む場合、結晶性ポリエステルと結晶性複合樹脂の合計含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結晶性樹脂中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
結晶性ポリエステルのアルコール成分は、結晶性を高める観点から、炭素数2〜10、好ましくは炭素数4〜8、より好ましくは炭素数4〜6の脂肪族ジオールを含有することが好ましい。
炭素数2〜10の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等が挙げられ、樹脂の結晶性を高める観点から、炭素数2〜10のα,ω−直鎖アルカンジオールが好ましく、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましい。
炭素数2〜10の脂肪族ジオールの含有量は、樹脂の結晶性を高める観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がさらに好ましい。さらに、アルコール成分に占める炭素数2〜10の脂肪族ジオールのなかの1種の割合が、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60〜100モル%であり、70〜100モル%がさらに好ましい。
炭素数2〜10の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,4−ソルビタン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
結晶性ポリエステルのカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸化合物、芳香族ジカルボン酸化合物、3価以上のカルボン酸化合物等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸化合物とは、脂肪族ジカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステルを指すが、これらの中では、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。また、トナーのグロス及び低温定着性を向上させる観点から、フマル酸が好ましい。なお、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数には、アルキルエステルのアルキル基の炭素数は含まない。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステルが挙げられ、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物及び芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーのグロス、耐高温オフセット性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%であり、90〜100モル%がさらに好ましい。
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数4〜10の3価以上のカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜3のアルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられ、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)及びその酸無水物が好ましく、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物(無水トリメリット酸)がより好ましい。
3価以上のカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以下である。
その他のカルボン酸化合物として、ロジン;フマル酸、マレイン酸、アクリル酸等で変性されたロジン等が挙げられる。
結晶性ポリエステルのアルコール成分とカルボン酸成分の縮重合反応は、非晶質ポリエステルと同様に製造することができる。
(結晶性複合樹脂)
縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂において、縮重合系樹脂成分の原料モノマーとしては、結晶性ポリエステルと同様のアルコール成分及びカルボン酸成分が挙げられる。ただし、縮重合系樹脂のカルボン酸成分は、複合樹脂の結晶性を高める観点、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。
すなわち、結晶性複合樹脂は、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂であることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、結晶性ポリエステルと同様の芳香族ジカルボン酸化合物が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、複合樹脂の結晶性を高める観点、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がさらに好ましい。
なお、本明細書においては、後述する両反応性モノマーは、アルコール成分やカルボン酸成分の含有量の計算には含まれないものとする。
縮重合系樹脂成分の原料成分であるカルボン酸成分とアルコール成分との合計モル数中、芳香族ジカルボン酸化合物と炭素数2〜10の脂肪族ジオールとの合計モル数は、複合樹脂の結晶性を高める観点、トナーのグロス、耐高温オフセット性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは75〜100モル%、より好ましくは85〜100モル%、さらに好ましくは95〜100モル%であり、実質的に100モル%がさらに好ましい。
縮重合系樹脂成分におけるカルボン酸成分とアルコール成分とのモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)において、複合樹脂の高分子量化を図る際には、カルボン酸成分よりもアルコール成分が多い方が好ましく、0.50〜0.89がより好ましく、0.70〜0.85がさらに好ましい。
縮重合系樹脂成分の原料モノマーの縮重合反応は、非晶質ポリエステルと同様に反応させることができる。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて「スチレン誘導体」という)が用いられる。
スチレン誘導体の含有量は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
スチレン誘導体以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
スチレン誘導体以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
スチレン誘導体以外に用いられるスチレン系樹脂成分の原料モノマーの中では、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から1〜22が好ましく、8〜18がより好ましい。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマー中、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
なお、スチレン誘導体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む原料モノマーを付加重合させて得られる樹脂をスチレン−(メタ)アクリル樹脂ともいう。
スチレン系樹脂成分の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、110〜200℃が好ましく、140〜170℃がより好ましい。
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂成分の原料モノマー100質量部に対して、10〜50質量部程度が好ましい。
スチレン系樹脂成分のガラス転移点(Tg)は、トナーの低温定着性、グロス、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、好ましくは60〜130℃、より好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
スチレン系樹脂成分のTgは、高分子の場合は熱加成性式というTgを予測する経験式、Fox式(T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.、第1巻、第3号、123ページ(1956))に従って、ポリマーを構成する各々の単量体の単独重合体のTgnより、下記式(1)から計算により求められる値を使用する。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn) (1)
(式中、Tgnは、各単量体成分の単独重合体の絶対温度で表したTgであり、Wnは各単量体成分の質量分率である。)
なお、本明細書において、後述する両反応性モノマーは、スチレン系樹脂成分の含有量の計算に含まれないものとし、スチレン系樹脂成分のTgの計算に用いない。
本発明の実施例で用いられるFoxの式のガラス転移点(Tg)の計算には、スチレンのTgn:373K(100℃)、アクリル酸2-エチルヘキシルのTgn:223K(-50℃)を用いる。
複合樹脂において、縮重合樹脂成分とスチレン系樹脂成分とは、直接に又は連結基を介して結合していることが好ましい。連結基としては、後述する両反応性モノマーや連鎖移動剤等由来の化合物、他の樹脂等が挙げられる。
複合樹脂は、前記縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とが相互に分散している状態が好ましく、前記分散状態は、実施例で述べる方法で測定した複合樹脂のTgと前記Fox式の計算値との差で評価することができる。
複合樹脂のガラス転移点と、複合樹脂中のスチレン系樹脂成分のFox式で計算されたガラス転移点との差の絶対値は、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、70℃以上がさらに好ましい。一般に、縮重合系樹脂成分のTgは、スチレン系樹脂成分のTgより低いことから、複合樹脂のTgの測定値は、スチレン系樹脂成分の計算値のTgより低くなることが多い。
このような複合樹脂は、例えば、(1)カルボキシ基や水酸基を有するスチレン系樹脂の存在下で、縮重合系樹脂成分の原料モノマーを縮重合させる方法、カルボキシ基や水酸基は後述する両反応性モノマーや連鎖移動剤など由来のものを用いることができる。(2)反応性不飽和結合を有する縮重合系樹脂の存在下で、スチレン系樹脂成分の原料モノマーを付加重合させる方法などで得ることができる。
複合樹脂は、トナーの低温定着性、グロス、耐高温オフセット性及び耐熱保存性向上させる観点から、縮重合系樹脂成分の原料モノマーとスチレン系樹脂成分の原料モノマーに加えて、さらに縮重合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを用いて得られる樹脂(ハイブリッド樹脂)であることが好ましい。従って、縮重合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーを重合させて複合樹脂を得る際に、縮重合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、複合樹脂は、両反応性モノマー由来の構成単位を介して縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とが結合した樹脂(ハイブリッド樹脂)となり、縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とがより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
即ち、複合樹脂は、(イ)炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを含む、縮重合系樹脂成分の原料モノマー、(ロ)スチレン系樹脂成分の原料モノマー、及び(ハ)縮重合系樹脂成分の原料モノマー及びスチレン系樹脂成分の原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂であることが好ましい。
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及び/又はカルボキシル基、より好ましくはカルボキシル基と、エチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。これらの中では、縮重合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
両反応性モノマーの使用量は、スチレン系樹脂成分と縮重合系樹脂成分との分散性を高め、トナーの低温定着性、グロス、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、縮重合系樹脂成分のアルコール成分の合計100モルに対して、1〜30モルが好ましく、2〜20モルがより好ましく、5〜15モルがさらに好ましく、スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計(重合開始剤を含めない)100モルに対して、2〜30モルが好ましく、5〜20モルがより好ましい。
両反応性モノマーを用いて得られるハイブリッド樹脂は、具体的には、以下の方法により製造することが好ましい。両反応性モノマーは、トナーの低温定着性、グロス、耐高温オフセット性及び耐熱保存性向上させる観点から、スチレン系樹脂成分の原料モノマーとともに付加重合反応に用いることが好ましい。
(i) 縮重合系樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)の後に、スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)を行う方法
この方法では、縮重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)を行い、反応温度を低下させ、付加重合反応に適した温度条件下で工程(B)を行う。スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーは、付加重合反応に適した温度で反応系内に添加にすることが好ましい。両反応性モノマーは付加重合反応をすると共に縮重合系樹脂成分とも反応する。
工程(B)の後に、再度反応温度を上昇させ、必要に応じて架橋剤となる3価以上等の縮重合系樹脂成分の原料モノマー等を重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応や両反応性モノマーとの反応をさらに進めることができる。
(ii) スチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)の後に、縮重合系樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)を行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(B)を行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、工程(A)の縮重合反応を行う。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
縮重合系樹脂成分の原料モノマーは、付加重合反応時に反応系内に存在してもよく、縮重合反応に適した温度条件下で反応系内に添加してもよい。前者の場合は、縮重合反応に適した温度でエステル化触媒を添加することで縮重合反応の進行を調節できる。
(iii) 縮重合系樹脂成分の原料モノマーによる縮重合反応の工程(A)とスチレン系樹脂成分の原料モノマー及び両反応性モノマーによる付加重合反応の工程(B)とを並行して行う方法
この方法では、付加重合反応に適した反応温度条件下で工程(A)と工程(B)とを行い、反応温度を上昇させ、縮重合反応に適した温度条件下で、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、架橋剤となる3価以上の縮重合系樹脂成分の原料モノマーを重合系に添加し、工程(A)の縮重合反応をさらに行うことが好ましい。その際、縮重合反応に適した温度条件下では、ラジカル重合禁止剤を添加して縮重合反応だけを進めることもできる。両反応性モノマーは付加重合反応と共に縮重合反応にも関与する。
上記(i)の方法においては、縮重合反応を行う工程(A)の代わりに、予め重合した縮重合系樹脂を用いてもよい。上記(iii)の方法において、工程(A)と工程(B)を並行して行う際には、縮重合系樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物中に、スチレン系樹脂成分の原料モノマーを含有した混合物を滴下して反応させることもできる。
上記(i)〜(iii)の方法は、同一容器内で行うことが好ましい。
複合樹脂において、縮重合系樹脂成分のスチレン系樹脂成分に対する質量比[縮重合系樹脂成分/スチレン系樹脂成分](本発明においては、縮重合系樹脂成分の原料モノマーのスチレン系樹脂成分の原料モノマーに対する質量比とする)、すなわち[縮重合系樹脂成分の原料モノマーの合計質量/スチレン系樹脂成分の原料モノマーの合計質量]は、連続相が縮重合系樹脂であり、分散相がスチレン系樹脂であることにより、トナーの低温定着性、グロス、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、50/50〜95/5が好ましく、60/40〜95/5がより好ましく、70/30〜90/10がさらに好ましい。なお、上記の計算において、両反応性モノマーの量は、縮重合系樹脂成分の原料モノマー量に含める。また、重合開始剤の量はスチレン系樹脂成分の原料モノマー量に含めない。
結晶性樹脂の軟化点は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
また、結晶性樹脂の融点(=吸熱の最高ピーク温度)は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がさらに好ましく、130℃以下がさらに好ましい。
結晶性樹脂の軟化点及び融点は、原料モノマー組成、重合開始剤、分子量、触媒量等の調整又は反応条件の選択により調整することができる。
結晶性樹脂の含有量は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。また、結晶性樹脂の含有量は、トナーのグロス及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
結晶性ポリエステルもしくは結晶性複合樹脂の含有量又は結晶性樹脂が両者を含む場合、結晶性ポリエステルと結晶性複合樹脂の合計含有量は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。また、上記含有量は、トナーのグロス及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
結着樹脂中の非晶質樹脂と結晶性樹脂の質量比(非晶質樹脂/結晶性樹脂)は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、55/45〜95/5であり、60/40〜90/10が好ましく、70/30〜90/10がより好ましく、75/25〜85/15がさらに好ましい。
結着樹脂中の非晶質ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル又は結晶性複合樹脂の質量比(非晶質ポリエステル(A)/結晶性ポリエステル又は結晶性複合樹脂)は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、55/45〜95/5であり、60/40〜90/10が好ましく、70/30〜90/10がより好ましく、75/25〜85/15がさらに好ましい。また、結晶性樹脂が結晶性ポリエステルと結晶性複合樹脂を含む場合、結着樹脂中の非晶質ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル及び結晶性複合樹脂の総量の質量比(非晶質ポリエステル(A)/結晶性ポリエステル及び結晶性複合樹脂の総量)は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、55/45〜95/5であり、60/40〜90/10が好ましく、70/30〜90/10がより好ましく、75/25〜85/15がさらに好ましい。
結着樹脂中の非晶質樹脂と結晶性樹脂の総含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
結着樹脂中の非晶質ポリエステル(A)と結晶性ポリエステル又は結晶性複合樹脂の総含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。また、結晶性樹脂が結晶性ポリエステルと結晶性複合樹脂を含む場合、結着樹脂中の非晶質ポリエステル(A)と結晶性ポリエステルと結晶性複合樹脂の総含有量は、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。
[ワックス]
ワックスとしては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、合成エステルワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。これらの中では、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、エステル系ワックス及び脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく、カルナウバワックス及びフィッシャートロプシュワックスがより好ましく、カルナウバワックスがさらに好ましい。
ワックスの融点は、トナーの耐高温オフセット性、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、68℃以上がさらに好ましく、70℃以上がさらに好ましい。そして、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
ワックスの含有量は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部がさらに好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。ワックスの含有量は、トナーの耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、13質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8.0質量部以下がさらに好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましく、4.0質量部以下がさらに好ましい。
ワックスは2種類以上含有してもよい。複数のワックスを含有する場合、最も融点の低いワックスの融点及び全ワックスの加重平均による融点が、いずれも前記ワックスの融点の好適範囲であることが好ましい。全ワックスの加重平均による融点は、それぞれのワックスの融点と含有割合の積の和により求めることができる。
また、含有量についても、最も融点の低いワックスの含有量及び全ワックスの総含有量が、いずれも前記ワックスの含有量の好適範囲であることが好ましい。
[着色剤]
本発明において、着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤としては、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、フタロシアニンブルー15:3が好ましい。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの印字濃度を向上させる観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
本発明の方法により得られるトナーは、さらに、荷電制御剤等を含有していてもよい。
[荷電制御剤]
荷電制御剤として、負帯電性荷電制御剤、正帯電性荷電制御剤のいずれも用いることができる。
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体、ベンジル酸ホウ素錯体等が挙げられる。含金属アゾ染料としては、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-28」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業社製)、「T-77」、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体としては、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-82」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-85」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。ベンジル酸ホウ素錯体としては、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等が挙げられる。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。ニグロシン染料としては、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。トリフェニルメタン系染料としては、例えば3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料が挙げられる。4級アンモニウム塩化合物としては、例えば「ボントロンP-51」、「ボントロンP-52」(以上、オリヱント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PXVP435」「COPY CHARGE PSY」(以上、クラリアント社製)等が挙げられる。ポリアミン樹脂としては、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。イミダゾール誘導体としては、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
本発明では、トナー材料として、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
<トナーの製造方法>
本発明のトナーは、少なくとも、結着樹脂及びワックスを含有する混合物を溶融混練する工程を含む方法により製造する。
結着樹脂及びワックス、さらに必要に応じて着色剤、荷電制御剤等を含む混合物の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。溶融混練時の温度を低減し、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、及び混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂にワックス、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分を効率よく高分散させることができる観点から、オープンロール型混練機を用いることが好ましく、該オープンロール型混練機には、ロールの軸方向に沿って供給口と混練物排出口が設けられていることが好ましい。
結着樹脂、ワックス、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
混合物をオープンロール型混練機に供する際には、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが好ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、ワックス、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが好ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、100℃以上、160℃以下が好ましく、同様の観点から、低回転側ロールの原料投入側端部温度は30℃以上、100℃以下が好ましい。
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、20℃以上であることが好ましく、30℃以上がより好ましく、60℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。
低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、ワックス、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、0℃以上であることが好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましく、50℃以下であることが好ましい。
高回転側ロールの周速度は、ワックス、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、2m/min以上であることが好ましく、10m/min以上がより好ましく、25m/min以上がさらに好ましく、100m/min以下であることが好ましく、75m/min以下がより好ましく、50m/min以下がさらに好ましい。
低回転側ロールの周速度は、同様の観点から、1m/min以上が好ましく、5m/min以上がより好ましく、15m/min以上がさらに好ましく、90m/min以下が好ましく、60m/min以下がより好ましく、30m/min以下がさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高め、ワックス、着色剤、荷電制御剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
混合物の溶融混練は、2軸混練機を用いてもよい。2軸混練機とは、2本の混練軸をバレルが覆い隠す閉鎖型の混練機であり、軸の回転方向が同方向に回転できるタイプが好ましい。市販品としては、生産性を向上させる観点から高速での2軸の噛み合わせが良好な、池貝鉄工社製二軸押出機PCMシリーズが好ましい。
2軸混練機での溶融混練は、バレル設定温度(押出機内部壁面の温度)、2軸の軸回転の周速、及び原料供給速度を調整することで行う。バレル設定温度は、ワックス、着色剤、及び荷電制御剤等の結着樹脂中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。そして、140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
2軸の軸回転の周速は、ワックス、着色剤、及び荷電制御剤等の結着樹脂中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、トナーの耐高温オフセット性、グロス、低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、0.1m/sec以上、1m/sec以下が好ましい。
2軸混練機への原料供給速度は、使用する混練機の許容能力と、上記のバレル設定温度及び軸回転の周速に応じて適宜調整する。
得られた樹脂混練物は、粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕し、分級することが好ましい。
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、樹脂混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、衝突板式ジェットミルを用いることがより好ましい。
分級工程に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
本発明のトナーの製造方法において、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、粉砕、分級工程後、得られたトナー粒子(トナー母粒子)をさらに外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛等の無機粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。2種以上を併用してもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性を向上させる観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのがより好ましい。
外添剤の個数平均粒径は、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、外添剤で処理する前のトナー母粒子100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。また、15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、9μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。なお、また、トナーを外添剤で処理している場合には、トナー母粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
本発明の方法により得られるトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーを開示する。
<1> 結着樹脂及びワックスを含有する混合物を溶融混練する工程を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
前記結着樹脂が、非晶質樹脂と結晶性樹脂を含有してなり、
前記非晶質樹脂が第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3又は4の脂肪族ジオール(a)と炭素数が2、4、6又は8のα,ω-直鎖アルカンジオールのいずれか1種以上からなる脂肪族ジオール(b)を含むアルコール成分と、カルボン酸成分とを縮重合させて得られる非晶質ポリエステル(A)を含有し、
前記非晶質樹脂と前記結晶性樹脂の質量比(非晶質樹脂/結晶性樹脂)が55/45〜95/5である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
<2> 非晶質ポリエステル(A)の含有量が、非晶質樹脂中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、結着樹脂として、非晶質ポリエステル(A)のみを用いることがさらに好ましい、前記<1>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<3> 非晶質ポリエステル(A)の含有量が、結着樹脂中、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましい、前記<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<4> 第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する炭素数3又は4の脂肪族ジオール(a)が、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール及び2,3-ブタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい、前記<1>〜<3>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<5> 脂肪族ジオール(a)の含有量が、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、35モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましく、65モル%以上がさらに好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、95モル%以下が好ましく、93モル%以下がより好ましく、90モル%以下がさらに好ましく、85モル%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<4>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<6> 脂肪族ジオール(a)の含有量が、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、35〜95モル%が好ましく、35〜93モル%がより好ましく、35〜90モル%がさらに好ましく、35〜85モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<5>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<7> 脂肪族ジオール(a)の含有量が、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、35〜95モル%が好ましく、55〜95モル%がより好ましく、60〜93モル%がさらに好ましく、65〜90モル%がさらに好ましく、65〜85モル%がさらに好ましく、70〜85モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<6>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<8> 脂肪族ジオール(a)の含有量が、非晶質樹脂に含まれるすべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中、35〜95モル%が好ましく、55〜95モル%がより好ましく、60〜93モル%がさらに好ましく、65〜90モル%がさらに好ましく、65〜85モル%がさらに好ましく、70〜85モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<7>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<9> 炭素数が2、4、6又は8のα,ω-直鎖アルカンジオールのいずれか1種以上からなる脂肪族ジオール(b)が、エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,8-オクタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種であり、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及び1,8-オクタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、1,4-ブタンジオールがより好ましい、前記<1>〜<8>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<10> 脂肪族ジオール(b)の含有量が、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、5モル%以上が好ましく、7モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましく、15モル%以上がさらに好ましく、65モル%以下が好ましく、45モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましく、35モル%以下がさらに好ましく、30モル%以下がさらに好ましい、前記<1>〜<9>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<11> 脂肪族ジオール(b)の含有量は、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、5〜65モル%が好ましく、7〜65モル%がより好ましく、10〜65モル%がさらに好ましく、15〜65モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<10>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<12> 脂肪族ジオール(b)の含有量は、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、5〜65モル%が好ましく、5〜45モル%がより好ましく、7〜40モル%がさらに好ましく、10〜35モル%がさらに好ましく、15〜35モル%がさらに好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<11>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<13> 脂肪族ジオール(b)の含有量は、非晶質樹脂に含まれるすべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中、5〜65モル%が好ましく、5〜45モル%がより好ましく、7〜40モル%がさらに好ましく、10〜35モル%がさらに好ましく、15〜35モル%がさらに好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<12>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<14> 脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)の合計含有量が、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<13>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<15> 非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)のモル比(脂肪族ジオール(a)/脂肪族ジオール(b))が、95/5〜35/65が好ましく、93/7〜35/65がより好ましく、90/10〜35/65がさらに好ましく、85/15〜35/65がさらに好ましい、前記<1>〜<14>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<16> 非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)のモル比(脂肪族ジオール(a)/脂肪族ジオール(b))が、95/5〜35/65が好ましく、95/5〜55/45がより好ましく、93/7〜60/40がさらに好ましく、90/10〜65/35がさらに好ましく、85/15〜65/35がさらに好ましく、85/15〜70/30がさらに好ましい、前記<1>〜<15>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<17> 非晶質樹脂に含まれるすべての非晶質ポリエステルのアルコール成分中の脂肪族ジオール(a)と脂肪族ジオール(b)のモル比(脂肪族ジオール(a)/脂肪族ジオール(b))が、95/5〜35/65が好ましく、95/5〜55/45がより好ましく、93/7〜60/40がさらに好ましく、90/10〜65/35がさらに好ましく、85/15〜65/35がさらに好ましく、85/15〜70/30がさらに好ましい、前記<1>〜<16>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<18> 非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分が、2価以上のカルボン酸化合物を含有する、前記<1>〜<17>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<19> 2価のカルボン酸化合物の含有量が、非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中、60〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、80〜100モル%がさらに好ましく、85〜100モル%がさらに好ましい、前記<18>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<20> 非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分が、3価以上のカルボン酸化合物を含み、該3価以上のカルボン酸化合物は、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)及び/又はその酸無水物が好ましく、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物(無水トリメリット酸)がより好ましい、前記<18>又は<19>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<21> 3価以上のカルボン酸化合物の含有量が、カルボン酸成分中、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下がさらに好ましく、15モル%以下がさらに好ましい、前記<20>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<22> 非晶質ポリエステル(A)の軟化点が、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、120℃以上がさらに好ましく、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、140℃以下がさらに好ましい、前記<1>〜<21>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<23> 非晶質ポリエステル(A)の吸熱の最高ピーク温度が、50℃以上が好ましく、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい、前記<1>〜<22>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<24> 非晶質ポリエステル(A)のガラス転移温度が、50℃以上が好ましく、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい、前記<1>〜<23>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<25> 非晶質ポリエステル(A)の酸価が、60mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましい、前記<1>〜<24>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<26> 結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル及び/又は縮重合系樹脂成分とスチレン系樹脂成分とを含む結晶性複合樹脂を含有することが好ましく、結晶性ポリエステルを含有することがより好ましい、前記<1>〜<25>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<27> 結晶性ポリエステルのアルコール成分が、炭素数2〜10、好ましくは炭素数4〜8、より好ましくは炭素数4〜6の脂肪族ジオールを含有し、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、及び1,4-ブテンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、炭素数2〜10のα,ω−直鎖アルカンジオールがより好ましく、1,4-ブタンジオール及び/又は1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましく、1,6-ヘキサンジオールがさらに好ましい、前記<26>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<28> 炭素数2〜10の脂肪族ジオールの含有量が、結晶性ポリエステルのアルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がさらに好ましい、前記<27>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<29> 結晶性ポリエステルのカルボン酸成分が、脂肪族ジカルボン酸化合物、好ましくはフマル酸及び/又は芳香族ジカルボン酸化合物、好ましくはテレフタル酸を含有する、前記<26>〜<28>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<30> 結晶性複合樹脂が、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる縮重合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂である、前記<26>に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<31> 縮重合系樹脂成分のスチレン系樹脂成分に対する質量比[縮重合系樹脂成分/スチレン系樹脂成分]が、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましく70/30〜90/10である、、前記<26>〜<30>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<32> 結晶性樹脂の軟化点が、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下である、前記<1>〜<31>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<33> 結晶性樹脂の融点が、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である、前記<1>〜<32>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<34> 結晶性樹脂の含有量が、結着樹脂中、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下がさらに好ましく、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい、前記<1>〜<33>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<35> 結晶性ポリエステルもしくは結晶性複合樹脂の含有量又は結晶性ポリエステルと結晶性複合樹脂の合計含有量が、結晶性樹脂中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい、前記<26>〜<34>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<36> 結着樹脂中の非晶質樹脂と結晶性樹脂の質量比(非晶質樹脂/結晶性樹脂)は、60/40〜90/10が好ましく、70/30〜90/10がより好ましく、75/25〜85/15がさらに好ましい、前記<1>〜<35>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<37> 結着樹脂中の非晶質樹脂と結晶性樹脂の総含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい、前記<1>〜<36>のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<38> ワックスの融点が、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、68℃以上がさらに好ましく、70℃以上がさらに好ましく、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい、前記<1>〜<37>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<39> ワックスが、エステル系ワックス及び/又は脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく、カルナウバワックス及び/又はフィッシャートロプシュワックスがより好ましく、カルナウバワックスがさらに好ましい、前記<1>〜<38>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<40> ワックスの含有量が、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部がさらに好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましく、13質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、8.0質量部以下がさらに好ましく、6.0質量部以下がさらに好ましく、4.0質量部以下がさらに好ましい、前記<1>〜<39>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<41> 溶融混練をオープンロール型混練機で行う、前記<1>〜<40>のいずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
<42> 前記<1>〜<41>のいずれか記載の製造方法により得られる、静電荷像現像用トナー。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却し、0℃にて1分間保持した。その後、昇温速度50℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とする。
〔非晶質樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔結晶性樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度100℃/分で-80℃まで冷却する。次に試料を昇温速度1℃/分でモジュレーティッドモードにて測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔ワックスの融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、DSC Q20)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度をワックスの融点とする。
〔外添剤の個数平均粒径〕
走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値を個数平均粒径とする。
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
非晶質樹脂製造例1〔樹脂A〜F、樹脂I、樹脂J、樹脂M、樹脂o〜q〕
表1、2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させた。得られた樹脂の物性を表1、2に示す。
非晶質樹脂製造例2〔樹脂G、樹脂K〕
表1、2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、エステル化触媒及び重合禁止剤を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させた。得られた樹脂の物性を表1、2に示す。
非晶質樹脂製造例3〔樹脂H、樹脂L〕
表1、2に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃に昇温して6時間反応させた。さらに210℃に昇温した後、常圧(101.3kPa)にて1時間反応させ、さらに40kPaにて所望の軟化点に達するまで反応させた。得られた樹脂の物性を表1、2に示す。
結晶性樹脂製造例1〔樹脂r〕
表3に示す原料モノマー、エステル化触媒及び重合禁止剤を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃から200℃まで10時間かけて昇温を行い、200℃で8kPaにて1時間反応を行った。得られた樹脂rの物性を表3に示す。
結晶性樹脂製造例2〔樹脂s〕
表3に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、200℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8kPaにて1時間反応を行った。その後、常圧に戻し、無水トリメリット酸を投入し、200℃にて常圧で2時間反応を行った。得られた樹脂sの物性を表3に示す。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
結晶性樹脂製造例3〔樹脂t〕
表4に示す両性反応モノマーであるアクリル酸以外の縮重合系樹脂成分の原料モノマーを所定量、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ160℃に加熱し、溶解させた。予め混合したスチレン、ジクミルパーオキサイド及びアクリル酸の溶液を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。170℃に保持したまま1時間攪拌を続け、スチレン及びアクリル酸を重合させた後、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸3gを加えて210℃に昇温し8時間反応を行った。さらに8.3kPaにて1時間反応を行い、樹脂tを得た。得られた樹脂tの物性を表4に示す。
実施例1〜25、比較例1〜7
表5、6に示す所定量の結着樹脂、ワックス「カルナウバワックスC1」(加藤洋行社製、融点:88℃)3.0質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))5.0質量部及び荷電制御剤「ボントロンE-304」(オリヱント化学工業社製)1.0質量部をヘンシェルミキサーにて混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度32.4m/min、低回転側ロール(バックロール)周速度21.7m/min、ロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が145℃及び混練物排出側が100℃であり、低回転側ロールの原料投入側が75℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は10kg/hr、平均滞留時間は約3分間であった。
得られた樹脂混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(ホソカワミクロン社製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて体積粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物をDS2型気流分級機(衝突板式、日本ニューマチック社製)を用いて体積中位粒径が8.0μmになるように粉砕圧を調整して微粉砕を行なった。得られた微粉砕物を、DSX2型気流分級機(日本ニューマチック社製)を用いて体積中位粒径が8.5μmになるように静圧(内部圧力)を調整して分級を行い、トナー母粒子を得た。
得られたトナー母粒子100質量部と、外添剤として疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、個数平均粒径:16nm)1.0質量部、疎水性シリカ「NAX50」(日本アエロジル社製、個数平均粒径:30nm)1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/min(周速度29m/sec)で3分間混合して、トナーを得た。
実施例26
ワックスとして、「カルナウバワックス WAX-C1」3.0質量部の代わりに「フィッシャートロップシュワックス SP-105」(加藤洋行社製、融点:105℃)5.0質量部を使用した以外は実施例2と同様に行い、トナーを得た。
実施例27
ワックスとして、「カルナウバワックス WAX-C1」3.0質量部の代わりに「フィッシャートロップシュワックス SP-105」(加藤洋行社製、融点:105℃)5.0質量部を使用した以外は実施例6と同様に行い、トナーを得た。
試験例1〔グロス〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.40±0.03mg/cm2に調整して、4.1cm×4.1cmのベタ画像を富士ゼロックスオフィスサプライ社製のJ紙に印字した。定着機を通過する前にベタ画像を取りだして未定着画像を得た。得られた未定着画像を有する用紙を非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)に装填し、再度4.1cm×4.1cmのベタ画像を印字し、定着機を通過する前にベタ画像を取りだして、0.80±0.06mg/cm2未定着画像(2層)を得た。同様の操作を繰り返し、1.20±0.09mg/cm2未定着画像(3層)を得た。
得られた3層未定着画像を「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)の定着機を外部に取り出した外部定着機にて、定着ロールの温度を100℃に設定し、120mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同様の操作を行った。これを190℃まで5℃ずつ上昇させながら行った。得られた3層の定着画像の各定着温度での光沢度を測定し最大値をそのサンプルのグロスとした。光沢度は、光沢度計「PG-1」(日本電色工業株式会社)を用い、光源を60°に設定して測定した。光沢度が高いほど、グロスが良好であることを示す。結果を表5、6に示す。
試験例2〔耐高温オフセット性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(沖データ社製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.40±0.03mg/cm2に調整して、4.1cm×4.1cmのベタ画像を富士ゼロックスオフィスサプライ社製のJ紙に印字した。定着機を通過する前にベタ画像を取りだして未定着画像を得た。得られた未定着画像を有する用紙を非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)の定着機を改造した外部定着機にて、定着ロール温度を100℃に設定し、100mm/secの定着速度で定着させた。その後、定着ロール温度を105℃に設定し、同等の操作を行った。これを200℃まで5℃ずつ上昇させながら行った。
得られた100℃〜200℃の定着画像を目視で確認し、ホットオフセットの発生が見られない定着ロールの最高温度を最高定着温度とした。結果を表5、6に示す。200℃の定着画像において、ホットオフセットの発生が見られない場合は、「200<」と記載した。
以上の結果より、比較例1〜7と対比して、実施例1〜27のトナーは、グロス及び耐高温オフセット性に優れることがわかる。