本願明細書において、管の非破壊試験用の携帯走査装置が開示される。管は、水壁の部分であり、通常、ボイラーおよび炉において用いられる。走査装置は、小型であり、異なる直径を有する管の使用に容易に適用され、特に蒸気発生器(ボイラー)の水壁管を走査するのに有益である。一実施形態では、携帯走査装置を用いて、水壁管の低温側にある取付溶接で発生するクラックを決定する、特に、通常、防護されているため防護を除去せずにはアクセス困難な取付溶接で発生するクラックを決定する。
本明細書で定義されるように、「管」という用語は、流体を輸送可能な包囲された経路を含む。閉経路は、(導管の軸方向に対して垂直に測定された場合)任意の所望の幾何学的形状を有することができ、円形、長円形、正方形、長方形の断面を有することができる。本明細書では、軸方向は、長手方向とも称され、導管の長さ方向に沿って測定される。
本願明細書では、携帯走査装置が水壁管の「高温側」に接触するとき、水壁管の「低温側」のクラック検出を可能にする方法が開示される。一実施形態では、走査装置が水壁管の高温側と接触するとき、本方法により、水壁管の低温側の軸のクラック検出が可能になる。本方法は、音波を、管外面の一部に接触するために機械加工された導波路に導入するステップを含む。音波は、超音波周波数範囲にある(以下「超音波信号」と称する)。超音波信号は、導波路材料を出て、スネルの法則に基づいて複数の角度で、管内で屈折する。超音波信号は、位相配列信号であり、管壁に導入され、管壁のいずれかの表面で開始される腐食疲労およびクラッキングの検出を容易にする。
走査装置は、プローブおよび超音波(UT)導波路(時々ウェッジとも称される)を迅速に交換可能に構成されているので、異なる直径を有する管の複数の検査が、迅速に容易になる。本願明細書において後述するように、走査装置の構成により円滑な動作が可能であるので、動作音またはスキューを除去または最小化することができる。
携帯走査装置は、超音波信号を水壁管に対して送受信するための導波路アセンブリと、走査装置を水壁管に保持するための磁気強度を調整するための磁石・ねじアセンブリと、(走査装置によって)管に沿って横断された距離を測定し、この距離を任意の検出したクラックに関連させるためのエンコーダ・アセンブリと、を含むハウジングを具える。導波路アセンブリ、磁石・ねじアセンブリおよびエンコーダ・アセンブリのための関連する支持機構および動作機構もまた、ハウジングに含まれる。
図1Aおよび図1Bでは、管の非破壊試験を実行するための携帯走査装置100が、例示的な実施形態に従って記載されている。図1Aおよび図1Bは、例示的な携帯走査装置100の等角図である。図1Aは等角側面図であり、図1Bは等角底面図である。携帯走査装置100は、上面104および底面110を有するハウジング102を含む。底面110は、上面104の反対である。携帯走査装置100は、上面104の2つの端から下方へ延在し、対向する側壁106および108もまた有する。
一実施形態では、ハウジング102は、人が走査装置を把持するためのハンドルを有していない。ハウジング102が、個別のハンドルを有さずに手で把持および操作できるように、上面104および側壁106、108は設計される。ハウジング102の形状により、テスト者は、クラック用に検査される管上で走査装置100を手動で導くことができる。手動で運搬および操作可能なように、ハウジング102が軽量であることが通常は望ましい。ハウジング102が最高約110°Fの適度に高い温度に耐えることができる材料から製造されることもまた望ましく、実際、やや高い温度環境で測定を実行することが望ましいということが判明している。ハウジング102は、金属、セラミックまたはポリマーから製造可能である。ハウジング102がポリマーまたはセラミックから製造されると、走査装置を落としてもクラッキングまたはチッピング(欠け)が生じないように、ポリマーまたはセラミックが衝撃に対して強化されることが望ましい。例示的実施形態では、ハウジング102は、ポリマーから製造される。例示的なポリマーは、木、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性樹脂である。
例示的な熱可塑性ポリマーは、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸塩、ポリアリールスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリベンゾキサゾール、ポリフタルアミド、ポリアセタール、ポリ無水物、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホン酸塩、多硫化物、ポリチオエステル、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリウレタン等、または、上述した熱可塑性ポリマーの少なくとも1つを具える組合せである。
例示的な熱硬化性ポリマーは、ポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム、エポキシ、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、シリコン等、または、上述した熱硬化性樹脂の少なくとも1つを具える組合せである。熱硬化性樹脂の混合および熱硬化性物質を有する熱可塑性樹脂の混合を利用することができる。
図2は、ハウジング102の底面110を示す。図1Aおよび図1Bから分かるように、底面110は、水壁管の外面全体にわたり滑らかに動かすことができるように凹形の曲面を形成する。底面110の湾曲は、管外面の凸形の湾曲に適応するために凹形である。ハウジング102は、磁石・ねじアセンブリ120A、120Bおよび120Cを収容するための開口部115(図1Bおよび図2参照)をその底面110に有するとともに、導波路アセンブリ140を収容するためのる開口部171(図2参照)およびエンコーダ・アセンブリ160を収容するための開口部159(図1Bおよび図2参照)を有する。図2の底面図(および図3Dの断面側面図)は、破線の楕円で表されている3つの磁石・ねじアセンブリ120A、120Bおよび120Cを表す。第1の磁石・ねじアセンブリ120Aは、第1端部114の近傍に位置し、第2の磁石・ねじアセンブリ120Bは、第1端部114から離れて位置する。第1の磁石・ねじアセンブリ120Aおよび第2の磁石・ねじアセンブリ120Bは、導波路アセンブリ140を挟んで対向する側に位置する。第3の磁石・ねじアセンブリ120Cは、ハウジング102の第2端部116の近傍に位置する。第2の磁石・ねじアセンブリ120Bと第3の磁石・ねじアセンブリ120Cとの間に、エンコーダ・アセンブリ160(図3Dを参照して後述する)を収納するキャビティ159が位置する。
各磁石・ねじアセンブリは、円筒形の磁石122(アセンブリ120A、120Bおよび120Cにそれぞれ対応する122A、122Bおよび122C)と、ねじ124(アセンブリ120A、120Bおよび120Cにそれぞれ対応する124A、124Bおよび124C)と、を具え、ねじ124は、ハウジング102の空間に含まれるナット132(アセンブリ120A、120Bおよび120Cにそれぞれ対応する132A、132Bおよび132C)に調節可能にねじ留めされる。ナット132のための空間は、ナット132の外面に対応する幾何学的形状を有する。それゆえ、ナット132は、ナット132を適所に保つ空間において回転することができない。各磁石122は、その幾何中心にねじ124を通す穴を有する。ねじ124は、ハウジング102を通過し、ナット132によってねじ留めされる。ねじ124A、124Bおよび124Cをそれぞれナット132A、132Bおよび132C内で回転させることによって、ハウジング102の底面110に対するそれぞれの磁石122A、122Bおよび122Cの位置を調整することができる。それゆえ、磁石122A、122Bおよび/または122Cは、半径方向(半径方向距離が管の中心から測定される)に、水壁の管に近づけることもできるし、水壁の管から離すこともできる。磁石122を管200に近づけるまたは管200から離すことによって、管200上の磁石122によって生ずる引力は変えられ、所望の力を印加し走査装置100を管200上で保持し(図3A参照)、同時に、走査装置100を、管200に沿って容易に摺動させることができる。磁石122により、ユーザは管200に取り付けられたプローブを保持し、ユーザは、エンコーダ位置基準を失うことなく、再位置決めすることができる。
図1B、図2および図3Dを参照すると、軟質吸収材料の少なくとも2つのストリップ、すなわち、液体(以下接触媒質)を吸収および放出することができる第1のストリップ126Aおよび第2のストリップl126Bは、ハウジング102の底面110に配置されている。吸収材料の第1のストリップ126Aおよび吸収材料の第2のストリップ126Bは、ハウジング102の底面110に接合される。吸収材料の第1のストリップ126Aおよび吸収材料の第2の層126Bは、それぞれ第1の磁石122Aおよび第2の磁石122Bを部分的に覆う。吸収材料の各層126Aおよび126Bは、開口部127(図1B参照)を含み、調整のためのねじ124Aおよび124Bそれぞれへのアクセスを可能にする。
走査装置100が管200の表面上を移動する間に、吸収材料の第1のストリップ126Aおよび吸収材料の第2のストリップ126Bは、接触媒質を吸収および脱着することに加えて、シールとしても作用し、第1のストリップ126Aおよび第2のストリップ126Bの間にそれぞれ接触媒質のフィルムを捕獲すなわち保持する。接触媒質のフィルムが、導波路142と、クラックを検査されている管200と、の間に存在し、導波路142と管200との間の超音波信号のカップリングを容易にする。接触媒質は、導波路142と管200の間の領域に、接触媒質管128(図1A参照)および接触媒質マニホルド130(図3B参照)を介して供給される。接触媒質マニホルド130は、ハウジング102内に含まれるまたは形成される管180、182および184を介して、底面110の複数のポート186と流体連通する。ポート186は、ハウジング102の底面110に配置され、導波路アセンブリ140の導波路142の一方側に存在する。図2は2列のポート186を示すが、1列でも十分であることに留意されたい。
走査装置100が動作すると、接触媒質は、ハウジング102の底面110上のポート186から連続的に放出される。マニホルド130の管180、182および184は付加製造によってハウジング102の製造の間、ハウジング102の一部として鋳造され、これは後述されている。
接触媒質管128は、接触媒質供給源(例えば、加圧容器またはポンプであるが、図示せず)に接続されている第1端部と、ハウジング102の第2端部116に配置された接触媒質マニホルド130に接続されている第2端部と、を有する。接触媒質管128は、供給源(図示せず)から接触媒質を受けとり、その接触媒質を接触媒質マニホルド130に(例えば、とげのある部品(barbed fitting)を介して)送出し、次に、接触媒質マニホルド130は、接触媒質をハウジング102の底面110にある複数のポート186に直接送出する。接触媒質は、導波路142と検査される管200との間に、かつ、吸収材料の第1のストリップ126Aと第2のストリップ126Bとの間に層(本明細書において、「フィルム」と称される)を形成する。超音波信号は、この接触媒質フィルムを介して導波路142から管200に送出される。接触媒質材は、水、有機溶剤またはゲルとすることができる。例示的な実施形態では、接触媒質は水である。
軟質吸収材料は、液体を吸収または脱着することができる繊維材料または多孔質材料を具えることができる。繊維材料は、ポリマーを具える織りまたは不織布の繊維ストリップ(例えば、フェルト)とすることができる。多孔質材料は、高分子発泡体とすることもできる。高分子発泡体は、1から1000マイクロメートルの平均気孔サイズを有する。例示的な高分子発泡体は、セルロース、ポリウレタン、ポリアクリレート等を具える。例示的な実施形態では、軟質吸収材料は、フェルトである。接着剤を用いて、軟質吸収材料のストリップ126Aおよび126Bをハウジング102の底面110へ接合することができる。
導波路アセンブリ140およびエンコーダ・アセンブリ160の詳細は、図1Aから得られる断面図の図3A〜図3Dを参照して提供される。図3Aは図1AのA―Aでの断面を表し、図3Bは図1AのB―Bでの断面を表す。図3Cは走査装置100の端面図であり、図3Cにおける断面C―Cは図3Dに表される。図3Dは、走査装置100のハウジング102内に組み立てられる導波路アセンブリ140およびエンコーダ・アセンブリ160を有するハウジング102の端面図の他の例示的な実施形態である。
図3Aは、(図1Aの)断面A―Aを表し、第1および第2の磁石・ねじアセンブリ120A、120Bの間に配置される導波路アセンブリ140を示す。導波路アセンブリ140は、水壁管に対する超音波信号の送受信を容易にする。導波路アセンブリ140は、プローブ150に接触する導波路142を具える。プローブ150は、超音波(本明細書において、「信号」と称される)の位相配列を送受信する超音波トランスデューサである。一実施形態では、管200に接触する導波路142の表面147は、凹形であるので、管200の凸形の外面に接触することができる。導波路142の接触面147は、できるだけ密接に管面に接触するためにカーブしている。プローブ150近傍の導波路142の下方側面153は、ハウジング102から離れるにつれて漸減し、プローブ150に戻る超音波信号の反射を最小化し、超音波信号の干渉を防止する。導波路142の側面153および155は、テクスチャード加工され、これらの面からプローブ150への超音波信号の反射を最小化する。一実施形態では、導波路142の側面153および155は、ギザギザであり(例えば、鋸歯形状を有する)、プローブ150へ超音波信号の反射を最小化する。
導波路142のアーチ形の長さは、プローブ150の断面における側面よりはるかに大きい。導波路142のアーチ形の長さがこのように増加していることにより、強さおよび安定性がハウジング102内の導波路アセンブリ140に提供される。接触媒質が、導波路142の凹面と管200の外側凸面との接触を容易にするので、超音波信号が管200に導入され、信号は管200から受信可能である。
ハウジング102内の摺動可能なホルダ131を取り外すことによって、導波路アセンブリ140(導波路142、プローブ150およびケーブル152を具える)は、ハウジング102の上面104を通って取り外すことができる。摺動可能なホルダ131は、ポリマーから製造され、ねじ144を収納する溝191を含む。ねじ144は、その一番下にばね付勢ボール145を有する。ばね付勢ボール145は、導波路142の上面(管200に接触する面147に反対の面)に含まれる切欠きに、スナップ式で適合する。ねじ144は、ナット146に調節可能にねじ留めされ、ハウジング102内で導波路142を(管の)半径方向に移動させるのを容易にする。導波路142は、ナット146を回転させることによって、管200(検査対象)に近づけることもできるし、離すこともできる。
摺動可能なホルダ131は、ハウジング102内に(摺動することによって)挿入可能であり、溝187および189によって、ハウジング102から取り外すことができる。摺動可能なホルダ131は、適所にあるときに、ハウジング102の一体部分であるブロック157によって支持される。
導波路アセンブリ140をハウジング102内に挿入するために、摺動可能なホルダ131は、溝187および189に沿ってハウジング102から摺動させることによって、最初に取り外される。次に、導波路142、プローブ150およびケーブル152を具える導波路アセンブリ140は、上面104のキャビティを通ってハウジング102内に挿入される。次に、摺動可能なホルダ131はハウジング102内に摺動して戻され、ばね付勢ボール145は、導波路アセンブリ140を適所に保持する導波路142のスロット151内にはめられる。
ハウジング102から導波路アセンブリ140を取り外すことが望ましいとき、導波路142を摺動可能なホルダ131から引き離すことによって、導波路142は、ばね付勢ボール145から引き抜かれる。次に、摺動可能なホルダ131は、溝187および189を介して、ハウジング102から摺動して取り出される。次に、導波路アセンブリ142は、ハウジング102の上面104にできた穴を介して、ハウジング102から取り出される。
導波路142は、光学的に透明なプラスチック部分を具える。光学的に透明なプラスチック部分は、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、クロスリンクされたスチレン共重合体、ポリエーテルイミド等、または、上述したプラスチック部分の少なくとも1つを具える組み合わせを具える。一実施例では、導波路142は、適切な音響特性を有するREXOLITE(登録商標、クロスリンクされたスチレン共重合体)、またはLUCITE(登録商標、ポリメチルメタクリレート)から機械加工される。
導波路142は、プローブ150を収容するスロット151を有する。一実施形態では、プローブ150と管200と間の導波路142の部分は、超音波信号を管200の方へ導く。
上述したように、導波路142の凹面が水壁管200の外側凸面に整合する輪郭を示す導波路142を使用することが望ましい。1セットの管のために使用される導波路142を、半径が異なる、他のセットの管のための他の導波路に置換することが望ましい。それゆえ、導波路142をばね付勢ボール145から取り外し、その位置に、ばね付勢ボール145を使用して、新規な導波路(異なる輪郭面を有する)をはめることによって、導波路142を容易に置換することができる。既存の導波路142を新規な導波路142に置換する間、プローブ150は既存の導波路142から最初に取り外される。プローブ150を新規な導波路142に圧力圧入する前に、接触媒質は、新規な導波路142のスロット151に追加される。次に、新規な導波路142は、(ばね付勢ボール145を使用して)ハウジング102内の位置にはめられる。
有利なことに、導波路142の面147は管200の外周に輪郭を合わせてカーブしているので、管200の円周部分を走査することができる。例えば、管200が2.5インチの直径を有する場合、走査装置100に使用されるために選択される導波路142は、約1.25インチの半径の輪郭を有する。図3Aに示すように、管200が水壁の部分である場合、これは特に有利である。水壁において、管200は、溶接したウェブ(メンブレン)202によって、隣り合って連結される。一実施形態では、導波路142の輪郭によって、プローブ150は、管200一方側のウェブ202から管200の他方側のウェブ202まで、実質的に管200の全体部分を走査することができる。
プローブ150は、導波路142と連通するように動作する。導波路142の上面のスロット151は、プローブ150を収容し、このプローブを、管200の外面に対して一定の既知の方向および入射角で保持する。スロット151は、導波路142の製造中に鋳造可能であり、あるいは、導波路142に機械加工可能である。プローブ150は、導波路142に対して、取り付けおよび取り外しができる。上述したように、プローブ150は、導波路142に圧力圧入される。接触媒質をスロット151内で用いて、プローブ150と導波路142との間の適当な信号伝送を容易にすることができる。
プローブ150が取り外し可能であることによって、検査中の管の様々な寸法のために必要な、様々なサイズの導波路142を迅速に変更することができる。プローブ150は、超音波周波数範囲の音波を、導波路142を介して管200に送信する。送信された音は、様々な角度で超音波信号を送信する位相アレイ信号内にある。
プローブ150は、一般に正方形の断面積を有するが、同様に、他の幾何学的な断面積(例えば、円形、三角形、多角形等)を有することもできる。導波路142内のプローブ150の位置は、所定の方向および角度で固定されるので、超音波信号は、管壁の高温側に導入され、円周方向に管壁の低温側に進むことができる。図3Aに見られるように、プローブ150は、2本の線に関して20度から40度の入射角に位置し、第1の線は、プローブ150の断面積の中央を通り、第2の線は、管200(調査対象)の中心および超音波信号が管200の面に接触する点を通過する。第1の線と第2線との間のこの角度は、入射角と称される。入射角を20度から40度の間に調整することによって、音波は、スネルの法則に従って、図4に示すように円周方向に管200内で屈折しながら進行する。プローブ150は、導波路142内で中心を外れて配置され、水壁のメンブレン202にできるだけ近い信号を得る(図3A参照)。
プローブ150は、プローブ150から延在するケーブル152を含む(図1A参照)。ケーブル152は、電気信号を、プローブ150と、超音波パルサーおよびレシーバ(図示せず)と、プローブ150から受信した電気信号を記録するメモリを有するコンピュータ(図示せず)(例えば、汎用コンピュータ、信号処理部またはアナライザ)と、の間で送信するように動作する。コンピュータは、受信情報を処理し、ディスプレイ・スクリーンを有するので、オペレータは、プローブ150から受信した電気信号の視覚的指示を視認することができる。様々なアプリケーションを用いて、検査から獲得および記録されたデータは、コンピュータによってグラフ形状に変換され、表示可能である。データのグラフ形状は、検査の質的および量的結果を超音波プローブ150を介して示すことができる。例えば、結果は、検査中の管壁における欠陥と、欠陥の程度(例えばサイズ、範囲および深さ)と、を含むことができる。図3Cの走査装置は、水壁管上に配置されて図示されており、水壁管は、それぞれの管200に溶接されたメンブレン202によって一緒に保持された複数の管200を具える。
一実施形態では、プローブ150は、超音波送信機の位相配列およびセンサを具える。位相配列は、順次パルス送信される線形または2次元のアレイの超音波トランスデューサを利用する。個々のウェーブレットの重ね合せにより、位相配列は、ビームの角度を導く能力を提供する。それゆえ、ビーム角度は、個々のパルスのタイミングを調整することによって設定可能である。複数の角度にわたって掃引する能力を有することによって、探知可能性を増加させることができる。
走査装置100は、ハウジング102のキャビティ159(図2参照)に収納されるとともに、検査が開始される管200上の物理的な位置に基準点を提供するように動作するエンコーダ・アセンブリ160と、進行中の検査に関してプローブ150からの応答を追跡および記録するための手段と、もまた具える。エンコーダ・アセンブリ160は、走査装置100の底面110上の任意の位置に存在することができる。例示的な実施形態では、エンコーダ・アセンブリ160は、導波路アセンブリ140に面する側と反対の第2の磁石・ねじアセンブリ120Bの側に位置する。
図3Dにおいて、エンコーダ・アセンブリ160は、車輪162と連通するエンコーダ163を含み、車輪162は、走査装置100が管200に対して移動するように、管200に載置され回転する。エンコーダ・アセンブリ160は、ハウジング102の部分であるブラケット167によって適所に保持される。車輪162およびエンコーダ163は、片持ち梁(カンチレバービーム)166の対向端部に懸架される軸(図示せず)上に載置され、片持ち梁166は、ブラケット167上に収納される軸165上で回転する。車輪162は、車輪162を管200の方に向けて、管200の面と接触させるばね164によってばね付勢される。ばね164は、ブラケット167に接触する一端と、車輪162が載置される軸に接触する他端と、を有する片持ちばねとすることができる。他の形状のばね(例えば、板ばね、コイルばね等)を用いることもできる。ばね164は、車輪162が回転せずに、走査装置100が管200上で移動するのを防止し、それゆえ、運動を記録しないのを防止する。エンコーダ163内のセンサは車輪162の回転を検出し、管200に沿って移動するとき、プローブ150の相対的な位置を示す。エンコーダ163は、プローブ150の相対的な位置を表す電気的信号を、ケーブル166を介してコンピュータに出力するので、コンピュータは、プローブ150の読みと管200上の指定位置とを相関付けることができる。
走査装置100は、複数の硬化ウェア・ピン190(図1Aおよび図2参照)もまた具え、複数の硬化ウェア・ピン190は、走査装置の第1端部および第2の端部の近傍の底面110に配置され、導波路への損傷を防止する。硬化ウェア・ピン190は、カーバイドから製造可能である。一実施形態では、少なくとも一対のカーバイド・ウェア・ピンは、第1端部114の底面110に配置され、他の対のカーバイド・ウェア・ピンは、第2端部116の底面110に配置されている。
後述するように、走査装置100の動作の間、導波路142は、接触媒質を介して管200に接触する。例示的な一実施形態では、導波路142は、管200の縦軸と略平行な方向に走査するように配置可能である。管200の縦軸は、図3Aの紙面に垂直である。走査装置100は、管200の縦軸に沿って、(水壁の高温側上の)管200の面に沿って移動する。走査装置100は、メンブレン202(図3A参照)にできるだけ近接して、管200の面に沿って移動し、メンブレンの反対側であるが、走査が行われる側と同じ側の管上で、管の少なくとも四分円(90度)の走査を得る。図4に関して、超音波信号は、所定の角度で管200の壁に導入され、所定の角度は、管の形状および特性、すなわち、半径、材料、壁厚等によって決定される。
超音波信号210は、導波路142で屈折し、メンブレン202を通過して管壁を介して円周方向に進行する。スネルの法則のため、管壁に入射するとき、信号の角度はさらに約10度屈折しうる。図4に示すように、超音波信号210は、管壁を介して円周方向に進行し、数字220によって表される。ビームの電子掃引は、音がメンブレンを通過するのを支援し、より垂直にクラッキングと相互作用することによって、方向を改良することができる。管200の断面がクラックを含まないとき、ビームは、管壁を介して進行し、コンピュータ・スクリーン上に背景スペクトル(いかなるピークをも含まない)を生成する。信号が管壁のクラックに遭遇すると、音は音が進行する経路に沿って後ろに反射され、導波路142およびプローブ150によって受信され、ケーブル152を介してコンピュータに供給される。コンピュータ・スクリーンは、(背景スペクトルから区別される)より高い振幅ピークを含むスペクトルを示し、このより高い振幅ピークからクラックの位置および近似のサイズが検出可能である。クラックは、この方法によって検出可能である。一実施形態では、クラックを求めて管200の低温側を完全に走査するために、走査装置100は、(高温側上で)180度回転され、管200の一方側で超音波信号を管200に沿って送信したのと反対方向に、管200の他方側で超音波信号を管200を送信する。超音波信号またはより大きな強度を有する信号を用いることにより、管200の全ての低温側が、管200の一方側(高温側)に沿った単一の走査でクラックを検出可能である点に留意されたい。
図3Aを参照して、管200内のクラック位置を決定する方法が詳述される。管200の四分円500内のクラック位置を決定するために、走査装置は、管の四分円300に沿って移動する。超音波信号(信号)は、管200のメンブレン202を通過して反時計回りに横断し、クラックが四分円500に存在する場合、信号は後ろに反射され、コンピュータ・スクリーンに表示される。同じ管200の四分円600の内クラック位置を決定するために、走査装置は、管の四分円400に沿って移動する。超音波信号は管200のメンブレン202を通過して時計回りに横断し、クラックが四分円600内に存在する場合、信号は後ろに反射され、コンピュータ・スクリーンに表示される。管200の走査された部分の2次元像または3次元像は、コンピュータ・スクリーンに表示可能である。
一実施形態では、走査装置100を製造する1つの方法において、ハウジング102は、追加の製造ステップを含む方法によって最初に印刷される。追加の製造ステップは、3D製造とも称される。ハウジング102は、磁石・ねじアセンブリ120A、120Bおよび120Cを収納するためのキャビティを含むように製造される。ハウジング102は、導波路アセンブリ140およびエンコーダ・アセンブリ160を収納するキャビティもまた含む。接触媒質を輸送するための管180、182および184は、ハウジング102に一体的に含まれる。言い換えると、管180、182および184は、ハウジング102内に形成され、個別にハウジング102に挿入されない。
次に、磁石・ねじアセンブリ120A、120Bおよび120Cは、ハウジング102に取り付けられる。次に、軟質吸収材料126Aおよび126B(例えば、フェルト)のストリップは、ハウジング102に接合される。次に、導波路アセンブリ140およびエンコーダ・アセンブリ160は、ハウジング102に取り付けられる。次に、カーバイド・ウェア・ピン190は、それぞれ、第3の磁石・ねじアセンブリ120Cおよびハウジング102のカーブする底面に配置可能である。磁石・ねじアセンブリおよび導波路アセンブリの位置は、これらのアセンブリの各々のためのねじ上のナットを回転させることによって調整可能である。次に、導管および電力供給は、上述した、それぞれの位置でハウジング102に接続される。
本願明細書において開示される走査装置および方法は、多数の効果がある。走査装置は、追加の製造技術(別名3次元印刷またはラピッド・プロトタイピング)を用いて印刷され、追加の製造技術によって軽量化、小型化、人間工学的な快適性を達成する。走査装置は、水壁管の外径に整合する特定の湾曲を有して印刷される。走査装置は、水壁管の外面に沿って変位する間のずれ(slippage)を防止するためのばね付勢車輪を有するエンコーダを有し、管の正確な軸位置を決定することができる。走査装置は、自給式の水経路およびプローブに接触媒質を送出するための通路を有する。走査装置は、接触媒質の管濡れおよび封じ込めに役立つフェルト挿入物を有する。走査装置は、プローブ導波路の損耗(ウェア)を制限するためのカーバイド・ウェア・ピンをも有する。
本願明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の用語が様々な要素、コンポーネント、領域、層および/または断面を記載するために用いられるが、これらの要素、コンポーネント、領域、層および/または断面がこれらの用語によって制限されてはならないということを理解されたい。これらの用語は、1つの要素、コンポーネント、領域、層または断面を、他の要素、コンポーネント、領域、層または断面から区別するために用いられるだけである。それゆえ、後述する「第1の要素」、「コンポーネント」、「領域」、「層」または「断面」は、本願明細書における教示を逸脱しない範囲で第2の要素、コンポーネント、領域、層または断面を意味することもありうる。
本願明細書において用いられる用語は、特定の実施形態のみを記載するためであって、制限することを意図しない。本明細書において、単数形で記載の要素は、前後関係から明らかに単数形に限定しない限り、複数形の要素を含むことを意図とする。「具える」、「含む」という用語は、本明細書において使われるとき、言及された特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素および/またはコンポーネントの存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネントおよび/またはそのグループの存在または追加を排除しないということを理解されたい。
さらにまた、本願明細書では、「下」、「底」、「上方」、「上」のような相対語を用いて、図示したように、1つの要素と他の要素との関係を記載する。相対語が、図示された方向に加えて装置の異なる方向を含むことを意図するということを理解されたい。例えば、ある図において装置が回転する場合、他の要素の「下」側にあると記載された要素、その他の要素の「上」側に配置されるであろう。それゆえ、「下」という例示的な用語は、図の特定の方向に応じて、「下」および「上」の両方の方向を含む。
本願明細書において用いられるすべての用語(専門的および科学的な用語を含む)は、他に定められない限り、本発明が属する分野における当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。一般的に用いられる辞書で定められる用語は、関連する技術および本発明の前後関係における意味と整合する意味を有するものとして解釈され、本願明細書において特に定められない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されないということを理解されたい。
例示的な実施形態は、理想とされた実施形態の概略図である断面図を参照して、本願明細書において記載されている。よって、例えば、製造技術および/または製造公差の結果として、図示の形状からの変化が予想されうる。それゆえ、本願明細書において記載されている実施形態は、本願明細書において図示されたように領域の特別形状に限定して解釈されてはならず、例えば、製造から生じる形状に偏差を含むように解釈されるべきである。例えば、平坦に図示または記載された領域は、概して、でこぼこのおよび/または非線形の特徴を有しうる。さらに、図示の鋭角を、丸くすることができる。このように、図示された領域は事実上模式的であり、それらの形状は領域の正確な形状を示すことを意図せず、特許請求の範囲を制限することを意図しない。
本願明細書において「および/または」という用語は、「および」と「または」との両方を意味する。例えば、「Aおよび/またはB」は、「A」、「B」または「AおよびB」を意味するものと解釈されたい。
本発明は例示的な実施形態を記載するが、様々な変形が可能であり、開示された実施形態の範囲を逸脱せずに、等価物がその要素に代用可能であるということを当業者は十分に理解するものである。さらに、基本的範囲を逸脱せずに、特定の状況または材料を本発明の教示に適応させるために、多くの変更態様を実行することができる。それゆえ、本発明は、本発明を実行するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されることを意図していない。