JP2008145251A - 超音波肉厚測定装置 - Google Patents

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修一朗 福澤
Kazuya Fujii
和哉 藤井
Shigeki Watanabe
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Abstract

【課題】小型であり、使い勝手に優れ、十分な測定精度を持ち、及びパイプの肉厚の2次元分布の測定を可能とする
【解決手段】パイプ群PGの中のパイプPの肉厚を測定する超音波肉厚測定装置10であって、隣り合うパイプ同士のパイプ間間隔dに挿入可能な厚みを有するフレーム12と、超音波探触子26、及び超音波探触子をパイプの周方向に沿って走査する周方向走査機構28を備えた測定部30と、パイプの周面に対して超音波探触子を位置決めする位置決め部34L,34Rと、超音波探触子をパイプの軸方向に沿って走査する軸方向走査機構と、測定部及び位置決め部の両者を、パイプ間間隔よりも小さい厚みでフレームに収納した収納状態、及び、パイプ間間隔以上の寸法に展開して超音波探触子を位置決めする展開状態の2状態の間で遷移させる収納展開部とを備える。
【選択図】図3

Description

この発明は、超音波を用いてパイプの肉厚を測定するための超音波肉厚測定装置に関する。より詳細には、ボイラ内部に配置された伝熱用パイプの肉厚を測定する超音波肉厚測定装置に関する。
火力発電所等のボイラ中には、多数の伝熱用パイプが設けられている。これらの伝熱用パイプは、狭い間隔を隔てて互いに平行に配置されていて、言わば集合体をなしている(以下、これらの伝熱用パイプの集合体を「パイプ群」とも称する。)。パイプ群は、伝熱用パイプの軸方向から見た場合に行列状に配置されている。
これらの伝熱用パイプは、ボイラ中の燃焼ガスと伝熱用パイプ中を流通する媒質との間の熱交換に用いられる。伝熱用パイプは、石炭焚きボイラではアッシュエロージョンやスチームカットにより、及び油焚きボイラでは内部腐食などにより、その肉厚が減少していく。そのため、伝熱用パイプの肉厚の定期的な点検を行う必要がある。
ところで、上述のようにパイプ群は、行列状に並列された多数の伝熱用パイプからなるので、その深層部に存在する伝熱用パイプの肉厚を測定するためには特殊な技術が必要となる。
例えば、伝熱用パイプの肉厚を測定するロボットが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。ロボットには検査ユニットが備えられており、この検査ユニットがパイプ群の上端と下端との間に配置された案内レールに沿って上下に移動しながら肉厚測定を行う。
また、クローラによりパイプ群の上面を自走し、腹部から肉厚測定装置を伝熱用パイプ群内部に降ろすロボットが開示されている(例えば、非特許文献2参照)。
また、超音波探触子を備えた筐体が支持桿の先端に取り付けられており、この超音波探触子を伝熱用パイプの周方向に走査する配管肉厚検査用マニュピレータが開示されている(例えば、特許文献1参照)。このマニュピレータは、筐体を横にした状態で、隣り合った伝熱用パイプの隙間からパイプ群の深層部に挿入される。そして、筐体が測定対象である伝熱用パイプ(以下、「被測定パイプ」と称する。)に到達したところで、支持桿を桿軸の周りに90°回動させて、筐体で被測定パイプの周面を把持する。筐体が被測定パイプを把持した状態で、超音波探触子を周方向に走査して、被測定パイプの肉厚を測定する。
大下郁人他,「横置型ボイラ管の検査ロボットの開発」,三菱重工技報,Vol.25,No.6,pp.1−4,(1988.11) 中村正他,「ボイラ過熱器・再熱器管清掃検査ロボット」,火力原子力発電,Vol.41,No.11,pp1390−1397(1990.11) 実開平6−22907号公報
しかし、非特許文献1に開示されたロボットは、検査ユニットのサイズが大きい。そのため、パイプ群の配列の乱れにより、隣接する伝熱用パイプ間の間隔が設計値より狭くなった場合に、この間隔に検査ユニットが入らないという問題点があった。
また、非特許文献2に開示されたロボットは、分解した上でボイラ中に搬入し、ボイラ内で再び組み立てる必要があり、使い勝手が悪いという問題点があった。
特許文献1に開示されたマニュピレータは、非特許文献2のロボットよりも小型であるために、分解/組立の必要が無く使い勝手に優れている。しかし、このマニュピレータは、被測定パイプの周面に対する超音波探触子の位置決めが難しく、十分な精度の肉厚測定を行うことが困難であった。
また、これらの3種の技術は、ロボットやマニュピレータ自体を移動させなければ、伝熱用パイプの軸方向に沿った肉厚測定ができなかった。つまり、伝熱用パイプの肉厚の2次元分布測定には困難が伴った。
この発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものである。したがって、この発明は、(1)小型であり、(2)使い勝手に優れ、(3)実用上十分な測定精度を持ち、及び(4)伝熱用パイプの肉厚の2次元分布を測定することができる、という4つの課題を同時に解決することができる超音波肉厚測定装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、この発明の超音波肉厚測定装置を以下のように構成した。
請求項1の発明によれば、超音波肉厚測定装置は、M×N本(ただし、Nは2以上の整数、及びMは2以上の整数)の円筒形のパイプの全てが同一方向に沿って延在し、かつM行N列に配置されたパイプ群の中の1本の被測定パイプの肉厚を、被測定パイプの周面の一部領域において、被測定パイプの外側から測定する。
そのために、この超音波肉厚装置を、フレームと、測定部と、位置決め部と、軸方向走査機構と、収納展開部とにより構成している。
フレームは、隣り合うパイプ同士のパイプ間間隔に挿入可能な厚みを有している。
測定部は、軸方向走査機構を介してフレームに取り付けられていて、超音波探触子、及び超音波探触子を被測定パイプの周方向に沿って走査する周方向走査機構を備えている。
位置決め部は、フレームに取り付けられていて、被測定パイプに固定されることで、被測定パイプの周面に対して超音波探触子を位置決めする。
軸方向走査機構は、フレームに取り付けられていて、超音波探触子を被測定パイプの軸方向に沿って走査する。
収納展開部は、測定部及び位置決め部の両者を、パイプ間間隔よりも小さい厚みでフレームに収納した収納状態、及び、パイプ間間隔以上の寸法に展開して、位置決め部を被測定パイプに固定し、かつ超音波探触子を位置決めする展開状態の2状態の間で遷移させる。
請求項1の構成により、収納状態において、測定部及び位置決め部は、パイプ間間隔よりも小さい厚みでフレームに収納される。よって、この状態において、超音波肉厚測定装置を隣り合ったパイプの隙間からパイプ群中の奥深くに挿入することができる。
パイプ群に挿入された超音波肉厚測定装置が被測定パイプに達したところで、収納展開部を稼働して測定部及び位置決め部を展開する。つまり、超音波肉厚測定装置を展開状態に遷移させる。これにより、位置決め部は被測定パイプの周面に固定される。その結果、測定部が備える超音波探触子も被測定パイプの周面に対して垂直に位置決めされる。
これで肉厚測定の準備が完了する。その後、超音波を送受信しながら、超音波探触子を被測定パイプの周方向及び軸方向により走査することにより、被測定パイプの肉厚を2次元的(周方向及び軸方向)に測定する。
請求項2の発明によれば、上述の請求項1の超音波肉厚測定装置において、測定部は、パイプ間間隔よりも小さい厚みを有していて、内部に超音波探触子及び周方向走査機構が備えられた筐体と、筐体をフレームに回動自在に軸支する第1支持部とを備えることが好ましい。
また、位置決め部は、パイプ間間隔よりも小さい厚みを有する2枚以上の位置決め板と、2枚以上の位置決め板のそれぞれをフレームに回動自在に軸支する第2支持部と、2枚以上の位置決め板のそれぞれに形成されていて、被測定パイプの周面に当接する当接面とを備えることが好ましい。
また、収納展開部は、第1及び第2支持部のそれぞれに設けられていて、筐体及び位置決め板のそれぞれを回動させる第1及び第2アクチュエータを備えることが好ましい。
そして、この超音波肉厚測定装置は、収納状態において、フレーム、測定部、位置決め部、軸方向走査機構及び収納展開部が、フレームの厚みと等しい間隔を隔てて平行に対向する2平面に挟まれた収納空間内に納まるように配置されることが好ましい。
また、この超音波肉厚測定装置は、展開状態において、第1アクチュエータの作動により、筐体が回動して、被測定パイプの周面に超音波探触子が対向配置され、及び第2アクチュエータの作動により、位置決め板が直角に回動して、被測定パイプの周面に当接面が当接することが好ましい。
請求項2の構成では、フレームは、一例として言わば窓枠状に構成可能である。測定部の筐体は、一例として言わば平べったい箱形に構成可能である。また、位置決め板は、一例として言わば平板状に構成可能である。
フレームが所定の厚みを有しているので、フレームの厚みと等しい間隔で平行に対向する仮想の2平面を想定することができる。そして、これら仮想の2平面で挟まれた空間を収納空間と称する。
収納状態においては、筐体及び位置決め板は、厚み方向にはみ出さないように、この収納空間内に納まっている。
ところで、筐体は第1支持部によりフレームに軸支されている。同様に、位置決め板は第2支持部によりフレームに軸支されている。そして、第1及び第2支持部のそれぞれには、第1及び第2アクチュエータが取り付けられている。
これらの結果、展開状態においては、第1アクチュエータの作動により、筐体は第1支持部を軸として、収納空間から立ち上がるように直角に回動する。これにより、筐体に備えられた超音波探触子が、被測定パイプの周面に対して垂直に配置される。
同様に、展開状態においては、第2アクチュエータの作動により、位置決め板は第2支持部を軸として、収納空間から立ち上がるように直角に回動する。これにより、位置決め板に設けられた当接面が被測定パイプの周面に当接する。
請求項3の発明によれば、上述の請求項2の超音波肉厚測定装置において、フレームに位置決め板が2枚設けられており、2枚の位置決め板の間のフレームに、測定部及び軸方向走査機構が設けられていることが好ましい。
請求項3の構成により、肉厚測定時に周方向及び軸方向に走査される測定部は、被測定パイプの周面に固定された2枚の位置決め板の間に位置することになる。つまり、測定部の両側が、位置決め板で被測定パイプに固定される。その結果、測定部の軸方向及び周方向の走査中に、超音波探触子と被測定パイプの周面との間隔が所定範囲に保たれるとともに、フレームの振動が抑えられる。つまり、被測定パイプの周面に対する超音波探触子の位置決め精度が向上する。
請求項4の発明によれば、上述の請求項2の超音波肉厚測定装置において、フレームに、さらに押圧機構が取り付けられていることが好ましい。そして、この押圧機構は、被測定パイプが属するパイプ列に隣り合ったパイプ列に属する複数の被押圧パイプに押圧される押圧板と、押圧板を収納空間から離間するように垂直方向に移動させる第3アクチュエータとを備えることが好ましい。
この押圧機構は、格納状態において収納空間内に納まるように配置されており、拡張状態において第3アクチュエータの作動により、押圧板が被押圧パイプの方向に移動されて、複数の被押圧パイプに押圧されることが好ましい。
請求項4の構成により、押圧機構は、位置決め板の当接面を被測定パイプの周面に強く押し付け、位置決め板を被測定パイプに固定することができる。
ここで、パイプ群がN列のパイプ列から構成されているとする。そして、被測定パイプが属するパイプ列を「測定対象パイプ列」と称し、及び、測定対象パイプ列に隣り合ったパイプ列を「隣接パイプ列」と称する。また、隣接パイプ列に属するパイプを「被押圧パイプ」と称する。
超音波肉厚測定装置は、測定対象パイプ列と、隣接パイプ列との間隔から被測定パイプを目指してパイプ群中に挿入される。この際、押圧機構は、格納状態とされて収納空間内に納まっている。
超音波肉厚測定装置は、パイプ群中の被測定パイプの位置で展開状態とされる。この状態で、押圧機構は、第3アクチュエータの作動により拡張状態に遷移される。すなわち、押圧板は、展開状態にある位置決め板とは反対方向、すなわち被押圧パイプの方向に移動されて被押圧パイプに押圧される。つまり、言わば、押圧機構が測定対象パイプ列と隣接パイプ列との間で突っ張る。その結果、押圧機構は、被押圧パイプに対する押圧板の押圧力の反作用として、位置決め板の当接面を被測定パイプに対して強く押し付ける。
請求項5の発明によれば、上述の請求項4の超音波肉厚測定装置において、周方向走査機構は、超音波探触子が取り付けられるホルダを備えており、ホルダは、展開状態において被測定パイプの周面に対向する対向面を備えていることが好ましい。そして、この対向面に接触媒質を蓄える接触媒質保持部材が設けられており、接触媒質保持部材は、展開状態において周面と接触することが好ましい。
請求項5の構成により、超音波探触子を取り付けるホルダの対向面に接触媒質保持部が取り付けられる。これにより、超音波探触子と被測定パイプの周面との間に接触媒質を満たしての肉厚測定、すなわちギャップ法による被測定パイプの肉厚測定を行うことができる。
請求項6の発明によれば、上述の超音波肉厚測定装置において、接触媒質保持部材は、ループ面ファスナであることが好ましい。
請求項6の構成により、接触媒質保持部材として、ループ面ファスナを用いることができる。これにより、接触媒質はループ面ファスナに一時的に蓄えられる。その結果、超音波探触子と被測定パイプの周面との間の空間を接触媒質で満たすことができる。
請求項7の発明によれば、上述の超音波肉厚測定装置において、接触媒質が水であることが好ましい。
請求項8の発明によれば、上述の請求項5又は6の超音波肉厚測定装置において、被測定パイプの肉厚と同時に被測定パイプの真円度を測定することが好ましい。
請求項8の構成により、被測定パイプの肉厚と真円度とを同時に測定することで、肉厚減少が、被測定パイプの内周面の減肉によるのか、外周面の減肉によるのかを判断することができる。
請求項9の発明によれば、上述の超音波肉厚測定装置において、フレームに、パイプ群の深層部に位置する被測定パイプの延在部位まで超音波肉厚測定装置を挿入するための挿入用バーが、着脱自在に取り付けられていることが好ましい。
請求項9の構成により、フレームに挿入用バーを設ければ、被測定パイプがパイプ群の深層部に位置したとしても、その部位に超音波肉厚測定装置を挿入することができる。
請求項1及び2の発明によれば、超音波肉厚測定装置を収納状態でパイプ群中に挿入し、パイプ群中で展開状態として被測定パイプに固定した上で肉厚測定を行うことができる。つまり、超音波肉厚測定装置はパイプ間間隔からパイプ群中に挿入できる程、小型である。また、従来の技術に比べて、被測定パイプの肉厚を容易に測定できる。さらに、超音波肉厚測定装置は周方向走査機構及び軸方向走査機構を備えているので、被測定パイプの肉厚を2次元的(周方向及び軸方向)に測定できる。
請求項3の発明によれば、超音波探触子の走査中に、超音波探触子と被測定パイプの周面との間隔を所定範囲に保つことができる。さらに、測定部の走査に由来して生じるフレームの振動が抑えられる。これらの結果、被測定パイプの周面に対する超音波探触子の位置決め精度が向上する。したがって、実用上十分な精度で被測定パイプの肉厚を測定することができる。
請求項4の発明によれば、押圧機構が測定対象パイプ列と隣接パイプ列との間で突っ張ることにより、位置決め板が被測定パイプに対して強く押し付けられる。その結果、被測定パイプの周面に超音波探触子が精度良く位置決めされる。
請求項5の発明によれば、被測定パイプの肉厚測定をギャップ法で実施することができる。その結果、実用上十分な精度で被測定パイプの肉厚を測定することができる。
請求項6の発明によれば、ループ面ファスナが接触媒質を一時的に保持することにより、水ギャップを安定して保つことができる。また、ループ面ファスナと被測定パイプとの接触摩擦が小さいことから、超音波探触子を被測定パイプの周面に沿って滑らかに走査することができる。さらに、ループ面ファスナの毛足の長さは伸縮可能であるので、超音波探触子と被測定パイプの周面との間隔が変動したとしても、ループ面ファスナは水ギャップを安定的に保つことができる。
請求項7の発明によれば、接触媒質として水を用いているので、接触媒質の取扱いが容易である。
請求項8の発明によれば、被測定パイプの肉厚減少が外周面の減肉によるものか、内周面の減肉によるものかを判定することができる。
請求項9の発明によれば、パイプ群の深層部に位置する被測定パイプに容易に超音波肉厚測定装置を挿入することができる。
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示したものにすぎない。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。したがって、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。
<1>パイプ群
図1及び図2を参照して、超音波肉厚測定装置が用いられるパイプ群について説明する。図1は、パイプ群の斜視図であり、及び図2は、パイプの延在方向に垂直な面で切断したパイプ群の断面図である。
図1に示すように、パイプ群PGは、M×N本(ただし、Mは2以上の整数、及びNは2以上の整数)の円筒形のパイプP,P,・・・からなる。これらのパイプP,P,・・・の全ては、同一方向に沿って延在している。つまり、パイプ群PGを構成する全パイプPの管軸は、実質的に互いに平行に延在している。同時に、これらのパイプP,P,・・・は、M行N列に配置されている。図1及び図2では、M=5及びN=6の場合、つまり、パイプ群PGが5行6列に配列されたパイプPからなる場合を示している。
パイプ群PGの内部に、肉厚測定をすべきパイプPが配置されている。以下、肉厚測定すべきパイプを特に「被測定パイプPM」と称する。図示の例では、パイプ群PGの左下隅のパイプPを基準(1行1列)としたときに、被測定パイプPM(ハッチングを付したパイプ)は2行3列に位置している。
図2に示すように、パイプ群PGを構成する任意の1列をパイプ列C(c)と称する(ただし、cは1≦c≦Nの整数)。同様に、パイプ群PGを構成する任意の1行をパイプ行R(r)と称する(ただし、rは1≦r≦Mの整数)。
また、列方向(図面上下方向)に沿って互いに隣り合う2本のパイプP及びPの間の間隔を「列方向パイプ間間隔dc」と称する。同様に、行方向(図面左右方向)に沿って互いに隣り合う2本のパイプP及びPの間の間隔を「行方向パイプ間間隔dr」と称する。なお、列方向パイプ間間隔dc及び行方向パイプ間間隔drの両者を特に区別する必要がない場合、すなわち、単に隣り合ったパイプP及びP間の間隔を表す場合には、単に「パイプ間間隔d」と表記する。
<2>超音波肉厚測定装置の概要
図3及び図4を参照して、この発明の超音波肉厚測定装置の構造及び動作を概説する。なお、この項では、説明に直接関係のない細部の構成に関する記述及び図示を省略するとともに、理解の容易さを考慮して構成を単純化している。超音波肉厚測定装置の細部の構成は次項以降で説明する。
図3(A)及び(B)は、超音波肉厚測定装置が取ることのできる2状態、すなわち収納状態及び展開状態の説明に供する模式的な斜視図である。詳細には、図3(A)は収納状態にある超音波肉厚測定装置を示し、及び図3(B)は展開状態にある超音波肉厚測定装置を、被測定パイプとともに示す。
まず、図3(A)を参照して、超音波肉厚測定装置10の構成要素の中から、この項の説明に必要な要素を抜き出して簡単に説明する。
超音波肉厚測定装置10は、フレーム12と、筐体30と、位置決め板34L及び34Rとを構成要素の一部として備えている。
フレーム12は、言わば長尺な矩形の窓枠状に形成されていて、パイプ間間隔dよりも小さい厚みDを有している。ここで、フレーム12の厚みDと等しい間隔で平行に対向し、かつフレーム12を含む2平面P1及びP2を想定し、これら仮想の2平面P1及びP2で挟まれた空間を「収納空間22」と称する。
筐体30は、パイプ間間隔dよりも小さい厚みを有する箱体である。筐体30は、上述した仮想の2平面P1及びP2に垂直に延在する4つの側面と、平面P1及びP2に平行に延在する2つの表面とで囲まれている。この筐体30は、一対の位置決め板34L及び34Rの間に配置され、軸方向走査機構18(不図示:図5)を介してフレーム12に取り付けられている。第1支持部32には、筐体30を回動させるための第1アクチュエータ(不図示)が取り付けられている。
ここで、筐体30を囲む4側面及び2表面のうち、位置決め板34Lに面する側面を第1側面と称する。また、第1側面に対向する側面、すなわち位置決め板34Rに面する側面を第2側面と称する。また、第1支持部32が取り付けられている側面を第3側面と称する。また、第3側面に対向する側面を第4側面と称する。また図3(A)において目視できる表面を第1表面と称する。さらに、第1表面に対向する表面を第2表面と称する。
筐体30の第1側面には、被測定パイプPMの外径に沿って湾曲した開口として湾曲切欠面30aが形成されている。この湾曲切欠面30aの内側の筐体30内部に超音波探触子26と周方向走査機構28とが備えられている。また、筐体30の第3側面には、第2側面に近い側に筐体30を軸支する第1支持部32が備えられている。
位置決め板34L及び34Rは、フレーム12の図面左右方向の両端付近に位置するほぼ矩形平板状の部品であり、パイプ間間隔dよりも小さい厚みを有している。位置決め板34L及び34Rの外観形状は、厚みが薄い点を除いて、筐体30の外観形状に類似している。すなわち、位置決め板34L及び34Rには、湾曲切欠面30aと類似した形状、すなわち被測定パイプPMの外径に沿った形状の当接面34La及び34Raが、それぞれ形成されている。
位置決め板34L及び34Rは、それぞれ第2支持部38L及び38Rを介してフレーム12に軸支されている。第2支持部38L及び38Rのそれぞれには、位置決め板34L及び34Rを回動させるための第2アクチュエータ(不図示)が取り付けられている。
図3(A)に示す収納状態においては、筐体30は、収納空間22内で水平に寝た状態、すなわち横倒しの状態で、収納空間22からはみ出さないように収納されている。同様に、位置決め板34L及び34Rも、収納空間22内で水平に寝た状態、すなわち横倒しの状態で、収納空間22からはみ出さないように収納されている。
図3(B)に示す展開状態においては、第1アクチュエータの作動により、筐体30の湾曲切欠面30a側が第1支持部32を支点として直角に回動される(図中矢印A)。これにより、筐体30は、上述した収納空間22を規定する仮想の2平面P1及びP2に垂直に立設される。これにより、湾曲切欠面30aは被測定パイプPMの周面Sに間隔を空けて対向する。
筐体30の場合と同様に、第2アクチュエータの作動により位置決め板34L,34Rが第2支持部38L及び38Rを支点として直角に回動される(図中矢印B及びC)。これにより当接面34La,34Raが、被測定パイプPMの周面Sに固定される。その結果、筐体30内部に設けられた超音波探触子26が、被測定パイプPMの周面Sに位置決めされる。
この状態で、周方向走査機構28及び軸方向走査機構18(不図示:後述)を稼働することで、超音波探触子26は、被測定パイプPMの周面Sに沿って、2次元的(周方向及び軸方向)に走査される(図中矢印G及びE参照)。
次に、図4(A)及び(B)を参照して、超音波肉厚測定装置の動作の概略を説明する。
図4(A)は、超音波肉厚測定装置をパイプ群中に挿入している様子を、パイプの管軸方向から見た断面図である。図4(B)は、パイプ群中で肉厚測定の準備が整った超音波肉厚測定装置の様子を、図4(A)と同方向から見た断面図である。なお、図4(A)及び(B)では、フレーム12の短辺に対応する側面(後述する剛体板12L)が見えている。
被測定パイプPMの肉厚測定を行うに当たっては、まず、超音波肉厚測定装置10をパイプ群PG中の被測定パイプPM(ハッチングを付したパイプ)の位置まで挿入する必要がある。ここで、被測定パイプPMは、パイプ列C(c)に属しているものとする。
図4(A)に示すように、超音波肉厚測定装置10は、パイプ列C(c)とC(c+1)との行方向パイプ間間隔drからパイプ群PG中に挿入される。より詳細には、フレーム12の長辺をパイプPの管軸にほぼ平行に保ったまま超音波肉厚測定装置10をパイプ群PG中に挿入する。行方向パイプ間間隔drを通り抜け可能なように、超音波肉厚測定装置10は収納状態とされる。つまり、超音波肉厚測定装置10の厚みが、行方向パイプ間間隔drよりも小さく抑えられる。
図4(B)に示すように、被測定パイプPMに到達した超音波肉厚測定装置10は、肉厚測定を行うために展開状態に遷移される。すなわち、まず、位置決め板34L及び34Rが直角に回動され、当接面34La及び34Raが被測定パイプPMの周面Sに固定される。次に、筐体30が回動され、湾曲切欠面30aが被測定パイプPMの周面Sに対して間隔を空けて対向される。つまり、湾曲切欠面30aの内側に位置する超音波探触子26が周面Sに対して垂直に位置決めされる。なお、図4(B)は、管軸方向から見た図面であるので、位置決め板34Lのみが示されている。
この状態で、軸方向走査機構18及び周方向走査機構28を稼働することにより、超音波探触子26を周面Sで2次元的(周方向及び軸方向)に走査しながら被測定パイプPMの肉厚測定が行われる。
<3>超音波肉厚測定装置の構造の詳細
図5〜図10を参照して、超音波肉厚測定装置の構造を詳細に説明する。
図5〜図7は超音波肉厚測定装置の正面図、側面図、及び平面図である。
超音波肉厚測定装置10は、フレーム12と、測定部14と、位置決め部16と、軸方向走査機構18と、収納展開部20と、押圧機構21とを備えている。
ここで、以下の説明に用いる座標系を定義する。図5に示すように、図面左右方向をX方向と称する。また、図面上下方向をY方向と称する。さらに、X方向及びY方向の両者に直交する方向をZ方向と称するとともに、図5の紙面表面側を「正面側」と、及び紙面裏面側を「背面側」とそれぞれ称する。
また、「収納状態」とは、位置決め板34L及び34R並びに筐体30が、収納空間22から、はみ出さないで、収納空間22内に収納された状態を示す。また、「展開状態」とは、位置決め板34L及び34R並びに筐体30が回動されることにより、平面P1及びP2(図3(A))に対して垂直に立った状態を示す。
(1)フレーム
フレーム12は、既に説明した通り、隣り合うパイプP及びP同士のパイプ間間隔dに挿入可能な厚みDを有している。フレーム12は、互いに連結された4本の剛体板から構成されており、平面形状が矩形状の枠体である。
より詳細には、フレーム12は、矩形の長辺に対応していて互いに平行に延在する第1及び第2フレーム部としての2本の剛体板12U及び12Dと、矩形の短辺に対応していて互いに平行に延在する第3及び第4フレーム部としての2本の剛体板12L及び12Rとから構成されている。
フレーム12の厚みD(すなわちZ方向の長さ)は、隣り合うパイプP及びP同士のパイプ間間隔dに挿入可能な厚みとされている。つまり、フレーム12の厚みDはD<dの大きさである。より正確には、フレーム12の厚みDは、D<dc及びD<drのいずれか一方又は双方が成り立つ大きさである。
フレーム12は、ガイド板31及び31と、挿入用バー24とを備えている。
ガイド板31及び31は、剛体板12UのZ方向の両側(正面側及び背面側)に取り付けられた平板である。ガイド板31及び31は互いに平行に延在し、両ガイド板31及び31の間隔はフレーム12の厚みDと等しくされている。ガイド板31及び31は、補助固定杆30c(後述)を挟むようにY方向に図中下側に向かって延在している。また、ガイド板31及び31は、軸方向走査機構18のスライダ18b(後述)の移動範囲にわたってX方向に延在している。
一対の挿入用バー24及び24は、剛体板12Uの上面に着脱自在に取り付けられており、フレーム12の外側に向かって延在している。挿入用バー24及び24は収納空間22からはみ出さないように配置されている。挿入用バー24及び24は、超音波肉厚測定装置10をパイプ群PGの深層部に挿入する際に用いる長尺なロッドである。挿入用バー24及び24の一端は、剛体板12Uの上面に接続されている。そして、挿入用バー24及び24の他端は、連結バー24aで互いに接続されている。連結用バー24aの中央部付近には、超音波肉厚測定装置10をパイプ群PG中に挿入する際の取っ手となるグリップ24bが設けられている。
(2)測定部
測定部14は、フレーム12に軸方向走査機構18(後述)を介して取り付けられていて、超音波探触子26、及び超音波探触子26を被測定パイプPMの周方向に沿って走査する周方向走査機構28を備えている。さらに、測定部14は、内部に超音波探触子26及び周方向走査機構28が備えられた筐体30と、筐体30をフレーム12に対して回動自在に軸支する第1支持部32とを備えている。
つまり、測定部14は、筐体30と、第1支持部32と、超音波探触子26と、周方向走査機構28とを備えている。
図3(A)及び(B)を参照して既に説明したように、筐体30はパイプ間間隔d以下の厚み(Z方向の長さ)を有している。筐体30は中空の箱体であり、内部に超音波探触子26及び周方向走査機構28が収納されている。なお、超音波探触子26及び周方向走査機構28については後述する。
筐体30は、展開状態(図3(B))で見た場合に、被測定パイプPMに対向する第1側面の中央部分が、第2側面に向かってほぼ半円状に凹んでおり、この凹んだ部分が開口している。つまり、この開口は、筐体30の第1及び第2表面をほぼ半円状に湾曲して切欠し、かつ、切欠された部分の第1側面を取り除くことにより形成されている。
第1側面において、開口が形成された領域を湾曲切欠面30aと称する。湾曲切欠面30aの湾曲の直径は、被測定パイプPMの外径とほぼ同じ大きさとされている。また、湾曲切欠面30aは、展開状態において被測定パイプPMの周面Sとの間に、一定の間隔を形成するように配置されている。湾曲切欠面30aは、言わば無蓋の開口であり、超音波探触子26がこの開口の奥に配置されている。
筐体30のZ方向に対向する両表面には、一対のガイド孔30b及び30bが形成されている。ガイド孔30b及び30bは、後述の周方向走査機構28の構成要素となっている。
ガイド孔30b及び30bは、湾曲切欠面30aと等しい曲率に湾曲した円弧状の長孔である。このガイド孔30b及び30bは、超音波探触子26を被測定パイプPMの周方向に走査させる際のガイドとして機能する。ガイド孔30b及び30bは、湾曲切欠面30aがなす半円の中央部付近から上側に向かって、円弧状に湾曲しながらほぼ90°の角度範囲に延在している。
補助固定杆30cは、その基端側が筐体30の第4側面に固定されていて、先端側が第4側面からY方向に沿って、剛体板12U方向に向かって延在して設けられている。補助固定杆30cは、後述する図8(A)からも明らかなように、断面楕円形のパイプで構成されている。この楕円の長径は、フレーム12の厚みDにほぼ等しい。また楕円の短径は、フレーム12の厚みDよりも小さい。補助固定杆30cの上側部分は、ガイド板31及び31で挟まれている。補助固定杆30cのパイプの先端は、フレーム12等の他部品には接続されていない。つまり、補助固定杆30cの先端は自由端である。
ここで、図8を参照して、補助固定杆30cとガイド板31及び31との位置関係について説明する。
図8(A)は、補助固定杆の構成を模式的に示す斜視図である。図8(B)は、収納状態における、図5のA−A断面図である。図8(C)は、展開状態における、図5のA−A断面図である。
図8(A)は、収納状態における補助固定杆30cとガイド板31及び31の配置関係を示している。補助固定杆30cの先端側領域は、ガイド板31及び31に挟まれるように位置している。
図8(B)に示すように、収納状態においては、補助固定杆30cは、楕円の長軸がX方向に延在するように配置される。したがって、収納状態では、補助固定杆30cとガイド板31及び31の間には若干の間隔が存在する。
それに対し、図8(C)に示すように、展開状態においては、筐体30の回動に伴い、楕円の長軸がZ方向に延在する。したがって、展開状態では、補助固定杆30cは両ガイド板31及び31に当接する。
再び図5〜図7を参照すると、第1支持部32は、軸方向走査機構18のスライダ18b(後述)と筐体30との間に介在し、筐体30をフレーム12に対して回動自在に軸支している。より詳細には、第1支持部32は、筐体30の第3側面(下端)の第2側面に近接した位置に、ボルト等により接続されている。第1支持部32は、接続部32aと、回動軸32bと、基部32cとを備えている。上述のように補助固定杆30cの先端は自由端であるので、第1支持部32は筐体30を、言わば片持ち支持している。
回動軸32bは、接続部32aと基部32cとの間に介在し、Y方向に延在している。X方向に関して言えば、回動軸32bは、筐体30の湾曲切欠面30aとは反対側の第2側面付近に位置している。回動軸32bは、剛体板12Dに垂直に延在していて、筐体30をフレーム12に対して回動自在に支持している。つまり、回動軸32bは、筐体30がフレーム12の正面側に回動する際の回転中心となっている。
基部32cは、接続部32a及び回動軸32bを介して、筐体30を支持している。基部32cは、軸方向走査機構18のスライダ18bに固定されている。また、基部32cには、収納展開部20を構成する第1エアシリンダ20aが取り付けられている。第1エアシリンダ20aのピストンロッド20cは、接続部32aに接続されている。この第1エアシリンダ20aの作動により、接続部32a、したがって筐体30が回動する。なお、第1エアシリンダ20aの詳細については後述する。
(3)超音波探触子及び周方向走査機構
ここで、図9を参照して、超音波探触子26及び周方向走査機構28の詳細について説明する。図9は、超音波探触子26及び周方向走査機構28の構造の説明に供する筐体30の正面図である。なお、図9において、筐体30の内部の構成要素については破線で示してある。また、図9において、2点鎖線は、周方向に移動される前のホルダ28aの位置(以下、「初期位置」と称する。)を示している。
周方向走査機構28は、ホルダ28aと、アーム28bと、ワイヤ28cと、上述のガイド孔30b及び30bとから構成される。超音波探触子26は、ホルダ28aに取り付けられている。
ホルダ28aは直方体状の箱体である。ホルダ28aの内部には探触子収納空間28dが形成されており、この探触子収納空間28dに超音波探触子26が配置されている。
ホルダ28aは、展開状態において、被測定パイプPMの周面Sに対向する対向面28kを備えている。この対向面28kには、超音波探触子26が超音波の送受信を行うための円形開口28fが設けられている。対向面28kの反対側に延在するホルダ28aの底面には、ワイヤ28cと接続されるアーム28bが設けられている。また、ホルダ28aの両側面のそれぞれには、ガイド孔30b及び30bに係合される2本のガイドピン28e及び28eが突設されている。
また、ホルダ28aには、探触子収納空間28dに連通して、接触媒質である水を供給するための水供給パイプ(不図示)が接続されている。また、ホルダ28aには、超音波探触子26の制御と測定結果の伝送とを行うためのケーブル28jが接続されている。さらに、ホルダ28aの対向面28kには、接触媒質保持部材としてのループ面ファスナ28gが設けられている。
探触子収納空間28dは、円形開口28fを除いて液密に形成されている。水供給パイプから探触子収納空間28dに供給された水は、この円形開口28fから外部に放出される。つまり、探触子収納空間28d内で、超音波探触子26は、円形開口28fの奥に配置されており、超音波探触子26と円形開口28fとの間には間隙が設けられている。水供給パイプから供給された水は、この間隙を通って放出され、被測定パイプPMの周面Sと超音波探触子26との間に水ギャップを形成する。
ガイドピン28e及び28eは、円柱状の部品であり、ホルダ28aの各側面に2本ずつ設けられている。ガイドピン28e,28e及び28e,28eは、ガイド孔30b及び30bに摺動自在に嵌め込まれる。その結果、ホルダ28aは、超音波探触子26を周面Sに垂直に保持したまま、ガイド孔30b及び30bに沿って、被測定パイプPMの周方向に移動可能となる。
ループ面ファスナ28gは、ホルダ28aの対向面28kの円形開口28fを除いた領域に貼り付けられている。ループ面ファスナ28gの毛足の長さは、展開状態(肉厚測定を行う状態)において、被測定パイプPMの周面Sに接触する程度とする。ループ面ファスナ28gは、肉厚測定中に円形開口28fから放出される水を、密集したループ中に一時的に保持する。これにより、被測定パイプPMの周面Sと超音波探触子26との間の水ギャップを安定に保つ。
アーム28bは、ホルダ28aの底面に接続された板状屈曲片である。アーム28bは、ホルダ28aの底面への固定部から、湾曲切欠面30aの湾曲に沿って“く”字形に屈曲されて下側に延出している。アーム28bの端部には、ワイヤ接続部28hが設けられており、ワイヤ接続部28hにワイヤ28cの先端が接続される。
ワイヤ28cは、一端がコントローラ42(図11)に設けられた周方向ワイヤ駆動装置42a(図11)に接続されている。そして、ワイヤ28cは、スリーブ28iで筐体30内部まで案内されて、他端がアーム28bのワイヤ接続部28hに接続されている。
周方向ワイヤ駆動装置42aを駆動することにより、筐体30内においてワイヤ28cの長さを自在に変更することができる。その結果、ワイヤ28cに掛かる軸力(圧縮力及び引張力)により、ホルダ28aは、ガイド孔30b及び30bに沿って、被測定パイプPMの周方向に自在にスライド移動する(図中矢印F参照)。
なお、図9中、2点鎖線で示す位置を、超音波探触子26を担持するホルダ28aの初期位置とする。周方向ワイヤ駆動装置42aを駆動してワイヤ28cをスリーブ28iに引っ張り込むことにより、ホルダ28aは、ガイド孔30bとガイドピン28eの案内により、初期位置から点線で示す位置へと移動される。
(4)位置決め部
再び図5〜図7を参照して、位置決め部の構成の詳細を説明する。
位置決め部16は、フレーム12に取り付けられていて、被測定パイプPMに固定されることで、被測定パイプPMの周面Sに対して超音波探触子26を位置決めする機能を有する。
位置決め部16は、パイプ間間隔dよりも小さい厚みを有する2枚の位置決め板34L及び34Rと、2枚の位置決め板34L及び34Rのそれぞれをフレーム12に回動自在に軸支する第2支持部38L及び38Rと、2枚の位置決め板34L及び34Rのそれぞれに形成されていて、被測定パイプPMの周面Sに当接する当接面34La及び34Raとを備えている。なお、2枚の位置決め板34L及び34Rの間のフレーム12に、測定部14及び軸方向走査機構18が設けられている。
つまり、位置決め部16は、2枚の位置決め板34L及び34Rと、第2支持部38L及び38Rとを備えている。
図5に示す構成例では、位置決め板34L及び34Rは、フレーム12の左右の両フレーム部に配置されている。より詳細には、位置決め板34L及び34Rは、それぞれ既に説明した第3及び第4フレーム部としての剛体板12L及び12Rに第2支持部38L及び38Rを介して取り付けられている。
位置決め板34Lと第2支持部38L、及び位置決め板34Rと第2支持部38Rは、実質的に鏡像関係にある。したがって、以下の記載では、位置決め板34L及び第2支持部38Lのみの説明を行う。なお、以降の説明を、位置決め板34R及び第2支持部38Rに適用する場合には、各部品を示す符号中の添字“L”を“R”と、及び“左”を“右”とそれぞれ読み替えればよい。
位置決め板34Lは、パイプ間間隔d以下の厚みを有する板状部品である。位置決め板34Lは、展開状態下(図3(B))で被測定パイプPMに対向する側の端面が、ほぼ半円状に湾曲して切欠されている。この切欠された端面が当接面34Laである。当接面34Laの直径は、被測定パイプPMの外径と等しく形成されている。
第2支持部38Lは、剛体板12Lと位置決め板34Lとの間に介在し、位置決め板34Lをフレーム12に回動自在に軸支している。より詳細には、第2支持部38Lは、位置決め板34Lの一方の端部、すなわち図5中では左端部(当接面34Laとは反対側の端面付近)にボルト等で固定されている。第2支持部38Lは、接続部38Laと、回動軸38Lbと、基部38Lcとを備えている。
回動軸38Lbは、接続部38Laと基部38Lcとの間に介在し、Y方向に延在している。回動軸38Lbは、位置決め板34Lをフレーム12に対して回動自在に支持している。つまり、回動軸38Lbは、位置決め板34Lがフレーム12の正面側に回動する際の回転中心となっている。
基部38Lcは、剛体板12Lに固定されており、接続部38La及び回動軸38Lbを介して位置決め板34Lを支持している。また、基部38Lcには、収納展開部20を構成する第2エアシリンダ20Lが取り付けられている。第2エアシリンダ20Lのピストンロッド20Lcは、接続部38Laに接続されている。この第2エアシリンダ20Lの作動により、接続部38La、したがって位置決め板34Lが回動する。なお、第2エアシリンダ20Lの詳細については後述する。
(5)軸方向走査機構
軸方向走査機構18は、フレーム12に取り付けられていて、超音波探触子26を被測定パイプPMの軸方向に沿って走査する機能を有する。軸方向走査機構18は、2枚の位置決め板34L及び34Rの間のフレーム12に取り付けられている。
詳細には、軸方向走査機構18は、スライドレール18aと、スライダ18bと、ワイヤ18L及び18Rと、ストッパ18d及び18dを備えている。
スライドレール18aは、フレーム12の、図5中下側に位置する第2フレーム部としての剛体板12Dに取り付けられている。
スライダ18bは、スライドレール18aに係合され、スライドレール18a上を左右にスライド移動する。上述のように、スライダ18bには、第1支持部32を介して筐体30が接続されている。
ワイヤ18Lは、その一端がスライダ18bの一端部すなわち図5中では左端部に接続されている。同様にワイヤ18Rの一端は、スライダ18bの他端部すなわち図5中では右端部に接続されている。ワイヤ18L及び18Rは、スリーブに案内されてコントローラ42(図11)に導かれ、それぞれの他端がコントローラ42に設けられた軸方向ワイヤ駆動装置42b(図11)に接続されている。
つまり、ワイヤ18L及び18Rと、スライダ18bと、軸方向ワイヤ駆動装置42bとで、閉じたループが形成される。したがって、軸方向ワイヤ駆動装置42bを、ワイヤ18Lを引っ張り、かつワイヤ18Rを送り出すように駆動することで、スライドレール18a上でスライダ18bを左方向にスライドさせることができる。同様に、ワイヤ18Lを送り出し、かつワイヤ18Rを引っ張るように駆動することで、スライドレール18a上でスライダ18bを右方向にスライドさせることができる。
ストッパ18d及び18dは、第2フレーム部としての剛体板12Dに取り付けられたブロック体であり、スライドレール18aを左右方向から挟むように設けられている。ストッパ18d及び18dは、スライダ18bのスライドレール18aからの脱落を防ぐ機能を有する。それとともに、ストッパ18d及び18dは、ワイヤ18L及び18Rのスリーブを固定する機能を有する。
(6)収納展開部
収納展開部20は、測定部14及び位置決め部16の両者を、パイプ間間隔dよりも小さい厚みでフレーム12に収納した収納状態、及び、パイプ間間隔d以上の寸法に展開して、位置決め部16を被測定パイプPMに固定し、かつ超音波探触子26を位置決めする展開状態の2状態の間で遷移させる機能を有する。収納展開部20は、第1支持部32と第2支持部38L及び38Rのそれぞれに設けられていて、筐体30と位置決め板34L及び34Rのそれぞれを回動させる第1エアシリンダ20aと第2エアシリンダ20L及び20Rとを備えている。
なお、ここで、第1エアシリンダ20aが「第1アクチュエータ」に対応する。また、第2エアシリンダ20L及び20Rが「第2アクチュエータ」に対応する。
第1エアシリンダ20aは、第1支持部32の基部32cと接続部32aとの間に介在している。より詳細には、第1エアシリンダ20aのシリンダチューブ20bが、Z方向に揺動自在に基部32cに取り付けられている。そして、第1エアシリンダ20aのピストンロッド20cが、Z方向に揺動自在に接続部32aに取り付けられている。
その結果、第1エアシリンダ20aにエアが供給されてピストンロッド20cが伸張すると、接続部32a、したがって筐体30が回動軸32bを中心にして、収納空間22から正面側に向かって直角に回動する。
第2エアシリンダ20L及び20Rは、第2支持部38L及び38Rの基部38Lc及び38Rcと、接続部38La及び38Raとの間に介在している。より詳細には、第2エアシリンダ20L及び20Rのシリンダチューブ20Lb及び20Rbが、Z方向に揺動自在に基部38Lc及び38Rcに取り付けられている。そして、第2エアシリンダ20L及び20Rのピストンロッド20Lc及び20Rcが、Z方向に揺動自在に接続部38La及び38Raに取り付けられている。
その結果、第2エアシリンダ20L及び20Rにエアが供給されてピストンロッド20Lc及び20Rcが伸張すると、接続部38La及び38Ra、したがって位置決め板34L及び34Rが回動軸38Lb及び38Rbを中心にして、収納空間22から正面側に向かって直角に回動する。
(7)押圧機構
次に、適宜図6,図7及び図10を参照して、押圧機構の構成を詳細に説明する。図10(A)は、格納状態にある押圧機構をパイプ列とともに示す側面図である。図10(B)は、拡張状態にある押圧機構をパイプ列とともに示す側面図である。
押圧機構21は、フレーム12に取り付けられている。押圧機構21は、被測定パイプPMが属する測定対象パイプ列C(c)に隣り合った隣接パイプ列C(c+1)に属する複数の被押圧パイプPPに押圧される押圧板21La及び21Raと、押圧板21La及び21Raを収納空間22から離間するように垂直方向に移動させる第3エアシリンダ21Lb及び21Rbとを備える。なお、第3エアシリンダ21Lb及び21Rbが「第3アクチュエータ」に対応する。
押圧機構21は、格納状態(図10(A))において、収納空間22内に納まるように配置されており、拡張状態(図10(B))において、第3エアシリンダ21Lb及び21Rbの作動により、押圧板21La及び21Raが被押圧パイプPPの方向に移動されて、複数の被押圧パイプPPに押圧される。
より詳細には、押圧機構21は、剛体板12Lすなわち図5においてフレーム12の左側に取り付けられた左側押圧部21Lと、剛体板12Rすなわち図5においてフレーム12の右側に取り付けられた右側押圧部21Rとを備えている。
左側押圧部21Lは、剛体板12Lに、フレーム12の外側に張り出して取り付けられている。左側押圧部21Lは、押圧板21Laと、第3エアシリンダ21Lbと、リンク21Lc及び21Ldと、基部21Leを備えている。
右側押圧部21Rは、剛体板12Rに、フレーム12の外側に張り出して取り付けられている。右側押圧部21Rは、押圧板21Raと、第3エアシリンダ21Rbと、リンク21Rc及び21Rdと、基部21Reを備えている。
押圧機構21を構成する左側押圧部21Lと右側押圧部21Rとは、互いに鏡像関係にある。したがって、以下の記載では、左側押圧部21Lのみの説明を行う。なお、以下の説明を、右側押圧部21Rに適用する場合には、各部品を示す符号中の添字“L”を“R”と読み替えればよい。
左側押圧部21Lにおいて、第3エアシリンダ21Lbは、基部21Leを介して剛体板12Lに固定されている。第3エアシリンダ21LbのピストンロッドはY方向に伸縮可能であり、リンク21Lcに取り付けられている。
リンク21Lc及び21Ldは、基部21Leと押圧板21Laとの間に、揺動自在に介在している。その結果、第3エアシリンダ21LbのピストンロッドのY方向に沿った伸縮は、リンク21Lc及び21LdでZ方向の往復運動に変換される。
つまり、図10(A)に示すように、ピストンロッドが収縮した状態においては、押圧板21Laは、収納空間22内に納まっている。
しかし、ピストンロッドが伸張すると、図10(B)に示すように、リンク21Lc及び21Ldに接続されている押圧板21Laが収納空間22から離間するようにZ方向に移動される。
そして、第3エアシリンダ21Lbのピストンロッドが伸びた状態、つまり拡張状態で、押圧板21Laは、隣接パイプ列C(c+1)に属する複数の被押圧パイプPPに押圧される。
その結果、押圧板21Laが被押圧パイプPPを押圧する反作用として、位置決め板34L,34Rの当接面34La,34Raが被測定パイプPMの周面Sに押し付けられる。よって、筐体30に備えられた超音波探触子26が周面Sに対して位置決めされる。
<4>肉厚測定システム
図11を参照して、被測定パイプの肉厚測定に用いる肉厚測定システムについて説明する。図11は、肉厚測定システムの構成を示すブロック図である。
図11に示すように、肉厚測定システム40は、超音波肉厚測定装置10と、コントローラ42と、水供給装置44と、コンプレッサ46と、携帯型コンピュータ48と、探触子制御装置50とを備えている。
探触子制御装置50は、超音波探触子26と携帯型コンピュータ48との間に介在している。探触子制御装置50は、超音波探触子26の動作条件(超音波の周波数変更、音速切換及び検出感度切換等)を制御する。これとともに、探触子制御装置50は、携帯型コンピュータ48が記憶するプログラムの指令に従い、超音波探触子26からの超音波送受信のON/OFF、受信データ(受信エコー)の取り込み、及び受信データの携帯型コンピュータ48への送信などを行う。
携帯型コンピュータ48は、探触子制御装置50の起動、受信データの取り込み、及びデータ処理のためのプログラムを記憶している。携帯型コンピュータ48のプログラムからの測定開始指令は、探触子制御装置50に送信される。測定開始指令を受信した探触子制御装置50は、ケーブル28jを介して超音波探触子26を起動する。つまり、探触子制御装置50は、周方向走査及び軸方向走査に同期して、超音波探触子26から被測定パイプPMの周面に向けて超音波を送信させる。これと同時に、超音波探触子26が受信した被測定パイプPMからの反射エコー(受信データ)の取り込みを行う。探触子制御装置50に取り込まれた受信データは、携帯型コンピュータ48に送信され、携帯型コンピュータ48のハードディスク等に記録される。
携帯型コンピュータ48のプログラムは、記録された測定結果のデータ処理を行い、ユーザの所望に応じて、例えば2次元肉厚マップ等としてディスプレイ等の表示装置に表示する。
コントローラ42は、超音波肉厚測定装置10の各種制御を行う。具体的には、コントローラ42は、下記の制御を行う。(1)超音波肉厚測定装置10を収納状態と展開状態との間で遷移させる。(2)肉厚測定時に超音波探触子26を周方向及び軸方向に走査する。(3)接触媒質である水の流量を調整する。(4)押圧機構21を格納状態と拡張状態との間で遷移させる。
以下、それぞれの項目について詳細に説明する。
(1)収納/展開状態の制御
コントローラ42は、筐体30並びに位置決め板34L及び34Rの回動を制御することにより、収納状態と展開状態との遷移を行わせる。具体的には、コントローラ42は、コンプレッサ46と第1エアシリンダ20aとを接続する電磁バルブを開閉するための第1スイッチ42cを備えている。さらに、コントローラ42は、コンプレッサ46と第2エアシリンダ20L及び20Rとを接続する電磁バルブを開閉するための第2スイッチ42dを備えている。
第1及び第2スイッチ42c及び42dを“ON”として電磁バルブを開状態とすることにより、コンプレッサ46から第1及び第2エアシリンダ20a,20L及び20Rへと圧縮空気が供給される。これにより、シリンダロッドが伸張し、筐体30並びに位置決め板34L及び34Rが、収納空間22から立ち上がるように回動し、超音波肉厚測定装置10は、展開状態へと遷移する。
第1及び第2スイッチ42c及び42dを“OFF”として電磁バルブを閉状態とすることにより、コンプレッサ46からの圧縮空気の供給が絶たれる。これによりシリンダロッドが収縮し、筐体30と位置決め板34L及び34Rとが、収納空間22内に納まるように回動し、超音波肉厚測定装置10は、収納状態へと遷移する。
(2)超音波探触子の周方向及び軸方向走査
コントローラ42は、周方向ワイヤ駆動装置42a及び軸方向ワイヤ駆動装置42bを備えている。周方向ワイヤ駆動装置42a及び軸方向ワイヤ駆動装置42bは、肉厚測定時に、超音波探触子26を被測定パイプPMの周方向及び軸方向にそれぞれ走査させるものである。
周方向ワイヤ駆動装置42aは、手動で駆動され、ワイヤ28cの筐体30への送り出し、及びワイヤ28cの筐体30からの引き抜きを行う。これにより、ホルダ28aに収納された超音波探触子26を被測定パイプPMの周方向に沿って走査させる。
より詳細には、ワイヤ28cを筐体30内に送り出すことにより、ワイヤ28cに掛かる軸力(圧縮力)により、超音波探触子26を備えたホルダ28aがガイド孔30b及び30bに沿って、下方向(図9中の2点鎖線の位置)に移動される。これとは逆に、ワイヤ28cを筐体30内から引き抜くことにより、ワイヤ28cに掛かる軸力(引張力)により、超音波探触子26を備えたホルダ28aがガイド孔30b及び30bに沿って、上方向に移動される(図9中の破線の位置)。
なお、周方向ワイヤ駆動装置42aは、不図示のロータリエンコーダを備えている。ロータリエンコーダは、筐体30内部におけるワイヤ長の変位量、つまり周方向の走査量を、後述する携帯型コンピュータ48へと出力する。
軸方向ワイヤ駆動装置42bは、手動で駆動され、スライダ18bに接続されたワイヤ18L及び18Rを、左方向及び右方向に引っ張る。これにより、スライダ18bに固定された筐体30、つまり超音波探触子26を被測定パイプPMの軸方向に沿って走査させる。なお、軸方向ワイヤ駆動装置42bは、不図示のロータリエンコーダを備えている。ロータリエンコーダは、ワイヤ18L及び18Rの長さの変位量、つまり軸方向の走査量を、後述する携帯型コンピュータ48へと出力する。
(3)水の流量
コントローラ42は、水供給装置44を制御して、肉厚測定時に、円形開口28fから被測定パイプPMの周面Sに向けて供給する水の流量を調整する。つまり、コントローラ42は、水量調節つまみ42fを有している。
水供給装置44は、水タンク44aと、ポンプ44bとを備えている。水タンク44aには、接触媒質としての水が蓄えられている。ポンプ44bは、水タンク44aから所定速度で水を吸引して、水供給パイプを介してホルダ28aへと供給する。ホルダ28aに供給された水は、円形開口28fから被測定パイプPMの周面Sに向けて放出される。
水量調節つまみ42fは、ポンプ44bの回転速度を連続的に調整する。この水量調節つまみ42fを制御することにより、被測定パイプPMの周面Sに定常的に水を供給し、超音波探触子26と周面Sとの間に安定な水ギャップを形成する。
(4)押圧機構の格納/拡張状態の遷移
コントローラ42は、コンプレッサ46と第3エアシリンダ21Lb及び21Rbとを接続する電磁バルブの開閉を制御する第3スイッチ42eを備えている。
つまり、第3スイッチ42eの“ON/OFF”により、コンプレッサ46から第3エアシリンダ21Lb及び21Rbへの圧縮空気の供給を制御する。つまり、第3スイッチ42eは、押圧機構21の拡張状態と格納状態との遷移を制御する。
第3スイッチ42eを“ON”として電磁バルブを開状態とすることにより、コンプレッサ46から第3エアシリンダ21Lb及び21Rbへと圧縮空気が供給される。これにより、シリンダロッドが伸張し、押圧板21La及び21Raが、展開状態にある筐体30及び位置決め板34L,34Rの延在方向とは反対方向に移動する。つまり、押圧機構21が拡張状態へと遷移する。拡張状態において、押圧板21La及び21Raは、被押圧パイプPPへと押圧される。
第3スイッチ42eを“OFF”として電磁バルブを閉状態とすることにより、コンプレッサ46からの圧縮空気の供給が絶たれる。これによりシリンダロッドが収縮し、押圧板21La及び21Raが、収納空間22内に納まるように移動し、押圧機構21は、格納状態へと遷移する。
<5>超音波肉厚測定装置の動作
次に、被測定パイプPMの肉厚測定の具体的手順について説明する。
なお、以下の説明では、超音波肉厚測定装置10を用いて、火力発電所のボイラ中に配置された伝熱用パイプの肉厚を測定する場合について例示する。
(1)灰の除去
まず、パイプ群PG中に存在する被測定パイプPMに付着した灰を除去する。これは、周面Sに付着した灰に由来する妨害エコーの影響を、超音波探触子26で受信される反射エコーから極力除去するためである。
具体的には、まず、被測定パイプPMに圧縮空気を噴射して、周面S上の灰を吹き飛ばす。次に、周面Sに固着した灰を除去するために、周面Sの肉厚測定対象領域を紙ヤスリで研磨する。
なお、周面Sの肉厚測定対象領域に付着した灰が十分に除去されたか否かは、CCDカメラ等で確認することが好ましい。
(2)超音波肉厚測定装置のパイプ群への挿入
収納状態とした超音波肉厚測定装置10をパイプ群PG中の被測定パイプPMの位置まで挿入する。具体的には、図4(A)に示すように、パイプ列C(c)とC(c+1)との行方向パイプ間間隔drから、超音波肉厚測定装置10をパイプ群PG中に挿入する。
なお、超音波肉厚測定装置10が被測定パイプPMの位置まで到達したかどうかは、上述のCCDカメラ等で確認すればよい。
(3)超音波肉厚測定装置の展開状態への遷移
超音波肉厚測定装置10が被測定パイプPMの位置に到達したところで、位置決め板34L及び34R並びに筐体30を展開する。つまり、超音波肉厚測定装置10を展開状態へと遷移させる。
具体的には、まず、コントローラ42の第2スイッチ42dを“ON”して、第2エアシリンダ20L及び20Rに圧縮空気を供給する。これにより、ピストンロッド20Lc及び20Rcが伸張し、位置決め板34L及び34Rが、収納空間22に対して垂直に回動する。その結果、当接面34La及び34Raが被測定パイプPMの周面Sに当接する。
次に、当接面34La及び34Raの周面Sへの当接を保ったまま、コントローラ42の第1スイッチ42cを“ON”して、第1エアシリンダ20aに圧縮空気を供給する。これにより、ピストンロッド20cが伸張し、筐体30が、収納空間22に対して垂直に回動する。その結果、筐体30中に設けられた超音波探触子26が、被測定パイプPMの周面に対して垂直に位置決めされる(図3(B))。
(4)押圧機構の拡張
次に、押圧機構21を拡張状態へと遷移させる。具体的には、コントローラ42の第3スイッチ42eを“ON”して、第3エアシリンダ21Lb及び21Rbに圧縮空気を供給する。これにより、ピストンロッドが伸張し、押圧板21La及び21Raが、収納空間22から離間するように移動する。やがて押圧板21La及び21Raは、隣接パイプ列C(c+1)に属する複数の被押圧パイプPPに当接し、被押圧パイプPPを押圧する(図10(B))。
その結果、位置決め板34L及び34Rの当接面34La,34Raが被測定パイプPMの周面に押し付けられる。これにより、超音波肉厚測定装置10は、展開状態のまま、パイプ列C(c)とC(c+1)との間に固く固定される。
(5)肉厚測定
次に被測定パイプPMの肉厚測定を行う。
具体的には、まず、水供給装置44から、接触媒質としての水をホルダ28aへと供給する。水の流量は、コントローラ42の水量調節つまみ42fにより、安定した反射エコーが得られる値に制御する。ホルダ28aに供給された水は、円形開口28fから被測定パイプPMの周面Sに向けて放出される。
ところで、ホルダ28aの対向面28kには、接触媒質保持部材としてのループ面ファスナ28gが、周面Sに接触して設けられている。よって、円形開口28fから放出された水は、ループ面ファスナ28gに一時的に蓄えられる。その結果、超音波探触子26と被測定パイプPMの周面Sとの間の空間が水で満たされ、水ギャップが形成される。
次に、水ギャップを保った状態で、超音波を送受信しながら超音波探触子26を周方向及び軸方向に走査する。具体的には、携帯型コンピュータ48のプログラムから、探触子制御装置50を介して、肉厚測定開始の指令を超音波探触子26に対して送信する。これにより、超音波探触子26は、超音波の送受信を開始する。そして、コントローラ42の軸方向ワイヤ駆動装置42bと周方向ワイヤ駆動装置42aとを交互に作動させて、超音波探触子26で被測定パイプPMの周面Sを2次元的に走査する。その結果、超音波探触子26が受信した被測定パイプPMからの反射エコーは、探触子制御装置50を介して携帯型コンピュータ48のハードディスク等に記憶される。なお、携帯型コンピュータ48には、この反射エコーが検出された周面Sの周方向及び軸方向の位置情報が、エンコーダからの出力として、反射エコーと関連づけて記憶される。
ここで、図12を参照して、超音波探触子26の軸方向走査及び周方向走査の手順についてより詳細に説明する。図12は、被測定パイプPMの周面Sにおける超音波探触子26の走査軌跡を示す模式図である。図12において、Aは、被測定パイプPMの周面Sの肉厚測定対象領域を示す。
図12に示すように、超音波探触子26は、まず、軸方向ワイヤ駆動装置42bを駆動することにより、軸方向に沿って、肉厚測定対象領域Aの一端から他端まで走査される。次に、周方向ワイヤ駆動装置42aを駆動させて、ワイヤ28cを、所定長さだけ引き抜くことにより、超音波探触子26を、肉厚測定対象領域Aの他端において周方向に所定量だけ移動させる。そして、再び、軸方向ワイヤ駆動装置42bを駆動することにより、超音波探触子26を肉厚測定領域Aの他端から一端まで軸方向に沿って走査する。超音波探触子26は、この移動を肉厚測定対象領域Aの全面積にわたり繰り返すことで、肉厚の2次元的な測定を行う。
<6>超音波肉厚測定装置の具体的な仕様
次に、超音波肉厚測定装置10の具体的な仕様について説明する。なお、以下に記す具体的な数値は、飽くまでも一例である。
超音波肉厚測定装置10のX方向の長さは、例えば約580mmとする。フレーム12のY方向の長さは、例えば約227mmとする。フレーム12のZ方向の長さ(厚みD)は、例えば約32mmとする。重量(挿入用バー24含まず)は、例えば約6.9kgとする。
なお、パイプ群PGにおけるパイプ間間隔dは、約40〜50mmである。よって、厚みD(32mm)は、超音波肉厚測定装置10をパイプ間間隔dからパイプ群PG中に挿入可能な厚みである。
超音波探触子26の軸方向走査範囲は、例えば約220mmとする。超音波探触子26の周方向走査範囲は、被測定パイプPMの外径により若干変化する。被測定パイプPMの外径が約50.8mmの場合には、周方向走査範囲は30mm(約65°の角度範囲)である。被測定パイプPMの外径が約63.5mmの場合には、周方向走査範囲は40mm(約70°の角度範囲)である。
測定ピッチは、軸方向及び周方向の両方向に共通して1mmピッチである。したがって、外径が約50.8mmの被測定パイプPMの場合には、全測定点数は6600点となる。なお、外径が約50.8mmの被測定パイプPMでは、30mm×220mmの範囲の肉厚測定に要する時間は約130秒である。
また、外径が約63.5mmの被測定パイプPMの場合には、全測定点数は8800点となる。なお、外径が約63.5mmの被測定パイプPMでは、40mm×220mmの範囲の肉厚測定に要する時間は約180秒である。
超音波探触子26は、型式がB10K4I F22(株式会社検査技術研究所製 発振周波数10MHz)を用いた。超音波探触子26と被測定パイプPMの周面Sとの間の距離(水距離)は、B1エコーとS2エコーとが干渉しない大きさとしている。具体的には、この実施の形態では、両者の距離を約3mmとしている。
肉厚測定は、接触媒質として水を用いたギャップ法で行っている。そして、S1エコーとB1エコーとの時間差により被測定パイプPMの肉厚を算出する。
超音波肉厚測定装置10により得られた被測定パイプPMの肉厚と、一般的な直接接触法により得られた肉厚との差は±0.1mmであった。このことから、超音波肉厚測定装置10の肉厚測定の精度は、約±0.1mmであると言える。
<7>超音波肉厚測定装置の効果
(1)この発明の超音波肉厚測定装置10は、非特許文献1及び2に記載されたロボットに比較して構造が簡単である。その結果、超音波肉厚測定装置10を、小型かつ軽量とすることができる。
(2)また、超音波肉厚測定装置10は小型かつ軽量であることから、ボイラ中への搬入の際に、分解/組立を行う必要がない。詳細には、挿入用バー24を取り外すことにより、超音波肉厚測定装置10及び挿入用バー24のそれぞれのサイズは、ボイラに設けられた搬入搬出用マンホールよりも小型となる。その結果、これらの部品を容易にボイラ中に搬入することができる。つまり、超音波肉厚測定装置10は非特許文献1及び2に記載されたロボットに比較して使い勝手に優れている。
(3)上述のように、超音波肉厚測定装置10の肉厚の測定精度は±0.1mmである。超音波肉厚測定装置10の測定精度は、日本工業規格JISZ2355「超音波パルス反射法による厚さ測定方法」に定められた許容測定誤差(±0.1mm)を満たしている。したがって、超音波肉厚測定装置10は、ボイラ中の伝熱用パイプの肉厚(5〜7mm程度)を実用上十分な精度で測定できる。
(4)この超音波肉厚測定装置10は、軸方向及び周方向走査機構18及び28を稼働することにより、超音波探触子26を両方向にそれぞれ1mmピッチで走査可能である。したがって、十分な位置精度で、被測定パイプPMの肉厚を2次元的に測定することができる。
(5)この超音波肉厚測定装置10は、収納展開部20の“ON/OFF”により、収納状態と展開状態とを自由に遷移させることができる。よって、位置決め板34L及び34R並びに筐体30が収納空間22内に完全に納まった収納状態では、超音波肉厚測定装置10を狭い隙間からパイプ群PG中に容易に挿入することができる。
また、パイプ群PG中で、筐体30並びに位置決め板34L及び34Rを展開することにより、容易に、超音波探触子26を被測定パイプPMの周面Sに位置決めすることができる。
(6)この発明の超音波肉厚測定装置10は、押圧機構21を備えている。押圧機構21の押圧板21La及び21Raを、隣接パイプ列C(c+1)に属する複数の被押圧パイプPPに押圧することにより、超音波肉厚測定装置10を被測定パイプPMに固く位置決めすることができる。その結果、肉厚測定中に超音波肉厚測定装置10の姿勢が崩れることがなく、高い精度で被測定パイプPMの肉厚測定を行うことができる。
(7)また、押圧機構21は、押圧板21La及び21Raを被押圧パイプPPへと押し付けることにより、超音波肉厚測定装置10をパイプ群PG中で固定する。よって、押圧機構21は、パイプ群PG中における超音波肉厚測定装置10の姿勢によらず、パイプ群PG中で超音波肉厚測定装置10を固定することができる。
例えば、パイプ行R(r)及びR(r+1)との列方向パイプ間間隔dc(図2)から超音波肉厚測定装置10を水平な姿勢でパイプ群PG中に挿入し、パイプ行R(r+1)に属する被測定パイプPMの下面の肉厚を測定する場合を考える。この場合であっても、押圧板21La及び21Raをパイプ行R(r)に押し付けることにより、自重に抗して超音波肉厚測定装置10をパイプ行R(r+1)に固定することができる。
(8)ホルダ28aの対向面28kに、接触媒質保持部材としてループ面ファスナ28gを設けている。その結果、ループ面ファスナ28gに一時的に接触媒質としての水を保持することができる。よって、超音波探触子26と被測定パイプPMの周面Sとの間に安定して水ギャップを形成することができる。したがって、高い精度で被測定パイプPMの肉厚測定を行うことができる。
また、被測定パイプPMの減肉等により、上述した水距離が変化したとしても、ループ面ファスナ28gが伸縮することにより、この水距離変動を吸収することができる。その結果、若干の水距離変動によらず、超音波探触子26と被測定パイプPMの周面Sとの間に安定して水ギャップを形成することができる。
さらに、ループ面ファスナ28gの被測定パイプPMの周面Sに対する実質的な接触面積は非常に小さい。つまり、ループ面ファスナ28gの周面Sに対する接触抵抗は非常に小さい。したがって、ホルダ28aを周面Sに沿って滑らかに走査させることができる。その結果、エンコーダから出力される超音波探触子26の位置精度を高くすることができる。
(9)図8に示すように、補助固定杆30cを、長径がフレーム12の厚みDに等しく、かつ、短径がフレーム12の厚みよりも小さい断面楕円形のパイプとした。さらに、この補助固定杆30cをフレーム12の厚みDと等しい間隔で対向するガイド板31,31の間に挿入している。その結果、肉厚測定時(展開状態)において、補助固定杆30cは、ガイド板31,31に隙間無く接触する。したがって、肉厚測定時に筐体30のZ方向のガタつきを抑えることができる。結果として、高い精度で被測定パイプPMの肉厚測定を行うことができる。
(10)図12に示すように、肉厚測定時に、周方向に関する限り、超音波探触子26を一方向にのみ走査している。より具体的には、肉厚測定の過程で、超音波探触子26は、ワイヤ28cを引っ張る方向にのみ移動される。
この超音波肉厚測定装置10は、周方向に関しては、一本のワイヤ28cに掛かる軸力で超音波探触子26を走査させている。したがって、ワイヤ28cを押し出す方向に超音波探触子26を周方向移動させると、ワイヤ28cの撓み等により、周方向の走査量に大きな誤差が生じる危険性がある。
しかし、上述のように、この実施の形態では、肉厚測定時に、周方向に関しては、超音波探触子26を引っ張る方向にのみ移動させるので、ワイヤ28cの撓みに起因する走査距離の誤差を最小限に止めることができる。
<8>超音波肉厚測定装置10の設計条件及び変形例
(1)この実施の形態では、超音波肉厚測定装置10をボイラ中の伝熱用パイプの肉厚測定に応用した場合について説明した。しかし、超音波肉厚測定装置10は、ボイラ中の伝熱用パイプに限らず、M×N本のパイプがM行N列に配置された任意のパイプ群の肉厚測定に用いることができる。
(2)この実施の形態では、図1及び図2に示すように、パイプ群PGがM行N列のマトリクス状に配置された場合について説明した。しかし、パイプ群を構成するパイプPの配列は、M行N列からなる厳密なマトリクス状には限定されない。超音波肉厚測定装置10が適用されるパイプ群は、一部にM行N列のマトリクスを含んでいればよい。例えば、1列目がk本のパイプからなり、2列目がm本(m≠k)のパイプからなり、3列目がn本(n≠k≠m)のパイプからなるパイプの集合体をパイプ群としてもよい。
(3)この実施の形態では、押圧機構21として、押圧板21La及び21Raを用いた場合について説明した。しかし、押圧機構21の構成はこれには限定されない。例えば、押圧板21La及び21Raの代わりにエアバックを用いてもよい。この場合、エアバッグに圧縮空気を供給することにより、エアバッグがパイプ列C(c)とC(c+1)との間で膨張し、パイプ列C(c+1)に属する被押圧パイプPPを押圧する。これにより、位置決め板34L及び34Rが被測定パイプPMへと固定される。
(4)この実施の形態では、押圧機構21を用いて、超音波肉厚測定装置10を測定対象パイプ列C(c)に固定する場合について説明した。しかし、超音波肉厚測定装置10の測定対象パイプ列C(c)への固定は、この方法に限定されない。
例えば、位置決め板34L,34Rの当接面34Ra,34Laに電磁石を設け、被測定パイプPMに磁力により超音波肉厚測定装置10を固定してもよい。また、位置決め板34L,34Rに、被測定パイプPMを機械的に把持するクランプを設け、クランプで被測定パイプPMを把持することにより超音波肉厚測定装置10を固定してもよい。
(5)この実施の形態では、フレーム12が窓枠状である場合について説明した。しかし、フレーム12は、測定部14、位置決め部16、軸方向走査機構18、収納展開部20、及び押圧機構21を、撓みなく保持することができれば、窓枠状には限定されない。例えば、直線状であってもよいし、平面形状が“コ”字状であってもよい。
(6)この実施の形態では、接触媒質保持部材としてループ面ファスナ28gを用いた場合について説明した。しかし、接触媒質保持部材は、ループ面ファスナ28gには限定されない。若干接触媒質の保持能力が劣ることを許容できるのであれば、フック面ファスナや、フェルトや、じゅうたん等を用いることができる。
(7)超音波肉厚測定装置10は、位置決め板34L,34R及び筐体30を被測定パイプPMの外径に合わせて交換することにより、外径の異なる被測定パイプPMの肉厚測定を行うことができる。
(8)この実施の形態では、超音波肉厚測定装置10により、被測定パイプPMの肉厚のみを測定する場合について説明した。しかし、超音波肉厚測定装置10は、被測定パイプPMの肉厚に加えて、被測定パイプPMの真円度を同時に測定することができる。
より具体的には、超音波探触子26が超音波を送信する際のTエコーとS1エコーとから、水ギャップの距離、つまり被測定パイプPMの外径の真円度を求めることができる。
被測定パイプPMの外径の真円度を肉厚とともに測定することにより、被測定パイプPMの肉厚減少が、被測定パイプPMの外周面の減肉によるものか、内周面の減肉によるものかを正確に評価することができる。
(9)この実施の形態では、超音波肉厚測定装置10を行方向パイプ間間隔drから、パイプ群PG中に挿入する場合について説明した。しかし、超音波肉厚測定装置10のパイプ群PGへの挿入は、行方向パイプ間間隔drからには限定されない。例えば、列方向パイプ間間隔dcから超音波肉厚測定装置10をパイプ群中に挿入してもよい。
また、パイプ間間隔が超音波肉厚測定装置10の厚みよりも大きければ、超音波肉厚測定装置10をパイプ群PG中に斜めに挿入してもよい。
(10)この実施の形態では、2枚の位置決め板34L及び34Rを設け、これらの位置決め板34L及び34Rの間に測定部14及び軸方向走査機構18を配置した場合について説明した。しかし、位置決め板の枚数は、2枚には限定されない。肉厚測定中に、超音波探触子26をガタつきなく固定できれば、3枚以上でもよい。
パイプ群の斜視図である。 パイプの延在方向に垂直な面で切断したパイプ群の断面図である。 (A)は、収納状態にある超音波肉厚測定装置を示す斜視図である。(B)は、展開状態にある超音波肉厚測定装置を示す斜視図である。 (A)は、超音波肉厚測定装置をパイプ群中に挿入している様子を、パイプの管軸方向から見た断面図である。(B)は、肉厚測定の準備が整った超音波肉厚測定装置の様子を、(A)と同方向から見た断面図である。 超音波肉厚測定装置の正面図である。 超音波肉厚測定装置の側面図である。 超音波肉厚測定装置の平面図である。 (A)は、補助固定杆の構成を模式的に示す斜視図である。(B)は、収納状態における、図5のA−A断面図である。(B)は、展開状態における、図5のA−A断面図である。 超音波探触子26及び周方向走査機構28の構造の説明に供する筐体30の縦断面図である。 (A)は、格納状態にある押圧機構をパイプ列とともに示す側面図である。(B)は、拡張状態にある押圧機構をパイプ列とともに示す側面図である。 肉厚測定システムの構成を示すブロック図である。 被測定パイプPMの周面Sにおける超音波探触子26の走査軌跡を示す模式図である。
符号の説明
10 超音波肉厚測定装置
12 フレーム
12U,12D,12L,12R 剛体板
14 測定部
16 位置決め部
18 軸方向走査機構
18a スライドレール
18b スライダ
18d ストッパ
18L,18R ワイヤ
20 収納展開部
20a 第1エアシリンダ
20b シリンダチューブ
20c ピストンロッド
20L,20R 第2エアシリンダ
20Lb,20Rb シリンダチューブ
20Lc,20Rc ピストンロッド
21 押圧機構
21L 左側押圧部
21R 右側押圧部
21La,21Ra 押圧板
21Lb,21Rb 第3エアシリンダ
21Lc,21Ld,21Rc,21Rd リンク
21Le,21Re 基部
22 収納空間
24 挿入用バー
24a 連結バー
24b グリップ
26 超音波探触子
28 周方向走査機構
28a ホルダ
28b アーム
28c ワイヤ
28d 探触子収納空間
28e ガイドピン
28f 円形開口
28g ループ面ファスナ
28h ワイヤ接続部
28i スリーブ
28j ケーブル
28k 対向面
30 筐体
30a 湾曲切欠面
30b ガイド孔
30c 補助固定杆
31 ガイド板
32 第1支持部
32a 接続部
32b 回動軸
32c 基部
34L,30R 位置決め板
34La,34Ra 当接面
38L,38R 第2支持部
38La,38Ra 接続部
38Lb,38Rb 回動軸
38Lc,38Rc 基部
40 肉厚測定システム
42 コントローラ
42a 周方向ワイヤ駆動装置
42b 軸方向ワイヤ駆動装置
42c 第1スイッチ
42d 第2スイッチ
42e 第3スイッチ
42f 水量調節ツマミ
44 水供給装置
44a 水タンク
44b ポンプ
46 コンプレッサ
48 携帯型コンピュータ
50 探触子制御装置
PG パイプ群
PM 被測定パイプ
PP 被押圧パイプ
S 周面

Claims (9)

  1. M×N本(ただし、Nは2以上の整数、及びMは2以上の整数)の円筒形のパイプの全てが同一方向に沿って延在し、かつM行N列に配置されたパイプ群の中の1本の被測定パイプの肉厚を、該被測定パイプの周面の一部領域において、該被測定パイプの外側から測定する超音波肉厚測定装置であって、
    隣り合う前記パイプ同士のパイプ間間隔に挿入可能な厚みを有するフレームと、
    該フレームに軸方向走査機構を介して取り付けられていて、超音波探触子、及び該超音波探触子を前記被測定パイプの周方向に沿って走査する周方向走査機構を備えた測定部と、
    前記フレームに取り付けられていて、前記被測定パイプに固定されることで、前記被測定パイプの前記周面に対して前記超音波探触子を位置決めする位置決め部と、
    前記フレームに取り付けられていて、前記超音波探触子を前記被測定パイプの軸方向に沿って走査する前記軸方向走査機構と、
    前記測定部及び前記位置決め部の両者を、前記パイプ間間隔よりも小さい厚みで前記フレームに収納した収納状態、及び、前記パイプ間間隔以上の寸法に展開して、前記位置決め部を前記被測定パイプに固定し、かつ前記超音波探触子を前記位置決めする展開状態の2状態の間で遷移させる収納展開部と
    を備えることを特徴とする超音波肉厚測定装置。
  2. 前記測定部は、前記パイプ間間隔よりも小さい厚みを有していて、内部に前記超音波探触子及び前記周方向走査機構が備えられた筐体と、該筐体を前記フレームに対して回動自在に軸支する第1支持部とを備え、
    前記位置決め部は、前記パイプ間間隔よりも小さい厚みを有する2枚以上の位置決め板と、2枚以上の該位置決め板のそれぞれを前記フレームに回動自在に軸支する第2支持部と、2枚以上の該位置決め板のそれぞれに形成されていて、前記被測定パイプの前記周面に当接する当接面とを備え、
    前記収納展開部は、前記第1及び第2支持部のそれぞれに設けられていて、前記筐体及び前記位置決め板のそれぞれを回動させる第1及び第2アクチュエータを備え、
    前記収納状態において、前記フレーム、前記測定部、前記位置決め部、前記軸方向走査機構及び前記収納展開部は、該フレームの厚みと等しい間隔を隔てて平行に対向する2平面に挟まれた収納空間内に納まるように配置されており、
    前記展開状態において、前記第1アクチュエータの作動により、前記筐体が回動して、前記被測定パイプの前記周面に前記超音波探触子が対向配置され、及び前記第2アクチュエータの作動により、前記位置決め板が直角に回動して、前記被測定パイプの前記周面に前記当接面が当接することを特徴とする請求項1に記載の超音波肉厚測定装置。
  3. 前記フレームに前記位置決め板が2枚設けられており、2枚の当該位置決め板の間の前記フレームに、前記測定部及び前記軸方向走査機構が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の超音波肉厚測定装置。
  4. 前記フレームに、さらに押圧機構が取り付けられており、該押圧機構は、前記被測定パイプが属するパイプ列に隣り合ったパイプ列に属する複数の被押圧パイプに押圧される押圧板と、該押圧板を前記収納空間から離間するように垂直方向に移動させる第3アクチュエータとを備え、
    該押圧機構は、格納状態において、前記収納空間内に納まるように配置されており、拡張状態において、前記第3アクチュエータの作動により、前記押圧板が前記被押圧パイプの方向に移動されて、複数の当該被押圧パイプに押圧されることを特徴とする請求項2に記載の超音波肉厚測定装置。
  5. 前記周方向走査機構は、前記超音波探触子が取り付けられるホルダを備えており、該ホルダは、前記展開状態において前記被測定パイプの前記周面に対向する対向面を備えており、該対向面に接触媒質を蓄える接触媒質保持部材が設けられており、該接触媒質保持部材は、前記展開状態において前記周面と接触することを特徴とする請求項4に記載の超音波肉厚測定装置。
  6. 前記接触媒質保持部材は、ループ面ファスナであることを特徴とする請求項5に記載の超音波肉厚測定装置。
  7. 前記接触媒質が水であることを特徴とする請求項5又は6に記載の超音波肉厚測定装置。
  8. 当該超音波肉厚測定装置は、前記被測定パイプの前記肉厚と同時に前記被測定パイプの真円度を測定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波肉厚測定装置。
  9. 前記フレームに、前記パイプ群の深層部に位置する前記被測定パイプの延在部位まで当該超音波肉厚測定装置を挿入するための挿入用バーが、着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波肉厚測定装置。
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