JP2014080459A - 潤滑剤添加剤、及び潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】基油への溶解性を有し、リンも硫黄も含有せず、且つ摩耗防止性能を有する潤滑剤添加剤を提供する。また、該潤滑剤添加剤を含む潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるボラジン化合物を含んでなる潤滑剤添加剤とし、潤滑油基油及び該潤滑剤添加剤を含有する潤滑油組成物とする。
[式(1)中、R1、R3、及びR5はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基であり;R2、R4、及びR6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基である。]
【選択図】なし
【解決手段】下記一般式(1)で表されるボラジン化合物を含んでなる潤滑剤添加剤とし、潤滑油基油及び該潤滑剤添加剤を含有する潤滑油組成物とする。
[式(1)中、R1、R3、及びR5はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基であり;R2、R4、及びR6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基である。]
【選択図】なし
Description
本発明は、潤滑剤添加剤及び潤滑油組成物に関する。
内燃機関や変速機等に代表される各種の機械において、潤滑はエネルギー効率を向上させ、また機械部品を摩耗から保護する上で不可欠の要素である。潤滑油やグリース等の潤滑剤は、摩擦面に潤滑膜を形成することによって摩擦及び摩耗を低減している。そして摩擦面に作用する荷重が大きく潤滑膜の厚さが減じられやすい条件下においても摩擦や摩耗を低減する目的で、摩擦面に吸着して油膜を形成する油性剤(例えばオレイン酸等の高級脂肪酸や高級アルコールエステル等。)や、摩擦面と反応して被膜を形成する耐摩耗剤(例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸エステル、ジスルフィド等。)といった各種の耐荷重添加剤を潤滑剤に含有させることが行われている。
上記例示したZnDTPやリン酸エステル等のリン化合物は耐摩耗剤として優れた能力を発揮することが知られている。しかしながら内燃機関の潤滑においては、排ガス処理触媒の被毒を抑制する観点から、リンを含有しない、より好ましくはリンも硫黄も含有しない、新たな耐摩耗剤が求められている。
内燃機関の潤滑以外の分野に目を向けると、黒鉛粉末や六方晶系窒化ホウ素(h−BN)粉末等の、リンや硫黄を含有しない無機固体潤滑剤成分が知られており(特許文献1)、このような無機固体潤滑剤成分を含有するグリース組成物も提案されている(特許文献2〜4)。これらの無機固体潤滑剤成分はいずれも微視的には層状構造を有しており、隣接層同士の相互作用が弱いことにより、摩擦面で剪断力を受けた際に隣接層相互の位置関係が容易に変動して、潤滑効果を発揮するものと考えられている。
しかしながら、これらの無機固体潤滑剤成分は溶解性も分散性も有しないため、基油にこれらの無機固体潤滑剤成分を添加剤として含有させた場合には沈殿による不均一化が深刻な問題になる。そのため内燃機関用潤滑油等に代表される一般的な液体潤滑剤にこれらの無機固体潤滑剤成分を含有させることは極めて困難である。
なお特許文献2〜4に開示されているようなグリース(半固体潤滑剤)においては、無機固体潤滑剤成分が増稠剤に保持されるので、実用上問題は生じないとされている。しかし、微視的な均一性を向上させる、混合を容易にする等の観点からは、グリース組成物に含有させる成分としても、基油への溶解性を有することが好ましいことは言うまでもない。
なお特許文献2〜4に開示されているようなグリース(半固体潤滑剤)においては、無機固体潤滑剤成分が増稠剤に保持されるので、実用上問題は生じないとされている。しかし、微視的な均一性を向上させる、混合を容易にする等の観点からは、グリース組成物に含有させる成分としても、基油への溶解性を有することが好ましいことは言うまでもない。
そこで本発明は、基油への溶解性を有し、リンも硫黄も含有せず、且つ摩耗防止性能を有する潤滑剤添加剤を提供することを課題とする。また、該潤滑剤添加剤を含む潤滑油組成物を提供する。
本発明者らは、六方晶系窒化ホウ素(h−BN)の一の層を構成する最小単位であるBN六員環を基本骨格とする化合物、すなわちボラジン化合物が、溶解性と摩耗防止性能とを兼ね備えることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の態様は、下記一般式(1)で表されるボラジン化合物を含有することを特徴とする、潤滑剤添加剤である。
本出願において、「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。
本発明において「ヘテロ元素」は広義に解釈され、炭素及び水素以外の元素を意味するものとする。ただし希ガス元素は「ヘテロ元素」に包含されないものとする。
本発明において「ヘテロ元素」は広義に解釈され、炭素及び水素以外の元素を意味するものとする。ただし希ガス元素は「ヘテロ元素」に包含されないものとする。
R1、R3、及びR5について、上記「リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」の好ましい一形態としては、「酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」を例示できる。
R1、R3、及びR5について、上記「リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」の他の好ましい一形態としては、「酸素若しくはホウ素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」を例示できる。
本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤においては、上記式(1)中、R1、R3、及びR5が同一の基であり、R2、R4、及びR6が同一の基である形態を好ましく例示できる。かかる形態とすることにより、ボラジン化合物の製造が容易になる。
本発明の第2の態様は、潤滑油基油、及び、本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤を含有することを特徴とする、潤滑油組成物である。
本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物は、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、金属系清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤及び着色剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物は、内燃機関の潤滑に特に好ましく用いることができる。
本発明の第1の態様によれば、基油への溶解性を有し、リンも硫黄も含有せず、且つ摩耗防止性能を有する潤滑剤添加剤を提供することができる。
本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物によれば、本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤を含有するので、リンや硫黄の含有量増加を抑制しつつ摩耗防止性能を高めた潤滑油組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。なお、特に断らない限り、数値A及びBについて「A〜B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。
<1.潤滑剤添加剤>
本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤について説明する。
(ボラジン化合物)
本発明の潤滑剤添加剤は、下記一般式(1)で表されるボラジン化合物を含んでなる。
本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤について説明する。
(ボラジン化合物)
本発明の潤滑剤添加剤は、下記一般式(1)で表されるボラジン化合物を含んでなる。
上記一般式(1)において、窒素原子上の置換基であるR1、R3、及びR5はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基である。
ここで、上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基(シクロアルキル基やアルキルシクロアルキル基であってもよい。)、アルケニル基(二重結合の位置は任意である)、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基等を例示できる。
上記シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5以上7以下のシクロアルキル基を挙げることができる。また上記アルキルシクロアルキル基において、シクロアルキル基へのアルキル基の置換位置は任意である。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また上記アルキルアリール基及び上記アルキルアリール基において、アリール基へのアルキル基の置換位置は任意である。
上記「リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」は、炭化水素基がリン及び硫黄以外のヘテロ元素を含むように官能基化されている基であって、炭素数が1〜30である基を意味する。該炭化水素基としては、上記同様の炭化水素基を例示できる。上記「リン及び硫黄以外のヘテロ元素」としては、リン、硫黄、及び希ガス元素以外の非金属典型元素を好ましく挙げることができる。中でも酸素O、ホウ素B、窒素N、ケイ素Si、及びハロゲン(フッ素F、塩素Cl、臭素Br、及びヨウ素I)を好ましく例示でき、これらの元素のうち一種以上を含有する基を好ましく採用できる。なおハロゲンとしては結合安定性の点でF及びClが好ましく、Fがより好ましい。
具体的な官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、アシル基を有している態様、カルボキシ基又はその金属塩を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)、アミノ基(例えばジヒドロカルビルアミノ基。)を有している態様、アミド結合(−CO−N<結合)を有している態様(アミノカルボニル置換やアシルアミノ置換)、シリル基(例えばトリヒドロカルビルシリル基。)を有している態様、及び、ハロゲノ基(例えばフルオロ基。)を有している態様等を例示できる。
具体的な官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、アシル基を有している態様、カルボキシ基又はその金属塩を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)、アミノ基(例えばジヒドロカルビルアミノ基。)を有している態様、アミド結合(−CO−N<結合)を有している態様(アミノカルボニル置換やアシルアミノ置換)、シリル基(例えばトリヒドロカルビルシリル基。)を有している態様、及び、ハロゲノ基(例えばフルオロ基。)を有している態様等を例示できる。
上記「リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」の好ましい一形態としては、「酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」を挙げることができる。該「酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」は、炭化水素基が酸素、ホウ素、又は窒素を含むように官能基化されている基であって、炭素数が1〜30である基を意味する。該炭化水素基としては、上記同様の炭化水素基を例示できる。
当該形態における具体的な官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、アシル基を有している態様、カルボキシ基を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)、アミノ基(例えばジヒドロカルビルアミノ基。)を有している態様、アミド結合(−CO−N<結合)を有している態様(アミノカルボニル置換やアシルアミノ置換)等を例示できる。
当該形態における具体的な官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、アシル基を有している態様、カルボキシ基を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)、アミノ基(例えばジヒドロカルビルアミノ基。)を有している態様、アミド結合(−CO−N<結合)を有している態様(アミノカルボニル置換やアシルアミノ置換)等を例示できる。
上記「リン及び硫黄以外のヘテロ元素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」の他の好ましい一形態としては、「酸素若しくはホウ素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」を挙げることができる。該「酸素若しくはホウ素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」は、炭化水素基が酸素又はホウ素を含むように官能基化されている基であって、炭素数が1〜30である基を意味する。該炭化水素基としては、上記同様の炭化水素基を例示できる。
当該形態における具体的な官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、アシル基を有している態様、カルボキシ基を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)等を例示できる。
当該形態における具体的な官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、アシル基を有している態様、カルボキシ基を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)等を例示できる。
なお上記一般式(1)において窒素原子上の置換基であるR1、R3、及びR5のそれぞれについて、水素以外の基である場合には、その炭素数は好ましくは3以上であり、より好ましくは6以上であり、また好ましくは24以下であり、より好ましくは18以下であり、さらに好ましくは12以下である。
上記一般式(1)において、ホウ素原子上の置換基であるR2、R4、及びR6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基である。
R2、R4、及びR6について、上記炭素数1〜30の炭化水素基は、R1、R3、及びR5について上記説明した炭素数1〜30の炭化水素基と同様である。
上記「酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」は、炭化水素基が酸素、ホウ素、又は窒素を含むように官能基化されている基であって、炭素数が1〜30である基を意味する。該炭化水素基としては、上記同様の炭化水素基を挙げることができる。官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、カルボキシ基を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)、アミノ基(例えばジヒドロカルビルアミノ基。)を有している態様、アミド結合(−CO−N<結合)を有している態様(アミノカルボニル置換やアシルアミノ置換)等を例示できる。
上記「酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基」は、炭化水素基が酸素、ホウ素、又は窒素を含むように官能基化されている基であって、炭素数が1〜30である基を意味する。該炭化水素基としては、上記同様の炭化水素基を挙げることができる。官能基化の態様としては、エステル結合を有している態様(アルコキシカルボニル置換やアシロキシ置換)、カルボキシ基を有している態様、エーテル結合を有している態様(アルコキシ置換)、ボリル基(例えばジヒドロカルビルボリル基。)を有している態様、ホウ酸エステル結合を有している態様(例えばジアルコキシボロキシ置換。)、アミノ基(例えばジヒドロカルビルアミノ基。)を有している態様、アミド結合(−CO−N<結合)を有している態様(アミノカルボニル置換やアシルアミノ置換)等を例示できる。
なお上記一般式(1)においてホウ素原子上の置換基であるR2、R4、及びR6のそれぞれについて、水素以外の基である場合には、その炭素数は好ましくは3以上であり、より好ましくは6以上であり、また好ましくは24以下であり、より好ましくは18以下であり、さらに好ましくは12以下である。
なお、ボラジン化合物の揮発性を低減する観点からは、上記一般式(1)におけるR1乃至R6の6つの置換基のうち1つ以上が水素以外の基であることが好ましく、2つ以上が水素以外の基であることがより好ましく、3つ以上が水素以外の基であることが特に好ましい。
また、ボラジン化合物の製造を容易にする観点から、上記一般式(1)において窒素原子上の置換基であるR1、R3、及びR5は同一の基であることが好ましい。同様の観点から、上記一般式(1)においてホウ素原子上の置換基であるR2、R4、及びR6は同一の基であることが好ましい。
これらの要請をみたすボラジン化合物として、上記一般式(1)において窒素上の置換基(R1、R3、及びR5)の全て、若しくはホウ素上の置換基(R2、R4、及びR6)の全て、又はその両方(R1乃至R6全て)が、水素以外の基であるボラジン化合物を特に好ましく採用することができる。
また、ボラジン化合物の製造を容易にする観点から、上記一般式(1)において窒素原子上の置換基であるR1、R3、及びR5は同一の基であることが好ましい。同様の観点から、上記一般式(1)においてホウ素原子上の置換基であるR2、R4、及びR6は同一の基であることが好ましい。
これらの要請をみたすボラジン化合物として、上記一般式(1)において窒素上の置換基(R1、R3、及びR5)の全て、若しくはホウ素上の置換基(R2、R4、及びR6)の全て、又はその両方(R1乃至R6全て)が、水素以外の基であるボラジン化合物を特に好ましく採用することができる。
なお本発明の潤滑剤添加剤において、上記一般式(1)で表されるボラジン化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ボラジン化合物の製造)
上記一般式(1)で表されるボラジン化合物を製造する方法は特に制限されるものではなく、公知の合成方法を適宜採用することができる。
説明を単純化するため、窒素原子上の置換基であるR1、R3、及びR5が同一の基であり、かつホウ素原子上の置換基であるR2、R4、及びR6が同一の基である場合を主に例にとって説明する。この場合、上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の置換態様は、次の(イ)乃至(ヘ)の類型に分類することができる。
(イ)N−水素又は脂肪族置換、B−水素;
(ロ)N−水素又は脂肪族置換、B−脂肪族置換;
(ハ)N−水素又は脂肪族置換、B−芳香族置換;
(ニ)N−芳香族置換、B−水素;
(ホ)N−芳香族置換、B−芳香族置換;
(ヘ)N−芳香族置換、B−脂肪族置換
以下、上記(イ)〜(ヘ)の類型別に合成法の例を説明する。
上記一般式(1)で表されるボラジン化合物を製造する方法は特に制限されるものではなく、公知の合成方法を適宜採用することができる。
説明を単純化するため、窒素原子上の置換基であるR1、R3、及びR5が同一の基であり、かつホウ素原子上の置換基であるR2、R4、及びR6が同一の基である場合を主に例にとって説明する。この場合、上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の置換態様は、次の(イ)乃至(ヘ)の類型に分類することができる。
(イ)N−水素又は脂肪族置換、B−水素;
(ロ)N−水素又は脂肪族置換、B−脂肪族置換;
(ハ)N−水素又は脂肪族置換、B−芳香族置換;
(ニ)N−芳香族置換、B−水素;
(ホ)N−芳香族置換、B−芳香族置換;
(ヘ)N−芳香族置換、B−脂肪族置換
以下、上記(イ)〜(ヘ)の類型別に合成法の例を説明する。
(ボラジン化合物の製造:(イ)N−水素又は脂肪族置換、B−水素の場合)
一般式(1)においてR1=R3=R5=水素又は脂肪族基、R2=R4=R6=水素である場合には、例えば下記式(2)に示すように、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素アルカリABH4(Aはアルカリ金属である。)と、アルキルアンモニウムクロライド等のアンモニウムハライドRNH3X(Xはハロゲンであり;Rは環状構造を有していてもよく(例えばシクロアルキル基等。)、二重結合を有していてもよく、芳香族置換されていてもよく(例えばアリールアルキル基等。)、水素であってもよい。)を溶媒中で反応させる方法によって合成することが可能である。該方法における反応条件等の詳細は、例えば特開2008−201729号公報等に開示されている。
一般式(1)においてR1=R3=R5=水素又は脂肪族基、R2=R4=R6=水素である場合には、例えば下記式(2)に示すように、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素アルカリABH4(Aはアルカリ金属である。)と、アルキルアンモニウムクロライド等のアンモニウムハライドRNH3X(Xはハロゲンであり;Rは環状構造を有していてもよく(例えばシクロアルキル基等。)、二重結合を有していてもよく、芳香族置換されていてもよく(例えばアリールアルキル基等。)、水素であってもよい。)を溶媒中で反応させる方法によって合成することが可能である。該方法における反応条件等の詳細は、例えば特開2008−201729号公報等に開示されている。
また例えば下記式(3)に示すように、ボラン−テトラヒドロフラン錯体等のボラン(BH3)錯体又はジボラン(B2H6)と、ニトリルRCN(Rは脂肪族基(環状構造を有していてもよく、二重結合を有していてもよい。)又は芳香族基。)とを溶媒中で反応させる方法によって合成することも可能である。該方法における反応条件等の詳細は、例えば特開2010−173945号公報等に開示されている。
また例えば下記式(4)に示すように、トリクロロボランBCl3と、アルキルアンモニウムクロライド等のアンモニウムハライドRNH3X(Xはハロゲンであり;Rは環状構造を有していてもよく(例えばシクロアルキル基等。)、二重結合を有していてもよく、芳香族置換されていてもよく(例えばアリールアルキル基等。)、水素であってもよい。)とを溶媒中で反応させることによりトリクロロボラジン化合物を合成した後、下記式(5)に示すように該トリクロロボラジン化合物を水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法によって合成することも可能である。一段階目の反応(式(4))の反応条件等の詳細は、例えば特開2005−112723号公報や、特開2005−104869号公報等に開示されている。二段階目の反応(式(5))は周知である。
(ボラジン化合物の製造:(ロ)N−水素又は脂肪族置換、B−脂肪族置換の場合)
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=水素又は脂肪族基、R2=R4=R6=脂肪族基である場合には、例えば上記式(4)について説明したようにトリクロロボランBCl3と、アルキルアンモニウムクロライド等のアンモニウムハライドRNH3Xとを溶媒中で反応させることによりトリクロロボラジン化合物を合成した後、該トリクロロボラジン化合物を下記式(6)に示すように脂肪族グリニャール試薬R’MgX(Xはハロゲンであり;R’は環状構造を有していてもよく(例えばシクロアルキル基等。)、二重結合を有していてもよく、芳香族置換されていてもよい(例えばアリールアルキル基等。)。)と反応させる方法により合成することが可能である。該方法における反応条件等の詳細は、例えば特開2005−053854号公報、特開2005−104869号公報、特開2005−112723号公報等に開示されている。
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=水素又は脂肪族基、R2=R4=R6=脂肪族基である場合には、例えば上記式(4)について説明したようにトリクロロボランBCl3と、アルキルアンモニウムクロライド等のアンモニウムハライドRNH3Xとを溶媒中で反応させることによりトリクロロボラジン化合物を合成した後、該トリクロロボラジン化合物を下記式(6)に示すように脂肪族グリニャール試薬R’MgX(Xはハロゲンであり;R’は環状構造を有していてもよく(例えばシクロアルキル基等。)、二重結合を有していてもよく、芳香族置換されていてもよい(例えばアリールアルキル基等。)。)と反応させる方法により合成することが可能である。該方法における反応条件等の詳細は、例えば特開2005−053854号公報、特開2005−104869号公報、特開2005−112723号公報等に開示されている。
また例えば、上記説明した(イ)N−水素又は脂肪族置換、B−水素であるボラジン化合物と、アルケン化合物とを触媒(例えばRhCl(PPh3)3等。)存在下に2度に分けて逐次的に反応させる方法(下記式(7))により合成することも可能である。該方法における触媒や反応条件等の詳細は、例えば特開2011−037789号公報に開示がある。
(ボラジン化合物の製造:(ハ)N−水素又は脂肪族置換、B−芳香族置換の場合)
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=水素又は脂肪族基、R2=R4=R6=芳香族基である場合には、例えば上記説明した(イ)N−水素又は脂肪族置換、B−水素であるボラジン化合物と、アリールグリニャール試薬とを反応させる方法によって合成することが可能である(下記式(8))。該方法における反応条件等の詳細は、例えばJ.Am.Chem.Soc.,1959,81,582−586に開示がある。
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=水素又は脂肪族基、R2=R4=R6=芳香族基である場合には、例えば上記説明した(イ)N−水素又は脂肪族置換、B−水素であるボラジン化合物と、アリールグリニャール試薬とを反応させる方法によって合成することが可能である(下記式(8))。該方法における反応条件等の詳細は、例えばJ.Am.Chem.Soc.,1959,81,582−586に開示がある。
また例えば、上記説明した(イ)N−水素又は脂肪族置換、B−水素であるボラジン化合物と、アリールハライドArX(Xはハロゲンであり;Arはアリール基であり、アルキル基等で置換されていてもよい。)とを触媒(例えばPdCl2(PPh3)2等。)存在下で反応させる方法により合成することも可能である(下記式(9))。該方法における触媒や反応条件等の詳細は、例えば特開2010−280637号公報に開示されている。
(ボラジン化合物の製造:(ニ)N−芳香族置換、B−水素の場合)
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=芳香族基、R2=R4=R6=水素である場合には、例えば下記式(10)に示すように、トリクロロボランBCl3等のトリハロボランと、アリールアミンArNH2(Arはアリール基であり、アルキル基等で置換されていてもよい。)とを反応させることによりトリハロボラジン化合物を合成した後、下記式(11)に示すように該トリハロボラジン化合物を水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法である。一段階目の反応(式(10))の反応条件等の詳細は、例えば特開2005−170857号公報に開示がある。二段階目の反応(式(11))は周知である。
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=芳香族基、R2=R4=R6=水素である場合には、例えば下記式(10)に示すように、トリクロロボランBCl3等のトリハロボランと、アリールアミンArNH2(Arはアリール基であり、アルキル基等で置換されていてもよい。)とを反応させることによりトリハロボラジン化合物を合成した後、下記式(11)に示すように該トリハロボラジン化合物を水素化ホウ素ナトリウムで還元する方法である。一段階目の反応(式(10))の反応条件等の詳細は、例えば特開2005−170857号公報に開示がある。二段階目の反応(式(11))は周知である。
(ボラジン化合物の製造:(ホ)N−芳香族置換、B−芳香族置換の場合)
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=芳香族基、R2=R4=R6=芳香族基である場合には、例えば上記式(10)について説明したようにトリクロロボランBCl3等のトリハロボランと、アリールアミンArNH2とを反応させることによりトリハロボラジン化合物を合成した後、下記式(12)に示すように、該トリハロボラジン化合物と、アリールハライドAr’Y(Yはハロゲンであり;Ar’はアリール基であり、アルキル基等で置換されていてもよい。)をリチオ化又はグリニャール試薬化してなる有機金属化合物とを反応させる方法により合成することが可能である。該方法における反応条件等の詳細は、例えば特開2005−170857号公報に開示がある。
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=芳香族基、R2=R4=R6=芳香族基である場合には、例えば上記式(10)について説明したようにトリクロロボランBCl3等のトリハロボランと、アリールアミンArNH2とを反応させることによりトリハロボラジン化合物を合成した後、下記式(12)に示すように、該トリハロボラジン化合物と、アリールハライドAr’Y(Yはハロゲンであり;Ar’はアリール基であり、アルキル基等で置換されていてもよい。)をリチオ化又はグリニャール試薬化してなる有機金属化合物とを反応させる方法により合成することが可能である。該方法における反応条件等の詳細は、例えば特開2005−170857号公報に開示がある。
(ボラジン化合物の製造:(ヘ)N−芳香族置換、B−脂肪族置換の場合)
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=芳香族基、R2=R4=R6=脂肪族基である場合には、例えば上記式(10)について説明したようにトリクロロボランBCl3等のトリハロボランと、アリールアミンArNH2とを反応させることによりトリハロボラジン化合物を合成した後、上記式(6)について説明したように該トリハロボラジン化合物に脂肪族グリニャール試薬R’MgXを作用させる方法により合成することが可能である(下記式(13))。
上記一般式(1)においてR1=R3=R5=芳香族基、R2=R4=R6=脂肪族基である場合には、例えば上記式(10)について説明したようにトリクロロボランBCl3等のトリハロボランと、アリールアミンArNH2とを反応させることによりトリハロボラジン化合物を合成した後、上記式(6)について説明したように該トリハロボラジン化合物に脂肪族グリニャール試薬R’MgXを作用させる方法により合成することが可能である(下記式(13))。
(ボラジン化合物の製造:その他の場合)
ボラジン化合物の製造方法に関する上記説明では、上記一般式(1)において窒素原子上の置換基R1、R3、及びR5が同一の基であり、かつホウ素原子上の置換基R2、R4、及びR6が同一の基である場合を例にとって説明したが、本発明において使用可能なボラジン化合物はこれらの態様に限定されるものではない。窒素原子上の置換基R1、R3、及びR5が相互に異なっている、又は、ホウ素原子上の置換基R2、R4、及びR6が相互に異なっている態様のボラジン化合物も使用可能であり、そのようなボラジン化合物も合成可能である。例えば、ボラジン骨格の窒素源として使用するアンモニウム塩やアミンを2種以上組み合わせること;ボラジン骨格のホウ素原子上に置換基を導入するための有機金属試薬を2種以上組み合わせること;上記式(8)の反応においてB−無置換ボラジンとグリニャール試薬との化学量論関係を適宜調整すること;上記式(7)の反応において1段階目の反応で付加させるアルケン化合物と2段階目の反応で付加させるアルケン化合物に異なるアルケン化合物を用いること、等により、窒素原子上の置換基R1、R3、及びR5が相互に異なっている、若しくは、ホウ素原子上の置換基R2、R4、及びR6が相互に異なっている、又はその両方である態様のボラジン化合物を合成することも可能である。
また例えば、置換基が有する官能基を適当な保護基によって保護した状態で合成を進め、全ての置換基を導入した後に脱保護してもよい。これら保護基の導入及び脱保護は公知の手法によって行うことが可能である。また例えば、全ての置換基を導入した後で、置換基が有する官能基を公知の合成手法により他の官能基に誘導してもよい。
ボラジン化合物の製造方法に関する上記説明では、上記一般式(1)において窒素原子上の置換基R1、R3、及びR5が同一の基であり、かつホウ素原子上の置換基R2、R4、及びR6が同一の基である場合を例にとって説明したが、本発明において使用可能なボラジン化合物はこれらの態様に限定されるものではない。窒素原子上の置換基R1、R3、及びR5が相互に異なっている、又は、ホウ素原子上の置換基R2、R4、及びR6が相互に異なっている態様のボラジン化合物も使用可能であり、そのようなボラジン化合物も合成可能である。例えば、ボラジン骨格の窒素源として使用するアンモニウム塩やアミンを2種以上組み合わせること;ボラジン骨格のホウ素原子上に置換基を導入するための有機金属試薬を2種以上組み合わせること;上記式(8)の反応においてB−無置換ボラジンとグリニャール試薬との化学量論関係を適宜調整すること;上記式(7)の反応において1段階目の反応で付加させるアルケン化合物と2段階目の反応で付加させるアルケン化合物に異なるアルケン化合物を用いること、等により、窒素原子上の置換基R1、R3、及びR5が相互に異なっている、若しくは、ホウ素原子上の置換基R2、R4、及びR6が相互に異なっている、又はその両方である態様のボラジン化合物を合成することも可能である。
また例えば、置換基が有する官能基を適当な保護基によって保護した状態で合成を進め、全ての置換基を導入した後に脱保護してもよい。これら保護基の導入及び脱保護は公知の手法によって行うことが可能である。また例えば、全ての置換基を導入した後で、置換基が有する官能基を公知の合成手法により他の官能基に誘導してもよい。
(用途)
本発明の潤滑剤添加剤は、基油への溶解性を有するので、潤滑油(流体潤滑剤)及びグリース(半固体潤滑剤)のいずれにおいても含有させることが可能であり、当該潤滑剤の摩耗防止効果を高めることができる。潤滑油に含有させる場合、その含有量としては、当該潤滑油組成物の全量を100質量%とする上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の含有量として、例えば0.01〜5.0質量%の範囲を挙げることができる。またグリースに含有させる場合、その含有量としては、当該グリース組成物の全量を100質量%とする上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の含有量として、例えば0.1〜10.0質量%の範囲を挙げることができる。
本発明の潤滑剤添加剤は、基油への溶解性を有するので、潤滑油(流体潤滑剤)及びグリース(半固体潤滑剤)のいずれにおいても含有させることが可能であり、当該潤滑剤の摩耗防止効果を高めることができる。潤滑油に含有させる場合、その含有量としては、当該潤滑油組成物の全量を100質量%とする上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の含有量として、例えば0.01〜5.0質量%の範囲を挙げることができる。またグリースに含有させる場合、その含有量としては、当該グリース組成物の全量を100質量%とする上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の含有量として、例えば0.1〜10.0質量%の範囲を挙げることができる。
また本発明の潤滑剤添加剤を潤滑油(例えば内燃機関用潤滑油等。)に含有させることにより、当該潤滑油の摩耗防止性能だけでなく、高温清浄性をも向上させることが可能である。従来潤滑油に使用されている摩耗防止剤は高温清浄機能を有さないため、本発明の潤滑剤添加剤は、金属部位が高温にさらされる機械(例えば内燃機関等。)の潤滑に好適に用いることができる。
なお本発明の潤滑剤添加剤が高温清浄性を高める原理は完全に解明されてはいないものの、本発明者らは次のように推定している。すなわち、ボラジン環においてはB原子とN原子が交互に配列して6員環を形成しているところ、B−N結合の分極により3つの部分正電荷と3つの部分負電荷とが電気多重極を構成している。この特異な電気多重極構造が極性の高いスラッジ成分と良好な親和性を示す一方で、ボラジン環構造自体は全体としては無極性であるため基油とも良好な親和性を示す。その結果、高温条件下でも清浄作用を発揮するものと考えている。
<2.潤滑油組成物>
本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物について説明する。本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物は、基油と、上記本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤(以下において、「ボラジン系添加剤」ということがある。)とを含んでなる。
本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物について説明する。本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物は、基油と、上記本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤(以下において、「ボラジン系添加剤」ということがある。)とを含んでなる。
(潤滑油基油)
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油や合成系基油が使用できる。
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、特に制限はなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油や合成系基油が使用できる。
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガス・トゥ・リキッド・ワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油等が例示できる。
合成系潤滑油としては、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリα−オレフィンまたはその水素化物、イソブテンオリゴマーまたはその水素化物、パラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。このほか、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、及び芳香族エステル等の芳香族系合成油又はこれらの混合物等が例示できる。
本発明の潤滑油組成物においては、潤滑油基油として、鉱油系基油、合成系基油又はこれらの中から選ばれる2種以上の潤滑油の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油との混合油等を挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油の動粘度、NOACK蒸発量、及び粘度指数は、当該潤滑油組成物の用途に応じて適宜設定することが可能である。
(ボラジン系添加剤)
ボラジン系添加剤の詳細については既に説明した通りである。本発明の潤滑油組成物におけるボラジン系添加剤の含有量は特に限定されるものではないが、上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の含有量として、当該潤滑油組成物の全量を100質量%とする質量%単位で、例えば0.01〜5.0質量%等とすることができる。好ましい含有量は用途によって異なり得る。例えば内燃機関用潤滑油組成物とする場合には、好ましくは0.1質量%以上であり、また好ましくは1.0質量%以下である。
ボラジン系添加剤の詳細については既に説明した通りである。本発明の潤滑油組成物におけるボラジン系添加剤の含有量は特に限定されるものではないが、上記一般式(1)で表されるボラジン化合物の含有量として、当該潤滑油組成物の全量を100質量%とする質量%単位で、例えば0.01〜5.0質量%等とすることができる。好ましい含有量は用途によって異なり得る。例えば内燃機関用潤滑油組成物とする場合には、好ましくは0.1質量%以上であり、また好ましくは1.0質量%以下である。
(その他の添加剤)
本発明の潤滑油組成物は、上記説明した潤滑油基油及びボラジン系添加剤のほかに、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、金属系清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤及び着色剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。なおこれらの添加剤は上記一般式(1)のボラジン化合物とともに上記ボラジン系添加剤中に含有されていてもよい。
本発明の潤滑油組成物は、上記説明した潤滑油基油及びボラジン系添加剤のほかに、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、金属系清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤及び着色剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。なおこれらの添加剤は上記一般式(1)のボラジン化合物とともに上記ボラジン系添加剤中に含有されていてもよい。
無灰分散剤としては、公知の無灰分散剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物に無灰分散剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、すなわち潤滑油組成物全量を100質量%として、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上である。また、通常20質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物に酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、また好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。
摩擦調整剤としては、公知の摩擦調整剤を使用可能である。例えば、脂肪酸エステル等の油性剤系摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の硫黄含有モリブデン錯体、モリブデンアミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体等の硫黄を含有しない有機モリブデン錯体や二硫化モリブデン等のモリブデン系摩擦調整剤を挙げることができる。本発明の潤滑油組成物にこれらの摩擦調整剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.05質量%以上5質量%以下である。
摩耗防止剤としては、公知の摩耗防止剤を使用可能である。例えば、(モノ、ジ、トリ−チオ)(亜)リン酸トリエステル類やジチオリン酸亜鉛等のリン化合物、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカーバメート類等の硫黄含有化合物等が挙げられる。本発明の潤滑油組成物にこれらの摩耗防止剤を含有させる場合には、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005質量%以上5質量%以下である。
金属系清浄剤としては、公知の金属系清浄剤を使用可能である。例えば、アルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属サリシレート、アルカリ土類金属サリシレート、及びこれらの混合物等を挙げることができる。これら金属系清浄剤は過塩基化されていてもよい。本発明の潤滑油組成物に金属系清浄剤を含有させる場合、その含有量は特に制限されない。ただし、内燃機関用の場合、潤滑油組成物全量基準で、金属元素換算量で通常、0.01質量%以上5質量%以下である。
粘度指数向上剤としては、公知の粘度指数向上剤を使用できる。例えば、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体及びそれらの水添物等の、いわゆる非分散型粘度指数向上剤、さらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、並びに、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。粘度指数向上剤の平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、通常、重量平均分子量で5,000以上1,000,000以下である。また例えばポリイソブチレン又はその水素化物を内燃機関用に用いる場合には、数平均分子量で通常800以上5,000以下である。また例えばエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を内燃機関用に用いる場合には、数平均分子量で通常800以上500,000以下である。
本発明の潤滑油組成物にこれらの粘度指数向上剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.1質量%以上20質量%以下である。
本発明の潤滑油組成物にこれらの粘度指数向上剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.1質量%以上20質量%以下である。
流動点降下剤としては、使用する潤滑油基油の性状に応じて、例えばポリメタクリレート系ポリマー等の公知の流動点降下剤を適宜使用可能である。本発明の潤滑油組成物に流動点降下剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜1質量%である。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等の公知の腐食防止剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物にこれらの腐食防止剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005質量%以上5質量%以下である。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等の公知の防錆剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物にこれらの防錆剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005質量%以上5質量%以下である。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等の公知の抗乳化剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物にこれらの抗乳化剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005質量%以上5質量%以下である。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等の公知の金属不活性化剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物にこれらの金属不活性化剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005質量%以上1質量%以下である。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等の公知の消泡剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物にこれらの消泡剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.0005質量%以上1質量%以下である。
着色剤としては、例えばアゾ化合物等の公知の着色剤を使用可能である。
(用途)
本発明の潤滑油組成物は、上記本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤(ボラジン系添加剤)を含有することにより、摩耗防止性能が向上しているので、各種機械の潤滑に好適に採用できる。加えて上記説明したように高温清浄性も高められているので、金属部品が高温にさらされる機械(例えば内燃機関等。)の潤滑に特に好適に用いることができ、とりわけ排ガス中に移行するリン分や硫黄分等を考慮しなければならない内燃機関(例えば排ガス処理装置を装備した内燃機関。)の潤滑に特に好適に用いることができる。
本発明の潤滑油組成物は、上記本発明の第1の態様に係る潤滑剤添加剤(ボラジン系添加剤)を含有することにより、摩耗防止性能が向上しているので、各種機械の潤滑に好適に採用できる。加えて上記説明したように高温清浄性も高められているので、金属部品が高温にさらされる機械(例えば内燃機関等。)の潤滑に特に好適に用いることができ、とりわけ排ガス中に移行するリン分や硫黄分等を考慮しなければならない内燃機関(例えば排ガス処理装置を装備した内燃機関。)の潤滑に特に好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1及び比較例1〜2>
表1に示されるように、本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物(実施例1)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例1〜2)をそれぞれ調製した。成分量の数値の単位は全て質量%(組成物全量基準)である。
表1に示されるように、本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物(実施例1)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例1〜2)をそれぞれ調製した。成分量の数値の単位は全て質量%(組成物全量基準)である。
(耐摩耗性の評価)
実施例1及び比較例1〜2の潤滑油組成物のそれぞれについて、ボールオンディスク型の往復動摩擦試験機(Optimol社製SRV摩擦試験機、ボールは直径12.7mm、ディスクは直径24mm厚さ7mm、いずれも材質SUJ―2相当)を用いて耐摩耗性の評価を行った。試験条件は、温度100℃、振動数50Hz、荷重20N、振幅1mm、試験時間30分間とした。なお荷重20Nという数値は、境界潤滑条件に該当する。試験後のボールの摩耗痕の径を表1中に併せて示している。
表1から判るように、本発明のボラジン系添加剤を含有する実施例1の潤滑油組成物は、基油のみからなる比較例1の潤滑油に比較して、摩耗痕径を約38%低減できた。また基油にジチオリン酸亜鉛を含んでなる比較例2の潤滑油組成物に比較しても、摩耗痕径を約8%低減できた。
この結果から、本発明の潤滑剤添加剤及び潤滑油組成物によれば、摩耗防止性能を向上させ得ることが示された。
実施例1及び比較例1〜2の潤滑油組成物のそれぞれについて、ボールオンディスク型の往復動摩擦試験機(Optimol社製SRV摩擦試験機、ボールは直径12.7mm、ディスクは直径24mm厚さ7mm、いずれも材質SUJ―2相当)を用いて耐摩耗性の評価を行った。試験条件は、温度100℃、振動数50Hz、荷重20N、振幅1mm、試験時間30分間とした。なお荷重20Nという数値は、境界潤滑条件に該当する。試験後のボールの摩耗痕の径を表1中に併せて示している。
表1から判るように、本発明のボラジン系添加剤を含有する実施例1の潤滑油組成物は、基油のみからなる比較例1の潤滑油に比較して、摩耗痕径を約38%低減できた。また基油にジチオリン酸亜鉛を含んでなる比較例2の潤滑油組成物に比較しても、摩耗痕径を約8%低減できた。
この結果から、本発明の潤滑剤添加剤及び潤滑油組成物によれば、摩耗防止性能を向上させ得ることが示された。
<実施例2及び比較例3>
表2に示されるように、本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物(実施例2)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例3)をそれぞれ調製した。成分量の数値の単位は全て質量%(組成物全量基準)である。
表2に示されるように、本発明の第2の態様に係る潤滑油組成物(実施例2)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例3)をそれぞれ調製した。成分量の数値の単位は全て質量%(組成物全量基準)である。
(高温清浄性の評価)
実施例2及び比較例3の潤滑油組成物のそれぞれについて、ホットチューブ試験(JPI−5S−55規格に準拠)により、高温清浄性の評価を行った。試験温度は280℃及び290℃とした。結果を表2中に併せて示している。
表2から判るように、本発明のボラジン系添加剤を含有する実施例2の潤滑油組成物は、280℃及び290℃のいずれの試験温度においても、本発明のボラジン系添加剤を含有しない点以外は実施例2と同様である比較例3の潤滑油組成物に比較して優れたホットチューブ評点を示した。
これらの結果から、本発明の潤滑剤添加剤及び潤滑油組成物によれば、高温清浄性を向上させ得ることが示された。
実施例2及び比較例3の潤滑油組成物のそれぞれについて、ホットチューブ試験(JPI−5S−55規格に準拠)により、高温清浄性の評価を行った。試験温度は280℃及び290℃とした。結果を表2中に併せて示している。
表2から判るように、本発明のボラジン系添加剤を含有する実施例2の潤滑油組成物は、280℃及び290℃のいずれの試験温度においても、本発明のボラジン系添加剤を含有しない点以外は実施例2と同様である比較例3の潤滑油組成物に比較して優れたホットチューブ評点を示した。
これらの結果から、本発明の潤滑剤添加剤及び潤滑油組成物によれば、高温清浄性を向上させ得ることが示された。
Claims (7)
- 前記式(1)中、R1、R3、及びR5がそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、酸素若しくはホウ素若しくは窒素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基である、
請求項1に記載の潤滑剤添加剤。 - 前記式(1)中、R1、R3、及びR5がそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜30の炭化水素基、又は、酸素若しくはホウ素を含有する炭素数1〜30の炭化水素基である、
請求項1又は2に記載の潤滑剤添加剤。 - 前記式(1)中、R1、R3、及びR5が同一の基であり、
R2、R4、及びR6が同一の基である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑剤添加剤。 - 潤滑油基油、及び
請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑剤添加剤
を含有することを特徴とする、潤滑油組成物。 - 無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、摩耗防止剤、金属系清浄剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤及び着色剤からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、
請求項5に記載の潤滑油組成物。 - 内燃機関用潤滑油組成物である、請求項5又は6に記載の潤滑油組成物。
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