JP2014074234A - 窒化処理用軟磁性鋼材および耐摩耗性に優れた軟磁性鋼部品 - Google Patents
窒化処理用軟磁性鋼材および耐摩耗性に優れた軟磁性鋼部品 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】耐摩耗性に優れるとともに、窒化処理後の磁気特性にも優れる軟磁性鋼材を提供する。
【解決手段】C:0.001〜0.020%(質量%の意味。以下、同じ。)、Si:0.1%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、Cu:0.1%以下(0%を含まない)、Ni:0.1%以下(0%を含まない)、Al:0.040%以下(0%を含まない)、N:0.0040%以下(0%を含まない)を含有し、更に、Nb:0.015〜0.08%および/またはTi:0.01〜0.1%を下記式(1)を満足するように含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、鋼組織がフェライト単相組織であることを特徴とする窒化処理用軟磁性鋼材である。
8≦([Nb]+2×[Ti])/[N]≦60・・・(1)
(但し、[Nb]、[Ti]、[N]は夫々、Nb、Ti、Nの含有量(質量%)を示す)
【選択図】なし
【解決手段】C:0.001〜0.020%(質量%の意味。以下、同じ。)、Si:0.1%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、Cu:0.1%以下(0%を含まない)、Ni:0.1%以下(0%を含まない)、Al:0.040%以下(0%を含まない)、N:0.0040%以下(0%を含まない)を含有し、更に、Nb:0.015〜0.08%および/またはTi:0.01〜0.1%を下記式(1)を満足するように含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、鋼組織がフェライト単相組織であることを特徴とする窒化処理用軟磁性鋼材である。
8≦([Nb]+2×[Ti])/[N]≦60・・・(1)
(但し、[Nb]、[Ti]、[N]は夫々、Nb、Ti、Nの含有量(質量%)を示す)
【選択図】なし
Description
本発明は、自動車、電車、船舶、建機、または産業機械などにおいて各種電装部品に使用されるソレノイド、リレー、または電磁弁等の摺動部を有する鉄心材、またはオルタネータ等の回転部を有し且つ表層硬度が必要な鉄心材等として有用な軟磁性鋼部品、およびその原材料である軟磁性鋼材に関するものである。特に、JIS−SUY1種またはJIS−SUY2種と同等レベルの優れた磁気特性を確保することのできる軟磁性鋼材、および該鋼材を用いて得られる磁気特性に優れた軟磁性鋼部品に関するものである。
自動車の電装部品等において磁気回路を構成する鋼部材には、省電力化や応答性の向上を図るべく、磁気特性として低い外部磁場で容易に磁化し得る特性に加えて、保磁力の小さいことが要求される。したがって、このような用途には通常、軟磁性鋼材が用いられている。
この様な磁気特性を有する軟磁性鋼材としては、例えばC量が0.01%程度以下の低炭素鋼が用いられており、この鋼片を熱間圧延した後、潤滑処理、伸線加工を行って得た鋼線を、部品成形し、磁気焼鈍等を順次施して軟磁性鋼部品を得るのが一般的である。
一方、近年では部品機能の高度化に伴って、電磁部品は高速動作する傾向にあるため、摺動部を有する鉄心では耐摩耗性を確保する必要がある。耐摩耗性の向上策としては、部品表層部に浸炭処理やめっき処理を行うことが有効である。しかし、浸炭処理は磁気特性が大幅に低下する傾向にあり、またNiめっき等では製造コストの増加に加えて、シアン化合物等を使用するため、地球環境および作業者環境の両面で好ましくない。そこで、上記問題を解決すべく、表層部を窒化処理する試みが行われつつある。
例えば、特許文献1ではTi量とN量を相互に制御することによって鋼中の固溶NをTiNの形で固定し、冷間鍛造性を向上させた軟磁性鋼材を開示している。また、特許文献2ではC量、Nb量、Ti量、Cr量を相互に制御することによって、電気伝導性と機械的強度に優れた電気部品用鋼材を開示している。特許文献3は、例えばドットプリンター用のヨーク材料として好適な、磁気特性と耐摩耗性を両立した軟質磁性材料について、窒化により表面を硬化させるためにAl、Cr、V、Mo、Mn、Ti、Niの一種以上をいずれも0.1%以上と多目に用いている。しかし、特許文献1、2はいずれも窒化処理することは想定されておらず、また特許文献3は窒化処理しているが、窒化処理後の磁気特性が不十分であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は耐摩耗性に優れるとともに、窒化処理後の磁気特性に優れる軟磁性鋼材を提供することにある。
上記課題を解決した本発明に係る窒化処理用軟磁性鋼材は、C:0.001〜0.020%(質量%の意味。以下、同じ。)、Si:0.1%以下(0%を含まない)、Mn:0.1〜0.5%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.02%以下(0%を含まない)、Cu:0.1%以下(0%を含まない)、Ni:0.1%以下(0%を含まない)、Al:0.040%以下(0%を含まない)、N:0.0040%以下(0%を含まない)を含有し、更に、Nb:0.015〜0.08%および/またはTi:0.01〜0.1%を下記式(1)を満足するように含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、鋼組織がフェライト単相組織であることを特徴とする。
8≦([Nb]+2×[Ti])/[N]≦60・・・(1)
(但し、[Nb]、[Ti]、[N]は夫々、Nb、Ti、Nの含有量(質量%)を示す)
8≦([Nb]+2×[Ti])/[N]≦60・・・(1)
(但し、[Nb]、[Ti]、[N]は夫々、Nb、Ti、Nの含有量(質量%)を示す)
本発明の軟磁性鋼材は、更に、B:0.002%以下(0%を含まない)を含有していてもよい。
本発明には、上記鋼材を用いて得られる軟磁性鋼部品であって、表層に厚さ10μm以上の窒化層を有することを特徴とする耐摩耗性に優れた軟磁性鋼部品も包含され、前記窒化層は、軟窒化処理により形成されたものであることが好ましい。
本発明によれば、窒化物形成元素であるNb量、Ti量が、N量に対して適切に制御されているため、窒化処理に伴う窒素が、窒化層を超えて鋼中に拡散した場合であっても、Tiおよび/またはNbによって窒素を析出物として析出させることができ、固溶窒素による窒化処理後の磁気特性の低下を防止することができる。
本発明者らは、軟磁性鋼材を窒化処理して耐摩耗性を向上させるとともに、更に窒化処理後の磁気特性を確保するべく、組成、組織、また析出物の影響等、様々な角度から検討を重ねた。その結果、窒化物形成元素の中でも、Nbおよび/またはTiを適切に含有させることによって、窒化処理に伴う固溶窒素の増加を抑制することができ、表層の窒化層による耐摩耗性の向上と良好な磁気特性を両立させることができることを見出した。
上述した通り、本発明の最大の特徴は、窒化物形成元素のうちNbおよび/またはTiを適切に含有させる点にあり、より詳細にはNb量およびTi量をそれぞれ個別に制御するとともに、N量に対して適切に制御する点にある。
Nb、Tiは窒化処理によって鋼中に浸入した窒素を、微細析出物として析出させることで、磁気モーメントを低下させる固溶窒素が増加するのを抑制することができる。またNb、Tiのいずれも、窒化物が微細に分散した硬質相を形成し、耐摩耗性の向上に寄与する。このような効果を有効に発揮させるため、Nb量は0.015%以上、Ti量は0.01%以上と定めた。一方、Nb量、Ti量が過剰になると、窒化物形成に寄与しなかった過剰のNb、Tiが却って磁気特性を低下させ、また冷間鍛造性も低下させる。そこでNb量は0.08%以下、Ti量は0.1%以下とする。Nb量は好ましくは0.025〜0.07%であり、より好ましくは0.03〜0.06%である。Ti量は好ましくは0.02〜0.09%であり、より好ましくは0.04〜0.08%である。
更に、Nb量とTi量は、N量との関係で所定範囲に制御する必要があり、具体的には下記式(1)を満足するものである。
8≦([Nb]+2×[Ti])/[N]≦60・・・(1)
(但し、[Nb]、[Ti]、[N]は夫々、Nb、Ti、Nの含有量(質量%)を示す)
8≦([Nb]+2×[Ti])/[N]≦60・・・(1)
(但し、[Nb]、[Ti]、[N]は夫々、Nb、Ti、Nの含有量(質量%)を示す)
([Nb]+2×[Ti])/[N]の値が8未満であると、N量に対するNb量、Ti量の割合が小さくなり、窒化処理前の段階で既にNb、TiがNとともに析出物を形成してしまう結果、固溶Nb、固溶Tiが減少し、窒化処理の際に鋼中に浸入した窒素を析出物として固定することができず、窒化処理後の磁気特性が低下する。一方、([Nb]+2×[Ti])/[N]の値が60を超えると、過剰なNb量、Ti量によって却って磁気特性が低下し、また冷間鍛造性が低下する。([Nb]+2×[Ti])/[N]の好ましい範囲は、10〜55であり、より好ましくは15〜50である。
本発明の軟磁性鋼材は、上記したNb、Tiの他、C、Si、Mn、P、S、Cu、Ni、Al、Nを含有する。以下、各成分組成の限定理由について説明する。
C:0.001〜0.020%
Cは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるが、過剰に添加すると延性が低下する。また、Cが過剰になると固溶Cによってひずみ時効が起こり、鋼材が硬化して冷間鍛造性が低下する他、磁気特性も低下する。特に、JIS SUY−1種以上の磁気特性を満足させるためには、C量を0.020%以下とする。C量は好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。一方、C量を0.001%未満に低減しても磁気特性の向上効果は飽和し、極端に低減することは鋼材製造コストの増加を招くため、C量の下限は0.001%とする。強度を向上させる観点からは、C量は好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。
Cは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるが、過剰に添加すると延性が低下する。また、Cが過剰になると固溶Cによってひずみ時効が起こり、鋼材が硬化して冷間鍛造性が低下する他、磁気特性も低下する。特に、JIS SUY−1種以上の磁気特性を満足させるためには、C量を0.020%以下とする。C量は好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。一方、C量を0.001%未満に低減しても磁気特性の向上効果は飽和し、極端に低減することは鋼材製造コストの増加を招くため、C量の下限は0.001%とする。強度を向上させる観点からは、C量は好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。
Si:0.1%以下(0%を含まない)
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用する他、磁気特性を向上させる作用を有する。このような作用を有効に発揮させるため、Si量は好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.002%以上である。一方、Si量が過剰になると冷間鍛造性を阻害する。そこで、本発明では部品成型時の冷間鍛造性を確保する観点から、Si量を0.1%以下とする。Si量は好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.01%以下である。
Siは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用する他、磁気特性を向上させる作用を有する。このような作用を有効に発揮させるため、Si量は好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.002%以上である。一方、Si量が過剰になると冷間鍛造性を阻害する。そこで、本発明では部品成型時の冷間鍛造性を確保する観点から、Si量を0.1%以下とする。Si量は好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.01%以下である。
Mn:0.1〜0.5%
Mnは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用する他、Sと結合してMnSを形成することによって、Sによる脆化を抑制する作用を有する。このような作用を有効に発揮させるため、Mn量は0.1%以上とする。Mn量は好ましくは0.15%以上であり、より好ましくは0.2%以上である。一方、Mn量が過剰になると析出するMnSが粗大化して磁気特性を劣化させる。そこでMn量は0.5%以下とする。Mn量は好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。
Mnは、鋼の溶製時に脱酸剤として作用する他、Sと結合してMnSを形成することによって、Sによる脆化を抑制する作用を有する。このような作用を有効に発揮させるため、Mn量は0.1%以上とする。Mn量は好ましくは0.15%以上であり、より好ましくは0.2%以上である。一方、Mn量が過剰になると析出するMnSが粗大化して磁気特性を劣化させる。そこでMn量は0.5%以下とする。Mn量は好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。
P:0.02%以下(0%を含まない)
Pは、粒界偏析を起こして、冷間鍛造性と磁気特性の低下を招く。そこでP量は0.02%以下とする。P量は好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.007%以下である。
Pは、粒界偏析を起こして、冷間鍛造性と磁気特性の低下を招く。そこでP量は0.02%以下とする。P量は好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.007%以下である。
S:0.02%以下(0%を含まない)
Sは、鋼を脆化させるとともに、MnSが多量に形成されると冷間鍛造性や磁気特性の低下を招く。そこでS量は0.02%以下とする。S量は好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.007%以下である。
Sは、鋼を脆化させるとともに、MnSが多量に形成されると冷間鍛造性や磁気特性の低下を招く。そこでS量は0.02%以下とする。S量は好ましくは0.01%以下であり、より好ましくは0.007%以下である。
Cu:0.1%以下(0%を含まない)
Ni:0.1%以下(0%を含まない)
Cu、Niはいずれも不可避不純物として含まれ得る元素であるが、Cu量およびNi量が過剰になると磁気特性が劣化する。従って、Cu量およびNi量はいずれも0.1%以下とし、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.03%以下とする。
Ni:0.1%以下(0%を含まない)
Cu、Niはいずれも不可避不純物として含まれ得る元素であるが、Cu量およびNi量が過剰になると磁気特性が劣化する。従って、Cu量およびNi量はいずれも0.1%以下とし、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.03%以下とする。
Al:0.040%以下(0%を含まない)
Alは、Nと結合してAlNを形成して固溶Nを低減する能力を有するものの、圧延材中で生成したAlNが、窒化処理時の温度域(おおむね550℃以上)で再固溶し、固溶Nを増加させてしまう。また圧延材中で生成したAlNは、磁気焼鈍工程において結晶粒成長を抑制するピン止め粒子として作用するため、磁壁移動の障害となる結晶粒界が増加し磁気特性が低下する。そこでAl量は0.040%以下とする。Al量は好ましくは0.03%以下であり、より好ましくは0.01%以下である。
Alは、Nと結合してAlNを形成して固溶Nを低減する能力を有するものの、圧延材中で生成したAlNが、窒化処理時の温度域(おおむね550℃以上)で再固溶し、固溶Nを増加させてしまう。また圧延材中で生成したAlNは、磁気焼鈍工程において結晶粒成長を抑制するピン止め粒子として作用するため、磁壁移動の障害となる結晶粒界が増加し磁気特性が低下する。そこでAl量は0.040%以下とする。Al量は好ましくは0.03%以下であり、より好ましくは0.01%以下である。
N:0.0040%以下(0%を含まない)
Nは、固溶Nとして存在すると結晶構造を歪ませるため、磁気特性が低下する。Nは鋼中に存在する他、窒化処理時に鋼中に浸入して、磁気特性を低下させるため、鋼中のN量はできるだけ抑制する。そこで、N量は0.0040%以下とする。N量は好ましくは0.003%以下であり、より好ましくは0.0025%以下である。
Nは、固溶Nとして存在すると結晶構造を歪ませるため、磁気特性が低下する。Nは鋼中に存在する他、窒化処理時に鋼中に浸入して、磁気特性を低下させるため、鋼中のN量はできるだけ抑制する。そこで、N量は0.0040%以下とする。N量は好ましくは0.003%以下であり、より好ましくは0.0025%以下である。
本発明の軟磁性鋼材の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。但し、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避不純物が、各成分元素の作用効果や部品の特性を阻害しない範囲で鋼中に含まれることは当然に許容される。本発明の軟磁性鋼材は、さらにB(ボロン)を含有していてもよい。
B:0.002%以下(0%を含まない)
Bは、Ti、Nbと同様に窒化物形成元素であるため、磁気特性にとって有害な固溶Nを低減する作用を有する。このような作用を有効に発揮させるため、B量は0.0005%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0007%以上である。一方、B量が過剰であると磁気特性と冷間鍛造性が低下する。そこでB量は0.002%以下と定めた。B量は好ましくは0.0017%以下であり、より好ましくは0.0015%以下である。
Bは、Ti、Nbと同様に窒化物形成元素であるため、磁気特性にとって有害な固溶Nを低減する作用を有する。このような作用を有効に発揮させるため、B量は0.0005%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0007%以上である。一方、B量が過剰であると磁気特性と冷間鍛造性が低下する。そこでB量は0.002%以下と定めた。B量は好ましくは0.0017%以下であり、より好ましくは0.0015%以下である。
本発明の軟磁性鋼材の鋼組織はフェライト単相組織である。フェライト単相組織とは、鋼組織に占めるフェライト相が98面積%以上であり、フェライト相以外の部分はMnS含有析出物や、製造工程で不可避的に形成され得る他の析出物が含まれることを意図する。このようにフェライト単相組織とすることによって、磁気モーメントが増加して磁束密度を向上させることができる。
上記のようなフェライト単相組織を得るためには、熱間圧延前の加熱温度、熱間圧延の仕上げ温度、および熱間圧延後の冷却速度を適切に制御することが好ましい。より詳細には、熱間圧延前の加熱温度は1000〜1200℃、圧延仕上げ温度は850℃以上、熱間圧延後の冷却速度は、800〜500℃の冷却速度を0.5〜10℃/秒とすることが好ましい。
本発明は、上記した軟磁性鋼材を用いて得られる軟磁性鋼部品であって、表層に厚さ10μm以上の窒化層を有する軟磁性鋼部品も包含する。本発明の軟磁性鋼部品は、上記の軟磁性鋼材を部品形状に加工した後、好ましくは磁気焼鈍を行い、その後窒化処理(特に、軟窒化処理)を施すことによって得られるものである。
本発明の軟磁性鋼部品は、例えば800〜900℃で2時間以上という条件の下で磁気焼鈍を行うことが好ましく、磁気焼鈍によってフェライトの結晶粒を粗大化させて磁気特性を向上させることができる。
本発明の軟磁性鋼部品は、前記磁気焼鈍の後、さらに窒化処理を行って表層に窒化層を形成させるのであり、該窒化処理によって耐摩耗性を確保することができる。さらに、本発明の軟磁性鋼材は、窒化物形成元素のうち特にTi、Nbの含有量が適切に制御されているため窒化処理後の鋼部品においてもJIS−SUY1種と同等レベル以上の優れた磁気特性(保磁力がおよそ80A/m以下、外部磁界が150A/mの場合の磁束密度が1.3T以上)を確保することができ、耐摩耗性と磁気特性を両立させることができる。
窒化処理は、短時間で処理でき、かつ窒素と同時に炭素も拡散できるという点で、特に軟窒化処理をすることが好ましい。軟窒化処理は、例えばガス軟窒化や、タフトライドなどの塩浴軟窒化が挙げられるが、シアン化合物を使用しない無公害設備であるとともに、連続炉での処理が可能であり部品の製造コストが低減できるという観点からガス軟窒化処理することが好ましい。
前記軟窒化処理によって形成させる窒化層は、厚さが10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20μm以上である。窒化層の厚さの上限は特に限定されないが、概ね40μm程度であってもよい。前記窒化層の厚さを10μm以上とするためには、窒化物形成元素(Ti、Nb)の合計量を所定量以下にすることが好ましい。なぜなら、窒化物形成元素(Ti、Nb)の合計量が過剰になると、窒化処理に伴う硬質層の生成が妨げられるためである。TiとNbの合計含有量は0.070%以下が好ましく、より好ましくは0.065%以下である。
このように窒化層を形成させることによって、窒化処理後の表面硬さはHV510以上とすることが好ましく、より好ましくはHV515以上、さらに好ましくはHV520以上である。表面硬さの上限は特に限定されないが、概ねHV550程度であってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す化学成分の鋼を、真空炉で溶製(50kg)し、鋳造した後、φ30mmに熱間鍛造加工し、溶体化処理後、焼きならし処理を行って圧延材相当の組織とした。なお、溶体化処理は1150℃で30分間保持した後空冷し、焼きならし温度は950〜1050℃であり、焼きならし後の800〜500℃の冷却速度は0.5〜1.0℃/秒であった。
(1)鋼組織の観察
前記焼きならし処理後の線材を、軸心に垂直な断面で切断し、該断面が露出するように支持基材に埋め込んで研磨した後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒浸漬して腐食させ、光学顕微鏡によって(倍率:100倍および400倍)、表層位置、D/4位置(Dは直径)、D/2位置(Dは直径)の組織を観察した。表層位置とD/4位置については2視野ずつ、D/2位置については1視野について観察を行った。また観察視野は倍率100倍のときは700μm×900μmとし、倍率400倍のときは175μm×225μmとした。その結果、全ての試料について、鋼組織はフェライト単相組織であった。
前記焼きならし処理後の線材を、軸心に垂直な断面で切断し、該断面が露出するように支持基材に埋め込んで研磨した後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒浸漬して腐食させ、光学顕微鏡によって(倍率:100倍および400倍)、表層位置、D/4位置(Dは直径)、D/2位置(Dは直径)の組織を観察した。表層位置とD/4位置については2視野ずつ、D/2位置については1視野について観察を行った。また観察視野は倍率100倍のときは700μm×900μmとし、倍率400倍のときは175μm×225μmとした。その結果、全ての試料について、鋼組織はフェライト単相組織であった。
(2)磁気特性の測定
前記焼きならし処理後の線材から、外径24mm×内径16mm×高さ4mmのリング状試料を作成し、表2に示す条件で、磁気焼鈍および軟窒化処理を行った。各試料について、磁気焼鈍後および軟窒化処理後の保磁力と、軟窒化処理後の磁束密度を、JIS C2504にしたがって測定した。なお、ガス軟窒化処理のガス雰囲気は、NH3:N2:CO2=80:16:4であった。
前記焼きならし処理後の線材から、外径24mm×内径16mm×高さ4mmのリング状試料を作成し、表2に示す条件で、磁気焼鈍および軟窒化処理を行った。各試料について、磁気焼鈍後および軟窒化処理後の保磁力と、軟窒化処理後の磁束密度を、JIS C2504にしたがって測定した。なお、ガス軟窒化処理のガス雰囲気は、NH3:N2:CO2=80:16:4であった。
(3)窒化層の厚さ、および表面硬さの測定
前記焼きならし処理後の線材に、表2に示す条件で磁気焼鈍および軟窒化処理を行い、軸心に垂直な断面で切断して支持基材に埋め込み、JIS G0562に準じて断面の硬さ分布(ビッカース硬さ)を測定することで、窒化層厚さを求めた。
前記焼きならし処理後の線材に、表2に示す条件で磁気焼鈍および軟窒化処理を行い、軸心に垂直な断面で切断して支持基材に埋め込み、JIS G0562に準じて断面の硬さ分布(ビッカース硬さ)を測定することで、窒化層厚さを求めた。
また、前記軟窒化処理後の試料の表面の任意の4箇所について、ビッカース硬度計(荷重50g)によって硬さを測定し、それら平均値を窒化処理後の表面硬さとした。
結果を表2に示す。
表2の実験No.1〜8は、本発明の要件を満たす鋼材を用いた例である。実験No.1〜3、5〜8は磁気焼鈍後の保磁力が良好であることはもちろんのこと、軟窒化処理後の磁気特性(保磁力および磁束密度)も良好であり、かつ、表面硬さも良好であった。実験No.4は、鋼材の化学成分は本発明の要件を満たすものであり、磁気焼鈍後の保磁力は良好であるが、軟窒化処理をしなかったため、表面硬さが不十分であった。
一方、実験No.9〜23は、化学成分の少なくともいずれかが本発明の要件を満たさなかった例である。実験No.9は、式(1)の値が小さかったために、窒化処理時に固溶Nを低減することができず、窒化処理後の保磁力が増大した例である。実験No.10、11は、Ti量、Nb量が少なかったために、窒化処理時に固溶Nを低減することができず、窒化処理後の保磁力が増大した例である。実験No.12、13は、Ti量またはNb量が多かったために、窒化処理後の保磁力が増大した例である。また、実験No.12、13は窒化物形成元素(Ti、Nb)が多かったため、窒化処理に伴う硬質層の生成が妨げられたものと考えられる。実験No.14は、Al量が多かったため、AlNによって結晶粒成長が阻害され焼鈍後の保磁力が比較的高めとなり、また窒化処理時にAlNが分解して固溶Nが増加したこと、およびTiとNbが添加されていなかったため窒化処理後の保磁力が増大した例である。実験No.15、16は、C、Si、Mnの少なくともいずれかが多かったため保磁力が低下した。特にNo.15はTiが添加されておらず、Nbの添加量が少なかったことも保磁力が劣化した原因となっている。実験No.17は、N量が多かったため固溶Nの影響で磁気焼鈍後の保磁力が比較的高めとなり、また窒化処理後の保磁力が増大した例である。実験No.18、19はそれぞれ、Cu量、Ni量が多かったため窒化処理後の保磁力が増大した。実験No.20〜22は式(1)の値が大きかったため、窒化処理後の保磁力が増大した。実験No.23は、式(1)の値が小さかったため、窒化処理後の保磁力が増大した。
Claims (4)
- C :0.001〜0.020%(質量%の意味。以下、同じ。)、
Si:0.1%以下(0%を含まない)、
Mn:0.1〜0.5%、
P :0.02%以下(0%を含まない)、
S :0.02%以下(0%を含まない)、
Cu:0.1%以下(0%を含まない)、
Ni:0.1%以下(0%を含まない)、
Al:0.040%以下(0%を含まない)、
N :0.0040%以下(0%を含まない)を含有し、更に、
Nb:0.015〜0.08%および/またはTi:0.01〜0.1%を下記式(1)を満足するように含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
鋼組織がフェライト単相組織であることを特徴とする窒化処理用軟磁性鋼材。
8≦([Nb]+2×[Ti])/[N]≦60・・・(1)
(但し、[Nb]、[Ti]、[N]は夫々、Nb、Ti、Nの含有量(質量%)を示す) - 更に、B:0.002%以下(0%を含まない)を含有する請求項1に記載の窒化処理用軟磁性鋼材。
- 請求項1または2に記載の鋼材を用いて得られる軟磁性鋼部品であって、表層に厚さ10μm以上の窒化層を有することを特徴とする耐摩耗性に優れた軟磁性鋼部品。
- 前記窒化層は、軟窒化処理により形成されたものである請求項3に記載の軟磁性鋼部品。
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