JP2013044037A - 鉄系材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C:0.1mass%以上1.5mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有し、少なくとも一部に窒化処理による硬質相を有し、該硬質相は、N:(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下を含有し、かつ硬さがHV650以上とする。
【選択図】なし
Description
このような機械部品に用いられる鋼材は、機械部品として必要な強度を確保するために、0.3〜0.6mass%程度のCを含有する。しかしながら、鋼材中に含有されるCは鋼材の硬度上昇にも寄与するため、切削や鍛造などの冷間加工における加工性を困難にする。
機械部品を所定の形状に加工する際の冷間加工性と、機械部品に要求される強度という相反する特性をともに満足させる方法として、低C鋼素材に冷間加工を施して所望の形状とした後、浸炭焼入れする方法が、従前行われている。しかしながら、上記方法は、浸炭でC濃度を上昇させるといえども、やはり焼もどしマルテンサイトの強度を利用するため、依然として高温環境下での強度低下に関する上記問題は未解決のままであった。
(1)C:0.1mass%以上1.5mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有し、少なくとも一部に窒化処理による硬質相を有し、該硬質相は、N:(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下を含有し、かつ硬さがHV650以上であることを特徴とする鉄系材料。
ただし、[%C]はC含有量(at%)。
Cr:0.05mass%以上3.0mass%以下、
Al:0.005mass%以上3.0 mass%以下、
Ti:0.0005mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005mass%以上0.2mass%以下、
V:0.02mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02mass%以上1.0mass%以下、
Mn:0.02mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02mass%以上3.0 mass%以下、
Ni:0.02mass%以上2.0mass%以下、
Cu:0.02mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする鉄系材料。
ただし、[%C]はC含有量(at%)。
Cr:0.05mass%以上3.0mass%以下、
Al:0.005mass%以上3.0 mass%以下、
Ti:0.0005mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005mass%以上0.2mass%以下、
V:0.02mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02mass%以上1.0mass%以下、
Mn:0.02mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02mass%以上3.0 mass%以下、
Ni:0.02mass%以上2.0mass%以下、
Cu:0.02mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
N:(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下
本発明の硬質相を形成する上で必須の元素である。先述の通り、本発明においては、鉄系素材に窒化処理を施して鉄系材料の少なくとも一部をオーステナイト組織とし、これを急冷して窒化処理時に形成された上記オーステナイト組織を500℃以下MS点以上の温度域まで残留させ、これをMs点以上500℃以下の温度域に加熱保持して、α(フェライト)とγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(N,C))との微細分散組織とすることにより、硬質相を形成する。そのため、本発明の鉄系材料においては、硬質相を形成する部分に、オーステナイト形成元素であり且つγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(N,C))の構成元素であるNを所要量含有させる必要がある。すなわち、窒化処理を施した部分のN含有量が3at%未満では、窒化処理温度域でオーステナイト組織を得ることが出来ず、また硬化相形成を目的とした保持処理時に十分なα−Fe+γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(N,C))微細組織が得られないため、HV650以上の硬化層を形成することができない。
一方、同N含有量が8at%を超えると、窒化処理に必要な時間が長時間となるため製造コストが増加する問題がある。この様な理由から、N含有量は3at%以上8at%以下である必要がある。ここで、窒化処理によりNを含有させる際、Cのat%分だけ低いN量にてオーステナイトが形成されることから、N含有量は(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下とする。
Cは、オーステナイト安定化元素であり、素材にCを添加した場合、窒化処理によりNを含有させる際に、Cのat%分だけ低いN量でオーステナイトが形成するようになる。このオーステナイト組織を急冷して、オーステナイト組織を500℃以下Ms点以上の温度域まで残留させ、これをMs点以上500℃以下の温度域に加熱保持すると、CはNとともに鉄化合物γ´(Fe4(N,C))を形成し、α(フェライト)と硬質のγ´(Fe4(N,C))との微細分散組織が得られる。
さらに、Cは、特に本発明においてHV650以上の硬質相を鉄系材料の表層のみに形成する場合、鉄系材料の表層部以外の強度を確保する上で有効な元素である。
このため本発明においてCは、0.1mass%以上添加する。0.1mass%未満の場合、空隙率が著しく増加し、最終部品の強度および靭性が劣化する。一方、1.5 mass%を超えると、機械部品の寸法精度や冷間加工性に悪影響を及ぼすため、1.5mass%以下とする。より好ましくは0.16 mass%以上1.1mass%未満である。
なお、本発明において、硬さHVは、荷重25gf(0.245N)および荷重保持時間15sの条件にて測定したビッカース硬さを意味する。
本発明の鉄系材料は、上記した所定の組成を有する鉄系素材に、700℃以上の温度で窒化処理を施して該鉄系素材の一部または全体にN:(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下を含有させた後、500℃以下Ms点以上の温度域まで1℃/s以上の速度で冷却し、その後Ms点以上500℃以下の温度域に10min以上保持することにより、HV650以上の硬質相を形成する方法により好適に製造することができる。
窒化温度を700℃以上とすることにより、鉄系素材中への十分な窒素の拡散速度を得ることが可能となるとともに、窒化中に安定なオーステナイト相を得ることができ、所定の厚さのオーステナイト相を確保できる。これにより、その後の硬質相形成処理で上記した厚さで硬化層を確保することが可能となる。ただし、窒化温度を極端に高くすると、窒化処理中の窒化進行速度の制御が困難になるとともに、窒化処理中にオーステナイト粒の粗大化を引き起こし、窒化処理後の鉄系材料の延性および靭性に悪影響を及ぼす。そのため、窒化処理温度は1000℃以下にすることが好ましい。
上記の条件に従う窒化処理にて鉄系素材の少なくとも一部には、N:(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下を含有するオーステナイト組織が形成される。本発明においては、これを1℃/s以上の冷却速度で500℃以下Ms点以上の温度まで冷却することにより、上記オーステナイト組織を当該温度まで存在させることを可能にする。すなわち、冷却速度が1℃/s未満である場合には、冷却中の組織中にフェライト相が形成してしまい、冷却終了後のオーステナイト含有量が減少するため、その後の熱処理により所望の硬度を有する硬質相が得られない。なお、冷却速度の上限値は特に限定しないが、簡易な冷却方法にて達成するためには、50℃/s以下とすることが好ましい。
一方、冷却停止温度が500℃を超えると、冷却停止後の放冷時に組織中に粗大なフェライト相が形成してしまい、冷却後のオーステナイト含有量が減少する。そのため、500℃以下とする。
上記冷却工程を経た鉄系材料は、少なくとも一部に軟質なオーステナイト組織を有する。しかし、この鉄系材料をMs点以上500℃以下の温度域に保持することにより、上記オーステナイト組織がαとγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(N,C))との微細分散組織に変化し、HV650以上の硬質相が形成される。
すなわち、加熱保持温度がMs点未満では、窒化処理により形成したオーステナイトの少なくとも一部にマルテンサイト変態を生じ、所望の硬度を有する硬質相が得られない。一方、該加熱保持温度が500℃を超えると、形成される組織の粗大化を生じるとともに、表層部で脱窒が発生し、やはり硬質相の硬度が不十分となる。なお、上記温度における保持時間を10min未満とすると上記した組織変化が不十分になることから、鉄系材料を所望の組織とするために10min以上の保持を必要とする。一方、60000minを超えて保持しても、それ以上の硬度の上昇は望めない。従って、保持時間は10〜60000minとすることが好ましい。
なお、ビッカース硬さの測定はいずれも、荷重25gf(0.245N)、荷重保持時間15sの条件にて行った。
さらに、空隙率は硬化熱処理後の鉄系材料について、表面から深さ20μm部を光学顕微鏡にて400倍で6視野観察を行い、画像解析にて全視野面積に対する空隙部面積の比率を測定することにより求めた。
本発明に従う鉄系材料No.1およびNo.11〜21は何れも、代表的な機械構造用鋼であるJIS−S53C(No.23)の焼なまし材よりも低い素材硬さを有しており、冷間加工性に優れている。また、これらの鉄系材料では、窒化→硬化熱処理後には、JIS−S53Cの焼入れ焼もどし材よりも優れた表層部の硬さを有している。
すなわち、窒化温度が低い場合(No.2)は、窒化時のオーステナイト(γ)相の生成が不十分となり、フェライト(α)相が残存した。窒化時間が短い場合(No.3)は、窒化の進行が不十分であり、十分な窒素濃度が得られなかった。そのため、これらはいずれも硬化処理後に十分な硬さが得られなかった。窒化時間が長い場合(No.4)では、過剰な窒化の進行に伴い、窒素濃度が本発明範囲を超えて不適な窒化物(ε(Fe3N,Fe3(N,C)))が窒化処理段階で生成し、硬化処理後もこれが残留して硬さに悪影響を及ぼした。
窒化後冷却条件が不適な場合(No.5およびNo.6)は、冷却途中または冷却完了後にフェライト(α)相が生じ、硬化熱処理後はγ´面積率および微細γ´率が低くなって十分な硬さが得られなかった。
窒化後冷却完了温度が低いNo.7では、冷却完了後にマルテンサイト(α´)相が生じ、硬化熱処理により焼もどしが生じ、十分な硬さが得られなかった。
さらに、No.9の場合は、窒化冷却によりオーステナイト組織が得られているものの、その後の硬化熱処理温度が高いため、オーステナイト相からの組織変化によって形成されたフェライト(α)相、およびγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(N,C))相が粗大化し、十分な硬さが得られなかった。
C量が本発明範囲より低いNo.22では、窒化層の空隙率が高くなり、窒化層が脆化している。
Claims (4)
- C:0.1mass%以上1.5mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物の成分組成を有し、少なくとも一部に窒化処理による硬質相を有し、該硬質相は、N:(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下を含有し、かつ硬さがHV650以上であることを特徴とする鉄系材料。
ただし、[%C]はC含有量(at%)。 - 請求項1において、前記成分組成として、さらに
Cr:0.05mass%以上3.0mass%以下、
Al:0.005mass%以上3.0 mass%以下、
Ti:0.0005mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005mass%以上0.2mass%以下、
V:0.02mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02mass%以上1.0mass%以下、
Mn:0.02mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02mass%以上3.0 mass%以下、
Ni:0.02mass%以上2.0mass%以下、
Cu:0.02mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする鉄系材料。 - C:0.1mass%以上1.5 mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる素材に700℃以上の温度で窒化処理を施し、該素材の少なくとも一部にN:(3−[%C])at%以上(8−[%C])at%以下を含有させた後、500℃以下Ms点以上の温度域まで1℃/s以上の速度で冷却し、その後Ms点以上500℃以下の温度域に10min以上保持してHV650以上の硬質相を、少なくとも一部に形成することを特徴とする鉄系材料の製造方怯。
ただし、[%C]はC含有量(at%)。 - 請求項3において、前記素材が、更に
Cr:0.05mass%以上3.0mass%以下、
Al:0.005mass%以上3.0 mass%以下、
Ti:0.0005mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005mass%以上0.2mass%以下、
V:0.02mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02mass%以上1.0mass%以下、
Mn:0.02mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02mass%以上3.0 mass%以下、
Ni:0.02mass%以上2.0mass%以下、
Cu:0.02mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
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