JP2008013807A - 窒化部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 窒化深さを増加させつつ硬さも高めることができ、かつ、凹部底等の応力集中部においてもクラック等の欠陥が生じにくい窒化部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 部品母材を、C:0.0050質量%以上0.20質量%以下、Si:0.010質量%以上0.30質量%以下、Mn:0.10質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.10質量%以上1.5質量%以下、N:0.0050質量%以上0.025質量%以下、及び、Ti:0.60質量%以上1.5質量%以下を含有し、残部Fe及び不純物元素からなり、かつ、Ti含有量をWTi(質量%)、C有量をWC(質量%)及びN有量をWN(質量%)として、1.5≧WTi−4WC−3.4WN≧0.6を充足する組成の鋼にて形成し、該部品母材の表面に600℃以上750℃以下の温度範囲にて窒化処理を実施する。
【選択図】 なし
【解決手段】 部品母材を、C:0.0050質量%以上0.20質量%以下、Si:0.010質量%以上0.30質量%以下、Mn:0.10質量%以上2.0質量%以下、Cr:0.10質量%以上1.5質量%以下、N:0.0050質量%以上0.025質量%以下、及び、Ti:0.60質量%以上1.5質量%以下を含有し、残部Fe及び不純物元素からなり、かつ、Ti含有量をWTi(質量%)、C有量をWC(質量%)及びN有量をWN(質量%)として、1.5≧WTi−4WC−3.4WN≧0.6を充足する組成の鋼にて形成し、該部品母材の表面に600℃以上750℃以下の温度範囲にて窒化処理を実施する。
【選択図】 なし
Description
本発明は窒化部品の製造方法に関する。
例えば自動車用の歯車等、高い面圧が負荷された状態で長時間継続して使用される部品においては、耐摩耗性や耐ピッチング性等で特に厳しい特性が要求されるため、従来、Cr鋼やCr−Mo鋼等の合金鋼に浸炭処理を施して表面硬度を高め、高い面圧に耐える特性を確保することが行われている。しかし浸炭処理の場合、炭素固溶量を高めるためにA1変態点よりも十分高温(例えば800℃以上)での加熱が必須であり、浸炭処理後の冷却処理が焼入れ処理を兼ねる形となるため変態歪(さらには熱歪)が発生しやすく、部品精度確保のため浸炭処理後の仕上加工作業が必要になるなど、生産性の低下ないしコストアップを招きやすい問題がある。この問題を解決するために、浸炭処理に代わる表面硬化方法として窒化処理が検討されている(例えば、特許文献1)。窒化処理は浸炭処理よりも低温(例えば、特許文献1では680℃以下)で実施されるため、浸炭処理に比較して部品の歪を抑制で、寸法精度を確保しやすい利点がある。この反面、浸炭よりも低温処理であるため、窒化深さを大きくしにくい問題がある。
特許文献1においては、窒化物形成元素としてTiを添加した鋼を母材として使用し、かつ、従来技術よりも高温の窒化温度(600℃以上680℃以下)を採用して窒化深さを高める提案がなされている。
特許文献1においては、母材をなす鋼中の有効Ti量(母材中にてはじめから炭化物ないし窒化物として存在しているTi成分を除いた残余のTi含有量:Ti含有量をWTi(質量%)、C有量をWC(質量%)及びN有量をWN(質量%)として、WTi−4WC−3.4WNで表わすことができる)が最大でも0.5程度に留められており、窒化深さは増大できても硬さを十分に確保できない難点があった。また、窒化深さを増加させつつ硬さも高めようとすると、窒化処理後の冷却時に窒化層に生ずる熱歪が大きくなり、例えば歯車のごとく大きな凹凸を有した部品においては、凹部底等の応力集中部にて窒化層にクラックが生じやすくなる問題がある。
本発明の課題は、窒化深さを増加させつつ硬さも高めることができ、かつ、凹部底等の応力集中部においてもクラック等の欠陥が生じにくい窒化部品の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の窒化部品の製造方法は、
部品母材を、
C:0.0050質量%以上0.20質量%以下、
Si:0.010質量%以上0.30質量%以下、
Mn:0.10質量%以上2.0質量%以下、
Cr:0.10質量%以上1.5質量%以下、
N:0.0050質量%以上0.025質量%以下、及び、
Ti:0.60質量%以上1.55質量%以下を含有し、残部Fe及び不純物元素からなり、かつ、Ti含有量をWTi(質量%)、C有量をWC(質量%)及びN有量をWN(質量%)として、
1.5≧WTi−4WC−3.4WN≧0.6
を充足する組成の鋼にて形成し、該部品母材の表面に600℃以上750℃以下の温度範囲にて窒化処理を実施することを特徴とする。
部品母材を、
C:0.0050質量%以上0.20質量%以下、
Si:0.010質量%以上0.30質量%以下、
Mn:0.10質量%以上2.0質量%以下、
Cr:0.10質量%以上1.5質量%以下、
N:0.0050質量%以上0.025質量%以下、及び、
Ti:0.60質量%以上1.55質量%以下を含有し、残部Fe及び不純物元素からなり、かつ、Ti含有量をWTi(質量%)、C有量をWC(質量%)及びN有量をWN(質量%)として、
1.5≧WTi−4WC−3.4WN≧0.6
を充足する組成の鋼にて形成し、該部品母材の表面に600℃以上750℃以下の温度範囲にて窒化処理を実施することを特徴とする。
上記本発明の窒化部品の製造方法によると、窒化処理温度を従来の窒化処理よりも高い600℃以上750℃以下に設定することで、部品表面の窒化深さを大きくすることができる。また、有効Ti量(WTi−4WC−3.4WN)を、特許文献1によりも高い0.6質量%以上に確保することで、窒化層中の窒化物体積率を増加でき、窒化層の硬さも大幅に高めることができる。他方、厚みの増大した窒化層の場合、窒化処理後の冷却時に層に生ずる歪も大きくなるので、窒化層中の窒化物体積率が過剰になると層の靭性が不足し、その歪によって部品表面に形成されている凹部(歯車の場合、歯間凹部)底など、応力集中しやすい部位にクラック等の欠陥を生じやすくなる。しかし、本発明においては、母材の有効Ti量の上限値を1.5質量%以下に設定することで、窒化層中の窒化物体積率が過剰とならず、クラック等の欠陥発生も効果的に抑制することができる。かくして、自動車用歯車やクランクシャフトなど、高面圧が継続して負荷される環境下においても部品の耐久性を著しく向上することができ、またクラック等の欠陥の発生を抑制しつつ窒化層を安定して形成可能である。
窒化深さは0.3mm以上(望ましくは0.4mm以上)とすることができる。また、該窒化深さの上限値は特に制限はないが、例えば0.6mm以下(望ましくは0.56mm以下)とすることができる。また、窒化層の硬さは、窒化層表面から深さ0.05mm位置でのビッカース硬さ(測定荷重300g)にて、Hv550以上(望ましくはHv600以上、さらに望ましくはHv700以上とするのがよい。また、上記望ましい窒化深さ範囲にて硬化層を形成する場合、クラック等の発生を防止するために、上記の硬さの上限値はHv1100以下(望ましくはHv1000以下)とするのがよい。また、特許文献1と同様に、窒化処理前に母材に予め焼入れ処理を施しておくことで、窒化処理後は窒化層を含む部品表層部(あるいは内部も)を焼入れ/焼戻し組織とすることができる。
窒化処理温度が600℃未満では十分な窒化深さが得られなくなるばかりでなく、窒化層の脆化も生じやすくなり、クラック等の欠陥を発生しやすくなる。他方、窒化処理温度が750℃を超えると窒化層の軟化を招き、得られる窒化部品の耐久性が損なわれることにつながる。
以下、母材組成の限定理由について説明する。
(1)C:0.0050質量%以上0.20質量%以下
Cは強度確保のための内部硬さを得るために必要な元素であり、少なくとも0.005質量%以上の含有が必要である。しかしながら、窒化処理前に一度固溶させたTiCは窒化処理時の加熱によって再析出するため、Cの含有率が過度に高いと、窒化層の硬さ向上に寄与しないTiCの再析出量が増加し、結果的に窒化層の硬さが不足することにもつながる。また、Cの含有率が増加すると、焼入前においてはTiCが増加して被削性が低下するとともに、焼入後の硬さも上昇して、同様に被削性低下の原因となるため、C含有量の上限を0.20質量%とする。
(1)C:0.0050質量%以上0.20質量%以下
Cは強度確保のための内部硬さを得るために必要な元素であり、少なくとも0.005質量%以上の含有が必要である。しかしながら、窒化処理前に一度固溶させたTiCは窒化処理時の加熱によって再析出するため、Cの含有率が過度に高いと、窒化層の硬さ向上に寄与しないTiCの再析出量が増加し、結果的に窒化層の硬さが不足することにもつながる。また、Cの含有率が増加すると、焼入前においてはTiCが増加して被削性が低下するとともに、焼入後の硬さも上昇して、同様に被削性低下の原因となるため、C含有量の上限を0.20質量%とする。
(2)Si:0.010質量%以上0.30質量%以下
Siは鋼の脱酸元素として添加されるが、本発明においては、母材鋼中に窒化物形成元素としてフェライト安定化元素であるTiを比較的多量に添加するため、鋼の焼入温度が過度に上昇することを防止するために、同様のフェライト安定化元素であるSiの添加量の上限値は0.30質量%以下に留めるようにする。他方、Si添加量が0.010質量%未満では十分な脱酸効果が得られない場合がある。Si含有量は、より望ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下とするのがよい。
Siは鋼の脱酸元素として添加されるが、本発明においては、母材鋼中に窒化物形成元素としてフェライト安定化元素であるTiを比較的多量に添加するため、鋼の焼入温度が過度に上昇することを防止するために、同様のフェライト安定化元素であるSiの添加量の上限値は0.30質量%以下に留めるようにする。他方、Si添加量が0.010質量%未満では十分な脱酸効果が得られない場合がある。Si含有量は、より望ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下とするのがよい。
(3)Mn:0.10質量%以上2.0質量%以下
Mnは、溶製時の脱酸剤として含有させるとともに、固溶強化により硬さ向上に寄与する元素でもあり、靭性向上にも効果がある。また、焼入れ性の改善にも寄与する。ただし、添加量が0.10質量%未満では該効果が顕著でなくなる。また、過度の添加は母材の被削性低下を招き、機械加工性も劣化するほか、窒化深さが不十分となる原因となるため、上限を2.0質量%とする。Mn含有量は、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下とするのがよい。
Mnは、溶製時の脱酸剤として含有させるとともに、固溶強化により硬さ向上に寄与する元素でもあり、靭性向上にも効果がある。また、焼入れ性の改善にも寄与する。ただし、添加量が0.10質量%未満では該効果が顕著でなくなる。また、過度の添加は母材の被削性低下を招き、機械加工性も劣化するほか、窒化深さが不十分となる原因となるため、上限を2.0質量%とする。Mn含有量は、より望ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下とするのがよい。
(4)Cr:0.10質量%以上1.5質量%以下
Crは窒化処理後の表面窒化層の硬さ向上に効果のある元素であり、また、焼入れ性の改善にも寄与する。しかし、0.50質量%未満の含有では効果が不十分となる。また、過度の含有は窒素の拡散速度の低下につながり、十分な窒化深さを得ることが難しくなるので、上限を1.50質量%とする。
Crは窒化処理後の表面窒化層の硬さ向上に効果のある元素であり、また、焼入れ性の改善にも寄与する。しかし、0.50質量%未満の含有では効果が不十分となる。また、過度の含有は窒素の拡散速度の低下につながり、十分な窒化深さを得ることが難しくなるので、上限を1.50質量%とする。
(5)N:0.0050質量%以上0.025質量%以下
母材中に元から含有されているNは、窒化処理前の段階でTiと結合してTiNを形成し、母材のマトリックス中に介在物となって存在する。母材中の窒素含有量が過剰になると、疲労破壊等の基点となりうる粗大なTiN介在物がマトリックス中に多量に形成され、高面圧が負荷された環境で継続使用された場合の母材の耐久性低下を招くので、N含有量の上限値を0.025質量%以下に制限する。なお、母材中のNはできるだけ低減することが好ましいが、材料コストとの兼ね合いから、N含有量の下限値は0.0050質量%とする。
母材中に元から含有されているNは、窒化処理前の段階でTiと結合してTiNを形成し、母材のマトリックス中に介在物となって存在する。母材中の窒素含有量が過剰になると、疲労破壊等の基点となりうる粗大なTiN介在物がマトリックス中に多量に形成され、高面圧が負荷された環境で継続使用された場合の母材の耐久性低下を招くので、N含有量の上限値を0.025質量%以下に制限する。なお、母材中のNはできるだけ低減することが好ましいが、材料コストとの兼ね合いから、N含有量の下限値は0.0050質量%とする。
(6)Ti:0.60質量%以上1.55質量%以下
Tiは、窒化処理による窒化層形成のために必要な元素であり、Ti含有量が0.60質量%未満になると十分な窒化深さが得られないか、窒化層の硬さ不足を招く結果につながる。一方、Ti含有量が1.55質量%を超えると、鋼のマトリックスが脆化することにつながる。Ti有量は、より望ましくは0.8質量%以上1.2質量%以下とするのがよい。
Tiは、窒化処理による窒化層形成のために必要な元素であり、Ti含有量が0.60質量%未満になると十分な窒化深さが得られないか、窒化層の硬さ不足を招く結果につながる。一方、Ti含有量が1.55質量%を超えると、鋼のマトリックスが脆化することにつながる。Ti有量は、より望ましくは0.8質量%以上1.2質量%以下とするのがよい。
(7)有効Ti量(質量%):0.6≦WTi−4WC−3.4WN≦1.5
上下限の技術的意義は既に詳細に説明した通りである。該有効Ti量は、より望ましくは0.8質量%以上1.2質量%以下とするのがよい。
上下限の技術的意義は既に詳細に説明した通りである。該有効Ti量は、より望ましくは0.8質量%以上1.2質量%以下とするのがよい。
また、母材をなす鋼には、以下の成分をそれぞれ任意にさらに含有させることが可能である。
(8)Mo:0.010質量%以上0.50質量%以下
Moは母材マトリックスの強度向上と靭性の向上に効果がある。しかし、その含有量が0.010質量%未満では効果が顕著でなく、逆に0.50質量%を超えて含有させても効果が飽和し、材料コストの高騰を招く。
(8)Mo:0.010質量%以上0.50質量%以下
Moは母材マトリックスの強度向上と靭性の向上に効果がある。しかし、その含有量が0.010質量%未満では効果が顕著でなく、逆に0.50質量%を超えて含有させても効果が飽和し、材料コストの高騰を招く。
(9)V:0.01質量%以上0.50質量%以下
VはTi、Crと同様に窒化層の硬さ向上に寄与する。しかしながら、多量に含有させるとCrと同様に窒素の拡散が妨げられ、窒化深さを十分に確保できなくなる。
VはTi、Crと同様に窒化層の硬さ向上に寄与する。しかしながら、多量に含有させるとCrと同様に窒素の拡散が妨げられ、窒化深さを十分に確保できなくなる。
(10)Al:0.001質量%以上0.50質量%以下
Alは鋼の精錬時に脱酸のために必要な元素であるが、含有量が0.0010質量%未満ではその効果が不十分である。他方、0.50質量%を超えて含有させるとCrと同様に窒素の拡散が妨げられ、窒化深さを十分に確保できなくなる。また、アルミナ系介在物の形成量が増加して、鋼材製造時における割れや表面疵等が発生しやすくなる。Al含有量は、より望ましくは0.001質量%以上0.2質量%以下とするのがよい。
Alは鋼の精錬時に脱酸のために必要な元素であるが、含有量が0.0010質量%未満ではその効果が不十分である。他方、0.50質量%を超えて含有させるとCrと同様に窒素の拡散が妨げられ、窒化深さを十分に確保できなくなる。また、アルミナ系介在物の形成量が増加して、鋼材製造時における割れや表面疵等が発生しやすくなる。Al含有量は、より望ましくは0.001質量%以上0.2質量%以下とするのがよい。
(11)Cu:0.01質量%以上1.0質量%以下
Ni:0.01質量%以上1.0質量%以下
Cu及びNiの添加は芯部の硬さを向上させる観点で効果的である。ただし、いずれも0.01質量%未満では効果が顕著でなく、1.0質量%を超えると逆に効果が飽和し、コストアップ等の要因となる。Cu及びNiの各添加量は、より望ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下とするのがよい。
Ni:0.01質量%以上1.0質量%以下
Cu及びNiの添加は芯部の硬さを向上させる観点で効果的である。ただし、いずれも0.01質量%未満では効果が顕著でなく、1.0質量%を超えると逆に効果が飽和し、コストアップ等の要因となる。Cu及びNiの各添加量は、より望ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下とするのがよい。
(12)S:0.010質量%以上0.20質量%以下
Sは母材の被削性を向上させる。しかし、添加量が0.010質量%未満では効果に乏しく、0.010質量%を超えると硫化物系介在物が多量に形成され、高面圧負荷の環境において部品折損等の原因となる。
Sは母材の被削性を向上させる。しかし、添加量が0.010質量%未満では効果に乏しく、0.010質量%を超えると硫化物系介在物が多量に形成され、高面圧負荷の環境において部品折損等の原因となる。
以下、本発明の効果を確認するために行った試験について説明する。
まず、表1に示す化学組成を有する鋼を5kg高周波真空誘導炉にて溶製した。得られた鋼塊は、1200℃以上に加熱して直径22mmの丸棒に熱間鍛造して、試験用の素材とした。その後、各組成の丸棒を所定の大きさに切断後、図1に示す寸法(単位mm)の試験片形状に粗加工した。なお、試験片は、長手方向中央部に周方向の溝状のノッチを形成したものを、各組成について11本作成している。試験片は、まず、1000〜1200℃で30分保持した後、油冷および空冷することにより焼入れ処理した。そして、該焼入れ処理後に試験片表面を精密研磨加工し、次の2条件にて軟窒化処理を行なった。なお、軟窒化処理は、ガス軟窒化炉にてアンモニアガスを窒素源ガスとして用いる形で、次の2条件により実施した。
(1)窒化温度:650℃、窒化保持時間:2時間、油冷;
(2)窒化温度:700℃、窒化保持時間:2時間、油冷。
なお、比較例Uについては、(1)の条件の代わりに、
(3)窒化温度:580℃、窒化保持時間:2時間、油冷;
を使用し、(2)の条件の代わりに、
(4)窒化温度:800℃、窒化保持時間:2時間、油冷;
を使用した。
まず、表1に示す化学組成を有する鋼を5kg高周波真空誘導炉にて溶製した。得られた鋼塊は、1200℃以上に加熱して直径22mmの丸棒に熱間鍛造して、試験用の素材とした。その後、各組成の丸棒を所定の大きさに切断後、図1に示す寸法(単位mm)の試験片形状に粗加工した。なお、試験片は、長手方向中央部に周方向の溝状のノッチを形成したものを、各組成について11本作成している。試験片は、まず、1000〜1200℃で30分保持した後、油冷および空冷することにより焼入れ処理した。そして、該焼入れ処理後に試験片表面を精密研磨加工し、次の2条件にて軟窒化処理を行なった。なお、軟窒化処理は、ガス軟窒化炉にてアンモニアガスを窒素源ガスとして用いる形で、次の2条件により実施した。
(1)窒化温度:650℃、窒化保持時間:2時間、油冷;
(2)窒化温度:700℃、窒化保持時間:2時間、油冷。
なお、比較例Uについては、(1)の条件の代わりに、
(3)窒化温度:580℃、窒化保持時間:2時間、油冷;
を使用し、(2)の条件の代わりに、
(4)窒化温度:800℃、窒化保持時間:2時間、油冷;
を使用した。
得られた試験材に対して以下の評価を行った。
(1)窒化深さ
窒化処理後、試験片を長手方向中央にて軸と直交する断面にて切断し、その断面を研磨後、外周面から半径方向に窒素濃度をEPMAにより線分析し、その分析プロファイルにて、外周面位置から窒素濃度が芯部の窒素濃度と同じになる位置までの深さを窒化深さとして求めた。
(1)窒化深さ
窒化処理後、試験片を長手方向中央にて軸と直交する断面にて切断し、その断面を研磨後、外周面から半径方向に窒素濃度をEPMAにより線分析し、その分析プロファイルにて、外周面位置から窒素濃度が芯部の窒素濃度と同じになる位置までの深さを窒化深さとして求めた。
(2)窒化層の硬度
(1)の試料の断面にて、外周面から深さ0.05mm位置にてマイクロビッカース硬さ計により、荷重300gにてビッカース硬さを測定した。
(3)窒化層の亀裂(クラック)の有無
10本の試験片を中心軸線を含む断面にて切断して断面を研磨後、それぞれノッチ底位置にて光学顕微鏡(倍率100倍)により拡大観察し、窒化層にクラックが生じていないかどうかを確認した。
以上の結果を表2に示す。
(1)の試料の断面にて、外周面から深さ0.05mm位置にてマイクロビッカース硬さ計により、荷重300gにてビッカース硬さを測定した。
(3)窒化層の亀裂(クラック)の有無
10本の試験片を中心軸線を含む断面にて切断して断面を研磨後、それぞれノッチ底位置にて光学顕微鏡(倍率100倍)により拡大観察し、窒化層にクラックが生じていないかどうかを確認した。
以上の結果を表2に示す。
以上の結果によると、本発明品はいずれも十分な深さ及び硬さを有した窒化層が得られ、かつ、窒化層にクラックも生じていないことがわかる。
Claims (3)
- 部品母材を、
C:0.0050質量%以上0.20質量%以下、
Si:0.010質量%以上0.30質量%以下、
Mn:0.10質量%以上2.0質量%以下、
Cr:0.10質量%以上1.5質量%以下、
N:0.0050質量%以上0.025質量%以下、及び、
Ti:0.60質量%以上1.55質量%以下を含有し、残部Fe及び不純物元素からなり、かつ、Ti含有量をWTi(質量%)、C有量をWC(質量%)及びN有量をWN(質量%)として、
1.5≧WTi−4WC−3.4WN≧0.6
を充足する組成の鋼にて形成し、該部品母材の表面に600℃以上750℃以下の温度範囲にて窒化処理を実施することを特徴とする窒化部品の製造方法。 - 前記部品母材をなす鋼として、
Mo:0.010質量%以上0.50質量%以下、
V:0.01質量%以上0.50質量%以下、及び、
Al:0.0010質量%以上0.50質量%以下、のうち1種または2種をさらに含有するものが使用される請求項1記載の窒化部品の製造方法。 - 前記部品母材をなす鋼として、
Cu:0.01質量%以上1.0質量%以下、
Ni:0.01質量%以上1.0質量%以下、及び、
S:0.010質量%以上0.20質量%以下、のうち1種または2種をさらに含有するものが使用される請求項1又は請求項2に記載の窒化部品の製造方法。
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