JP2014074154A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の組成物は、〔A〕屈折率が1.520〜1.580の範囲にあるゴム質重合体の存在下、重合性不飽和単量体を重合して得られた、ゴム質重合体強化グラフト樹脂1〜50質量%、〔B〕ポリカーボネート樹脂40〜95質量%、〔C〕シアン化ビニル化合物に由来する構造単位cx及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位cyを含む重合体1〜55質量%を含み、重合体〔C〕は、単位cxを5%以上r1%以下で含む重合体C1と、単位cxをr1%を超えてr2%以下で含む重合体C2と、単位cxをr2%を超えて60%で含む重合体C3とからなり、r2−r1≧3であり、重合体C1、C2及びC3の含有割合は、5〜70%、10〜80%及び10〜80%である。
【選択図】なし
Description
また、特許文献2には、〔A〕屈折率が1.520〜1.580の範囲にあるゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(b)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)と上記ビニル系単量体(b)の(共)重合体(A2)との混合物、からなるゴム強化樹脂5〜60質量%と、〔B〕ポリカーボネート樹脂40〜95質量%とを含有する(但し、〔A〕及び〔B〕の合計を100質量%とする。)ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
本発明の目的は、ゴム質重合体強化グラフト樹脂と、芳香族ポリカーボネート樹脂とを必須成分とし、半透明であり、耐衝撃性、耐熱性及び流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物及び成形品を提供することにある。
1.〔A〕屈折率が1.520〜1.580の範囲にあるゴム質重合体の存在下、重合性不飽和単量体を重合して得られた、ゴム質重合体強化グラフト樹脂と、
〔B〕ポリカーボネート樹脂と、
〔C〕シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(cx)、及び、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(cy)を含む重合体と、
を含有し、半透明性を有する熱可塑性樹脂組成物において、
上記重合体〔C〕は、上記構造単位(cx)を、5質量%以上r1質量%以下で含む重合体(C−1)と、上記構造単位(cx)を、r1質量%を超えてr2質量%以下で含む重合体(C−2)と、上記構造単位(cx)を、r2質量%を超えて60質量%以下で含む重合体(C−3)とからなり、且つ、(r2−r1)≧3(質量%)であり、
上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜70質量%、10〜80質量%及び10〜80質量%であり、
上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕、上記ポリカーボネート樹脂〔B〕及び上記重合体〔C〕の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、1〜50質量%、40〜95質量%及び1〜55質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2.r2が15〜45質量%である上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.上記重合体〔C〕が、構造単位(cx)及び構造単位(cy)からなる共重合体であり、上記シアン化ビニル化合物及び上記芳香族ビニル化合物を、質量比で、5〜25:95〜75から25〜60:75〜40へ、又は、25〜60:75〜40から5〜25:95〜75へと、仕込み量を変化させつつ、重合して得られた重合体を含む上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.上記重合体〔C〕に含まれる上記構造単位(cx)の含有割合は、上記重合体〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とした場合に、15〜40質量%である上記1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕の形成に用いた上記重合性不飽和単量体がシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含み、上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕に含まれる、上記シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び上記芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜40質量%及び60〜95質量%である上記1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
6.r1が10〜30質量%であり、r2が20〜40質量%であり、
上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%である上記1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
7.上記ゴム質重合体が、スチレン・ブタジエン系共重合体である上記1乃至6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
8.上記スチレン・ブタジエン系共重合体を構成するスチレン単位の含有量が、すべての単量体単位の合計を100質量%とした場合に、10〜80質量%である上記7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
9.上記1乃至8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕を形成するゴム質重合体が、スチレン・ブタジエン系共重合体であり、このスチレン・ブタジエン系共重合体を構成するスチレン単位の含有量が所定の範囲にある場合には、特に、半透明性、耐衝撃性及び流動性に優れる。
従って、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む成形品は、半透明性、耐衝撃性及び耐熱性に優れ、光を透過させて装飾性を付与しやすく、例えば、自動車等の車両の内装部品に好適である。
尚、本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。また、「屈折率」は、プレス成形により厚さ100〜500μmのフィルムを作製し、アッベの屈折率計により25℃で測定した値であるが、共重合体の屈折率については、該共重合体を構成する構成単位の1種のみからなる単独重合体の25℃における、各単独重合体の屈折率の値を用い、共重合体を構成する構成単位の含有割合に応じた計算値(加重平均値)とすることができる。更に、「半透明性」とは、ASTM D1003に準ずる全光線透過率が、30〜80%であることを意味する。
尚、グラフト重合により得られたゴム強化樹脂は、通常、ゴム質重合体強化グラフト樹脂のほかに、ゴム質重合体にグラフトしていない(共)重合体(以下、「未グラフト重合体」という。)を含む。この未グラフト重合体の構成は、使用した重合性不飽和単量体の種類に依存し、通常、未グラフト重合体は、本発明の組成物において、成分〔C〕に含まれる。
尚、上記ゴム質重合体の屈折率は、通常、重合体の構成単位の種類及びその含有量により決定される。
尚、上記各共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。
スチレン単位の含有量は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜75質量%、更に好ましくは25〜65質量%である。スチレン単位の含有量が多すぎると、耐衝撃性が低下する傾向にある。一方、該含有量が少なすぎると、成形品が不透明となる傾向にある。
上記ゴム質重合体の体積平均粒子径は、好ましくは50〜2,000nm、より好ましくは100〜1,500nm、更に好ましくは120〜1,000nm、特に好ましくは150〜800nmである。該体積平均粒子径が上記範囲外の場合、耐衝撃性が十分でないことがある。尚、上記体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱法等により測定することができる。
エステル部が炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
また、エステル部がヒドロキシアルキル基を含む化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルにε−カプロラクトンを付加して得られた化合物等が挙げられる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
(1)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたグラフト樹脂
(2)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたグラフト樹脂
(3)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたグラフト樹脂
また、レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に供給することができる。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に供給することができる。
グラフト率(%)={(S−T)/T}×100
式中、Sは、グラフト重合により得られたゴム強化樹脂1グラムを、アセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合、アセトニトリルを使用)20mlに投入し、振とう機を用いて、振とう(温度25℃、2時間)した後、遠心分離機を用いて、遠心分離(温度5℃、回転数23,000rpm、1時間)し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは、ゴム強化樹脂1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
上記成分〔A〕におけるグラフト率を求める際に、遠心分離後に回収されたアセトン可溶分(又はアセトニトリル可溶分)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の還元粘度を測定することにより、固有粘度[η]が求められる。
本発明において、上記例示したグラフト樹脂の1種又は2種以上からなる成分〔A〕であって、このグラフト樹脂を構成するグラフト部における、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは5〜40質量%及び60〜95質量%、より好ましくは10〜38質量%及び62〜90質量%、更に好ましくは10〜35質量%及び65〜90質量%、より更に好ましくは18〜35質量%及び65〜82質量%、特に好ましくは23〜32質量%及び68〜77質量%のグラフト樹脂の1種又は2種以上を含む組成物を用いることにより、耐衝撃性及び耐熱性のバランスに優れた成形品を得ることができる。
上記構造単位(gx)及び(gy)の含有量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル等により求める方法、更には、グラフト樹脂をオゾン分解した後、CHN元素分析、液体クロマトグラフ分析等に供する方法等により得ることができる。
また、上記成分〔B〕のMFR(温度240℃、荷重98N)は、好ましくは1〜70g/10分、より好ましくは2.5〜50g/10分、更に好ましくは4〜30g/10分である。
上記成分〔C〕に含まれる構造単位(cx)の含有量は、上記成分〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは15〜40質量%、より好ましくは18〜37質量%、更に好ましくは21〜35質量%である。上記構造単位(cx)の含有量が15〜40質量%であると、組成物の成形加工性(流動性)に優れ、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
上記成分〔C〕に含まれる構造単位(cy)の含有量は、上記成分〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは60〜85質量%、より好ましくは63〜82質量%、更に好ましくは65〜79質量%である。上記構造単位(cy)の含有量が60〜85質量%であると、組成物の成形加工性(流動性)に優れ、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
上記成分〔C〕が、構造単位(cz)を含む場合、その含有量の上限は、上記成分〔C〕を構成する構造単位の合計、即ち、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)の合計を100質量%とすると、好ましくは30質量%、より好ましくは15質量%である。
尚、この構造単位(cz)は、重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)のすべてに含まれてよいし、一部に含まれてもよい。
上記成分〔C〕が、上記構成を有する重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)からなることにより、成分〔A〕及び〔B〕のあいだの相溶性の向上効果が高く、耐熱性及び耐衝撃性のバランスに優れた成形品を効率よく製造することができる。特に、構造単位(cx)の含有割合が、上記のように、好ましくは15〜40質量%の範囲にある共重合体の集合体からなる成分〔C〕を用いると、上記効果が顕著である。
r1は、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜30質量%、更に好ましくは17〜28質量%、特に好ましくは22〜27質量%である。構造単位(cx)の含有量が5質量%以上r1質量%以下である共重合体を2種以上含む場合、「重合体(C−1)に含まれる構造単位(cx)の含有量」として示す値は、各共重合体に含まれる構造単位(cx)の含有量から算出された平均値である。
上記重合体(C−2)は、構造単位(cx)を、r1質量%を超えてr2質量%以下で含む、構造単位(cx)及び(cy)を含む共重合体であり、上記のように、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であってよいし、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体であってもよい。また、上記のように、この重合体(C−2)は、構造単位(cx)の所定量を含む共重合体の少なくとも1種からなるものとすることができる。例えば、2種の共重合体からなる場合であって、r1<r21<r22≦r2とした場合、構造単位(cx)をr21質量%含む共重合体と、構造単位(cx)をr22質量%含む共重合体と、からなる重合体(C−2)を用いることができる。
r2は、好ましくは15〜45質量%、より好ましくは20〜42質量%、更に好ましくは22〜40質量%、より更に好ましくは25〜35質量%、特に好ましくは27〜33質量%である。構造単位(cx)の含有量がr1質量%を超えてr2質量%以下である共重合体を2種以上含む場合、「重合体(C−2)に含まれる構造単位(cx)の含有量」として示す値は、各共重合体に含まれる構造単位(cx)の含有量から算出された平均値である。
本発明において、r2が15〜45質量%であると、本発明の組成物において、特に、成分〔A〕と、重合体(C−2)との相溶性が向上し、更に、成分〔B〕と、重合体(C−1)及び(C−3)との相溶性も向上するため、結果として、成分〔A〕及び〔B〕のあいだの相溶性に優れたものとなり、得られる成形品において、耐衝撃性及び耐熱性のバランスが優れる。
また、本発明において、耐熱性及び耐衝撃性のバランスの効果が顕著となるr1及びr2の関係は、(r2−r1)≧3(質量%)であり、好ましくは(r2−r1)≧4(質量%)、より好ましくは(r2−r1)≧4.5(質量%)である。但し、通常、(r2−r1)≦10(質量%)、好ましくは(r2−r1)≦9(質量%)、更に好ましくは(r2−r1)≦7(質量%)である。(r2−r1)<3(質量%)では、本発明の効果が十分に得られない。
上記重合体(C−3)は、構造単位(cx)を、r2質量%を超えて60質量%以下で含む共重合体であり、上記のように、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であってよいし、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体であってもよい。また、上記のように、この重合体(C−3)は、構造単位(cx)の所定量を含む共重合体の少なくとも1種からなるものとすることができる。例えば、2種の共重合体からなる場合であって、r2<r31<r32≦60とした場合、構造単位(cx)をr31質量%含む共重合体と、構造単位(cx)をr32質量%含む共重合体と、からなる重合体(C−3)を用いることができる。
構造単位(cx)の含有量がr2質量%を超えて60質量%以下である共重合体を2種以上含む場合、「重合体(C−3)に含まれる構造単位(cx)の含有量」として示す値は、各共重合体に含まれる構造単位(cx)の含有量から算出された平均値である。
また、組成物の流動性、並びに、得られる成形品の耐熱性及び耐衝撃性のバランス、の効果が顕著となるのは、r1が10〜30質量%であり、r2が20〜40質量%であり、上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%、より好ましくは5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%、更に好ましくは7〜30質量%、25〜50質量%及び30〜60質量%、特に好ましくは10〜25質量%、30〜50質量%及び35〜60質量%である。
上記重合体(C−2)は、好ましくは、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であり、この共重合体は、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体と併用してもよい。構造単位(cz)を形成する単量体としては、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系化合物、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
また、上記重合体(C−3)は、好ましくは、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であり、この共重合体は、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体と併用してもよい。構造単位(cz)を形成する単量体としては、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系化合物、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
尚、上記成分〔A〕の形成に用いたゴム強化樹脂に含まれる未グラフト重合体が、重合体(C−1)、(C−2)又は(C−3)に含まれる場合があるので、この未グラフト重合体を、適宜、利用することができる。
他の重合体としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物が、他の重合体(他の樹脂)を含有する場合、その含有量の上限は、上記成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計100質量部に対して、好ましくは30質量部、より好ましくは20質量部である。
硫黄系化合物としては、3,3’−チオビスプロピオン酸ジステアリルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジミリスチルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジラウリルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステル、ペンタエリスリチル・テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
ラクトン系化合物としては、5,7−ジ−tert−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等が挙げられる。
また、反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
低分子型帯電防止剤としては、アニオン系帯電防止剤;カチオン系帯電防止剤;非イオン系帯電防止剤;両性系帯電防止剤;錯化合物;アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体等が挙げられる。
また、高分子型帯電防止剤としては、分子内にスルホン酸塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ベタイン等が挙げられる。更に、ポリエーテル、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等を用いることもできる。
好ましい製造方法は、押出機を用いる方法であり、二軸押出機を用いることが特に好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物のMFR(ASTM D1238、温度240℃、荷重98N)は、好ましくは3〜60(g/10分)、より好ましくは5〜45(g/10分)、更に好ましくは10〜35(g/10分)である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の全光線透過率(ASTM D1003)は、30〜80%であり、より好ましくは40〜75%、更に好ましくは45〜70%、特に好ましくは50〜70%であり、半透明性に優れる。該全光線透過率が30%未満では、実質、不透明であるため、半透明性を生かした装飾性の高い成形品とすることが困難である。
また、ヘイズ(ASTM D1003)は、好ましくは70〜100%、より好ましくは80〜97%、更に好ましくは85〜93%であり、半透明性に優れる。
射出成形では、公知の成形法のほか、ガスアシスト成形、インモールド成形、二色成形、サーモエジェクト成形、サンドイッチ成形等により、成形品を得ることができる。
シート押出成形では、平滑シート、表面にエンボス模様等を有するシート等を得ることができる。
真空成形では、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシスト・リバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、エアクッション成形、プラグアシスト・エアスリップ成形、フリー成形、マッチドモールド成形、プラグリング成形、スリップ成形、接触加熱成形等により、成形品を得ることができる。
成形品とする場合には、通常、本発明の組成物を200℃〜280℃、好ましくは210℃〜270℃に加熱して溶融物を調製した後、加工される。
本発明の成形品は、目的、用途等に応じて、任意の位置に、貫通孔、溝、凹部、凸部等を備えてもよい。
また、各種成形品には、用途等に応じて、塗装、スパッタリング、溶着等の二次加工を施してもよい。
下記の実施例及び比較例における、各評価項目の測定方法を以下に示す。
(1)体積平均粒子径
ゴム質重合体強化グラフト樹脂の調製に用いたラテックス中の分散粒子(ゴム質重合体)の体積平均粒子径を、レーザー粒径解析装置(型式「LPA−3100」、大塚電子社製)により、光散乱法で測定し、70回積算でキュムラント法により算出した。尚、熱可塑性樹脂組成物を製造後、該組成物に含まれるゴム質重合体強化グラフト樹脂の数平均粒子径は、グラフト重合前のゴム質重合体の体積平均粒子径とほぼ同じであることを透過型電子顕微鏡で確認した。
(2)グラフト率
本文中に記載した。
(3)固有粘度[η]
原料〔P〕に含まれるアセトン可溶分、及び、原料〔R〕について、それぞれ、メチルエチルケトンに溶解し、30℃における固有粘度[η]を、ウベローデ型粘度計を用いて測定した。
ASTM D1238に準じ、温度240℃及び荷重98Nでメルトフローレート(MFR)を測定した。
(5)アイゾット衝撃強度
ASTM D256に準じて測定した。試験片の大きさは、2.5×1/2×1/4インチであり、ノッチ付きである。
(6)全光線透過率
ASTM D1003に準じて測定した。試験片の厚さは、2.5mmである。
(7)熱変形温度
ASTM D648に準じ、荷重18.56kg/cm2で熱変形温度(HDT)を測定した。試験片の厚さは、1/2インチである。
(8)ヘイズ
ASTM D1003に準じて測定した。試験片の厚さは、2.5mmである。
熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料(樹脂成分及び重合体成分)は、以下の通りである。
2−1.原料〔P〕
この原料〔P〕は、下記の合成例1〜6により得られたゴム強化芳香族ビニル系樹脂であり、ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕と、未グラフトの(共)重合体(重合体〔C〕を含む場合がある。)とからなる樹脂である。
攪拌装置を備えたガラス製フラスコに、ゴム質重合体として、体積平均粒子径が0.3μmであり且つスチレン単位量が10%のスチレン・ブタジエン共重合体(以下、スチレン・ブタジエン共重合体を「SBR」と表記する。)50部(固形分換算)と、スチレン7.5部と、アクリロニトリル2.5部と、不均化ロジン酸ナトリウム1.5部と、tert−ドデシルメルカプタン0.1部と、イオン交換水100部とを充填し、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート・2水和物0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部とを添加し、1時間反応を続けた。
その後、反応系に、イオン交換水50部、不均化ロジン酸ナトリウム1部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルヒドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル10部からなるインクレメント重合用成分を3時間にわたって連続的に添加し、攪拌しながら重合反応を続けた。該インクレメント重合用成分の全量を添加した後、更に攪拌を1時間続け、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂P1を含むラテックスを得た。
次いで、反応系に、老化防止剤としての2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加した。その後、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂P1を含むラテックスに、硫酸2部を添加して、凝固し、凝固物を十分に水洗した。その後、75℃で、24時間乾燥し、白色粉末のゴム強化芳香族ビニル系樹脂P1を得た(重合転化率は97%)。このゴム強化芳香族ビニル系樹脂P1に含まれるグラフト樹脂(成分〔A〕)におけるグラフト率は75%、グラフト部における、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100%とした場合に、26%及び74%であり、成分〔C〕に相当する未グラフトの(共)重合体(以下、「アセトン可溶分」という。)の含有率は12.5%であり、このアセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.50dl/gであった。
屈折率 = 1.591×0.1 + 1.515×0.9
= 1.523
ゴム質重合体として、表1に示す、体積平均粒子径及びスチレン単位量を有するスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂P2〜P5を得た(表1参照)。
ゴム質重合体として、表1に示す、体積平均粒子径を有するポリブタジエン(以下、ポリブタジエンを「BR」と表記する。)を用いた以外は、合成例1と同様にして、ゴム強化共重合樹脂P6を得た(表1参照)。
下記の市販品を用いた。
原料Q1として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX 7022PJ」(商品名)を用いた。粘度平均分子量(Mv)は、22,000であり、MFR(温度240℃、荷重98N)は、9g/10分である。
下記の合成例7〜11により得られた共重合体を用いた。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、反応系に、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、tert−ドデシルメルカプタン0.26部及び、スチレン73部及びアクリロニトリル27部を3時間かけて連続的に滴下し、重合を行った。滴下の終了と同時に重合を完結させ、ラテックス(L5−1)を得た。
一方、攪拌機を備えた別のガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、反応系に、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、tert−ドデシルメルカプタン0.26部、スチレン20部及びアクリロニトリル80部の混合物を3時間かけて滴下し、重合を行った。滴下の終了と同時に重合を完結させ、ラテックス(L5−2)を得た。
次に、上記で得られたラテックス(L5−1)及び(L5−2)を、重合体の含有割合(質量比)が50:50となるように混合した。そして、硫酸マグネシウム溶液を用いて、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R1として用いた。尚、この原料R1において、成分〔C〕に相当する重合体は、上記で得られたラテックス(L5−1)及び(L5−2)に含まれる重合体である。
この原料R1のアセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部、スチレン40部及びアクリロニトリル10部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R2を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R2として用いた。
この原料R2のアセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン41.5部及びアクリロニトリル8.5部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R3を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R3として用いた。
この原料R3のアセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.40dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル20部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R4を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R4として用いた。
この原料R4のアセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.49dl/gであった。
リボン翼を備えたジャケット付き重合用反応器を、2基連結した合成装置を用いた。各反応器内に、窒素ガスをパージした後、1基目の反応器に、スチレン75部、アクリロニトリル25部及びトルエン20部からなる混合物と、分子量調節剤であるtert−ドデシルメルカプタン0.15部をトルエン5部に溶解した溶液と、重合開始剤である1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部をトルエン5部に溶解した溶液とを連続的に供給し、110℃で重合を行った。供給した単量体等の平均滞留時間は2時間であり、2時間後の重合転化率は56%であった。
次いで、得られた重合体溶液を、1基目の反応器の外部に設けられたポンプにより、連続的に取り出して、2基目の反応器に供給した。連続的に取り出す量は、1基目の反応器に供給する量と同じである。尚、2基目の反応器においては、130℃で2時間重合を行い、2時間後の重合転化率は74%であった。
その後、2基目の反応器から、重合体溶液を回収し、これを、2軸3段ベント付き押出機に導入した。そして、直接、未反応単量体及びトルエン(重合用溶媒)を脱揮し、スチレン・アクリロニトリル共重合体を回収した。このスチレン・アクリロニトリル共重合体を、原料R5として用いた。
この原料R5の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
原料〔R〕10mgを、アセトニトリル・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比6:4)10mlに投入し、振とう機により、25℃で2〜3時間、振とうを行った。その後、不溶分(夾雑物)を除去し、可溶分を液体クロマトグラフィーに供した。装置は、東ソー社製スーパーシステムコントローラ「SC8020」(型式名)であり、カラムとして、東ソー社製「TSK Silica−60」(商品名)を用いた。n−ヘプタン・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比7:3)からアセトニトリル・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比6:4)へ勾配をかけた移動相により、試料を展開し、UV検出器で波長260nmの吸収値から組成の分布を測定した。カラム温度は35℃である。尚、試料中の重合体組成及び分布の決定は、予め、種類及び含有量が既知の構造単位を含む、スチレン・アクリロニトリル共重合体を用いて検量線を作製しておき、それを利用した。
実施例1〜11及び比較例1〜7
原料〔P〕、〔Q〕及び〔R〕を、表3〜表7に記載の割合でヘンシェルミキサーに投入し、混合した。その後、二軸押出機(シリンダー設定温度:240℃)を用いて溶融混練し、ペレット(熱可塑性樹脂組成物)を得た。
次いで、ペレットを、除湿乾燥機を用いて十分に乾燥し、射出成形機(シリンダー設定温度:250℃、金型温度:60℃)を用いて評価用試験片を得た。この試験片を用いて、各種評価を行い、その結果を表3〜表7に示した。
尚、上記のように、原料〔P〕は、本発明に係る成分〔A〕と、成分〔C〕とからなる混合物であるので、原料〔P〕におけるグラフト率、アセトン可溶分の組成等を用いて、本発明の成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量に対する、成分〔C〕に相当する重合体の含有割合を算出し、その値を各表に示した。そして、この成分〔C〕は、重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)により構成されることから、r1=25及びr2=30を選択し、これらの合計を100%とした場合の各割合を下記の方法により分析した。また、成分〔C〕に含まれる構造単位(cx)の含有量、について各表に示した。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分〔C〕10mgを、アセトニトリル・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比6:4)10mlに投入し、振とう機により、25℃で2〜3時間、振とうを行った。その後、不溶分(夾雑物)を除去し、可溶分を液体クロマトグラフィーに供した。装置は、東ソー社製スーパーシステムコントローラ「SC8020」(型式名)であり、カラムとして、東ソー社製「TSK Silica−60」(商品名)を用いた。n−ヘプタン・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比7:3)からアセトニトリル・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比6:4)へ勾配をかけた移動相により、試料を展開し、UV検出器で波長260nmの吸収値から組成の分布を測定した。カラム温度は35℃である。尚、試料中の重合体組成及び分布の決定は、予め、種類及び含有量が既知の構造単位を含む、スチレン・アクリロニトリル共重合体を用いて検量線を作製しておき、それを利用した。
一方、実施例1〜11においては、半透明性、耐衝撃性、耐熱性及び流動性に優れていることが明らかである。
Claims (9)
- 〔A〕屈折率が1.520〜1.580の範囲にあるゴム質重合体の存在下、重合性不飽和単量体を重合して得られた、ゴム質重合体強化グラフト樹脂と、
〔B〕ポリカーボネート樹脂と、
〔C〕シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(cx)、及び、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(cy)を含む重合体と、
を含有し、半透明性を有する熱可塑性樹脂組成物において、
上記重合体〔C〕は、上記構造単位(cx)を、5質量%以上r1質量%以下で含む重合体(C−1)と、上記構造単位(cx)を、r1質量%を超えてr2質量%以下で含む重合体(C−2)と、上記構造単位(cx)を、r2質量%を超えて60質量%以下で含む重合体(C−3)とからなり、且つ、(r2−r1)≧3(質量%)であり、
上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜70質量%、10〜80質量%及び10〜80質量%であり、
上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕、上記ポリカーボネート樹脂〔B〕及び上記重合体〔C〕の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、1〜50質量%、40〜95質量%及び1〜55質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - r2が15〜45質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記重合体〔C〕が、構造単位(cx)及び構造単位(cy)からなる共重合体であり、上記シアン化ビニル化合物及び上記芳香族ビニル化合物を、質量比で、5〜25:95〜75から25〜60:75〜40へ、又は、25〜60:75〜40から5〜25:95〜75へと、仕込み量を変化させつつ、重合して得られた重合体を含む請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記重合体〔C〕に含まれる上記構造単位(cx)の含有割合は、上記重合体〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とした場合に、15〜40質量%である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕の形成に用いた上記重合性不飽和単量体がシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含み、上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕に含まれる、上記シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び上記芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜40質量%及び60〜95質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- r1が10〜30質量%であり、r2が20〜40質量%であり、
上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 上記ゴム質重合体が、スチレン・ブタジエン系共重合体である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記スチレン・ブタジエン系共重合体を構成するスチレン単位の含有量が、すべての単量体単位の合計を100質量%とした場合に、10〜80質量%である請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
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