JP2014074146A - 多孔性膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた電気的性能と優れた機械的強度を同時に実現することができ、更には両側の表面層が同じ気孔特性を有する多孔性膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 多孔性膜は、ポリエチレン樹脂を含んでなり、内部層には両側の表面層に比べて相対的に大きさが大きい気孔が分布されており、両側の表面層が実質的に同じ気孔特性を有している。多孔性膜の製造方法は、液相パラフィン系オイルと固相パラフィン系ワックスとの混合物を得る工程、この混合物をポリエチレン樹脂に添加し原料樹脂混合物を得る工程、この原料樹脂混合物を押出及び冷却する工程、原料樹脂混合物を延伸する工程、延伸した原料樹脂混合物を有機溶媒に浸漬し、オイルとワックス混合物を抽出する工程を含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリエチレン樹脂を主体とする多孔性膜およびその製造方法に関する。
最近、スマートフォンなど携帯用電子機器関連産業が急速に発展するに従い、代表的な二次電池であるリチウムイオン電池及びリチウムポリマー電池の需要が大幅に増加している。特に、石油価格の高い時代を迎え、ハイブリッド自動車やプラグイン(plug-in)自動車などの電気自動車の実用化に伴い、今後リチウム二次電池の需要は爆発的に増加するものと予想される。このような産業的な需要に従い、リチウム二次電池の軽量化、小型化及び高容量化が新しい技術的課題として要求されている。
隔離膜(separator)は、二次電池の性能を左右する主要構成要素として、陽極と陰極の間に挿入され、陰極と陽極が互いに接触する短絡現象を防止する機能をなす。また前記隔離膜には、限りなく多くの微細気孔(micro pores)が形成されており、前記気孔を通じてイオン物質が陽極と陰極の間を移動して放電と充電を繰り返す。
このような隔離膜は、主に化学的安定性と電気的特性が優れたポリオレフィン系樹脂からなり、イオン物質の通路の役割をする前記気孔の大きさや分布率及び配向構造に従って、隔離膜の性能、即ち機械的強度及び電気的性能が異なる。従って、従来でも隔離膜の気孔構造に対する技術が多様に開発されてきた。
例えば、韓国特許第373204号(登録日;2003年02月10日)には、両側表面には活性層(active
layer)が存在し、その内部には支持層(support
layer)が存在する形態に構成されていて、20,000秒/100cc以下の通気度を有する高分子電解質用多成分系複合隔離膜が紹介されている。
そして、韓国特許第577731号(登録日2006年05月01日)には、ポリオレフィン系樹脂を主材料として使用するが、両側表面に一定厚さの非晶質層(amorphous layer)を形成させ、その内部には結晶質層(crystal layer)を形成するが、前記非晶質層の気孔の大きさは1μm以下で、内部結晶質層の気孔の大きさは5μm以下であり、全体気孔率が50%以上であることを特徴とする二次電池用微多孔隔離膜が紹介されている。
また、韓国特許第776029号(登録日2007年11月06日)には、陰極側表面には大きさが80nm〜2μmである気孔の分布比率が90〜97%、大きさが80nm未満である気孔の分布比率が3〜10%で、陽極側の表面には大きさが30nm〜1μmである気孔の分布比率が90〜97%、大きさが30nm未満である気孔の分布比率が3〜10%であることを特徴とする二次電池用ポリオレフィン系隔離膜が紹介されている。
韓国特許第577731号 韓国特許第776029号
しかし、前記のような隔離膜は、その製造過程においてティ-ダイ(T-die)を通じて押出されたシートを冷却する為にキャストロール(casting roll)とニップロール(nip roll)の間を通過させるようになるが、このとき前記キャストロールとニップロールはその半径が互いに異なるので、前記シートの両側の表面に各々接触する前記二つのロールの冷却効果が同一ではない。
このように従来の隔離膜は、製造過程において両側の表面層の冷却速度に微細な差異が発生するようになり、それによって両側の表面層の気孔特性、即ち気孔の大きさ及び分布を制御することが容易ではない問題点がある。また、隔離膜の気孔率を向上させるために分子量が低い原料樹脂を使用すると、イオン透過率が上昇して電気的性能は向上するが、引張強度などの機械的強度が低下する問題点がある。
本発明の目的は、優れた電気的性能と優れた機械的強度を同時に実現することができ、更には両側の表面層が同じ気孔特性を有する多孔性膜及びその製造方法を提供することにある。
1.多孔性膜
1.1 第1の多孔性膜
本発明の一又はそれ以上の実施形態にかかる多孔性膜は、ポリエチレン樹脂を含んでなり、前記ポリエチレン樹脂の繊維質が多層状に積み重なるようにして構成され、微細気孔が水平方向に伸びるように形成されており、
内部層の水平面における前記微細気孔の平均孔径(α1)は、表面層の水平面における前記微細気孔の平均孔径(β1)よりも大きい。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記平均孔径(β1)に対する前記平均孔径(α1)の比(α1)/(β1)は、1.5以上であることができる。
1.2 第2の多孔性膜
本発明の一又はそれ以上の実施形態にかかる多孔性膜は、
ポリエチレン樹脂を含んでなり、前記ポリエチレン樹脂の繊維質が多層状に積み重なるようにして構成され、微細気孔が水平方向に伸びるように形成されており、
内部層の水平面における前記微細気孔の占める面積割合(α2)は、表面層の水平面における前記微細気孔の面積割合(β2)よりも大きい。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、
前記面積割合(β2)に対する前記面積割合(α2)の比(α2)/(β2)は、1.5以上であることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、
各微細気孔が水平方向に伸びて繊維質多孔性基材間に多層配向された構造を有し、両側の表面層(skin layer)には表面層の全体気孔中において大きさが0.01〜0.3μmである気孔が50〜97%の分布率で存在し、内部層(core layer)には内部層の全体気孔中において大きさが0.3〜1μmである気孔が50〜97%の分布率で存在していてもよい。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記表面層(skin layer)は、両側の表面層が互いに実質的に同じ気孔特性を有することができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記多孔性膜の一面または両面に、無機充填材又は有機充填材と有機結合材とを含むスラリーが塗布されていることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記スラリーは、水溶性高分子0.1〜30重量%と、乳化重合法(emulsion polymerization)または懸濁重合法(suspension polymerization)により製造された非水溶性の粒子状高分子1〜40重量%と、無機充填材(inorganic filler)1〜50重量%と、水20〜70重量%とを含むことができる。
本発明において、前記水溶性高分子は、メチルセルロースとカルボキシメチルセルロース及びそれらの塩、そして会合型ポリウレタン系及びアルカリ膨潤性アクリル系樹脂の中から選択された何れか1つ以上であることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記粒子状高分子は、アクリル系共重合体、メタアクリル系共重合体、(メタ)アクリル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル−アクリロニトリル共重合体、シリコン−アクリル系共重合体、エポキシ−アクリル系共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロック共重合体の中から選択された何れか1つ以上であることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記粒子状高分子は、粒度が0.01〜1μmとすることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記無機充填材は、CaCO3, Al2O3, SiO2, BaTiO3, TiO2, Talc(滑石), Al(OH)3, AlOOHの中から選択された何れか1つ以上で、直径が0.1〜2μmとすることができる。
2.多孔性膜の製造方法
本発明の一又はそれ以上の実施形態にかかる多孔性膜の製造方法は、
ポリエチレン樹脂100重量部に対して、重量平均分子量が100〜5000である固相パラフィン系ワックス10〜90重量部と重量平均分子量が300〜1500である液相パラフィン系オイル10〜90重量部を含む原料樹脂混合物を製造する工程(A)と、
前記原料樹脂混合物を押出及び冷却する工程(B)と、
前記工程(B)において押出された原料樹脂混合物を延伸する工程(C)と、
前記工程(C)において延伸された原料樹脂混合物を有機溶媒に浸漬して、前記固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルを抽出する工程(D)とを含んでなることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、
前記工程(D)の後に、前記多孔性膜の一面又は両面に、無機充填材又は有機充填材と有機結合材とを含むスラリーを塗布する工程(E)を含むことができる。
本発明の多孔性膜の製造方法は、
a) 溶融指数が0.01〜0.6g/10分で重量平均分子量が300,000以上500,000未満であるポリエチレン樹脂100重量部に対して、気孔形成添加剤として重量平均分子量が100〜5000である固相(solid type)パラフィン系ワックス10〜90重量部と、重量平均分子量が300〜1500である液相(liquid type)パラフィン系オイル10〜90重量部、そして酸化防止剤6〜10重量部を含む原料樹脂混合物を製造する段階と、
b) 前記原料樹脂混合物を押出用スクリュー内に混入して180〜250℃の温度で溶融し、厚さが1000〜6000μmであるゲル状シートを押出して、前記ゲル状シートを表面温度が30〜60℃に調節されるキャストロール(casting roll)とニップロール(nip roll) の間に通過させるが、前記ニップロールは中央部位の直径(D1)が両側端部の直径(D2)より小さく、その表面に軸方向に円弧形状の逆勾配が形成されたものを使用して、前記ゲル状シートを冷却させる段階と、
c) 冷却されたシートを、縦方向(machine direction)に、続いて横(transverse direction)方向に各々約5〜15倍ずつ逐次延伸し、厚さが6〜50μmの延伸フィルムを製造する段階と、
d) 前記延伸フィルムを、抽出溶媒に浸漬して前記気孔形成添加剤を除去した後、110〜150℃の温度で熱固定する段階とを含んでなることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記固相(solid type)パラフィン系ワックスと液相(liquid type)パラフィン系オイルの使用量は1:0.8 〜1.2であることができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記ニップロール(nip roll)は、軸方向に長さ(L)が800〜1000mmであり、その表面に逆勾配を形成する円弧の半径(R)が500,000〜2,000,000mmであるものを使用することができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記原料樹脂混合物は、先ず前記固相(solid type)パラフィン系ワックスと液相(liquid type)パラフィン系オイルとを混合した状態において、前記固相(solid type)パラフィン系ワックスおよび液相(liquid type)パラフィン系オイルを前記ポリエチレン樹脂に混合することができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態の多孔性膜の製造方法は、
A) 重量平均分子量が100〜5000の固相(solid type)パラフィン系ワックス10〜90重量部と重量平均分子量が300〜1,500の液相(liquid type)パラフィン系オイル10〜90重量部とを、80〜100℃の温度において溶融混合してパラフィンワックス混合物を製造する段階と、
B) 高温状態の前記パラフィンワックス混合物を、重量平均分子量が300,000以上500,000未満であるポリエチレン樹脂100重量部と一緒に押出用スクリュー内に投入して180〜250℃の温度において溶融混練した後、この混合物を押出及び冷却してゲル状シートを製造し、前記ゲル状シートを二軸延伸した後に有機溶媒に浸漬して多孔性基材を製造する段階と、
C) 水溶性高分子0.1〜30重量%と、乳化重合法(emulsion
polymerization) または懸濁重合法(suspension
polymerization)により製造された非水溶性の粒子状高分子1〜40重量%と、無機充填材1〜50重量%と、水20〜70重量%とを混合して、水分散セラミックスラリーを製造する段階と、
D) 前記多孔性基材の一面または両面に、前記水分散セラミックスラリーを1〜5μmの厚さで塗布してセラミックコーティング層を形成する段階とを含むことができる。
本発明において、前記B)段階において前記ゲル状シートを冷却するために、表面温度が30〜60℃に調節されるキャストロール(casting roll)とニップロール(nip roll)の間に通過させるが、前記ニップロールの外面には、長さ方向に外接する円の半径が500,000〜2,000,000mmである逆勾配が形成されたロールを使用することができる。
本発明の一又はそれ以上の実施形態において、前記セラミックコーティング多孔性膜は、厚さ10〜30μm、気孔率30〜50%、通気度100〜400sec/100ml、引張強度1,000〜3,000kgf/cm2、150℃において1時間暴露時の 縦(machine direction)及び横(transverse direction)方向の熱収縮率が各々5%未満であることができる。
本発明の一実施例に係る多孔性膜の断面の状態を撮影した走査電子顕微鏡写真である。 本発明の一実施例に係る多孔性膜の両側の表面層(A、C)及び内部層(B)の表面の状態を撮影した走査電子顕微鏡写真である。 本発明の別の実施例に係る多孔性膜の両側の表面層(A、C)及び内部層(B)の表面の状態を撮影した走査電子顕微鏡写真である。 本発明の別の実施例に係る多孔性膜の両側の表面層(A、C)及び内部層(B)の表面の状態を撮影した走査電子顕微鏡写真である。 本発明の別の実施例に係る多孔性膜の両側の表面層(A、C)及び内部層(B)の表面の状態を撮影した走査電子顕微鏡写真である。 ゲル状シートを冷却するのに使用されるニップロール(nip roll)の構造を示す図面である。 本発明に係るセラミックコーティング多孔性膜の断面構造を5,500倍に拡大撮影した走査電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の一又はそれ以上の実施形態を詳細に説明する。但し、本発明を説明するのに使用された各用語は、本発明の目的のために特別に定義された概念として使用されることができる。
本実施の形態においては、多孔性隔離膜を例にとり多孔性膜を説明する。
1.第1の実施の形態
本実施の形態に係る多孔性膜を多孔性膜として適用した例を説明する。多孔性膜は、ポリエチレン樹脂からなることができる。ポリエチレンの樹脂の平均分子量は特に限定されないが、たとえば、重量平均分子量が300,000以上500,000未満のポリエチレン樹脂からなることが好ましい。この時、重量平均分子量が300,000未満であるポリエチレン樹脂を使用すると、多孔性膜の延伸性は向上するが、機械的強度が弱くなる問題があり、反対に重量平均分子量が500,000以上であるポリエチレン樹脂を使用すると、多孔性膜の機械的強度は向上するが、延伸性及び混練性が落ちて生産性が低下し、気孔の大きさを制御することが容易ではない問題がある。
参考として、従来の二次電池用隔離膜は、生産性と気孔特性は不良であるが、望ましい機械的強度を維持するために重量平均分子量が500,000以上、望ましくは1,000,000以上であるポリオレフィン系樹脂を主に使用している。
多孔性膜は、ポリエチレン樹脂の繊維質が多層状に積み重なるようにして構成され、微細気孔が水平方向に伸びるように形成されており、微細気孔の水平方向の平均孔径は、表面部より中央部の方が大きくなっている。具体的には、多孔性膜は、構造的に各微細気孔が水平方向に成長して繊維質多孔性基材の間に多層配向された構造を有し、両側の表面層(skin layer)には表面層の全体気孔の中において大きさが0.01〜0.3μmである気孔が50〜97%の分布率で存在し、内部層(core layer)には内部層の全体気孔の中において大きさが0.3〜1μmである気孔が50〜97%の分布率で存在している。多孔性膜は、微細気孔が多層配向された断面構造を持つ。添付した図1は、本発明の一実施例に係る多孔性膜の断面の状態を20,000倍に拡大撮影した走査電子顕微鏡(SEM;scanning
electron microscope)写真であって、微細な繊維組織が図1の横方向に並んで配置されていて、その間に数多くの各微細気孔が層に配向されており、特に多孔性膜の両側の表面層(図1の上端及び下端部位)に配置された気孔に比べて多孔性膜の内部層(図1の中間部位)に配置された気孔の大きさがより大きいことを肉眼で確認することができる。
内部層の水平面における微細気孔の平均孔径(α1)は、表面層の水平面における微細気孔の平均孔径(β1)よりも大きく、具体的には、平均孔径(β1)に対する平均孔径(α1)の比(α1)/(β1)は、1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.0〜5.0である。一方の前記表面層の平均孔径(β1b)に対する他方の前記表面層の平均孔径(β1a)の比(β1a)/(β1b)は、たとえば、1.2以下、好ましくは1.2〜0.83、より好ましくは1.1〜0.9とすることができる。
内部層の水平面における前記微細気孔の占める面積割合(α2)は、表面層の水平面における前記微細気孔の面積割合(β2)よりも大きく、前記面積割合(β2)に対する前記面積割合(α2)の比(α2)/(β2)は、1.5以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.0〜10.0である。一方の前記表面層の水平面における前記微細気孔の面積割合(β2b)に対する他方の前記表面層の水平面における前記微細気孔の面積割合(β2a)の比(β2a)/(β2b)は、たとえば、1.2以下、好ましくは1.2〜0.83、より好ましくは1.1〜0.9とすることができる。
多孔性膜は、このように多層配向された気孔構造を有することによって、従来の隔離膜に比べて重量平均分子量が遥かに小さいポリエチレン樹脂を使用しながらも、むしろ優れた機械的強度を維持することができ、通気性と直接的な関連があるオープンセル(open cell)の比率が高く形成される。ここでオープンセルというのは、各微細気孔が多孔性膜の厚さ方向に互いに連結されたものであって、このような各オープンセルを通じてイオン物質が陽極と陰極の間をよりスムーズに移動する。
一方、図2〜図5は、各々本発明の実施例によって製造された多孔性膜について、両側の表面層及び内部層を20,000倍に拡大撮影したSEM写真である。左側写真Aは、各々多孔性膜の上面状態を撮影した写真であり、右側写真Cは、各々多孔性膜の下面状態を撮影した写真であり、中央の写真Bは、多孔性膜から表面層を剥離(peeling)して内部層の状態を撮影した写真である。
前記図2〜図5を通じて、多孔性膜の両側の表面層(写真A及びC)には大きさが小さい気孔が分布されており、多孔性膜の内部層(写真B)には相対的に大きさが大きい気孔が分布しているのを確認することができる。同じ方法で、本発明の一実施例に係る多孔性膜に対して複数枚のSEM写真を撮影して表面層と内部層に分布された気孔の大きさを実測し、その分布度を算定した結果、両側の表面層は大きさが0.01μm〜0.3μmである気孔の分布率が50〜97%で、内部層は大きさが0.3〜1μmである気孔の分布率が50〜97%であり、両側の表面層の気孔大きさと分布が互いに同じ様相を見せることが確認された。
上記のSEM写真に基づき、内部層の水平面における微細気孔の平均孔径(α1)は、表面層の水平面における微細気孔の平均孔径(β1)よりも大きく、具体的には、平均孔径(β1)に対する平均孔径(α1)の比(α1)/(β1)は、1.5以上であることが確認された。また、内部層の水平面における前記微細気孔の占める面積割合(α2)は、表面層の水平面における前記微細気孔の面積割合(β2)よりも大きく、面積割合(β2)に対する面積割合(α2)の比(α2)/(β2)は、1.5以上であることが確認された。
また、多孔性膜の内部層(写真B)には、まるで葉脈又は紐のように太い纎維束が分布していることを見ることかできるが、このような各纎維束によって内部層に分布された気孔の大きさが拡大され、同時に従来の隔離膜に比べて重量平均分子量が遥かに小さいポリエチレン樹脂を使用しながらも、むしろ優れた機械的強度を維持することができるものと思われる。
前記図1及び図2のように、本実施の形態に係る多孔性基材の断面状態について複数枚の走査電子顕微鏡(SEM)の写真を撮影して、表面層と内部層の各々に分布した気孔の大きさを実測した後、その分布図を算定した結果、両側の表面層には大きさが0.01〜0.3μmである気孔の分布率が50〜97%であり、内部層には大きさが0.3〜1μmである気孔の分布率が50〜97%であり、両側の表面層の気孔の大きさと分布は互いに同じ様相を見せることが確認された。
以下、本実施の形態に係る多孔性膜の製造方法は、A)重量平均分子量がたとえば300,000以上500,000未満であるポリエチレン樹脂100重量部に対して、重量平均分子量が100〜5000、好ましくは100〜1000である固相パラフィン系ワックス10〜90重量部と重量平均分子量が300〜1500、好ましくは900〜1500である液相パラフィン系オイル10〜90重量部を含む原料樹脂混合物を製造する工程と; B)前記原料樹脂混合物を溶融及び押出する工程と; C)前記B)工程において押出された原料樹脂混合物を延伸する工程と; D)前記C)工程において延伸された原料樹脂混合物を有機溶媒に浸漬し、前記固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルとを抽出する工程を含んでなる。以下、各工程を詳細に説明する。
A)原料樹脂混合物の混合工程
先ず、溶融指数が0.01〜0.6g/10分で、重量平均分子量がたとえば300,000以上500,000未満であるポリエチレン樹脂100重量部に対して、気孔形成添加剤として重量平均分子量が100〜5000である固相(solid type)パラフィン系ワックス10〜90重量部と、重量平均分子量が300〜1500である液相(liquid type)パラフィン系オイル10〜90重量部、そして酸化防止剤6〜10重量部を含む原料樹脂混合物を製造する。
具体的には、原料樹脂混合物を次のように製造する。
重量平均分子量が100〜5000、好ましくは100〜1000である固相パラフィン系ワックス10〜90重量部と、重量平均分子量が300〜1,500、好ましくは900〜1500である液相パラフィン系オイル10〜90重量部とを混合して、80〜100℃の温度において溶融混合したパラフィン系ワックス混合物を予め製造する。
つまり、前記原料樹脂混合物は、先ず固相パラフィン系ワックスを加温して溶解した後、ここに液相パラフィン系オイルを混合して気孔形成添加剤を製造する。このようにすると前記気孔形成添加剤はゲル状態を維持するようになるが、このようなゲル状態の気孔形成添加剤をポリエチレン樹脂及び酸化防止剤とに対して混合することが望ましい。前記固相パラフィン系ワックス及び液相パラフィン系オイルの混合物は、気孔形成添加剤として以後にポリエチレン樹脂及び加工添加剤と一緒に溶融混練して加工されることにより、後に多孔性基材の内部に多層配向された気孔構造を形成する機能をする。このように固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルとを一緒に気孔形成添加剤として使用すると、後のゲル状シートの逐次延伸倍率を遙かに大きくすることができ、延伸倍率が高いほど分子配向度及び結晶化度が高くなって多孔性基材の物理的強度が上昇する。従って、多孔性基材の引張強度と突刺強度を向上させることができ、更に多孔性膜の薄膜化を図ることができる。
次に、固相パラフィンワックス及び液相パラフィン系オイルの混合物と、ポリエチレン樹脂及び酸化防止剤とを混合し、原料樹脂混合物を製造する。
この時、溶融指数が0.01g/10分未満のポリエチレン樹脂を使用すると、流動性が低くて気孔形成添加剤との混合がよくならず、延伸過程において厚さが均一なシートを得ることが難しい問題がある。また、溶融指数が0.6g/10分以上のポリエチレン樹脂を使用すると、流動性がとても高くてシート押出段階において前記樹脂が流れ落ちるおそれがあり、完成した多孔性膜の機械的強度が低くなる問題がある。
そして、前記気孔形成添加剤において固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルの比率は1:0.8〜1.2、望ましくは1:1の比率であることが良い。そして、前記固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルの使用量が、各々10重量部未満であると、多孔性膜の気孔率が低くなって二次電池の充電能力が不良になるおそれがあり、反対に90重量部以上であると、シート押出過程において前記ポリエチレン樹脂と気孔形成添加剤の間において相分離が発生し、シートの破断現象が発生することがある。
パラフィン系オイルとしてはワックスを使用するのが望ましい。固相パラフィン系ワックスは、特に、軽油などの油から抽出分離された蝋を溶剤脱油、化学処理および白土処理を施して得ることができる。液相パラフィン系オイルは、軽油などの油から抽出分離された液体油を精製、脱水および脱臭を施して得ることができる。
前記酸化防止剤としては通常的な酸化防止剤を使用することができるが、特にリン酸塩系の添加剤、例えば亜リン酸エステル(phosphite ester)を使用することができる。
本実施の形態においては、前記酸化防止剤以外にも必要によって紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、無機充填材などの各種添加剤を添加することができる。
B)原料樹脂混合物の押出及び冷却工程
次に、前記原料樹脂混合物を押出用スクリュー内に混入して、180〜250℃の温度で溶融して充分に混合した後、前記原料樹脂混合物をティ-ダイ(T-die)を通じて押出して、厚さが1000〜6000μmであるゲル状シートを製造する。
続いて、前記ゲル状シートを、表面温度が30〜60℃に調節されるキャストロール(casting roll)とニップロール(nip roll)の間に通過させる。このようにすると、前記キャストロール及びニップロールと直接接触するシート表面層は相対的に早く冷却されて固体化し、シート内部層はシート表面層に比べて遅く冷却されて固体化する。この時、前記気孔形成添加剤も、ポリエチレン樹脂と共に固体化されながら早く冷却する表面層においては相対的に体積が小さい粒子を形成し、徐々に冷却する内部層においては相対的に体積が大きい粒子を形成するようになる。
前記キャストロールは、ニップロールに比べてその半径が1.4〜1.6倍程度大きくすることが考えられる。この場合、前記キャストロールとニップロールの間にゲル状シートを通過させると、ニップロールはキャストロールに比べてかなり速く回転することから両ロールのシート冷却能力が異なり、よってシートの両側の表面層に形成される気孔構造が互いに異なる問題点が発生する。
このような問題点を解消するため、前記ニップロールの表面に軸方向に「逆勾配」が形成されたものを使用する。ここで「逆勾配」というのは、図6のように、ニップロールの中央部位の直径(D1)が両端部の直径(D2)より小さく、これによりその外郭線が円弧形状となることをいう。この時、前記ニップロールは軸方向に長さ(L)が800〜1000mmであり、前記逆勾配を形成する円弧、即ち、軸方向に外接する円の半径(ニップロールの外面において長さ方向に外接する円の半径)(R)は500,000〜2,000,000mmであるのが望ましい。参考に図6では、理解を助けるためにニップロールの長さ(L)に比べて円弧の半径(R)を相対的に小さく表示したが、実際には前記半径(R)が遥かに大きいという点を理解しなければならない。
このように前記ニップロールの表面に逆勾配を形成すると、前記ニップロールの表面積がそれだけ広くなり、たとえキャストロールに比べて回転速度が速くてもキャストロールと同一の冷却能力を有するようになる。前記逆勾配を形成する円弧の半径(R)が500,000mm未満であると、中央部位直径(D1)と両端部の直径(D2)の差が大きすぎて、前記シートの中央部位と両端部の間の厚さの偏差が大きくなりすぎる問題があり、2,000,000mm以上であるとニップロールの冷却効果が不足する問題がある。
一方、前記キャストロールとニップロールの表面温度が30℃未満であると、前記気孔形成添加剤が急速に冷却されながら前記ロール表面に固着し、ゲル状シートの表面に凹凸が発生したり、厚さが均一なシートを得ることができなくなる。反対に60℃以上であると、前記気孔形成添加剤が固体化されず、気孔を形成し難く、キャストロール表面に液相パラフィン系オイルがついてシートとロールの間にすべり現象が発生して、シートを一定の比率で延伸させることができない問題が発生する。
C) シート延伸工程
次に、冷却したシートを、縦方向(machine
direction)に、続いて横方向(transverse
direction)に各々約5〜15倍ずつ逐次延伸して、厚さが6〜50μmであるフィルムを製造する。即ち、先に縦方向に5〜15倍ずつ延伸し、続いて横方向に再び5〜15倍延伸する。 このようにすると、前記ニップロールの逆勾配によって形成されていた厚さ偏差が解消され、全体的に均一な厚さ分布を有しながら同時に前記表面層及び内部層に分布されていた各気孔形成添加剤が層配列される多層配向構造を有するようになる。
一般的に多孔性膜製造時には、縦方向や横方向のうち一方向だけに延伸する一軸延伸を実施するか、または両方向に同時に延伸する同時二軸延伸を実施する。しかし、前記一軸延伸の場合、機械がシートを射出する方向、即ち縦方向だけに延伸しなければならないため生産性が落ちる。また、同時二軸延伸の場合、シートに加わる延伸力が減るため、高速または広幅延伸が困難な問題がある。
しかし本実施の形態では、縦方向に、続いて横方向に順次進行する逐次二軸延伸を実施することにより、生産性に優れ、高倍率延伸が可能で、後に多孔性膜内部の各微細気孔が多層構造に形成されて、優れた機械的強度を有するようになる。
D) 気孔形成添加剤抽出工程
最後に、延伸された前記シートを抽出溶媒に浸漬して気孔形成添加剤を除去することによって微細気孔を形成し、熱固定チャンバにおいて110〜150℃に熱固定して残留応力を除去する。この時、使用可能な有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素、フッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などを使用することができる。
熱固定温度が110℃未満であると、多孔性膜の耐熱性が低下する問題が発生し、反対に150℃以上であると、多孔性膜の破断などの問題が発生することがある。
本実施の形態に係る多孔性膜は、二次電池用隔離膜以外に、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオンカバーシートなどのような電子部品の隔離膜としても広く活用することができる。
本実施形態に係る多孔性膜は、従来の多孔性膜に比べて、同一条件において機械的強度が高く、同時に電気的抵抗が低くて電気的性能が優れた特性を有する。
従って、リチウムイオン電池及びリチウムポリマー電池のような二次電池の軽量化、小型化及び高容量化を実現することに大きく寄与するものと期待される。
また、固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルを一緒に使用することで、延伸倍率を大きくすることができ、その結果、強度に優れていながらも薄膜化が可能である。
2.第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る多孔性膜は、第1の実施の形態に係る多孔性膜に水分散形態のセラミックスラリーが塗布されているものである。本実施の形態に係る水分散形態のセラミックスラリーは、水溶性高分子0.1〜30重量%、非水溶性の粒子状高分子1〜40重量%、無機充填材(inorganic
filler)1〜50重量%、及び水20〜70重量%からなる。前記セラミックスラリーは、有機結合材として使用される水溶性高分子の一部が無機充填材の表面に吸着されて、残りの一部は水中に分散されて存在することにより、前記無機充填材を含む全ての各構成成分が安定的にエマルジョン(emulsion)状態を維持する。
従って、前記水溶性高分子の含量が0.1重量%未満であれば無機充填材の表面に吸着される量が少なくなって全体的に均一な分散性を維持し難く、更に均一なセラミックコーティング層が形成されない虞がある。反対に、30重量%を超過すると、前記水分散セラミックスラリーの粘度が高くなり過ぎ、前記各無機充填材が互いに吸着して架橋凝集が起こる虞があり、このようになるとコーティング層の塗膜表面の平滑度が低下して均一なセラミックコーティング層を得ることが難しい。
前記水溶性高分子としては、イオン性セルロース半合成系高分子としてメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの塩の中から選択された1つ以上を使用することができ、合成系高分子として会合型ポリウレタン系、アルカリ膨潤性アクリル系樹脂の中から選択された1つ以上を使用することができる。
次に、前記非水溶性粒子状高分子は、カルボキシル酸基、水酸基、スルホン酸基からなる群より選択される1種以上の親水性基を含有する粒子状高分子が水に均一に分散された有機結合材として、乳化重合法(emulsion polymerization)または懸濁重合法(suspension polymerization)により製造される。前記粒子状高分子は、親水性基を含有することにより、無機充填材の分散安定性及び無機充填材と多孔性基材に対するコーティング層の結着性を向上させる機能をもっている。
本実施の形態において、前記非水溶性粒子状高分子の含量が1重量%未満であれば前記のような機能を効果的に発揮することができず、反対に40重量%を超過するとセラミックコーティング層の多孔性が低下して二次電池の性能が低下することがある。前記粒子状高分子としては、アクリル系共重合体、メタアクリル系共重合体、(メタ)アクリル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル−アクリロニトリル共重合体、シリコン−アクリル系共重合体、エポキシ−アクリル系共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロック共重合体の中から選択された何れか1つ以上を使用することができる。
前記粒子状高分子の粒度は、0.01〜1.0μmであることが望ましいが、前記粒度が0.01μm以下であれば多孔性が低下してセラミックコーティング層の抵抗が大きくなって電池の性能が低下する虞があり、反対に1.0μm以上であれば無機充填材との接点が少なくなって各無機充填材同士または無機充填材とコーティング層との間の結着力が低下する問題がある。
次に、無機充填材は、セラミックコーティング多孔性膜の熱的安定性を改善する機能をするもので、その含量が1重量%未満であれば効果的な熱的安定性を期待することができず、反対に50重量%以上であればセラミックスラリーの内部において沈殿が発生する虞があり、充分な分散安定性を得ることができないばかりか、塗布時に均一なコーティング層を得ることができない。このとき、前記無機充填材は、無機物粒子の凝集を抑制してセラミックスラリーの流動性を最適化するため、BET比表面積の測定値が1.5〜150m2/gであることが望ましく、また粒径(体積平均のD50平均粒子直径)は、0.1〜2μmであることが望ましい。このとき、前記無機充填材の粒径が0.1μm未満であれば、分散性が悪くて均一な分布のコーティング層を形成することができなくなり、反対に2μmを超過すると、通気性が良くなり過ぎて電池の短絡現象を誘発する虞がある。
前記無機充填材としては、CaCO3,
Al2O3, SiO2, BaTiO3, TiO2,
Talc(滑石), Al(OH)3,
AlOOHの中から選択された何れか1つ以上を使用することができ、このような無機充填材は、分散安定性が優れており、前記セラミックスラリーを調製した時にも沈降現象が発生せず、長時間に亘って均一なスラリー状態を維持することが重要である。本発明者が様々な種類の無機物を対象に試験した結果、前記各無機充填材の中から酸化アルミニウム(Al2O3)が本発明の目的を達成するのに最適な結果を示した。
次に、水は、前記水溶性高分子と非水溶性粒子状高分子及び無機充填材を均一に分散させてくれる分散媒の機能をするもので、その含量が20重量%未満であれば、各構成成分に対する充分な水分散がなされず、塗布作業が困難であり、均一なコーティング層が形成されない問題がある。反対に、水の含量が70重量%以上であれば、セラミックスラリーの塗布後の乾燥過程において問題が発生することがある。
本実施の形態に係るセラミックスラリーは、前記水溶性高分子と非水溶性粒子状高分子、そして無機充填材と水以外にも、必要に応じて分散剤、粘土調整剤、レベリング剤、酸化防止剤、結着剤、電解液分解抑制等の機能を有する添加剤などのような添加剤を含むことができる。
一方、本実施の形態に係る微細多孔性セラミックコーティング多孔性膜の製造方法は、多孔性基材を製造する工程と、水分散セラミックスラリーを製造する工程と、セラミックコーティング層を形成する工程からなる。多孔性基材を製造する工程は、第1の実施の形態で説明した製造工程を適用することができる。
多孔性基材を製造する工程は、第1の実施の形態で説明したものを適用できるため、詳細な説明を省略する。
水分散セラミックスラリーの製造工程は、各構成成分、すなわち水溶性高分子0.1〜30重量%と、非水溶性の粒子状高分子1〜40重量%、無機充填材1〜50重量%及び水20〜70重量%と、そして必要に応じて添加されるその他の添加剤適当量とを混合して、例えばボールミル法を利用して40℃において12時間程度充分に混合して製造する。
最後に、前記多孔性基材にセラミックスラリーを塗布して、セラミックコーティング層を形成する方法は、通常の塗布方法を使用することができる。例えば、ディップ(dip)コーティング、ダイ(die)コーティング、グラビア(gravure)コーティング、カンマ(comma)コーティングまたはこれらの混合方式等の多様な方式を利用することができる。その中でも、均一なコーティング面を得るためには、ディップコーティング方法やグラビアコーティング方法が望ましい。また、塗布後の乾燥方法としては、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、遠赤外線や電子線等の照射方法による乾燥を行なうことができるが、80〜120℃の温度範囲において熱風乾燥することが望ましい。
前記セラミックコーティング層の厚さは、1〜5μmであることが望ましいが、1μm未満である場合には多孔性膜の熱収縮率が大きく増加する問題があり、5μmを超過する場合には、多孔性膜が厚すぎてリチウム二次電池の組立性に支障をきたしたり、電池の小型化が難しくなる問題がある。また、前記セラミックコーティング層は、多孔性薄膜基材の一面にだけ塗布することもでき、両面の全てに塗布することもできるが、一面コーティングよりは両面コーティングが多孔性膜の熱的安定性の向上により効果的である。
本実施の形態によれば、セラミックスラリーを塗布した後に行う乾燥段階の際に、乾燥過程において分散媒である水と他の各構成成分との間に相分離現象が起こりながら、同時に無機充填材と水溶性高分子及び粒子状高分子が互いに結合して、ナノサイズの凝集体を形成するようになる。本実施の形態に係るセラミックコーティング層は、前記各凝集体の間に微細空隙が形成されており、その間に水が蒸発及び乾燥されながら微細多孔性構造を形成するようになり、特にオープンセル(open cell)の比率が高くなって優れた通気性を確保することができる。
反面、従来の有機/無機コーティング液を使用したセラミックコーティング層の場合には、溶媒/非溶媒、例えばアセトン/水分の相転移(Phase inversion)現象を利用して乾燥過程において気孔を形成する。しかし、このような相転移による気孔形成メカニズムでは、気孔のサイズ調節が困難であり、また気孔が形成されていても内部通路が塞がっている場合が多いため、円滑な通気性を確保することが難しい。
前記のような方法により製造される本実施の形態の微細多孔性セラミック多孔性膜は、たとえば、厚さが10〜30μmであり、気孔率30〜50%、通気度100〜400sec/100ml、引張強度1,000〜3,000kgf/cm2、150℃において1時間暴露時の縦(machine
direction)及び 横(transverse direction)方向の熱収縮率が各々5%未満であることができる。
前記微細多孔性セラミック多孔性膜は、例えば携帯電話、ノートパソコン等の携帯用二次電池、電気自動車用大容量二次電池、スーパー二次電池、リチウムイオンキャパシタ等に適用することができる。
以下、第2の実施の形態の作用効果を説明する。
従来、広範に使用されているポリオレフィン(polyolefin)系列の多孔性膜は、高温熱的安定性と物理的強度が脆弱で、150℃の温度において1時間程度の暴露時に熱収縮率が50〜90%で発生して隔離膜の機能を喪失することになり、また外部からの衝撃時に内部短絡が起こる可能性が高い問題点があった。このような問題点を補完するために、最近において一般的に採択されている技術がセラミックコーティングである。
例えば、韓国特許登録第739337号(2007.07.06)、韓国特許第754746号(2007.08.27)、韓国特許第858214号(2008.09.04)、及び韓国特許公開第2010−28009号(2010.03.11)、韓国特許公開第2011−35847号(2011.04.06)には、ポリオレフィン系多孔性基材の少なくとも一面に無機物粒子と高分子結合材とからなるコーティング液を塗布して、多孔性活性層を形成する有機/無機複合セラミックコーティング隔離膜が提案されている。前記先行特許に紹介されたセラミックコーティング隔離膜は、セラミックコーティング層がない通常的な隔離膜に比べて熱的安定性がずば抜けて改善されたものとして報告されている。しかし、このような従来のセラミックコーティング隔離膜は、隔離膜の性能に極めて重要な影響を及ぼす要素である通気性と関連して、相当な技術的課題を残している。
即ち、一般的に多孔性基材の表面にセラミックコーティング層を塗布すると、隔離膜の熱的安定性は向上するが、前記コーティング層が多孔性基材に形成された気孔を遮断して隔離膜の通気性が低下し、このようになると陽極と陰極との間のイオン移動通路が大きく減少して、結果的に二次電池の充電及び放電性能が大きく低下する問題が発生することになる。
参考として、韓国特許登録第1029672号(2011.04.08)を見ると、セラミックコーティング層がないポリエチレン隔離膜は、通気度(Gurley value)を示す数値が約230sec/100ml程度であるが、その一面にコーティング層を塗布すると前記数値が380〜415sec/100mlに増加して通気性が大きく減少するものとして報告されている。また、韓国特許登録第971109号(2010.07.13)には、コーティング層がないポリエチレン隔離膜の場合、約322sec/100ml程度の通気性を有しているが、両面塗布を完了した後には同一の条件において通気時間が420〜470sec/100mlに増加するものとして報告されている。このように通気度を示す時間が増加するということは、即ち通気性が減少することを意味し、このような結果は前記セラミックコーティング層が多孔性基材の気孔を遮断するということを意味する。従って、セラミックコーティング層を塗布した以後にも通気性が低下しない多孔性コーティング隔離膜の開発が要求される。
従来のセラミックコーティング技術において使用されている有機/無機複合コーティング液は、大部分がトルエン、メチレンクロライド、クロロホルム、エタノール、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の各揮発性有機物質(VOC)を溶媒として使用しているが、このような各揮発性有機物質は、人体に極めて有害であることがよく知られており、又環境汚染物質と認識されており、特に塗布及び乾燥工程中において作業者の健康に悪影響を及ぼす問題点がある。
一方、二次電池の製品市場においては、電池の高出力化及び製造単価の減少が大きな問題として登場している。このような市場の要求に応ずるためには、多孔性フィルム自体の厚さは既存の多孔性フィルムより薄くして、耐熱性や物理的特性は既存の多孔性フィルムより向上した多孔性膜の開発が必要である。
この実施の形態によれば、熱的安定性と物理的強度が優れており、厚さが薄く、セラミックコーティング層により通気性が低下する副作用が殆ど現われない微細多孔性セラミックコーティング多孔性膜を実現することができる。従って、同一の条件において従来の多孔性膜に比べて厚さが更に薄いセラミックコーティング隔離膜を製造することができるので、今後の二次電池の高容量化、小型化及び高出力化に寄与することができ、更に電気自動車や燃料電池等の中大型二次電池にも広く使用されるものと期待される。
また、この実施の形態によれば、製造過程において環境汚染物質を排出する憂慮がなく、作業空間が親環境的で作業者の健康を害する憂慮がない微細多孔性セラミックコーティング多孔性膜を製造することができる。人体に有害な揮発性有機物質を使用せずに水を分散媒として使用するため塗布及び乾燥工程において環境汚染物質が発生せず、作業環境が親環境的で作業者の健康を害する憂慮がない効果がある。
なお、本実施の形態において、コーティング層として、セラミックコーティング層の例を示したが、有機充填材と有機結合材とを含むスラリーにより、コーティング層を形成してもよい。
有機充填材としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂など各種高分子からなる粒子等が用いられる。粒子を形成する上記高分子は、混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体、架橋体等であっても使用できる。粒子内が2種以上の高分子からなっても問題は無い。
また、上記の2つの実施の形態において、ポリエチレン樹脂からなる膜の内部に、耐熱粒子が存在してもよい。耐熱粒子としては、たとえば、上記で説明した無機充填材や有機充填材を適用することができる。耐熱粒子は、原料樹脂混合物の押出工程の前のいずれかの段階(たとえば原料樹脂混合物を製造する段階)において、添加することができる。
以下、本発明に対する実施例を説明する。しかし、これらの実施例によって本発明の権利範囲が制限されることはない。
1.第1の多孔性膜に係る実施例
(実施例1−1)
重量平均分子量が3746である固相ワックス 9.9kgと、重量平均分子量が1304である液相ワックス 9.9kgを混合して気孔形成添加剤を製造し、ここに溶融指数が0.4〜0.5g/10分で重量平均分子量(MW)が380,000であるポリエチレン樹脂12.3kgと、酸化防止剤として亜リン酸エステル(phosphite ester)1.0kgを添加して、原料樹脂混合物を製造した。
前記原料樹脂混合物を押出用スクリュー(screw)内に投入して、200℃の温度においてスクリューの回転速度を400rpmに維持しながらティ-ダイ(T-die)を通じて押出し、厚さが1800μmであるゲル状シートを形成した。
前記ゲル状シートを、表面温度が各々40℃を維持するキャストロールとニップロールの間に通過させながら冷却した。この時、前記キャストロールとニップロールの半径比率が1.5:1.0であるものを使用し、前記ニップロールは長さが900mmであり、軸方向で表面に逆勾配を形成する円弧の半径(R)が1,700,000mmであるものを使用した。
前記シートをラブストレッチング機器(lab stretching machine)において、先ず縦方向(machine direction)に7倍延伸し、続いて横方向(transverse
direction)に10倍逐次延伸を実施した後、延伸されたシートを塩化メチレン溶液に浸漬して前記気孔形成添加剤を溶出、除去した。
最後に、延伸された前記シートを、温度130℃の熱チャンバ内において4分間熱固定して、厚さが10.1μmのポリエチレン多孔性膜を製造した。
(実施例1−2)
前記実施例1−1において、押出用スクリューの回転速度を376rpmに維持し、ゲル状シートの厚さを2800μmとすること以外は、前記実施例1と同じ方法を実施して、厚さが16.2μmであるポリエチレン多孔性膜を製造した。
(実施例1−3)
前記実施例1−1において、押出用スクリューの回転速度を360rpmに維持し、ゲル状シートの厚さを3400μmとすること以外は、前記実施例1と同じ方法で実施して、厚さが
19.9μmであるポリエチレン多孔性膜を製造した。
[気孔特性確認]
前記実施例1−1によって製造された多孔性膜の断面の状態を走査電子顕微鏡(SEM;scanning electron microscope)で20,000倍に拡大撮影し、その写真を図1に添付した。図1を通じて本実施例の多孔性膜は、微細気孔が多層配向された断面構造を有するという事実を確認することができる。
また、前記実施例1−1及び1−2によって製造された多孔性膜の上下表面層及び内部層の状態をSEMで20,000倍に拡大撮影し、その写真を各々図2及び図3に添付した。図2及び図3から確認されるように、本実施例の多孔性膜の上下表面層(写真A及びC)には比較的大きさが小さい気孔の分布率が高く、内部層(写真B)には相対的に大きさが大きい気孔の分布率が高いということを確認することができる。また、内部層(写真B)には、従来の多孔性膜と異なり、あたかも葉脈のように太い纎維束が並んで形成されているのを見ることが出来る。
[物性試験]
実施例1−1、1−2、1−3で製造された多孔性膜と、比較例として従来市販中である隔離膜[中国金輝社製品]について、各々電気的性能と機械的物性を各々測定し、その結果を次の表1に比較した。
Figure 2014074146
表1で示すように、本発明の実施例によって製造された多孔性膜は、従来市販製品に比べてイオン伝導度が遥かに高い水準を見せている。参考として、イオン伝導度が高いことによって二次電池の充放電効率とサイクル増加に寄与し、結果として二次電池の耐久性を向上させる効果がある。
また、本発明の実施例によって製造された多孔性膜は、市販製品に比べて相対的に厚さが薄く、通気度に優れていながらも機械的物性、即ち、引張強度及び突刺強度(Puncture strength)などが全般的に優れていることが確認された。
[試験方法]
前記表1の試験項目に対する試験方法は次の通りである。
1)イオン伝導度(10-4 S/cm):同一面積のNi金属の間に電解液を含浸させた多孔性膜を固定させて、パウチで密封した後にインピーダンス測定器を利用してイオン伝導度を測定する。
2)通気度(sec/100ml):東洋精機製作所社製の通気度測定器を利用して、大きさが30×30mmである試料に対して100mlの空気が通過する時間を測定する。
3)引張強度(kgf/cm2):Instron社製の引張強度試験器を利用して、大きさが20×200mmである試料に対して縦(MD)及び横(TD)方向に破断が起きるまで加わった力を測定する。
4)引張伸び率(%):Instron社製の引張強度試験器を利用して、大きさが20×200mmである試料に対して縦(MD)方向に破断が起きるまで加えられ伸びた比率を測定する。
5)突刺強度(Kgf):カトーテック社製の突刺強度測定器を利用して、大きさが100×50mmである試料に対して、スティック(Stick)で力を加えて試料を突き抜ける時点までに加わった力を測定する。
2.第2の多孔性膜の実施例
本実施例は、ポリエチレン樹脂からなる多孔性基材にセラミックスラリーがコーティングされているものに関する。
(実施例2−1)
2−1−1 多孔性基材の製造
気孔形成添加剤として、重量平均分子量が3,800である固相パラフィンワックス8.8重量部と重量平均分子量が500である液相パラフィンオイル11重量部とを混合した後、90℃で1時間溶融混練して、パラフィンワックス混合物を製造準備した。続いて、前記パラフィンワックス混合物へ、重量平均分子量が380,000であるポリエチレン樹脂12.3重量部及び酸化防止剤としてホスファイトエステル(phosphite ester)1.0重量部を添加して、原料樹脂混合物を製造した。
前記原料樹脂混合物は、押出機ホッパー(hopper)を通じて押出用スクリュー(screw)内に投入し、200℃の温度で前記スクリューの回転速度を400rpmに維持しながらティ−ダイ(T−Die)を通じて溶融物を圧延して、厚さが2100μmであるゲル状シートを形成した後、前記ゲル状シートを、表面温度が各々40℃を維持するキャストロールとニップロールとの間を通過させながら冷却した。このとき、前記キャストロールとニップロールの直径は、1.5:1.0の比率を有し、前記ニップロールは半径1,900,000mmの逆勾配を有するものを使用した。
前記シートを、縦(machine
Direction)方向へ10倍延伸し、続いて横(transverse direction)方向へ10倍延伸する逐次延伸を実施した後、延伸されたシートを塩化メチレン溶液に浸漬して前記気孔形成添加剤を溶出、除去した。最後に、延伸された前記シートを、温度130℃の熱チャンバー内において4分に亘って熱固定して、厚さが12μmの二次電池多孔性膜用多孔性基材を製造した。
2−1−2 水分散セラミックスラリーの製造
カルボキシメチルセルロース塩を水に5%濃度で投入して、この高分子溶液5重量部を基準として、水100重量部、平均粒径が50nmである純度99.99%のアルミナ(酸化アルミニウム)100重量部、アクリル−アクリロニトリル共重合エマルジョンラテックス5重量部、粘土調整機能および分散機能のあるCMC2重量部を混合した後、この混合物をボールミル法により充分に混合して水分散セラミックスラリーを製造した。
2−1−3 セラミックコーティング層の形成
前記実施例2−1−1の方法により製造された多孔性基材の両面に、前記実施例2−1−2の方法により製造されたセラミックスラリーを塗布するが、110メッシュのロールでグラビアコーティングし、熱風オーブンにおいて80℃の温度で1時間乾燥し、厚さが2.5μmであるセラミックコーティング層を形成した。
(実施例2−2)
前記実施例2−1と同じ方法で行うが、セラミックコーティング層の厚さを3μmに塗布して、セラミックコーティング多孔性膜を製造した。
(実施例2−3)
前記実施例2−1と同じ方法で行うが、セラミックコーティング層の厚さを4μmに塗布して、セラミックコーティング多孔性膜を製造した。
(実施例2−4)
前記実施例2−1と同じ方法で行うが、セラミックスラリーの製造時に、粒子状高分子として、アクリル−アクリロニトリル共重合エマルジョンラテックスの代わりに、ブタジエン−スチレンランダム共重合体エマルジョンラテックスを使用して、セラミックコーティング多孔性膜を製造した。
(実施例2−5)
前記実施例2−1と同じ方法で行うが、セラミックスラリーの製造時に、水溶性高分子として、カルボキシメチルセルロース塩の代わりに、アルカリ膨潤性アクリル系樹脂を使用して、セラミックコーティング多孔性膜を製造した。
(比較例2−1)
前記実施例2−1−1の方法により、厚さが18μmである多孔性薄膜基材を製造して、セラミックコーティングを実施しなかった。
(比較例2−2)
従来から知られている乾式方法(Dry
process)により多孔性基材を製造した。すなわち、高密度ポリエチレン樹脂と酸化防止剤を、200℃の温度で二軸押出機内において回転速度を400rpmに維持しながらティ−ダイ(T−Die)を通じて溶融物を圧延し、厚さが300μmであるゲル状シートを製造した。このとき、キャストロールは、通常的なものを使用し、気孔形成をするためにゲル状シートを、縦方向に100℃で9.0倍一軸延伸し、120℃の熱風オーブンで3分に亘って熱固定した。セラミックコーティングは実施しなかった。
(比較例2−3)
実施例2−1−1の方法により多孔性薄膜基材を製造するが、キャストロールとニップロールの形態は通常的な形態のものを使用してゲル状シートを製造し、気孔形成及び逐次延伸工程は実施例1と同じく実施した。セラミックコーティングは実施しなかった。
(比較例2−4)
実施例2−1−1と同じ方法により多孔性基材を製造するが、原料樹脂としてポリプロピレン樹脂を添加せず、ポリエチレン樹脂だけ使用した。セラミックコーティングは実施しなかった。
(比較例2−5)
実施例2−1−1と同じ方法によりセラミックコーティング多孔性膜を製造した。但し、多孔性基材の両面にポリメタフェニレンイソフタルアミド7重量%、塩化カルシウム4.5重量%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)86重量%、分散剤2.5重量%からなるセラミックコーティング液を塗布して、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)60重量%と水40重量%で構成される恒温槽に10分に亘って含浸した後、水でリンスした後に熱風オーブンにおいて60℃の温度で1時間乾燥してセラミックコーティング層を形成した。
(比較例2−6)
実施例2−1−1と同じ方法によりセラミックコーティング多孔性膜を製造した。但し、フッ化ポリビニリデン
(PVDF)1重量%とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)99重量%からなる溶液を製造した後、前記溶液80重量%にアルミナ20重量%を分散させたセラミックコーティング液を製造して、前記コーティング液をポリエチレン多孔性基材の両面に塗布した後、熱風オーブンにおいて60℃の温度で1時間乾燥してセラミックコーティング層を形成した。
[物性評価]
前記実施例及び比較例に従って製造された多孔性膜の物性を測定し、その結果を表2及び表3に示した。
Figure 2014074146
Figure 2014074146
[試験方法]
前記表2及び表3の試験項目に対する試験方法は次の通りである。
1) 熱収縮率(%):前記実施例及び比較例に従って製造された多孔性膜を使用して縦横サイズが10×10cmである試料を準備して、前記試料をA4用紙の間に挟んでオーブンに入れた後、105℃及び150℃の温度において各々1時間放置した後、収縮率を測定した。
2) 通気度(sec/100ml):多孔性膜について、大きさが30×30mmのサイズである試料を採取して、東洋精機製作所社製通気度測定器を利用して空気100mlが通過するのに要する時間を測定した。
3) 引張強度(kgf):多孔性膜について、縦及び横方向に各々大きさが20×200mmである試料を採取して、Instron社製引張強度試験器を使用して前記試料が破断するまで加えられた力を測定した。
4) 引張伸び率(%):多孔性膜について、縦及び横方向に各々大きさが20×200mmである試料を採取して、Instron社製引張強度試験器を使用して前記試料が破断するまで伸びる比率を測定した。
5) 突刺強度(gf):多孔性膜について、100×50mmである試料を採取して、カトーテック社製突刺強度測定器を利用してスティック(Stick)により力を加えた際に、前記試料に孔があく時点まで加えられた力を測定した。
先ず、実施例2−1、2−2及び2−3に示すように、多孔性基材の厚さが同じ状態においてコーティング層の厚さが増加するほど通気性は徐々に低下する結果を見せた。そして、表2及び表3に示すように、本発明の実施例に従って製造されたセラミックコーティング多孔性膜は、比較例に比べて熱的安定性がずば抜けて向上したものとして現われた。
また、多孔性薄膜基材の原料樹脂としてポリエチレン樹脂だけ使用した比較例2−2の場合、ポリプロピレンを添加した他の実施例や比較例と比べて基材の厚さがより厚いにも拘わらず、引張強度等の機械的物性は遙かに不良な結果を見せた。
特に、従来の有機/無機コーティング液を使用してコーティング層を形成した比較例2−5、2−6の場合、セラミックコーティング層を塗布せず基材の厚さが同じ比較例2−3に比べて通気度を示す数値がほぼ2〜3倍も増加し、通気性が大きく低下した結果を示しているのに比べて、本発明に係る水性セラミックスラリーを使用した実施例は、通気性の低下程度が相対的に遙かに少ないものとして現われた。
また、実施例2−1とは異なる種類の水溶性高分子及び粒子状高分子を使用した実施例2−5の場合、実施例2−1に比べて通気度を示す数値が若干高くなる結果を見せ、結果的に実施例2−1において使用した水溶性高分子樹脂がより適したものとして現われた。
図7は、前記実施例2−1に従って製造されたセラミックコーティング多孔性膜の断面構造を5,500倍に拡大撮影した走査電子顕微鏡写真であり、幾重にも重なった繊維質基材が重畳した多層構造をなし、その間に各微細気孔が多層配向された構造をなしており、表面(図7の上層構造)には多孔性セラミックコーティング層が形成されていることを確認することができる。
3.第3の多孔性膜の実施例
図4および図5に示されている多孔性膜は、第1の実施例と基本的に同様な方法で製造したものであるが、固相パラフィンの重量平均分子量が100〜1000にあるものを利用した点で異なる。本実施例の多孔性膜においても、上下表面層(写真A及びC)には比較的大きさが小さい気孔の分布率が高く、内部層(写真B)には相対的に大きさが大きい気孔の分布率が高いということを確認することができる。また、内部層(写真B)には、従来の多孔性膜と異なり、あたかも葉脈のように太い纎維束が並んで形成されているのを見ることが出来る。
本実施例に係る多孔性膜をオーブン内で常温から1分間あたり5℃ずつ200℃まで昇温させて、200℃の雰囲気の中で1時間放置した。その後、多孔性膜を確認したところ、破れていなかったことを確認した。
本発明は、リチウムイオン電池などのセパレータとして適用することができる。


Claims (21)

  1. ポリエチレン樹脂を含んでなり、前記ポリエチレン樹脂の繊維質が多層状に積み重なるようにして構成され、微細気孔が水平方向に伸びるように形成されており、
    内部層の水平面における前記微細気孔の平均孔径(α1)は、表面層の水平面における前記微細気孔の平均孔径(β1)よりも大きく、
    前記表面層は、両側の表面層が互いに実質的に同じ気孔特性を有する多孔性膜。
  2. 請求項1において、
    前記平均孔径(β1)に対する前記平均孔径(α1)の比(α1)/(β1)は、1.5以上である多孔性膜。
  3. ポリエチレン樹脂を含んでなり、前記ポリエチレン樹脂の繊維質が多層状に積み重なるようにして構成され、微細気孔が水平方向に伸びるように形成されており、
    内部層の水平面における前記微細気孔の占める面積割合(α2)は、表面層の水平面における前記微細気孔の面積割合(β2)よりも大きく、
    前記表面層は、両側の表面層が互いに実質的に同じ気孔特性を有する多孔性膜。
  4. 請求項3において、
    前記面積割合(β2)に対する前記面積割合(α2)の比(α2)/(β2)は、1.5以上である多孔性膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかにおいて、
    各微細気孔が水平方向に伸びて繊維質多孔性基材間に多層配向された構造を有し、両側の表面層には表面層の全体気孔中において大きさが0.01〜0.3μmである気孔が50〜97%の分布率で存在し、内部層には内部層の全体気孔中において大きさが0.3〜1μmである気孔が50〜97%の分布率で存在する多孔性膜。
  6. 請求項1〜5のいずれかにおいて、
    前記多孔性膜の一面または両面に、無機充填材又は有機充填材と有機結合材とを含むスラリーが塗布されている多孔性膜。
  7. 請求項6において、
    前記スラリーは、水溶性高分子0.1〜30重量%と、乳化重合法または懸濁重合法により製造された非水溶性の粒子状高分子1〜40重量%と、無機充填材1〜50重量%と、水20〜70重量%とを含む多孔性膜。
  8. 請求項7において、
    前記水溶性高分子は、メチルセルロースとカルボキシメチルセルロース及びそれらの塩、そして会合型ポリウレタン系及びアルカリ膨潤性アクリル系樹脂の中から選択された何れか1つ以上である多孔性膜。
  9. 請求項7又は8において、
    前記粒子状高分子は、アクリル系共重合体、メタアクリル系共重合体、(メタ)アクリル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル−アクリロニトリル共重合体、シリコン−アクリル系共重合体、エポキシ−アクリル系共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブロック共重合体の中から選択された何れか1つ以上である多孔性膜。
  10. 請求項7〜9のいずれかにおいて、
    前記粒子状高分子は、粒度が0.01〜1μmである多孔性膜。
  11. 請求項6〜10のいずれかにおいて、
    前記無機充填材は、CaCO3,
    Al2O3, SiO2, BaTiO3, TiO2, Talc(滑石), Al(OH)3, AlOOHの中から選択された何れか1つ以上で、直径が0.1〜2μmである多孔性膜。
  12. 請求項6〜11のいずれかにおいて、
    前記多孔性膜は、厚さ10〜30μm、気孔率30〜50%、通気度100〜400sec/100ml、引張強度1,000〜3,000kgf/cm2、150℃において1時間暴露時の 縦及び 横方向の熱収縮率が各々5%未満である多孔性膜。
  13. ポリエチレン樹脂100重量部に対して、重量平均分子量が100〜5000である固相パラフィン系ワックス10〜90重量部と重量平均分子量が300〜1500である液相パラフィン系オイル10〜90重量部を含む原料樹脂混合物を製造する工程(A)と、
    前記原料樹脂混合物を押出及び冷却する工程(B)と、
    前記工程(B)において押出された原料樹脂混合物を延伸する工程(C)と、
    前記工程(C)において延伸された原料樹脂混合物を有機溶媒に浸漬して、前記固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルを抽出する工程(D)とを含み、
    前記原料樹脂混合物は、先ず前記固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルとを混合した状態において、前記固相パラフィン系ワックスおよび液相パラフィン系オイルを前記ポリエチレン樹脂に混合する多孔性膜の製造方法。
  14. 請求項13において、
    前記工程(D)の後に、前記多孔性膜の一面又は両面に、無機充填材又は有機充填材と有機結合材とを含むスラリーを塗布する工程(E)を含む多孔性膜の製造方法。
  15. a) 溶融指数が0.01〜0.6g/10分で重量平均分子量が300,000以上500,000未満であるポリエチレン樹脂100重量部に対して、気孔形成添加剤として重量平均分子量が100〜5000である固相パラフィン系ワックス10〜90重量部と、重量平均分子量が300〜1500である液相パラフィン系オイル10〜90重量部、そして酸化防止剤6〜10重量部を含む原料樹脂混合物を製造する段階と、
    b) 前記原料樹脂混合物を押出用スクリュー内に混入して180〜250℃の温度で溶融し、厚さが1000〜6000μmであるゲル状シートを押出して、前記ゲル状シートを表面温度が30〜60℃に調節されるキャストロールとニップロールの間に通過させるが、前記ニップロールは中央部位の直径(D1)が両側端部の直径(D2)より小さく、その表面に軸方向に円弧形状の逆勾配が形成されたものを使用して、前記ゲル状シートを冷却させる段階と、
    c) 冷却されたシートを、縦方向に、続いて横方向に各々約5〜15倍ずつ逐次延伸し、厚さが6〜50μmの延伸フィルムを製造する段階と、
    d) 前記延伸フィルムを、抽出溶媒に浸漬して前記気孔形成添加剤を除去した後、110〜150℃の温度で熱固定する段階とを含んでなる多孔性膜の製造方法。
  16. 請求項15において、
    前記原料樹脂混合物は、先ず前記固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルとを混合した状態において、前記固相パラフィン系ワックスおよび液相パラフィン系オイルを前記ポリエチレン樹脂に混合する多孔性膜の製造方法。
  17. 請求項13〜16のいずれかにおいて、
    前記固相パラフィン系ワックスと液相パラフィン系オイルの使用量は1:0.8 〜1.2である多孔性膜の製造方法。
  18. A) 重量平均分子量が100〜5000の固相パラフィン系ワックス10〜90重量部と重量平均分子量が300〜1,500の液相パラフィン系オイル10〜90重量部とを、80〜100℃の温度において溶融混合してパラフィンワックス混合物を製造する段階と、
    B) 高温状態の前記パラフィンワックス混合物を、重量平均分子量が300,000以上500,000未満であるポリエチレン樹脂100重量部と一緒に押出用スクリュー内に投入して180〜250℃の温度において溶融混練した後、この混合物を押出及び冷却してゲル状シートを製造し、前記ゲル状シートを二軸延伸した後に有機溶媒に浸漬して多孔性基材を製造する段階と、
    C) 水溶性高分子0.1〜30重量%と、乳化重合法または懸濁重合法により製造された非水溶性の粒子状高分子1〜40重量%と、無機充填材1〜50重量%と、水20〜70重量%とを混合して、水分散セラミックスラリーを製造する段階と、
    D) 前記多孔性基材の一面または両面に、前記水分散セラミックスラリーを1〜5μmの厚さで塗布してセラミックコーティング層を形成する段階とを含む多孔性膜の製造方法。
  19. 請求項18において、
    前記B)段階において前記ゲル状シートを冷却するために、表面温度が30〜60℃に調節されるキャストロールとニップロールの間に通過させるが、前記ニップロールの外面には、長さ方向に外接する円の半径が500,000〜2,000,000mmである逆勾配が形成されたロールを使用する多孔性膜の製造方法。
  20. 請求項15、16又は19において、
    前記ニップロールは、軸方向に長さ(L)が800〜1000mmであり、その表面に逆勾配を形成する円弧の半径(R)が500,000〜2,000,000mmであるものを使用する多孔性膜の製造方法。
  21. 請求項14、18又は19において、
    前記多孔性膜は、厚さ10〜30μm、気孔率30〜50%、通気度100〜400sec/100ml、引張強度1,000〜3,000kgf/cm2、150℃において1時間暴露時の 縦及び 横方向の熱収縮率が各々5%未満である多孔性膜の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN107981967A (zh) * 2016-10-26 2018-05-04 袁暾 一种载硅酸盐微粒的冷敷敷贴

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