JP2022117476A - 蓄電デバイス用セパレータ - Google Patents

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Kazunori Uchida
真也 浜崎
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敏大 鈴木
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Abstract

【課題】低透気度を有しつつ、高強度及び高耐熱性を兼ね備えた、蓄電デバイス用セパレータを提供すること。【解決手段】無機粒子及びポリオレフィンを主成分とする熱可塑性樹脂を含む無機含有層を備える、蓄電デバイス用セパレータが提供される。上記無機粒子及び上記熱可塑性樹脂を含む無機含有層のMFRは0.05~5である。上記無機含有層は開孔を有し、上記開孔の輪郭は、上記熱可塑性樹脂のみ、又は上記熱可塑性樹脂及び上記無機粒子から形成される。上記無機含有層の面方向断面において、上記輪郭のうち上記無機粒子から形成される部分の長さ(Lio)と、上記輪郭の長さ及び上記熱可塑性樹脂と上記無機粒子との界面の長さの合計長さ(Lt)との比率(Lio/Lt)が、0.05以上0.25以下である。【選択図】図1

Description

本開示は、ポリオレフィン微多孔膜に関する。
微多孔膜、特にポリオレフィン系微多孔膜は、精密濾過膜、電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータ、燃料電池用材料等の多くの技術分野で使用されており、特にリチウムイオン電池(LIB)に代表される2次電池用セパレータ、またはリチウムイオンキャパシタ用セパレータとして使用されている。リチウムイオン電池は、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ等の小型電子機器用途、リチウムイオン電池又はリチウムイオンキャパシタはハイブリッド自動車、及びプラグインハイブリッド自動車を含む電気自動車等、様々な用途への応用が研究されている。
近年、高エネルギー容量、高エネルギー密度、かつ高い出力特性を有するリチウムイオン電池に代表される蓄電デバイスが求められ、それに伴い、高強度(例えば、高突刺強度)、低い透気度、及び高耐熱性を兼ね備えたセパレータへの需要が高まっている。
特許文献1は、粘度平均分子量が60万以上のポリオレフィンと無機フィラーの混合体から製造された微多孔性ポリオレフィンフィルムを記載している(請求項11、実施例等)。
国際公開第2019/107119号
L. Vincent, 及びP. Soille、"Watersheds in Digital Spaces: An Efficient Algorithm Based on Immersion Simulations", IEEE Transaction on Pattern Analysis and Machine Intelligence, vol. 13, No. 6, 1991年6月, pp.583-598 D. Comaniciu, 及びP. Meer、"Mean Shift: A Robust Approach toward Feature Space Analysis", IEEE Transaction on Pattern Analysis and Machine Intelligence, vol. 24, 2002年, pp.603-619 PS. Liao, TS. Chen, 及びPC. Chung、"A Fast Algorithm for Multilevel Thresholding", Journal of Information Science and Engineering, vol. 17, 2001年, pp.713-727 Michael Doube, Michal M Klosowski, Ignacio Arganda-Carreras, Fabrice P Cordelieres, Robert P Dougherty, Jonathan S Jackson, Benjamin Schmid, John R Hutchinson, 及びSandra J Shefelbinea、"BoneJ: Free and extensible bone image analysis in ImageJ" Bone Volume 47, Issue 6, 2010年12月, pp.1076-1079
ポリオレフィン樹脂と無機粒子を含有する無機含有層を使用することで、透過性に優れるセパレータが得られることが知られている。しかしながら、一般的に、無機粒子を用いると、延伸により界面剥離部の孔が大きく拡大するため、高強度及び高耐熱性を有するセパレータを提供することが困難である。一方、孔を小さく調整すると高い透過性を保つことが困難である。本開示は、蓄電デバイスの用途に求められる低透気度を有しつつ、高強度及び高耐熱性を兼ね備えた、蓄電デバイス用セパレータを提供することを目的の一つとする。
本開示の実施形態の例を以下の項目[1]~[12]に列記する。
[1]
無機粒子とポリオレフィンを主成分とする熱可塑性樹脂を含む無機含有層とを備える、蓄電デバイス用セパレータであって、
上記無機粒子と上記熱可塑性樹脂とを含む無機含有層のMFRが0.05g/10min以上5g/10min以下であり、
上記無機含有層は開孔を有し、上記開孔の輪郭は、上記熱可塑性樹脂のみ、又は上記熱可塑性樹脂及び上記無機粒子から形成され、
上記無機含有層の面方向断面において、上記輪郭のうち上記無機粒子から形成される部分の長さ(Lio)と、上記輪郭の長さ及び上記熱可塑性樹脂と上記無機粒子との界面の長さの合計長さ(L)との比率(Lio/L)が、0.05以上0.25以下である、蓄電デバイス用セパレータ。
[2]
上記無機含有層の少なくとも片面にポリプロピレンを主成分とする外層を有し、上記外層のMFRが上記無機含有層のMFRの0.5倍以上3倍以下である、項目1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[3]
TD方向の熱収縮率が1%以下である、項目1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[4]
上記開孔の孔径が50nm以上2000nm以下である、項目1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[5]
上記無機粒子の粒子径が60nm以上2000nm以下である、項目1~4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[6]
上記無機含有層と上記外層との膜厚比(上記外層の膜厚/上記無機含有層の膜厚)が、0.3以上3.0以下である、項目2~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[7]
上記無機含有層に含まれる上記無機粒子の割合が、上記無機含有層の全質量を基準として50質量%以上95質量%以下である、項目1~6にいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[8]
上記外層のMFRが0.05g/10min以上5g/10min以下である、項目2~7のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[9]
上記無機含有層の厚みが1μm~27μmである、項目1~8のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[10]
総厚みが5μm~30μmである、項目1~9のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[11]
透気度が400秒/100ml以下である、項目1~10のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[12]
上記蓄電デバイス用セパレータの厚み14μm当たりの突刺強度が100gf/14μm以上である、項目1~11のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
本開示は、低透気度を有しつつ、高強度及び高耐熱性を兼ね備えた、蓄電デバイス用セパレータを提供することができる。
図1は、本開示の蓄電デバイス用セパレータにおける、無機含有層の面方向断面を示す模式図である。 図2は、画像処理領域の輝度ヒストグラム(横軸:輝度、縦軸:頻度)の例である。
《蓄電デバイス用セパレータ》
〈無機含有層〉
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、無機粒子及び熱可塑性樹脂を含む無機含有層を有する、蓄電デバイス用セパレータである。無機含有層は、複数の開孔を有し、蓄電デバイス用セパレータを構成する微多孔膜である。無機含有層は、単層で用いても、二層以上を積層して多層で用いてもよい。
〈熱可塑性樹脂〉
無機含有層に含まれる熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンを主成分として含む。本願明細書において、「主成分」とは50質量%より多く含まれる成分を意味し、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量以上、99質量%以上、又は100質量%であってもよい。
ポリオレフィンは、炭素-炭素二重結合を有するモノマーを繰り返し単位として含むポリマーである。ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、限定されないが、炭素-炭素二重結合を有する炭素原子数2~10のモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等が挙げられる。ポリオレフィンは、ホモポリマー、コポリマー、又は多段重合ポリマー等であることができ、好ましくはホモポリマーである。
ポリオレフィンとしては、具体的には、シャットダウン特性等の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合体が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、及び高密度ポリエチレン等が挙げられ、透過性をより高める観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の量は、無機粒子層の全質量を基準として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。無機粒子層の全質量を基準とした熱可塑性樹脂の量がこの範囲内であると、高い透過性を有しつつ、高強度のセパレータが得られ易い。
ポリエチレンのスチレン換算値で求めた重量平均分子量は、好ましくは80万以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは65万以下であり、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上、更に好ましくは30万以上である。ポリエチレンの重量平均分子量が80万以下であると、無機粒子を混錬する際により均一に混錬できる。これによって、無機粒子が熱可塑性樹脂に分散してより均一な無機含有層を得ることができ、その結果、電極間抵抗抑制効果が高くなる。また、ポリエチレンの重量平均分子量が80万以下であると、無機含有層内の著しい無機粒子濃度のばらつきを抑え、高温溶融時に無機含有層が全体的に抵抗成分となるため、電極間抵抗を維持することがより容易である。さらに、ポリエチレンの重量平均分子量が80万以下であると、押出時の成膜安定性の観点から、押出時の圧力が低く抑えられ、成膜がより容易になる。一方、下限について、ポリエチレンの重量平均分子量が10万以上であると、溶融した膜の自立性が高まり、巻き取りがより容易となる。また、ポリエチレンの重量平均分子量が10万以上であると、配向度が向上してラメラ開孔し易くなり、透過性が高まるため好ましい。
〈メルトフローレイト(MFR)〉
無機粒子と熱可塑性樹脂とを含む無機含有層のMFRは、好ましくは0.05g/10min以上5g/10min以下であり、より好ましくは0.1g/10min以上2.5g/10min以下、さらに好ましくは0.2g/10min以上1.0g/10min以下。無機含有層のMFRが0.05g/10min以上であることで、均一な厚みで製膜することが容易である。無機含有層のMFRが3g/10min以下であることで、セパレータの機械的強度が高くなる。
無機粒子層に含まれる熱可塑性樹脂のメルトフローレイト(MFR)(単層のMFR)は、荷重2.16kg、ポリエチレンの場合は温度190℃、ポリプロピレンの場合は温度230℃で測定した際に、0.2以上15以下であることが好ましい。その理由は、理論に限定されないが、熱可塑性樹脂のMFRが高い熱可塑性樹脂と無機粒子とを混錬すると均一な混錬ができ、無機粒子が分散して均一なセパレータとなり、電極間抵抗抑制効果が高くなるからであると考えられる。一方、熱可塑性樹脂のMFRが低すぎると無機粒子が分散せず、セパレータ内に著しい無機粒子の低濃度部が生じ、高温溶融時に抵抗成分が局所的に不足するため電極間抵抗が維持できない傾向がある。また、押出時の成膜安定性の観点で、熱可塑性樹脂のMFRが0.2以上であると、押出時の圧力が極端に上昇せず成膜しやすくなる。熱可塑性樹脂のMFRが15以下であると、溶融した膜の自立性が高くなる傾向があり、巻き取りが容易で、成膜がしやすい。また、熱可塑性樹脂のMFRが15以下であると、配向度の低下を抑制でき、ラメラ開孔しやすくなり、透過性も高くできる。
蓄電デバイス用セパレータが、外層(基材)を有する場合、外層のMFRは、0.05g/10min以上5g/10min以下であることが好ましい。外層のMFRが0.05g/10min以上であることで、均一な厚みで製膜することが容易である。外層のMFRが5g/10min以下であることで、セパレータの機械的強度が高くなる。
蓄電デバイス用セパレータが、外層(基材)を有する場合、外層のMFRは、無機含有層のMFRの0.5倍以上3倍以下であることが好ましい。外層と無機含有層のMFRが近い(約1.0倍)ことで、製膜時の安定性がより向上する。MFRの比が0.5倍以上であると、より均一な厚みで製膜することができ、耐熱性が向上する。また、無機含有層の厚みを増やすことが容易で、耐熱性が向上する。MFRの比が3.0倍以下であると、外層のMFRが高くなりすぎず(外層の分子量が低くなりすぎず)、成膜時に強配向になる傾向になりやすくなるためセパレータの機械的強度が向上する。
〈無機粒子〉
無機含有層は、無機粒子(「無機フィラー」ともよばれる。)を含む。無機含有層が無機粒子を含むことで、高耐熱性を有するセパレータを得ることができる。
無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、及び酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、及び窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、及びケイ砂等のセラミックス;並びにガラス繊維などが挙げられる。電池内での安全性と耐熱性の観点から、硫酸バリウム、チタニア、アルミナ及びベーマイトからなる群から選択される少なくとも一つが好ましい。
無機粒子の粒子径は、好ましくは60nm以上2000nm以下であり、下限は、より好ましくは150nm以上、更に好ましくは230nm以上、上限は、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは800nm以下である。無機粒子の粒子径が60nm以上であると、高温溶融時に電極間の空隙に粒子が移行しにくく、電極間に留まることによって無機粒子が抵抗成分となり、電極間抵抗を維持することがより容易である。また、60nm以上であると、無機粒子が無機含有層に分散しやすく、無機含有層内の著しい無機粒子濃度のばらつきを抑え、高温溶融時に無機含有層が全体的に抵抗成分となるため、電極間抵抗を維持することがより容易である。無機粒子の粒子径が2000nm以下であると、無機粒子が応力集中の起点となることを抑え、強度が向上する傾向にある。また、無機粒子の粒子径が2000nm以下であると、セパレータの厚みのバラつきを抑え、品位が向上する。
無機含有層中の無機粒子の含有割合は、無機含有層の全質量を基準として、好ましくは50質量%以上95質量%以下であり、下限は、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。無機含有層中の無機粒子の含有割合が50質量%以上であると、高いドローダウン比で溶融押出することで、無機粒子とラメラ結晶を有する層を形成でき、その後一軸延伸することで、低空孔率でありながら高い透過性のセパレータを得ることがより容易である。その理由としては、理論に限定されないが、無機粒子の量が50質量%以上であることで、延伸方向に対して垂直方向のラメラ開孔と、延伸方向に対して水平方向のフィラー開孔との両方が起こり、かつ、ラメラ結晶により形成された垂直方向の開孔によって、フィラー開孔により形成された水平方向の独立した開孔同士が連結するため、僅かな延伸倍率においても、低空孔率と高透過性とを両立することができると考えられる。また、無機含有層中の無機粒子の含有割合が95質量%以下であれば、破膜のリスクが少なく、成膜時の厚み均一性が良好になる。
〈無機粒子の表面処理〉
無機粒子は、熱可塑性樹脂への分散性を高めるために、表面処理剤により表面処理されているものを用いることが好ましい。この表面処理剤としては、飽和脂肪酸及び/又はその塩(飽和脂肪酸塩)、不飽和脂肪酸及び/又はその塩(不飽和脂肪酸塩)、アルミニウム系カップリング剤、ポリシロキサン、シランカップリング剤などによる処理が挙げられる。熱可塑性樹脂への分散性の観点から、表面処理剤としては、飽和脂肪酸及びその塩、不飽和脂肪酸及びその塩であることが好ましく、炭素数8以上の飽和脂肪酸及びその塩、炭素数8以上の不飽和脂肪酸及びその塩がより好ましい。表面処理剤は熱可塑性樹脂混錬前に処理してもよく、混錬時に表面処理剤を後添加してもよい。無機粒子表面への均一な表面処理剤の被覆の観点で、混錬前に処理することが好ましい。これらの表面処理剤で処理することで、無機粒子が高度に樹脂中に分散し、より高い耐熱性を達成することができる。
無機粒子の表面親水度は、好ましくは0.1以上0.8以下である。表面親水度が0.8以下であると、無機粒子が熱可塑性樹脂へより良好に分散し、凝集を抑制することができる。無機粒子の表面親水度が0.1以上であると、電解液に対する親和性が高まり、イオン伝導性が向上する傾向にある。
無機粒子の表面処理量は、無機粒子の粒子径にもよるが、表面処理された無機粒子の全質量を基準として0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。表面処理量が10質量%以下で余剰の表面処理剤を減らすことができ、表面処理量が0.1質量%以上で良好な分散性が得られる。
〈無機粒子の目付量〉
無機粒子の目付量は、0.15mg/cm以上が好ましい。目付量が0.15mg/cm以上だと、セパレータの高温溶融時に樹脂と伴って無機粒子が電極間空隙に移行しにくく、無機粒子が電極間の抵抗成分となる無機粒子層として残るため、緻密な無機粒子層が形成される傾向がある。そして無機粒子が抵抗成分となり電極間抵抗を維持することができ、電池としての安全性が向上する傾向にある。
〈開孔〉
無機含有層は開孔を有し、開孔の輪郭は、熱可塑性樹脂のみ、又は熱可塑性樹脂及び無機粒子から形成される。そして、無機含有層の面方向断面において、上記輪郭のうち無機粒子から形成される部分の長さ(Lio)と、上記輪郭の長さ及び熱可塑性樹脂と無機粒子との界面の長さの合計長さ(L)との比率(Lio/L)が、0.05以上0.25以下である。当該比率(Lio/L)が0.05以上であることで、無機粒子を切欠とする開孔部と、ラメラによる開孔部が同時に形成され、これによって無機粒子による開口部とラメラによる開孔部との連結構造が形成し、高い透過性が得られやすいと考えられる。このような開孔構造を得るためには、MD方向に高い延伸倍率で延伸する方法が挙げられる。また、MD方向に高いドローダウン比で溶融押出することで、後の延伸で、無機粒子による開孔だけでなく、ラメラによる開孔を同時に引き起こすことがより容易である。その結果、無機粒子から形成される輪郭の長さ(Lio)が小さくなりやすい傾向があり、比率(Lio/L)を0.25以下に調整することが容易である。このような開孔は連結性が向上するため高透過性が得られ易い。一方、MD方向に高いドローダウン比で溶融押出ししなかった場合、ラメラによる開孔をほとんどせず無機粒子のみでフィラー開孔するため、無機粒子から形成される輪郭の長さ(Lio)が大きくなりやすい傾向があり、このような開孔は連結性が悪くなるため高透過性が得られにくい。当該比率(Lio/L)が0.25以下であることにより、空孔率を大きくできるため、高い透過性が得られやすい。
比率(Lio/L)の下限は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.12以上であり、上限は、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.20以下、更に好ましくは0.15以下である。
図1は、本開示の蓄電デバイス用セパレータにおける、無機含有層の面方向断面を示す模式図である。無機含有層の面方向断面(10)を、走査電子顕微鏡で観察すると、無機粒子(1)、熱可塑性樹脂(2)及び開孔(3)の存在を確認することができる。図1に示す開孔(3)の輪郭は、実線で示す熱可塑性樹脂から形成される輪郭(4)、及び丸点線で示す無機粒子から形成される輪郭(5)からなる。また、熱可塑性樹脂と無機粒子との界面を角点線(6)で示す。このとき、丸点線(5)の長さが「輪郭のうち無機粒子から形成される部分の長さ(Lio)」に対応し、実線(4)、丸点線(5)及び角点線(6)の長さの合計が「輪郭の長さ及び熱可塑性樹脂と無機粒子との界面の長さの合計長さ(L)」に対応しており、これらの比率(Lio/L)は、0.05以上0.25以下である。
無機含有層の開孔の平均孔径は、好ましくは200nm以上2000nm以下、より好ましくは300nm以上1500nm以下、更に好ましくは400nm以上1000nm以下である。その理由は、理論に限定されないが、無機含有層の平均孔径が200nm以上であると、開孔同士が連結した構造となり高い透過性が得られる傾向にある。また、平均孔径が2000nm以下であると、無機含有層の厚みに対して応力集中の起点となりにくく、セパレータの強度低下が生じにくいからであると考えられる。無機含有層の平均孔径は、実施例の欄で後述するように、無機含有層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより測定することができる。
無機含有層の長孔径は、一方向に配列していることが好ましい。本願明細書において、「長孔径」とは、開孔の輪郭上の任意の2点を結ぶ線分のうち、最も長い線分をいう。理論に限定されないが、長孔径が一方向に配列していると、セパレータに強い配向がかかり長孔径の方向の強度が大きくなり、電池巻き付け操作がしやすくなるため好ましい。長孔径の配列は、実施例の欄で後述するように、無機含有層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより確認することができる。「一方向に配列」とは、セパレータ表面の上記電子顕微鏡像において、90%以上のフィブリルが、その延在方向±20度の角度範囲内に含まれることを意味する。すなわち、上記電子顕微鏡像において、90%以上の孔部の長軸が、互いに±20度の角度範囲内に含まれている場合、長孔径の配列が「一方向に配列」していると判断する。
無機含有層の断面積に占める開孔の面積割合は、20%以上60%以下である。好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下である。開孔の面積割合を60%以下とすることで樹脂と無機粒子の割合を高めることができ、固形分のネットワーク構造が形成されるため、突刺時の伸度が向上して高い突刺強度が得られやすい。また、気孔割合を増やすためにMD方向の延伸倍率を大きくして開孔割合を大きくしようとすると、気孔が厚み方向に潰れやすく、孔同士の連結構造が分断され透気度が悪化する傾向がある。開孔の面積割合が20%以上であると、樹脂と無機粒子の割合が低いことで、孔同士の連結構造が形成され易いため、高い透過性が得られる。
〈エラストマー〉
無機含有層は、無機粒子以外に、エラストマーを更に含有してもよい。エラストマーとしては、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマー等が挙げられ、好ましくは、熱可塑性エラストマーである。本願明細書において、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂に包含される。無機含有層が熱可塑性エラストマーを含有することにより、強度及び透気度のバランスを損なうことなく溶融張力を低減することができるため、高い溶融張力を有する低いMFRの熱可塑性樹脂であっても薄膜化することが可能となり、薄膜高強度なセパレータを得ることができる。
〈無機含有層の厚み〉
無機含有層の厚みは、好ましくは1μm以上27μm以下、より好ましくは1μm以上20μm以下である。厚みが1μm以上であると、蓄電デバイス用セパレータの耐熱性が向上する。厚みが27μm以下であると、蓄電デバイスのエネルギー密度をより高めることができる。耐熱性とエネルギー密度を勘案すると好ましくは、3μm以上15μm以下、さらに好ましくは5μm以上10μm以下である。また、セパレータ全体の厚みに占める無機含有層の厚みの割合は、セパレータの耐熱性、イオン透過性、及び物理的強度を勘案すると好ましくは15%以上90以下、より好ましくは20以上80%以下、更に好ましくは20%以上60%以下である。
〈外層(基材)〉
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、無機含有層に加えて、無機含有層の少なくとも片面にポリプロピレンを主成分とする外層(基材)を含んでもよい。外層は、無機含有層の片面又は両面に存在してもよい。すなわち、蓄電デバイス用セパレータは、無機含有層の片面に外層が積層された二層構造でもよく、無機含有層の両面に外層が積層された三層以上の多層構造を有してもよい。
外層は、ポリプロピレンを主成分とする微多孔層(以下、「PP微多孔層」ともいう。)であることが好ましく、この場合もまた、外層は、無機含有層の片面又は両面上に存在することができる。すなわち、蓄電デバイス用セパレータは、無機含有層の片面に、ポリプロピレンを主成分とする外層が積層された二層構造でもよく、無機含有層の両面に、ポリプロピレンを主成分とする外層が積層された三層以上の多層構造を有してもよい。
多層構造は、どのような順番に積層されていても本願発明の効果を発現することができるが、PP微多孔層/無機含有層/PP微多孔層の順に積層された三層構造であることが特に好ましい。PP微多孔層/無機含有層/PP微多孔層の三層構造を有することにより、無機含有層による耐熱特性を備えつつ、PP微多孔層により機械的強度、及び電極面接触時の耐酸化性を維持することができる。
外層の膜厚は、好ましくは1μm以上27μm以下、より好ましくは1μm以上20μm以下である。厚みが1μm以上であると、蓄電デバイス用セパレータの耐熱性が向上する。厚みが27μm以下であると、蓄電デバイスのエネルギー密度をより高めることができる。耐熱性とエネルギー密度を勘案すると好ましくは、3μm以上15μm以下、さらに好ましくは5μm以上10μm以下である。
無機含有層と外層の膜厚比(外層の厚さ/無機含有層の厚さ)は、0.3以上3.0以下であることが好ましい。無機層と外層の膜厚比(外層の厚さ/無機含有層の厚さ)を0.3以上にすることで、セパレータの溶融時に電極間抵抗を維持でき、電池の安全性が向上する。3倍以下であると、製膜安定性が向上し、製膜が容易である。
〈セパレータの厚み〉
蓄電デバイス用セパレータの総厚みは、好ましくは5μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上27μm以下である。厚みが5μm以上であると、蓄電デバイス用セパレータの耐熱性が向上する。厚みが30μm以下であると、蓄電デバイスのエネルギー密度を高めることができる。
〈セパレータの透気度〉
蓄電デバイス用セパレータの透気度(「透気抵抗度」とも呼ばれる。)の上限値は、好ましくは1000秒/100cc・14μm以下、例えば600秒/100cc・14μm以下、400秒/100ml以下である。蓄電デバイス用セパレータの透気度の下限値は、限定されないが、例えば50秒/100cc・14μm以上、80秒/100cc・14μm以上、100秒/100ml以上であってよい。透気度が400秒/100ml以下であることにより、孔の連通性が高まり、イオンの伝導を阻害せず、良好な電池特性が得られる傾向にある。50秒/100ml以上であることで、孔径が必要以上に大きくなりすぎず、セパレータの機械的強度が高まる傾向にある。
〈セパレータの突刺強度〉
蓄電デバイス用セパレータの突刺強度の下限値は、セパレータの厚みを14μmに換算した場合に、好ましくは100gf/14μm以上、例えば130gf/14μm以上、160gf/14μm以上であってよい。多層構造の突刺強度の上限値は、限定されないが、多層構造全体の厚みを14μmに換算した場合に、好ましくは550gf/14μm以下、例えば500gf/14μm以下、又は480gf/14μm以下であってよい。
〈セパレータのMD/TD強度比〉
蓄電デバイス用セパレータのMD方向の引張強度とTD方向の引張強度の比(「MD/TD強度比」ともいう。)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは6.0以上、更に好ましくは8.0以上である。MD/TD強度比が1.5以上であると、セパレータに強い配向がかることでMD方向の強度が大きくなり、電池巻き付け操作がしやすくなる。また、MD/TD強度比が1.5以上であると、TD方向の熱収縮率を低くすることができるため、電池巻き付け時にTD方向の熱収縮による短絡に対する耐性が高くなる。MD/TD強度比の上限は、特に限定されないが、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。MD/TD強度比30以下であると、MD方向に亀裂が入りにくく、取り扱い時にセパレータが縦に(MD方向に)裂ける問題が起こりにくくなる。
〈セパレータの熱収縮率〉
蓄電デバイス用セパレータのTD方向の熱収縮率は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下である。TD方向の熱収縮率が1%以下であると、電池巻き付け時にTD方向の熱収縮による短絡に対する耐性が高くなる。
《蓄電デバイス用セパレータの製造方法》
ポリオレフィンを主成分とする熱可塑性樹脂及び無機粒子を含む無機含有層の製造方法としては、一般に、熱可塑性樹脂組成物と、無機粒子を混合分散し、含有を溶融押出して樹脂フィルムを得る溶融押出工程、及び得られた樹脂シートを開孔して多孔化する孔形成工程を含み、任意に延伸工程、及び熱処理工程等を更に含む。無機含有層の製造方法は、孔形成工程に溶剤を使用しない乾式法と、溶剤を使用する湿式法とに大別される。
乾式法としては、熱可塑性樹脂組成物と無機粒子とをドライ状態で混合分散し、溶融混練して押出した後、熱処理と延伸によって熱可塑性樹脂結晶界面を剥離させる方法;及び、熱可塑性樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形した後、延伸によって熱可塑性樹脂と無機充填材との界面を剥離させる方法などが挙げられる。
湿式法としては、熱可塑性樹脂組成物と無機粒子とを混合分散し、孔形成材を加えて溶融混練してシート状に成形し、必要に応じて延伸した後、孔形成材を抽出する方法;及び、熱可塑性樹脂組成物の溶解後、熱可塑性樹脂に対する貧溶媒に浸漬させて熱可塑性樹脂を凝固させると同時に溶剤を除去する方法などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物の溶融混練には、単軸押出機、及び二軸押出機を使用することができ、これら以外にも、例えばニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、及びバンバリーミキサー等を使用することもできる。
熱可塑性樹脂組成物は、無機含有層の製造方法に応じて、又は目的の無機含有層の物性に応じて、任意に、ポリオレフィン以外の樹脂、及び添加剤等を含有してもよい。添加剤としては、例えば孔形成材、フッ素系流動改質材、ワックス、結晶核材、酸化防止剤、脂肪族カルボン酸金属塩等の金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、及び着色顔料等が挙げられる。孔形成材としては、可塑剤、無機充填材又はそれらの組み合わせが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
孔形成工程中、又は孔形成工程の前若しくは後に、延伸工程を行ってもよい。延伸処理としては、一軸延伸、又は二軸延伸のいずれも用いることができる。限定されないが、乾式法を使用する際の製造コスト等の観点では、一軸延伸が好ましい。一軸延伸によるラメラ開孔法を用いることによって、以下に説明するように高透過性、高強度及び耐熱性を有する本開示の蓄電デバイス用セパレータをより容易に製造することができる。以下、このことについて説明する。この開孔法は、一般的に、溶融押出によりラメラ結晶を配向させた前駆体(原反フィルム)を得て、これを冷延伸した後に熱延伸させてラメラ晶間を開孔させる方法である。熱可塑性樹脂に高い含有量の無機粒子を混合し、これをMD方向に高いドローダウン比で溶融押出し、かつ冷却速度を早くすることで、高い配向のラメラ結晶を有する樹脂に高い含有量の無機粒子が密に配置された孔形成工程前の前駆体(原反フィルム)を得ることが可能となる。それによって、後の延伸で、無機粒子による開孔だけでなく、ラメラによる開孔を同時に引き起こすことがより容易である。その結果、無機粒子との界面の長さ(Lio)が小さくなりやすい傾向があり、比率(Lio/L)を0.25以下に調整することが容易である。また、一軸延伸による応力集中によって孔形成が促進されて、僅かな総延伸倍率であっても、高い透過性を有し、かつ、MD/TD強度比を1.5以上に調整することが容易である。このように、特定条件の一軸延伸によるラメラ開孔法によって本願発明の効果をより容易に得ることができる。その理由は定かではないが、本発明者らは、以下のように推定している。すなわち、無機粒子は樹脂よりも熱容量が大きいため冷却が遅く、一般的な冷却条件ではMD方向に結晶配向し難く、その後の一軸延伸において孔形成が阻害され、高い透過性が得られない傾向がある。そのため、無機粒子を含む原反フィルムの冷却速度を早くすることで、より具体的には、冷却に用いるエアナイフ風量を多くし、無機粒子を含む原反フィルムの樹脂温度を早く冷却することで、ラメラ結晶をMD方向により強く配向させることが好ましい。これによって、高い含有量の無機粒子とラメラ結晶を有する樹脂とが密に配置された原反フィルムを得ることができ、僅かな延伸倍率であっても孔形成が促進されて、高い透過性、高い強度及び耐熱性を同時に達成することができる、蓄電デバイス用セパレータが得られると推察している。
〈樹脂と無機材料の割合〉
無機粒子の含有量は、ポリオレフィンを主成分とする熱可塑性樹脂100質量部を基準とした場合、無機粒子の量は、好ましくは100重量部以上、より好ましくは200質量部以上、更に好ましくは300質量部以上である。ポリオレフィン等の結晶性樹脂に対して無機粒子の含有量が100質量部以上であれば、一実施形態において、高いドローダウン比で溶融押出することで、無機粒子とラメラ結晶を有する層を形成でき、その後一軸延伸することで、比率(Lio/L)を0.25以下に調整し、低空孔率でありながら高い透過性のセパレータが得られる。その理由としては、理論に限定されないが、無機粒子の量が多い場合、延伸方向に対して垂直方向のラメラ開孔と、延伸方向に対して水平方向のフィラー開孔との両方が起こり、かつ、ラメラ結晶により形成された垂直方向の気孔によって、フィラー開孔により形成された水平方向の独立気孔同士が連結するため、僅かな延伸倍率においても、低空孔率と高透過性を両立していると推測している。一方、無機粒子含有量が少ないと、フィラー開孔により得られた気孔同士の距離が遠くなるため、ラメラ開孔によってフィラー開孔による気孔同士の連結が困難になり、高い透過性が得られないからであると推測される。
無機含有層中の無機粒子の含有割合は、無機含有層の全質量を基準とした場合、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。無機粒子の含有量が無機含有層の全質量を基準として50質量%以上であれば、上記と同様の理由から、低空孔率でありながら高い透過性のセパレータが得られるため好ましい。
微多孔性フィルムの収縮を抑制するために、延伸工程後又は孔形成工程後に熱固定を目的として熱処理工程を行ってもよい。熱処理工程は、物性の調整を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の延伸率で行う延伸操作、及び/又は、延伸応力低減を目的として、所定の温度雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作を含んでもよい。延伸操作を行った後に緩和操作を行ってもよい。これらの熱処理工程は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。
無機含有層を含む複数の微多孔膜が積層されている多層構造を有する蓄電デバイス用セパレータの製造方法としては、例えば、共押出法及びラミネート法が挙げられる。共押出法では、各層の樹脂組成物を同時に共押出で成膜し、得られた多層の原反フィルムを延伸開孔させて、多層の微多孔膜を作製することができる。ラミネート法では、各層を別々に押出成膜により成膜し原反フィルムを得る。得られた原反フィルムをラミネートすることにより、多層の原反フィルムを得て、得られた多層の原反フィルムを延伸開孔させて、多層の微多孔膜を作成することができる。共押出法では、無機粒子を含有しない層で無機含有層をサポートできるため成膜安定性が向上し、無機粒子含有量を多くできる点で好ましい。
《蓄電デバイス》
蓄電デバイスは、正極と、負極と、上記で説明された本開示の蓄電デバイス用セパレータを備える。蓄電デバイス用セパレータは、正極と負極との間に積層されている。
蓄電デバイスとしては、限定されないが、例えばリチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ナトリウム二次電池、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウム二次電池、カルシウムイオン二次電池、アルミニウム二次電池、アルミニウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスフロー電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、及び亜鉛空気電池などが挙げられる。これらの中でも、実用性の観点から、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、又はリチウムイオンキャパシタが好ましく、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
蓄電デバイスは、例えば、正極と負極とを、上記で説明されたセパレータを介して重ね合わせて、必要に応じて捲回して、積層電極体又は捲回電極体を形成した後、これを外装体に装填し、正負極と外装体の正負極端子とをリード体などを介して接続し、さらに、鎖状又は環状カーボネート等の非水溶媒とリチウム塩等の電解質を含む非水電解液を外装体内に注入した後に外装体を封止して作製することができる。
《測定及び評価方法》
[メルトフローレイト(MFR)]
ポリオレフィンのMFRは、JIS K 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した(単位はg/10分である)。ポリプロピレンのMFRは、JIS K 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した。ポリエチレンのMFRは、JIS K 7210に準拠し、温度190℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した。エラストマーのMFRは、JIS K 7210に準拠し、温度230℃及び荷重2.16kgの条件下で測定した。
[比率(Lio/L)]
試料の準備
セパレータと四酸化ルテニウム(株式会社レアメタリック製)とを密封容器内で共存させ、蒸気による染色を4時間行い、ルテニウム染色されたセパレータを作製した。主剤(Quetol812、日新EM株式会社製)10.6mL、硬化剤(メチルナジックアンヒドリド(MNA)、日新EM株式会社製)9.4mL、および反応促進剤(2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、日新EM株式会社製、DMP-30)0.34mLを混合し、十分に撹拌して混合液を得た。該混合液中に、上記ルテニウム染色されたセパレータを浸漬し、減圧環境下に置き、上記ルテニウム染色されたセパレータの細孔に混合液を十分に含浸させた。含浸後、セパレータを60℃で12時間以上硬化させることによって、上記ルテニウム染色されたセパレータをエポキシ樹脂包埋した。これによって、セパレータ内の空孔にエポキシ樹脂を充填し硬化させた。エポキシ樹脂包埋した後、カミソリ等で粗く断面加工し、その後、イオンミリング装置(E-3500 Plus、株式会社日立ハイテク製)を用いて断面ミリング加工し、平滑な断面を作製した。このとき、断面がMD-ND面となるように加工した。得られた断面試料を導電性接着剤(カーボン系)により断面観察用SEM試料台に固定、乾燥した後、導電処理としてオスミウムコーター(HPC-30W、株式会社真空デバイス製)を用いて、印加電圧調整つまみ設定4.5、放電時間0.5秒の条件でオスミウムコーティングを実施し、検鏡試料とした。
SEM画像の取得
上記検鏡試料を、走査型電子顕微鏡(S-4800、株式会社日立ハイテク製)で加速電圧1.0kV、エミッション電流10μA、プローブ電流High、検出器Upper+LA-BSE100、倍率10000倍、ピクセル数1280×960(約10nm/pixel)、ワーキングディスタンス2.0mmの条件で観察した。無機フィラーを含有する層の厚み方向全域が観察視野内に収まるように観察視野を決定し、輝度値が飽和せず、かつ、可能な限りコントラストが高くなるように設定し、8bitのグレースケール画像として電子顕微鏡像を取得した。ただし、無機フィラーを含有する層の厚みが観察視野より大きい場合、観察視野全体に無機フィラーを含有する層が収まるように観察視野を決定した。
画像処理(比率(Lio/L)の算出)
得られた電子顕微鏡像には、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、無機フィラーが観察された。このエポキシ樹脂、ポリオレフィン、無機フィラーのそれぞれの界面の長さを解析するにあたって、閾値を定めて三値化を行ってしまうと、最も輝度が低い領域(エポキシ樹脂)と最も輝度が高い領域(無機フィラー)の界面の一部が、中程度の輝度の領域(ポリオレフィン)と認識されてしまい、あたかもエポキシ樹脂と無機フィラーの間にポリオレフィンが存在するかのように解析されてしまう場合がある。そこで、下記に示す手順により、非特許文献1に記載のwatershedアルゴリズムを利用して界面の長さを解析した。
(1)電子顕微鏡像において、無機フィラーを含有する層の厚みの8割以上を含み、かつ、無機フィラーを含有する層以外の領域を含まず、かつ、可能な限り広い領域を選択し、画像処理領域とする。無機フィラーを含有する層の厚みが観察視野より大きい場合、観察視野全体を画像処理領域とする。
(2)電子顕微鏡像には、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、無機フィラーの3種の材料がそれぞれ異なる輝度で観察されており、画像処理領域の輝度ヒストグラムを算出すると、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、無機フィラーに対応する3つのピークが存在する。この3つのピークのうち最も近接する2つのピークの極大値を取る2点の輝度の差を算出し、この数値をCDとする(図2)。このとき、CDの数値が一意に定まらない場合には、3つのピークをそれぞれガウス関数でフィッティングしてCDの値を決定する。
(3)非特許文献2に記載のmean shift filteringを実行し、平滑化処理した画像を得る。mean shift filteringの実行にはフリーソフトImageJのMean Shift Filter(FHTW-BerlinのKai Uwe Barthel氏が作成したオープンソースプラグイン)を使用し、引数であるSpatial radiusは3とし、Color distanceはCDとして、実行する。
(4)得られた平滑化処理した画像に対して、非特許文献3のアルゴリズムを利用して2つの閾値を決定し、2つの閾値のうち小さい方を閾値A、大きい方を閾値Bとする。
(5)閾値A未満の輝度のピクセルの輝度を255とし、閾値A以上の輝度のピクセルの輝度を0とした二値画像A1と、閾値A以上かつ閾値B未満の輝度のピクセルの輝度を255とし、閾値A未満および閾値B以上の輝度のピクセルの輝度を0とした二値画像A2と、閾値B以上の輝度のピクセルの輝度を255とし、閾値B未満の輝度のピクセルの輝度を0とした二値画像A3を作成する。
(6)二値画像A1、二値画像A2、二値画像A3のそれぞれに対して5×5の正方形のカーネルを用いて収縮処理を実行(注目ピクセルを中心とする5ピクセル×5ピクセルの領域内に一つでも輝度が0であるピクセルが存在する場合に注目ピクセルの輝度を0に置き換える処理を画像内の全ピクセルに対して実行)し、収縮処理後の二値画像A1、二値画像A2、二値画像A3をそれぞれ二値画像B1、二値画像B2、二値画像B3とする。
(7)非特許文献1のアルゴリズムに基づき、画像処理領域内の分水嶺(watersheds)を探索する。このとき、背景(background)は二値画像B1の輝度が255の領域とし、マーカー(markers)は二値画像B2および二値画像B3を用いる。具体的には、二値画像B2および二値画像B3のうち、輝度が255のピクセルが連続している領域を一つのマーカーと見做し、二値画像B2および二値画像B3の全てのマーカーを使用して分水嶺の探索を実行する。
(8)二値画像B1、二値画像B2、二値画像B3に対して、分水嶺に対応するピクセルに囲まれた領域であり、かつ、その領域内に一つでも輝度が255のピクセルが含まれる場合、その領域内のピクセルの輝度を全て255に置き換える処理を実行する。処理後の画像をそれぞれ二値画像C1、二値画像C2、二値画像C3とする。
(9)二値画像C1、二値画像C2、二値画像C3に対して、3×3の十字型カーネルを用いて膨張処理を実行(注目ピクセルの上下左右の合計4ピクセルの中に一つでも輝度が255のピクセルが存在する場合に注目ピクセルの輝度を255に置き換える処理を二値画像内の全ピクセルに対して実行)し、膨張処理後の二値画像をそれぞれ二値画像D1、二値画像D2、二値画像D3とする。
(10)二値画像D1のうち輝度が255のピクセルの数値を1に置き換えた数値行列E1と、二値画像D2のうち輝度が255のピクセルの数値を10に置き換えた数値行列E2と、二値画像D3のうち輝度が255のピクセルの数値を100に置き換えた数値行列E3を作成する。
(11)数値行列E1、数値行列E2、数値行列E3の和を数値行列Fとする。
(12)数値行列Fの成分のうち、11または111である成分の数をG1とし、数値が101または111である成分の数をG2とし、数値が110または111である成分の数をG3とする。
(13)電子顕微鏡像のピクセルサイズを考慮してG1、G2、G3を実空間の長さに変換した数値をそれぞれ空孔とポリオレフィンの界面の長さLpo、空孔と無機フィラーの界面の長さLio、ポリオレフィンと無機フィラーの界面の長さLpiと見做し、Lpo、Lio及びのLpi合計をLとする。
画像処理(無機フィラーの平均粒子径の算出)
(1)平滑化処理した画像に対して、輝度が閾値B未満のピクセルの輝度を0とし、輝度が閾値B以上のピクセルの輝度を255とした二値画像を作成する。
(2)フリーソフトImageJを用いてBoneJ(非特許文献4に記載のオープンソースプラグイン)のThickness解析を実行し、Resultsウィンドウ内のTb. Thの平均値を読み取り、電子顕微鏡像のピクセルサイズを考慮して実空間の長さに換算した数値を無機フィラーの平均粒子径とする。
[開孔の平均孔径]
画像処理(開孔サイズの算出)
上記平滑化処理した画像に対して、輝度が閾値A未満のピクセルの輝度を0とし、輝度が閾値A以上のピクセルの輝度を255として画像を二値化した。BoneJ(非特許文献2に記載のオープンソースプラグイン)のThickness解析を実行し、Resultsウィンドウ内のTb.Th meanの数値を読み取り、実空間の長さに換算した数値を開孔の平均孔径とした。
[厚み(μm)]
ミツトヨ社製のデジマチックインジケータIDC112を用いて、室温23±2℃で、セパレータの厚さ(μm)を測定した。無機含有層の厚さは、SEM画像で得られた無機含有層と界面又は別層の中心線を引き、その線の間の長さを測定した。
[透気抵抗度(秒/100ml)]
JIS P-8117に準拠したガーレー式透気度計を用いて、セパレータの透気抵抗度(秒/100ml)を測定した。
[突刺強度]
先端が半径0.5mmの半球状である針を用意し、直径(dia.)11mmの開口部を有するプレート2つの間にセパレータを挟み、針、セパレータ及びプレートをセットした。株式会社イマダ製「MX2-50N」を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、セパレータ保持プレートの開口部直径11mm及び突刺速度25mm/分の条件下で突刺試験を行った。針とセパレータを接触させ、最大突刺荷重(すなわち、突刺強度(gf))を測定した。
[MD/TD強度比]
セパレータの引張強度は、引張試験機(ミネベア(株)製TG―1kN型)を用いて、試験前の試料長さを35mmにし、速度100mm/minで試料を引張ることで測定した。試料が降伏したときの強度(引張荷重値)、又は降伏前に切断(破断)した場合は切断したときの強度(引張荷重値)を試験片の断面積で除した値を引張強度とした。セパレータのMD方向、TD方向のそれぞれについて引張強度を測定した。MD/TD強度比は、MD引張強度をTD引張強度で除して求めた。
[F/S フューズ温度及び210℃抵抗]
正極シートの作製
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3と、導電助剤としてカーボンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデン溶液とを、91:5:4の固形分質量比で混合し、分散溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンを固形分68質量%となるように添加し、更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を、厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に塗布した後、溶剤を乾燥除去し、塗布量が175g/mの正極とした。この正極をロールプレスで圧延して、正極合剤部分の密度が2.4g/cmの正極シートを得た。
負極シートの作製
負極活物質として人造黒鉛、結着剤としてスチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロース水溶液とを、96.4:1.9:1.7の固形分質量比で混合し、分散溶媒として水を固形分50質量%となるように添加し、更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を、厚さ10μmの銅箔の片面に塗布した後、溶剤を乾燥除去し、塗布量が86g/mの負極とした。この負極をロールプレスで圧延して、負極合剤部分の密度が1.25g/cmの負極シートを得た。
非水電解液の調整
プロピレンカーボネート:エチレンカーボネート:γ-ブチルラクトン=1:1:2(
体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiBFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させ、更にトリオクチルホスフェートを0.5重量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
フューズ温度及び膜抵抗値(Ω・cm)の測定
セパレータから30mm×30mm角の試料を切り取り、試料1を準備した。また、前述した方法で作製された正極を55mm×20mm角に切り取り、塗布された電極活物質部分が20mm×20mm角になるように電極活物質を除去し集電箔が剥き出しになった正極2Aを作成した。また、前述した方法で作製された負極を55mm×25mm角に切り取り、塗布された電極活物質部分が25mm×25mm角になるように電極活物質を除去し集電箔が剥き出しになった負極2Aを作成した。その後、試料1、正極2A及び負極2Bの電極活物質が塗布されている部分に非水電解液を1分以上含浸した。そして、負極2B、試料1、正極2A、カプトンフィルム、厚さ4mmシリコンゴムの順で積層した。この時、負極2Bの電極活物質が塗工されている部分に試料1及び正極2Aの電極活物質が塗工されている部分が重ね合うように積層した。この積層体を熱電対が埋め込まれたセラミックプレート上に配置し、油圧プレス機で面圧2MPaを印加しながら、ヒーターを昇温し、正極2A及び負極2Bの集電体部分が接続された交流電気抵抗測定装置「AG-4311」(安藤電機株式会社)を用いて、連続的に温度と抵抗値を測定した。なお、温度は室温23℃から220℃まで15℃/分の速度にて昇温し、抵抗値は1V、1kHzの交流にて測定した。得られた210℃の抵抗値(Ω)に実効電極面積4cmを乗じて算出した値を、F/S 210℃膜抵抗値(Ω・cm)とした。フューズ温度は、極小値よりも高温側で3倍のインピーダンスに達した温度をフューズ温度とした。
[MD熱収縮及びTD熱収縮]
熱収縮率は、セパレータを5cm角に切り出し、2cm間隔で9か所にマーキングし、用紙で包んだ。マーキングされた試料を130℃の温度下で1時間熱処理し、次いで室温まで冷却した後に、MD及びTD方向の長さを各3か所で測定し、収縮率を求めた。サンプル測定の精度上、又はおそらくサンプル内の成分の膨張により、熱収縮率がマイナスの値を示す場合があるが、マイナスの値を示した場合は0.0%と見なした。
《実施例1》
<無機粒子の表面処理>
攪拌槽に200Lの水を注ぎ、そこに50kgの硫酸バリウム(一次粒径600nm)を投入し、撹拌しながら70℃に温度調整した。硫酸バリウムの1質量%に相当するステアリン酸を含有する2-イソプロパノール溶液を攪拌槽に少しずつ添加して、70℃で30分間撹拌した。次いで、ステアリン酸の1/2の物質量に相当する水酸化バリウムを含有する水溶液を少しずつ滴下して、30分間撹拌した。その後、固体を濾別して乾燥した後に、解砕して微粉化することで、表面処理された硫酸バリウム粉末を得た。得られた硫酸バリウムの表面親水度は0.49であった。
<ポリオレフィン樹脂と無機粒子組成物の作製>
ポリオレフィン樹脂と上記表面処理した硫酸バリウムをポリオレフィン:BaSO=20:80(質量%)の質量比率でドライブレンドした後、HK-25D(パーカーコーポレーション社製、L/D=41)を使って溶融混練を行った。樹脂の分解・変性を極力抑制するために、樹脂投入ホッパー口から原料タンクまでを完全に密閉状態としてホッパー下部から連続的に窒素をフローして、原料投入口付近の酸素濃度を50ppm以下に制御した。また、ベント部はすべて完全に密閉してシリンダー内への空気漏れ込み部を無くした。この酸素濃度低減効果により、高温下でもポリマーの分解・変性が大幅に抑制された。硫酸バリウムは二軸フィーダで投入したて、更に、硫酸バリウムの微分散化が可能となった。溶融混練後、ダイス(2穴)からストランドを引いて水冷バスにて冷却後、ペレターザーを使ってカッティングしてペレットを得た。
<微多孔膜の作製(三層)>
共押出法によって積層シートを形成した。ポリプロピレン樹脂(PP、MFR=0.51)を32mmφの二軸同方向スクリュー式押出機で溶融し、サーキュラーダイへとギアポンプを使って供給した。上記硫酸バリウムを含むペレットを32mmφの単軸スクリュー式押出機で溶融し、サーキュラーダイへとギアポンプを使って供給した。それぞれの押出機により溶融混錬された組成物を2種3層の共押出可能なサーキュラーダイによりシート状に押出し、かつ溶融したポリマーを、吹込空気によって冷却した後、ロールに巻き取った。ポリプロピレン樹脂の混錬温度は230℃、押出量は2.4kg/hrで、230℃に温度設定されたサーキュラーダイの外層(表面の二層)より押出した。硫酸バリウムを含むペレットの混錬温度は230℃、押出量はポリプロピレン樹脂換算1.2kg/hrで、230℃に温度設定されたサーキュラーダイの内層(中間層)より押出した。押出された前駆体(原反フィルム)を、押出直後にエアリングによりΦ300mm幅あたり3.6m/minの風量で冷却した。冷却後の原反フィルムの厚さは13.9μmであった。次いで、原反フィルムを127℃で15分間アニールした。次いで、アニールされた原反フィルムを、室温で10%まで冷間延伸し、次いで冷間延伸後のフィルムに対して115℃で100%まで熱間延伸し、熱間延伸後のフィルムに対して125℃で92%まで緩和することにより、微多孔を形成した。上記延伸開孔の後、得られた微多孔膜の物性測定を行った。結果を表1に示す。
《実施例2~6、比較例1~7》
表1及び2に示されるとおりに原料、成膜条件又はセパレータ物性を変更させたこと以外は実施例1と同じ方法に従って微多孔膜を得て、得られた微多孔膜を評価した。層構成は押出量の比を変えることで調整した。実施例6に用いた無機粒子の表面処理方法は、味の素ファインテクノ社製アルミニウム(Al)系カップリング剤(プレンアクトAL-M)を、無機粒子:プレンアクトAL-M=98:2(質量%)の質量比率でドライブレンドして行った処理方法であった。
《実施例7》
リチウムイオン二次電池の動作確認
電解液として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:2で混合したものに、リチウム塩としてのLiPFを1mol/L含有させた電解液を用いた。
正極活物質としてリチウム・ニッケル・マンガン・コバルト混合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3)と、導電助剤としてカーボンブラック粉末(Timcal社製、商品名:SuperP Li)と、バインダーとしてPVDFとを、混合酸化物:導電助剤:バインダー=100:3.5:3の質量比で混合した。この混合物を、厚み15μmの正極集電体としてのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥後、ロールプレスでプレスして、両面塗工正極を作製した。
溶剤中に、負極活物質として粒子径22μm(D50)の黒鉛粉末(日立化成社製、商品名:MAG)と、バインダー(日本ゼオン社製、商品名:BM400B)と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(ダイセル社製、商品名:#2200)とを、黒鉛粉末:バインダー:増粘剤=100:1.5:1.1の質量比で混合した。この混合物を、厚み10μmの負極集電体としての銅箔の片面、及び両面に塗布し、溶剤を乾燥除去し、その後、塗布された銅箔をロールプレスでプレスして、それぞれ片面塗工負極と両面塗工負極を作製した。
得られた正極及び負極を、それぞれの活物質の対向面に、実施例1のセパレータを挟みながら、片面塗工負極/両面塗工正極/両面塗工負極/両面塗工正極/片面塗工負極の順に積層した。次いで、得られた積層体を、アルミニウム箔(厚み40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムから成る袋(電池外装)の内部に正負極の端子を突設させながら挿入した。その後、上述のようにして作製した電解液を0.8mL袋内に注入し、袋に真空封止を行うことによってシート状リチウムイオン二次電池を作製した。
得られたシート状リチウムイオン二次電池を、25℃に設定した恒温槽(二葉科学社製、商品名:PLM-73S)に収容し、充放電装置(アスカ電子(株)製、商品名:ACD-01)に接続し、16時間静置した。次いで、その電池を、0.05Cの定電流で充電して、電圧が4.2Vに到達してから4.2Vの定電圧で2時間充電した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電するという充放電サイクルを、3回繰り返すことによって、電池の初期充放電を行った。なお、1Cとは、電池の全容量を1時間で放電させる場合の電流値を示す。
上記処理を行ったリチウム二次電池につき、温度25℃の条件下で放電電流1Cで放電終止電圧3Vまで放電を行った後、充電電流1Cで充電終止電圧4.1Vまで充電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する50サイクル後の容量保持率を測定したところ、容量保持率が90%以上であった。
《比較例8》
セパレータを比較例5のセパレータに変更したこと以外は、実施例7と同様の方法でリチウムイオン二次電池の動作確認を行ったところ、容量保持率が90%未満であった。
《実施例8》
リチウムイオンキャパシタの動作確認
正極前駆体として平均粒子径5.5μmの活性炭を58.0質量部、炭酸リチウムを32.0質量部、アセチレンブラックを4.0質量部、アクリルラテックスを3.5質量部、CMC(カルボキシメチルセルロース)を1.5質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)1.0質量部を混合した。この混合物を、厚み15μmのアルミニウム箔の両面に塗工、乾燥し、ロールプレス機を用いてプレスされた正極前駆体を作成した。
負極活性物質として平均粒子径4.5μmの人造黒鉛を83質量部、複合炭素材料を4質量部、アセチレンブラックを9質量部と、スチレン-ブタジエン共重合体を2質量部、CMC(カルボキシメチルセルロース)水溶液をCMCが2質量部になるように添加した。この混合物を、厚み10μmの電解銅箔の両面に負極塗工液を塗工し、乾燥温度60℃で乾燥して、ロールプレス機を用いてプレスされた負極を作成した。
有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC):ジメチルカーボネート(DMC):メチルエチルカーボネート(EMC)=34:44:22(体積比)の混合溶媒を用い、全非水系電解液に対してLiN(SOF)及びLiPFの濃度比が25:75(モル比)であり、かつLiN(SOF)及びLiPFの濃度の和が1.2mol/Lとなるようにそれぞれの電解質塩を溶解した。
最外層が負極になるように、正極前駆体、実施例1のセパレータ、負極の順にセパレータを挟んで正極活物質層と負極活物質層が対向するように積層し、電極積層体を得た。得られた積層体を、アルミニウム箔(厚み40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムから成る袋(電池外装)の内部に正負極の端子を突設させながら挿入した。アスカ電子株式会社製の充放電試験装置(ACD-10APS(01))を用いて、45℃環境下、電流値6Aで電圧4.5Vに到達するまで定電流充電を行った後、続けて4.5V定電圧充電を1時間継続する手法により初期充電を行い、負極にリチウムドープを行った。
ドープ後の非水系リチウム蓄電素子を、50℃環境下、10.0Aで電圧4.3Vに到達するまで定電流充電を行った。次いで、4.3V定電圧充電を5分間行い、10.0Aで電圧2.0Vに到達するまで定電流放電を行った。そして、2.0V定電圧放電を5分間行った。この作業を1サイクルとして、合計5サイクル実施した。60℃のエージング後、アルミラミネート包材の一部を開封しガス抜きを行った後、アルミラミネート包材を封止した。以上の工程により、リチウムイオンキャパシタを製造した。
上記処理を行ったリチウムイオンキャパシタにつき、温度25℃の条件下で充電電流200C(160A)で電圧3.8Vまで定電流充電し、続いて200Cの電流値で2.2Vまで定電流放電を行った。これを1サイクルとして充放電を繰り返し、初期容量に対する50サイクル後の容量保持率を測定したところ、容量保持率が90%以上であった。
《比較例9》
セパレータを比較例5のセパレータに変更したこと以外は、実施例8と同様の方法でリチウムイオンキャパシタの動作確認を行ったところ、容量保持率が90%未満であった。
Figure 2022117476000002
Figure 2022117476000003
Figure 2022117476000004
Figure 2022117476000005
本開示の蓄電デバイス用セパレータは、低透気度を有しつつ、高い強度及び耐熱性を同時に達成することができ、蓄電デバイス、例えばリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ等のセパレータとして好適に利用することができる。
1 無機粒子
2 熱可塑性樹脂
3 開孔
4 熱可塑性樹脂により形成される開孔の輪郭
5 無機粒子により形成される開孔の輪郭
6 熱可塑性樹脂と無機粒子との界面
10 無機含有層の面方向断面

Claims (12)

  1. 無機粒子とポリオレフィンを主成分とする熱可塑性樹脂とを含む無機含有層を備える、蓄電デバイス用セパレータであって、
    前記無機粒子と前記熱可塑性樹脂とを含む無機含有層のMFRが0.05g/10min以上5g/10min以下であり、
    前記無機含有層は開孔を有し、前記開孔の輪郭は、前記熱可塑性樹脂のみ、又は前記熱可塑性樹脂及び前記無機粒子から形成され、
    前記無機含有層の面方向断面において、前記輪郭のうち前記無機粒子から形成される部分の長さ(Lio)と、前記輪郭の長さ及び前記熱可塑性樹脂と前記無機粒子との界面の長さの合計長さ(L)との比率(Lio/L)が、0.05以上0.25以下である、蓄電デバイス用セパレータ。
  2. 前記無機含有層の少なくとも片面にポリプロピレンを主成分とする外層を有し、前記外層のMFRが前記無機含有層のMFRの0.5倍以上3倍以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  3. TD方向の熱収縮率が1%以下である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  4. 前記開孔の孔径が50nm以上2000nm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  5. 前記無機粒子の粒子径が60nm以上2000nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  6. 前記無機含有層と前記外層との膜厚比(前記外層の膜厚/前記無機含有層の膜厚)が、0.3以上3.0以下である、請求項2~5のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  7. 前記無機含有層に含まれる前記無機粒子の割合が、前記無機含有層の全質量を基準として50質量%以上95質量%以下である、請求項1~6にいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  8. 前記外層のMFRが0.05g/10min以上5g/10min以下である、請求項2~7のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  9. 前記無機含有層の厚みが1μm~27μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  10. 総厚みが5μm~30μmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  11. 透気度が400秒/100ml以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
  12. 前記蓄電デバイス用セパレータの厚み14μm当たりの突刺強度が100gf/14μm以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
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