JP2014070206A - 含フッ素ブロックコポリマーおよびその製造方法 - Google Patents

含フッ素ブロックコポリマーおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フッ素ゴムセグメントとしてテトラフルオロエチレン/プロピレン系セグメントを有し、フッ素樹脂セグメントとしてテトラフルオロエチレン/エチレン系セグメントを有する、軟質性、耐熱性、耐薬品性に加えて、機械物性、光透過性などの物性に優れた含フッ素ブロックコポリマーの製造方法の提供。
【解決手段】ラジカル重合開始剤と、特定のヨウ素化合物の存在下に、テトラフルオロエチレン(TFE)とプロピレンとを主成分とする第1のモノマー成分を0〜50℃の重合温度で共重合し、TFE/プロピレン系セグメントを製造する第1の工程と、前記TFE/プロピレン系セグメントの存在下に、TFEとエチレンとを主成分とする第2のモノマー成分を共重合し、前記TFE/プロピレン系セグメントに、TFE/エチレン系セグメントを結合する第2の工程とを有する含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、含フッ素ブロックコポリマーおよびその製造方法に関する。
フッ素樹脂は、耐熱性、耐候性、耐薬品性などに優れることから、一般の炭化水素系材料が使用できないような過酷な環境下にも用いられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという場合がある。)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(以下、ETFEという場合がある。)、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFという場合がある。)等がある。
フッ素樹脂は、例えば、高温環境下に配線される電線の被覆材に用いられる。ところが、フッ素樹脂は柔軟性が不充分なため、フッ素樹脂を被覆材として用いた電線を自由に曲げて、自動車のエンジン周りなどの狭い空間に配線することは困難であった。
また、例えばETFEは、その優れた耐候性、透明性から、ビニールハウス等の農業用フィルムとして使用されている。ところが、ETFEは、一般の農業用ポリオレフィンフィルムに比較して硬く、展張が容易でない。
これらの点から、より軟質なフッ素樹脂が求められている。
フッ素樹脂よりも軟質な材料として、フッ素ゴムセグメントとフッ素樹脂セグメントとを有するブロックコポリマーが検討されている。
例えば、特許文献1の実施例12には、連鎖移動剤であるヨウ素化合物の存在下に、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという場合がある。)とフッ化ビニリデン(以下、VdFという場合がある。)とを共重合させて、フッ素ゴムセグメントを形成した後、さらにテトラフルオロエチレン(以下、TFEという場合がある。)とエチレン(以下、Eという場合がある。)とを共重合させてフッ素樹脂セグメントを形成することにより、フッ素ゴムセグメントとフッ素樹脂セグメントとを有するブロックコポリマーを得ることが記載されている。
特公昭58−4728号公報
しかしながら、該ブロックコポリマーは、フッ素ゴムセグメントがHFP/VdFセグメントであり、VdFに基く単位を有するため、耐薬品性が不充分である。耐薬品性を向上させるためには、フッ素ゴムセグメントとして、HFP/VdFセグメントに代えてTFE/プロピレンセグメントを採用することが考えられる。ところが、特許文献1に記載の方法で、フッ素ゴムセグメントとしてTFE/プロピレンセグメントを有するブロックコポリマーを製造した場合、該ブロックコポリマーは機械物性が不充分であった。以下、プロピレンのことをPという場合がある。
本発明の目的は、フッ素ゴムセグメントとしてTFE/P系セグメントを有し、フッ素樹脂セグメントとしてTFE/E系セグメントを有し、軟質性、耐熱性、耐薬品性に加えて、機械物性、光透過性などの物性に優れた含フッ素ブロックコポリマーの製造方法を提供することである。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]ラジカル重合開始剤と、一般式RI(式中、Rは炭素数3以上のアルキレン基またはフルオロアルキレン基である。)で表されるヨウ素化合物の存在下に、TFEとプロピレンとを主成分とする第1のモノマー成分を0〜50℃の重合温度で共重合し、TFE/P系セグメントを製造する第1の工程と、
前記TFE/P系セグメントの存在下に、TFEとエチレンとを主成分とする第2のモノマー成分を共重合し、前記TFE/P系セグメントに、TFE/E系セグメントを結合する第2の工程と
を有することを特徴とする含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
[2]前記第2の工程の重合温度が0〜50℃である、[1]に記載の含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
[3]前記第1の工程および前記第2の工程の共重合がいずれも乳化重合である、[1]または[2]に記載の含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
[4]前記TFE/P系セグメントと、前記TFE/E系セグメントとの質量比が、10:90〜90:10である、[1]〜[3]のいずれかに記載の含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法で得られ、
前記第1の工程で得られたTFE/P系セグメントの数平均分子量を該TFE/P系セグメントの質量で割った値と、得られた前記含フッ素ブロックポリマーの数平均分子量を該含フッ素ブロックコポリマーの質量で割った値との比が1:0.8〜1:1.2の範囲であることを特徴とする含フッ素ブロックコポリマー。
本発明によれば、フッ素ゴムセグメントとしてTFE/P系セグメントを有し、フッ素樹脂セグメントとしてTFE/E系セグメントを有し、軟質性、耐熱性、耐薬品性に加えて、機械物性、光透過性などの物性に優れた含フッ素ブロックコポリマーを製造できる。
<含フッ素ブロックコポリマーの製造方法>
本発明の含フッ素ブロックコポリマーの製造方法は、フッ素ゴムセグメントとしてTFE/P系セグメントを有し、フッ素樹脂セグメントとしてTFE/E系セグメントを有する含フッ素ブロックコポリマーの製造方法である。
該製造方法は、TFE/P系セグメントを製造する第1の工程と、TFE/P系セグメントにTFE/E系セグメントを結合する第2の工程とを有する。
第1の工程では、ラジカル重合開始剤と、一般式RI(式中、Rは炭素数3以上のアルキレン基またはフルオロアルキレン基である。)で表されるヨウ素化合物の存在下に、TFEとプロピレンとを主成分とする第1のモノマー成分を0〜50℃の重合温度で共重合する。ヨウ素化合物は、連鎖移動剤として作用する。これにより、分子鎖の末端にヨウ素原子を有するTFE/P系セグメントが得られる。
第1のモノマー成分は、モノマーとしてTFEとプロピレンを主成分とし、必要に応じてその他のモノマーを含有することも好ましい。第1のモノマー成分(100モル%)中のTFEとプロピレンとの合計割合は、第1の工程で製造するTFE/P系セグメントにおける、TFEに基く単位とプロピレンに基く単位との合計割合に応じて設定する。
第1の工程で製造するTFE/P系セグメントにおける、TFEに基く単位とプロピレンに基く単位との合計割合は、耐薬品性に優れ、軟質な含フッ素ブロックコポリマーが得られる点から、70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
なお、本明細書において、セグメントにおける単位の割合は、全フッ素含有量の分析および核磁気共鳴分光法(NMR)により求められる。
第1のモノマー成分中のTFEとプロピレンとのモル比は、第1の工程で製造するTFE/P系セグメントにおける、TFEに基く単位とプロピレンに基く単位とのモル比に応じて設定する。
第1の工程で製造するTFE/P系セグメントにおける、TFEに基く単位とプロピレンに基く単位とのモル比は、軟質性、耐熱性、耐薬品性の点から、30:70〜70:30が好ましく、40:60〜60:40がより好ましく、50:50〜60:40が最も好ましい。
その他のモノマーとしては、モノフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ジクロロジフルオロエチレン等のフッ素化オレフィン;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル);エチレン、1−ブテン、イソブチレン等の炭化水素オレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリフルオロスチレン等が挙げられる。その他のモノマーは1種以上を使用できる。
第1のモノマー成分中のその他のモノマーの割合は、第1の工程で製造するTFE/P系セグメントにおける、その他のモノマーに基く単位の割合に応じて設定する。第1の工程で製造するTFE/P系セグメントにおける、その他のモノマーに基く単位の割合は、30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
第1の工程で使用されるヨウ素化合物は、一般式RI(式中、Rは炭素数3以上のアルキレン基またはフルオロアルキレン基である。)で表され、Rの両末端にヨウ素原子が結合したヨウ素化合物である。
一般式RIで表されるヨウ素化合物の具体例としては、1,3−ジヨードプロパン、1,4−ジヨードブタン、1,6−ジヨードヘキサン、1,8−ジヨードオクタン、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン等が挙げられる。Rの炭素数は3〜8が好ましい。一般式RIで表されるヨウ素化合物としては、パーフルオロアルキレン基を有するヨウ素化合物がより好ましく、1,4−ジヨードパーフルオロブタンが特に好ましい。ヨウ素化合物は1種以上を使用できる。
一般式RIで表されるヨウ素化合物は、第1の工程で製造するTFE/P系セグメント中のヨウ素原子含有量が0.01〜5.0質量%となるよう添加されることが好ましく、0.1〜1.0質量%となるよう添加されることがより好ましい。
第1の工程における重合方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法が挙げられ、TFE/P系セグメントの分子量および共重合組成の調整がしやすく、生産性に優れる点から、ガス状の第1のモノマー成分を乳化剤の存在下に水性媒体中で重合する乳化重合が好ましい。
水性媒体としては、水、または水溶性有機溶媒を含む水が好ましく、水溶性有機溶媒を含む水がより好ましい。
水溶性有機溶媒としては、tert−ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール等が挙げられ、tert−ブタノールが好ましい。水溶性有機溶媒は1種以上を使用できる。
水性媒体中における水溶性有機溶媒の含有量は、水100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。
第1の工程で使用されるラジカル重合開始剤としては、水溶性開始剤が好ましい。
水溶性開始剤としては、過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸アルカリ金属塩等。);有機系開始剤(ジコハク酸過酸化物、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩等。);過硫酸塩と還元剤(チオ硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等。)とを組み合わせたレドックス開始剤等が挙げられ、レドックス開始剤が好ましい。第1の工程の重合温度である0〜50℃において、第1のモノマー成分を重合可能にする点から、過硫酸塩としては過硫酸アンモニウムを用いることが好ましい。還元剤としてはヒドロキシメタンスルフィン酸塩を用いることが好ましく、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム塩を用いることがより好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、第1のモノマー成分100質量部に対して、ラジカル重合開始剤を0.001〜10質量部使用することが好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。
レドックス開始剤を使用する場合には、第3成分として、少量の鉄、第一鉄塩などの鉄塩、硫酸銀等を共存させることが好ましく、水溶性鉄塩を共存させることがより好ましい。水溶性鉄塩の具体例としては硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウムなどが挙げられる。
また、レドックス開始剤を使用する場合には、キレート剤を加えることが好ましい。キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩が好ましい。
過硫酸塩の使用量は、水性媒体の100質量部に対して0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部が特に好ましい。
還元剤の使用量は、水性媒体の100質量部に対して0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜1質量部がより好ましく、0.05〜0.5質量部が特に好ましい。
鉄、第一鉄塩などの鉄塩、硫酸銀等の第3成分の使用量は、水性媒体の100質量部に対して0.0001〜0.3質量部が好ましく、0.001〜0.1質量部がより好ましく、0.01〜0.1質量部が特に好ましい。
キレート剤は、水性媒体の100質量部に対して0.0001〜0.3質量部が好ましく、0.001〜0.1質量部がより好ましく、0.01〜0.1質量部が特に好ましい。
第1の工程の重合温度は0〜50℃であり、10〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。重合温度が上記範囲内であると、該第1の工程の後に第2の工程を経て得られる含フッ素ブロックコポリマーは、機械物性、透明性などが優れる。具体的には、該含フッ素ブロックコポリマーは、引張弾性率が低く、引張破断強度、引張破断伸度が高い。また、光透過性が高い。
これは、以下の理由によるものと考えられる。
第1の工程の重合温度が上記範囲内であると、第1の工程により、分子鎖の両末端にヨウ素原子を有するTFE/P系セグメントが高い収率で得られる。分子鎖の両末端にヨウ素原子を有するTFE/P系セグメントの存在下に、第2の工程でTFEとエチレンとを主成分とする第2のモノマー成分を共重合すると、TFE/P系セグメント[P]の両側にTFE/E系セグメント[Q]が結合した[Q]−[P]−[Q]型のトリブロックコポリマーが得られやすい。そのため、第1の工程の重合温度が上記範囲内であると、第1の工程と第2の工程を経て得られる含フッ素ブロックコポリマーの機械物性、透明性などが優れるものと考えられる。
これに対して、第1の工程の重合温度が上記範囲を超えると、第1の工程において、分子鎖の末端がヨウ素原子以外であるTFE/P系セグメントの収率が増加する。分子鎖の末端がヨウ素原子以外であるTFE/P系セグメントの存在下に、第2の工程でTFEとエチレンとを主成分とする第2のモノマー成分を共重合した場合には、優れた機械物性、透明性などを示す上述の[Q]−[P]−[Q]型のトリブロックコポリマーは得られにくい。
一方、第1の工程の重合温度が上記範囲未満であると、充分な重合速度が得られない。
第1の工程の重合圧力(ゲージ圧)は、0.5〜10MPaGが好ましく、1.0〜5.0MPaGがより好ましく、1.0〜3.0MPaGが最も好ましい。重合圧力は、第1のモノマー成分の反応器への供給量(圧入量)により調整できる。重合圧力が上記範囲内であると、重合速度が適切で制御しやすく、生産性にも優れる。
乳化重合法において、水性媒体のpHは7〜14が好ましく、7〜11がより好ましく、7.5〜11がさらに好ましく、8〜10.5が最も好ましい。pHが7以上であると重合性に優れる。
水性媒体のpHは、第1の工程における乳化重合の重合開始から重合終了の間の全期間のうち80%以上が上記範囲内であることが好ましく、90%以上が上記範囲内であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、全期間が上記範囲内であることが最も好ましい。
pHの調整にはpH調整剤およびpH緩衝剤を用いることが好ましい。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等などのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。pH緩衝剤としては、無機塩類等が挙げられる。無機塩類としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。リン酸塩のより好ましい具体例としては、リン酸水素二ナトリウム2水和物、リン酸水素二ナトリウム12水和物等が挙げられる。pH調整剤およびpH緩衝剤は1種以上を使用できる。
乳化剤としては、得られるTFE/P系セグメントや含フッ素ブロックコポリマーのラテックスの機械的安定性および化学的安定性が優れることから、イオン性乳化剤が好ましく、アニオン性乳化剤がより好ましい。
アニオン性乳化剤としては、公知のものが使用できる。具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の炭化水素乳化剤;パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロヘキサン酸アンモニウム等の含フッ素アルカン酸塩:一般式(α)Rf1ORf2COOA(Rf1は炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基であり、Rf2は、直鎖状の含フッ素アルキレン基であり、該含フッ素アルキレン基にはエーテル性の酸素原子を含有してもよく、該含フッ素アルキレン基は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基の側鎖を有してもよく、Aは水素原子、アルカリ金属またはNHである。)で表される含フッ素エーテルカルボン酸化合物(以下、一般式(α)の乳化剤という。)が挙げられる。なお、Rf2の炭素数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましい。
第1の工程で使用する乳化剤としては、含フッ素乳化剤が好ましく、含フッ素アルカン酸塩または一般式(α)の乳化剤がより好ましい。乳化剤は1種以上を使用できる。
乳化剤の使用量は、水性媒体の100質量部に対して、0.01〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が最も好ましい。
上述の第1の工程の後、該第1の工程で生成したTFE/P系セグメントの存在下に、TFEとエチレンを主成分とする第2のモノマー成分を共重合する第2の工程を行う。これにより、TFE/P系セグメントとTFE/E系セグメントとが結合した含フッ素ブロックコポリマーが得られる。該含フッ素ブロックコポリマーは、TFE/P系セグメント[P]の両側にTFE/E系セグメント[Q]が結合した[Q]−[P]−[Q]型のトリブロックコポリマーを主成分とする混合物である。
第2のモノマー成分は、TFEとエチレンを主成分とし、必要に応じてその他のモノマーを含有する。第2のモノマー成分(100モル%)中のTFEとエチレンとの合計割合は、第2の工程で製造するTFE/E系セグメントにおける、TFEに基く単位とエチレンに基く単位との合計割合に応じて設定する。
第2の工程で製造するTFE/E系セグメントにおける、TFEに基く単位とエチレンに基く単位との合計割合は、物性に優れる含フッ素ブロックコポリマーが得られる点から、70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
第2のモノマー成分中のTFEとエチレンとのモル比は、第2の工程で製造するTFE/E系セグメントにおける、TFEに基く単位とエチレンに基く単位とのモル比に応じて設定する。
第2の工程で製造するTFE/E系セグメントにおける、TFEに基く単位とエチレンに基く単位とのモル比は、耐熱性、重合性の点から、30:70〜70:30が好ましく、45:55〜65:35がより好ましく、50:50〜65:35が最も好ましい。
その他のモノマーとしては、モノフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、ジクロロジフルオロエチレン等のフッ素化オレフィン;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル);パーフルオロブチルエチレン等のパーフルオロアルキルエチレン;P、1−ブテン、イソブチレン等の炭化水素オレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、トリフルオロスチレン等が挙げられる。その他のモノマーは1種以上を使用できる。
第2のモノマー成分中のその他のモノマーの量は、第2の工程で製造するTFE/E系セグメントにおける、その他のモノマーに基く単位の割合に応じて設定する。第2の工程で製造するTFE/E系セグメントにおける、その他のモノマーに基く単位の割合は、30モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下が最も好ましい。
第1の工程で重合圧力一定の状態で供給する第1のモノマー成分と、第2の工程で重合圧力一定の状態で供給する第2のモノマー成分との質量比は、製造する含フッ素ブロックコポリマーにおける、TFE/P系セグメントとTFE/E系セグメントとの質量比とほぼ一致する。
本発明で製造する含フッ素ブロックコポリマーにおけるTFE/P系セグメントとTFE/E系セグメントとの質量比は、軟質性、耐熱性、機械強度、透明性の点から、10:90〜90:10が好ましく、20:80〜80:20がより好ましく、30:70〜70:30がさらに好ましい。
第2の工程における重合方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法が挙げられる。第1の工程と同様に、ガス状の第2のモノマー成分を乳化剤の存在下に水性媒体中で重合する乳化重合が、分子量および共重合組成の調整の点から好ましい。第2の工程は、第1の工程により得られたTFE/P系セグメントを含むラテックス中に、第2のモノマー成分を供給して、共重合する方法が好ましい。具体的には、第1の工程後、未反応モノマーを反応器から空放した後に、第2のモノマー成分を反応器に仕込み、重合を継続させる。または、第1の工程で製造されたTFE/P系セグメントを含むラテックスを反応器から一旦取り出した後、再度、反応器に仕込み、ついで、第2のモノマー成分を反応器に仕込んで重合を継続させてもよい。
第2の工程の重合温度は0〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましく、20〜30℃がさらに好ましい。重合温度が上記範囲内であると、第1の工程で得られたTFE/P系セグメント[P]の両側にTFE/E系セグメント[Q]が結合した[Q]−[P]−[Q]型のトリブロックコポリマーを主成分とする含フッ素ブロックコポリマーが得られやすい。そのため、得られた含フッ素ブロックコポリマーは、機械特性、透明性などに優れる。
第2の工程の重合条件(重合圧力(ゲージ圧)、pH等。)は、第1の工程と同様に設定できる。
第2の工程後、得られたラテックスを公知の方法で凝集させることにより、含フッ素ブロックコポリマーを単離する。凝集方法としては、金属塩を添加して塩析する方法、塩酸等の無機酸を添加する方法、機械的せん断による方法、凍結および解凍による方法等が挙げられる。
本発明の製造方法における重合速度は、反応器の単位体積および単位時間あたりの含フッ素ブロックコポリマーの生成量として、1〜100g/L・時間が好ましく、3〜50g/L・時間がより好ましく、5〜30g/L・時間がさらに好ましい。重合速度が上記範囲内であると、生産性が優れるとともに、充分な分子量を備えた含フッ素ブロックコポリマーが得られやすい。重合速度は、重合圧力、仕込むラジカル重合開始剤量などにより制御できる。
<含フッ素ブロックコポリマー>
本発明の含フッ素ブロックコポリマーは、上述した製造方法により製造される。該含フッ素ブロックコポリマーの分子量はQ値を用いて目安にすることができる。Q値は、後述する方法で測定される溶融時の流れ性を示す値であり、この値が大きいと分子量が小さく、小さいと分子量が大きいことを示す。300℃におけるQ値は、0.1〜200mm/sが好ましく、0.3〜100mm/sがより好ましい。Q値が上記範囲内であると、含フッ素ブロックコポリマーは、より優れた耐薬品性と物性とを示す。Q値は、重合速度、ヨウ素化合物の使用量、重合圧力、重合圧力一定の状態で仕込んだモノマー量などにより制御できる。
また、比較的分子量が小さいポリマーについては、質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定することが可能である。本明細書においてMw及びMnは、分子量既知の標準ポリスチレン試料を用いて作成した検量線を用い、サイズ排除クロマトグラフィーで測定することによって得られるポリスチレン換算分子量である。
また、本発明の含フッ素ブロックコポリマーは、第1の工程を上述の重合温度で実施しているために、分子鎖の両末端にヨウ素原子を有するTFE/P系セグメントが高い収率で得られる。そのため、第1の工程で得られたTFE/P系セグメントのMnを該TFE/P系セグメントの質量(収量)で割った値(S)と、第2の工程後に得られた含フッ素ブロックポリマーのMnを該含フッ素ブロックコポリマーの質量(収量)で割った値(T)とがほぼ等しく、これらの比、すなわちS:Tが1:0.8〜1:1.2の範囲にある。第1の工程を高温で行うと、分子鎖の末端がヨウ素原子以外であるTFE/P系セグメントの収率が増加し、その結果、S:Tは上記範囲外となる。
本発明の含フッ素ブロックコポリマーは、軟質性、耐熱性、耐薬品性に加えて、機械物性、光透過性などの物性に優れる。そのため、該含フッ素ブロックコポリマーは、自動車の配線等に用いられる軟質電線の被覆材、農業用フィルム等に好適に用いられる。
以下、本発明について、実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
<評価>
(1)セグメントにおける各単位のモル比
各セグメントにおける各単位のモル比は第1の工程及び第2の工程で得られたポリマーの全フッ素含有量を測定することにより求めることができる。なお、以下の例では、その他のモノマーを共重合していないので、NMR分析を実施しなかった。
(2)Q値(流れ性)
フローテスター(島津製作所製)を用いて測定した。ダイスは、直径2.095mm、長さ8mmのものを用いた。荷重7kg重、温度300℃で測定対象のポリマーを押出し、流出する速度(mm/s)をQ値とした。
(3)分子量および分子量分布
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)装置(ポリマーラボラトリーズ社製、PL−GPC220)を用いて測定した。検出器には粘度検出器を用い、カラムには昭和電工社製Shodex UT806M×2本(直列)を用いた。
測定対象のポリマーの4mgを2mlのイソホロンに200℃で溶解し、カラム温度を200℃、移動相の流量を1.0ml/分として、ポリスチレン換算の分子量(質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn))と、分子量分布(Mw/Mn)とを求めた。但し、TFE/エチレンセグメントの分子量が高すぎるとブロックコポリマーは溶媒に完全には溶解しないため、低分子量体(質量平均分子量が約150000以下)のポリマーに対してのみ測定を行った。
(4)融点および5%重量減少温度
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製TG/DTA6300を用いて、窒素雰囲気下10℃/分の昇温速度で測定し、吸熱ピークの頂点の温度を融点とし、重量が5%減少した温度を5%重量減少温度とした。
(5)引張破断強度、引張破断伸度
300℃で溶融プレス成形した厚み0.3mmのシートを打ち抜いてミクロダンベル形状の試料を作成した。この試料を用いてオリエンテック製テンシロンRTC−210で引張速度200mm/分で引張破断強度、引張破断伸度を測定した。
(6)引張弾性率
300℃で溶融プレス成形した厚み0.3mmのシートを打ち抜いて幅5.0mm長さ30mmの試料を作成した。この試料を用いて、アイティー計測社製動的粘弾性測定装置DVA-200で周波数10Hzで動的引張弾性率を測定した。
(7)光透過率
300℃で溶融プレス成形した厚み0.1mmのシートを用いて、島津製作所社製分光光度計UV−3100で測定した(波長:800nm)。
[重合例1] TFE/P共重合体(TFE/P系セグメント)の製造(第1の工程):重合温度25℃;分子量及び分子量分布が測定できるような低分子量体。
攪拌用アンカー翼を備えた内容積200mlのステンレス鋼製の耐圧反応器の内部を脱気した後、該反応器に、イオン交換水の85g、リン酸水素二ナトリウムの2.4g、水酸化ナトリウムの0.04g、tert−ブタノールの12.2g、含フッ素乳化剤としてCOCFCFOCFCOONHの0.83g、過硫酸アンモニウムの0.6g、1,4−ジヨードパーフルオロブタンの0.62gを添加した。さらに、イオン交換水の18.4gに、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物の0.022gと、硫酸第一鉄7水和物の0.017gとを溶解させた水溶液を反応器に加えた。ついで、25℃でTFE/P=88/12(モル比)のモノマー混合ガス(第1のモノマー成分)を、反応器の内圧が1.55MPaGになるように圧入した。アンカー翼を280rpmで回転させ、水酸化ナトリウムでpHを10.0に調整したヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(以下、ロンガリットと記す。)の1.2質量%水溶液(以下、ロンガリット1.2質量%水溶液と記す。)を反応器に加え、重合反応を開始させた。以降、ロンガリット1.2質量%水溶液を断続的に反応器に圧入した。
重合温度を25℃に維持して重合を進行させ、重合の進行に伴い、反応器内の圧力が低下するので、反応器の内圧が1.55MPaGに維持するようにTFE/P=56/44(モル比)のモノマー混合ガス(第1のモノマー成分)を連続的に圧入して重合反応を続けた。TFEとプロピレンからなるモノマー混合ガスの圧入量の総量が9.4gとなった時点で、ロンガリット1.2質量%水溶液の添加を停止し、反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止し、TFE/P共重合体Aのラテックスを得た。
得られたラテックスのpHは8.0であった。ロンガリット1.2質量%水溶液の添加量は6.5gであった。重合時間は4時間30分であった。TFE/P共重合体Aのラテックスを冷凍庫に一晩入れて凍結後、解凍し、TFE/P共重合体Aを得た。その後、TFE/P共重合体Aをろ過、イオン交換水により洗浄し、100℃のオーブンで12時間乾燥させ、白色のTFE/P共重合体Aの9.4gを得た。TFE/P共重合体A中のTFEに基づく単位とプロピレンに基づく単位との比率は、56:44(モル比)であった。TFE/P共重合体Aの数平均分子量(Mn)は23000、質量平均分子量(Mw)は35000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。TFE/P共重合体Aの融点は無く、5%重量減少温度は403℃であった。TFE/P共重合体Aは流動性が大きすぎて、300℃でのQ値を測定できなかった。
[重合例2]TFE/P共重合体(TFE/P系セグメント)の製造(第1の工程):重合温度25℃。
1,4−ジヨードパーフルオロブタンの0.17gを使用した以外は、重合例1と同様の操作を行って、TFE/P共重合体Bのラテックスを得た(第1の工程)。得られたラテックスのpHは8.0であった。ロンガリット1.2質量%水溶液の添加量は6.5gであった。重合時間は4時間15分であった。重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色のTFE/P共重合体Bの9.7gを得た。TFE/P共重合体B中のTFEに基づく単位とプロピレンに基づく単位との比率は、56:44(モル比)であった。
TFE/P共重合体Bの融点は無く、5%重量減少温度は405℃であった。TFE/P共重合体Bは流動性が大きすぎて、300℃でのQ値を測定できなかった。
[重合例3]TFE/P共重合体(TFE/P系セグメント)の製造(第1の工程):重合温度80℃;分子量及び分子量分布が測定できるような低分子量体。
重合例1と同等の反応器の内部を脱気した後、該反応器に、イオン交換水の103.4g、リン酸水素二ナトリウムの2.4g、水酸化ナトリウムの0.04g、tert−ブタノールの12.2g、含フッ素乳化剤としてCOCFCFOCFCOONHの0.83g、1,4−ジヨードパーフルオロブタンの0.62gを添加した。ついで、80℃でTFE/P=88/12(モル比)のモノマー混合ガス(第1のモノマー成分)を、反応器の内圧が2.00MPaGになるように圧入した。アンカー翼を280rpmで回転させ、過硫酸アンモニウムの2.0質量%水溶液を反応器に圧入した。以降、過硫酸アンモニウムの2.0質量%の水溶液を断続的に圧入させた。重合温度を80℃に維持して重合を進行させ、重合の進行に伴い、反応器内の圧力が低下するので、反応器の内圧が2.00MPaGに維持するようにTFE/P=56/44(モル比)のモノマー混合ガス(第1のモノマー成分)を連続的に圧入して重合反応を続けた。TFEとプロピレンからなるモノマー混合ガスの圧入量の総量が9.4gとなった時点で、過硫酸アンモニウム2質量%水溶液の添加を停止し、反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止し、TFE/P共重合体Cのラテックスを得た。
得られたラテックスのpHは8.2であった。過硫酸アンモニウム2質量%水溶液の添加量は15gであった。重合時間は6時間30分であった。重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色のTFE/P共重合体Cの9.5gを得た。TFE/P共重合体C中のTFEに基づく単位とプロピレンに基づく単位との比率は、56:44(モル比)であった。TFE/P共重合体Cの数平均分子量(Mn)は15000、質量平均分子量(Mw)は27000、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。TFE/P共重合体Cの融点は無く、5%重量減少温度は402℃であった。TFE/P共重合体Cは流動性が大きすぎて、300℃でのQ値を測定できなかった。
[重合例4]TFE/P共重合体(TFE/P系セグメント)の製造(第1の工程):重合温度80℃。
1,4−ジヨードパーフルオロブタンの0.10gを使用した以外は重合例3と同様な操作によって重合を行った。
得られたTFE/P共重合体DのラテックスのpHは8.2であった。過硫酸アンモニウム2質量%水溶液の添加量は15gであった。重合時間は6時間10分であった。重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色のTFE/P共重合体Dの9.5gを得た。TFE/P共重合体D中のTFEに基づく単位とプロピレンに基づく単位との比率は、56:44(モル比)であった。TFE/P共重合体Dの融点は無く、5%重量減少温度は405℃であった。TFE/P共重合体Dは流動性が大きすぎて、300℃でのQ値を測定できなかった。
[実施例1]含フッ素ブロックコポリマーの製造:重合温度25℃;分子量、分子量分布が測定できるような低分子量体。
重合例1と同様の操作を行って、TFE/P共重合体Aのラテックスを得た。反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止した後、アンカー翼の回転を止め、反応器内の未反応モノマーを大気圧まで空放した。
その後、アンカー翼を280rpmで回転させ、反応器の内温を25℃としてTFE/E=83/17(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を、反応器の内圧が1.1MPaGになるように圧入した。そして、ロンガリット1.2質量%水溶液を反応器に加え、重合反応を再開させた(第2の工程)。その後、断続的にロンガリット1.2%質量%水溶液を圧入した。重合の進行に伴い、反応器内の圧力が低下するので、反応器の内圧が1.1MPaGを維持するようにTFE/E=54/46(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を連続的に圧入して、重合反応を続けた。TFEとエチレンからなるモノマー混合ガスの圧入量の総量が11.5gとなった時点で、ロンガリット1.2質量%水溶液の添加を停止し、反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止し、含フッ素ブロックコポリマーA1のラテックスを得た。得られたラテックスのpHは8.0であった。重合反応を再開させた後のロンガリット1.2質量%の水溶液の添加量は、16.0gであり、重合時間は4時間30分であった。
重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色の含フッ素ブロックコポリマーA1の21.2gを得た。TFE/P系セグメントと、TFE/E系セグメントとの質量比は、重合例1で得られたTFE/P共重合体A量及び実施例1で得られた含フッ素ブロックコポリマーA1量よりの計算値44:56であった。またTFE/E系セグメント中のTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位との比率は、54:46(モル比)であった。
含フッ素ブロックコポリマーA1の数平均分子量(Mn)は56000、質量平均分子量(Mw)は110000、分子量分布(Mw/Mn)は2.0であった。重合例1のTFE/P共重合体Aの収量は9.4gで、実施例1の含フッ素ブロックコポリマーA1の収量は21.2gであった。重合例1の第1の工程で得られたTFE/P共重合体AのMnをTFE/P共重合体Aの質量で割った値(S)と、実施例1で得られた含フッ素ブロックコポリマーA1のMnを含フッ素ブロックコポリマーA1の質量で割った値(T)との比S:Tは、(23000/9.4):(56000/21.2)=1:1.08であった。このことは、TFE/P共重合体A分子の数と含フッ素ブロックコポリマーA1分子の数がほぼ同じであることを示していて、含フッ素ブロックコポリマーA1にはTFE/Eセグメントのみを含むポリマーは殆ど存在していないことが示唆される。
含フッ素ブロックコポリマーA1の融点は249℃であり、5%重量減少温度は431℃であった。含フッ素ブロックコポリマーA1は流動性が大きすぎて、300℃でのQ値は測定できなかった。
[比較例1]含フッ素ブロックコポリマーの製造:重合温度は第1の工程、第2の工程ともに80℃;分子量、分子量分布が測定できるような低分子量体。
重合例3と同様の操作を行って、TFE/P共重合体Cのラテックスを得た(第1の工程)。反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止した後、アンカー翼の回転を止め、反応器内の未反応モノマーを大気圧まで空放した。
その後、反応器の内温を80℃としてTFE/E=83/17(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を、反応器の内圧が1.60MPaGになるように圧入した。そして、過硫酸アンモニウムの2.0質量%水溶液を断続的に圧入して、重合反応を再開させた(第2の工程)。重合の進行に伴い、反応器内の圧力が低下するので、反応器の内圧が1.60MPaGを維持するようにTFE/E=54/46(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を連続的に圧入して、重合反応を続けた。TFEとエチレンからなるモノマー混合ガスの圧入量の総量が11.5gとなった時点で、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液の添加を停止し、反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止し、含フッ素ブロックコポリマーC1のラテックスを得た。得られたラテックスのpHは8.3であった。重合反応を再開させた後の過硫酸アンモニウム2質量%の水溶液の添加量は、18.0gであり、重合時間は4時間30分であった。
重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色の含フッ素ブロックコポリマーC1の20.8gを得た。TFE/P系セグメントと、TFE/E系セグメントとの質量比は、重合例3で得られたTFE/P共重合体C量及び比較例1で得られた含フッ素ブロックコポリマーC1量よりの計算値47:53であった。またTFE/E系セグメント中のTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位との比率は、54:46(モル比)であった。
含フッ素ブロックコポリマーC1の数平均分子量(Mn)は25000、質量平均分子量(Mw)は62000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5であった。重合例3の第1の工程で得られたTFE/P共重合体CのMnをTFE/P共重合体Cの質量で割った値(S)と、比較例1で得られた含フッ素ブロックコポリマーC1のMnを含フッ素ブロックコポリマーC1の質量で割った値(T)との比S:Tは、(15000/9.5):(25000/20.8)=1:0.76であった。このことは、重合例3で生成したTFE/P共重合体Cの分子数よりも比較例1で得られた含フッ素ブロックコポリマーC1の分子数の方が多いことを示していて、含フッ素ブロックコポリマーC1にはTFE/Eセグメントのみを含むポリマーがかなり存在していることが示唆される。重合例3の重合温度が高いためにプロピレン等にポリマーラジカルが連鎖移動してしまい、生成したTFE/P共重合体Cには末端がヨウ素でないものがかなり含まれているためと考えられる。
含フッ素ブロックコポリマーC1の融点は249℃であり、5%重量減少温度は430℃であった。含フッ素ブロックコポリマーC1は流動性が大きすぎて、300℃でのQ値は測定できなかった。
[実施例2]含フッ素ブロックコポリマーの製造:重合温度は第1の工程、第2の工程ともに25℃。
重合例2と同様の操作を行って、TFE/P共重合体Bのラテックスを得た(第1の工程)。反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止した後、アンカー翼の回転を止め、反応器内の未反応モノマーを大気圧まで空放した。
その後、実施例1と同様の操作により含フッ素ブロックコポリマーB1のラテックスを得た。得られたラテックスのpHは8.0であった。重合反応を再開させた後のロンガリット1.2質量%の水溶液の添加量は、16.0gであり、重合時間は4時間15分であった。重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色の含フッ素ブロックコポリマーB1の20.6gを得た。
TFE/P系セグメントと、TFE/E系セグメントとの質量比は、重合例2で得られたTFE/P共重合体B量及び実施例2で得られた含フッ素ブロックコポリマーB1量よりの計算値47:53であった。またTFE/E系セグメント中のTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位との比率は、54:46(モル比)であった。含フッ素ブロックコポリマーB1の融点は252℃であり、5%重量減少温度は433℃であった。300℃でのQ値は11.7mm/sであった。25℃周波数10Hzでの引張弾性率は120MPa、引張破断強度は14.8MPa、引張破断伸度は440%、波長800nmの光透過率は90.9%であった。これらの結果を表1に示す。
[実施例3]含フッ素ブロックコポリマーの製造:重合温度は第1の工程25℃、第2の工程80℃。
重合例2と同様の操作を行って、TFE/P共重合体Bのラテックスを得た(第1の工程)。反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止した後、アンカー翼の回転を止め、反応器内の未反応モノマーを大気圧まで空放した。その後、アンカー翼を280rpmで回転させ、反応器の内温を80℃としてTFE/E=83/17(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を、反応器の内圧が1.60MPaGになるように圧入した。そして、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液を反応器に加え、重合反応を再開させた(第2の工程)。その後、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液を断続的に反応器に加えた。重合の進行に伴い、反応器内の圧力が低下するので、反応器の内圧が1.60MPaGを維持するようにTFE/E=54/46(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を連続的に圧入して、重合反応を続けた。TFEとエチレンからなるモノマー混合ガスの圧入量の総量が11.5gとなった時点で、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液の添加を停止し、反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止し、含フッ素ブロックコポリマーB2のラテックスを得た。得られたラテックスのpHは8.0であった。重合反応を再開させた後の過硫酸アンモニウムの2.0質量%の水溶液の添加量は、6.0gであり、重合時間は4時間30分であった。
重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色の含フッ素ブロックコポリマーB2の21.0gを得た。
TFE/P系セグメントと、TFE/E系セグメントとの質量比は、重合例2で得られたTFE/P共重合体B量及び実施例3で得られた含フッ素ブロックコポリマーB2量よりの計算値46:54であった。またTFE/E系セグメント中のTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位との比率は、54:46(モル比)であった。該含フッ素ブロックコポリマーB2の融点は250℃であり、5%重量減少温度は430℃であった。300℃でのQ値は15.7mm/sであった。25℃周波数10Hzでの引張弾性率は115MPa、引張破断強度は12.5MPa、引張破断伸度は450%、波長800nmの光透過率は91.0%であった。これらの結果を表1に示す。
[比較例2]ブロックコポリマーの製造:重合温度は第1の工程80℃、第2の工程25℃
重合例4と同様の操作を行って、TFE/P共重合体Dのラテックスを得た(第1の工程)。反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止した後、アンカー翼の回転を止め、反応器内の未反応モノマーを大気圧まで空放した。
その後、イオン交換水18.4gに過硫酸アンモニウムの0.6g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物の0.022gと、硫酸第一鉄7水和物の0.017gとを溶解させた水溶液を仕込み、実施例2と同様の操作により含フッ素ブロックコポリマーD1のラテックスを得た。得られたラテックスのpHは8.0であった。重合反応を再開させた後のロンガリット1.2質量%の水溶液の添加量は、16.0gであり、重合時間は4時間であった。
重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色の含フッ素ブロックコポリマーD1の20.6gを得た。
TFE/P系セグメントと、TFE/E系セグメントとの質量比は、重合例4で得られたTFE/P共重合体D量及び比較例2で得られた含フッ素ブロックコポリマーD1量よりの計算値46:54であった。またTFE/E系セグメント中のTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位との比率は、54:46(モル比)であった。含フッ素ブロックコポリマーD1の融点は252℃であり、5%重量減少温度は431℃であった。300℃でのQ値は15.4mm/sであった。25℃周波数10Hzでの引張弾性率は120MPa、引張破断強度は10.8MPa、引張破断伸度は320%、波長800nmの光透過率は88.8%であった。これらの結果を表1に示す。
[比較例3]含フッ素ブロックコポリマーの製造:重合温度は、第1の工程、第2の工程ともに80℃。
重合例4と同様の操作を行って、TFE/P共重合体Dのラテックスを得た(第1の工程)。反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止した後、アンカー翼の回転を止め、反応器内の未反応モノマーを大気圧まで空放した。
その後、反応器の内温を80℃としてTFE/E=83/17(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を、反応器の内圧が1.60MPaGになるように圧入した。そして、過硫酸アンモニウムの2.0質量%水溶液を断続的に圧入して、重合反応を再開させた(第2の工程)。重合の進行に伴い、反応器内の圧力が低下するので、反応器の内圧が1.60MPaGを維持するようにTFE/E=54/46(モル比)のモノマー混合ガス(第2のモノマー成分)を連続的に圧入して、重合反応を続けた。TFEとエチレンからなるモノマー混合ガスの圧入量の総量が11.5gとなった時点で、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液の添加を停止し、反応器の内温を10℃まで冷却し、重合反応を停止し、含フッ素ブロックコポリマーD2のラテックスを得た。得られたラテックスのpHは8.3であった。重合反応を再開させ後の過硫酸アンモニウム2質量%の水溶液の添加量は、16.0gであり、重合時間は4時間30分であった。
重合例1と同様に凍結、解凍、洗浄、乾燥を行い、白色の含フッ素ブロックコポリマーD2の21.0gを得た。
TFE/P系セグメントと、TFE/E系セグメントとの質量比は、TFE/P共重合体D量及び含フッ素ブロックコポリマーD2量よりの計算値45:55であった。またTFE/E系セグメント中のTFEに基づく単位とエチレンに基づく単位との比率は、54:46(モル比)であった。含フッ素ブロックコポリマーD2の融点は254℃であり、5%重量減少温度は430℃であった。300℃でのQ値は27.0mm/sであった。25℃周波数10Hzでの引張弾性率は120MPa、引張破断強度は10.5MPa、引張破断伸度は280%、波長800nmの光透過率は85.5%であった。これらの結果を表1に示す。
[比較例4]TFE/E共重合体とTFE/P共重合体とのブレンド
TFE/E共重合体(フルオンLM730、旭硝子(株)製)とTFE/P共重合体(アフラス150CS、旭硝子(株)製)とを(株)東洋精機製作所製ラボプラストミルにて、300℃で溶融混合した。TFE/E共重合体とTFE/P共重合体との質量比は、55:45とした。
得られた混合物の融点、5%重量減少温度、300℃でのQ値は表1に示すとおりであった。また、表1に示すとおり、25℃周波数10Hzでの引張弾性率は230MPa、引張破断強度は17.3MPa、引張破断伸度は274%、波長800nmの光透過率は86.0%であった。
Figure 2014070206
以上の結果から、本発明の方法で得られたTFE/EセグメントとTFE/Pセグメントを有するブロックコポリマーは、引張弾性率が低く、引張破断強度、引張破断伸度が高く、光透過性が高い。よって、軟質電線の被覆材として、また、展張性に優れるビニールハウス等の農業用フィルムとして、適している。

Claims (5)

  1. ラジカル重合開始剤と、一般式RI(式中、Rは炭素数3以上のアルキレン基またはフルオロアルキレン基である。)で表されるヨウ素化合物の存在下に、テトラフルオロエチレンとプロピレンとを主成分とする第1のモノマー成分を0〜50℃の重合温度で共重合し、テトラフルオロエチレン/プロピレン系セグメントを製造する第1の工程と、
    前記テトラフルオロエチレン/プロピレン系セグメントの存在下に、テトラフルオロエチレンとエチレンとを主成分とする第2のモノマー成分を共重合し、前記テトラフルオロエチレン/プロピレン系セグメントに、テトラフルオロエチレン/エチレン系セグメントを結合する第2の工程とを有することを特徴とする含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
  2. 前記第2の工程の重合温度が0〜50℃である、請求項1に記載の含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
  3. 前記第1の工程および前記第2の工程の共重合がいずれも乳化重合である、請求項1または2に記載の含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
  4. 前記テトラフルオロエチレン/プロピレン系セグメントと、前記テトラフルオロエチレン/エチレン系セグメントとの質量比が、10:90〜90:10である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素ブロックコポリマーの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法で得られ、
    前記第1の工程で得られたテトラフルオロエチレン/プロピレン系セグメントの数平均分子量を該テトラフルオロエチレン/プロピレン系セグメントの質量で割った値と、得られた前記含フッ素ブロックポリマーの数平均分子量を該含フッ素ブロックコポリマーの質量で割った値との比が1:0.8〜1:1.2の範囲であることを特徴とする含フッ素ブロックコポリマー。
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