JP2014070132A - ポリエステル原料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリエステルからポリエステル原料を製造するに際して廃棄物発生量が少なく、エネルギー効率に優れたオリゴマーまたはモノマーの製造方法を提供することにある。
【解決手段】上記課題は、ポリエステル集合体に含まれるポリエステルから、(a)ポリエステルを解重合する工程、(b)ポリエステルを解重合したあとメタノールでエステル交換させる工程、(c)ポリエステルとメタノールを反応させる工程、(d)ポリエステルを水と反応させる工程のいずれかによりポリエステル原料を製造し、残渣の一部を燃料と共に燃焼させ得られた熱量を工程(a)〜(d)に供給する工程を含み、特定の触媒を使用し、残渣中の金属原子濃度、残渣の燃焼量、燃料中の硫黄濃度、燃料の燃焼量が特定の数式を満たすように実施するポリエステル原料の製造工程によって、上記課題を解決することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステルからオリゴマーまたはモノマーを製造するに当たり、廃棄物発生量が少なく、エネルギー効率に優れたオリゴマーまたはモノマーの製造方法に関するものである。
多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合重合によって得られる高分子化合物(以下、ポリエステルと略記することがある)は、非常に強い繊維となり、皺にもなりにくく、吸湿性が少なく、熱可塑性があり、酸やアルカリに強いという特長を持っている。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートといったポリエステルは、その優れた特性により繊維、フィルム、樹脂等として広く用いられているが、これらの製造工程において発生する繊維状、フィルム状、樹脂状等のポリエステル屑の有効利用はコストの面からのみならず環境問題も含め大きな課題となっている。
その処理方法としてマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルによる各種の提案が成されている。このうちマテリアルリサイクルではペットボトル等のポリエステル樹脂屑に関しては、自治体を中心に回収され積極的な再利用が実施されているが、繊維屑といった異素材を含む製品に関しては、このリサイクル方法を適用することが極めて困難であり、その実施例はほとんどない。また、ポリエステル廃棄物を燃料に転化するサーマルリサイクルは、ポリエステル廃棄物の燃焼熱の再利用という利点を有するが、発熱量が比較的低く、多量のポリエステル廃棄物を燃焼させることに他ならないため、ポリエステル原料の損失という問題点があり、省資源の面から好ましくない。
これに対してポリエステル廃棄物を原料モノマーに再生するケミカルリサイクルでは、再生に伴う品質の低下が少なく、クローズドループのリサイクルとして優れている。ポリエステルを主成分とする集合体より、ポリエステルを構成するオリゴマーまたはモノマーを回収する方法としては、例えば、ポリアルキレンテレフタレートをエチレングリコール(以下、EGと略記することがある。)で解重合し、次いでメタノールでエステル交換反応させて、ポリエステル原料であるテレフタル酸ジメチルエステル(以下、DMTと略記することがある。)を得る方法(例えば、特許文献1参照。)、ポリアルキレンテレフタレートの解重合物を精製して再びポリエステルとする方法(例えば、特許文献2参照。)、およびポリエステルを加水分解する方法などが知られている。
いずれの方法でも、反応条件を緩和するために触媒を添加することが好ましく、触媒としては、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の酢酸塩、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の酢酸塩、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ土類金属の水酸化物、からなる群より選ばれた少なくとも1種の物質が使用されることが多い。しかしながら、これらの触媒を使用すると多価カルボン酸成分と反応して多価カルボン酸の金属塩を形成する。この金属塩は、最終的には多価アルコールを蒸留などで回収した後の残渣に濃縮されて廃棄されることが多い。
一方、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含有する燃料の燃焼方法としては、通常のボイラーでは酸化ナトリウムによる腐食が顕著となるため、ソーダ灰回収ボイラーのような特殊ボイラーで燃焼する方法(例えば、特許文献3参照。)、にあるように特別な材料ならびに除害設備を設置する方法が知られている。しかしながら、現実問題として、このような特殊ボイラーを設置するためには高額な設備投資が必要となるため、ポリエステルを主成分とする集合体より、ポリエステルを構成するオリゴマーまたはモノマーを回収する工程を持つポリエステルリサイクル業者は特殊ボイラーを設置できず、多量の残渣処理を専門の処理業者に委託しなければならないといった問題点があった。ここで、ポリエステルを主成分とする集合体とは、ポリエステル単体、ポリエステルと異素材との混合物、ポリエステルと異素材との共重合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の集合体であって、全重量のうち、70%以上をポリエステル成分の重量が占める集合体のことをいう。以下、ポリエステル成分が100%のポリエステル単体であっても、ポリエステルを主成分とする集合体と表現することがある。
特許第4067306号公報 特許第3684348号公報 特表平7−502574号公報
本発明は、上記背景技術を鑑みてなされたもので、その目的は、ポリエステルを主成分とする集合体より、ポリエステルを構成するポリエステル原料であるオリゴマーまたはモノマーを製造するに際して発生した残渣に着目し、残渣の燃焼に使用するボイラーの腐食を回避しつつ燃焼させ、廃棄物発生量が少なく、エネルギー効率に優れたポリエステル原料の製造方法を提供することにある。
本発明者らの研究によれば、ポリエステル集合体よりポリエステルを構成するポリエステル原料であるオリゴマーまたはモノマーを製造する方法であって、下記工程(1)〜(3)を含み、
(1)該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを多価アルコールで解重合させる工程、該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを多価アルコールにて解重合して得られた物質を触媒存在下メチルアルコールとエステル交換させる工程、該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを触媒存在下メチルアルコールと反応させる工程または該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを触媒存在下水と反応させる工程のいずれかひとつの工程によりポリエステル原料を製造する反応工程
(2)工程(1)の反応工程途中または反応工程後の反応物から工程(1)で解重合に使用した多価アルコールおよび/または該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを構成し、ポリエステル原料の1種である多価アルコールを回収する工程
(3)工程(2)で生成する多価アルコールを回収した後の残渣を、少なくとも1種の燃料と同時に燃焼させ、燃焼により発生した熱量の一部または全部を、該ポリエステル集合体からポリエステル原料を製造する工程および/または製造した該ポリエステル原料からポリエステルを製造する工程に供給する工程
更に、
前記工程(1)において用いられる触媒が、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の酢酸塩、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の酢酸塩、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシドおよびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含み、かつ該触媒の添加量を前記ポリエステル集合体の重量を基準として0.1〜5.0重量モル%とし、
かつ、前記工程(3)において、該残渣に含まれるアルカリ金属原子の重量モル濃度[重量モル%](CA)、アルカリ土類金属原子の重量モル濃度[重量モル%](CB)、該残渣の単位時間当たりの燃焼量(FC)[kg/hr]、燃料に含まれる硫黄原子の重量モル濃度[重量モル%](CS)および該燃料の単位時間当たりの燃焼量(FS)[kg/hr]との関係が、(CA/2+CB)×FC≦CS×FSを満足するように燃焼条件を制御することを特徴とするポリエステルからオリゴマーまたはモノマーを製造する方法、
によりポリエステルからオリゴマーまたはモノマーを低コスト、低廃棄物にて回収することができ上記目的が達成できることが見出された。
本発明のポリエステル原料であるであるオリゴマーまたはモノマーを製造する方法によれば、高い収率でポリエステルからオリゴマーまたはモノマーを回収、さらに多価アルコールを蒸留などで回収した後の残渣をボイラーの腐食を防止しつつ燃焼して、自工程内で熱回収することができる。このため、総合すると廃棄物発生量が少なく、エネルギー効率に優れた条件でポリエステルからポリエステル原料であるオリゴマーまたはモノマーを高い収率で製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について1例を用いて説明するが、本発明は、この例に限定されるものではない。
本発明に従う製造方法を実行するためにはまず、(a)ポリエステルを主成分とする集合体に含まれているポリエステルを多価アルコールで解重合反応させる工程、(b)ポリエステルを主成分とする集合体に含まれているポリエステルを多価アルコールにて解重合した物質を触媒存在下メチルアルコールとエステル交換反応させる工程、(c)ポリエステルを主成分とする集合体に含まれているポリエステルを触媒存在下メチルアルコールと反応させる工程、(d)ポリエステルを主成分とする集合体に含まれているポリエステルを触媒存在下水と反応させる工程のいずれかひとつの反応工程を通過させ、ポリエステルをオリゴマーまたはモノマーとすることが必要である。
ここで、ポリエステル集合体とは、ポリエステルを含みポリエステル以外の物質例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン、もしくは、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、またはこれらの共重合体や混合物、共重合体同士の混合物、更には、綿、麻、絹等の天然繊維、レーヨン、アセテート、コンクリート、石、土、ガラス、アスベスト、鉄、アルミニウム等の金属、接着剤、添加剤、安定剤、顔料、染料等の有機化合物もしくは無機化合物が1種類または2種類以上含まれていても良い。ポリエステル集合体に含まれるポリエステルとはポリエステル製品全般の形態を示す。また、そのポリエステルおよびそのポリエステル以外の物質は、共にその形態はチップ状、繊維製品状、フィルム状、シート状、コンテナ状等の各種樹脂成形体の形状、ボトル等の中空成形体状などの、各種の射出成形、押出成形、吹き込み成形、ブロー成形等で成形される器状の形態やその他の通常の成形技術で成形可能ないずれの形態をも取りえる。さらにポリエステル集合体は好ましくは60重量%以上の割合でポリエステルを含むこと、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の割合でポリエステルを含むことである。これらの残余分のポリエステル以外の物質については、磁力、風力、重力、溶解度などを利用した濾過法、遠心分離法、沈降法、クロマトグラフィー、抽出法、発泡分離、電気泳動などの手法によりポリエステル集合体に含まれるポリエステルと分離してから上記の工程(a)〜(d)に導入することが好ましい。これらの混合物・共重合体であっても良いことから全体として「ポリエステル集合体」と称している。
またそのポリエステルとしては、いわゆる熱可塑性ポリエステルに該当する線状のポリエステルであることが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレートおよびポリブチレンナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリエステルが、汎用性が高く原料として回収量を確保できるため好ましい。他にヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフチルカルボン酸、これらの芳香族骨格を含む誘導体、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)アルカン等のジカルボン酸化合物等をカルボン酸成分とし、ヘキサンジオール、デカンジオール、分岐鎖のあるジヒドロキシアルカン、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジヒドロキシ化合物をジヒドロキシ成分として構成される各種のポリエステルが含まれていても良い。
本発明の製造方法においては、ポリエステル集合体から、ポリエステル集合体を構成しているポリエステルのポリエステル原料を製造することがその目的の1つである。その製造方法として上記工程(a)〜(d)の少なくとも1つの工程を経ることを特徴とする。そのうち、まずポリエステルを多価アルコールで解重合させる工程においては、解重合を行うことによって、ポリエステル原料となるモノマーまたはオリゴマーを製造することができる。ポリエステルを構成しているジヒドロキシ化合物、ジカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物の多価アルコールとのジエステル、ジカルボン酸化合物の多価アルコールとのモノエステル、ジカルボン酸化合物と多価アルコール及びジヒドロキシ化合物とのジエステル、ジカルボン酸化合物のジヒドロキシ化合物とのジエステル、または、ジカルボン酸化合物のジヒドロキシ化合物とのモノエステルをモノマーと呼び、ジカルボン酸化合物と多価アルコールもしくはジヒドロキシ化合物のエステルを構成単位とし、1または2以上のこの構成単位を有する化合物をオリゴマーと称することがある。そしてこれらのポリエステル原料となるモノマー、オリゴマーを本発明の方法により製造することができる。さらに、解重合時に用いる多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチレングリコール、ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール[テトラ(ヒドロキシメチル)メタン]、ジペンタエリトリトールなどを挙げることができ、多価アルコールの回収工程を簡略化する観点より、上述したポリエステルを構成する原料となるジヒドロキシ化合物であること、すなわちポリエステルを構成しているジヒドロキシ化合物と多価アルコールが同じ化合物となることが特に好ましい。上述した好ましいポリエステルの場合においては、ポリエステル原料としてエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(3−ヒドロキシトリメチル)テレフタレート、ビス(4−ヒドロキシテトラメチル)テレフタレート、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル、ビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレート、ビス(3−ヒドロキシトリメチル)ナフタレートまたはビス(4−ヒドロキシテトラメチル)ナフタレートがポリエステル原料であるモノマーまたはオリゴマーとして具体的に挙げることができる。より好ましくはそのポリエステル原料はテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよびビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことである。
また、具体的なポリエステルをオリゴマーまたはモノマーにする方法としては、オリゴマーまたはモノマーが回収できれば、公知の方法を問題なく使用することができる。その中でも、ポリエステル集合体に対して0.7〜10重量倍の多価アルコールを用いて、0.05〜0.8MPaの圧力下、150〜300℃にて解重合反応を行うことが好ましく採用される。より好ましくは180〜280℃の温度下または0.1〜0.7MPaの圧力下にて解重合反応を行うことである。このように比較的温和な温度条件で高純度モノマーの回収が可能であるポリエステルを多価アルコールにて解重合させる方法が好ましい。またこの工程においては、触媒を用いることなく解重合反応を進めることができるが、より短時間で反応させたい場合には触媒を加えても良い。好ましくは後述するエステル交換反応にて用いる化合物を例示することができる。
次にその後に実施する触媒存在下メチルアルコールとエステル交換させる工程について述べる。エステル交換反応を行う化合物は解重合反応において得られたジカルボン酸化合物の多価アルコールとのジエステル、ジカルボン酸化合物の多価アルコールとのモノエステル、ジカルボン酸化合物と多価アルコール及びジヒドロキシ化合物とのジエステル、ジカルボン酸化合物のジヒドロキシ化合物とのジエステル、または、ジカルボン酸化合物のジヒドロキシ化合物とのモノエステル(以下ジエステル化合物等と称することがある。)が対象となる。このジエステル化合物等とメチルアルコールとのエステル交換反応においては、触媒を用いる。この触媒種の選択は反応圧力、すなわち、常圧〜1.0MPa程度の反応条件でも活性を持つような触媒種を選択することが設備投資ならびに操作性の観点より好ましい。具体的には、この反応工程で使用する触媒が、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の酢酸塩、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の酢酸塩、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシドおよびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。より具体的には炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、ルビジウムアルコキシド、セシウムアルコキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、マグネシウムジアルコキシド、カルシウムジアルコキシド、ストロンチウムジアルコキシド、バリウムジアルコキシド、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムを挙げることができる。アルコキシドは炭素数1〜10個の脂肪族基または脂環族基のアルコキサイドを例示することができる。これらの化合物の中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび酸化カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物を用いるのが好ましい。
これらの触媒の添加量は反応条件が高温、高圧となることを回避する観点より、ポリエステル集合体の重量に対して0.1〜5.0重量%が好ましく、0.15〜4.0重量%の範囲がより好ましい。しかしながら、触媒量が5.0重量%を超えると、発生する金属塩量も増加してボイラーの腐食が進行するならびにオリゴマーまたはモノマーの収率が悪化するため、0.2〜3.0重量%とすることが好ましく、特に好ましくは0.3〜2.0重量%である。より好ましくはポリエステル集合体に含まれるポリエステルの重量に対して上記数値範囲内の量の触媒を用いる事である。
ジエステル化合物等とメタノールとのエステル交換反応は、上記の触媒が十分な反応活性を持つような条件を選択することが設備投資ならびに操作性の観点より好ましい。詳細には上述の解重合反応にて得られたジエステル化合物等の重量に対してメタノールを0.5〜20重量倍用いて、60〜200℃の温度下、0.05〜0.9MPaの圧力下で反応を行う。より好ましくは70〜150℃の温度下、0.1〜0.85MPaの圧力下で反応を行うことである。
またポリエステルを触媒存在下メチルアルコールと反応させる工程においては、公知の反応条件をいずれも採用することができるが、以下に示すような条件を採用することが好ましい。例えば、メタノールの使用量は、ポリエステル集合体の重量を基準として1〜20重量倍程度であればよく、2〜10重量倍、特に2.5〜5重量倍程度であることが好ましい。より好ましくはポリエステル集合体に含まれるポリエステルの重量に対して上記数値範囲内の量のメタノールを用いてメタノールによる解重合反応を行う事である。また、該解重合反応を行う際の反応温度としては、200〜300℃の範囲とすることが好ましく、この範囲にある際には、生成したジカルボン酸ジメチルエステルおよびアルキレングリコール等のポリエステルを構成しているジヒドロキシ化合物とメタノールとの同伴蒸発も十分に行われる。更に、解重合反応の反応圧力としては、0〜30kg/cmG(ゲージ圧力)の範囲とすることが好ましく、この範囲にある際には、解重合反応が十分に行われる。なお、解重合時間は、30分〜4時間とすることが好ましい。この反応においても、上述した触媒を、上記の所定量を用いることにより、安定にかつ効率よく反応を進行させ目的とするポリエステル原料を製造することができる。解重合反応生成物は、従来公知の方法、例えば蒸留により、メタノール、ジカルボン酸ジメチルエステルおよびアルキレングリコール等に、分離回収・製造することができる。
最後にポリエステルを触媒存在下で水と反応させる工程においては、いわゆるアルカリ加水分解を行うことになるのであるが、反応温度を140〜200℃の範囲に保持することが好ましい。この反応温度が140℃未満では、ポリエステルの加水分解に要する時間が長くなり、上記のポリエステル原料を高い回収率で得ることが難しい。一方、この反応温度が200℃℃を超えると、仮に上記のようなポリエステル以外の物質(異物)が混入している場合に、その異物が分解しやすくなり、高純度のポリエステル原料を製造することが困難になる。加水分解を実施する反応容器としては、撹拌機を付設したオートクレーブが好ましく用いられ、10〜20kg/cm程度の耐圧性能を有するオートクレーブであれば好適に使用することができる。
オートクレーブ内に仕込むPET樹脂と触媒(アルカリ化合物)との比率は、PET樹脂がすべてポリエチレンテレフタレートであると仮定した場合には、ポリエチレンテレフタレートに含まれるテレフタル酸成分のカルボキシル基に相当するモル数と等量かそれ以上のモル数であれば加水分解は進行する。多少アルカリのモル数がテレフタル酸成分のカルボキシル基より多い方が反応が速く進行するので好ましいが、その過剰なアルカリ量は上記の数値範囲内(例えば0.1〜12.0重量モル%)の量で十分である。なお、用いる触媒(アルカリ化合物)としては、上述した触媒を、上記の所定量を用いることにより、安定にかつ効率よく反応を進行させることができるが、アルカリ性(塩基性)がより強いとされているアルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属のアルコキシドおよびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
これらの反応工程の少なくともいずれか1つを採用することによりポリエステル集合体から所定のポリエステル原料、すなわちポリエステル原料となるモノマーまたはオリゴマーを製造することができる。この後、通常行われる精製方法、すなわち蒸留、再結晶、昇華、吸着処理によって、反応混合物から目的とするポリエステル原料を目的とする純度、収率により得ることができる。
次に、上記の方法によりポリエステル原料となるオリゴマーやポリマーを回収するプロセス(工程)では、ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを構成し、ポリエステル原料の1種であるジヒドロキシ化合物および/または(1)の工程(a)〜(c)で解重合に使用した余剰の多価アルコールを回収することを、本発明の製造方法においては行う。これらの化合物を回収することがポリエステル原料の製造工程や関連する他の工程全体を運転する上でコスト的に有利である。更に好ましくは上記の化合物に加えて、エステル交換反応に用いたメチルアルコールなどの溶媒類も製造・回収することがコスト的に更に有利である。この回収操作は、工程(1)の工程(a)〜(c)の後に実施してもよく、工程(1)の工程(a)〜(c)の途中、すなわち解重合反応とメチルアルコールとのエステル交換反応の間に実施しても良い。回収した溶媒類を再び工程(1)の工程(a)〜(c)で使用し、同様に工程(1)の工程(a)〜(c)を進行させることが可能になるからである。溶媒類の回収方法としては、膜分離、濾過分離、蒸留分離などが挙げられるが、容易に高純度の多価アルコール等の溶媒類を回収する観点より、蒸留分離が好ましい。これらの分離により、ポリエステルからポリエステル原料となるオリゴマーまたはモノマーを回収した後の残留物から多価アルコール等やメチルアルコールを回収すると必然的にモノマー、オリゴマー、多価アルコール、ジヒドロキシ化合物、メチルアルコール、触媒、触媒金属塩などが含まれている残渣が発生する。これらの残渣には、モノマー、オリゴマー、多価アルコールといったポリエステル原料となる有効成分が含まれているため、この工程(2)にて生成する多価アルコールを回収した後の残渣の少なくとも一部または全部を工程(1)に投入することが好ましい。より好ましくはその残渣の一部を工程(1)に投入することである。しかしながら、この工程(1)への残渣の回収量を増加させると触媒、触媒金属塩の反応設備外への排出が減る一方、新たに供給される触媒が存在するため、残渣中の触媒金属原子の濃度が高くなりプロセス内で閉塞が発生する、燃焼性が悪化するなどの悪影響が発生する。これらの問題を回避する観点から、工程(3)において燃焼される該残渣中のアルカリ金属原子濃度とアルカリ土類金属原子との濃度の総和は3.0重量モル%以下になるように工程(1)への残渣の投入量を制御することが好ましい。より好ましくは2.0重量モル%以下とすることである。
ここで工程(2)にて、工程(1)の後の反応生成物から溶媒類を除去・回収した後に発生した残渣は少なくとも1種の燃料と同時に燃焼させ、熱回収することが本発明のポリエステル原料の製造方法においては好ましい。燃料と同時に燃焼させるのは、以下の理由・観点からである。つまり、これらの残渣には触媒や、触媒とポリエステル原料の一化合物であるカルボン酸とが反応した触媒金属塩などが含有しているため、残渣単体をボイラー等の燃焼機器内で燃焼させるにはソーダ灰回収ボイラーのような高い耐アルカリ腐食性を持った特殊ボイラーが必要となる。そこで燃焼機器内の腐食性を軽減させる観点より、残渣の燃焼と同時に少なくとも1種の燃料を燃焼させる必要がある。燃焼条件としては、残渣に含まれるアルカリ金属原子の重量モル濃度[重量モル%](以下CAと称する。)、アルカリ土類金属原子の重量モル濃度[重量モル%](以下CBと称する。)、残渣の単位時間当たりの燃焼量(以下FCと称する。)[kg/hr]と他の燃料に含まれる硫黄原子の重量モル濃度[重量モル%](以下CSと称する。)、燃料の単位時間当たりの燃焼量(以下FSと称する。)[kg/hr]との関係が、(CA/2+CB)×FC≦CS×FSの数式を満足するように制御された条件下で燃焼することが必要である。好ましくは(CA/2+CB)×FC<CS×FSの数式を満足するように制御された条件下で燃焼することである。ここで、単位時間当たりとは燃焼条件が安定していれば1時間当たりとしても問題が無いが、好ましくは1分当たりの燃焼量を採用することもできる。すなわち残渣中のアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子の重量モル濃度に比較して硫黄原子の重量モル濃度が少なくなると、高い腐食性を持つアルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物が燃焼機器内で生成されるので、ボイラー腐食の観点から好ましくない。ここにいうアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子はイオン、単体、塩、酸化物、水酸化物、アルコキシド、フェノキシド等のアリールオキシ化合物等の状態として残渣に含有されている場合も含む。
ここで、残渣以外の燃料に含まれる硫黄原子の量は、硫黄分を燃料に添加することにより調整できるが、燃料中の硫黄濃度としては5.0重量モル%以下とすることが好ましく、特に好ましくは3.0重量モル%以下である。すなわち、硫黄を多量に燃焼させると硫黄の燃焼により生じる硫酸腐食が発生するために好ましくない。その燃焼工程に使用される残渣以外の少なくとも1種の燃料としては、硫黄の含有量ならびに入手の容易度、品質の安定性の観点から、重油が好ましい。特に好ましくは硫黄分が多く、硫黄分の分析方法も確立されているC重油である。また上記の不等式を満たすように燃焼条件を制御するには、残渣中のアルカリ金属原子濃度やアルカリ土類金属原子濃度、燃料中の硫黄原子濃度を予め測定した上で、残渣供給量、燃料供給量を適宜制御することによって可能となる。上記のアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子および硫黄原子濃度は公知の原子吸光分析等により測定することができる。
さらに、本発明で得られる熱エネルギーはどのような工程でも活用することができるが、配置的、コスト的観点より、発生した熱量の一部または全部を、前述したポリエステル集合体からからポリエステル原料であるオリゴマーもしくはモノマーを回収するプロセスおよび/または回収したポリエステル原料であるオリゴマーもしくはモノマーから再びポリエステルを製造するプロセスに供給することが効率的であり好ましい。ポリエステルを製造するプロセスにあってもより好ましくは、ポリエステル集合体に含まれているポリエステルと同種のポリエステルを製造するプロセスに供給することである。
さらに不等式(CA/2+CB)×FC≦CS×FSについて説明を追加する。不等式の左辺は残渣に含まれているアルカリ金属原子の重量モル濃度(CA)、アルカリ土類金属原子のモル濃度(CB)と残渣の単位時間当たりの燃焼量の積であり、燃焼に供給される残渣に含まれボイラー等の燃焼炉等の腐食に強く寄与する因子の総量を表す。一方右辺は1種の燃料に含まれる硫黄原子の重量モル濃度(CS)と燃料の単位時間当たりの燃焼量(FS)の積であり、後述するアルカリ(土類)金属原子を腐食に対して不活性化する因子の総量を表す。すなわち、残渣に含まれている金属原子がアルカリ金属原子またはイオン(M(+))であれば、燃料の過程で燃料に含まれている硫黄分、酸素と2M(+)+S(2−)+2O→MSOの化学反応を起こし、腐食の可能性がない硫酸塩化合物となる。同じようにアルカリ土類金属原子(M’(2+))の場合にはM’(2+)+S(2−)+2O→M’SOで硫酸塩化合物となる。そして燃料に含まれている硫黄原子のモル数が多い(上記の不等式を満たす)場合には、残渣に含まれている硫黄原子は全て硫酸塩化合物となり、腐食に寄与するアルカリ(土類)金属原子を全て消費しつくすので、ボイラー等の燃焼炉内の腐食の発生を抑制することができる。同時に燃焼で発生する熱をオリゴマー等の回収工程、ポリエステル製造工程等の熱源として用いる事で、本願発明の効果を達成することができる。一方上記不等式を満たさない場合には、燃料を含まれている硫黄分を含めて完全燃焼させたとしてもアルカリ(土類)金属原子が残り、そのアルカリ(土類)金属原子がボイラー等の燃焼炉内の腐食の原因となり、本願発明の目的を達成することができない。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
ポリエチレンナフタレート(以下、PENと略記することもある)を主成分とする集合体750kgに、EG600kgを加え、攪拌付き解重合反応槽にて260℃、0.54MPaの条件下、1.5時間反応させプロダクト(A1)を得た。反応終了後、39.99kPa(300mmHg)まで減圧しこの反応プロダクト(A1)からEGを主成分とする軽沸点成分(B1)を350kg留去した。次に、プロダクト(A1)からEGを留去した残渣をメタノール4000kgが存在しているエステル交換反応槽に投入した。さらに、当該エステル交換反応槽に触媒として、炭酸ナトリウム2.7kgを加えた後、130℃、0.84MPaの条件下、1.0時間エステル交換反応させた。該反応終了後、常圧まで放圧し、さらに冷却水により間接冷却してエステル交換反応プロダクト(C1)の温度が34℃とした。この冷却したプロダクト(C1)を遠心分離により固液分離し、ケークと濾液とをそれぞれ得た。このケークは蒸留精製して連続的にPENのモノマーであるナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル(以下、NDCEと略記することもある)を製造した。一方、濾液については蒸留によりメタノールを第一留出成分として製造・回収した。次いで、メタノール蒸留の缶出液と先に軽沸点成分として留去した軽沸点成分(B1)とを混合した。この混合物より、留出成分としてエチレングリコール成分を150kg製造・回収した。その後、この蒸留の缶出液として残渣(D1)を専用のタンクに貯蔵した。これらの反応操作を1日に4回の速度で、遠心分離ならびに蒸留操作は連続的に実施して、残渣(D1)専用タンクに2000kg以上の残渣を回収した。
次に、上述のプロセスの解重合反応において、残渣(D1)を解重合反応槽に600kg投入する、ならびにEGの投入量を600kgから150kgに削減する、以外は上述のプロセスと同様の条件で反応、遠心分離、蒸留を繰り返し行い、連続的にNDCEならびに残渣(D1)を得た。
一方、残渣(D1)は5〜12kg/Hrの流量で熱媒ボイラーにて燃焼させた。この際に硫黄の濃度が1〜1.5重量モル%の重油を50〜80kg/Hrの流量で同時に燃焼させた。この燃焼により得られた熱量はすべて、PENからNDCEを生産するプロセス内で消費した。なお、残渣(D1)中のナトリウム濃度を原子吸光分析により毎日測定し、ナトリウム濃度が3.0重量モル%以下となるように解重合反応への残渣(D1)への供給量を調整した。この結果、残渣(D1)中のナトリウム濃度は1〜2.3重量モル%の範囲で1年間連続運転することができた。1年後、ボイラーの開放点検を実施したが顕著な腐食は見つからなかった。また、当該熱媒ボイラーの加熱管チューブの材質は高温配管用炭素鋼材であるSTB340−SC(冷間仕上シームレスパイプ)、キャスタブルはLC−10(製品名、AGCセラミック株式会社製)、CA−13S(製品名、AGCセラミック株式会社製)であった。
すなわち本実施例においては
(CA/2+CB)×FC=(1〜2.3重量モル%/2+0)×(5〜12kg/Hr)
CS×FS=(1〜1.5重量モル%)×(50〜80kg/Hr)
であるので、数式(CA/2+CB)×FC≦CS×FSを満たしている。
[実施例2]
ポリエチレンナフタレートを主成分とする集合体750kgに、EG600kgを加え、攪拌付き解重合反応槽にて260℃、0.54MPaの条件下、1.5時間反応させプロダクト(A2)を得た。反応終了後、39.99kPa(300mmHg)まで減圧しこの反応プロダクト(A2)からEGを主成分とする軽沸点成分(B2)を350kg留去した。次に、プロダクト(A2)からEGを留去した残渣をメタノール4000kgが存在しているエステル交換反応槽に投入した。さらに、当該エステル交換反応槽に触媒として、運転開始後、6ヶ月間は炭酸ナトリウムを、その後、2ヶ月間は炭酸カリウムを、さらにその後から3ヶ月間は炭酸ナトリウムをそれぞれ2.7kg加えた後、130℃、0.84MPaの条件下、1.0時間反応させた。該反応終了後、常圧まで放圧し、さらに冷却水により間接冷却してエステル交換反応プロダクト(C2)の温度が34℃とした。この冷却したプロダクト(C2)を遠心分離により固液分離し、ケークと濾液とをそれぞれ得た。このケークは蒸留精製して連続的にPENのモノマーであるナフタレンジカルボン酸ジメチルエステルを製造した。一方、濾液については蒸留によりメタノールを第一留出成分として回収した。次いで、メタノール蒸留の缶出液と先に軽沸点成分として留去した軽沸点成分(B2)とを混合した。この混合物より、留出成分としてエチレングリコール成分を150kg回収した。その後、この蒸留の缶出液として残渣(D2)を専用のタンクに貯蔵した。これらの反応操作を1日に4回の速度で、遠心分離ならびに蒸留操作は連続的に実施して、残渣(D2)専用タンクに2000kg以上の残渣を回収した。
次に、上述のプロセスの解重合反応において、残渣(D2)を解重合反応槽に600kg投入する、ならびにEGの投入量を600kgから150kgに削減する、以外は上述のプロセスと同様の条件で反応、遠心分離、蒸留を繰り返し行い、連続的にNDCEならびに残渣(D2)を得た。
一方、残渣(D2)は5〜12kg/Hrの流量で熱媒ボイラーにて燃焼させた。この際に硫黄の濃度が1〜1.5重量モル%の重油を50〜80kg/Hrの流量で同時に燃焼させた。この燃焼により得られた熱量はすべて、PENからNDCEを生産するプロセス内で消費した。なお、残渣(D2)中のナトリウム濃度ならびにカリウム濃度を原子吸光分析により毎日測定し、これらの総和が3.0重量モル%以下となるように解重合反応への残渣(D2)への供給量を調整した。この結果、残渣(D2)中のナトリウム濃度ならびにカリウム濃度の総和は0.5〜2.5重量モル%の範囲で1年間連続運転することができた。1年後、ボイラーの開放点検を実施したが顕著な腐食は見つからなかった。また、当該熱媒ボイラーの加熱管チューブの材質は高温配管用炭素鋼材であるSTB340−SC、キャスタブルはLC−10(製品名、AGCセラミック株式会社製)、CA−13S(製品名、AGCセラミック株式会社製)を使用した。
すなわち本実施例においては
(CA/2+CB)×FC=(0.5〜2.5重量モル%/2+0)×(5〜12kg/Hr)
CS×FS=(1〜1.5重量モル%)×(50〜80kg/Hr)
であるので、数式(CA/2+CB)×FC≦CS×FSを満たしている。
[実施例3]
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することもある)を主成分とする集合体10Ton(10×10kg)に、EG10Ton(10×10kg)を加えて185℃、常圧の条件下、PETの固形成分がなくなるまで反応させプロダクト(L)を得た。反応終了後、35kPaまで減圧しこの反応プロダクト(L)からEGを主成分とする軽沸点成分(M)を3Ton(3×10kg)留去した。次に、プロダクト(L)からEGを留去した残渣をメタノール29Ton(29×10kg)が存在しているエステル交換反応槽に投入した。さらに、当該エステル交換反応槽に触媒として、炭酸カリウム100kgを加えた後、70〜80℃、常圧の条件下、1.0時間反応させた。該反応終了後、減圧して、気化したメタノール成分を熱交換器にて凝縮させてエステル交換反応プロダクト(N)の温度を40℃まで冷却した。この冷却したプロダクト(N)を遠心分離により固液分離し、ケークと濾液とをそれぞれ得た。このケークは蒸留精製して連続的にPETのモノマーであるテレフタル酸ジメチルエステル(以下、DMTと略記することもある)を製造した。一方、濾液については蒸留によりメタノールを第一留出成分として回収した。次いで、メタノール蒸留の缶出液と先に軽沸点成分として留去した軽沸点成分(M)とを混合した。この混合物より、留出成分としてエチレングリコール成分を5.5Ton回収した。その後、この蒸留の缶出液として残渣(O1)を専用のタンクに貯蔵した。これらの反応操作を1日に11回の速度で、遠心分離ならびに蒸留操作は連続的に実施して、残渣(O1)専用タンクに30Ton(30×10kg)以上の残渣を回収した。
次に、上述のプロセスの解重合反応において、残渣(O1)を解重合反応槽に6Ton投入する、ならびにEGの投入量を10Ton(10×10kg)から6Ton(6×10kg)に削減する、以外は上述の実施例1で示したプロセスと同様の条件で反応、遠心分離、蒸留を繰り返し行い、連続的にDMTならびに残渣(O1)を得た。
一方、このプロセスの熱供給のために熱媒ボイラーでは硫黄の濃度が1.0重量モル%の重油を1000kg/Hrの流量で燃焼させていた。このボイラーに残渣(O1)専用のバーナーガンを別途設置して、原子吸光分析によりカリウム濃度が2.0重量モル%であることを確認した残渣(O1)を1000kg/Hrの流量で当該ボイラーにて10分間燃焼させたところ、燃焼性には問題はみられなかった。なお、この燃焼により得られた熱量はすべてPETからDMTを生産するプロセス内で消費した。1ヶ月後、当該ボイラーの開放点検を実施したが顕著な腐食は見つからなかった。また、当該熱媒ボイラーの加熱管チューブの材質は高温配管用炭素鋼材であるSTPT370、キャスタブルはLC−1300(製品名、明星炉材株式会社製)、パーマキャストLW−14(製品名、日本特殊炉材株式会社社製)を使用した。
すなわち本実施例においては
(CA/2+CB)×FC=(2.0重量モル%/2+0)×(1000kg/Hr)
CS×FS=(1.0重量モル%)×(1000kg/Hr)
であるので、数式(CA/2+CB)×FC≦CS×FSを満たしている。
[実施例4]
実施例3を実施後、実施例3においてエステル交換反応槽に加えた触媒を酸化カルシウムとし、残渣(O2、実施例3におけるO1に対応する)中のカルシウム濃度を0.5重量モル%かつ、カリウム濃度0.4重量モル%としたことを除き、その他は実施例3と同様の操作を行なったが、ボイラーの開放点検では顕著な腐食は見つからなかった。
すなわち本実施例においては
(CA/2+CB)×FC=(0.4重量モル%/2+0.5重量モル%)×(1000kg/Hr)
CS×FS=(1.0重量モル%)×(1000kg/Hr)
であるので、数式(CA/2+CB)×FC≦CS×FSを満たしている。
本発明のポリエステルからオリゴマーまたはモノマーを製造する方法によれば、高い収率でポリエステルからオリゴマーまたはモノマーを製造できる。さらに多価アルコールを蒸留などで回収した後の残渣をボイラーの腐食を防止しつつ燃焼して、自らのオリゴマーまたはモノマーの製造工程内で熱回収することができる。このため、廃棄物発生量が少なく、エネルギー効率に優れた運転条件でポリエステルからオリゴマーまたはモノマーを製造することができる。この点において工業面で非常に有意義である。

Claims (6)

  1. ポリエステル集合体よりポリエステルを構成するポリエステル原料の製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含み、
    (1)(a)該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを多価アルコールで解重合させる工程、(b)該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを多価アルコールにて解重合して得られた物質を触媒存在下メチルアルコールとエステル交換させる工程、(c)該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを触媒存在下メチルアルコールと反応させる工程または(d)該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを触媒存在下水と反応させる工程のいずれかひとつの工程によりポリエステル原料を製造する反応工程
    (2)(1)の反応工程途中または反応工程後の反応物から(1)の工程で解重合に使用した多価アルコール、
    および/または該ポリエステル集合体に含まれるポリエステルを構成し且つポリエステル原料の1種であるジヒドロキシ化合物
    を回収する工程
    (3)(2)の工程で生成する多価アルコールを回収した後の残渣を、少なくとも1種の燃料と同時に燃焼させ、燃焼により発生した熱量の一部または全部を、該ポリエステル集合体からポリエステル原料を製造する工程および/または製造した該ポリエステル原料からポリエステルを製造する工程に供給する工程
    更に、
    前記工程(1)の(b)〜(d)工程において用いられる触媒が、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の酢酸塩、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の酢酸塩、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のアルコキシドおよびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含み、かつ該触媒の添加量を前記ポリエステル集合体の重量を基準として0.1〜5.0重量モル%とし、
    かつ、前記工程(3)において、該残渣に含まれるアルカリ金属原子の重量モル濃度[重量モル%](CA)、アルカリ土類金属原子の重量モル濃度[重量モル%](CB)、該残渣の単位時間当たりの燃焼量(FC)[kg/hr]、燃料に含まれる硫黄原子の重量モル濃度[重量モル%](CS)および該燃料の単位時間当たりの燃焼量(FS)[kg/hr]との関係が、
    (CA/2+CB)×FC≦CS×FS
    の数式を満足するように工程(3)における燃焼条件を制御することを特徴とするポリエステル原料の製造方法。
  2. 前記工程(1)において解重合反応、多価アルコールとのエステル交換反応、メチルアルコールとの反応、または、水との反応に用いられる触媒が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび酸化カルシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル原料の製造方法。
  3. 工程(2)にて生成する多価アルコールを回収した後の残渣の少なくとも一部を工程(1)に投入するポリエステル集合体よりポリエステルを構成するポリエステル原料の製造方法であって、前記工程(3)において燃焼される該残渣中のアルカリ金属原子濃度とアルカリ土類金属原子濃度の総和が3.0重量モル%以下になるように前記工程(1)への該残渣投入量を制御することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリエステル原料の製造方法。
  4. 前記工程(3)において燃焼される燃料が重油であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル原料の製造方法。
  5. 該ポリエステルがポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレートおよびポリブチレンナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリエステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル原料の製造方法。
  6. 該製造されるポリエステル原料がテレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチルおよびビス(2−ヒドロキシエチル)ナフタレートからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル原料の製造方法。
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