JP2014070103A - インク組成物、インクジェット記録方法、印刷物、及び、ビスアシルホスフィンオキシド化合物 - Google Patents

インク組成物、インクジェット記録方法、印刷物、及び、ビスアシルホスフィンオキシド化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】記録媒体との密着性に優れ、硬化後のインク膜中成分の外部への溶出量(マイグレーション)が少なく、印刷物の臭気が抑制されたインク組成物、並びに、前記インク組成物を使用したインクジェット記録方法及び印刷物を提供すること、並びに、新規なビスアシルホスフィンオキシド化合物を提供すること。
【解決手段】アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物、及び、重合性化合物を含むことを特徴とするインク組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物、インクジェット記録方法、印刷物、及び、ビスアシルホスフィンオキシド化合物に関する。
近年、画像データ信号に基づき、記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、インクジェット記録方法が注目されている。インクジェット記録方法は、騒音が少なく、非常に微小な液滴を打滴することにより、高精彩な画像を低いランニングコストで記録できるといった利点を有するものである。
中でも、紫外線などの放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インク組成物(放射線硬化型インクジェット記録用インク組成物)は、紫外線などの放射線の照射によりインク組成物の成分の大部分が硬化するため、溶剤系インク組成物と比べて乾燥性に優れ、また、画像が滲みにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
従来のインクジェットインク組成物としては、特許文献1が挙げられる。
また、従来のビスアシルホスフィンオキシド化合物としては、特許文献2又は3に記載された化合物が挙げられる。
特表2011−500932号公報 特開2007−39453号公報 米国特許出願公開第2012/0142805号明細書
食品やおもちゃの用途としてインクジェットインクを用いる場合には、インク画像から揮発又は溶出する成分が全く無いか、あるいは非常に低いレベルでなければならない。しかしながら、光硬化性インクジェットインクにおいては、未反応の開始剤や開始剤の分解物が膜中に低分子量のまま残り、揮発又は溶出してくるという問題点がある。
この問題点に対し、特許文献1は、重合可能開始剤を含むラジカル硬化性液を開示している。また、特許文献1は、重合性官能基を有するアシルホスフィンオキサイド化合物を開示している。しかしながら、この化合物を用いた場合は、ホスフォノイルラジカルは膜に取り込まれるが、より反応性の低いベンゾイルラジカルが硬化膜に取り込まれず、結果としてベンズアルデヒド化合物が溶出してくるためにインク組成物の安全性が望まれるレベルに達せず、更に膜中に残存する低分子化合物によって基板への密着性が低下するという問題があった。
また、特許文献2では、重合可能な基を有するビスアシルホスフィンオキサイド化合物を含む歯科材料を開示している。しかしながら、この文献に示される化合物をインク組成物として使用した場合には、重合速度が遅く、望まれる硬化感度が得られないという問題があった。
また、特許文献3には、重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキサイド化合物を含有するインク組成物が開示されている。しかしながらこの化合物を用いた場合は、特許文献1と同様にベンズアルデヒド化合物が溶出してくるという問題があった。
本発明の目的は、記録媒体との密着性に優れ、硬化後のインク膜中成分の外部への溶出量(マイグレーション)が少なく、印刷物の臭気が抑制されたインク組成物、並びに、前記インク組成物を使用したインクジェット記録方法及び印刷物を提供することである。
また、本発明の他の目的は、新規なビスアシルホスフィンオキシド化合物を提供することである。
本発明の上記課題は、下記の<1>又は<12>〜<15>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<11>及び<16>と共に以下に記載する。
<1>アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物、及び、重合性化合物を含むことを特徴とするインク組成物、
<2>前記ビスアシルホスフィンオキシド化合物が、下記式(1)で表される化合物である、上記<1>に記載のインク組成物、
Figure 2014070103
(式(1)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は重合性官能基を有する基を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは重合性官能基を有する基であり、R7はアルキル基又はアリール基を表す。)
<3>前記R1〜R6のうち少なくとも1つが、式(2)で表される重合性官能基を有する基である、上記<2>に記載のインク組成物、
Figure 2014070103
(式(2)中、R8は水素原子又はメチル基を表し、L1は−COO−、−CONH−又はフェニレン基を表し、Xは二価の連結基を表し、L2は−COO−又は−CONH−を表し、R9は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、nは0〜3の整数を表し、−*はベンゼン環との結合を表す。)
<4>前記Xが、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数2〜12の鎖状若しくは環状アルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の前記環状アルキレン基、前記アルケニレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基である、上記<3>に記載のインク組成物、
<5>前記R9が−CH2−である、上記<3>又は<4>に記載のインク組成物、
<6>前記nが0である、上記<3>に記載のインク組成物、
<7>前記R7がフェニル基である、上記<2>〜<6>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<8>前記L1が−COO−である、上記<3>〜<6>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<9>前記R8が水素原子である、上記<3>〜<6>及び<8>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<10>インクジェットインク組成物である、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<11>食品パッケージ印刷用インク組成物である、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載のインク組成物、
<12>(a1)記録媒体上に、上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法、
<13>上記<12>に記載のインクジェット記録方法を用いて作成された印刷物、
<14>下記式(3)で表される化合物であることを特徴とするビスアシルホスフィンオキシド化合物、
Figure 2014070103
(式(3)中、R10〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は−CH2Brを表し、R10〜R15のうち少なくとも1つは−CH2Brであり、R16は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
<15>下記式(1’)で表される化合物であることを特徴とするビスアシルホスフィンオキシド化合物、
Figure 2014070103
(式(1’)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は式(4)で表される基を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは式(4)で表される基であり、R7はアルキル基又はアリール基を表す。)
Figure 2014070103
(式(4)中、R13は水素原子又はメチル基を表し、L3は−COO−又は−CONH−を表し、−*はベンゼン環との結合を表す。)
<16>前記R1〜R6がそれぞれ独立に、メチル基又は式(4)で表される基であり、かつ前記R7がフェニル基である、上記<15>に記載のビスアシルホスフィンオキシド化合物、
<17>前記L3が−COO−である、上記<15>又は<16>に記載のビスアシルホスフィンオキシド化合物、
<18>前記R13が水素原子である、上記<15>〜<17>のいずれか1つに記載のビスアシルホスフィンオキシド化合物。
本発明によれば、記録媒体との密着性に優れ、硬化後のインク膜中成分の外部への溶出量(マイグレーション)が少なく、印刷物の臭気が抑制されたインク組成物、並びに、前記インク組成物を使用したインクジェット記録方法及び印刷物を提供することができる。
また、本発明によれば、新規なビスアシルホスフィンオキシド化合物を提供することができる。
本発明に好適に用いられるインクジェット記録装置の一例を示す概略模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書中、「xx〜yy」の記載は、xx及びyyを含む数値範囲を表す。
「(メタ)アクリレート」等は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」等と同義であり、以下同様とする。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
以下、本発明を詳細に説明する。
(インク組成物)
本発明のインク組成物は、アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物、及び、重合性化合物を含むことを特徴とする。
本発明のインク組成物は、活性線により硬化可能なインク組成物である。「活性線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
また、本発明のインク組成物は、活性放射線硬化型のインク組成物であり、油性インク組成物であることが好ましい。本発明のインク組成物は、水及び揮発性溶剤をできるだけ含有しないことが好ましく、含有していたとしても、インク組成物の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インク組成物(「インクジェットインク組成物」ともいう。)として好適に用いることができる。
更に、本発明のインク組成物は、パッケージ印刷用インク組成物として好適に用いることができ、パッケージ印刷用インクジェットインク組成物としてより好適に用いることができる。
ビスアシルホスフィンオキシド化合物は、光によって分解し、ベンゾイルラジカルとフォスフィノイルラジカルとを生成するが、その反応性はベンゾイルラジカルがより低い。このため、硬化後のインク膜には、硬化に関与しなかった未反応のベンゾイルラジカルから生成したベンズアルデヒド化合物が多量に残存する。また、全ての開始剤が分解することはなく、未反応のビスアシルホスフィンオキシド化合物も存在する。
本発明者が詳細な検討を行った結果、アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物をインク組成物に用いることで、残存しやすい前述の二つの化合物が重合性化合物とともに膜に取り込まれるため、当該インク組成物により形成された画像から溶出する低分子化合物の量及び画像から生じる臭気を低減することが可能であることを見出した。
例えば、従来の活性線硬化型のインクジェット印刷により得た印刷物は、硬化膜から未反応の重合開始剤、重合開始剤残渣等が移動するという問題があり、特に、食品包装用等のパッケージ印刷に使用する場合には、パッケージ内包物に転写する量、いわゆる、マイグレーション(溶出、転移)量が多いという問題があった。また、硬化膜の臭気が強く、内包物や周囲の食品に臭いが移るという問題もあった。更に、低分子化合物が膜中に残存することで、膜の強度が低下し、支持体との密着性が低下するという問題もあった。
本発明のインク組成物を用いることにより、記録媒体との密着性に優れるだけでなく、膜中成分の外部への溶出量(マイグレーション)が少なく、印刷物の臭気が抑制された印刷物を提供することができる。
以下、本発明のインク組成物について、詳細に説明する。
<アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物>
本発明のインク組成物は、アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物(以下、「特定重合開始剤」ともいう。)を含む。
特定重合開始剤は、リン原子に結合する2つのアシル基の少なくとも1つに重合性官能基を有する。
重合性官能基の結合位置は、アシル基の任意の位置に結合することができる。
特定重合開始剤が有するアシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよいが、芳香族アシル基であることが好ましく、置換基を有していてもよい、重合性官能基が直接又は連結基を介して結合したベンゾイル基であることがより好ましい。
また、前記アシル基が前記ベンゾイル基である場合、重合性官能基が直接又は連結基を介して結合する位置は、ベンゼン環上のカルボニル基の結合位置を1位として、2位、4位及び/又は6位であることが好ましく、また、製造適性の観点から、少なくとも4位であることが好ましい。
また、特定重合開始剤においては、リン原子に結合する2つのアシル基がそれぞれ重合性官能基を有していてもよい。
特定重合開始剤が有する重合性官能基の数は、硬化の際に生じる膜の収縮が起こりにくい観点からは、1であることが好ましく、また、硬化速度及び密着性の観点からは、2、3又は4であることが好ましい。
また、前記アシル基が重合性官能基を有する場合、その重合性官能基の数は、1以上であればよく、1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
また、前記アシル基が前記ベンゾイル基であり、かつ重合性官能基の数が2〜4である場合には、重合性官能基が直接又は連結基を介して結合する位置は、ベンゼン環上のカルボニル基の結合位置を1位として、少なくとも2位及び4位であることが好ましい。
特定重合開始剤におけるアシル基は、直接又は連結基を介して結合した重合性官能基を有する以外に、任意の置換基を有することができる。置換基としては、アルキル基、及び、アルコキシ基が好ましく挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基、及び、炭素数1〜4のアルコキシ基がより好ましく挙げられ、メチル基が特に好ましく挙げられる。
また、前記連結基としては、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数2〜12の鎖状若しくは環状アルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の前記アルキレン基、前記アルケニレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素数1〜8の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の前記アルキレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基であることがより好ましく、炭素数1〜8の鎖状アルキレン基、又は、1以上の炭素数1〜8の鎖状アルキレン基と1以上のエステル結合を組み合わせた二価の基であることが更に好ましく、メチレン基であることが特に好ましい。また、前記連結基の炭素数は、1〜40であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、1〜12であることが更に好ましい。
本発明における重合性官能基には、アニオン重合性基、カチオン重合性基、及び、ラジカル重合性基が含まれる。特定重合開始剤が2以上の重合性官能基を有する場合、それぞれの重合性官能基は同じであっても、異なっていてもよいが、製造適性の観点からは、同じであることが好ましい。
アニオン重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、共役ポリエン基、マレエート基、フマレート基、マレイミド基、イタコン酸残基、ビニルケトン基、ハロゲン化ビニル基、シアン化ビニル基、シアノ(メタ)アクリレート基、ニトロ化ビニル基及びエポキシ基が挙げられる。
カチオン重合性官能基としては、スチリル基、エポキシ基、ビニルエーテル基及びオキセタン基が挙げられる。
ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アリル基、スチリル基及びマレイミド基などが挙げられる。
これらの中でも、前記重合性官能基は、硬化速度の観点から、エチレン性不飽和結合を有する基であることが好ましく、ラジカル重合性官能基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基であることが更に好ましい。
特定重合開始剤は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2014070103
(式(1)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は重合性官能基を有する基を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは重合性官能基を有する基であり、R7はアルキル基又はアリール基を表す。)
1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又は重合性官能基を有する基であることが好ましく、メチル基又は重合性官能基を有する基であることがより好ましい。上記態様であると、膜中成分のマイグレーションがより少なく、臭気がより抑制された印刷物が得られる。
更に、式(1)において、重合性官能基を有する基は、重合性官能基を1つのみ有していても、2つ以上有していてもよいが、重合性官能基を有する基における重合性官能基の数は、1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
7は、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。上記アルキル基及びアリール基は、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びハロゲン原子が挙げられる。
また、R1〜R6における重合性官能基を有する基としては、式(2)で表される基であることが好ましい。式(1)中に式(2)で表される基が複数存在する場合、式(2)で表される基は、互いに異なっていても同じであってもよいが、同じであることが好ましい。
Figure 2014070103
(式(2)中、R8は水素原子又はメチル基を表し、L1は−COO−、−CONH−又はフェニレン基を表し、Xは二価の連結基を表し、L2は−COO−又は−CONH−を表し、R9は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、nは0〜3の整数を表し、*はベンゼン環との結合位置を表す。)
8は、水素原子であることが好ましい。
1は、−COO−又は−CONH−であることが好ましく、−COO−であることがより好ましい。
1及びL2における−COO−、−CONH−の結合の向きは、いずれの向きで結合してもよいが、L1においては、−COO−又は−CONH−のカルボニル基がエチレン性不飽和結合と結合していることが好ましい。
Xは、二価の連結基であれば特に制限はないが、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数2〜12の鎖状若しくは環状アルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の前記アルキレン基、前記アルケニレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基であることが好ましく、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の前記アルキレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基であることがより好ましく、炭素数2〜8の鎖状アルキレン基、又は、1以上の炭素数1〜8の鎖状アルキレン基と1以上のエステル結合を組み合わせた二価の基であることが更に好ましい。
また、Xは、分子量が小さいほうがインク組成物への添加量(質量%)あたりの硬化性の観点から好ましい。具体的には、Xの分子量は、290以下であることが好ましく、170以下であることが好ましく、80以下であることが更に好ましい。また、14以上であることが好ましい。
9は、メチレン基であることが好ましい。
nは、0であることがインク組成物への添加量(質量%)あたりの硬化性の観点から好ましい。
アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 2014070103
Figure 2014070103
Figure 2014070103
本発明のインク組成物におけるアシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物の含有量については、特に制限はないが、インク組成物の全量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。
<重合性化合物>
本発明のインク組成物は、重合性化合物(単に「モノマー」又は「重合性モノマー」ともいう。)を含む。
重合性化合物としては、何らかのエネルギー付与により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
重合性化合物は、反応速度、硬化膜物性、インク組成物の物性等を調整する目的で、1種又は複数を混合して用いることができる。また、重合性化合物は、単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。単官能重合性化合物の割合が大きいと硬化物は柔軟なものになりやすく、多官能重合性化合物の割合が大きいと硬化性に優れる傾向がある。したがって、単官能重合性化合物と多官能重合性化合物との割合は用途に応じて任意に決定されるものである。
重合性化合物としては、光ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性のモノマーを使用することもできる。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書において「アクリレート」、「メタクリレート」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
ラジカル重合性モノマーとして用いられる(メタ)アクリレート類としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、二官能の(メタ)アクリレート、三官能の(メタ)アクリレート、四官能の(メタ)アクリレート、五官能の(メタ)アクリレート、六官能の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
四官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
五官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
六官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ラジカル重合性モノマーとして用いられる(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
ラジカル重合性モノマーとして用いられる芳香族ビニル類としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
更に、本発明に用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)、N−ビニルラクタム類(N−ビニルカプロラクタムなど)などが挙げられる。などが挙げられる。
更に具体的には、山下晋三編「架橋剤ハンドブック」(1981年、大成社);加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編「UV・EB硬化技術の応用と市場」79頁(1989年、(株)シーエムシー出版);滝山栄一郎著「ポリエステル樹脂ハンドブック」(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品又は業界で公知のラジカル重合性又は架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
本発明のインク組成物における重合性化合物の含有量は、硬化性の観点から、インク組成物の全質量に対し、50〜95質量%が好ましく、55〜92質量%がより好ましい。
本発明のインク組成物における重合性化合物中の多官能重合性化合物の割合は、重合性化合物全量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。上記態様であると、硬化性により優れ、硬化膜のマイグレーション及び臭気をより抑制することができる。
また、重合性化合物は、二官能重合性化合物と三官能重合性化合物とを少なくとも含むことが好ましい。上記態様であると、硬化性により優れ、硬化膜のマイグレーション及び臭気をより抑制することができる。
<他の重合開始剤>
本発明のインク組成物は、必要に応じて、前記アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物以外のその他の重合開始剤を含有することができる。
前記その他の重合開始剤としては、ラジカル重合又はカチオン重合の重合開始剤であるのが好ましく、ラジカル重合開始剤が特に好ましい。例えば、特開2009−138172号公報に記載の重合開始剤を用いることができる。
−増感剤−
本発明のインク組成物は、重合開始剤として、特定の活性線を吸収して重合開始剤の分解を促進させるため、増感剤として機能する化合物(以下、単に「増感剤」ともいう。)を含有してもよい。
増感剤としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン等)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン等)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン等)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム等)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等)等が挙げられる。
また、増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
−共増感剤−
本発明のインク組成物は、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する目的で、共増感剤を含有していてもよい。
前記共増感剤としては、例えば、アミン類(例えば、M. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物)などが挙げられる。前記アミン類の具体例としては、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリンなどが好適に挙げられる。
また、前記共増感剤としては、例えば、チオール及びスルフィド類(例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物)なども好適に挙げられる。前記チオール及びスルフィド類の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレンなどが挙げられる。
また、前記共増感剤としては、例えば、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)や、特公昭48−42965号公報に記載の有機金属化合物(例えば、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報に記載の水素供与体や、特開平6−308727号公報に記載のイオウ化合物(例えば、トリチアン等)、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−54735号公報に記載のSi−H、Ge−H化合物などが挙げられる。
その他の重合開始剤の総含有量は、インク組成物全体の1〜20質量%であることが好ましく、2〜18質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましく、10〜15質量%であることが特に好ましい。上記範囲であると、硬化性に優れる。
<着色剤>
本発明のインク組成物は、必要に応じて、着色剤を含有することができる。
着色剤としては、特に制限はないが、耐候性に優れ、色再現性に富んだ顔料及び油溶性染料が好ましく、溶解性染料等の公知の着色剤から任意に選択して使用できる。着色剤は、活性放射線による硬化反応の感度を低下させないという観点から、重合禁止剤として機能しない化合物を選択することが好ましい。
顔料は、インク組成物の着色剤として機能するが、本発明においては、後述するような粒径の微細な前記顔料が、インク組成物中に均一、且つ安定に分散される結果、本発明のインク組成物は発色性に優れ、鮮鋭かつ耐候性に優れる画像が形成可能となる。
前記顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、公知の有機顔料及び無機顔料などが挙げられ、また、染料で染色した樹脂粒子、市販の顔料分散体や表面処理された顔料(例えば、顔料を分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等)も挙げられる。なお、前記顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載のものなどもが挙げられる。
前記有機顔料及び無機顔料としては、例えば、イエロー顔料、マゼンタ顔料、青、シアン顔料、緑色顔料、オレンジ顔料、茶色顔料、バイオレット顔料、黒色顔料、白色顔料、などが挙げられる。
前記イエロー顔料は、イエロー色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74等のモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー219等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180等の非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)等のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエロー等)、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー166等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー24(フラバントロンイエロー等)等のアントラキノン顔料、C.I.ピグメントイエロー110(キノフタロンイエロー等)等のキノフタロン顔料、C.I.ピグメントイエロー139(イソインドリンイエロー等)等のイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー60(ピラゾロンイエロー等)等のピラゾロン顔料、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー194等のアセトロン顔料、C.I.ピグメントイエロー150等の金属錯塩顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)等のニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)等の金属錯塩アゾメチン顔料、C.I.ピグメントイエローなどが挙げられる。
前記マゼンタ顔料は、赤あるいはマゼンタ色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)等のモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド6等のB−ナフトール顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B等)、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド48(B−オキシナフト酸レーキ等)のアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド242(縮合アゾレッド等)等の縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)、C.I.ピグメントレッド172(エリスロシンレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G’レーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)等のチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)等のペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド262、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド209等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)等のイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)等のアリザリンレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド208等のナフトロン顔料、C.I.ピグメントレッド247等のナフトールAS系レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272等のジケトピロロピロール顔料などが挙げられる。
前記シアン顔料は、青あるいはシアン色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16(フタロシアニンブルー等)等のフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)等の酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)等の塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)等のアルカリブルー顔料などが挙げられる。
前記緑色顔料は、緑色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)等のフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10等のアゾ金属錯体顔料などが挙げられる。
前記オレンジ顔料は、オレンジ色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ3、C.I.ピグメントオレンジ5等のΒ−ナフトール顔料、C.I.ピグメントオレンジ4、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ74等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントオレンジ61等のイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン顔料、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16等のジスアゾ顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ60、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72等のアセトロン顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34等のピラゾロン顔料などが挙げられる。
前記茶色顔料は、茶色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン32等のナフトロン顔料などが挙げられる。
前記バイオレット顔料は、紫色を呈する顔料であり、例えば、C.I.ピグメントバイオレット32等のナフトロン顔料、C.I.ピグメントバイオレット29等のペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット17、C.I.ピグメントバイオレット50等のナフトールAS顔料、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37等のジオキサジン顔料などが挙げられる。
前記黒色顔料は、黒色を呈する顔料であり、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)等のインダジン顔料、C.I.ピグメントブラック31、C.I.ピグメントブラック32などのペリレン顔料などが挙げられる。
前記白色顔料としては、例えば、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)、などが挙げられる。白色顔料に使用される無機粒子は単体でもよいし、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の酸化物や有機金属化合物、有機化合物との複合粒子であってもよい。
中でも、前記酸化チタンは、他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れていることから、好適に使用される。なお、前記酸化チタンに加えて他の白色顔料(上述した白色顔料以外のものであってもよい。)を併用してもよい。
前記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、などの分散装置を好適に使用することができる。
本発明においては、前記顔料の分散を行う際に、後述する分散剤を添加することが特に好ましい。
また、前記顔料の分散の際に、必要に応じて、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを添加してもよい。前記分散助剤の前記インク組成物における含有量としては、前記顔料100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。
前記顔料を前記インク組成物に分散させる際に使用する分散媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、低分子量である前記重合性化合物を該分散媒としてもよいし、溶媒を該分散媒としてもよい。ただし、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、前記溶媒を含まず無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このため、前記分散媒として、前記重合性化合物を用い、その中でも、最も粘度が低い重合性化合物を選択することが、分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の点で好ましい。
前記顔料の平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、微細なほど発色性に優れるため、0.01〜0.4μm程度が好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。また、前記顔料の最大粒径としては、3μmが好ましく、1μmがより好ましい。前記顔料の粒径は、前記顔料、分散剤、分散媒体の選択、分散条件、ろ過条件の設定などにより調整することができ、前記顔料の粒径を制御することにより、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
なお、前記顔料の前記インク組成物における粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
前記顔料のインク組成物における含有量としては、前記顔料が有機顔料の場合、固形分換算で、1〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。また、前記顔料が無機顔料の場合、固形分換算で、1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましい。
インク組成物中における着色剤の含有量は、色、及び使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.01〜30質量%であることが好ましい。
<分散剤>
本発明のインク組成物は、分散剤を含有することが好ましい。特に顔料を使用する場合において、顔料をインク組成物中に安定に分散させるため、分散剤を含有することが好ましい。分散剤としては、高分子分散剤が好ましい。なお、本発明における「高分子分散剤」とは、重量平均分子量が1,000以上の分散剤を意味する。
高分子分散剤としては、DISPERBYK−101、DISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERBYK−111、DISPERBYK−161、DISPERBYK−162、DISPERBYK−163、DISPERBYK−164、DISPERBYK−166、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、DISPERBYK−170、DISPERBYK−171、DISPERBYK−174、DISPERBYK−182(BYKケミー社製);EFKA4010、EFKA4046、EFKA4080、EFKA5010、EFKA5207、EFKA5244、EFKA6745、EFKA6750、EFKA7414、EFKA745、EFKA7462、EFKA7500、EFKA7570、EFKA7575、EFKA7580(エフカアディティブ社製);ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100(サンノプコ(株)製);ソルスパース(SOLSPERSE)3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、22000、24000、26000、28000、32000、36000、39000、41000、71000などの各種ソルスパース分散剤(Noveon社製);アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P−123((株)ADEKA製)、イオネットS−20(三洋化成工業(株)製);ディスパロン KS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)(楠本化成(株)製)が挙げられる。
インク組成物中における分散剤の含有量は、使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.05〜15質量%であることが好ましい。
<界面活性剤>
本発明のインク組成物には、長時間安定した吐出性を付与するため、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、前記界面活性剤としてフッ素系界面活性剤(例えば、有機フルオロ化合物等)やシリコーン系界面活性剤(例えば、ポリシロキサン化合物等)を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。前記ポリシロキサン化合物としては、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いられてもかまわない。また、中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物がインクジェットにおける吐出安定性改良の観点で好ましい。ポリエーテル変性ポリシロキサン化合物の例としては、例えば、SILWET L−7604、SILWET L−7607N、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2161(日本ユニカー(株)製)、BYK306、BYK307、BYK331、BYK333、BYK347、BYK348等(BYK Chemie社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−6191、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
これらの中でも、シリコーン系界面活性剤が好ましく挙げられる。
本発明のインク組成物中における界面活性剤の含有量は使用目的により適宜選択されるが、インク組成物全体の質量に対し、0.0001〜1質量%であることが好ましい。
<溶剤>
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、トリプロリレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、γ―ブチロラクトンのような環状エステル系溶剤、2−メチルピロリドン、2−ピロリドンのようなアミド系溶剤などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、溶剤の量はインク組成物の全質量に対し、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
インク組成物において顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線硬化型のインク組成物であり、インク組成物を記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低い重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
本発明のインク組成物には、更に目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。例えば、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。また、インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。
また、本発明のインク組成物には、前記した成分以外にも種々の公知の添加剤を含んでいてもよい。
前記以外の添加剤として、具体的には、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤、吐出物性の制御を目的としたチオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類、膜物性の調整を目的とした高分子化合物等が挙げられる。
本発明のインク組成物には、膜物性を調整する目的で、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。
また、この他にも、必要に応じて、例えば、塩基性化合物、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤー(粘着付与剤)などを含有させることができる。
本発明のインク組成物は、インクジェットノズルからの吐出性を考慮し、吐出時の温度でのインク組成物の粘度が0.5〜30mPa・sであることが好ましく、0.5〜20mPa・sであることがより好ましく、1〜15mPa・sであることが最も好ましい。この範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。
なお、25℃(室温)でのインク組成物の粘度は、1mPa・s以上200mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上50mPa・s以下であることがより好ましく、2.5mPa・s以上30mPa・s以下であることが更に好ましい。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な記録媒体を用いた場合でも、記録媒体中へのインク組成物の浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。また、25℃でのインク組成物の粘度が200mPa・s以下であると、インク組成物の装置内におけるインクジェットヘッド等へのデリバリーが容易である。
本発明のインク組成物の表面張力は、20〜40mN/mであることが好ましく、23〜35mN/mであることがより好ましい。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の観点から35mN/m以下が好ましい。
このようにして調製された本発明のインク組成物は、インク組成物をインクジェットプリンターにより記録媒体に印字し、その後、印字されたインク組成物に活性線を照射して硬化して記録を好適に行うことができる。
本発明のインク組成物により得られた印刷物は、画像部の強度に優れるため、インク組成物による画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用し得る。
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及び印刷物)
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用として記録媒体(支持体、記録材料等)上に吐出し、記録媒体上に吐出されたインク組成物に活性エネルギー線を照射し、インクジェットインク組成物を硬化して画像を形成する方法である。
より具体的には、本発明のインクジェット記録方法は、(a1)記録媒体上に、本発明のインク組成物を吐出する工程、及び、(b1)吐出されたインク組成物に活性線を照射して前記インク組成物を硬化する工程、を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記(a1)及び(b1)工程を含むことにより、記録媒体上において硬化したインク組成物により画像が形成される。
また、本発明のインクジェット記録方法は、記録媒体上の同一部分において、上記(a1)及び(b1)工程を2回以上行うこと、すなわち、同一部分を重ね打ちにより印刷するマルチパスモードで行うことが好ましい。本発明のインク組成物を用いることにより、マルチパスモードで印刷を行った場合、光沢性により優れた画像が得られる。
また、本発明の印刷物は、本発明のインク組成物により記録された印刷物であり、本発明のインクジェット記録方法によって記録された印刷物であることが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、パッケージ印刷用に好適であり、特に、食品包装用のパッケージ印刷に好適である。その場合には、以下の工程をこの順で含むインクジェット記録方法であることが好ましい。
(工程a)インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出し、膜厚150μm以下のパッケージ用支持体上に印刷する工程、及び、
(工程b)前記吐出されたインクジェットインク組成物に活性線を照射する工程
本発明のインクジェット記録方法における(a1)工程及び(a)工程には、以下に詳述するインクジェット記録装置を用いることができる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置としては、特に制限はなく、目的とする解像度を達成し得る公知のインクジェット記録装置を任意に選択して使用することができる。すなわち、市販品を含む公知のインクジェット記録装置であれば、いずれも、本発明のインクジェット記録方法の(a1)工程及び(a)工程における記録媒体へのインク組成物の吐出を実施することができる。
本発明で用いることができるインクジェット記録装置としては、例えば、インク供給系、温度センサー、活性エネルギー線源を含む装置が挙げられる。
インク供給系は、例えば、本発明のインク組成物を含む元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドからなる。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、好ましくは1〜100pl、より好ましくは8〜30plのマルチサイズドットを、好ましくは320×320〜4,000×4,000dpi、より好ましくは400×400〜1,600×1,600dpi、更に好ましくは720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
上述したように、本発明のインク組成物は、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが好ましいことから、インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが好ましい。一定温度にする部位はインクタンク(中間タンクがある場合は中間タンク)からノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。すなわち、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温を行うことができる。
温度コントロールの方法としては、特に制約はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物の流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。温度センサーは、インク供給タンク及びインクジェットヘッドのノズル付近に設けることができる。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、あるいは、熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
本発明のインク組成物のような放射線硬化型インク組成物は、概して通常インクジェット記録用インク組成物で使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。インク組成物の粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こす。したがって、吐出時のインク組成物の温度はできるだけ一定に保つことが必要である。よって、本発明において、インク組成物の温度の制御幅は、好ましくは設定温度の±5℃、より好ましくは設定温度の±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃とすることが適当である。
次に、(b1)工程及び(b)工程について説明する。
記録媒体上に吐出されたインク組成物は、活性エネルギー線(活性線)を照射することによって硬化する。これは、本発明のインク組成物に含まれる重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルなどの重合開始種を発生し、その開始種の機能に重合性化合物の重合反応が、生起、促進されるためである。このとき、インク組成物において重合開始剤と共に増感剤が存在すると、系中の増感剤が活性エネルギー線を吸収して励起状態となり、重合開始剤と接触することによって重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などが使用され得る。活性エネルギー線のピーク波長は、増感剤の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、320〜420nmであることが更に好ましく、活性エネルギー線が、ピーク波長が340〜400nmの範囲の紫外線であることが特に好ましい。
また、本発明のインク組成物の、重合開始系は、低出力の活性エネルギー線であっても十分な感度を有するものである。したがって、露光面照度が、好ましくは10〜4,000mW/cm2、より好ましくは20〜2,500mW/cm2で硬化させることが適当である。
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、LED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に一層短い波長が必要とされる場合、米国特許第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギー線を放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー線源はUV−LEDであり、特に好ましくは340〜400nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
なお、LEDの記録媒体上での最高照度は、10〜2,000mW/cm2であることが好ましく、20〜1,000mW/cm2であることがより好ましく、50〜800mW/cm2であることが特に好ましい。
本発明のインク組成物は、このような活性エネルギー線に、好ましくは0.01〜120秒、より好ましくは0.1〜90秒照射されることが適当である。
活性エネルギー線の照射条件並びに基本的な照射方法は、特開昭60−132767号公報に開示されている。具体的には、インク組成物の吐出装置を含むヘッドユニットの両側に光源を設け、いわゆるシャトル方式でヘッドユニットと光源を走査することによって行われる。活性エネルギー線の照射は、インク組成物の着弾後、一定時間(好ましくは0.01〜0.5秒、より好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒)をおいて行われることになる。このようにインク組成物の着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、記録媒体に着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができるため、未反応モノマーの残留を抑えることができるので好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させてもよい。国際公開第99/54415号パンフレットでは、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されており、このような硬化方法もまた、本発明のインクジェット記録方法に適用することができる。
上述したようなインクジェット記録方法を採用することにより、表面の濡れ性が異なる様々な記録媒体に対しても、着弾したインク組成物のドット径を一定に保つことができ、画質が向上する。なお、カラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。明度の低いインク組成物から順に重ねることにより、下部のインク組成物まで照射線が到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、密着性の向上が期待できる。また、照射は、全色を吐出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
このようにして、本発明のインク組成物は、活性エネルギー線の照射により高感度で硬化することで、記録媒体表面に画像を形成することができる。
本発明のインク組成物は、複数のインクジェット記録用インクからなるインクセットとして使用することが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、吐出する各着色インク組成物の順番は、特に限定されるわけではないが、明度の高い着色インク組成物から記録媒体に付与することが好ましく、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックを使用する場合には、イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。また、これにホワイトを加えて使用する場合にはホワイト→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。更に、本発明はこれに限定されず、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタ、ブラック、ホワイトのインク組成物との計7色が少なくとも含まれる本発明のインクセットを好ましく使用することもでき、その場合には、ホワイト→ライトシアン→ライトマゼンタ→イエロー→シアン→マゼンタ→ブラックの順で記録媒体上に付与することが好ましい。
図1は、本発明で好ましく使用されるインクジェット記録装置の模式図である。支持体の搬送手段である、支持体巻き取りロール5、5’に張架された支持体6は、矢印方向に搬送され、各色のインク組成物を吐出する打滴ヘッドが配備されたインクジェットヘッドユニット7にて、各色のインク組成物(K:ブラック、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、W:ホワイト)が吐出される。
図1に示すように、LED光源ユニット1は、不活性ガスブランケット2に囲まれており、不活性ガス配管3を介して不活性ガス発生装置4に接続している。不活性ガスブランケット2内の雰囲気を貧酸素雰囲気とする手段である不活性ガス発生装置4は、不活性ガス配管3を介して不活性ガスブランケット2の内部に不活性ガスを供給するもので、初期状態では不活性ガスブランケット2内雰囲気は空気であるが、不活性ガス発生装置4を稼働させると、不活性ガスブランケット2内の空気は不活性ガスに置換される。不活性ガスは、既述の通り、N2などを利用することができる。
<記録媒体>
本発明のインク組成物を適用しうる記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができる。
各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPS(二軸延伸ポリスチレン)フィルム、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルム、ONy(二軸延伸ナイロン)フィルム、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、TAC(セルローストリアセテート)フィルム等が挙げられる。
その他、記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリアセタール、PVA(ポリビニルアルコール)、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も記録媒体として使用可能である。
本発明のインク組成物は、特定の重合開始剤を含有するため、活性エネルギー線の照射により硬化しうる硬化性のインクジェット用インク組成物として好適に用いることができる。また、本発明のインク組成物は、非吸収性の記録媒体上にも、高品質の画像をデジタルデータに基づき直接形成しうることから、大面積の印刷物の作製にも好適に使用される。
本発明のインク組成物は、特定の重合開始剤を含有することにより低露光量でも硬化し得る。このため、低露光強度の安価な光源を用いることによるシステムやランニングコストの削減、露光時間を短縮することによる印刷速度の向上に寄与するものと思われる。更に、露光後の硬化速度が速いことにより画像のにじみを抑制ができ、鮮明な画像を形成することができる。
(ビスアシルホスフィンオキシド化合物)
本発明のビスアシルホスフィンオキシド化合物は、下記式(1’)又は式(3)で表される化合物である。
Figure 2014070103
(式(1’)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は式(4)で表される基を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは式(4)で表される基であり、R7はアルキル基又はアリール基を表す。)
Figure 2014070103
(式(4)中、R13は水素原子又はメチル基を表し、L3は−COO−又は−CONH−を表し、−*はベンゼン環との結合を表す。)
Figure 2014070103
(式(3)中、R10〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は−CH2Brを表し、R10〜R15のうち少なくとも1つは−CH2Brであり、R16は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
式(1’)で表される化合物におけるR1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又は式(4)で表される基であることが好ましく、メチル基又は重式(4)で表される基であることがより好ましい。上記態様であると、重合物におけるマイグレーションがより少なく、臭気がより抑制された重合物が得られる。
更に、式(1’)で表される化合物は、式(4)で表される基を1つのみ有していても、2つ以上有していてもよい。
式(1’)で表される化合物におけるR7は、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。上記アルキル基及びアリール基は、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びハロゲン原子が挙げられる。
また、式(1’)中に式(4)で表される基が複数存在する場合、式(4)で表される基は、互いに異なっていても同じであってもよいが、同じであることが好ましい。
13は、水素原子であることが好ましい。
3は、−COO−であることが好ましい。
式(3)におけるR10〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基又は−CH2Brであることが好ましく、メチル基又は−CH2Brであることがより好ましい。
また、式(3)において、R10〜R12のうち少なくとも1つは−CH2Brであり、かつR13〜R15のうち少なくとも1つは−CH2Brであることが好ましい。
式(3)におけるR16は、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であり、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜12のアリール基であることがより好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。上記アルキル基及びアリール基は、置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基及びアリール基が挙げられる。
式(3)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はないが、式(3)において−CH2Brとなる部分が−CH3である化合物を用い、当該−CH3を臭素化することにより合成する方法が好ましく例示できる。具体的には、例えば、式(3)において−CH2Brとなる部分が−CH3である化合物に、アゾイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等の熱ラジカル発生剤とN−ブロモスクシンイミド等の臭素化剤とを作用させる方法が好ましく挙げられる。
式(1)で表される化合物又は式(1’)で表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により合成すればよい。中でも、式(3)で表される化合物を用い、式(3)における−CH2Brの臭素原子に置換して重合性官能基又は重合性官能基を有する基を導入する方法が好ましく例示できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<A−1の合成>
−ベンジルブロマイド中間体の合成−
撹拌棒、窒素導入管、温度計を取り付けた2L三口フラスコに、12g(28.7mmol)のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819、チバ・ジャパン(株)製)、N−ブロモスクシンイミド5.11g(28.7mmol)、クロロベンゼン1,500mLを入れて65℃にて窒素気流下で1時間加熱撹拌した。固体が完全に溶解した後、アゾイソブチロニトリルを0.2g加えて更に6時間反応させた。溶液を放冷したのち、酢酸エチルと水で2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3)で化合物A−1のベンジルブロマイド中間体を単離した。
1H NMR(400MHz、CDCl3
δ=2.04(6H、s)、2.11(6H、s)、2.25(3H、s)4.36(2H、s)、6.78(2H、s)、7.04(2H、s)、7.41〜7.48(2H、m)、7.55〜7.65(1H、)、7.74〜7.80(2H、m)
−A−1の合成−
炭酸セシウム12.20g(37.44mmol)をジメチルホルムアミド(DMF、40mL)と純水(8mL)の混合溶液に加え、溶解させた。続いて減圧下で12時間撹拌して濃縮した。アクリル酸1.35g(18.72mmol)を加え、A−1のベンジルブロマイド中間体9.3g(18.72mmol)のDMF(30mL)溶液を加えて室温(25℃)にて5時間撹拌した。酢酸エチルと水で2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で化合物A−1を単離した。
1H NMR(400MHz、CDCl3
δ=2.08(6H、s)、2.11(6H、s)、2.25(3H、s)5.20(2H、s)、5.86(1H、d)、6.20(1H、t)、6.45(1H、d)、6.78(2H、s)、7.00(2H、s)、7.41〜7.48(2H、m)、7.55〜7.65(1H、)、7.74〜7.80(2H、m)
<A−2、A−3、A−5、A−6、A−13、A−14、A−17、A−18及びA−22の合成>
A−1の合成において、使用した各成分やその添加量を表1又は表2のように変更した以外は、A−1の合成と同様の方法で、A−2、A−3、A−5、A−6、A−13、A−14、A−17、A−18及びA−22をそれぞれ合成した。
Figure 2014070103
Figure 2014070103
A−2、A−3のベンジルブロマイド中間体、A−3、A−5のベンジルブロマイド中間体、及び、A−5の1H NMRデータを以下に示す。
<A−2>
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=1.96(3H、t)、2.08(6H、s)、2.11(6H、s)、2.25(3H、s)5.19(2H、s)、5.57(1H、d)、6.45(1H、d)、6.78(2H、s)、7.00(2H、s)、7.41〜7.48(2H、m)、7.55〜7.65(1H、)、7.74〜7.80(2H、m)
<A−3のベンジルブロマイド中間体>
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=2.04(12H、s)、4.36(4H、s)、7.02(4H、s)、7.41〜7.48(2H、m)、7.55〜7.65(1H、)、7.74〜7.80(2H、m)
<A−3>
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=2.08(12H、s)、5.20(4H、s)、5.86(2H、d)、6.20(2H、t)、6.45(2H、d)、7.00(4H、s)、7.41〜7.48(2H、m)、7.55〜7.65(1H、)、7.74〜7.80(2H、m)
<A−5のベンジルブロマイド中間体>
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=2.04(9H、s)、4.36(6H、s)、7.02(3H、s)、7.04(1H、s)、7.41〜7.48(2H、m)、7.55〜7.65(1H、)、7.74〜7.80(2H、m)
<A−5>
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ=2.08(9H、s)、5.20(6H、s)、5.86(3H、d)、6.20(3H、m)、6.45(3H、d)、7.00(3H、s)、7.02(1H、s)、7.41〜7.48(2H、m)、7.55〜7.65(1H、)、7.74〜7.80(2H、m)
<A−20の合成>
200mlナスフラスコに、金属ナトリウム1.81g(78.8mmol)と脱水トルエン76.6gを加え、98℃で撹拌した。p,p−ジクロロフェニルホスフィン3.53g(19.7mmol)を1時間かけて滴下し、更に16時間撹拌した。続いてtert−ブタノール2.92g(39.4mmol)を1時間かけて滴下した。
得られた反応溶液に、35℃で3−イソシアナート−2,4,6−トリメチルベンゾイルクロリド8.87g(39.6mmol)を滴下し、更に1時間撹拌した。
得られた反応溶液に、30%過酸化水素6.70g(59.1mmol)を滴下し、更に1時間撹拌した。20gの5%NaHCO3水溶液で処理した後に有機層を取り出した。酢酸エチルと水とで2回分液した後にカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で化合物A−20を単離した。
<インクジェット記録方法>
図1に示す、インクジェット装置において、インクジェットヘッドとして、東芝テック(株)製CA3ヘッドを各色4つずつ並列に配置し、ヘッドを45℃に加温して、42pLの打滴サイズで、描画できるよう、周波数をコントロールした。光源として、ピーク波長385nmのLED光源ユニット(LEDZero Solidcure、Integration Technology社製)を不活性ガスブランケット内に配置し、不活性ガス源として、コンプレッサー付きN2ガス発生装置Maxi−Flow30(Inhouse Gas社製)を0.2MPa・sの圧力で接続し、ブランケット内のN2濃度(N2分圧)が90〜99%の範囲になるよう、2〜10L/分の流量でN2をフローさせ、N2濃度を設定した。支持体として、パイレンフィルム−OTP3162(A4サイズ、ポリプロピレンシート、膜厚40μm)を30m/minの速度で操作させ、100%ベタ画像の描画を行い、以下に示す諸性能のテストを行った。
(各ミルベースの調製)
<シアンミルベースAの調製>
IRGALITE BLUE GLVO(シアン顔料、BASF・ジャパン(株)製)を300質量部と、SR9003(PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製)を620質量部と、SOLSPERSE32000(Noveon社製分散剤)を80質量部とを撹拌混合し、シアンミルベースAを得た。なお、シアンミルベースAの調製は分散機モーターミルM50(アイガー社製)に入れて、直径0.65mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで4時間分散を行った。
(実施例1〜17、及び、比較例1〜5)
<インク組成物の作製方法>
表3〜5に記載の素材を記載した量(質量部)で混合、撹拌することで、各インク組成物を得た。なお、化合物B−1、B−2はそれぞれ下記の構造である。
Figure 2014070103
Figure 2014070103
Figure 2014070103
Figure 2014070103
なお、前述した以外の表3〜5に記載の略号は、下記に示す通りである。
<重合性化合物(モノマー)>
・TPGDA::トリプロピレングリコールジアクリレート、Sartomer社製SR306
・NPGPODA:PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、Sartomer社製SR9003
・EOTMPTA:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、Sartomer社製SR454
・APG−100:ジプロピレングリコールジアクリレート、新中村化学工業(株)製
・フェノキシエチルアクリレート:Sartomer社製SR339
・DVE−3:2官能ビニルエーテル化合物、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ISP Europe社製
・OXT−221:2官能オキセタン化合物、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、東亞合成(株)製
<他の重合開始剤>
・ITX:イソプロピルチオキサントン、SPEEDCURE ITX、LAMBSON社製
・ESACURE KIP150:下記化合物、Lamberti社製
・IRGACURE 819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、BASF社製
・IRGACURE 369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、BASFジャパン(株)製
・IRGACURE 127:下記に示すビス(α−ヒドロキシケトン)化合物、BASF社製
<界面活性剤>
・BYK307:シリコーン系界面活性剤、BYK Chemie社製
Figure 2014070103
(式中、nは2以上の整数を表し、Rは末端基を表す。)
<マイグレーション評価方法>
印刷物表面に水:エタノール=70:30混合液10mLを滴下し、混合溶媒が揮発しないように、10平方デシメートルの大きさに切り取った印刷物をガラス密閉容器に入れて、40℃で10日間放置した。その後、水−エタノール混合液中に含有する、印刷物からの全溶出量(オーバーオールマイグレーション量:OML)を算出し、1〜5段階で評価を行った。なお、全容出量の測定は、10日間放置後に、水−エタノール混合液を揮発させ、残存成分の質量を測定することにより行った。
5:溶出量が50ppb以下
4:溶出量が50ppbを超え、200ppb以下
3:溶出量が200ppbを超え、1,000ppb以下
2:溶出量が1,000ppbを超え、2,000ppb以下
1:溶出量が2,000ppbを超える
<臭気評価方法>
上記インクジェット画像記録方法によって得られた画像を、30cm×30cmのジップ付きビニール袋に内包し、24時間放置した。
その後、ジップを解放し、臭気の評価を行った。評価は10人で測定を行い、最も多い人数の評価を採用した。なお、最も多い人数の評価が複数ある場合は、その評価の値の平均値を採用する。
5:ほぼ無臭である
4:わずかな臭気があるがほとんど気にならない
3:ある程度の臭気があるが、不快なレベルでない
2:強い臭気がある
1:非常に強い臭気がある
<基材密着性>
上記インクジェット記録方法にて、支持体をPriplak(膜厚0.8mm、ポリプロピレンシート、Robert Horne社製)に変更し、印刷物を作成。硬化膜と記録媒体との接着性は、クロスハッチテスト(EN ISO2409)により評価し、ASTM法による表記5B〜1Bで表す。5Bが最も接着性に優れ、3B以上で実用上問題のないレベルであると評価する。
<爪擦り耐性評価>
得られた画像を爪で10回擦り、画像表面の観察を行い、傷の程度を以下の基準で評価した。なお、3以上で実用上問題ないレベルである。
5:印刷物をルーペで観察しても全く表面に傷が見られない
4:印刷物をルーペで観察するとわずかな傷が見られるが、50cmの距離では傷が見えない
3:印刷物から50cmの距離で観察するとわずかな表面の傷が見えるが、1mの距離からは傷が見えない
2:印刷物から1mの距離で観察するとわずかな表面の傷が見える
1:印刷物から1mの距離で観察するとはっきりとした表面の傷が見える
実施例1〜17、及び、比較例1〜5における評価結果を、表6にまとめて示す。
Figure 2014070103
1:LED光源ユニット、2:不活性ガスブランケット、3:不活性ガス配管、4:不活性ガス発生装置、5,5’:支持体巻き取りロール、6:支持体、7:インクジェットヘッドユニット

Claims (18)

  1. アシル基に重合性官能基を有するビスアシルホスフィンオキシド化合物、及び、
    重合性化合物を含むことを特徴とする
    インク組成物。
  2. 前記ビスアシルホスフィンオキシド化合物が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のインク組成物。
    Figure 2014070103
    (式(1)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は重合性官能基を有する基を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは重合性官能基を有する基であり、R7はアルキル基又はアリール基を表す。)
  3. 前記R1〜R6のうち少なくとも1つが、式(2)で表される重合性官能基を有する基である、請求項2に記載のインク組成物。
    Figure 2014070103
    (式(2)中、R8は水素原子又はメチル基を表し、L1は−COO−、−CONH−又はフェニレン基を表し、Xは二価の連結基を表し、L2は−COO−又は−CONH−を表し、R9は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、nは0〜3の整数を表し、−*はベンゼン環との結合を表す。)
  4. 前記Xが、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキレン基、炭素数2〜12の鎖状若しくは環状アルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は、1以上の前記環状アルキレン基、前記アルケニレン基及び/若しくはアリーレン基と1以上のエステル結合、エーテル結合若しくはウレタン結合とを組み合わせた二価の基である、請求項3に記載のインク組成物。
  5. 前記R9が−CH2−である、請求項3又は4に記載のインク組成物。
  6. 前記nが0である、請求項3に記載のインク組成物。
  7. 前記R7がフェニル基である、請求項2〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
  8. 前記L1が−COO−である、請求項3〜6のいずれか1項に記載のインク組成物。
  9. 前記R8が水素原子である、請求項3〜6及び8のいずれか1項に記載のインク組成物。
  10. インクジェットインク組成物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインク組成物。
  11. 食品パッケージ印刷用インク組成物である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインク組成物。
  12. (a1)記録媒体上に、請求項1〜11のいずれか1項に記載のインク組成物を吐出する工程、及び、
    (b1)吐出されたインク組成物に活性放射線を照射して、前記インク組成物を硬化する工程、を含むことを特徴とする
    インクジェット記録方法。
  13. 請求項12に記載のインクジェット記録方法を用いて作成された印刷物。
  14. 下記式(3)で表される化合物であることを特徴とする
    ビスアシルホスフィンオキシド化合物。
    Figure 2014070103
    (式(3)中、R10〜R15はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は−CH2Brを表し、R10〜R15のうち少なくとも1つは−CH2Brであり、R16は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)
  15. 下記式(1’)で表される化合物であることを特徴とする
    ビスアシルホスフィンオキシド化合物。
    Figure 2014070103
    (式(1’)中、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は式(4)で表される基を表し、R1〜R6のうち少なくとも1つは式(4)で表される基であり、R7はアルキル基又はアリール基を表す。)
    Figure 2014070103
    (式(4)中、R13は水素原子又はメチル基を表し、L3は−COO−又は−CONH−を表し、−*はベンゼン環との結合を表す。)
  16. 前記R1〜R6がそれぞれ独立に、メチル基又は式(4)で表される基であり、かつ前記R7がフェニル基である、請求項15に記載のビスアシルホスフィンオキシド化合物。
  17. 前記L3が−COO−である、請求項15又は16に記載のビスアシルホスフィンオキシド化合物。
  18. 前記R13が水素原子である、請求項15〜17のいずれか1項に記載のビスアシルホスフィンオキシド化合物。
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