JP2014068579A - 細胞培養モジュール及び細胞培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】細胞培養担体のウェル内での細胞培養後の処理において、簡便な処理操作により、前記ウェル内で培養された細胞を効率的かつ高い回収率で剥離して回収することができる細胞培養モジュール及びこれを用いた細胞培養方法を提供する。
【解決手段】表面に複数のウェル11が設けられた円板状の細胞培養担体1を載置する保持部材2と、その細胞培養担体載置面に被せられる蓋部材3とを備え、蓋部材3の下面は、細胞培養担体1の上面外周部及び保持部材2に密着し、蓋部材3下面と細胞培養担体1表面との間に隙間4が形成され、蓋部材3には、細胞培養担体1上に緩衝液5を供給するために均等に配置され、下向きに貫通する複数の導入孔31と、細胞培養担体1上の緩衝液5を排出するための中央孔32とが設けられ、導入孔31から供給された緩衝液5が、隙間4において渦流を生じると同時に、中央孔32から排出されるような細胞培養モジュールを構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、培養細胞を細胞培養担体から回収するのに好適な細胞培養モジュール及びこれを用いた細胞培養方法に関する。
近年、ヒト骨髄液からの幹細胞の分離技術、目的とする組織細胞への分化・誘導技術、三次元培養技術及び足場材料の開発等の進歩に伴い、細胞培養によって幹細胞から皮膚、骨、軟骨、血管、心臓弁及び靭帯等の生体組織を形成することが可能となり、臨床応用も行われている。また、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(IPS細胞)に関しても、再生医療への応用に対する注目が高まっている。
上記のような幹細胞の培養は、通常、基板表面に複数のウェルが設けられた細胞培養担体を用いて行われる。このような細胞培養方法においては、培養した細胞は、ウェル内に接着しているため、細胞培養担体から剥離して回収しなければならない。
この剥離作業は、従来は、トリプシン処理等の酵素処理により行われていたが、酵素処理のような化学的な処理方法では、培養した細胞の一部は劣化、さらには死滅する場合もあり、また、処理操作が煩雑であるという課題も有していた。
このような課題に鑑みて、本出願人は、酵素処理を行うことなく、物理的な方法で培養細胞を細胞培養担体から容易に剥離する手段として、水圧を利用した細胞培養モジュールを提案した(例えば、特許文献1,2参照)。
この細胞培養モジュールは、多孔体からなる細胞培養担体を密閉した空間に培養液を充填した状態で、細胞培養面の背面から水圧(液圧)をかけて、前記細胞培養担体から培養細胞を剥離し、この剥離された細胞を培養液とともに排出させて回収する構成を備えているものである。
国際公開第2009/104296号 特開2010−75115号公報
上記のような細胞培養モジュールを用いれば、酵素処理による場合よりも効率的に培養した細胞を剥離・回収することができる。
しかしながら、培養した細胞を細胞培養担体から剥離する際、細胞を剥離するのに十分な水圧が得られなかったり、剥離した細胞が細胞培養担体の外周縁付近に再付着して残留したりする等、培養した細胞の回収率が高いとは言えなかった。また、水圧を高くすれば、回収率の向上は図られるが、そのためには、モジュール全体を高耐圧設計としなければならず、装置の大型化及び高コスト化を招くという課題も有していた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、細胞培養担体のウェル内での細胞培養後の処理において、簡便な処理操作により、前記ウェル内で培養された細胞を効率的かつ高い回収率で剥離して回収することができる細胞培養モジュール及びこれを用いた細胞培養方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る細胞培養モジュールは、表面に複数のウェルが設けられた円板状の細胞培養担体を載置する保持部材と、前記保持部材の細胞培養担体載置面に被せられる蓋部材とを備え、前記蓋部材の下面は、前記細胞培養担体の上面外周部及び前記保持部材に密着し、前記蓋部材下面と前記細胞培養担体表面との間に隙間が形成され、前記蓋部材には、前記細胞培養担体上に緩衝液を供給するために均等に配置され、下向きに貫通する複数の導入孔と、前記細胞培養担体上の緩衝液を排出するために中央に配置された中央孔とが設けられ、前記導入孔から供給された緩衝液が、前記隙間において渦流を生じると同時に、前記中央孔から排出されることを特徴とする。
このように、細胞培養担体上で緩衝液の渦流を生じさせることにより、その流れの力によって、培養された細胞を細胞培養担体から効率的かつ高い回収率で剥離して回収することができる。
前記導入孔は、傾き角度がその貫通孔の中心軸を通る鉛直方向断面において、前記細胞培養担体表面に対して20°〜80°であり、数が3〜4個であり、かつ、前記蓋部材の下面側における導入孔の出口の中心位置が、前記隙間の半径Rに対して中心からの距離が0.7R以上の外周部であることが好ましい。
前記導入孔をこのような態様で設けることにより、流路の配置設計や加工がしやすく、また、前記細胞培養担体上の隙間において、培養された細胞を細胞培養担体から確実に剥離するのに好適な渦流を生じやすい。
また、本発明に係る細胞培養方法は、上記の細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法であって、表面に複数のウェルが設けられた円板状の多孔体からなる細胞培養担体を前記保持部材に載置し、前記細胞培養担体の上面外周部及び前記保持部材に蓋部材を密着固定した後、前記保持部材の細胞培養担体載置面に通じる供給流路から前記細胞培養担体の裏面側に第1の培養液を供給し、該細胞培養担体上面まで浸透させる第1の培養液の供給工程と、第1の培養液の供給を停止し、前記蓋部材の前記中央孔から前記細胞培養担体上面に未分化の細胞を含む第2の培養液を滴下し、細胞を播種する細胞播種工程と、前記供給流路から前記細胞培養担体の裏面側に第1の培養液を供給しながら、第1の培養液及び第2の培養液の培養液成分のみを前記中央孔から排出させ、前記ウェル内で細胞を凝集化させる細胞凝集化工程と、第1の培養液の供給を停止し、前記蓋部材の前記導入孔から緩衝液を供給し、凝集化した培養細胞を前記緩衝液とともに前記中央孔から排出させて回収する培養細胞回収工程とを備えていることを特徴とする。
このような培養方法によれば、間葉系幹細胞やES細胞の凝集塊を効率的に形成し、かつ、培養された細胞の細胞培養担体からの剥離及び回収まで連続的に簡便に行うことができる。
本発明に係る細胞培養モジュールによれば、細胞培養担体のウェル内で細胞培養した後、培養した細胞を回収する際、酵素処理のように細胞の劣化を生じさせることなく、前記ウェル内で培養された細胞を効率的に剥離して、高い回収率で回収することができる。また、処理操作が簡便であるという利点も有している。
また、本発明に係る細胞培養方法によれば、上記のような細胞培養モジュールを用いて細胞培養を行うことにより、三次元細胞塊を効率的に培養することができ、さらに、培養された細胞の細胞培養担体からの剥離及び回収までを連続的に簡便に行うことができる。
本発明に係る細胞培養モジュールの概略断面図である。 本発明に係る細胞培養モジュールの蓋部材の一例の概略下面図である。 図2に示した蓋部材を用いた場合の緩衝液の渦流のイメージ図である。
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明に係る細胞培養モジュールの概略を示す。図1に示した細胞培養モジュールは、表面に複数のウェル11が設けられた円板状の細胞培養担体1を載置する保持部材2と、保持部材2の細胞培養担体載置面(上面)に被せられる蓋部材3とからなる。
保持部材2の細胞培養担体載置面は、細胞培養担体1のサイズに対応した凹部が形成され、Oリング21を介して、細胞培養担体1が載置される。
一方、蓋部材3の下面は、細胞培養担体1上面の外周部及び保持部材2にOリング22を介して密着し、蓋部材3下面と細胞培養担体1表面との間に隙間4が形成される。
なお、蓋部材3の隙間4の径は、細胞培養担体1の径よりもわずかに小さいことが好ましい。ただし、蓋部材3が細胞培養担体1表面のウェル11を覆うことがないようにする。
蓋部材3をこのように形成することにより、細胞培養担体1から剥離された培養細胞が細胞培養担体1の外縁部や背面側に周り込むことを防止することができる。
また、蓋部材3には、複数の導入孔31と中央孔32が設けられている。図2に、蓋部材3の一例の下面図を示す。
導入孔31は、細胞培養担体1上に緩衝液5を供給する流路であり、蓋部材3に均等に配置され、斜め下向きに貫通するように設けられる。図2においては、3つの導入孔31が、中心角120°をなすように均等な配置で設けられ、各導入孔31は、上面から下面に向かって斜め内向きの貫通孔である。
また、中央孔32は、細胞培養担体1上の緩衝液5を排出する流路であり、円板状の細胞培養担体1の中心上方、すなわち、蓋部材3の中央に設けられる。
上記のような構成を備えた細胞培養モジュールに、緩衝液5を導入孔31から供給することにより、隙間4において渦流が生じ、これと同時に、緩衝液5は蓋部材3の中央の中央孔32から排出される。
図3に、図2に示した蓋部材を用いた場合の細胞培養担体上での緩衝液の渦流方向のイメージを矢印で示す。
本発明に係る細胞培養モジュールを用いれば、細胞培養担体上で図3に示すような緩衝液の渦流を生じさせることができ、その流れの力によって、細胞培養担体のウェル内で培養された細胞を該細胞培養担体から容易に剥離し、細胞した培養を緩衝液とともに回収することができ、培養細胞の回収率の向上が図られる。
蓋部材3を斜め下向きに貫通する導入孔31の傾きは、該貫通孔の中心軸を通る鉛直方向断面において、細胞培養担体1表面に対する角度θが20°〜80°であることが好ましい。
前記傾き角度θが80°よりも大きい場合、渦流の勢いが弱くなり、培養された細胞が細胞培養担体1から剥離されない領域ができるおそれがある。一方、前記傾き角度θが20°未満の場合、流路の配置が設計上困難となり、また、渦流の流速はそれほど大きくならないため、これ以上小さくする必要はない。
前記傾き角度θは、30°〜60°であることがより好ましい。
また、導入孔31の数は、3〜4個であることが好ましい。
導入孔31は、2個でも渦流が形成されるが、流速分布にむらが生じやすく、培養された細胞が細胞培養担体1から剥離されない領域ができるおそれがある。一方、導入孔31が5個以上の場合、流速分布は均等になるが、導入孔31の数の増加に伴って1個当たりの供給流量が減少し、渦流の流速が低下するため、培養された細胞を細胞培養担体1から剥離することができる流れが形成されないおそれがある。また、導入孔31の径を小さくして、数を増加すると、緩衝液5が導入孔31を流れる際の圧力損失が大きくなり、流速が低下し、また、加工コストも増大することとなる。
蓋部材3の下面側における導入孔31の出口の中心位置は、隙間4の半径Rに対して中心からの距離が0.7R以上の外周部であることが好ましい。
前記距離が0.7R未満とすると、導入孔31の出口位置よりも外側における渦流の流速が小さすぎて、細胞培養担体1の外周部において培養された細胞を剥離するために十分な強さの流れが形成されないおそれがある。
前記距離は、0.8R〜0.9Rであることがより好ましい。
また、細胞培養担体1の直径が10〜30mm程度で、隙間4の半径Rが8〜28mm程度の場合、導入孔31の出口径は、0.3〜1.0mmであることが好ましい。
出口径が0.3mm未満の場合、緩衝液6が導入孔31を流れる際の圧力損失が大きく、供給流量が減少し、培養した細胞を細胞培養担体1から剥離することができるような強さの渦流が形成されにくい。一方、出口径が1.0mmを超える場合、断面積の増加に伴って供給流速が低下し、この場合も、培養された細胞を細胞培養担体1から剥離するのに十分な強さの渦流が形成されないおそれがある。
なお、導入孔31の孔径は、均一でもよいが、細胞培養担体1上の隙間4への出口径、すなわち、蓋部材3の下面側の孔径が小さくなるように先細状に形成すれば、緩衝液5が導入孔31を流れる際の圧力損失を低減させることができる。
前記出口径は、0.4〜0.6mmであることがより好ましい。
なお、細胞培養担体1の下部には、細胞培養担体1に振動を与えたり、例えば、シーソーのような動きで傾きを変化させる機構が設けられていることが好ましい。
このように細胞培養担体1に動きを与えることにより、培養された細胞が細胞培養担体からより剥離しやすくなる。
緩衝液5は、培養する細胞の種類に応じて適宜調製されるが、通常、リン酸緩衝生理食塩水が用いられる。
細胞培養担体1の材質は、特に限定されるものではなく、プラスチックや、生体親和性及び生体適合性に優れ、細胞の足場として適しているとされるジルコニア、チタニア、アルミナ又はハイドロキシアパタイト等のセラミックス等を用いることができる。また、表面が多孔体からなり、三次元細胞塊を形成しやすく、また、細胞付着性が高い細胞培養担体であっても、上記の本発明に係る細胞培養モジュールによれば、培養された細胞を細胞培養担体から効率的かつ高い回収率で剥離することができる。
特に、三次元細胞塊を効率的に凝集させるためには、細胞培養担体の裏面から培養液をウェル内に浸透可能である多孔体からなる細胞培養担体が好ましい。この場合の多孔体は、培養液等の浸透性や細胞培養担体自体の強度を保持の観点から、気孔率20〜50%、かつ、平均気孔径0.15〜0.45μmであることが好ましい。なお、前記気孔率及び平均気孔径は、水銀ポロシメータを用いた水銀圧入法による測定値で表したものである。
また、本発明に係る細胞培養方法は、上記の細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法であって、表面に複数のウェルが設けられた円板状の多孔体からなる細胞培養担体を前記保持部材に載置し、前記細胞培養担体の上面外周部及び前記保持部材に蓋部材を密着固定した後、前記保持部材の細胞培養担体載置面に通じる供給流路から前記細胞培養担体の裏面側に第1の培養液を供給し、該細胞培養担体上面まで浸透させる第1の培養液の供給工程と、第1の培養液の供給を停止し、前記蓋部材の前記中央孔から前記細胞培養担体上面に未分化の細胞を含む第2の培養液を滴下し、細胞を播種する細胞播種工程と、前記供給流路から前記細胞培養担体の裏面側に第1の培養液を供給しながら、第1の培養液及び第2の培養液の培養液成分のみを前記中央孔から排出させ、前記ウェル内で細胞を凝集化させる細胞凝集化工程と、第1の培養液の供給を停止し、前記蓋部材の前記導入孔から緩衝液を供給し、凝集化した培養細胞を前記緩衝液とともに前記中央孔から排出させて回収する培養細胞回収工程とを経ることにより行われる。
このような工程を経ることにより、間葉系幹細胞やES細胞の凝集塊を効率的に形成し、かつ、培養された細胞の細胞培養担体からの剥離及び回収までを連続的に簡便に行うことができる。
以下、上記細胞培養方法を各工程順に、図1を参照して詳細に説明する。
まず、第1の培養液の供給工程において、表面に複数のウェル11が設けられた円板状の多孔体からなる細胞培養担体1を保持部材2に載置し、細胞培養担体1の上面外周部及び保持部材2に蓋部材3を密着固定する。そして、保持部材2の細胞培養担体載置面に通じる供給流路23から細胞培養担体1の裏面側に第1の培養液を供給し、細胞培養担体上面まで第1の培養液を十分に浸透させる。
このように、細胞培養の前処理工程として、予め、細胞培養担体1全体に第1の培養液を十分に供給し、細胞培養担体上面まで第1の培養液に浸漬した状態としておく。
細胞培養担体1は、培養の阻害要因となり得る気泡を含まない培養液を、複数のウェル11全体に満遍なく供給する観点から、上述したような気孔率及び平均気孔径を備えた多孔体により構成することが好ましい。
前記第1の培養液(培地)の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、ES細胞を培養する場合は、DMEM、F12、KNOCKOUT DMEM等が好ましい。さらに、これらの培地に、FBS(ウシ血清)、非必須アミノ酸、ピルビン酸、グルタミン酸等の細胞を維持するのに必要な物質が添加される。
また、間葉系幹細胞を培養する場合には、例えば、MEM、α−MEM、DMEM、イーグル培地等が好ましい。さらに、これらの培地に、FBS(ウシ血清)、グルタミン酸等の細胞を維持するのに必要な物質が添加される。
次に、細胞播種工程において、第1の培養液の供給を停止した後、蓋部材3の中央孔32から細胞培養担体1上面に未分化の細胞を含む第2の培養液を滴下し、細胞を播種する。
このような滴下による播種においては、ウェル11内外を問わず、細胞培養担体上面全体に細胞が播種されるが、細胞培養担体上面まで第1の培養液に浸漬した状態で、好ましくは48時間以上静置することにより、ウェル外の細胞がウェル内に移動して付着し、ウェル内で凝集塊を形成させることができる。
すなわち、第1の培養液と、未分化の細胞を含む第2の培養液とを懸濁させた状態で未分化の細胞を細胞培養担体上面に播種することにより、負荷をかけることなく、播種した細胞をウェル内に導入することができ、スムーズな凝集化を促すことができる。
前記第2の培養液(培地)の種類は、前記第1の培養液と同様のものでもよい。
また、培養する細胞の種類は、特に限定されるものではないが、本発明に係る培養方法は、特に、ES細胞や間葉系幹細胞に好適に適用することができる。ES細胞の場合は、1×104〜1×106個/cm2程度、また、間葉系幹細胞の場合は、1×104〜1×105個/cm2程度播種することが好ましい。
次に、細胞凝集化工程において、供給流路23から細胞培養担体1の裏面側に第1の培養液を供給しながら、第1の培養液及び第2の培養液の培養液成分のみを蓋部材3の中央孔32から排出させ、ウェル内11で細胞を凝集化させる。
このように培養液を流通させることにより、細胞培養担体1のウェル11内の細胞は、常に第1の培養液の供給を受けることができるため、ウェル11内での細胞の凝集化が効率的に行われる。
なお、第1の培養液の供給速度は、ウェル11内で凝集化した細胞が剥離しないように、0.1ml/時間程度であることが好ましい。
そして、培養細胞回収工程において、第1の培養液の供給を停止した後、蓋部材3の導入孔31から緩衝液を供給し、凝集化した培養細胞を緩衝液とともに中央孔32から排出させて回収する。
このように緩衝液を供給することにより、上述したように、細胞培養担体1上の空隙4に渦流が生じ、この流れによってウェル11内で凝集化した培養細胞を、細胞培養担体1から確実に剥離し、高回収率で回収することができる。また、細胞の培養から培養細胞の回収までを前記細胞培養モジュール内で、細胞培養担体1を取り外すことなく、連続的に行うことができるため、細胞培養の処理操作が簡便となる。
なお、緩衝液の供給速度は、空隙4内に渦流を効率よく発生する観点から、5〜10ml/秒程度であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
気孔率35%のアルミナセラミックス多孔体からなり、ウェル径250μm、ウェル数1500個の直径16mmの円板状の細胞培養担体のウェル内で、直径約200μmのマウスES細胞を三次元塊状に培養した。
この細胞培養担体を、図1に示すような構成からなる細胞培養モジュールにセットした。導入孔31の数は3個、導入孔の孔径は出口0.6mm、入口2.0mm、傾き角度θ=50°、導入孔の出口の中心を、隙間4の半径R=7mmに対して中心からの距離が0.8R=5.6mmの位置とした。
[実施例2〜5]
細胞培養モジュールを、下記表1に示すような導入孔の数、出口径、入口径、傾き角度θ、出口の中心位置とし、それ以外については、実施例1と同様にして、この細胞培養モジュールに三次元塊状の細胞を培養した細胞培養担体をセットした。
[比較例1]
従来の細胞培養面の背面から水圧(液圧)をかけて、前記細胞培養担体から培養細胞を剥離する構成を備えた細胞培養モジュールに、実施例1と同様の三次元塊状の細胞を培養した細胞培養担体をセットした。
上記の各実施例及び比較例の細胞培養モジュールにおいて、緩衝液としてリン酸緩衝生理食塩水10mlを用い、圧力2kgf/cm2で緩衝液を導入孔から供給し、培養細胞を細胞培養担体表面から剥離し、中央孔から排出した培養細胞を緩衝液とともに回収した。
この回収された培養細胞の数のウェル数に対する比率を回収率として求めた。
これらの結果を表1にまとめて示す。
Figure 2014068579
表1に示したとおり、緩衝液を細胞培養担体表面側の所定の導入孔から渦流として供給する方式により(実施例1〜5)、ウェル内で培養した細胞を細胞培養担体表面から容易に剥離することができ、従来の培養細胞面の背面から水圧をかける方式(比較例1)に比べて回収率が向上することが認められた。特に、導入孔の数が3〜4個、出口径が0.4〜0.6mm、傾き角度θが30°〜50°、出口の中心位置が0.8R〜0.9Rの場合(実施例1,2)、回収率が高かった。
1 細胞培養担体
2 保持部材
3 蓋部材
4 空隙
5 緩衝液
11 ウェル
21,22 Oリング
23 供給流路
31 導入孔
32 中央孔

Claims (3)

  1. 表面に複数のウェルが設けられた円板状の細胞培養担体を載置する保持部材と、前記保持部材の細胞培養担体載置面に被せられる蓋部材とを備え、
    前記蓋部材の下面は、前記細胞培養担体の上面外周部及び前記保持部材に密着し、前記蓋部材下面と前記細胞培養担体表面との間に隙間が形成され、
    前記蓋部材には、前記細胞培養担体上に緩衝液を供給するために均等に配置され、下向きに貫通する複数の導入孔と、前記細胞培養担体上の緩衝液を排出するために中央に配置された中央孔とが設けられ、
    前記導入孔から供給された緩衝液が、前記隙間において渦流を生じると同時に、前記中央孔から排出されることを特徴とする細胞培養モジュール。
  2. 前記導入孔は、傾き角度がその貫通孔の中心軸を通る鉛直方向断面において、前記細胞培養担体表面に対して20°〜80°であり、数が3〜4個であり、かつ、前記蓋部材の下面側における導入孔の出口の中心位置が、前記隙間の半径Rに対して中心からの距離が0.7R以上の外周部であることを特徴とする請求項1記載の細胞培養モジュール。
  3. 請求項1又は2に記載の細胞培養モジュールを用いた細胞培養方法であって、
    表面に複数のウェルが設けられた円板状の多孔体からなる細胞培養担体を前記保持部材に載置し、前記細胞培養担体の上面外周部及び前記保持部材に蓋部材を密着固定した後、前記保持部材の細胞培養担体載置面に通じる供給流路から前記細胞培養担体の裏面側に第1の培養液を供給し、該細胞培養担体上面まで浸透させる第1の培養液の供給工程と、
    第1の培養液の供給を停止し、前記蓋部材の前記中央孔から前記細胞培養担体上面に未分化の細胞を含む第2の培養液を滴下し、細胞を播種する細胞播種工程と、
    前記供給流路から前記細胞培養担体の裏面側に第1の培養液を供給しながら、第1の培養液及び第2の培養液の培養液成分のみを前記中央孔から排出させ、前記ウェル内で細胞を凝集化させる細胞凝集化工程と、
    第1の培養液の供給を停止し、前記蓋部材の前記導入孔から緩衝液を供給し、凝集化した培養細胞を前記緩衝液とともに前記中央孔から排出させて回収する培養細胞回収工程と
    を備えていることを特徴とする細胞培養方法。
JP2012215580A 2012-09-28 2012-09-28 細胞培養モジュール及び細胞培養方法 Active JP5828823B2 (ja)

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