JP4649224B2 - 付着性細胞の培養方法および培養装置 - Google Patents
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Description
N=N0eμt(μ:比増殖速度,N:細胞数,N0:初期細胞数,t:培養時間)
(構成の説明)
図9に示すように、培養容器内底面8を培養床とした四角箱状に形成された培養容器6で、培養床表面は細胞非接着性の親水性ポリマーを材質とした表面8に図7に示すように付着性細胞の大きさと実質的に同じ大きさ(d)を持つ細胞接着性物質7がコートされた領域4が、数密度が0.1個/cm2となるように、縦方向及び横方向に等間隔に配列されている。この数密度は、増殖させる倍数によって規定されるもので、この値に限定されるものではない。接着因子としてフィブロネクチンを用いている。他にコラーゲン、ラミニン等の細胞接着性蛋白乃至物質を用いてもよい。培養容器の側面には液体の流入口12と流出口10を設け、更にCO2ガスの通気口11、排気口9が設けてある。この培養装置を用いて細胞を培養する際の動作を次に説明する。
(動作の説明)
上記培養容器に流入口12を通してQBSF−60培地を加え、細胞の生育温度(例えば37℃)を保つように培養容器外部の熱源を通して制御する。送液口12からQBSF−60培地中に細胞を懸濁させた溶液を入れ、図12(b)に示すように培養容器を傾け、培地排出用チューブより徐々に培地を取り除き、細胞を細胞接着性領域7に付着させる。この傾斜させた液を取り除く作業は、細胞を均一に培養底面に行き渡らせるためであり、この操作がないと培養容器の隅の壁面に細胞が集中するためである。図10のように細胞の付着後、培地をIBL Media Iに換え、培養容器を水平に静置した状態で培養を続ける(図11)。培地交換は、適時、送液口12と廃液口10を通して行う。細胞がコンフルエントになるまで培養する。細胞の回収は、送液口12を通して、洗浄液やトリプシン溶液等の酵素を培養容器内に送液し、細胞を培養床から剥離し、培養側面の排出口10から細胞懸濁液として回収する。
(実験例)
細胞接着領域パターンが付与された培養皿上にQBSF−60培地を用いてhMSCを播種した。QBSF−60培地を用いて培養すると図8のように細胞接着領域のスポット上に細胞2が接着し、細胞非接着領域には細胞は接着しなかった。十分細胞が接着した播種後4時間後に培養皿上にあるQBSF−60培地を図12に示すように培養容器を傾けることで完全に培地を取り除き、PBSで3回洗った後に、IBL Media I培地を加え、3日に1度の培地交換を行い、そのまま培養を続けた。IBL Media I培地に換えてからは、hMSCは細胞非接着領域にも付着し、そのまま細胞は増殖し、コンフルエントな状態となった。5が増殖した細胞である。
図13に、多孔シートを培養床表面から分離可能な状態で密着させた方法を実現するための培養装置の1例を示す。培養容器内部の底面8には細胞の接着が可能なように表面が疎水性加工された材質を用い、その上に径50μm(細胞1個通る大きさ)の貫通口19が等間隔に並んでいる細胞非付着性の親水性ポリマー加工シート18(厚さ50μm)をかぶせる。シートの厚みは、厚すぎると細胞が一つの貫通口に2つ以上入り、薄すぎると細胞が貫通口から出易くなるため、細胞の大きさの0.5から1.5倍が望ましい。培養容器の側面には、培地の送液口12、廃液口10、CO2ガス用の通気口11、排気口9を取り付けている。多孔シートの材質は、親水性ポリマー加工シートの他、細胞への付着性が難付着性である親水性材質を用いることができる。培養床表面の材質は、表面が疎水性加工された材質の他、細胞への付着性が易付着性である疎水性材質を用いることができる。
(動作の説明)
培地の送液口12から培地に細胞を懸濁させた溶液を入れ、振とう器を用いてゆっくりと振とうし、細胞を貫通孔内の培養容器底面8に付着させる。その後、培地を、廃液口10を通して捨て、親水性ポリマー加工シート18を取り外し、新たに培地を加える。そのまま、適時培地交換を繰り返しながら細胞を培養し、コンフルエントな状態まで増殖させる。細胞の回収は、送液口12を通して、洗浄液やトリプシン溶液等の酵素を培養容器内に送液し、細胞を培養床から剥離し、培養側面の排出口10から細胞懸濁液として回収する。
(実験例)
hMSCを、上記培養装置を用いて培養を行った。あらかじめ培養容器に培地を入れておき、37℃に保温した。培地はMSCGM培地(Cambrex社)を用いた。hMSCを培養装置に送液し、24時間ゆっくりと振とうし、細胞を貫通孔のある培養底面に付着させた。親水性ポリマー加工シートを取り外し、そのまま培養を続けた。その結果、細胞はほぼコンフルエントまで増殖した。
図14に示すように、培養容器内の底面は細胞の接着可能な表面疎水性加工材質であり、その上方に径50μm(細胞1個通る大きさ)の貫通口19が等間隔に並んだ細胞非付着性の親水性ポリマー加工シート18(厚さ50μm)が設けてある。貫通口の径、親水性ポリマー加工シートの厚さは細胞の大きさによって規定されるものであり、この値に限定されない。培養容器の側面には、親水性ポリマー加工シート18上部に培地を入れるための送液口35が、親水性ポリマー加工シート18の下部かつ培養床上部にはCO2ガス用の通気口37と試薬等を入れるための試薬送液口36が設けてある。また、廃液用に、親水性ポリマー加工シート18上部に1箇所(上部排出口33)、親水性ポリマー加工シート18下部かつ培養床8上部に1箇所孔(下部排出口34)を取り付けた。培養容器底面には通気口38が設けてある。図14において、20は培地、39は培地タンク、40は試薬タンク、41は送液ポンプ、42はガスボンベである。
(動作の説明)
通気口37からガスを通気し、培養床8を親水性ポリマー加工シート18に密着させる。この状態で、送液口35から培地と細胞懸濁液を注入する。振とう器でゆっくり培養容器を振とうし、細胞を親水性ポリマー加工シートの貫通口19に落とす。細胞が培養床上に接着したところで、通気口38からガスを排気し、培養床を親水性ポリマー加工シートから引き離す。廃棄口34を通して、培地を廃棄し、送液口36を通して、培地を注入する。適時培地交換を行いながら、そのまま細胞を培養する。培地交換は送液口36と廃液口34を用いて行う。細胞はコンフルエントになったら送液口36から細胞洗浄液を注入し、廃液口34から洗浄液を廃液する。これを数回繰り返し、細胞を洗浄する。送液口36からトリプシン等の酵素を送液する。細胞が培養床表面から剥がれたら、振とう器を作動し、細胞を懸濁させる。廃液口34から細胞懸濁液を回収する。
(実験例)
培養容器底面の通気口からCO2ガスを通気し、図14(a)に示すように、培養床シートを膨張させ、親水性ポリマー加工シートと密着させた。この状態で、培地で懸濁したhMSCを親水性ポリマー加工シート上部の送液口から注入し、親水性ポリマー加工シート上に拡散させた。細胞が親水性ポリマー加工シートの貫通口に入り、培養床上に付着するように3時間静置した。その後、培養床シート下部のCO2ガスを脱気し、培養床を親水性ポリマー加工シートから離し、水平に保った。培養床上に親水性ポリマー加工シート下部の口から培地を加え、培養床上を浸す。余分な培地は廃棄口から排出した。通気口からCO2ガスを通気し、37℃で細胞を培養した。
図15は、本発明装置の実施例の縦断側面図であり、図16はその上面図である。細胞懸濁液21(サンプル液)はサンプルライン22を通り、ピエゾ振動板(超音波発生装置)に取り付けてあるフローセルボディ23に送り込まれる。クォーツガラスで作成され、断面が正方形の細長い中空チャンバーであるフローセルがフローセルボディの下端に取り付けてある(図17)。フローセルは細胞を注入する細胞注入手段としての一例である。シース液30とサンプル液21がフローセルに注入され、圧によって送り出されたシース液は、フローセル内を上方から下方に向かって流れる。
(動作の説明)
細胞懸濁液を圧によって送りだし、フローセルから流す。ピエゾ振動板によって液滴化され、そのまま下方の培養皿上の穴に落ちる。フローセルは測定中常時レーザー光24が照射されており、細胞による前方散乱光が検出されると、電圧パルス信号として制御装置に読取られ、細胞が通過したことを確認する。
(実験例)
hMSCを、フローセルを通して、径30cm2の培養皿B上に等間隔に播種した。6時間培養し、細胞が培養皿底面に付着したところで培養皿Aを取り外した。その後、3日に1度培地交換を行いながら、培養を続け、細胞はコンフルエントな状態まで増殖した。
Claims (12)
- ヒト間葉系幹細胞(hMSC)からなる付着性細胞を、培養容器の培養床表面にコンフルエントな細胞密度の1/103以下となる低密度で播種し、培養によってコンフルエントな細胞密度まで増殖させる付着性細胞の培養方法であって、前記培養床表面に、付着性細胞の大きさと実質的に同じ大きさを持ち、縦及び横方向に等間隔に配列された細胞接着性領域に付着性細胞を接着させることを特徴とする付着性細胞の培養方法。
- 請求項1に記載の付着性細胞の培養方法において、付着性細胞を浮遊化して懸濁した培地に、細胞に凝集活性を有しない高分子の比重調整剤を添加し、細胞が培養床まで沈降するまでに培養溶液中に均一に拡散するような沈降速度となるように培地の比重を調整することを特徴とする付着性細胞の培養方法。
- 請求項1又は2に記載の付着性細胞の培養方法において、前記培養床表面は細胞非接着性の親水性材質の部分と、疎水性の細胞接着性物質の部分とからなることを特徴とする付着性細胞の培養方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の付着性細胞の培養方法において、前記培養床表面は細胞非接着性の親水性材質の部分と、細胞接着性物質の塗布部分とからなることを特徴とする付着性細胞の培養方法。
- 前記細胞接着性領域の大きさと付着性細胞の大きさが等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の付着性細胞の培養方法。
- 前記細胞接着性領域の大きさよりも付着性細胞の大きさが小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の付着性細胞の培養方法。
- 細胞接着性領域に細胞を付着させるために、QBSF−60培地を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の付着性細胞の培養方法。
- 光透過性を有し、細胞を培養する為の容器底面と、液体の流入口及び流出口と、前記底面に付着性細胞の大きさと実質的に同じ大きさを持ち、コンフルエントな細胞密度の1/10 3 以下となる低密度で縦及び横方向に等間隔に配列された細胞接着性領域を有する培養床表面を有することを特徴とする付着性細胞の培養装置。
- 請求項8に記載の付着性細胞の培養装置において、前記培養床表面は細胞の付着性について難付着性である親水性材質の部分と、細胞への付着性について易付着性である疎水性材質の部分とからなることを特徴とする付着性細胞の培養装置。
- 請求項8又は9に記載の付着性細胞の培養装置において、前記細胞接着性領域が細胞接着性蛋白質膜からなることを特徴とする付着性細胞の培養装置。
- 前記細胞接着性領域の大きさと付着性細胞の大きさが等しいことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の付着性細胞の培養装置。
- 前記細胞接着性領域の大きさよりも付着性細胞の大きさが小さいことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の付着性細胞の培養装置。
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