以下、本発明の一実施形態に係る細胞培養精製装置及び細胞培養精製方法について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において共通する構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る細胞培養精製装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る細胞培養精製装置100は、培養槽1と、第1フィルタユニット(第一のフィルタ)2と、第2フィルタユニット(第二のフィルタ)3と、引抜ポンプ(第一の送液装置)P1と、回収ポンプ(第二の送液装置)P2と、排出ポンプ(第三の送液装置)P3と、回収槽5と、引抜管11と、返送管(返送流路)12と、移送管13と、回収管14と、排出管15と、を備えている。
細胞培養精製装置100は、培養槽1内で細胞の培養を行い、細胞等の培養物を含む液体を培養槽1から引き抜いて分離精製処理に供する。細胞培養精製装置100では、複数段の膜分離処理によって分離精製が行われる。分離精製の対象である目的物は、混在している粗大な非目的物や微小な夾雑物が除去されて高純度で回収される。細胞培養精製装置100は、1段目の膜分離処理と2段目の膜分離処理とを順に行うワンパス型の装置とされている。
細胞培養精製装置100で培養する細胞は、浮遊細胞であってもよいし、接着細胞であってもよい。但し、複数段の膜分離処理を行う目的からは、マイクロキャリア培養、又は、スフェロイドの浮遊培養を行うことが好ましい。すなわち、培養する細胞としては、マイクロキャリアに接着した細胞、又は、細胞凝集体が好ましい。
細胞培養精製装置100で分離精製処理後に回収する細胞(目的物)は、細胞同士が細胞接着していない独立した細胞、浮遊状態で存在する遊離した細胞等の単離細胞であってもよいし、凝集化した状態で存在する細胞凝集体であってもよい。細胞凝集体の状態で回収すると、細胞接着を剥離させる細胞剥離処理が不要になるため、分離精製しようとする目的物に対して夾雑物が混入し難くなる。
培養する細胞の由来としては、哺乳類、鳥類等の動物が挙げられるが、特に制限されるものではない。哺乳類の具体例としては、ヒト、サル、チンパンジー、アカゲザル、カニクイザル、ヒヒ、マーモセット、リスザル等の霊長類や、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の有蹄類や、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等の齧歯類や、ウサギ、イヌ、ネコ等が挙げられる。
培養する細胞の具体例としては、iPS細胞、ES細胞(embryonic stem cells:胚性幹細胞)、成体幹細胞、骨髄由来多能性幹細胞、生殖幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、心幹細胞、膵幹細胞、腎幹細胞、神経幹細胞、筋幹細胞、表皮幹細胞、毛包幹細胞、造血幹細胞等の幹細胞や、肝細胞、心筋細胞、膵細胞、腎細胞、繊維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、表皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、滑膜細胞等の体細胞等が挙げられる。細胞の種類としては、増殖が細胞接着に依存する細胞が好ましいが、特に制限されるものではない。
培養槽1は、細胞を培養するための槽であり、ステンレス鋼、アルミニウム合金、プラスチック、ガラス等の適宜の材料で形成することができる。培養槽1には、培養液を攪拌する攪拌装置や、培養液に空気、酸素、窒素、二酸化炭素等を通気する通気装置や、培養液の温度を調節する温度調節装置を備えることができる。
攪拌装置としては、攪拌翼を回転させて攪拌を行う機械攪拌式装置、振盪攪拌式装置、エアーフロー攪拌式装置等の各種の装置を備えることができる。また、通気装置としては、液中通気のための散気管、スパージャや、気中通気のための通気管等を備えることができる。温度調節装置としては、例えば、ウォータージャケット、電熱ヒータ等を備えることができる。
また、培養槽1には、槽内の培養環境や細胞の培養状態をモニタリングするために、各種のセンサを備えることができる。センサとしては、例えば、熱電対等の温度センサ、溶存酸素センサ、二酸化炭素センサ、pHセンサ、静電容量計や吸光光度計等を用いたセルカウンタ等を備えることができる。
図1に示すように、細胞培養精製装置100の培養槽1には、第一のフィルタユニット2が配管等を介して接続される。第一のフィルタユニット2には、第二のフィルタユニット3が配管等を介して接続される。第二のフィルタユニット3には、回収槽5が配管等を介して接続される。第1フィルタユニット2、及び、第2フィルタユニット3は、培養槽1から引き抜かれた液体を膜分離処理して、液体中の物質をサイズ分画する。
第1フィルタユニット2、及び、第2フィルタユニット3は、膜分離処理を行うためのフィルタと、フィルタを内蔵した圧力容器と、圧力容器に設けられた、供給される液体が流入する一次側の入口、フィルタを透過していない液体が流出する一次側の出口、及び、フィルタを透過した液体が流出する二次側の出口を有している。
細胞培養精製装置100の培養槽1の槽内は、引抜管11を介して、第1フィルタユニット2の一次側の入口と接続されている。引抜管11には、培養槽1側から液体を引き抜いて第1フィルタユニット2に送る引抜ポンプP1が備えられている。引抜管11は、培養後の目的物を回収するための配管であり、培養槽1内の液体を引き抜いて第1フィルタユニット2の一次側に送る。
第1フィルタユニット2の一次側の出口は、返送管12を介して、培養槽1と接続されている。返送管12は、培養槽1内から引き抜かれた非目的物を培養槽1に返送するための配管であり、膜分離処理で第1フィルタユニット2の一次側に残留した液体を培養槽1に送る。返送管12は、第1フィルタユニット2で分離された非目的物を培養槽1に戻す返送流路を形成している。
細胞培養精製装置100において、第1フィルタユニット2の二次側の出口は、移送管13を介して、第2フィルタユニット3の一次側の入口と接続されている。移送管13は、培養後の目的物を回収するための配管であり、膜分離処理で第1フィルタユニット2の二次側に透過した液体を第2フィルタユニット3の一次側に送る。
第2フィルタユニット3の一次側の出口は、回収管14を介して、回収槽5と接続されている。回収管14には、第1フィルタユニット2の二次側及び第2フィルタユニット3の一次側を通じて培養槽1側から液体を引き抜いて回収槽5に送る回収ポンプP2が備えられている。回収管14は、培養後の目的物を回収するための配管であり、膜分離処理で第2フィルタユニット3の一次側に残留した液体を回収槽5に送る。
第2フィルタユニット3の二次側の出口は、排出管15を介して、細胞培養精製装置100の外部の廃液槽等と接続されている。排出管15には、第2フィルタユニット3の二次側を通じて培養槽1側から液体を引き抜いて細胞培養精製装置100の外部に排出する排出ポンプP3が備えられている。排出管15は、培養槽1内から引き抜かれた夾雑物を廃棄するための配管であり、膜分離処理で第2フィルタユニット3の二次側に透過した液体を装置外に送る。
第1フィルタユニット2、及び、第2フィルタユニット3には、分離精製しようとする目的物の大きさに応じて、所定の孔径のフィルタが用いられる。
第1フィルタユニット2には、分離精製の対象(目的物)が単離細胞である場合、単離細胞を透過し、単離細胞よりも大きいマイクロキャリア(非目的物)や、単離細胞よりも大きい細胞凝集体(非目的物)に対する阻止率が高いフィルタが用いられる。また、分離精製の対象(目的物)が目的の大きさ以下の細胞凝集体である場合、その大きさの細胞凝集体を透過し、その細胞凝集体よりも大きいマイクロキャリア(非目的物)や、その細胞凝集体よりも大きい細胞凝集体(非目的物)に対する阻止率が高いフィルタが用いられる。
第1フィルタユニット2は、培養槽1から引き抜かれた目的物を含む液体を膜分離処理して、その液体中の目的物と目的物よりも大きい非目的物とを互いに分離する。培養された単離細胞、細胞凝集体等の目的物は、第1フィルタユニット2のフィルタを透過して第2フィルタユニット3に送られる。一方、目的物よりも大きいマイクロキャリア、目的物よりも大きい細胞凝集体等の非目的物は、第1フィルタユニット2のフィルタを透過せず培養槽1に戻される。
第2フィルタユニット3には、分離精製の対象(目的物)が単離細胞である場合、単離細胞に対する阻止率が高く、単離細胞よりも小さい夾雑物を透過するフィルタが用いられる。また、分離精製の対象(目的物)が目的の大きさ以下の細胞凝集体である場合、その大きさよりも大きい細胞凝集体に対する阻止率が高く、その細胞凝集体よりも小さい夾雑物を透過するフィルタが用いられる。
第2フィルタユニット3は、第1フィルタユニット2で分離された目的物を含む液体を膜分離処理して、その液体中の目的物と目的物よりも小さい夾雑物とを互いに分離する。培養された単離細胞、細胞凝集体等の目的物は、第2フィルタユニット3のフィルタを透過せず回収槽5に送られる。一方、目的物よりも小さい夾雑物は、第2フィルタユニット3のフィルタを透過して装置外に排出される。
培養槽1、第1フィルタユニット2、第2フィルタユニット3等を接続する配管は、ステンレス鋼等の金属や、シリコンゴム等の合成樹脂等の適宜の材料で形成することができる。金属製の配管は、蒸気滅菌等によって無菌化することが可能であり、繰り返し使用することができるが、滅菌処理用や洗浄処理用の設備が必要である。一方、合成樹脂製の配管は、ガンマ線滅菌、紫外線滅菌等によって無菌化することが可能であり、柔軟性を有する場合には、配管の取り回しを比較的容易に行うことができる。
培養槽1は、可撓性の培養バックとして設けることもできる。可撓性の培養バックは、シングルユース製品によって設けることもできる。可撓性の培養バックは、例えば、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、低密度ポリエチレン、ポリアミド等の樹脂製の多層フィルムを用いて形成することができる。
また、培養槽1に接続された配管、第1フィルタユニット2に接続された配管、第2フィルタユニット3に接続された配管、第1フィルタユニット2、及び、第2フィルタユニット3のうちの一以上を、シングルユース製品によって設けることもできる。シングルユース製品を用いると、コンタミネーションのリスクが低減されるし、滅菌処理用や洗浄処理用の設備の設置を省略することができる。
培養槽1は、装置構成及び運転方式が、回分培養式、流加培養式、及び、灌流培養式のうち、いずれとされてもよい。回分培養(Batch Culture)は、一回の培養毎に培地を用意し、培養中に培地を供給しない培養法である。流加培養(Fed-Batch Culture)は、培養中に系外から培地自体や特定の培地成分を逐次的又は連続的に供給するが培養液を培養が終わるまで排出しない培養法である。灌流培養(Perfusion Culture)は、培養中に連続的に培地を供給し、同量の培養液を連続的に排出させる培養法である。
図2は、回分培養式の培養槽を示す模式図である。
図2に示すように、回分培養式の培養槽21Aは、培養液を攪拌する攪拌装置22や、培養液に空気、酸素、窒素、二酸化炭素等を通気する通気装置23や、培養液の温度を調節する温度調節装置24や、アルカリ溶液が用意される溶液槽25や、アルカリ溶液を培養槽21Aに送る供給ポンプ26や、攪拌装置22、通気装置23、温度調節装置24及び供給ポンプ26を制御して培養環境を調整する制御装置27を備えることができる。
回分培養式の培養槽21Aは、培養時に液体培地が入れられるが、培養中には、液体培地の供給や槽内の培養液の引き抜きが行われない。回分培養によると、目的物の品質が培養毎にばらつき易いが、コンタミネーションのリスクを分散・低減することができる。
引抜ポンプP1は、回分培養後に運転が開始され、培養槽21A内で回分培養された目的物が、第1フィルタユニット2と第2フィルタユニット3で分離精製される。培養槽21と第1フィルタユニット2との間の液体の循環は、例えば、培養槽21A内の液体が所定の液量まで減少したとき、第1フィルタユニット2への総送液量が所定の液量に達したとき等に停止することができる。
図3は、流加培養式の培養槽を示す模式図である。
図3に示すように、流加培養式の培養槽21Bは、回分培養式の培養槽21Aと同様に、攪拌装置22や、通気装置23や、温度調節装置24や、溶液槽25や、アルカリ溶液を培養槽21Bに送る供給ポンプ26や、攪拌装置22、通気装置23、温度調節装置24、供給ポンプ26等を制御して培養環境を調整する制御装置27を備えることができる。
また、流加培養式の培養槽21Bには、液体培地が用意される培地槽28や、培地槽28に用意された液体培地を培養槽21Bに送る培地ポンプ29が備えられる。培地ポンプ29による送液量は、培養槽21B内の培地成分の濃度等に応じて、制御装置27により制御される。
流加培養式の培養槽21Bには、培養時に液体培地が入れられ、培養中に培地槽28から逐次的又は連続的に液体培地が供給されるが、培養中には槽内の培養液が排出されない。通常、培養槽21B内の温度、pH、溶存酸素濃度、二酸化炭素濃度等は、一定に制御される。流加培養によると、低い基質濃度を維持して目的物を生産することが可能であり、培地コスト等を削減することができる場合がある。
引抜ポンプP1は、流加培養後に運転が開始され、培養槽21B内で流加培養された目的物が、第1フィルタユニット2と第2フィルタユニット3で分離精製される。培養槽21Bと第1フィルタユニット2との間の液体の循環は、例えば、培養槽21B内の液体が所定の液量まで減少したとき、第1フィルタユニット2への総送液量が所定の液量に達したとき等に停止することができる。
図4は、灌流培養式の培養槽を示す模式図である。
図4に示すように、灌流培養式の培養槽21Cには、回分培養式の培養槽21Aと同様に、攪拌装置22や、通気装置23や、温度調節装置24や、溶液槽25や、アルカリ溶液を培養槽21Cに送る供給ポンプ26や、攪拌装置22、通気装置23、温度調節装置24、供給ポンプ26等を制御して培養環境を調整する制御装置27を備えることができる。
また、灌流培養式の培養槽21Cには、液体培地が用意される培地槽28や、培地槽28に用意された液体培地を培養槽21Cに送る培地ポンプ29や、細胞分離装置8が備えられる。細胞分離装置8は、培養槽21C内の培養液を引き抜いて培養槽21Cに戻す循環流路に設けられている。培地ポンプ29による送液量は、培養槽21C内の培地成分の濃度等に応じて、制御装置27により制御される。
細胞分離装置8は、例えば、分離膜に直交する方向に液体を流すタンジェンシャルフロー膜分離(Tangential Flow Filtration:TFF)方式、分離膜に直交する方向に液体を流し、分離膜に対する吸引と放出とを交互に繰り返すオルタネーティングタンジェンシャルフロー膜分離(Alternating Tangential Flow Filtration:ATF)方式、重力沈降分離方式、大きさや密度の違いを超音波振動で分ける音波分離方式等の各種の方式とすることができる。
灌流培養式の培養槽21Cには、培養時に液体培地が入れられ、培養中に、培地槽28から連続的に液体培地が供給され、槽内から略同量の培養液が連続的に排出される。灌流培養では、培養槽21C内の培養液が細胞分離装置8に送られ、細胞分離装置8で、培養されている細胞(目的物)と不要な培地成分とが分離される。細胞を含む液体は、培養槽21C内に返送され、不要な培地成分を含む液体は、系外に排出される。通常、培養槽21C内の温度、pH、溶存酸素濃度、二酸化炭素濃度等は、一定に制御される。灌流培養によると、培養環境が一定に保たれ易くなるため、目的物の品質や生産量を安定させることができる。
引抜ポンプP1は、灌流培養中、又は、灌流培養後に運転が開始され、培養槽21C内で灌流培養された目的物が、第1フィルタユニット2と第2フィルタユニット3で分離精製される。灌流培養中は、第1フィルタユニット2に送られる液体と細胞分離装置8から系外に排出される液体の合計と、培地槽28から供給される液体培地とが、略同等の流量になるように制御される。培養槽21Cと第1フィルタユニット2との間の液体の循環は、例えば、灌流培養の培養時間が所定の時間を経過したとき、第1フィルタユニット2への総送液量が所定の液量に達したとき等に停止することができる。
図5は、フィルタユニットに備えられるフィルタの一般的特性を示す図である。
図5において、横軸は、目的物の粒子径を1として表したフィルタの孔径の相対値、縦軸は、フィルタによる阻止率を示す。図5に示すように、第1フィルタユニット2は、目的物よりも大きい孔径のフィルタを備え、第2フィルタユニット3は、目的物よりも小さい孔径のフィルタを備える必要がある。
分離精製の対象である単離細胞、細胞凝集体の大きさは、製造しようとする細胞加工製品等にもよるが、通常、10~30μm程度である。図5に示すように、第1フィルタユニット2や第2フィルタユニット3に用いられるサイズ分画用フィルタは、分離対象物の5倍の孔径を境界として分離能が大きく変化するのが一般的である。
そのため、第1フィルタユニット2のフィルタの孔径は、目的物の粒子径の5倍以上であることが好ましい。フィルタの孔径が目的物の粒子径の5倍以上であると、サイズ分画用フィルタの一般的特性から、目的物について高い透過率を確保しつつ、目的物よりも大きい非目的物について高い阻止率を得ることができる。第1フィルタユニット2のフィルタの孔径は、除去すべきマイクロキャリアや細胞凝集体の大きさにもよるが、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
また、第2フィルタユニット3のフィルタの孔径は、目的物の粒子径の5分の1以下であることが好ましい。フィルタの孔径が目的物の粒子径の5分の1以下であると、サイズ分画用フィルタの一般的特性から、目的物について高い阻止率を確保しつつ、目的物よりも小さい夾雑物について高い透過率を得ることができる。第2フィルタユニット3のフィルタの孔径は、分離精製しようとする目的物の大きさにもよるが、好ましくは5μm以下である。
第1フィルタユニット2及び第2フィルタユニット3は、フィルタが中空糸膜であることが好ましい。各フィルタユニットは、中空糸膜を備える場合、液体を通液可能な圧力容器内に多数の中空糸膜を内蔵した中空糸膜モジュールとして設けることができる。中空糸膜によると、損傷し易い単離細胞、細胞凝集体等の目的物を、広い膜面積を利用したタンジェンシャルフロー濾過方式の膜分離処理により、損傷少なく効率的に分離精製することができる。
第1フィルタユニット2及び第2フィルタユニット3は、内圧濾過方式としてもよいし、外圧濾過方式としてもよい。また、各フィルタユニットは、互いに同一の濾過方式としてもよいし、互いに異なる濾過方式としてもよい。
外圧濾過方式の中空糸膜モジュールは、圧力容器の一端側に、一次側の入口が設けられ、圧力容器の他端側に、一次側の出口と二次側の出口が設けられる。中空糸膜の一端は、中空糸膜の外側に一次側の出口が位置し、中空糸膜の内側に二次側の出口が位置するように、圧力容器に取り付けられる。
外圧濾過方式の膜分離処理では、培養槽1側から供給される液体が、圧力容器内に流入し、中空糸膜の外側を圧力容器の長さ方向に沿って流れる。中空糸膜の孔径よりも小さい物質は、中空糸膜の内側に透過し、二次側の出口から流出する。一方、中空糸膜の孔径よりも大きい物質は、中空糸膜の内側に透過せず、中空糸膜の外側に位置する一次側の出口から流出する。
一方、内圧濾過方式の中空糸膜モジュールは、圧力容器の一端側に、一次側の入口が設けられ、圧力容器の他端側に、一次側の出口と二次側の出口が設けられる。中空糸膜は、中空糸膜の内側の一端に一次側の入口が位置し、中空糸膜の内側の他端に一次側の出口が位置し、中空糸膜の外側に二次側の出口が位置するように、圧力容器に取り付けられる。
内圧濾過方式の膜分離処理では、培養槽1側から供給される液体が、中空糸膜の内側に流入し、中空糸膜の内側を中空糸膜の長さ方向に沿って流れる。中空糸膜の孔径よりも小さい物質は、中空糸膜の外側に透過し、二次側の出口から流出する。一方、中空糸膜の孔径よりも大きい物質は、中空糸膜の外側に透過せず、中空糸膜の内側に位置する一次側の出口から流出する。
第1フィルタユニット2は、膜分離処理の速度的効率を高くする観点等からは、内圧濾過方式とすることが好ましい。また、第2フィルタユニット3は、膜分離処理の速度的効率を高くする観点や、細胞の損傷を低減する観点等からは、内圧濾過方式とすることが好ましい。
引抜ポンプP1、回収ポンプP2、及び、排出ポンプP3は、液体を送液可能である限り、適宜の方式の送液装置として設けることができる。各送液装置は、互いに同じ種類の装置としてもよいし、互いに異なる種類の装置としてもよい。送液装置としては、安定的な送液や無菌的な運転を行う観点等からは、ペリスタルティックポンプ、遠心ポンプ、又は、ガス圧で培養槽1内を加圧して送液を駆動する加圧ポンプ(加圧器)であることが好ましい。
図6は、送液装置として用いられるペリスタルティックポンプを示す図である。
図6に示すように、ペリスタルティックポンプ30は、ハウジング31と、モータによって回転運動が駆動されるロータ32と、ハウジング31の外側でロータ32の外周に沿って配置された複数のローラ33と、ロータ32の外周面に対向するように設けられた円弧状の押圧壁34と、可撓性を有するチューブ35と、を備えている。
ハウジング31は、ロータ32やローラ33の基部、不図示のモータ等を内蔵している。各ローラ33は、ロータ32に対して回転可能な状態でハウジング31の外側に支持されている。押圧壁34は、ハウジング31の外側に設けられている。チューブ35は、例えば、シリコンゴム等の可撓性を有する材料で形成される。チューブ35は、着脱自在であり、ローラ33の外周面と押圧壁34との間に挟まれて延びるように取り付けられる。ペリスタルティックポンプは、チューブポンプ、ロータリポンプ等と呼ばれることもある。
ペリスタルティックポンプ30では、ロータ32の回転運動が駆動されると、複数のローラ33がロータ32の周りを公転する。ローラ32がチューブ35を押圧壁34に押し付けながら公転することにより、チューブ35が押し潰される。チューブ35が押し潰されると、内部の液体が、ローラ33の公転軌道の前方に押し出される。また、押し潰されたチューブ35が復元力で元の形状に戻ると、チューブ35内に負圧が発生し、後方の液体が前方側に吸引される。液体は、このようなチューブ35の蠕動運動によって移送される。
ペリスタルティックポンプ30によると、移送される液体がチューブ35の内面のみに接触するため、コンタミネーションのリスクを低減することができる。また、弁構造が無いため、スラリー状の液体、粘性が高い液体等を移送することができる。また、自吸式のポンプであり、呼び水が不要であるため、操作が簡単で空運転に強いという利点がある。また、チューブ35の交換のみによって、異なる種類の液体への対応やメンテナンスを行うことが可能である。但し、細胞を含む液体を送液する場合は、チューブ35の押し潰しによって細胞を損傷する可能性があるため、細胞の損傷に関する事前の評価や、送液条件の適切な選定が必要な場合がある。
図7は、送液装置として用いられる磁気浮上式の遠心ポンプを示す図である。
図7に示すように、磁気浮上式の遠心ポンプ40は、ハウジング41と、ハウジング41に吸入した液体に遠心力を発生させるインペラ付ロータコア42と、インペラ付ロータコア42に埋設されたロータ磁石43と、磁気軸受として機能するステータコア44と、ステータコア44に巻回されたステータコイル45と、を備えている。
ハウジング41は、概略形状が中空円盤状であり、軸方向に開口した吸入口と、径方向に開口した吐出口とが設けられる。インペラ付ロータコア42は、ターボ型等のインペラを備えており、永久磁石で形成されたロータ磁石43が埋設されている。ステータコア44は、鉄等の強磁性体で形成される。ステータコア44は、円盤状の基部を有しており、基部の外周に沿って複数の柱部が垂設されている。ステータコア44の柱部には、ステータコイル45が巻回されている。
インペラ付ロータコア42は、ハウジング41内の磁気軸受として機能するステータコア44の柱部の内側に収容される。遠心ポンプ40では、電磁石として機能するステータコア44及びステータコイル45が、柱部の先端内面に対向するロータ磁石43を磁気で吸引し、電気的な磁気制御により、インペラ付ロータコア42を磁気浮上させながら回転運動させる。インペラ付ロータコア42は、ステータコア44に対して非接触の状態で回転運動して遠心力を発生させる。液体は、このような回転運動によって吸入口側から吐出口側に移送される。
磁気浮上式の遠心ポンプ40によると、移送される液体がハウジング41とインペラ付ロータコア42のみに接触し、弁構造や転がり軸受が無いため、コンタミネーションのリスクを低減することができる。液体に接触するハウジング41とインペラ付ロータコア42を、フッ素樹脂等の耐薬品性の材料で形成すると、アルカリ溶液等の移送も安全に行うことができる。また、転がり軸受のような摺動部が無く、摩耗による劣化が生じ難いため、メンテナンスのコストを低減することができる。また、一定の流量で送液できるため脈動が少なくなるし、摺動部が無いため振動が少なくなり安定的な送液を行うことができる。
図8は、送液装置として用いられる加圧器を示す図である。
図8に示すように、ガス圧で送液を駆動する加圧ポンプ(加圧器)50は、培養槽1にガスを供給するガス供給源51と、ガス供給源51と培養槽1との間を連通するガス供給管52と、培養槽1内のガスの圧力を調整するガスレギュレータ53と、培養槽1内の圧力を計測する圧力センサ54と、ガスレギュレータ53を制御するコントローラ55と、を備えている。
ガス供給源は、例えば、ガスボンベ、コンプレッサ等として設けられ、窒素ガス、濃縮空気等の高圧ガスを培養槽1に対して無菌的に供給する。ガスレギュレータ53は、ガス供給管52の中間部に設置されており、ガス供給源51側と培養槽1側の圧力を検知しつつ、弁構造等のアクチュエータを作動させて圧力の制御を行う。
加圧ポンプ50では、培養槽1から第1フィルタユニット2に向けて送液を行うとき、密閉された培養槽1にガス供給源51から高圧ガスを供給する。培養槽1内のガスの圧力は圧力センサ54によって計測され、圧力の電気信号がコントローラ55に送られる。コントローラ55は、培養槽1内のガスの圧力が所定の高圧となるように、ガスレギュレータ53に制御信号を出力し、ガスレギュレータ53は、ガス供給源51から供給されるガスの圧力を降下させる。液体は、所定の高圧に調整された培養槽1内と下流側との圧力差によって移送される。
加圧ポンプ50によると、移送される液体が送液装置に接触しないため、コンタミネーションのリスクを低減することができる。また、液体用ポンプを設ける必要がないため、装置の初期コストが抑制されるし、保守や洗浄が容易になるため、ランニングコストも抑制される。また、培養中の培養槽1を、圧力の変動に追従して一定の圧力となるように制御することができる。また、一定の流量で送液できるため脈動が少なくなるし、摺動部が無いため振動が少なくなり安定的な送液を行うことができる。
図9は、本発明の実施形態に係る細胞培養精製方法を示すフローチャートである。
図9には、単離細胞、細胞凝集体等の目的物を図1に示すワンパス型の細胞培養精製装置100で回分培養した後に分離精製処理する流れを説明する。
図9に示すように、細胞分離精製装置100では、はじめに、培養槽1で細胞の培養を行う(ステップS10)。培養の開始時には、培養液の温度、pH、溶存酸素濃度、二酸化炭素濃度や、攪拌速度等の培養条件を設定する。
培養中には、温度センサ、溶存酸素センサ、二酸化炭素センサ、pHセンサ等によって培養状態をモニタリングする。培養温度は、温度調節装置で所定の範囲に制御することができる。また、培養液の溶存酸素濃度や二酸化炭素濃度は、散気装置による空気、酸素、二酸化炭素、窒素等の通気やアルカリ溶液の添加で所定の範囲に制御することができる。また、培養液のpHは、アルカリ溶液の添加や二酸化炭素の通気で所定の範囲に制御することができる。
続いて、培養槽1における培養中に、培養された細胞数を計測する(ステップS20)。細胞数の計測は、センサを用いてオンラインで行ってもよいし、培養液をサンプリングしてオフラインで行ってもよい。また、細胞数としては、分離精製しようとする目的物が単離細胞である場合、単離細胞の細胞密度、培養液の誘電率(静電容量)等を測定してもよい。また、分離精製しようとする目的物が細胞凝集体である場合、細胞凝集体数、細胞凝集体数密度、培養液の誘電率(静電容量)等を測定してもよい。
続いて、計測された培養液の細胞数が目標値に達しているか否か判定する(ステップS30)。目標値としては、例えば、死細胞の過度に蓄積しない培養時間、細胞の分化が起こり難い培養時間や細胞密度、スフェロイドが目的の大きさになる培養時間や細胞密度等に対応した任意値を予め培養試験等で求めて設定することができる。
判定の結果、培養液の細胞数が目標値に達していないと(ステップS30;No)、培養槽1における培養を継続する(ステップS10)。
一方、判定の結果、培養液の細胞数が目標値に達していると(ステップS30;Yes)、引抜ポンプP1の運転を開始する(ステップS40)。細胞数が目標値に達し、培養を終了する際には、必要に応じて、培養槽1内の培養液を液体で置換することができる。例えば、培養槽1内の液体のみの抜き取りや、培養された細胞を洗浄するためのバッファ等の供給や、培養された細胞の細胞接着を剥離させるための細胞剥離剤溶液の供給等を行うことができる。
マイクロキャリア培養や、スフェロイドの浮遊培養の場合、培養槽1で培養された培養液は、単離細胞、細胞凝集体等の目的物と、目的物よりも大きいマイクロキャリア、細胞凝集体等の非目的物と、目的物よりも小さい夾雑物とが、混在した状態になる。夾雑物としては、細胞が生成した代謝物、トリプシン、ヘパリン、抗生物質、血清成分、エンドトキシン、細菌、マイコプラズマ、ウイルス等が挙げられるが、特に制限されるものではない。
続いて、第1フィルタユニット2に通液される流量が安定した段階で、回収ポンプP2の運転を開始する(ステップS50)。
続いて、第2フィルタユニット3に通液される流量が安定した段階で、排出ポンプP3の運転を開始する(ステップS60)。
引抜ポンプP1、回収ポンプP2、及び、排出ポンプP3の稼働により、第1フィルタユニット2と第2フィルタユニット3で膜分離処理が行われる(ステップS70)。第1フィルタユニット2では、培養槽1から引き抜かれた液体中の目的物と目的物よりも大きい非目的物とを互いに分離する膜分離処理が行われる。第2フィルタユニット3では、第1フィルタユニット2で分離された液体中の目的物と目的物よりも小さい夾雑物とを互いに分離する膜分離処理が行われる。膜分離処理で分離された非目的物は、培養槽1に戻され、膜分離処理で分離された目的物は、回収槽5に回収される。
続いて、膜分離処理中に、第1フィルタユニット2及び第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量を計測する(ステップS80)。膜分離処理された液体の量としては、培養槽1内の液位、引抜管11や返送管12を流れた総流量、所定の移送流量である引抜ポンプP1の稼働時間等を測定してもよい。
続いて、第1フィルタユニット2及び第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量が目標値に達しているか否か判定する(ステップS90)。目標値としては、例えば、培養槽1で培養された培養液の量、培養槽1と第1フィルタユニット2との間の液体の循環時間等に対応した任意値を設定することができる。
判定の結果、第1フィルタユニット2及び第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量が目標値に達していないと(ステップS90;No)、第1フィルタユニット2と第2フィルタユニット3で膜分離処理を継続する(ステップS70)。
一方、判定の結果、第1フィルタユニット2及び第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量が目標値に達していると(ステップS90;Yes)、引抜ポンプP1、回収ポンプP2及び排出ポンプP3の運転を停止する(ステップS100)。膜分離処理による目的物の分離精製処理は終了し、回収槽5に回収された目的物を、他の精製処理、細胞加工処理等に供することができる。
以上のワンパス型の細胞培養精製装置100や細胞培養精製方法によると、一段目の膜分離処理で、単離細胞、細胞凝集体等の目的物から、粗大なマイクロキャリア、目的物よりも大きい細胞凝集体等の非目的物を分離・除去することができる。そして、二段目の膜分離処理で、非目的物が除去された単離細胞、細胞凝集体等の目的物から、夾雑物を分離・除去することができる。一段目の膜分離処理の後、粗大なマイクロキャリア、目的物よりも大きい細胞凝集体等の非目的物は、培養槽1に戻されるため、細胞接着を剥離させる細胞剥離処理等に再び供することができるし、容易に回収可能になる。灌流培養式の場合には、培養槽1に戻したマイクロキャリア、細胞凝集体等の非目的物を再培養に供することもできる。
また、ワンパス型の細胞培養精製装置100や細胞培養精製方法によると、ワンパスで複数段の膜分離処理が行われるため、送液装置や配管の設置数を少なくすることができる。装置の初期コストを抑制することが可能であり、特に、引抜管11、返送管12、第1フィルタユニット2、第2フィルタユニット3等をシングルユース製品で形成する場合に、ランニングコストやメンテナンスを減らせる点で有効である。
次に、本発明の変形例に係る細胞培養精製装置及び細胞培養精製方法について、図を参照しながら説明する。
図10は、本発明の変形例に係る細胞培養精製装置の概略構成を示す模式図である。
図10に示すように、変形例に係る細胞培養精製装置200は、培養槽1と、第1フィルタユニット(第一のフィルタ)2と、第2フィルタユニット(第二のフィルタ)3と、引抜ポンプ(第一の送液装置)P1と、排出ポンプ(第三の送液装置)P3と、移送ポンプ(第四の送液装置)P4と、返送ポンプ(第五の送液装置)P5と、貯留槽6と、引抜管11と、返送管12と、上流側移送管16と、下流側移送管17と、下流側返送管18と、排出管15と、を備えている。
細胞培養精製装置200は、細胞培養精製装置100と同様に、培養槽1内で細胞の培養を行い、細胞等の培養物を含む液体を培養槽1から引き抜いて分離精製処理に供する構成とされている。細胞培養精製装置200が、細胞培養精製装置100と異なる点は、1段目の膜分離処理を行った後、分離された液体を一時的に貯留し、貯留されている液体に対して循環的に2段目の膜分離処理を行う循環型の装置とされている点である。
図10に示すように、細胞培養精製装置200の培養槽1には、第一のフィルタユニット2が配管等を介して接続される。第一のフィルタユニット2には、貯留槽6が配管等を介して接続される。貯留槽6には、第2フィルタユニット3が配管等を介して接続される。
細胞培養精製装置200の培養槽1の槽内は、細胞培養精製装置100と同様に、引抜管11を介して、第1フィルタユニット2の一次側の入口と接続されている。引抜管11には、培養槽1から液体を引き抜いて第1フィルタユニット2に送る引抜ポンプP1が備えられている。また、第1フィルタユニット2の一次側の出口は、返送管12を介して、培養槽1と接続されている。
細胞培養精製装置200において、第1フィルタユニット2の二次側の出口は、上流側移送管16を介して、貯留槽6と接続されている。上流側移送管16には、第1フィルタユニット2の二次側から液体を引き抜いて貯留槽6に送る移送ポンプP4が備えられている。上流側移送管16は、培養後の目的物を回収するための配管であり、膜分離処理で第1フィルタユニット2の二次側に透過した液体を貯留槽6に送る。
貯留槽6の槽内は、下流側移送管17を介して、第2フィルタユニット3の一次側の入口と接続されている。下流側移送管17は、第1フィルタユニット2で分離された目的物を第2フィルタユニット3に移送するための配管であり、貯留槽6内の液体を引き抜いて第2フィルタユニット3の一次側に送る。
第2フィルタユニット3の一次側の出口は、下流側返送管18を介して、貯留槽6と接続されている。下流側返送管18には、貯留槽6及び第二のフィルタユニット3の一次側から液体を引き抜いて貯留槽6に戻す返送ポンプP5が備えられている。下流側返送管18は、貯留槽6内から引き抜かれた目的物を貯留槽6に返送するための配管であり、膜分離処理で第2フィルタユニット3の一次側に残留した液体を貯留槽6に送る。
第2フィルタユニット3の二次側の出口は、細胞培養精製装置100と同様に、排出管15を介して、細胞培養精製装置200の外部の廃液槽等と接続されている。排出管15には、第2フィルタユニット3の二次側から液体を引き抜いて細胞培養精製装置200の外部に排出する排出ポンプP3が備えられている。
移送ポンプP4、及び、返送ポンプP5は、液体を送液可能である限り、適宜の方式の送液装置として設けることができる。各送液装置は、互いに同じ種類の装置としてもよいし、互いに異なる種類の装置としてもよい。各送液装置は、安定的な送液や無菌的な運転を行う観点等からは、ペリスタルティックポンプ、遠心ポンプ、又は、ガス圧で培養槽1内を加圧して送液を駆動する加圧ポンプ(加圧器)であることが好ましい。
図11は、本発明の変形例に係る細胞培養精製方法を示すフローチャートである。
図11には、単離細胞、細胞凝集体等の目的物を図10に示す循環型の細胞培養精製装置200で回分培養した後に分離精製処理する流れを説明する。
図11に示すように、細胞分離精製装置200では、はじめに、細胞分離精製装置100と同様に、培養槽1で細胞の培養を行う(ステップS10)。続いて、培養槽1における培養中に、培養された細胞数を計測する(ステップS20)。続いて、計測された培養液の細胞数が目標値に達しているか否か判定する(ステップS30)。判定の結果、培養液の細胞数が目標値に達していないと(ステップS30;No)、培養槽1における培養を継続する(ステップS10)。一方、判定の結果、培養液の細胞数が目標値に達していると(ステップS30;Yes)、引抜ポンプP1の運転を開始する(ステップS110)。
細胞分離精製装置200では、第1フィルタユニット2に通液される流量が安定した段階で、移送ポンプP4の運転を開始する(ステップS120)。
引抜ポンプP1、及び、移送ポンプP4の稼働により、第1フィルタユニット2で膜分離処理が行われる(ステップS130)。第1フィルタユニット2では、培養槽1から引き抜かれた液体中の目的物と目的物よりも大きい非目的物とを互いに分離する膜分離処理が行われる。
続いて、膜分離処理中に、第1フィルタユニット2で膜分離処理されて貯留槽6に貯留される液体の量を計測する(ステップS140)。貯留槽6に貯留される液体の量としては、培養槽1内の液位、引抜管11や返送管12を流れた総流量、上流側移送管16を流れた総流量、所定の移送流量である引抜ポンプP1の稼働時間、所定の移送流量である移送ポンプP4の稼働時間、貯留槽6内の液位等を計測してもよい。
続いて、第1フィルタユニット2で膜分離処理された液体の量が目標値に達しているか否か判定する(ステップS150)。目標値としては、例えば、培養槽1で培養された培養液の量、培養槽1と第1フィルタユニット2との間の液体の循環時間等に対応した任意値を設定することができる。
判定の結果、第1フィルタユニット2で膜分離処理された液体の量が目標値に達していないと(ステップS150;No)、第1フィルタユニット2で膜分離処理を継続する(ステップS130)。
一方、判定の結果、第1フィルタユニット2で膜分離処理された液体の量が目標値に達していると(ステップS150;Yes)、返送ポンプP5の運転を開始する(ステップS160)。
続いて、第2フィルタユニット3に通液される流量が安定した段階で、排出ポンプP3の運転を開始する(ステップS170)。
返送ポンプP5、及び、排出ポンプP3の稼働により、第2フィルタユニット3で膜分離処理が行われる(ステップS180)。第2フィルタユニット3では、第1フィルタユニット2の膜分離処理で分離された液体中の目的物と目的物よりも小さい夾雑物とを互いに分離する膜分離処理が行われる。膜分離処理で分離された非目的物は、培養槽1に戻され、膜分離処理で分離された目的物は、貯留槽6に回収される。
続いて、膜分離処理中に、第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量を計測する(ステップS190)。膜分離処理された液体の量としては、貯留槽6内の液位、下流側移送管17や下流側返送管18を流れた総流量、排出管15を流れた総流量、所定の移送流量である返送ポンプP5の稼働時間、所定の移送流量である排出ポンプP3の稼働時間等を測定してもよい。
続いて、第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量が目標値に達しているか否か判定する(ステップS200)。目標値としては、例えば、貯留槽6に貯留された液体の量、貯留槽6と第2フィルタユニット3との間の液体の循環時間等に対応した任意値を設定することができる。
判定の結果、第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量が目標値に達していないと(ステップS200;No)、第2フィルタユニット3で膜分離処理を継続する(ステップS180)。
一方、判定の結果、第2フィルタユニット3で膜分離処理された液体の量が目標値に達していると(ステップS200;Yes)、引抜ポンプP1、移送ポンプP4、返送ポンプP5及び排出ポンプP3の運転を停止する(ステップS210)。膜分離処理による目的物の分離精製処理は終了し、貯留槽6に回収された目的物を、他の精製処理、細胞加工処理等に供することができる。
以上の循環型の細胞培養精製装置200や細胞培養精製方法によると、ワンパス型と同様に、一段目の膜分離処理で、単離細胞、細胞凝集体等の目的物から、粗大なマイクロキャリア、目的物よりも大きい細胞凝集体等の非目的物を分離・除去することができる。そして、二段目の膜分離処理で、非目的物が除去された単離細胞、細胞凝集体等の目的物から、夾雑物を分離・除去することができる。
また、循環型の細胞培養精製装置200や細胞培養精製方法によると、一段目の膜分離処理で分離された目的物が、一時的に貯留されて循環的に2段目の膜分離処理を受けるため、不要な夾雑物の濃度をより低減することができる。夾雑物の濃度は、フィルタの性能に応じた水準まで希釈することが可能であるため、単離細胞、細胞凝集体等の目的物を高純度で得て、高品質な細胞加工製品を製造することができる。
次に、本発明に係る細胞培養精製装置の具体的な構成例について、図を参照しながら説明する。
図12は、細胞培養精製装置の構成例を示す模式図である。
図12に示すように、ワンパス型の細胞培養精製装置の好ましい形態は、中空糸膜モジュール、遠心ポンプ、及び、ペリスタルティックポンプを用いて構成される。図12に示すワンパス型の細胞培養精製装置100Aは、培養槽101と、フィルタが内蔵された第1中空糸膜モジュール102と、フィルタが内蔵された第2中空糸膜モジュール103と、引抜ポンプP11と、回収ポンプP12と、排出ポンプP13と、回収槽105と、を備えている。
図12に示すワンパス型の細胞培養精製装置100Aにおいて、培養槽101側から液体を引き抜く引抜ポンプP11は、遠心ポンプで構成されている。また、第1中空糸膜モジュール102から目的物を引き抜く回収ポンプP12は、遠心ポンプで構成されている。また、第2中空糸膜モジュール103から夾雑物を引き抜く排出ポンプP13は、ペリスタルティックポンプで構成されている。その他の機器や配管の構成等は、前記の細胞培養精製装置100と同様である。
図13は、細胞培養精製装置の構成例を示す模式図である。
図13に示すように、循環型の細胞培養精製装置の好ましい形態は、中空糸膜モジュール、遠心ポンプ、及び、ペリスタルティックポンプを用いて構成される。図13に示す循環型の細胞培養精製装置200Aは、培養槽101と、フィルタが内蔵された第1中空糸膜モジュール102と、フィルタが内蔵された第2中空糸膜モジュール103と、引抜ポンプP11と、上流側移送ポンプP14と、下流側移送ポンプP15と、排出ポンプP13と、貯留槽106と、を備えている。
図13に示す循環型の細胞培養精製装置200Aにおいて、培養槽101側から液体を引き抜く引抜ポンプP11は、遠心ポンプで構成されている。また、第1中空糸膜モジュール102から目的物を引き抜く上流側移送ポンプP14は、遠心ポンプで構成されている。また、貯留槽106から目的物を引き抜く下流側移送ポンプP15は、遠心ポンプで構成されている。また、第2中空糸膜モジュール103から夾雑物を引き抜く排出ポンプP13は、ペリスタルティックポンプで構成されている。その他の機器や配管の構成等は、前記の細胞培養精製装置200と同様である。
図12に示す細胞培養精製装置100A、及び、図13に示す細胞培養精製装置200Aでは、単離細胞、細胞凝集体等の目的物が通過する箇所に遠心ポンプが設置されており、単離細胞、細胞凝集体等の目的物が通過せず不要な夾雑物が通過する箇所にペリスタルティックポンプが設置されている。遠心ポンプは、ペリスタルティックポンプと比較して、細胞に損傷を与え難い送液装置である。
そのため、このような形態によると、遠心ポンプの使用により、細胞の損傷を最小限に抑制しつつ、連続的に液体を流して脈動を低減させて、安定的に分離精製処理を行うことができる。また、ペリスタルティックポンプの使用により、コンタミネーションのリスクを低減しつつ、夾雑物の濃度が高いスラリー状の液体、粘性が高い液体等を確実に装置外に排出することができる。ペリスタルティックポンプを設置した箇所は、配管(チューブ)の交換を簡単に行えるため、シングルユース製品で構成する場合に有利である。
図14は、細胞培養精製装置の構成例を示す模式図である。
図14に示すように、循環型の細胞培養精製装置は、循環している液体中の目的物をセンシングに基づいて回収する構成とすることもできる。図14に示す循環型の細胞培養精製装置200Bは、細胞培養精製装置200Aと同様に、培養槽101と、第1中空糸膜モジュール102と、第2中空糸膜モジュール103と、引抜ポンプP11と、上流側移送ポンプP14と、下流側移送ポンプP15と、排出ポンプP13と、貯留槽106と、を備えている。
細胞培養精製装置200Bが、細胞培養精製装置200Aと異なる点は、回収槽105と、粒子径測定器121と、返送側バルブ(流路切替器)123と、回収側バルブ(流路切替器)124と、制御装置130と、を備えている点である。その他の機器や配管の構成等は、前記の細胞培養精製装置200Aと同様である。
図14に示すように、細胞培養精製装置200Bの培養槽101には、第1中空糸膜モジュール102が配管等を介して接続されている。第1中空糸膜モジュール102には、貯留槽106が配管等を介して接続されている。貯留槽106には、第2中空糸膜モジュール103が配管等を介して接続されている。
また、第2中空糸膜モジュール103の一次側の出口と貯留槽106との間を接続する下流側返送管118には、回収管119が接続されている。回収管119の他端には、第2中空糸膜モジュール103で分離された目的物を回収するための回収槽105が接続されている。回収管119は、下流側返送管118から回収管119に分流された液体を回収槽105に送る。
細胞培養精製装置200Bでは、貯留槽106から第2中空糸膜モジュール103を経て貯留槽106に戻る循環流路から、回収管119が形成する分岐流路が分岐しており、分岐流路の下流が回収槽105に接続している。
下流側返送管118には、粒子径測定器121が設置されている。粒子径測定器121は、第2中空糸膜モジュール103で分離された目的物を含む液体中に含まれる粒子の粒子径を測定する。粒子径測定器121としては、例えば、レーザ回折/散乱式粒子径測定装置、動的光散乱測定装置、静電容量や電気抵抗の変化により粒子径を測定する電気式粒子径測定装置、フィールド・フロー・フラクショネーション(FFF)式粒子径測定装置等を用いることができる。
また、下流側返送管118と回収管119との分岐点には、貯留槽106側に向かう循環流路を開閉自在な返送側バルブ123と、回収槽105側に向かう分岐流路を開閉自在な回収側バルブ124と、が設置されている。返送側バルブ123及び回収側バルブ124は、貯留槽106から第2中空糸膜モジュール103を経て貯留槽106に戻る循環流路と、回収管119が形成する分岐流路との間で、相対的に高流量となる主要な流路を切り替えることができる。
また、細胞培養精製装置200Bには、粒子径測定器121による計測に基づいて返送側バルブ123及び回収側バルブ124を制御する制御装置130が備えられている。制御装置130は、粒子径測定器121が測定した粒子径から、循環流路を循環する液体の体積基準又は個数基準の粒子径分布を求める。また、循環流路を循環する液体の粒子径分布に基づいて、返送側バルブ123及び回収側バルブ124の開閉を制御する。
図14に示す細胞培養精製装置200Bでは、第1中空糸膜モジュール102で膜分離処理が行われた後、第1中空糸膜モジュール102で分離された目的物を含む液体が貯留槽106に溜められる。貯留槽106に溜められた液体は、貯留槽106と第2中空糸膜モジュール103との間を循環し、その間に、第2中空糸膜モジュール103による膜分離処理によって不要な夾雑物の濃度が低減される。
細胞培養精製装置200Bでは、第2中空糸膜モジュール103で膜分離処理を継続している間に、第2中空糸膜モジュール103で分離された目的物を含む液体に含まれる粒子の粒子径が、粒子径測定器121によって計測される。粒子径測定器121が計測した粒子径は、例えば、所定の液量単位毎に体積基準又は個数基準の粒子径分布としてデータベース化される。
目的物を含む液体の粒子径分布のスペクトルは、膜分離処理を開始した初期には、単離細胞、細胞凝集体等の目的物のシグナルに加え、不要な夾雑物のシグナルを示す。しかし、膜分離処理を継続すると、目的物のシグナルが残る一方、不要な夾雑物のシグナルが弱くなる。
返送側バルブ123と回収側バルブ124は、目的物よりも小さい粒子が所定の濃度まで減少したときに、循環流路から分岐流路に主要な流路を切り替えるように、自動的に制御することができる。
目的物よりも小さい粒子は、粒子径分布上のシグナルが位置する領域によって、単離細胞、細胞凝集体等の目的物と区別することが可能である。例えば、制御装置130には、夾雑物に相当する粒子を検出するための情報として、所定の粒子径の範囲を予め設定しておくことができる。粒子径の範囲としては、例えば、検出限界以上、且つ、目的物の大きさ以下等を設定することができる。
また、返送側バルブ123と回収側バルブ124による流路の切り替えは、粒子径分布上で、夾雑物に相当する粒子のシグナルの半値幅、シグナルのピーク高さ、又は、シグナルのピーク面積が、予め設定されている目標値以下になったか否かを判定することによって制御することができる。
判定の結果、夾雑物に相当する粒子のシグナルの値が目標値以下に減ったときに、返送側バルブ123の開度を小さくし、回収側バルブ124の開度を大きくする。一方、判定の結果、夾雑物に相当する粒子のシグナルの値が目標値を超えるときには、返送側バルブ123を開放し、回収側バルブ124を閉鎖する。
このような細胞培養精製装置200Bや細胞培養精製方法によると、目的物を含む液体を、夾雑物のシグナルが弱くなり、夾雑物が所定の濃度よりも低くなったときに、回収槽105に回収することができる。回収槽105は、高濃度の夾雑物が通流する可能性がある貯留槽106とは異なり、夾雑物が無い状態で用意できるため、貯留槽106に回収する場合よりも純度が高く高品質な単離細胞や細胞凝集体を得ることができる。
以上、本発明について説明したが、本発明は、前記の実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態や変形例が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態や変形例の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態や変形例の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態や変形例の構成の一部を省略したりすることができる。
例えば、前記の細胞培養精製装置100,200は、培養槽、回収槽、貯留槽等の形状・型式や、送液装置、バルブ等の機器の型式・配置や、配管の接続等が、特に制限されるものではない。回分培養式の培養槽21、流加培養式の培養槽31及び灌流培養式の培養槽41は、ワンパス型の細胞培養精製装置100に適用してもよいし、循環型の細胞培養精製装置200に適用してもよい。培地槽38,48や溶液槽25,35,45の設置数や接続は、特に制限されるものではない。
また、ペリスタルティックポンプ30(図6参照)、遠心ポンプ40(図7参照)、及び、加圧ポンプ50(図8参照)は、主要な機能が共通する限り、その他の形状・型式であってもよい。これらの送液装置は、ワンパス型の細胞培養精製装置100のいずれの箇所に適用してもよいし、循環型の細胞培養精製装置200のいずれの箇所に適用してもよい。
また、制御装置130は、粒子径分布の取得と返送側バルブ123及び回収側バルブ124の制御の両方を行っているが、粒子径分布の取得を行う装置と、返送側バルブ123及び回収側バルブ124の制御を行う装置とを、個別に設けてもよい。返送側バルブ123及び回収側バルブ124は、個別のバルブに代えて、三方弁等で構成してもよい。
また、前記の細胞培養精製方法(図9、図11参照)は、各ポンプの運転を順に開始し、同時期に停止するものとしているが、運転の開始時期や停止時期は、特に制限されるものではない。送液装置の運転の開始時期は、呼び水が不要な箇所等では入れ替えてもよい。運転の停止時期は、培養槽側を先に停止させる等、互いに異なる時期に変えてもよい。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
細胞培養精製装置として、図10に示す循環型の細胞培養精製装置を用いて、細胞の培養と膜分離処理による分離精製を試験した。細胞培養精製試験としては、マイクロキャリア培養と、浮遊細胞の浮遊培養と、スフェロイドの浮遊培養とを行った。
<マイクロキャリア培養>
マイクロキャリア培養において、目的物に相当する細胞としては、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を用いた。目的物に相当する細胞は、以下の手順で、マイクロキャリアビーズに細胞接着させて培養し、培養後に単離細胞として回収した。
はじめに、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium:DMEM培地)に10%のウシ胎児血清(Fetal bovine serum:FBS)を加えた液体培地を用意した。この液体培地中にマイクロキャリアビーズ「Cytodex 1」(GEヘルスケア社製)を加え、hMSCを播種し、培養槽内で回分培養方式の攪拌培養を行った。
図15は、細胞が接着したマイクロキャリアの顕微鏡写真である。
図15に示すように、培養を開始して9日目には、球状のマイクロキャリアビーズ501にヒト間葉系幹細胞(hMSC)502が付着している状態が観測された。
続いて、培養槽内の攪拌を停止し、培養液中のマイクロキャリアビーズを沈降させた。次いで、培養槽内から培養液のみを引き抜き、マイクロキャリアビーズが残存している培養槽内に洗浄バッファを加え、攪拌して細胞を洗浄した。そして、培養槽内の攪拌を再度停止し、培養槽内にトリプシン溶液を加え、5分間反応させた。その後、培養槽内から液体を引き抜き、第1フィルタユニットで膜分離処理を開始し、貯留槽が所定の液量に到達した時点で、第2フィルタユニットで膜分離処理を開始した。その結果、貯留槽内に目的物であるhMSCが分離精製された状態で回収された。
<浮遊細胞の浮遊培養>
浮遊細胞の浮遊培養において、目的物に相当する細胞としては、チャイニーズハムスターの卵巣細胞(Chinese Hamster Ovary cells:CHO細胞)を用いた。目的物に相当する細胞は、以下の手順で、浮遊状態で培養し、培養後に単離細胞として回収した。
はじめに、DMEM培地(10%FBS)の液体培地を用意した。この液体培地中にCHO細胞を播種し、培養槽内で流加培養方式の攪拌培養を行った。
図16は、浮遊細胞の顕微鏡写真である。
図16に示すように、培養時間が経過するほど細胞数が増加し、培養を開始して5日目には、互いに細胞接着していない独立した浮遊細胞が観測された。
続いて、培養槽内が所定の細胞数に到達した時点で、培養槽内から液体を引き抜き、第1フィルタユニットで膜分離処理を開始し、貯留槽が所定の液量に到達した時点で、第2フィルタユニットで膜分離処理を開始した。その結果、貯留槽内に目的物であるCHO細胞が分離精製された状態で回収された。
<スフェロイドの浮遊培養>
スフェロイドの浮遊培養において、目的物に相当する細胞としては、iPS細胞を用いた。目的物に相当する細胞は、以下の手順で、凝集化させて培養し、培養後にスフェロイドとして回収した。
はじめに、iPS細胞用の液体培地を用意した。この液体培地中にiPS細胞を播種し、培養槽内で灌流培養方式の攪拌培養を行った。
図17は、細胞凝集体の顕微鏡写真である。
図17に示すように、培養時間が経過するほどスフェロイドが大きくなり、培養を開始して5日目には、数百μm径のスフェロイドが観測された。
続いて、培養槽内から液体を引き抜き、第1フィルタユニットで膜分離処理を開始し、貯留槽が所定の液量に到達した時点で、第2フィルタユニットで膜分離処理を開始した。その結果、貯留槽内に目的物であるiPS細胞のスフェロイドが分離精製された状態で回収された。