JP2014065845A - インクジェット記録用メンテナンス液、インクジェット記録用インクセット、及び画像形成方法 - Google Patents

インクジェット記録用メンテナンス液、インクジェット記録用インクセット、及び画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット記録用ヘッドからのインクの吐出性を向上させることができるインクジェット記録用メンテナンス液を提供する。
【解決手段】水と、修正モース硬度9以上の無機粒子と、HLB値が10.5〜13.8の下記一般式(I)で表される化合物と、を含有するインクジェット記録用メンテナンス液である〔R:炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、又はアリール基;m:3〜14の整数〕。

【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用メンテナンス液、インクジェット記録用インクセット、及び画像形成方法に関する。
インクジェット法を利用した記録方法(画像形成方法)は、例えばインクジェット記録用ヘッドに設けられた多数のノズル(吐出孔)からインクを液滴状に吐出することにより、多種多様な記録媒体に対して高品位の画像を記録できること等から広く利用されている。
上記記録方法では、ヘッドからのインクの吐出性向上などを目的として、ヘッドを洗浄液(「メンテナンス液」ともいう)によって洗浄することが行なわれている。
上記洗浄液(メンテナンス液)としては、洗浄性に優れ、インクジェット記録用ヘッド等の部材耐久性に優れたメンテナンス液として、水と、水溶性有機溶剤と、特定の水溶性ケイ酸塩及びコロイダルシリカの少なくとも一方と、を含有するメンテナンス液が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、微粒子入りの洗浄液を用いてインクジェット記録用ヘッド内やインク供給路内を洗浄し、インクジェット記録用ヘッド内やインク供給路の壁面に付着したインク等を研磨して除去する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2011−63777号公報 特開2003−211687号公報
一般に、インクジェット法による画像形成方法において、溶剤として水を含む(水性の)インク組成物(以下、単に「インク」ともいう)を用いる場合、インクジェット記録用ヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう)内のインク流路の壁面の性状は親水性となっている。
しかしながら、この親水性の壁面に部分的に疎水性物質が付着していると、インク流路にインクを充填したときに、疎水性物質が付着している部分にインク中の気泡が付着し易く、付着した気泡が残存し易い。その結果、残存した気泡により、ヘッドからのインクの吐出性が低下する場合がある。
この現象に対し、コロイダルシリカを含有するメンテナンス液を用いてヘッド内を洗浄しても、硬度が低いコロイダルシリカでは疎水性物質の除去性が低いため、インクの吐出性の低下を充分に改善できない場合がある。
また、硬度が高い粒子を含むメンテナンス液を用いてヘッド内を洗浄すると、硬度が高い粒子によって疎水性物質を研磨して除去し易いものの、更にインク流路の親水性の壁面まで研磨してこの壁面に損傷を与えてしまい、その結果、インクの吐出性が低下する場合がある。
本発明は上記状況に鑑みなされたものであり、インクジェット記録用ヘッドからのインクの吐出性を向上させることができるインクジェット記録用メンテナンス液、及び、インクの吐出性に優れた画像形成方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
本発明者は、インクジェット記録用メンテナンス液に、一定以上の硬度を有する無機粒子と特定の化合物とを含有させることにより上記課題を解決できるとの知見を得、この知見に基づき本発明を完成させた。
即ち、上記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 水と、修正モース硬度9以上の無機粒子と、HLB値が10.5〜13.8の下記一般式(I)で表される化合物と、を含有するインクジェット記録用メンテナンス液である。
一般式(I)中、Rは、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、又はアリール基を表す。mは、3〜14の整数を表す。
<2> 前記修正モース硬度9以上の無機粒子が、アルミナ粒子及びジルコニア粒子から選択される少なくとも1種を含む<1>に記載のインクジェット記録用メンテナンス液である。
<3> メンテナンス液全量に対する前記修正モース硬度9以上の粒子の量が、0.1質量%〜10質量%である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用メンテナンス液である。
<4> 前記修正モース硬度9以上の無機粒子の体積平均粒子径が、0.05μm〜50μmである<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用メンテナンス液である。
<5> 水と顔料とを含有するインク組成物と、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用メンテナンス液と、を有するインクジェット記録用インクセットである。
<6> 前記インク組成物が、ポリマー粒子を含有する<5>に記載のインクジェット記録用インクセットである。
<7> 更に、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を有する<5>又は<6>に記載のインクジェット記録用インクセットである。
<8> <5>〜<7>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用インクセットが用いられ、インクジェット記録用ヘッド内を前記インクジェット記録用メンテナンス液で洗浄する洗浄工程と、洗浄された前記インクジェット記録用ヘッド内に前記インク組成物を充填する充填工程と、充填された前記インク組成物を前記インクジェット記録用ヘッドから吐出することで、該インク組成物を記録媒体に付与するインク付与工程と、を有する画像形成方法である。
<9> 更に、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する<8>に記載の画像形成方法である。
本発明における「メンテナンス」には、インクジェット記録用のインク組成物を吐出するインクジェット記録用ヘッド及びその吐出性能を所期の状態もしくはそれに近い状態に保ち、持続すること(保守)に加え、記録用ヘッドを洗浄(クリーニング)して、より良好な状態に整備、維持することが含まれる。メンテナンス液には、インク組成物を洗浄する洗浄液が含まれる。
本発明によれば、インクジェット記録用ヘッドからのインクの吐出性を向上させることができるインクジェット記録用メンテナンス液、及び、インクの吐出性に優れた画像形成方法を提供することができる。
本発明に好適に用いられるインクジェット記録用ヘッドの一実施形態を示す概略断面図である。
以下、本発明のインクジェット記録用メンテナンス液、並びにこれを用いたインクジェット記録用インクセット及び画像形成方法について詳細に説明する。
≪インクジェット記録用メンテナンス液≫
本発明のインクジェット記録用メンテナンス液(以下、単に「メンテナンス液」ともいう)は、水と、修正モース硬度9以上の無機粒子と、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が10.5〜13.8の下記一般式(I)で表される化合物と、を含有する。
一般式(I)中、Rは、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、又はアリール基を表す。mは、3〜14の整数を表す。
一般に、インクジェット法による画像形成方法において、溶剤として水を含む水性のインク組成物(以下、単に「インク」ともいう)を用いる場合、インクジェット記録用ヘッド内のインク流路の壁面の性状は親水性となっている。例えば、このインク流路の壁面は、SiO膜などの親水性の膜で構成される。
しかしながら、この親水性の壁面に部分的に疎水性物質が付着していると、インク流路にインクを充填したときに、疎水性物質が付着している部分にインク中の気泡が付着し易く、付着した気泡が残存し易い。その結果、残存した気泡により、インクの吐出性が低下する場合がある。
この現象に対し、修正モース硬度が5〜7であるコロイダルシリカを含有するメンテナンス液を用いてヘッド内を洗浄しても、硬度が低いコロイダルシリカでは疎水性物質の除去性が低いため、インクの吐出性の低下を充分に改善できない場合がある。
また、硬度が高い粒子を含むメンテナンス液を用いてヘッド内を洗浄すると、硬度が高い粒子によって疎水性物質を研磨して除去し易いものの、更にインク流路の親水性の壁面まで研磨してこの壁面に損傷を与えてしまい、その結果、インクの吐出性が低下する場合がある。
この問題に関し、本発明のメンテナンス液によれば、修正モース硬度9以上の無機粒子によりヘッド内のインク流路の壁面に付着した疎水性物質を研磨除去でき、かつ、この無機粒子とともにHLB値が10.5〜13.8の一般式(I)で表される化合物を用いることにより、無機粒子によってインク流路の壁面が研磨される現象を抑制できる。
従って、本発明のメンテナンス液を用いてインクジェット記録用ヘッド内(インク流路)を洗浄することにより、インクジェット記録用ヘッドからのインクの吐出性を向上させることができる。
本発明のメンテナンス液によってインク流路の壁面が研磨される現象を抑制できる理由は、HLB値が10.5〜13.8の一般式(I)で表される化合物により、インク流路を洗浄する際、修正モース硬度9以上の無機粒子とインク流路の壁面との摩擦が低減されるため、と考えられる。
本発明のメンテナンス液において、無機粒子の修正モース硬度を9未満に変更すると、疎水性物質に対する研磨性が低下するため、吐出性が低下する。
また、本発明のメンテナンス液において、一般式(I)で表される化合物のHLB値を10.5未満に変更すると、インクの吐出性が低下する。この理由は明らかではないが、この化合物の親水性・疎水性のバランスが疎水性側に崩れる結果、修正モース硬度9以上の無機粒子とインク流路の壁面との摩擦が増大するためと推測される。
また、本発明のメンテナンス液において、一般式(I)で表される化合物のHLB値を13.8超に変更すると、インクの吐出性が低下する。この理由は明らかではないが、この化合物の親水性・疎水性のバランスが親水性側に崩れる結果、修正モース硬度9以上の無機粒子とインク流路の壁面との摩擦が増大するためと推測される。
本発明において、インク流路の壁面に付着した疎水性物質としては、例えば、インクジェット記録用ヘッドの組立(製造)において、各構成部材同士の接着に使用した接着剤(エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤)やシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤は、接着剤と混合して用いられたり、構成部材の接着性を向上させるための表面処理に用いられる。
インクジェット記録用ヘッドの製造に用いられる接着剤及びシランカップリング剤については、例えば、特開2010−5993号公報に記載されている。また、インクジェット記録用ヘッドの製造方法については、例えば、特開2010−5993号公報や特開2012−76396号公報に記載されている。
インクジェット記録用ヘッドを製造する際、プラズマ処理により、インク流路の壁面に残存した接着剤やシランカップリング剤を除去することも行なわれているが、プラズマ処理によってもこれらを除去することは難しい場合があり、残存した接着剤やシランカップリング剤により、インクの吐出性が低下する場合がある。
この点に関し、本発明のメンテナンス液を用いることで、インク流路の壁面に残存した接着剤やシランカップリング剤を容易に除去することができ、インクの吐出性を向上させることができる。
また、本発明のメンテナンス液を用いる場合には、インクジェット記録用ヘッドを製造する際のプラズマ処理工程を省略することもでき、これにより、インクジェット記録用ヘッドを製造する際の生産性を向上させることもできる。
本発明のメンテナンス液は、主としてヘッド内(インク流路)の洗浄に好適に用いられるものであるが、この用途以外にも、ヘッドの例えばノズル付近に付着したインク組成物(又はインク組成物が乾燥してなるインク固形物)を除去する用途にも用いることができる。
以下、本発明のメンテナンス液を構成する成分等について詳述する。
<修正モース硬度9以上の無機粒子>
本発明のメンテナンス液は、修正モース硬度9以上の無機粒子を少なくとも1種含有する。
ここで、本発明におけるモース硬度及び修正モース硬度について説明する。
モース硬度とは、主に鉱物に対する硬さの尺度を表す。モース硬度では、硬さの尺度として1から10までの整数値を考えそれぞれに対する標準物質が設定される。モース硬度は相対的なものであり、数値間の硬度は比例せず、硬度1と硬度2との間の硬度差、及び、硬度9と硬度10との間の硬度差が大きい等の特徴がある。定量的ではないが、鉱物の同定において簡便で安価な方法として広く知られている。
修正モース硬度は、上記モース硬度を15段階に修正したものである。
以下、「修正モース硬度」を単に『硬度』とも称する。
修正モース硬度では、以下のように各硬度(各修正モース硬度)につき標準物質が設定されている。
硬度及びその標準物質(硬度に続けてかっこ内に示した物質)を硬度が低いものから順に並べると、硬度1(滑石)、硬度2(石膏)、硬度3(方解石)、硬度4(蛍石)硬度5(燐灰石)、硬度6(正長石)、硬度7(溶融石英)、硬度8(水晶)、硬度9(黄玉)(トパーズ)、硬度10(柘榴石)、硬度11(溶融ジルコニア)、硬度12(溶融アルミナ)、硬度13(炭化珪素)、硬度14(炭化ホウ素)、硬度15(ダイヤモンド)となる。
本発明における無機粒子の修正モース硬度は、測定対象となる無機粒子で上記各標準物質をこすり、引っかき傷の有無を確認することにより測定された値を指す。
この測定において、引っかき傷が生じなかった標準物質のうち硬度が最も低い標準物質の硬度が、測定対象となる無機粒子の硬度である。
メンテナンス液が特定無機粒子を含有することにより、ヘッド内のインク流路の壁面に付着した疎水性物質を研磨除去でき、ヘッドからのインク組成物の吐出性を向上させることができる。
特定無機粒子の硬度は9以上であるが、吐出性を更に向上させる観点からは、特定無機粒子の硬度は10以上が好ましく、11以上が特に好ましい。
特定無機粒子の硬度の上限には特に制限はないが、インク流路の壁面が研磨される現象をより抑制する観点からは、特定無機粒子の硬度は、14以下が好ましく、13以下がより好ましく、12以下が特に好ましい。
硬度9以上の無機粒子(以下、「特定無機粒子」ともいう)は、硬度9以上の成分を1種のみ含有する粒子であってもよいし、硬度9以上である成分を2種以上含有する複合粒子であってもよい。
また、粒子全体としての修正モース硬度が9以上である限り、修正モース硬度が9以上である成分1種以上に加え、修正モース硬度が9未満である成分を1種以上含んでいてもよい。
修正モース硬度が9以上である成分としては、上述した硬度9以上の標準物質や、溶融ジルコニア以外のジルコニア、溶融アルミナ以外のアルミナ、等が挙げられる。
修正モース硬度が9未満である成分としては、上述した硬度8以下の標準物質や、コロイダルシリカ等が挙げられる。
特定無機粒子における硬度9以上の物質の含有量は、特定無機粒子全質量に対し、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましい。
特定無機粒子は、吐出性向上の観点から、アルミナ(Al)粒子、ジルコニア(ZrO)粒子、及び炭化珪素(SiC)粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミナ粒子及びジルコニア粒子から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
特定無機粒子の形状には特に限定はなく、球形状、楕円球形状、多面体形状、棒形状、平板形状、不定形状等、あらゆる形状とすることができる。
特定無機粒子の粒子径には特に制限はないが、特定無機粒子の体積平均粒子径は、疎水性物質に対する研磨性(除去性)をより向上させ、かつ、インク流路の壁面が研磨される現象をより抑制する観点から、0.05μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがより好ましい。
ここでいう体積平均粒子径は、特定無機粒子の形状が球形以外である場合には、特定無機粒子の投影像における円相当径(同一面積の円における直径)の体積平均の値を指す。
なお、本発明における特定無機粒子の体積平均粒子径は、メンテナンス液をイオン交換水で希釈した後、大塚電子(株)製の濃厚系粒径アナライザー「FPAR−1000」(商品名)を用い、イオン交換水の屈折率を1.333として測定された値を指す。
本発明のメンテナンス液は、特定無機粒子を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
また、本発明のメンテナンス液は、本発明の効果を損なわない範囲で、特定無機粒子1種以上に加え、特定無機粒子以外の粒子(無機粒子であっても有機粒子であってもよい)を含んでいてもよい。
本発明のメンテナンス液中における特定無機粒子の量(2種以上である場合には総量)は、メンテナンス液全量に対し、0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましい。
特定無機粒子の量が0.1質量%以上であると、インク流路の壁面に付着した疎水性物質の除去性がより向上し、インクの吐出性をより向上させることができる。
特定無機粒子の量が20質量%以下であると、インク流路の壁面が研磨される現象がより抑制され、この現象によるインクの吐出性の低下がより抑制される。
<HLB値が10.5〜13.8の一般式(I)で表される化合物>
本発明のメンテナンス液は、HLB値が10.5〜13.8の下記一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有する。
これにより、上記特定無機粒子によってヘッド内のインク流路の壁面(親水性の壁面。以下同じ。)が研磨される現象が抑制され、この現象によるインクの吐出性低下が抑制され、インクの吐出性が向上する。
また、この化合物は界面活性剤として機能する。即ち、メンテナンス液がこの化合物を含有することにより、インク流路の壁面に対するメンテナンス液の濡れ性が向上する。
また、この化合物は、インク固形物に浸透してインク固形物の溶解性を促進する。このため、本発明のメンテナンス液を用い、ヘッドに付着したインク固形物を除去することもできる。
上記一般式(I)において、Rは、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、又は、置換もしくは無置換のアリール基を表す。mは、3〜14の整数を表す。
上記Rで表されるアルキル基は、炭素数が6〜20であり、直鎖状又は分岐状のいずれの構造でもよい。アルキル基の例としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、セチル(ヘキサデシル)基、ステアリル(オクタデシル)基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。中でも、炭素数8〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数8〜10の直鎖のアルキル基が特に好ましい。
上記Rで表されるアルケニル基は、炭素数が6〜20であり、直鎖状又は分岐状のいずれの構造でもよい。アルケニル基の例としては、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オレイル(オクタデセニル)基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。中でも、炭素数8〜10のアルケニル基が好ましい。
上記Rで表される置換又は無置換のアリール基は、置換アリール基が好ましく、炭素数10〜20のアリール基が好ましく、炭素数12〜16のアリール基がより好ましい。アリール基が置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アルケニル基等が好ましく、アルキル基が更に好ましく、炭素数6〜10のアルキル基が特に好ましい。アリール基の好ましい例としては、ノニルフェニル基、オクチルフェニル基等が挙げられる。
また、mは、3〜14の整数を表し、中でも、インク混合時の凝集抑制という観点で、4〜8の整数が好ましく、より好ましくは5〜7である。mは、アルキル基に対して付加させるエポキシの仕込み量により任意に変更することができる。
一般式(I)で表される化合物のHLB値は、10.5〜13.8であり、特に好ましくは11.5〜12.9の範囲内である。
HLB値が10.5未満であると、前述のとおりインクの吐出性が低下する傾向となる。更に、インクと混合された時にインク中の成分が凝集し易くなり、また経時過程で乾燥すると吐出異常を起こし易くなる。
一方、13.8より大きくなると、前述のとおりインクの吐出性が低下する傾向となる。更に、インク固形物の溶解性が低下し、インク固形物に対する洗浄性が悪化する傾向となる。
本発明における「HLB値」とは、下記式1により算出される値である。
HLB=20×(ポリエチレンオキシド基の式量)/(分子量) ・・・式1
上記一般式(I)で表される化合物の中では、インク混合時の凝集抑制とインク固形物の溶解性の観点から、Rが炭素数8〜10の直鎖アルキル基であり、mが4〜8の整数であって、HLB値が11.5〜13.4である化合物が好ましく、更には、Rが炭素数10の直鎖アルキル基であり、mが5〜7の整数であって、HLB値が11.5〜12.9である化合物が特に好ましい。
以下、上記一般式(I)で表される化合物の具体例を示す。なお、「PEG」は「ポリエチレングリコール」を表す。
本発明のメンテナンス液は、上記一般式(I)で表される化合物を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有していてもよい。
上記一般式(I)で表される化合物のメンテナンス液中における含有量(2種以上の場合には総含有量)としては、本発明の効果をより効果的に奏する観点から、メンテナンス液全量に対して、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.2質量%〜5質量%がより好ましく、0.2質量%〜3質量%が特に好ましい。
<水>
本発明のメンテナンス液は、水を含有する。
水には特に制限はないが、イオン性の不純物を極力低減する観点から、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水が好ましい。
メンテナンス液における水の含有量は、メンテナンス液全量に対し、50質量%〜99質量%が好ましく、60質量%〜98質量%が更に好ましく、80質量%〜98質量%が特に好ましい。
<水溶性有機溶剤>
本発明のメンテナンス液は、水溶性有機溶剤を含有していてもよい。
ここでいう水溶性とは、25℃において水100gに5g以上溶解する性質を指す。
水溶性有機溶剤としては、具体的にはアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、スルホン酸塩類(例えば1−ブタンスルホン酸ナトリウム塩等)、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
上記のうち、水性インク組成物の増粘・固化物の溶解又は再分散性、吐出性の点で、多価アルコールエーテル類(好ましくは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルであり、より好ましくは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル。)、多価アルコール類(好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリンであり、より好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール。)が好ましく、多価アルコールエーテル類が特に好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明のメンテナンス液が水溶性有機溶剤を含む場合、水溶性有機溶剤の含有量としては、増粘・固化物の溶解又は再分散性、吐出性の点で、メンテナンス液の全質量に対して、0.1〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%質量%が特に好ましい。
<塩基性化合物>
本発明のメンテナンス液は、塩基性化合物の少なくとも一種を含有することが好ましい。塩基性化合物を含有することで、メンテナンス液が保管等で経時した場合に、含有成分の分解等でpH低下するのを防ぐための緩衝作用を持たせることができる。
塩基性化合物は、メンテナンス液のpH領域においてpH緩衝能を有する化合物であれば、特に限定されるものではなく、メンテナンス液を構成する溶剤(例えば、水、有機溶剤、又はこれらの混合溶剤)に5mmol/L以上の溶解度を有する化合物が好ましい。
塩基性化合物としては、メンテナンス液のpH領域で有効にpH緩衝能を示す点で、pKa値が6.0〜8.5の化合物が好ましく、より好ましくはpKa値が6.8〜8.3の化合物である。
塩基性化合物は、無機化合物及び有機化合物のいずれでもよい。所望のpKa値を得やすいこと、メンテナンス溶液への溶解性が良好である点から、塩基性化合物としては、塩基性有機化合物が好ましい。また、塩基性化合物は、一塩基化合物であっても多塩基化合物であってもよい。なお、塩基性有機化合物のpKa値は、共役酸のpKa値である。
塩基性化合物としては、例えば、下記具体例が挙げられる。
・カコジル酸(pKa:6.2)
・2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール(pKa:6.5)
・ピペラジン−N,N’−ビス−(2−エタン硫酸)(pKa:6.8)
・リン酸(pKa2:6.86)
・イミダゾール(pKa:7.0)
・N’−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’,2−エタン硫酸(pKa:7.6)
・N−メチルモルホリン(pKa:7.8)
・トリエタノールアミン(pKa:7.8)
・ヒドラジン(pKa:8.11)
・トリスヒドロキシメチルアミノメタン(pKa:8.3)
塩基性化合物のメンテナンス液中における含有量(2種以上の場合には総含有量)としては、メンテナンス液全量に対して、0.001〜10質量%の範囲が好ましく、0.001〜5質量%の範囲がより好ましい。塩基性化合物の含有量が0.001質量%以上であると、メンテナンス液のpH変動が抑えられ、洗浄後にインクと混合した場合にインク中の成分の凝集等の発生防止に効果的である。含有量が10質量%以下であると、ヘッド面でメンテナンス液が濃縮されたときに析出し難いという点で有利である。
<消泡剤>
本発明のメンテナンス液は、消泡剤を含んでいてもよい。
消泡剤としては、例えばシリコーン系化合物(シリコーン系消泡剤)、プルロニック系化合物(プルロニック系消泡剤)等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン系消泡剤を含むことがより好ましい。シリコーン系消泡剤としては、ポリシロキサン構造を有しているものが好ましく、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK−024が特に好ましい。
<その他添加剤>
本発明のメンテナンス液は、上記の成分に加え、必要に応じて、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤(ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等)、粘度調整剤、特開2011−63777号公報に記載のシリコーン系化合物等のその他の添加剤を含むことができる。
本発明のメンテナンス液は、表面張力調整剤として、既述の一般式(I)で表される化合物以外の界面活性剤を更に含んでもよい。
該界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルカルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンジオール誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。
本発明のメンテナンス液のpHは、7.0〜9.5が好ましく、より好ましくは7.2〜9.0、特に好ましくは7.3〜8.8である。
メンテナンス液のpHが7.0以上であると、インク組成物と混合された際にインク組成物中の成分が凝集する現象がより抑制される。メンテナンス液のpHが9.5以下であると、ヘッド(例えば、ヘッドの吐出面に設けられた撥水膜)の劣化がより抑制される。
メンテナンス液の25℃での粘度は、作業性の観点から、1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1mPa・s以上10mPa・s未満、更に好ましくは2mPa・s以上5mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃で測定される値である。
本発明のメンテナンス液は、着色剤(顔料、染料等)を実質的に含まない液体であることが好ましい。ここで、「実質的に含まない」とは、着色剤の含有量がメンテナンス液の全量に対し、1質量%未満(好ましくは0.1質量%未満、特に好ましくは0質量%)であることを指す。
≪インクジェット記録用インクセット≫
本発明のインクジェット記録用インクセットは、顔料と水とを含有するインク組成物と、既述の本発明のインクジェット記録用メンテナンス液とを有する。
本発明のインクジェット記録用インクセットは、更に、インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を有することが好ましい。
<インク組成物>
本発明におけるインク組成物は、顔料と水とを含有し、必要に応じて、ポリマー粒子、尿素やその誘導体、界面活性剤等の添加剤等を用いて構成することができる。
(顔料)
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、並びに、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、上記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。上記顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。具体的には特開2007−100071号公報記載の顔料等が挙げられる。
顔料のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の全質量に対して、0.1〜15質量%の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲がより好ましい。
(分散剤)
本発明のインク組成物において、顔料は、分散剤によって分散されていることが好ましい。即ち、本発明のインク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
顔料の分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
この形態の中でも、特に、顔料がポリマー分散剤によって分散されている形態、即ち、顔料の少なくとも一部が該ポリマー分散剤により被覆されている形態が好ましい。少なくとも一部がポリマー分散剤により被覆されている顔料を、以下、「ポリマー被覆顔料」ともいう。
低分子の界面活性剤型分散剤については、例えば、特開2011−178029号公報の段落0047〜0052に記載された公知の低分子の界面活性剤型分散剤を用いることができる。
ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、例えば、特開2010−188661号公報の段落0021〜0022に記載の天然の親水性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性のポリマー分散剤としては、合成系の親水性高分子化合物を用いることもできる。
合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
これらの中でも、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、カルボキシル基を含む高分子化合物が好ましく、例えば、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂等のようなカルボキシル基を含む高分子化合物が特に好ましい。
ポリマー分散剤のうち、非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
上記のうち、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、更に好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及びベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の少なくとも一方と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(好ましくはアルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート)に由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位と、を含む共重合体である。
特に好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及びベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の少なくとも一方を共重合比として合計で40質量%〜90質量%(好ましくは50質量%〜85質量%)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(好ましくはアルキル基の炭素数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレート)に由来する構造単位を共重合比として5質量%〜50質量%(好ましくは10質量%〜45質量%)と、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を共重合比として2質量%〜20質量%(好ましくは3質量%〜15質量%)と、を含む共重合体である。
ポリマー分散剤としては、特開2012−171988号公報の段落0043〜0089に記載の水不溶性樹脂や、特開2011−63777号公報の段落0067〜0078に記載されたポリマー分散剤を用いることもできる。
以下、ポリマー分散剤を構成するポリマーの具体例を列挙する。但し、下記に限定されるものではない。
・フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5[質量比])
・フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6[質量比])
・フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6[質量比])
・フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5[質量比])
・ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(60/30/10[質量比])
ポリマー分散剤を構成するポリマーの酸価としては、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
酸価とは、ポリマーの1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JIS K 0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
ポリマー分散剤を構成するポリマーの分子量としては、重量平均分子量(Mw)で3万以上が好ましく、3万〜15万がより好ましく、更に好ましくは3万〜10万であり、特に好ましくは3万〜8万である。
また、本発明におけるインク組成物において、顔料とポリマー分散剤との質量比(顔料:分散剤)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
(水)
本発明におけるインク組成物は、水を含む。
水の量には特に制限はないが、安定性及び吐出信頼性の確保の点で、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上90質量%以下であり、50質量%以上80質量%以下である。
(有機溶剤)
本発明におけるインク組成物は、必要に応じ有機溶剤(好ましくは、水溶性有機溶剤)の少なくとも1種を更に含有することができる。
水溶性有機溶剤を含有することにより、インクの乾燥をより抑制でき、インクをより湿潤させることができる。
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のインク組成物が有機溶剤を含有する場合、インクの全量に対する有機溶剤の含有量には特に制限はないが、例えば1〜30質量%とすることができ、5〜25質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
(ポリマー粒子)
本発明におけるインク組成物は、必要に応じポリマー粒子を含有することができる。
インク組成物が、顔料を被う上記ポリマー分散剤とは別に、ポリマー粒子を含有することによって、インクの記録媒体への定着性、及び形成画像の耐擦過性がより向上する。
その一方、インク中にポリマー粒子を含有させると、ポリマー粒子を含有させない場合と比較して、インク中に気泡が生じやすい傾向があり、インクの吐出性が低下し易い傾向となる。このため、ポリマー粒子を含有するインクでは、本発明によるインクの吐出性向上の効果がより顕著に奏される。
ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、アクリル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、スチレン−ブタジエン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アクリル−スチレン系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、スチレン系ポリマー、架橋アクリルポリマー、架橋スチレン系ポリマー、ベンゾグアナミンポリマー、フェノールポリマー、シリコーンポリマー、エポキシポリマー、ウレタン系ポリマー、パラフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系ポリマー、アクリル−スチレン系ポリマー、スチレン系ポリマー、架橋アクリルポリマー、架橋スチレン系ポリマーを好ましい例として挙げることができる。
またポリマー粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
ポリマー粒子を構成するポリマーの重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは2万以上、20万以下である。
またポリマー粒子の平均粒径は、1nm〜1μmの範囲が好ましく、1nm〜200nmの範囲がより好ましく、1nm〜100nmの範囲が更に好ましく、1nm〜50nmの範囲が特に好ましい。
ポリマー粒子を構成するポリマーのガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
ポリマー粒子としては、自己分散性ポリマーの粒子(自己分散性ポリマー粒子)を用いることが好ましい。
ここで、自己分散性ポリマーとは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身が有する官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーをいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
自己分散性ポリマー粒子としては、特開2010−64480号公報の段落0090〜0121や、特開2011−068085号公報の段落0130〜0167に記載されている自己分散性ポリマー粒子を用いることができる。
自己分散性ポリマーの粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量としては、重量平均分子量で3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行なう。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
自己分散性ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位)を共重合比率として自己分散性ポリマー粒子の全質量の15〜80質量%を含むことが好ましい。
また、前記水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことがより好ましく、更には加えて、酸価が25〜100であって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が25〜95であって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
ポリマー粒子(例えば自己分散性ポリマー粒子)の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
また、ポリマー微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つポリマー粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
(尿素又はその誘導体)
本発明のインク組成物は、尿素又はその誘導体を含有することが好ましい。尿素及びその誘導体によれば、顔料を含むインク組成物が付着した場合のワイピング等によるクリーニング性が向上する。特に上記ポリマー粒子を含有する場合に、乾燥固化したときの拭き取り性(ワイピング性)が改善される。
尿素の誘導体の例としては、尿素の窒素上の水素をアルキル基もしくはアルカノールで置換した化合物、チオ尿素、チオ尿素の窒素上の水素をアルキル基もしくはアルカノールで置換した化合物等が挙げられ、具体的には、N,N−ジメチル尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシブチル尿素、エチレンチオ尿素、ジエチルチオ尿素等が挙げられる。
尿素及びその誘導体のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の全質量に対して、1.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上15.0質量%以下がより好ましい。
尿素及びその誘導体の含有量が1.0質量%以上であると、インクが付着した場合により拭き取り易くなり、メンテナンス性が向上する。また、尿素及びその誘導体の含有量が20.0質量%以下であると、画像中に含まれる尿素及びその誘導体の吸湿によるベタツキ防止、ブロッキング防止の点で有利である。
(他の成分)
本発明におけるインク組成物は、上記成分のほか、必要に応じて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、例えば、ワックス、界面活性剤、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
また、本発明におけるインク組成物は、重合性化合物を少なくとも1種含むことにより、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型のインクとして構成されていてもよい。この場合、インク組成物は、更に重合開始剤を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、例えば、特開2011−184628号公報の段落0128〜0144に記載されている公知の水溶性の重合性化合物や、特開2011−178896号公報の段落0019〜0034に記載されている公知の(メタ)アクリルアミド化合物(好ましくは2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物)が挙げられる。
重合開始剤としては、例えば、特開2011−184628号公報の段落0186〜0190や特開2011−178896号公報の段落0126〜0130に記載されている公知の重合開始剤が挙げられる。
本発明におけるインク組成物の表面張力は、特に限定されるものではないが、インク温度25℃において、20mN/m以上60mN/m以下が好ましく、30mN/m以上50mN/m以下がより好ましい。インクの表面張力は、例えば、界面活性剤の含有量によって調整することができる。
本発明におけるインク組成物のpHは、特に限定されるものではないが、インク組成物中に含まれる色材の凝集を防ぎ、かつ洗浄性を高める観点から、25℃におけるpHはpH6.5〜12の範囲が好ましく、pH7〜10の範囲がより好ましい。インク組成物のpHを上記範囲に調整するために、必要に応じて水溶性塩基性物質等のpH調整剤を使用することができる。
本発明におけるインク組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、インクジェット法で吐出する場合の吐出安定性、及び後述の処理液を用いた際の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インクを25℃の条件下で測定されるものである。
<処理液>
本発明のインクジェット記録用インクセットは、更に、インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を有することが好ましい。
処理液は前記インク中の成分を凝集させる凝集成分を含有する。
凝集成分としては、画像品質の観点から、カチオンポリマー、酸性化合物、及び多価金属塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
多価金属塩やカチオン性ポリマーについては、例えば、特開2011−042150号公報の段落0155〜0156に記載されている多価金属塩やカチオン性ポリマーを用いることができる。
上記酸性化合物としては、インクのpHを変化させ得る化合物が挙げられる。酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物又はその塩(例えば、多価金属塩)が挙げられる。中でも、インクの凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物が好ましく、カルボキシル基を有する化合物が更に好ましい。カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば、多価金属塩)等が挙げられる。
上記酸性化合物を用いる場合、処理液のpH(25℃)は、インクの凝集速度の観点から、0.5〜3の範囲が好ましく、0.6〜2の範囲がより好ましく、0.7〜1.5の範囲が更に好ましい。このとき、インクのpH(25℃)は、7.5以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。中でも、画像濃度、解像度、及び記録の高速化の点で、インクのpH(25℃)≧7.5、かつ処理液のpH(25℃)=0.7〜1.5である場合が好ましい。
処理液中における酸性化合物の含有量は、凝集効果の点で、処理液全量に対して、5〜95質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。
−水溶性高分子化合物−
処理液は、水溶性高分子化合物を少なくとも1種含むことが好ましい。
前記水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性高分子化合物を用いることができる。
また、前記水溶性高分子化合物としては、後述する特定高分子化合物も好適である。
前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量には特に限定はないが、例えば10000〜100000とすることができ、好ましくは20000〜80000であり、より好ましくは30000〜80000である。
また、本発明における処理液中における水溶性高分子化合物の含有量には特に限定はないが、処理液の全量に対し、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜4質量%がより好ましく、0.1質量%〜2質量%が更に好ましく、0.1質量%〜1質量%が特に好ましい。
前記含有量が0.1質量%以上であれば、インク滴の広がりをより促進でき、前記含有量が10質量%以下であれば、処理液の増粘をより抑制できる。また、前記含有量が10質量%以下であれば、処理液中の泡に起因する処理液の塗布ムラをより抑制できる。
−−特定高分子化合物−−
前記処理液に含まれる前記水溶性高分子化合物としては、イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位を含む高分子化合物(以下、「特定高分子化合物」ともいう)が好ましい。これにより、記録媒体に付与されたインク滴の広がりをより促進することができ、画像のざらつきが更に抑制される。
特定高分子化合物におけるイオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基、アミノ基、アンモニウム基、又はこれらの塩等が挙げられる。中でも、好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、又はこれらの塩であり、より好ましくは、カルボキシル基、スルホン酸基、又はこれらの塩であり、更に好ましくは、スルホン酸基又はその塩である。
イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位としては、イオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構造単位が好ましい。
前記水溶性高分子化合物中におけるイオン性基(好ましくはアニオン性基)を有する親水性の構造単位の含有量としては、水溶性高分子化合物の全質量中、例えば10〜100質量%とすることができ、10〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。
前記特定高分子化合物としては、上述のイオン性基(好ましくはアニオン性基、特に好ましくはスルホン酸基)を有する親水性の構造単位の少なくとも1種に加え、疎水性の構造単位の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
疎水性の構造単位を含むことにより、特定高分子化合物が処理液表面に更に存在しやすくなるため、記録媒体に付与されたインク滴の広がりがより促進され、画像のざらつきが更に抑制される。
疎水性の構造単位としては、(メタ)アクリル酸エステル(好ましくは、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステル)に由来する構造単位が好ましい。
前記特定高分子化合物における疎水性の構造単位の含有量は、特定高分子化合物の全質量中、例えば10〜90質量%とすることができ、30〜90質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましく、60〜80質量%であることが特に好ましい。
−水−
処理液は、水を含んで構成することができる。
水の含有量には特に制限はないが、10〜99質量%の範囲が好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは60〜80質量%である。
−有機溶剤−
本発明における処理液は、有機溶剤から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
処理液に含まれることがある有機溶剤としては、既述のインク組成物に含まれる水溶性有機溶剤と同様のものを用いることができる。中でも、カール抑制の観点から、ポリアルキレングリコールまたはその誘導体であることが好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
有機溶剤の処理液中における含有率としては、特に制限はされないが、カール抑制の観点から、処理液全体に対して1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
−その他の添加剤−
処理液は、上述した成分に加えて、その他の添加剤を含んで構成することができる。
その他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
処理液の粘度は、インクの凝集速度の観点から、1〜30mPa・sが好ましく、1〜20mPa・sがより好ましく、2〜15mPa・sが更に好ましく、2〜10mPa・sが特に好ましい。粘度は、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃で測定される値である。また、処理液の表面張力は、インクの凝集速度の観点から、20〜60mN/mが好ましく、20〜45mN/mがより好ましく、25〜40mN/mが更に好ましい。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃で測定される値である。
≪画像形成方法≫
本発明の画像形成方法は、既述の本発明のインクジェット記録用インクセットが用いられ、インクジェット記録用ヘッド内を、既述のインクジェット記録用メンテナンス液で洗浄する洗浄工程と、洗浄されたインクジェット記録用ヘッド内に既述のインク組成物を充填するインク充填工程と、充填されたインク組成物を前記インクジェット記録用ヘッドから吐出することで、このインク組成物を記録媒体に付与するインク付与工程と、を有する。
<洗浄工程>
本発明における洗浄工程は、インクジェット記録用ヘッド内(即ち、インク流路内)を前記インクジェット記録用メンテナンス液で洗浄する工程である。
(インクジェット記録用ヘッド)
インクジェット記録用ヘッドとしては特に制限はなく、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
また、インクジェット記録用ヘッドからのインクの吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、インクジェット記録用ヘッドに設けられる吐出孔(ノズル)等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
インクジェット記録用ヘッドとしては、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式に用いられる短尺ヘッド、ライン方式に用いられる記録媒体の1辺の全域に対応してノズルが配列されているラインヘッド等が挙げられる。ライン方式では、ノズルの配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なう。このライン方式では、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合(即ち、インクジェット記録用ヘッドがラインヘッドである場合)に、吐出性向上の効果が大きい。
インクジェット記録用ヘッドは、一般に、インクジェット記録用ヘッドを構成する複数の部材を接着剤によって接着(接合)して製造され、内部にインクが流通するインク流路が設けられている。
インクジェット記録用ヘッドとしては、例えば、特開2012−76396号公報、特開2010−5993号公報、特開2011−63777号公報等に記載の公知のインクジェット記録用ヘッドを用いることができる。
図1は、本発明に好適に用いられるインクジェット記録用ヘッドの一実施形態を示す概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るヘッド50は、第1の薄板積層部材200A、第2の薄板積層部材200B、第3の薄板積層部材200C、第4の薄板積層部材200D、第5の薄板積層部材200E、第6の薄板積層部材200F、及び圧電素子58の各々が、接着剤により、隣接する他の薄板積層部材と接着(接合)されて構成されており、インク流路(圧力室52、供給口54、及び共通流路55)と、インク流路に連通するノズル51(吐出孔)と、を備えている。このヘッド50からインクを吐出する際には、まず、インク流路にインクが充填され、次いで、ノズル51からインクが吐出される。
第1の薄板積層部材200Aは、ノズル51(吐出孔)が形成されたノズルプレートであり、インク吐出面50a側に配置されている。
第2〜第5の薄板積層部材200B〜200Eは、それぞれ、インク流路(圧力室52、供給口54、及び共通流路55)を構成するための溝部や孔部が形成されたインク流路形成基板である。
第6の薄板積層部材200Fは、圧力室52の天面を構成する振動板56である。
第1〜第6の薄板積層部材200A〜200Fは、例えば、Si、SiO、SiN、石英ガラスのようなシリコン系材料、Al、Fe、Ni、Cuまたはこれらを含む合金のような金属系材料、アルミナ、酸化鉄のような酸化物材料、カーボンブラック、グラファイトのような炭素系材料で構成されている。
インク流路及びノズルの壁面には、SiO膜等の親水性膜(不図示)が設けられており、これにより、水を含む(水性の)インク組成物との接触が良好に保たれる。
SiO膜は、各部材がシリコンである場合には、熱酸化膜として形成されていてもよい。
第1の薄板積層部材200A(ノズルプレート)の表面(インク吐出面50a)には、水を含む(水性の)インクに対して撥液性を有する撥水膜(不図示)が形成されており、インクの付着防止が図られている。
ノズル51に連通する圧力室52は、供給口54を介して共通流路55と連通されている。
共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(不図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは共通流路55を介して圧力室52に供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
ヘッド50は、前述したとおり、第1の薄板積層部材200A、第2の薄板積層部材200B、第3の薄板積層部材200C、第4の薄板積層部材200D、第5の薄板積層部材200E、及び第6の薄板積層部材200Fの各々が、接着剤により、隣接する他の薄板積層部材と接着(接合)されて製造される。
接着剤としては、シリコン系接着剤、エポキシ系接着剤、その他各種材料の中から適宜選択可能である。接着力、耐液性などの観点からは、エポキシ系接着剤が好ましい。
エポキシ系接着剤を構成するエポキシ材料に関しては、特開2002−302591号公報(段落0010〜0011)、特開2003−238770号公報(段落0030〜0036)、特開2002−254660号公報(段落0038)に開示されているものを用いることできる。
エポキシ材料の中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型樹脂が硬化性や耐インク性が良く好ましい。特にビスフェノールA型エポキシ樹脂は、市販されている樹脂の種類が豊富で、要求特性に応じて使い分けることができ、好ましい。
更に、各部材の接着性を向上させる観点から、好ましくは、接着剤にシランカップリング剤を混合すること、及び、各部材の接着面にシランカップリング剤を用いた表面処理を施すことの少なくとも一方が行なわれる。
シランカップリング剤としては、例えば、特開2002−302591号公報(段落[0019])、特開2003−238770号公報(段落[0063]〜[0064])、特開2002−254660号公報(段落[0045])に開示されている材料を用いることができる。
シランカップリング剤としては、アミノ基又はエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物を用いることができる。
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物は、アミノ系シランカップリング剤と呼ばれており、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物は、エポキシ系シランカップリング剤と呼ばれている。
アミノ系シランカップリング剤としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−603 信越シリコーン(株)製)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−903 信越シリコーン(株)製)を用いることができる。
エポキシ系シランカップリング剤では3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403 信越シリコーン(株)製)などを用いることができる。
接着剤とシランカップリング剤とを混合した混合物を用いる場合、シランカップリング剤の含有量は、混合物全量に対し、0.1質量%〜5質量%が好ましい。
上述のヘッド50におけるインク流路(例えば、圧力室52、供給口54、及び共通流路55)の壁面や、ノズル(例えばノズル51)の壁面には、ヘッド50の製造(組立)に用いた接着剤やシランカップリング剤(以下、これらをまとめて「接着剤成分等」ともいう)が残存する傾向がある。
接着剤成分等が残存した状態でヘッド50内にインクを充填すると、残存した接着剤成分等に起因してインク中に気泡が発生し、この気泡により、インクの吐出性が低下する場合がある。
本発明における洗浄工程では、インクジェット記録用ヘッド内(インク流路内)を、既述の本発明のメンテナンス液で洗浄する。
これにより、前述のとおり、インク流路の壁面が研磨される現象を抑制しながら、残存した接着剤成分等を優先的(好ましくは選択的)に研磨除去できる。
その結果、インクの吐出性を向上させることができる。
インクジェット記録用ヘッド内をメンテナンス液で洗浄する方法には特に制限はなく、ヘッド内のインク流路にメンテナンス液を流通させて洗浄する公知の方法を用いることができる。
洗浄中におけるメンテナンス液の液温は、10℃〜40℃とすることが好ましく、20℃〜30℃とすることがより好ましい。
ヘッド内のインク流路にメンテナンス液を流通させるときの流速は、200mL/min〜800mL/minが好ましく、300mL/min〜700mL/minがより好ましい。
洗浄時間は、0.2時間〜3.0時間が好ましく、0.3時間〜2.0時間がより好ましい。
<インク充填工程>
本発明におけるインク充填工程は、既述の洗浄工程で洗浄されたインクジェット記録用ヘッド内に既述のインク組成物を充填する工程である。
ヘッド内にインク組成物を充填する方法には特に制限は無く、ヘッドに供給するためのインク組成物を貯留したインク供給タンクからヘッド内にインク組成物を送液することにより充填する公知の方法を用いることができる。
ヘッドへのインク供給系の構成についても特に制限は無く、例えば、特開平1−297251号公報、特開2009−234221号公報、特開2010−83021号公報等に記載の構成を適宜参照することができる。
<インク付与工程>
本発明におけるインク付与工程は、既述のインク充填工程で充填されたインク組成物をインクジェット記録用ヘッドから吐出することで、インク組成物を記録媒体に付与する工程である。本工程では、記録媒体上にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。
本工程において、ヘッドからのインクの吐出の方式には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクの吐出方式としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させる方式を有効に利用することができる。
インク付与工程では、高精細印画の観点から、付与(打滴)されるインク滴の液滴量が1.5pL〜5.0pLであることが好ましい。
なお、インク滴の液滴量は、打滴するインク組成物に応じて、ヘッドからの吐出条件を適宜選択することで調整することができる。
(記録媒体)
本発明の画像形成方法は、記録媒体に上に画像を記録するものである。記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しらおい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明の画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙と無機顔料を含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましく、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのがより好ましい。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
<処理液付与工程>
本発明の画像形成方法は、更に、インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有することが好ましい。これにより、記録媒体上でインク組成物と凝集成分とが混合することで、インク組成物中で安定的に分散している顔料等の凝集が促進される。
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法等の公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については既述の通りである。
処理液付与工程は、インク組成物を用いたインク付与工程の前後のいずれに設けられてもよいが、インク付与工程前に設けられた態様が好ましい。記録媒体上に、インク組成物を付与(打滴)する前に、予めインク組成物中の成分(顔料等)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を打滴して画像化する。これにより、インクジェット記録をより高速化することができ、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
また、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥することが好ましい。これにより、にじみ防止等のインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤー等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。
加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法等が挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
<その他の工程>
本発明の画像形成方法は、適宜、記録媒体上に付与されたインクや処理液を乾燥させる乾燥工程等、その他の工程を有していてもよい。
また、インクが重合性化合物を更に含有する場合には、更に、インク付与工程により形成された画像に対して活性エネルギー線を照射して画像を硬化する硬化工程を有していてもよい。これにより、形成される画像の耐擦性や記録媒体との密着性がより向上する。
活性エネルギー線としては、重合性化合物を重合可能なものであれば、特に制限はない。例えば、紫外線、電子線等挙げることができ、中でも、汎用性の観点から、紫外線であることが好ましい。また、活性エネルギー線の発生源として、例えば、紫外線照射ランプ(ハロゲンランプ、高圧水銀灯など)、レーザー、LED、電子線照射装置などが挙げられる。紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500〜5000mW/cmであることが好ましい。
紫外線を照射する手段としては、通常用いられる手段を用いてもよく、特に紫外線照射ランプが好適である。紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光体が塗布された水銀灯、UV-LED光源等が好適である。水銀灯、UV−LEDの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色されたインク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できる点で適している。水銀灯には、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されている。発光波長領域として上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択される。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、得られたポリマーについて、溶剤を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1質量%に希釈して、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)にて、TSKgel Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本直列につないだものをカラムとして測定した。条件は、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、RI検出器を用いて行なった。検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」、「A-1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
また、ポリマーの酸価は、JIS規格(JIS K0070:1992)に記載の方法により求めた。
〔実施例1〕
<メンテナンス液の調製>
下記組成の成分を混合して、メンテナンス液を調製した。
メンテナンス液は、粘度が2.4mPa・s(25℃)であり、硝酸にてpH7.5(25℃)になるように調整した。粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)により25℃で測定した。
(メンテナンス液の組成)
・アルミナ粒子(Al粒子;(株)不二製作所製「フジランダムWA#1200」、修正モース硬度12、体積平均粒子径9.3μm) ・・・ 1質量%
・ジエチレングリコール ・・・ 2質量%
・界面活性剤(下記表1に示す一般式(I)で表される化合物) ・・・ 1質量%
・イミダゾール(pKa=7.0、塩基性化合物) ・・・ 0.01質量%
・イオン交換水 ・・・ 全体で100質量%としたときの残量
なお、上記アルミナ粒子の体積平均粒子径は、作製されたメンテナンス液をイオン交換水で希釈した後、大塚電子(株)製の濃厚系粒径アナライザー「FPAR−1000」(商品名)を用い、イオン交換水の屈折率を1.333として測定した値である(以下の実施例及び比較例における体積平均粒子径も同様である)。
<ブラックインクKの調製>
−水不溶性ポリマー分散剤P−1の合成−
以下に示すようにして水不溶性ポリマー分散剤P−1を合成した。
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここに、メチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解させた溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に1時間反応させた後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解させた溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液を大過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出したポリマーを乾燥した。このようにして、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メチルメタクリレート共重合体(=60/10/30[質量比])である水不溶性ポリマー分散剤P−1を96g得た(下記式参照)。
得られた共重合体の組成は、H−NMRで確認し、GPCによりポリスチレン換算で求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
−顔料分散液Kの調製−
カーボンブラック(NIPEX160−IQ、デグッサ社製)10部と、上記のようにして得た水不溶性ポリマー分散剤P−1 3部と、メチルエチルケトン42部と、1NのNaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて、2500rpmで6時間分散した。得られた顔料分散液をメチルエチルケトンが充分に留去できるまで、55℃で減圧濃縮し、更に一部の水を除去した後、高速遠心冷却機7550(久保田製作所社製)を用いて、8000rpmで30分間遠心処理(50mL遠心菅を使用)を行ない、沈殿物を除去し、上澄み液を回収した。このようにして、ポリマー被覆顔料粒子(水不溶性ポリマー分散剤で被覆された顔料)の顔料分散液Kを得た。
上澄み液の吸光度スペクトルを測定し、そこから顔料濃度を求めたところ、10.2質量%であった。また、顔料分散液K中に分散されている顔料粒子の平均粒径は、130nmであった。
−自己分散性ポリマー粒子B−01の調製−
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで、87℃まで昇温した。反応容器内を、還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、メチルメタクリレート278.4g、イソボルニルメタクリレート243.6g、メタクリル酸58.0g、メチルエチルケトン108g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。そして、滴下完了後、1時間攪拌した。その後、「V−601」1.16gと、メチルエチルケトン6.4gとからなる溶液を加え、2時間攪拌を行なった(工程(1))。続いて、工程(1)を4回繰り返し、更に「V−601」1.16gと、メチルエチルケトン6.4gとからなる溶液を加えて3時間攪拌を続けた。重合反応終了後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷した。このようにして、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(=48/42/10[質量比])の溶液を得た。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は63,000(GPCによりポリスチレン換算で算出)、酸価は65.1mgKOH/g((JISK0070:1992)に記載の方法により算出)であった。
次に、得られた共重合体の溶液317.3g(固形分濃度41.0%)を秤量し、これにイソプロパノール46.4g、20%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物、共重合体に対してマレイン酸として0.3%相当)、2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内温度を70℃に昇温した。次に、蒸留水380gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化した(分散工程)。
その後、減圧下、反応容器内温度70℃で1.5時間保って、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で287.0g留去した(溶剤除去工程)後、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)0.278g(ポリマー固形分に対してベンゾイソチアゾリン−3−オンとして440ppm)を添加した。その後、1μmのフィルターでろ過を行ない、ろ過液を回収し、固形分濃度26.5%の自己分散性ポリマー粒子B−01の水性分散物を得た。
得られた自己分散性ポリマー粒子B−01の水性分散物をイオン交換水で希釈し、25.0%の分散液を調製し、下記の方法にて体積平均粒径を測定したところ、3.0nmであった。
(体積平均粒径(Mv)の測定)
得られた自己分散性ポリマー粒子の水性分散物を測定に適した濃度(ローディングインデックスが0.1〜10の範囲)に適宜希釈した後、超微粒子粒度分布測定装置ナノトラックUPA−EX150(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法により、各水分散物を全て同一測定条件にて体積平均粒子径を測定した。すなわち、粒子透過性:透過、粒子屈折率:1.51、粒子形状:非球形、密度:1.2g/cm、溶剤:水、セル温度:18〜25℃の条件において測定を行なった。
〜ブラックインクの調製〜
上記で得られた顔料分散液K、水不溶性ポリマー分散剤P−1、及び自己分散性ポリマー粒子B−01を用いて、下記のインク組成になるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)製の孔径1μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、ブラックインク(インク組成物)Kを得た。
(ブラックインク組成)
・ブラック顔料(カーボンブラック) ・・・ 3.0質量%
・上記ポリマー分散剤P−1(固形分) ・・・ 0.9質量%
・上記ポリマー粒子B−01(固形分) ・・・ 7.0質量%
・サンニックスGP250 ・・・ 10質量%
(三洋化成工業(株)製、水溶性有機溶剤)
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)・・・ 3質量%
(日本乳化剤(株)製MFTG、水溶性有機溶剤)
・ジプロピレングリコール ・・・ 3質量%
(和光純薬工業(株)製、水溶性有機溶剤)
・尿素 ・・・ 5質量%
(日産化学工業(株)製、固体湿潤剤)
・オルフィンE1010 ・・・ 1.5質量%
(日信化学工業(株)製、界面活性剤)
・セロゾール524 (ワックス固形分30%、ワックス分散物)・・・ 2質量%
(中京油脂(株)製、カルナウバワックス粒子(体積平均粒径70nm))
・ニューポールPE−108 ・・・ 0.2質量%
(三洋化成工業(株)製、増粘剤)
・スノーテックスXS ・・・ 0.3質量%
(日産化学(株)製、コロイダルシリカ)
・イオン交換水 ・・・ 全体で100質量%としたときの残量
粘度は6.5mP・s(25℃)、pHは8.5(25℃)であった。
<処理液の調製>
下記組成の成分を混合して、処理液を調製した。処理液の物性は、粘度2.6mPa・s、表面張力41.0mN/m、pH(25℃)0.7であった。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定した。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定した。
(処理液の組成)
・TPGmME(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル)・・・ 4.8質量%
・DEGmBE(ジエチレングリコールモノブチルエーテル) ・・・ 4.8質量%
・マロン酸 ・・・ 9.0質量%
・リンゴ酸 ・・・ 7.8質量%
・燐酸85質量%水溶液 ・・・ 6.7質量%
・1,2,3−プロパントリカルボン酸 ・・・ 2.5質量%
・下記水溶性ポリマー1 ・・・ 0.6質量%
・ベンゾトリアゾール ・・・ 1.5質量%
・TSA−739
(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製消泡剤)
・・・ シリコーンオイルの量として100ppm
・イオン交換水 ・・・ 全体で100質量%としたときの残量
<評価>
上記で調製されたメンテナンス液、ブラックインクK、及び処理液を用い、以下の評価を行なった。
評価結果を下記表1に示す。
(シランカップリング剤コーティング膜に対する洗浄性評価)
−シランカップリング剤コーティング膜の作製−
熱酸化SiO層が形成されたシリコンプレートの熱酸化SiO層上に、スピンコート法によりシランカップリング剤を塗布し、得られた塗膜を110℃で2分間加熱処理した。これにより、熱酸化SiO層上にシランカップリング剤コーティング膜を形成した。
ここでは、シランカップリング剤として、信越化学工業(株)製のKBM−603及びKBE−903をそれぞれ用い、2種の洗浄性評価用のサンプル(シランカップリング剤コーティング膜が形成されたシリコンプレート)を作製した。
次に、アルバック・ファイ(株)製のQuantera SXMを用い、それぞれのサンプルについて、シランカップリング剤コーティング膜における窒素原子の量を測定した。
その結果、KBM−603を用いたサンプルのシランカップリング剤コーティング膜中の窒素原子の量は7.8mol%(N1s)であり、KBE−903を用いたサンプルのシランカップリング剤コーティング膜中の窒素原子の量は8.0mol%(N1s)であった。
−シランカップリング剤コーティング膜に対する洗浄性の評価−
上記で作製したメンテナンス液を用い、上記で作製した2種のサンプルのシランカップリング剤コーティング膜を、メンテナンス液速度500mL/min、メンテナンス液温度25℃の条件で1時間洗浄した。
洗浄後のサンプルのシランカップリング剤コーティング膜形成面側について、上記と同様のXPS法により、窒素原子の量を測定した。
メンテナンス液によりシランカップリング剤コーティング膜が洗浄除去され、窒素原子の量が検出限界以下であった場合、表1中では、「ND」と表記した。
(インク吐出性評価)
図1に示す構成のヘッド50と同様の構成のインクジェット記録用ヘッドを準備した。
第1〜第6の薄板積層部材200A〜200Fとしては、表面に熱酸化SiO層が形成されたシリコン製部材を用いた。このインクジェット記録用ヘッドにおいて、ノズル及びノズルに対応する圧力室の数は、それぞれ128個とした。
インク流路の壁面(ノズルの壁面を含む)は熱酸化SiO層で構成されるようにした。
また、第1の薄板積層部材200A(ノズルプレート)のインク吐出面50a側には、パーフルオロデシルトリクロロシラン(FDTS)を用いて撥水膜を設けた。
各部材を接合する前には、予め接合される面をシランカップリング剤(KBM−603又はKBE−903)によって表面処理した。そして、表面処理された面にエポキシ系接着剤(DIC(株)製EPICLON840)を付与して各部材の接合を行なった。
上記で準備したインクジェット記録用ヘッドの内部(インク流路)を、上記のメンテナンス液を用い、メンテナンス液速度500mL/min、メンテナンス液温度25℃の条件で1時間洗浄した。
上記洗浄後のインクジェット記録用ヘッドを10個準備し、この10個のインクジェット記録用ヘッドをピエゾ型インクジェット記録評価用プリンタ(以下、「評価用プリンタ」という。)に装着した。
評価用プリンタとしては、特開2012−76396号公報の段落0035〜0056に記載されたインクジェット記録装置と同様の構成を有するプリンタを用いた。但し、評価用プリンタに搭載するインクジェット記録用ヘッドの個数は10個とした。
次に、評価用プリンタに備えられたインク供給タンクに上記で作製されたブラックインクKを収容し、インク供給タンクから10個のインクジェット記録用ヘッドにブラックインクKを送液することにより、10個のインクジェット記録用ヘッドにブラックインクKを充填した。
次に、23℃、20%RHの環境下、駆動周波数30kHz、インク液滴量3.8pL、記録解像度1440×1440dpi(ここで、dpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す)の条件で、10個のインクジェット記録用ヘッドのノズルからブラックインクK1を吐出した。
この吐出において、不吐出のノズル数をカウントし、下記評価基準に従ってインクの吐出性を評価した。なお、下記評価基準において、全ノズル数は、1280個(=1ヘッド当たりのノズル数×ヘッドの数=128個×10個)である。
−インク吐出性の評価基準−
5:不吐出ノズル数が全ノズル数に対し0.1%以下
4:不吐出ノズル数が全ノズル数に対し0.1%超1.0%以下
3:不吐出ノズル数が全ノズル数に対し1.0%超3.0%以下
2:不吐出ノズル数が全ノズル数に対し3.0%超5.0%以下
1:不吐出ノズル数が全ノズル数に対し5.0%超
(画像の白スジの評価)
上記評価用プリンタを用い(シランカップリング剤としてはKBM−603を使用)、記録媒体としてのOKトップコート+(王子製紙(株)製)上に、上記で作製した処理液を付与量が1.5g/mとなるように全面に塗布し、塗布された処理液を乾燥させた。
次いで、処理液付与面に、上記10個のインクジェット記録用ヘッドからブラックインクKを全面に付与し、付与されたブラックインクKを乾燥させ、ブラックのベタ画像とした。
以上のブラックのベタ画像の形成を、OKトップコート+ 50枚について連続して行なった。
上記で形成されたOKトップコート+ 50枚分のベタ画像について、インクの吐出不良に起因する白スジの本数を確認した。ここでは、複数枚のベタ画像に共通する箇所に発生した白スジは、1本として数えた。
ここで、白スジは、インクジェット記録用ヘッド中に不吐出のノズル(即ち、吐出不良のノズル)が発生したことにより、不吐出のノズルに対応する箇所にインクが付与されず、その箇所が白抜けとなることにより生じたものである。
〔実施例2〜10、比較例1〜7〕
実施例1のメンテナンス液の調製において、無機粒子及び界面活性剤を下記表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の評価を行なった。
評価結果を下記表1に示す。
無機粒子としては、実施例2では(株)不二製作所製「FZB#405」を、実施例3では日産化学工業(株)製の「ZR−40BL」を、実施例4、5、7、8、及び10、並びに比較例1及び3〜5では(株)不二製作所製「フジランダムWA#1200」を、実施例6では(株)不二製作所製「WA#280」を、実施例9では(株)不二製作所製「WA#240」を、比較例2では日産化学工業(株)製の「スノーテックスZL」を、それぞれ用いた。
また、比較例1及び7における「オルフィンE1010」は、日信化学工業(株)製のアセチレングリコール系界面活性剤である。
−表1の説明−
・無機粒子の量は、メンテナンス液全量に対する無機粒子の量(質量%)である。
・無機粒子の粒子径は、体積平均粒子径である。
・洗浄性の評価結果における「ND」は、メンテナンス液によりシランカップリング剤コーティング膜が洗浄除去され、窒素原子の量が検出限界以下であったことを示している。
表1に示すように、水と、修正モース硬度9以上の無機粒子と、HLB値が10.5〜13.8の一般式(I)で表される化合物と、を含有するメンテナンス液を用いた実施例1〜10では、インクの吐出性に優れていた。更に、実施例1〜10で形成された画像では、白スジの発生が抑制されていた。更に、この実施例1〜10のメンテナンス液は、シランカップリング剤に対する洗浄性(除去性)に優れていた。
一方、比較例1及び3〜5では、シランカップリング剤に対する洗浄性(除去性)は高いもののインク吐出性が悪化した。この理由は、メンテナンス液により、シランカップリング剤だけでなく、ヘッド内のSiO層までが研磨されてしまい、研磨された箇所が気泡を付着し易くなったためと考えられる。
以上の実施例1〜10におけるインクの吐出性及び白スジの評価ではブラックインクKを用いたが、このブラックインクKにおけるカーボンブラックを、C.I.ピグメント・ブルー15:3(シアン顔料)、C.I.ピグメント・レッド122(マゼンタ顔料)、又はC.I.ピグメント・イエロー(イエロー顔料)にそれぞれ変更したシアンインク、マゼンタインク、又はイエローインクを用いても、それぞれ、実施例1〜10と同様に、インクの吐出性に優れ、画像中の白スジの発生が抑制されることはいうまでもない。
50 … ヘッド
50a … インク吐出面
51 … ノズル
52 … 圧力室
54 … 供給口
55 … 共通流路
56 … 振動板
57 … 個別電極
58 … 圧電素子
200A … 第1の薄板積層部材(ノズルプレート)
200B … 第2の薄板積層部材(インク流路形成基板)
200C … 第3の薄板積層部材(インク流路形成基板)
200D … 第4の薄板積層部材(インク流路形成基板)
200E … 第5の薄板積層部材(インク流路形成基板)
200F … 第6の薄板積層部材(振動板)

Claims (9)

  1. 水と、修正モース硬度9以上の無機粒子と、HLB値が10.5〜13.8の下記一般式(I)で表される化合物と、を含有するインクジェット記録用メンテナンス液。

    〔一般式(I)中、Rは、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数6〜20の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、又はアリール基を表す。mは、3〜14の整数を表す。〕
  2. 前記修正モース硬度9以上の無機粒子が、アルミナ粒子及びジルコニア粒子から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  3. メンテナンス液全量に対する前記修正モース硬度9以上の粒子の量が、0.1質量%〜10質量%である請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  4. 前記修正モース硬度9以上の無機粒子の体積平均粒子径が、0.05μm〜50μmである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液。
  5. 水と顔料とを含有するインク組成物と、
    請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用メンテナンス液と、
    を有するインクジェット記録用インクセット。
  6. 前記インク組成物が、ポリマー粒子を含有する請求項5に記載のインクジェット記録用インクセット。
  7. 更に、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を有する請求項5又は請求項6に記載のインクジェット記録用インクセット。
  8. 請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットが用いられ、
    インクジェット記録用ヘッド内を前記インクジェット記録用メンテナンス液で洗浄する洗浄工程と、
    洗浄された前記インクジェット記録用ヘッド内に前記インク組成物を充填する充填工程と、
    充填された前記インク組成物を前記インクジェット記録用ヘッドから吐出することで、該インク組成物を記録媒体に付与するインク付与工程と、
    を有する画像形成方法。
  9. 更に、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する請求項8に記載の画像形成方法。
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