JP2014063592A - 色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導電性光電極基板上に色素増感された半導体粒子からなる光電極層15、電解液層16、触媒層17および導電性対向電極基板をこの順で有する色素増感型光電変換素子1および色素増感型太陽電池において、導電性光電極基板と導電性対向電極基板のいずれか一方の電極基板抵抗が100Ω未満であり、他方の基板抵抗が100Ω〜500Ωである色素増感型光電変換素子である。光量2.5万ルックスにおける発電量(P2.5max)に対する光量10万ルックスにおける発電量(P10max)の比(P10max/P2.5max)が1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.2である。
【選択図】図1
Description
図1は、本願発明の色素増感型光電変換素子の構造の1例を示す断面図である。色素増感型光電変換素子1は、透明基板11上に透明導電層12を積層した導電性電極基板に、下塗り層13、増感色素を担持させた多孔質半導体微粒子層14をこの順に積層した光電極層15と、透明基板11上に透明導電層12を積層した導電性電極基板に、触媒層17を積層した対向電極層18、および光電極層15と対向電極層18の間に設けられた電解液層16、および電解液層を囲む封止層19、集電線20、端子21から構成されている。以下、光電極層15、電解液層16、対向電極層18、封止層19の順で説明する。
光電極層は、導電性電極基板上に増感色素を担持した多孔質半導体微粒子層(以下、「色素増感多孔質半導体微粒子層」という。)を形成した構成である。
(1)導電性電極基板
本願発明の導電性電極基板は、ガラスまたは透明プラスチック基板からなる透明基板上に透明導電層を有する構成である。プラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性及びガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好適である。好適な材料としては、例えば、ポリエステル類(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)、スチレン類(例、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)など)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(商品名アートンなど)及び脂環式ポリオレフィン(商品名ゼオノアなど)などが用いられる。なかでも、化学的安定性とコストの点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、脂環式ポリオレフィンが特に好ましい。なお、これらのプラスチック基板の構造やその組成においては特に限定されず、本願発明の色素増感型光電変換素子を構成するに値するものであれば、利用することができる。
カーボンナノチューブは、その伝導度によって金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブに分類されるが用途に応じて、半導体性と金属性の混合比率を調整することが好ましい。導電性用途としてカーボンナノチューブ層を用いる場合には、金属性カーボンナノチューブの比率が高いほうが好ましく、半導体用途としてカーボンナノチューブ層を用いる場合には、半導体性カーボンナノチューブの比率が高いほうが好ましい。本願発明では光電変換素子の光電変換率を向上させるため、半導体性
カーボンナノチューブ の割合が多い方が好ましい。本願発明のカーボンナノチューブは、さらに金属などが内包されていてもよい。また、フラーレンが内包されたピーポッドナノチューブを用いても良い。カーボンナノチューブは、任意の方法、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法、スーパーグロス法などによって合成することができる。
本願発明においては、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、電解液層が液体である場合には、電解液層が透明導電層と接触した構造となるため、透明導電層から電解液層へ電子が漏れ出す逆電子移動と呼ばれる内部短絡現象が発生して、光の照射と無関係な逆電流が発生して光電変換効率が低下することを防ぐ役割と、多孔質半導体微粒子層の導電性基板への密着性を向上させる役割を持つものである。
本願発明の多孔質半導体微粒子層は、ナノサイズの細孔が内部に網目状に形成されたいわゆるメソポーラスな半導体層からなっている。多孔質半導体微粒子層を形成する半導体微粒子としては、金属の酸化物及び金属カルコゲニドを使用することができる。金属酸化物及び金属カルコゲニドを構成する金属元素としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉛、アンチモン、ビスマス、カドミウム、鉛などが挙げられる。以下に説明する。
ところで、二酸化チタンナノ粒子の結晶形には、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型がある。酸化チタンを気相法により製造するとき、最も低温で生成し安定な酸化チタンはアナターゼ型であり、熱処理を加えるに従い、ブルッカイト型、ルチル型へと変換する。結晶構造はX線回折法による回折パターンの測定や透過型電子顕微鏡観察による結晶格子像の検出により判断できる。また、二酸化チタンナノ粒子の平均粒子径は、レーザー光散乱法による光相関法や走査型電子顕微鏡観察法による粒径分布測定から算出できる。
本願発明は、半導体微粒子分散液を導電性電極基板上に塗布し、加熱処理して多孔質半導体微粒子層を形成する色素増感型光電変換素子用光電極に関するものである。本願発明においてプラスチック基板を用いる場合は、低温製膜法を採用するため、分散液の製膜性及びレべリング性を高める目的で添加される樹脂やラテックス等のバインダー材料を含まない分散液組成が好ましい。本願発明の半導体微粒子分散液は、半導体微粒子を水と炭素数5以下のアルコールの混合物からなる溶媒に分散させたものであり、粘性のある乳白色の液体である。
本願発明の多孔質半導体粒子層、すなわち、上記の半導体微粒子によって構成される多孔質半導体粒子層において、層内を空孔が占める体積分率で示される空孔率は、50%〜85%であることが好ましく、65%〜85%であることがさらに好ましい。
多孔質半導体粒子層は、2種類以上の微粒子群を含むことができる。2種以上の微粒子群は、例えば、粒径分布が異なるものであることができる。粒径分布が異なる2種類以上の微粒子群を含む場合、最も小さい粒子群の平均サイズは20nm以下が好ましい。この超微粒子に対して、光散乱により光吸収を高める目的で、平均粒径が200nmを越える大きな粒子を、質量割合として5質量%〜30質量%の割合で添加することが好ましい。本願発明の光電変換素子は、多孔質半導体粒子層が色素によって増感されているので色素を多孔質半導体粒子層表面に吸着分子として持っている。
本願発明の増感色素について記述する。増感色素としては、電気化学の分野で色素分子を用いる光電極の分光増感にこれまで用いられてきた各種の有機系、金属錯体系の増感材料が用いられる。また、光電変換の波長領域をできるだけ広くし、かつ、変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよく、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択してもよい。
本願発明における多孔質半導体微粒子層への増感色素の吸着方法について記述する。多孔質半導体微粒子層に色素を吸着させる方法としては、増感色素溶液中によく乾燥した多孔質半導体微粒子層を有する導電性電極基板を浸漬する方法(浸漬法)、あるいは増感色素溶液を多孔質半導体微粒子層に塗布する方法(塗布法)がある。浸漬法を用いる場合は、浸漬時の増感色素溶液の温度は、0℃〜80℃、好ましは、0℃〜50℃であり、特に好ましくは、5℃〜45℃である。また吸着のための浸漬時間は特に制限はないが、好ましく0.3分〜120分であり、より好ましく0.5分〜60分であり、更に好ましくは0.5分〜30分であり、特に好ましくは0.5分〜10分である。塗布法を用いる場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等の塗布方法や、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等の印刷方法が利用できる。
本願発明における増感色素の溶解に用いる溶媒の好ましい具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、ジメチルスルホキシド、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、などである。
特に好ましく用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t-ブタノール、ブトキシエタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、トルエン、を挙げることができる。なお、これらの溶媒は単独でもよいが2種類以上の溶媒を用いた混合溶媒でもよい。
色素溶液中における増感色素の濃度は、好ましくは0.01mM〜10mMであり、より好ましくは0.1mM〜10mMであり、更により好ましくは0.5mM〜8mMであり、特に好ましくは0.8mM〜6mMである。また、色素の全吸着量は、導電性支持体の単位表面積(1m2)当たり0.01M〜100Mが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g 当たり0.001M〜1Mの範囲であるのが好ましい。
電解液層は、増感色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。本願発明の電解液層を構成する電解液は、電解質と溶媒を基本としている。
(1)電解質
電解質としては、ヨウ素(I2 )と金属ヨウ化物もしくは有機ヨウ化物との組み合わせ、臭素(Br2
)と金属臭化物あるいは有機臭化物との組み合わせのほか、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン/キノンなどを挙げることができる。上記金属化合物のカチオンとしてはLi、Na、K、Mg、Ca、Csなど、また上記有機化合物のカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウム類、ピリジニウム類、イミダゾリウム類などの4級アンモニウム化合物が好ましいが、これらに限定されるものではない。また、これらを二種類以上混合して用いてもよい。この中でも、I2 とLiI、NaIやイミダゾリウムヨーダイドなどの4級アンモニウム化合物を組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05〜10Mが好ましく、さらに好ましくは0.2〜3Mである。I2 やBr2 の濃度は0.0005〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5Mである。また、4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることも好ましい。さらには、電解質としてヨウ素(I2 )を全く含まない電解液も好ましく用いることができる。
本願発明の溶媒としては、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを二種類以上混合して用いることもできる。さらに、溶媒としてテトラアルキル系、ピリジニウム系、イミダゾリウム系4級アンモニウム塩の室温イオン性液体を用いることも可能である。
本願発明では、上記電解液へゲル化剤、ポリマー、架橋モノマーなどを溶解させ、ゲル状電解質とすることができる。この場合、電解液成分はゲル状電解質の50〜99wt%が好ましく、80〜97wt%がより好ましい。
(1)対向電極基板
対向電極は光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対向電極基板は、透明基板および透明導電層からなることが好ましい。透明基板および透明導電層の詳細は、光電極層の透明基板および透明導電層と同様である。
対向電極基板の導電性膜上に触媒層を付与することが好ましい。対向電極基板に付与する触媒層には、触媒作用を有する貴金属粒子あるいはカーボン素材が好ましく用いられる。貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは比較的高い触媒作用を有する金属白金、金属パラジウム及び金属ルテニウムの少なくとも一種類から構成することが好ましい。また、カーボン素材としては、その形状は特に限定されないがカーボンファイバーやカーボンナノチューブなどを挙げることができる。カーボンナノチューブのサイズとしては、直径は0.5〜100nm、好ましくは0.5〜50nmであり、より好ましくは1〜20nmである。長さは10〜5000nm、好ましくは20〜4000nmであり、より好ましくは50〜4000nmである。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでも、多層かーボンナノチューブでもよい。更には導電性に富む素材が特に好ましい。
Poly(3−hexylthiophene−2,5−diyl),poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)等のポリチオフェン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、Poly(p−xylenetetrahydrothiophenium
choride),Poly[(2−methoxy−5−(2’ethylhexyloxy))−1,4−phenylenvinylene],Pory[(2−methoxy−5−(3’,7’−dimethyloctyloxy)−1,4−phenylenevinylene)],Poly[2−2’,5’−bis(2’’−ethylhexyloxy)phenyl]−1,4−phenylenevinylene]等のポリフェニレンビニレン類等が使用できる。これらの中でも特に好ましい導電性高分子は、Poly(2,3−dihydrothieno−[3,4−b]−1,4−dioxin)/Poly(styrenesulfonate)
(PEDOT/PSS)である。
電極として作用する光電極と対向電極の一方又は両方の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層、ガスバリアー層などの機能性層を設けてもよい。これらの機能性層は、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法などによって形成することができる。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法が利用できる。
本願発明の封止層は、電解液層の周囲に設けられ、電解液層を封止する機能を有する。前記封止層は、上記光電極基板と上記対向電極基板を接着するシール材と前記光電極基板と上記対向電極基板との間に必要な隙間を調整し、電解液層を形成するためのスペーサーにより構成されている。
本願発明のシール材は、上記光電極基板と上記対向電極基板を接着し、電解液層を封止することができるものであれば特に限定されるものではない。基板間の接着性、電解液に対する耐性(耐薬品性)、高温高湿耐久性(耐湿熱性)に優れていることが好ましい。電解液の漏洩を効果的かつ持続的に抑制するためには、接着性に加えて、耐薬品性と耐湿熱性に優れる必要があるからである。
本願発明のスペーサーは、前記光電極基板と上記対向電極基板との間に必要な隙間を所望の範囲に調整できるものであれば特に限定されるものではない。通常、真円球樹脂粒子、無機粒子、ガラスビーズなどを適宜選択することができる。本願発明では、真円樹脂粒子を用いることが好ましい。粒径としては、1μm〜100μmが好ましく、1μm〜50μmがより好ましく、1μm〜20μmが特に好ましい。光電極基板と対向電極基板が接することがなく、かつ、より短い間隙を均一に保つことで、電解液抵抗を下げ光電変換効率が向上するからである。
本願発明では、透明導電膜上に金属(良導体)からなる集電線を配設することにより、透明導電膜からなる透明透電極の表面抵抗率を下げている。集電線は、封止層により区分された光電極層、電解液層、対向電極層からなる色素増感型光電変換素子の外部に設けられることが好ましい。集電電極を電解液による腐蝕から保護するためである。集電線の材料は、導電性を有していれば特に制限はないが、抵抗率が比較的低い金属材料、例えば、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロムのうちから選ばれる少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましく、抵抗率が低く、線として形成し易いという観点からは、銀がより好ましい。集電線は、透明導電層上に格子状に形成することもできる。集電線の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法あるいはスクリーン印刷法などが用いられる。集電線の幅は、0.5mm〜5mm、より好ましくは、0.7mm〜3mmであり、集電線の厚さは、5μm〜50μm、より好ましくは、6μm〜20μmである。十分な線断面積当たりの電気伝導度を確保すると共に、後述する導電性微粒子と相俟って、上記光電極基板と対向電極基板との間に必要な間隙を確保するために適切な幅と厚みを必要とするからである。
本願発明では、光電変換素子は一対の取出し電極を備えている。後述する外装、バリアー包装体で光電変換素子を被覆するときは、前記取出し電極にリード材を取り付けることができる。取出し電極の材料としては、導電性を有していれば特に制限はない。抵抗率が比較的低い金属材料、例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、チタン、クロムのうちから選ばれる少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましい。取出し電極の厚さは、50nm〜100μmであることが好ましい。取出し電極の厚さは、断線により色素増感型光電変換素子の歩留まりが低下しない程度に薄すぎないことが必要であり、コスト面から過度に厚くする必要なないからである。また、取出し電極の形状は、特に制限はない。例えば、金属箔、金属テープ、板状、紐状のいずれであってもよい。加工性の観点から金属テープが好ましい。
本願発明では、その基板が水蒸気やガスに対してその透過性を低減するように設計されているが、過酷な環境条件により出力の劣化が見られる可能性があり、特に高温度で高湿度での環境条件で耐久性付与が重要である。これらの改良方法としては、基板にガスや水蒸気に対するバリアー特性を有する基板にするか、あるいはバリアー性のある包装体で、本発明の色素増感型光電変換素子を包み込むことで達成できる。以下に、本願発明で好ましく用いられるバリアフィルム、特に水蒸気バリアー性について以下に記述する。
Thin Solid Films 1996年 290−291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許2004−46497)などが挙げられる。
単一の色素増感型光電変換素子で得られる起電力は限られることから、実用的な電圧を取り出すために複数の色素増感型光電変換素子を直列または並列に接続する必要がある。図2上段は本願発明の色素増感型光電変換素子を所定の間隔を開けて6個直列接続した本願発明の色素増感型太陽電池モジュール100の断面図であり、図2下段は前記色素増感型太陽電池モジュール100の平面図である。これは、実施態様の1例であって、本願発明は、これに限定されるものではない。
図2上段に示すように、個々の色素増感型光電変換素子1は、集電線20と導電性微粒子22からなる電極接続部23により直列に接続されている。また、電極接続部23は、非導電性の封止層19で仕切られている。封止層19は、個々の色素増感型光電変換素子1の電解液層16を封止する役割を果たす。なお、色素増感型太陽電池モジュール100の両端には、集電線20上に取出し電極21が設けられている。取出し電極にリード線を接合して所望とする電気機器類に接続して、発電源として利用するものである。
ここで、導電性微粒子22は、シャープな粒子径分布を持つプラスチック微粒子に金メッキを施した弾力性を有する導電性微粒子である。弾力性を有するために集電線と密着性に優れる。また、前記スペーサーの1倍〜1.5倍、好ましくは1.1倍〜1.3倍の粒径の導電微粒子を選択することで、電解液層厚みを制御できる。
本願発明において、電極接続部を集電線と導電性微粒子の組み合わせとしたこと、具体的には、集電線形成後に、封止材を含む導電性微粒子を集電線上に積層したことにより、透明導電性層に下塗り層を形成したことによる光電極と対向電極との通電性を確実にするためである。
光電極を構成する導電性電極基板上に集電線を配備し、集電線で区分された導電性電極基板上に色素増感半導体微粒子層を形成した光電極基板と、対向電極を構成する導電性電極基板上に集電線を配備した対向電極とを、集電線上の透明導電膜上に設けられたシール部により接着させてセル部を設け、そのセル部に電解質層を封入したプラスチック基板からなる色素増感太陽電池モジュールが好ましい。
本願発明の色素増感型光電変換素子を色素増感太陽電池として組み上げるためには、モジュール化する必要がある。以下に記述する。モジュール化する場合には、集電線で区分された透明導電膜上に多孔質半導体微粒子層を形成し、その上に色素を吸着させて光電極を作製する工程と、基板上に導電膜を形成し対向電極を作製する工程と、集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程と、そのセル部に電解質を封入する工程からなる色素増感太陽電池モジュールの作製することが好ましい。なおセル部に電解質を封入する工程を予め実施し、しかる後に集電線上の透明導電膜上にシール部を形成し光電極と対向電極を接着してセル部を形成する工程を実施してもよい。集電線で集められた発電電力は、リード線に接合して所望とする電気機器類に接続して、発電源として利用するものである。この時、各単位セルのみの利用のみでもよく、2個以上のセルをリード線で結合してモジュール化することが更に好ましい。その際に、各セルを直列、並列でも良く、更には直列と並列を組み合わせてもよい。
モジュール化した色素増感型光電変換素子についての外装、バリアー包装体についても、光電変換素子と同様に外装、バリアー包装体を作製した。
本願発明の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池モジュールは、その用途が特に制限されるものではない。利用できる光源が可視光領域にあれば発電機能を有する。また光源に照度ムラが存在してもその出力特性に大きな支障をもたらさないという特徴を持つ。更には照射角度の依存性も小さいことも特徴である。用途としては、家庭用電源のための一般的な太陽電池として、日の出から日の入りまでの一日中発電する電源として使用できる。また、シリコン系太陽電池が不得意とする日蔭や室内においても問題なく発電できるという特徴があるため、日蔭や室内での各種用途の電源として利用できる。また、プラスチック基板を用いているために、軽量でかつ破損しづらいという特徴があり、携帯電話や携帯情報端末(モバイル)の充電用携帯電池として活用できる。医療用途としては、輸液ポンプやシリンジポンプ用電源、透析等の体外循環監視用モニター用電源の充電用携帯電池として、停電時や夜間の緊急電源に活用できる。特に、災害時の緊急用充電用電池としても有用である。
[1]実施例1
(1)電解液の調製
N−メチルベンズイミダゾール2.6g、ヨウ化カリウム3.3g、1,3−ブチルメチルイミダゾリウムヨウ化物6.6gを、50mLのメスフラスコに入れ、γ―ブチロラクトンを全量で50mLになるように加えた。超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち、24時間以上暗所に静置して、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせからなる酸化還元対(I-/I3-)を含まない電解液を調製した。
ルテニウム錯体色素(N719、ソラロニクス社製)72mgを200mLのメスフラスコに入れた。脱水エタノール190mLを混合し、撹拌した。メスフラスコに栓をしたのち超音波洗浄器による振動により、60分間撹拌した。溶液を常温に保った後、脱水エタノールを加え、全量を200mLとすることで、色素溶液を調製した。
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム、厚み200μm)上に透明導電層(インジウム-スズ酸化物(ITO))を積層した導電性電極基板(シート抵抗15Ω/sq)上に、スクリーン印刷法により導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を光電極セル幅に応じた間隔で印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して集電線を作製した。
下塗り層は、上記導電性電極基板の集電線形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC−600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布し、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して作製した。下塗り層を形成した透明導電性基板の下塗り層形成面に、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。
ポリエステルフィルムに粘着層を塗工した保護フィルムを2段重ねしたマスクフィルム(下段:PC−542PA 藤森工業製、上段:NBO−0424 藤森工業製)を、多孔質半導体微粒子層を形成するための開口部(長さ:60mm、幅5mm)を打ち抜き加工した。加工済みマスクフィルムを、気泡が入らないように、下塗り層を形成した透明導電性基板の集電線形成面に貼合した。
高圧水銀ランプ(定格ランプ電力 400W)光源をマスク貼合面から10cmの距離に置き、電磁波を1分間照射後直ちに、ポリマー成分を含まないバインダーフリー酸化チタンペースト(PECC−C01−06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)をベーカー式アプリケータにより塗布した。ペーストを常温で10分間乾燥させた後、マスクフィルムの上側の保護フィルム(NBO−0424 藤森工業製)を剥離除去し、150度の熱風循環式オーブン中でさらに5分間加熱乾燥し、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅5mm)を形成した。
その後、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅5mm)を形成した導電性電極基板を、調製した色素溶液(40℃)に浸し、軽く攪拌しながら、色素を吸着させた。90分後、色素吸着済み酸化チタン膜を色素吸着容器から取り出し、エタノールにて洗浄して乾燥させ、残りのマスクフィルムを剥離除去して、光電極を作製した。
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム、厚み200μm)上に透明導電層(インジウム-スズ酸化物(ITO))を積層した導電性電極基板(シート抵抗150Ω/sq)の導電面に、開口部(長さ:60mm、幅5mm)を打ち抜き加工した金属製マスクを重ね合わせ、スパッタ法により白金膜パターン(触媒層)を形成し、触媒層形成部分が72%程度の光透過率を有する対向電極層を得た。このとき、上記光電極層と対向電極層とを、お互いの導電面を向かい合わせて重ね合せた時、酸化チタンパターン(多孔質半導体微粒子層形成部)と白金パターン(触媒層形成部分)とは一致する構造とした。
対向電極層の触媒層形成面を表面として、アルミ製吸着板上に真空ポンプを使って固定し、液状の光硬化型封止剤((株)スリーボンド製)を自動塗布ロボットにより白金膜パターンの外周部分に塗布した。その後、白金膜パターン部分に上記のように調製した電解液を所定量塗布し、自動貼り合せ装置を用いて長方形の白金パターンと同型の酸化チタンパターンが向かい合う構造となるように、減圧環境中で重ね合せ、光電極側からメタルハライドランプにより光照射を行ない、続いて白金電極側から光照射を行った。その後、貼り合せ後の基板内に配置された複数個の光電変換素子を各々切出し、取出し電極部分に導電性銅泊テープ(CU7636D、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を貼ることで色素増感光電変換素子を作製した。
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した擬似太陽光照射装置(PEC−L11型、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)光源を用いた。光量は、10万、5万、2.5万ルクスに調整した。作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続した。電流電圧特性は、各光照射下バイアス電圧を、0Vから0.9Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化後、0.05秒後から0.15秒後の値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.9V〜0Vまでステップさせる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を、光電流とした。これにより求められた上記の各種試料の初期出力(Pmax)及び最大電圧(Vmax)を表1に示した。
対向電極の導電性電極基板として、シート抵抗300Ω/sq、400Ω/sqのものを使用した点を除き、実施例1と同様とした。
光電極の導電性電極基板として、シート抵抗30Ω/sq、50Ω/sq、80Ω/sqのものを使用した点を除き、実施例1と同様とした。
対向電極の導電性電極基板として、シート抵抗15Ω/sqのものを使用し、光電極の導電性電極基板として、シート抵抗150Ω/sq、300Ω/sq、400Ω/sqのものを使用した点を除き、実施例1と同様とした。
光電極の導電性電極基板として、シート抵抗150Ω/sqのものを使用し、対向電極の導電性電極基板として、シート抵抗30Ω/sq、50Ω/sq、80Ω/sqのものを使用した点を除き、実施例1と同様とした。
光電極の導電性電極基板と対向電極の導電性電極基板のシート抵抗組み合わせとして、(光:15Ω/sq、対:15Ω/sq)、(光:90Ω/sq、対:90Ω/sq)、(光:150Ω/sq、対:150Ω/sq)、(光:150Ω/sq、対:600Ω/sq)、(光:600Ω/sq、対:15Ω/sq)、(光:600Ω/sq、対:600Ω/sq)をそれぞれ使用した点を除き、実施例1と同様とした。
表1に示すように、光電極あるいは対抗電極の導電性が本発明の範囲外である比較試料1013〜1018は、高照射と低照射での発電量の変動量が2以上と大きい。これに対して、本発明の光電極の導電性が100Ω未満であり対抗電極が100〜500Ωである本発明の試料1001〜1006、および光電極の導電性が100〜500Ωであり対抗電極が100Ω未満である本発明の試料1007〜1012は、高照射と低照射での発電量の変動量が1前後と小さく、本発明の照射量に拘わらずその発電量が一定であるという特長を示すものであった。さらに、電圧(Vmax)もその変動は小さく優れた特性であることが確認された。また得られた光電極および対向電極の膜強度は十分な強度であること、基板と導電層間および酸化チタン層、あるいは触媒層間との接着は問題ないことを確認した。したがって、本発明の試料は優れた照度依存性の小さい色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池であることが実証された。
対向電極を以下の方法で作製した点を除き、実施例1と同様とした。
(1)対向電極の作製
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム、厚み200μm)上に透明導電層(カーボンナノチューブ(Aldrich製SG65(製品願号704148)))を積層した導電性電極基板(シート抵抗200Ω/sq)の導電面に、開口部(長さ:60mm、幅5mm)を打ち抜き加工した金属製マスクを重ね合わせ、スパッタ法により白金膜パターン(触媒層)を形成し、触媒層形成部分が72%程度の光透過率を有する対向電極層を得た。このとき、上記光電極層と対向電極層とを、お互いの導電面を向かい合わせて重ね合せた時、酸化チタンパターン(多孔質半導体微粒子層形成部)と白金パターン(触媒層形成部分)とは一致する構造とした。
触媒層としてカーボンナノチューブ(Aldrich製SG65(製品願号704148))を使用した点を除き、実施例21と同様とした。
導電層としてインジウム-スズ酸化物(ITO)を使用した点を除き、実施例21と同様とした。
表2に示すように、導電層をCNTに変更した場合でも、高照射と低照射での発電量の変動量が1前後と小さく、本発明の照射量に拘わらずその発電量が一定であるという特長を示すものであった。さらに、電圧(Vmax)もその変動は小さく優れた特性であることを確認した。試料2002においては、CNT自身が導電性と優れた触媒作用を示すことも確認した。
実施例1に基づき作製した試料1001を下記のバリアー包装体に封じ込めて本発明のモジュール試料3001を作製した。
(1)バリアー包装体に封じこめたモジュールの作製
実施例1において作製した試料1001を、下記の透湿度が10−4g/日・cm2のバリアー包装体に封じ込めて、包装材封入した色素増感太陽電池素子3001を作製した。
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の一方の面に厚さ30nmの酸化珪素の蒸着薄膜層を積層し、その蒸着薄膜層の上に塗布量3g/m2(乾燥状態)のポリウレタン系接着剤を介して厚15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらにその二軸延伸ナイロンフィルム面に塗布量3g/m2(乾燥状態)のポリウレタン系接着剤を介して厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、他方の面にC3F7−(OC3F6)24−O−(CF2)2−C2H4−O−CH2Si(OCH3)3からなるパーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤をパーフルオロヘキサンで0.5wt%に希釈した塗布液を塗布、乾燥して膜厚3μmの防汚層を積層した積層材料を得た。
前記積層材料を所定寸法にスリットした二枚の積層材料の無延伸ポリプロピレンフィルム面同士を重ね合わせ、三辺をヒートシールし、一辺を開口部とした三方シール袋(包装袋)を作成し、その三方シール袋の開口部からケーブル付きの試料3001を挿入し、ケーブルの一端を袋外に出し、袋内の空気を真空にて吸引後に、加熱密封シールして本発明の包装済みバリアー包装体に封じこめたモジュール試料3001を得た。
本発明のバリアー包装体に封じこめたモジュール試料3001を、40℃、相対湿度90%で1000時間放置した後にその出力特性を調べたところ、初期出力特性に対してほぼ同等な特性を示すことを確認した。以上から本発明の導電性層を有する色素増感型光電変換素子は優れた耐久性を有することが確認された。
11 透明基板
12 透明導電層
13 下塗り層
14 増感色素を担持した多孔質半導体微粒子層
15 光電極層
16 電解液層
17 触媒層
18 対向電極層
19 封止層
20 集電線
21 取り出し電極
22 導電性微粒子
23 電極接続部
100 色素増感型太陽電池モジュール
Claims (4)
- 導電性光電極基板上に、色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層、触媒層および導電性対向電極基板をこの順で有する色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池において、前記導電性光電極基板と前記導電性対向電極基板のいずれか一方の電極基板抵抗が100Ω未満であり、他方の電極基板抵抗が100Ω〜500Ωであることを特徴とする色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
- 導電性光電極基板上に、色素増感された半導体粒子からなる光電極層、電解液層、触媒層および導電性対向電極基板をこの順で有する色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池において、前記導電性光電極基板と前記導電性対向電極基板のいずれか一方の電極基板抵抗が50Ω以下であり、他方の電極基板抵抗が100Ω〜300Ωであることを特徴とする色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
- 光量2.5万ルックスにおける発電量(P2.5max)に対する光量10万ルックスにおける発電量(P10max)の比(P10max/P2.5max)が1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.2であること特徴とする請求項1または2に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
- 前記導電性光電極基板と前記導電性対向電極基板のいずれか一方または両方がプラスチック基板であって、前記プラスチック基板を構成する素材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンコポリマー、脂環式ポリオレフィンのいずれかから選択されたものであることを特徴とする請求項1〜3に記載の色素増感型光電変換素子および色素増感型太陽電池。
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