JP2014060851A - Dcdcコンバータ - Google Patents

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Abstract

【課題】1個の電流センサにより検出された電流に基づいて変圧動作を行うことができるDCDCコンバータを提供する。
【解決手段】N(≧2)相ブリッジ回路を備えるDCDCコンバータに、N相ブリッジ回路の出力端子と平滑コンデンサとの間に単一の電流センサを配置する。PWM制御周波数のN倍の周波数となるキャリアを用い、制御周期をN等分した区間の中心位相を各相PWM信号のパルスを発生させる起点とし、前記パルスの幅を夫々の起点より両位相方向に増加させてN相PWM信号を生成する。電流分離抽出手段は、電流センサにより検出される電流を、PWM信号の1制御周期内に前記キャリアに同期したタイミングで複数回サンプリングして得られた値から、N相リアクトルの夫々に個別に流れる電流を分離抽出する。そして、電流指令値と電流分離抽出手段によって抽出された各相リアクトル電流とに基づきPWM指令値を生成する。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、ブリッジ回路を構成する複数のスイッチング素子をスイッチング制御することで、入力される直流電源電圧を変圧して出力するDCDCコンバータに関する。
バッテリなどの直流電圧を昇圧して出力するDCDCコンバータには、複数個のチョッパ回路部(ブリッジ回路の各相アーム部)を備えたものがある。そして、各チョッパ回路部におけるスイッチング素子のオン状態からオフ状態への切り替えタイミングを、チョッパ回路部間で互いにずらすことで、スイッチングの状態を切り替えるタイミングを等間隔とするものが提案されている(例えば特許文献1,非特許文献1参照)。
このように、スイッチング状態の切り替えタイミングが等間隔になると、チョッパ回路部のコイルを流れる電流の増加及び減少の周期が互いに同一で、且つ、この電流の周期的な増加及び減少が等間隔に生じるようになる。また、前記電流がピークとなるタイミングも等間隔で生じるようになる。これにより、DCDCコンバータ内のリップル電流を低減することが可能となり、リアクトルや平滑コンデンサを小型にしてコンバータ全体の小型化を図ることができる。
特開2008−245348号公報
「三相トランスリンク形マルチフェーズ方式昇圧チョッパ回路における安定制御設計の実機による評価」,桂健志郎,中村祐太,山本真義(島根大学),平成24年電気学会全国大会予稿集,第4分冊,P8〜P9
しかしながら、上記のような多相構成のコンバータについては、各相毎の素子のばらつき等によって通電する電流が均等にならないという問題がある。そのため、制御精度を向上させるには、各相毎に電流センサを配置し、検出した相電流に基づき各相を個別に制御する必要がある。すると、その分だけ回路が大型化することになり、コンバータを多相構成にすることのメリットを十分に享受できなくなってしまう。
そこで、1個の電流センサにより検出された電流に基づいて変圧動作を行うことができるDCDCコンバータを提供する。
実施形態によれば、N(≧2)相ブリッジ回路を備えるDCDCコンバータにおいて、N相ブリッジ回路の出力端子の何れか一方と平滑コンデンサとの間に単一の電流センサを配置する。PWM信号生成手段は、PWM制御周波数のN倍の周波数となるキャリアを用い、制御周期をN等分した区間の中心位相を、各相PWM信号のパルスを発生させる起点とし、前記パルスの幅をそれぞれの起点より両位相方向に増加させてN相PWM信号を生成し、N相ブリッジ回路を構成する各スイッチング素子に出力する。
電流分離抽出手段は、電流センサによって検出される電流を、PWM信号の1制御周期内に、前記キャリアに同期したタイミングで複数回サンプリングして得られた値から、N相リアクトルのそれぞれに個別に流れる電流を分離して抽出する。そして、PWM指令値生成手段は、電流指令値と電流分離抽出手段によって抽出された各相リアクトル電流とに基づいて、PWM信号生成手段に出力するPWM指令値を生成する。
第1実施形態であり、DCDCコンバータの構成を示す図 制御部の内部機能を示すブロック図 単相DCDCコンバータの回路構成を示す図 図3の回路において電流センサにより検出される電流波形を示す図 PWM信号の1制御周期のタイミングチャート(電流検出パターン1) 図5相当図(電流検出パターン2) 各電流検出パターンでそれぞれ検出可能なDUTY領域をす図 (11)式における係数αがDUTYに応じて変化する状態を示す図 PWM信号生成処理を示す図5相当図(その1) PWM信号生成処理を示す図5相当図(その2) PWM信号生成処理を示す図5相当図(その3) 実際のDCDCコンバータの動作波形を示す図 制御部によりPWM制御周期毎に実行される処理内容を示すフローチャート 電流抽出処理の詳細を示すフローチャート DUTYリミット処理の詳細を示すフローチャート PWM信号処理の詳細を示すフローチャート(その1) PWM信号処理の詳細を示すフローチャート(その2) 第2実施形態を示す図1相当図 図2相当図 図5相当図 図6相当図 図7相当図
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1ないし図17を参照して説明する。図1は、DCDCコンバータの構成を示すものである。バッテリ電源1(直流電源)の正側端子は、一端が共通に接続された3相リアクトル2U,2V,2Wを介して、スイッチング回路(3相ブリッジ回路,N=3)3の各相入力端子4U,4V,4Wにそれぞれ接続されている。スイッチング回路3は、6個のIGBT(スイッチング素子)5U,5V,5W及び5X,5Y,5Zを3相ブリッジ接続して構成されており、IGBT5U,5V,5Wのエミッタが各相入力端子4U,4V,4Wとなっている。また、IGBTのコレクタ,エミッタ間にはフリーホイールダイオードが接続されている。
バッテリ電源1の負側端子は、基準電源線6を介してIGBT5X,5Y,5Zのエミッタに接続されている。また、IGBT5U,5V,5Wのコレクタは、出力電源線7に接続されている。そして、出力電源線7と基準電源線6との間には、平滑コンデンサ8及び負荷9の並列回路が接続されている。負荷9については抵抗素子のシンボルで示しているが、負荷9は、例えばインバータ回路を介して駆動されるモータ等である。
IGBT5Wのコレクタと平滑コンデンサ8との間を接続する出力電源線7の部分には電流センサ10(例えば、電流トランス等)が介挿されており、平滑コンデンサ8と負荷9との間を接続する出力電源線7の部分には電圧センサ11が配置されている。そして、電流センサ10及び電圧センサ11の出力端子は、それぞれ制御部12の異なる入力端子に接続されている。制御部12は、電流センサ信号と、電圧センサ信号から各相のスイッチング信号,すなわち3相PWM信号を生成して、スイッチング回路3を構成する各IGBT5のゲートに出力する。
図2は、制御部12の内部機能を示すブロック図であり、制御部12は、電圧制御部13,電流制御部14(PWM指令値生成手段),DUTYリミット部15(PWM指令値制限手段),PWM生成部16(PWM信号生成手段),電流抽出部17(電流分離抽出手段)等で構成されている。
電圧制御部13は、電圧センサ11により検出されたDCDCコンバータの出力電圧と、負荷9の運転状態等に応じて決定される電圧指令値とに基づいてPI(Proportional Integral)制御を行い、電流指令値を算出する。電流制御部14は、電圧制御部13で生成された電流指令値と電流抽出部17で検出された各相電流値(各相リアクトル電流)に基づいて各相毎にPI制御を行い、各相のDUTY(デューティ)指令値を算出する。尚、各相の電流指令値は、電流を均一化する場合には、入力される電流指令値の1/3に設定する。
DUTYリミット部15は、電流制御部14において生成された各相DUTY指令値に所定の制限を加えて出力するが、その詳細については後述する。PWM生成部16は、DUTYリミット部15を介して入力されたDUTY指令値から各相のPWM信号を生成する。このとき、各相毎に出力するPWM信号に所定の位相差を付与するが、3相PWM信号の場合は位相差を120度とする。電流抽出部17は、電流センサ10により検出された電流値を、PWM生成部16より入力されるPWMキャリア及びDUTYリミット部15より入力されるリミット後の各相DUTY指令値に基づいて、U,V,Wの各相電流を分離抽出する。以上が、DCDCコンバータ20を構成している。
次に、本実施形態の作用について、図3ないし図16を参照して説明する。図13ないし図16は、制御部12により実行される処理内容を示すフローチャートである。図13は、PWM制御周期毎に実行される処理であり、図2に示す機能ブロックによる処理の流れに対応している。先ず、電流抽出部17が電流抽出処理を行い(S1)、電圧制御部13がPI制御を行うことで電流指令値を生成する(S2)。次に、電流制御部14がPI制御を行うことで各相のPWMDUTY指令を生成すると(S3)、DUTYリミット部15においてDUTY制限処理が行われる(S4)。
<電流抽出処理>
先ず、ステップS1の電流抽出処理、すなわち単一の電流センサ10を用いて、3相のリアクトル2U,2V,2Vにそれぞれ流れる電流を個別に検出する手法について説明する。図3は、単相のDCDCコンバータ(昇圧)の回路構成であり、2つのスイッチング素子のオンオフにより出力電圧が変化する。昇圧回路として動作させる場合、上アーム側(上側)のスイッチング素子は、フリーホイールダイオードがあるので原理的にスイッチングは不要だが、スイッチング素子をオンすればダイオードに通電することで損失が発生することを回避できる(いわゆる同期整流方式)。
この昇圧回路の出力電圧Vout及びリアクトル電流ILは,下アーム側(下側)スイッチング素子のDUTYをD(<1),入力側のバッテリ電圧をVin,出力側の負荷抵抗をRとすると、(1)式で表される。したがって、リアクトル電流を検出し、下側スイッチング素子のオンDUTY_Dを調整すれば所望の出力電圧を得ることができる。
Vout=Vin×1/(1−D)
=R・(1−D)・IL …(1)
スイッチング回路がスイッチングを行っている場合、図3中のリアクトルに流れる電流は連続するため、図4に示すように下側スイッチング素子のオン時には下降し、上側スイッチング素子のオン時には上昇する波形を繰り返す。これに対して、スイッチング回路と出力部のコンデンサ間に設けられた電流センサにおいては、同図に示すように、リアクトル電流が流れる期間と電流がゼロになる期間とが周期的に繰り返される。
つまり、電流センサには、上側スイッチング素子がオンしている期間のみリアクトルの電流が流れる。このため、上側スイッチング素子のオンタイミングに同期して電流センサの信号をサンプリングすれば、波形振幅が下降中のリアクトル電流が得られる。制御として必要なリアクトル電流は、上昇と下降とを繰り返す状態の平均値であるため、この方式でも問題なく制御可能である。
次に、この回路を図1に示す3相構成のDCDCコンバータ20に拡張する。尚、電流抽出処理の詳細を示すフローチャートは図14である。図5は、PWM制御の1周期期間であり、各相の上側DUTYが30%程度の場合のスイッチング状態と、電流センサ10により検出される電流を示している。尚、説明を簡単にするため下側の信号は省略している。また、本実施形態における各相PWM信号のPWMパルス(ハイレベルDUTYパルス)は、PWM制御周期を3つの区間に分けて、各区間の中間位相を各相パルスの発生起点としている。
図5では、1周期を6等分したタイミングを電流検出タイミングI1〜I6としており、U,V,W各相パルスの発生起点はそれぞれI2,I4,I6となっている。そして、各相パルスは、それぞれの発生起点を中心として両位相方向にパルス幅を拡げるようにして生成される。このような各相パルスの生成方式については後述する。
<電流検出パターン1>
図5に示すPWM信号の発生パターンでは、各相のPWMパルスが重複しない発生パターンとなっている。したがって、各相の上側IGBT5がオンしているときに、出力電流センサ10には、スイッチングしている相と同じ相のリアクトル2の電流が流れる。よって、図中の検出タイミングI2,I4,I6で電流センサ信号をサンプリングすれば、各相電流Iu,Iv,Iwが抽出できる(S12)。
<電流検出パターン2>
図6は、上側のDUTYがより大きく80%程度である場合を示すが、各相のPWMパルスがオーバーラップするため、単一の相のみがオンしている期間はない。この場合は、2相が同時にオンしている状態に着目する。2相がオンしている状態では、電流センサ10にはそれら2相の合計電流が流れている。したがって、2相の合計電流を3種類サンプリングすれば各相電流を抽出できる。図中の検出タイミングI1,I3,I5の検出値から、次式により3相電流を演算する(S14)。
Iu2=(I3−I5+I1)/2 …(2)
Iv2=(I5−I1+I3)/2 …(3)
Iw2=(I1−I3+I5)/2 …(4)
(2)式の右辺は、I1,I3,I5を図中の2相合計値に置き換えると次式となり、Iuが抽出できることが判る。
(I3−I5+I1)/2=(Iu+Iv−Iv−Iw+Iu+Iw)/2
=Iu …(5)
同様に(3),(4)式からは、それぞれIv,Iwが抽出できる。
(I5−I1+I3)/2=(Iv+Iw−Iu−Iw+Iu+Iv)/2
=Iv …(6)
(I1−I3+I5)/2=(Iu+Iw−Iu−Iv+Iv+Iw)/2
=Iw …(7)
このように検出方法を変えることで、PWMパルスがオーバーラップする状態でも3相電流が検出できる。
<電流検出パターン3>
図6はDUTYが80%程度の場合であるが、DUTYが100%になると、3相の合計電流のみが電流センサ10の検出値に現れるため各相電流は抽出できない。しかし、DCDCコンバータとして考えると、上側DUTYが100%すなわち、下側DUTYが0%の時は(入力電圧)=(出力電圧)であり、昇圧制御していない状態となる。しかし、制御の連続性の面から各相電流を保持しておきたい場合、DUTYが100%付近の場合は、次式のように3相電流が均一であるとして近似的に求める(S16)。
Iu3=(I2+I4+I6)/9 …(8)
Iv3=Iu3 …(9)
Iw3=Iu3 …(10)
また、上側DUTYが0%付近の場合は、検出できる電流が無くなってしまうため、後述するDUTYリミット部15の動作によって電流検出が可能となる状態を確保する。
図7は、上述した3つの電流検出パターンでそれぞれ検出可能なDUTY領域を示したもので、各パターンに対応する領域は以下のようになる(但し、33%≒100/3%,66%≒200/3%)。
パターン1:DUTY<66%(各相の電流を即値で検出)
パターン2:33%<DUTY<100%(2相合計値×3から算出)
パターン3:66%<DUTY(3相合計値から算出)
尚、実際には、IGBT5におけるスイッチングの遅れやデッドタイムの関係から、上記33%,66%の数値は多少増減する。
検出パターン1,2から得られた検出電流をそれぞれIu1,Iu2とすると、制御に用いる検出電流Iuは、次式のように算出する(S19)。
Iu=Iu1×α+Iu2×(1−α) …(11)
α:0〜1(DUTYに応じて変化させる)
つまり、パターン1,2で得られた検出値の加重平均として求める。理論的には、パターン1,2で得られた検出値は一致するはずだが、実際には上述したスイッチングの遅れやデッドタイムの影響を受けるため、一致しない場合がある。そこで、このように演算することでスムーズな検出値の切替えが行われ、制御の連続性が維持される。αは、DUTYに応じて「0」から「1」まで線形に変化させる(図8参照,S18)。DUTY_SとDUTY_Eは、図7に示すように検出パターン1,2の両方で検出できるDUTY区間(猶予領域)に設定する(例えば40%,60%など)。
ここで、図14に示すステップS17において、「パターン1OK」,「パターン2OK」となっているのは、ステップS12,S14においてパターン1検出フラグ,パターン2検出フラグが「1」にセットされたことを「OK」としている。そして、パターン1で検出できたが、パターン2で検出できなかった(NG)場合は(S20:YES)、各相電流をパターン1で得られたIu1,Iv1,Iw1とする(S21)。また、パターン1では検出できず、パターン2で検出できた場合は(S22:YES)、各相電流をパターン2で得られたIu2,Iv2,Iw2とする(S23)。
更に、パターン1,2では検出できず、パターン3で検出できた場合は(S25:YES)、各相電流をパターン3で得られたIu3,Iv3,Iw3とする(S26)。また、ステップS25で「NO」と判断された場合はステップS4に移行して、以下に説明するDUTYリミット処理を行うことになる。
<DUTYリミット処理>
次にDUTYリミット部15の動作について説明する。対応するフローチャートを図15に示す。DUTYリミット部15は、各相の電流制御の結果であるDUTY指令値に制限を付加する。DUTYを制限する目的は2つあり、(A)DCDCコンバータ20の制御を安定させるためと、(B)電流の検出率を向上させるためである。例えば昇圧回路として動作する場合、出力電圧は(1)式で示したようにDUTYに応じて変化する。このため、電流制御部14の出力を下側DUTY指令とすることで、フィードバックループが機能する。
しかし、下側DUTYが大きくなり過ぎ100%になると(1)式が成立せず、入力電圧がリアクトル2でグランドに短絡された状態となってしまう。このため、下側DUTYが100%に達しないようリミットを設ける。それに伴い、上側DUTYも0%にならないようリミットがかかる(S31〜S34)。このリミットを0%以上とすることで、パターン1の電流検出方法が完全に機能する。つまり、上側DUTYの最小リミットは、上記(A),(B)双方の要求によるリミットとなる。最小リミットの具体数値例はDCDCコンバータの出力規模にもよるが、例えば10kW〜100kW程度の比較的大規模なものについては、例えば15%〜25%程度が妥当と思われる。
次に、(B)のみに寄与するリミットとして「相差リミット」(制限値)を定義する。これは、3相の各相間のDUTY差を最大X%に制限するものである。例えば、3相の上側DUTYがU:20%,V:50%,W:70%である場合を考える。このとき、図7の条件から、パターン1の条件は3相DUTYが66%未満、パターン2は3相DUTYが33%以上であるため、どちらのパターンでも検出ができなくなってしまう。
このような状況を回避するために各相毎のDUTY差を演算し、相差リミットとの大小関係を比較した結果に応じて制限をかける。先ず、3相のDUTYについて最大,中間,最小となる相を決定する(S35)。そして、最大,中間のDUTYの差が相差リミットを超えていれば(S36:YES)、
(最大DUTY)=(中間DUTY)+(相差リミット)…(12)
で制限する(S37)。
また、中間,最小のDUTYの差が相差リミットを超えていれば(S38:YES)、
(最小DUTY)=(中間DUTY)−(相差リミット)…(13)
で制限する(S39)。
相差リミットは、例えば33%/2である16%程度、或いはそれ未満が妥当である。例えば16%とした場合、上記の具体数値例では上側DUTYがU:34%,V:50%,W:66%に制限される。
本実施形態のようなマルチフェーズ型のDCDCコンバータ20では、3相のばらつき(要因は、リアクトルのインダクタンス成分,抵抗成分,スイッチング素子のオンオフ遅れの特性など)がゼロであれば、各相の電流を均一に制御するための各相DUTYは完全に同じ値となるため、上記のような制限を設けても実際の運用上で問題となることは少ない。
<PWM信号生成処理>
次に、PWM生成部16で生成される図5,図6に示すような位相差をもつ各相のPWMパルスを生成する方法について説明する。対応するフローチャートを図16及び図17に示す。説明のため、各相PWMの制御周期を100μsとする。先ず、生成するPWM信号の制御周波数の3倍となる周波数の三角波キャリアを設定する。図9〜図11にタイミングチャートを示すが、3倍キャリア振幅の山,谷に区切られた区間によって制御周期は6つの区間に分割される。例えば、V相PWM信号については、区間3,4の境界(キャリア振幅の谷)をパルス発生の起点とする。
尚、図16に示すステップS41〜S44に示す処理では「周期カウンタ」を使用しているが、この周期カウンタは、上記の6つの区間の何れに対応するかを判定するために使用される。すなわち、図16に示す処理は、3倍キャリア振幅の山,谷のタイミングで実行される。
<DUTY指令値が33%未満の場合(図9)>
区間1,2,5,6ではPWMパルスをフルオフとする(S461,S462,S465,S466)。区間3,4ではDUTY指令値を三角波と比較し、(DUTY指令値)>(三角波)の場合にハイレベルのパルスを出力する(S463,S464)。
<DUTY指令値が33%以上66%未満の場合(図10)>
区間1,6はフルオフとして(S481,S486)、区間3,4はフルオンし(S483,S484)、区間2,5は(14)式により決定する。
(出力DUTY)=100―{(DUTY指令値)−33)}…(14)
そして、(出力DUTY)<(三角波)の場合にハイパルスを出力する(S482,S485)。
<出力DUTYが66%以上の場合(図11)>
区間2〜5はフルオン(S492〜S495)。区間1,6は、
(出力DUTY)=(DUTY指令値)−66 …(15)
そして、(出力DUTY)>(三角波)の場合にハイパルスを出力する(S491,S496)。
以上はV相についてPWM信号の生成方法を述べたが、V相に対して120度、240度位相がシフトしたW,U相は、PWMの始点位置を区間5,6の中間、区間1,2の中間とすることで生成可能である(S501〜S506,S511〜S516)。この結果、3相の位相を120度シフトさせたPWM信号が生成できる。また、電流抽出部で述べたI1〜I6の検出タイミングは、図9〜11で述べた区間1〜6の各境界に対応する。
図12は、昇圧動作において上側DUTYが50%付近となる場合の、実際のDCDCコンバータの動作波形を示す。3相の位相シフトさせたPWM信号に応じて、3相電流のリップルが観測できる(電流センサの波形は正負逆転しているため、下側のスイッチング素子がオンしている状態で上昇している)。中央の電流センサ検出値では、各相のPWM信号パターンに応じて、単一の電流が発生する区間と2相合計値が発生する区間が切り替わっており、これらをサンプリングすることで各相電流が抽出できる。
以上のように本実施形態によれば、3相のスイッチング回路3を備えるDCDCコンバータ20において、スイッチング回路3の出力端子と平滑コンデンサ8との間に単一の電流センサ10を配置する。PWM信号生成部16は、PWM制御周波数の3倍の周波数となるキャリアを用い、制御周期を3等分した区間の中心位相を、各相PWM信号のパルスを発生させる起点する。そして、前記パルスの幅をそれぞれの起点より両位相方向に増加させて3相PWM信号を生成すると、スイッチング回路3を構成する各IGBT5に出力する。
電流抽出部17は、電流センサ10によって検出される電流を、PWM信号の1制御周期内に、前記キャリアに同期したタイミングで3回サンプリングして得られた値から、3相リアクトル2U,2V,2Wのそれぞれに流れる電流Iu,Iv,Iwを分離して抽出する。そして、電流制御部14は、電流指令値と電流抽出部17によって抽出された各相電流Iu,Iv,Iwとに基づいて、PWM生成部16に出力するDUTY指令値を生成するようにした。したがって、必要となる電流センサの数を削減してDCDCコンバータ20を小型に構成できる。
また、電流抽出部17は、各相PWM信号のDUTYが66%に達する直前までは、前記各相PWM信号パルスの発生起点をトリガとするタイミングでそれぞれ検出電流をサンプリングして、各相電流Iu,Iv,Iwを即値で取得する。したがって、各相電流Iu,Iv,Iwを容易に取得できる。
また、電流抽出部17は、DUTYが33%を超えて、且つ100%に達する直前までは、各相PWM信号の起点間の中間位相のそれぞれで検出電流をサンプリングし、サンプリングした電流値を演算することで、各相電流Iu,Iv,Iwを取得する。したがって、各相のPWM信号パルスがオーバーラップする期間がある場合でも、各相電流を演算により取得できる。
この場合、電流抽出部17は、DUTYが33%を超えて、且つ66%に達する直前の範囲よりも狭い範囲内に、各相電流を即値で取得する第1パターンより、演算して取得する第2パターンに移行するDUTY区間を設定し、そのDUTY区間内では、第1パターンで取得した各相リアクトル電流と、第2パターンで取得した各相リアクトル電流との加重平均値を求めるようにした。したがって、スイッチングの遅れやデッドタイム,回路定数などのばらつきの影響により、第1,第2夫々のパターンで取得される電流値にずれがある場合でも、制御の信頼性を向上させることができる。
また、電流抽出部17は、DUTYが66%を超えて、且つ100%に達するまでは、各相PWM信号の起点をトリガとするタイミングでそれぞれ検出電流をサンプリングし、サンプリングした電流値の合計を、1/9を乗じた値を各相電流とする。したがって、DUTYが大きい領域での各相電流を簡単に取得できる。
そして、DUTYリミット部15は、電流制御部14により生成された各相のPWM指令値について、最大,中間,最小となる指令値を特定し、最大指令値,最小指令値と前記中間指令値との差をそれぞれ得ると、前記差の値が、予め定めた相差リミットを超えていれば、中間指令値に相差リミットを加算及び/又は減算した値にPWM指令値を制限してPWM生成部16に出力する。これにより、3相電流が確実に検出可能となる。
また、スイッチング回路3により昇圧制御を行うため、平均的なオンDUTYについては、上側IGBT5の方が下側IGBT5よりも大きくなっている。したがって、電流センサ10を出力電源線7側に配置することで、電流を検出するための機会をより多くすることができる。
(第2実施形態)
図18ないし図22は第2実施形態であり、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異な部分について説明する。第2実施形態では、スイッチング回路が2相構成である場合を示す。すなわち、第2実施形態のDCDCコンバータ21は、DCDCコンバータ20における3相のスイッチング回路3を2相のスイッチング回路22(2相ブリッジ回路)に置き換え、3相リアクトル2U,2V,2Wを2相リアクトル2U,2Vにしている。また、制御部23は制御部12に替わるものである。
図19に示す制御部23の内部構成については、電圧制御部13を除いて、各信号を2相で扱う電流制御部24(PWM指令値生成手段),DUTYリミット部25,PWM生成部26(PWM信号生成手段),電流抽出部27(電流分離抽出手段)に置き換えられている。
次に、第2実施形態の作用について図20ないし図22を参照して説明する。単一の電流センサ10によって2相電流Iu,Ivを抽出する場合は、図20のタイミングチャートに示すように、生成するPWM信号の制御周波数の2倍となる周波数の三角波キャリアを設定する。そして、2倍キャリア振幅の山,谷に区切られた区間により、制御周期は4つの区間に分割される。また、上記の山,谷に同期した4つの電流検出タイミングI1〜I4で検出電流をサンプリングする。U,V各相のPWMパルスの発生起点は、上記タイミングI2,I4となる。
図20に示すように、各相のDUTYが50%未満であれば、2相PWMパルスの発生起点,すなわちタイミングI2,I4でそれぞれ検出電流をサンプリングすれば(1制御周期で2回)、各相の電流を抽出できる。図21は、DUTYがより大きい場合のタイミングチャートである。2相の場合は、DUTYが100%未満であれば、各相の電流が即値で検出できるため、検出方式を図20の場合と変える必要はない。尚、2相の合計電流は、各相DUTYが50%以上の場合は、タイミングI1,I3での電流をサンプリングすることで検出可能である。
このような検出ルールに基づく場合、DUTYによる検出方法をまとめると図22となり、単独電流を検出する方式をDUTY100%未満まで採用するとともに、100%付近のみ2相合計電流を検出する方式を加えることが望ましい。すなわち、第2実施形態のようにスイッチング回路22が2相構成の場合は、第1実施形態における<電流検出パターン1,3>に対応する2パターンのみとなる。
DUTYリミット部25の動作であるが、3相DCDCコンバータ20の際に説明した“相差リミット”は不要となる。単独電流の検出がDUTY100%未満まで可能であるため、2相間にDUTY差があっても、それぞれが100%未満であれば各相電流を個別に検出できるからである。このため、DUTYリミット部25の動作としては、下側DUTYを100%以下(上側DUTYを0%以上)とする最小リミット動作のみとなる。
PWMのシフトについては、2相の場合は、図20,図21で示したように180度位相差を持たせる必要があるが、この場合は、3相の場合と同様に出力するPWM周波数の2倍の周波数の三角波キャリアに基づきDUTYを設定すれば良い。
以上のように第2実施形態によれば、2相構成のDCDCコンバータ21についても、1つの電流センサで各相の電流を検出できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
IGBT5と平滑コンデンサ8との間の出力電源線7側に電流センサを設けたが、これに替えて基準電源線6側に電流センサを設けても良い。
電流検出パターン1,2の切り替えについては、必ずしも加重平均を求める必要はなく、例えば双方の検出パターンが重複している領域内に設定した閾値に応じてパターン1からパターン2に切り替えても良い。
スイッチング素子は、IGBTに限ることなく、バイポーラトランジスタやMOSFETを用いても良い。
PWM生成部をハードロジックで構成しても良い。
DUTYを制限する構成については、必要に応じて設ければ良い。
4相以上のブリッジ回路を備えるDCDCコンバータに適用しても良い。
図面中、1はバッテリ電源(直流電源)、2はリアクトル、3はスイッチング回路(N相ブリッジ回路)、5はIGBT(スイッチング素子)、8は平滑コンデンサ、10は電流センサ、14は電流制御部(PWM指令値生成手段)、15はDUTYリミット部(PWM指令値制限手段)、16はPWM生成部(PWM信号生成手段)、17は電流抽出部(電流分離抽出手段)、20,21はDCDCコンバータ、22はスイッチング回路(2相ブリッジ回路)、24は電流制御部(PWM指令値生成手段)、26はPWM生成部(PWM信号生成手段)、27は電流抽出部(電流分離抽出手段)を示す。

Claims (10)

  1. 複数のスイッチング素子をN(Nは3以上の自然数)相ブリッジ接続して構成されたN相ブリッジ回路を備え、前記複数のスイッチング素子をスイッチング制御することで入力される直流電源電圧を変圧して出力するDCDCコンバータにおいて、
    前記直流電源と、前記N相ブリッジ回路の各相入力端子との間に接続されるN相リアクトルと、
    前記N相ブリッジ回路の出力端子間に接続される平滑コンデンサと、
    前記N相ブリッジ回路の出力端子の何れか一方と前記平滑コンデンサとの間に配置される単一の電流センサと、
    前記N相ブリッジ回路を構成する各スイッチング素子に、N相PWM(Pulse Width Modulation)信号を出力するため、前記PWM信号の制御周波数のN倍の周波数となるキャリアを用い、前記PWM信号の制御周期をN等分した区間の中心位相を、各相PWM信号のパルスを発生させる起点とし、前記パルスの幅をそれぞれの起点より両位相方向に増加させて前記N相PWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
    前記電流センサによって検出される電流(以下、検出電流と称す)を、前記PWM信号の1制御周期内に、前記キャリアに同期したタイミングで複数回サンプリングして得られた値から、前記N相リアクトルのそれぞれに個別に流れる電流を分離して抽出する電流分離抽出手段と、
    電流指令値と、前記電流分離抽出手段によって抽出された各相リアクトル電流とに基づいて、前記PWM信号生成手段に出力するPWM指令値を生成するPWM指令値生成手段とを備えることを特徴とするDCDCコンバータ。
  2. 前記電流分離抽出手段は、前記各相PWM信号のDUTYが200/N%に達する直前までは、前記各相PWM信号の起点をトリガとするタイミングでそれぞれ前記検出電流をサンプリングすることで、各相リアクトル電流を即値で取得することを特徴とする請求項1記載のDCDCコンバータ。
  3. 前記電流分離抽出手段は、前記DUTYが100/N%を超えて、且つ100%に達する直前までは、前記各相PWM信号の起点間の中間位相のそれぞれで前記検出電流をサンプリングし、サンプリングした電流値を演算することで、各相リアクトル電流を取得することを特徴とする請求項1又は2記載のDCDCコンバータ。
  4. 前記電流分離抽出手段は、前記DUTYが100/N%を超えて、且つ200/N%に達する直前の範囲よりも狭い範囲内に、前記各相リアクトル電流を即値で取得する第1パターンより、演算して取得する第2パターンに移行する猶予領域を設定し、
    前記猶予領域内では、前記第1パターンで取得した各相リアクトル電流と、前記第2パターンで取得した各相リアクトル電流との加重平均値を求めることを特徴とする請求項3記載のDCDCコンバータ。
  5. 前記電流分離抽出手段は、前記DUTYが200/N%を超えて、且つ100%に達するまでは、前記各相PWM信号の起点をトリガとするタイミングでそれぞれ前記検出電流をサンプリングし、サンプリングした電流値の合計を、1/Nを乗じた値を各相リアクトル電流とすることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載のDCDCコンバータ。
  6. 前記PWM指令値生成手段により生成された各相のPWM指令値について、最大,中間,最小となる指令値を特定し(以下、それぞれ最大指令値,中間指令値,最小指令値と称す)、
    前記最大指令値,前記最小指令値と前記中間指令値との差をそれぞれ得ると、前記差の値が、予め定めた制限値を超えていれば、前記中間指令値に前記制限値を加算及び/又は減算した値に前記PWM指令値を制限して前記PWM信号生成手段に出力するPWM指令値制限手段を備えることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のDCDCコンバータ。
  7. 4つのスイッチング素子を2相ブリッジ接続して構成された2相ブリッジ回路を備え、前記4つのスイッチング素子をスイッチング制御することで入力される直流電源電圧を昇圧して出力するDCDCコンバータにおいて、
    前記直流電源と、前記2相ブリッジ回路の各相入力端子との間に接続される2相リアクトルと、
    前記2相ブリッジ回路の出力端子間に接続される平滑コンデンサと、
    前記2相ブリッジ回路の出力端子の何れか一方と前記平滑コンデンサとの間に配置される単一の電流センサと、
    前記2相ブリッジ回路を構成する各スイッチング素子に、2相PWM(Pulse Width Modulation)信号を出力するため、前記PWM信号の制御周波数の2倍の周波数となるキャリアを用い、前記PWM信号の制御周期を2等分した区間の中心位相を、各相PWM信号のパルスを発生させる起点とし、前記パルスの幅をそれぞれの起点より両位相方向に増加させて前記2相PWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
    前記電流センサによって検出される電流(以下、検出電流と称す)を、前記PWM信号の1制御周期内に、前記キャリアに同期したタイミングで複数回サンプリングして得られた値から、前記2相リアクトルのそれぞれに個別に流れる電流を分離して抽出する電流分離抽出手段と、
    電流指令値と、前記電流分離抽出手段によって抽出された各相リアクトル電流とに基づいて、前記PWM信号生成手段に出力するPWM指令値を生成するPWM指令値生成手段とを備えることを特徴とするDCDCコンバータ。
  8. 前記電流分離抽出手段は、前記各相PWM信号のDUTYが100%を超えるまでは、前記各相PWM信号の起点をトリガとするタイミングでそれぞれ前記検出電流をサンプリングすることで、各相リアクトル電流を即値で取得することを特徴とする請求項7記載のDCDCコンバータ。
  9. 前記電流分離抽出手段は、前記DUTYが50%を超えて、且つ100%に達するまでは、前記各相PWM信号の起点をトリガとするタイミングでそれぞれ前記検出電流をサンプリングし、サンプリングした電流値の合計に、1/4を乗じた値を各相リアクトル電流とすることを特徴とする請求項7又は8記載のDCDCコンバータ。
  10. 前記電流センサを、前記ブリッジ回路の上側,下側アームを構成するスイッチング素子のうち、平均的なオン時間が長い方のアーム側の出力端子に配置することを特徴とする請求項1ないし9の何れかに記載のDCDCコンバータ。
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