古くから食パンや菓子パン等のパン作りは、温度管理が難しいイースト菌を必要とすること、捏ねを十分に行わなければ出来映えの良いものが得られず業務用の製パン器に頼っていた。
例えば、パン作りの一連の工程は、先ず、水を始めとして小麦粉、塩、砂糖、スキムミルク、ショートニングのミックス粉と、ドライイーストを水に触れないようにしてパンケース内に投入した後、それぞれの材料を十分に混合する捏ね工程と、その後捏ね上った生地を休めて25〜32度程度に加温して発酵させて膨らませる一次発酵工程と、その後、生地を僅かの時間捏ねて生地中の余分なガス(気泡)を抜くガス抜き工程と、その後生地内に残ったガスをつぶさないようにして成形する生地丸め工程と、さらにその後、生地を1時間程度休ませて発酵させる二次発酵工程と、その後160〜180度で焼く焼成工程とから構成されており、これらの工程を順序よく進めなければならない。
そこで、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて自動的に実行して、一般家庭で手軽にパンを焼くことができる自動製パン器が世の中に普及してきている(例えば、特許文献1参照)。
図9は特許文献1に記載された自動製パン器のレーズン入り食パンの調理工程図である。図9に示すように、従来の自動製パン器はパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程をマイクロコンピュータのプログラムに基づいて自動的に実行するようになっていて、一般家庭で手軽にパンを焼くことができるようになっている。
また、低コストで取り扱いが簡単な製パン機能付き炊飯器も考えられた(例えば、特許文献2参照)。
図10は特許文献2に記載された製パン機能付き炊飯器の炊飯時の状態を示す断面図である。
図10に示すように、従来の製パン機能付き炊飯器によれば、容器1は加熱室2内に着脱自在に設けられ、容器1の開口部は内蓋3によって選択的に塞ぐことが可能となり、練り羽根4はモータと制御部とによって選択的に回転される。そのため、内蓋3を付すことで容器1を密封して炊飯を行うことができ、内蓋3を取り外した状態で練り羽根4を回転させて製パンを行うことができる。従って、容器1を共通にして炊飯と製パンを行うことができるので、コスト的に有利である。また、容器1を加熱室2から取り外して洗浄作業、洗米を入れる作業などを行うことができるとともに、容器1を加熱室2に入れるだけで係合部を介して練り羽根4とモータとの連結が行われるので、取り扱いが簡単である。
さらに、近年、食生活の欧米化、消費者の嗜好の変化等により米の消費量が低迷してきていることから、この低迷に歯止めをかけ、より米の消費量の増大を図る取り組みが推進されている。その推進策として、米を主原料としたこれまでの加工食品、例えば餅、煎餅、団子等以外にも広げるべく、米を主原料にした製パン技術が開発され、米粉パンが市販
されている。この米粉パンは、小麦粉パンに比べて、多糖類の含有量が多く、しっとりした良好な感触と自然な甘味が得られ、また餅のように喉に詰まる恐れが少なく、更に少量を食するだけで満腹感が得られることから、消費者間で人気を博しており、更にまた、小麦粉を混入しない米粉パンは小麦アレルギーを持つ消費者にとって待望された食材となってきている。
そこで、より簡易に米粉パンができるように、米粉を入手しなくても、自動製パン器で、家庭にある米をそのまま粉砕してパンにする装置が考えられた(例えば、特許文献3参照)。
図11は特許文献3に記載された従来の生地製造器の断面図、図12は加熱調理食品生地製造工程の全体フローチャートである。
図12に示すように、加熱調理食品生地製造方法は、所定量の穀物粒と所定量の液体の混合物の中で粉砕ブレードを回転させて穀物粒を粉砕する粉砕工程#20と、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料を練りブレードで生地に練り上げる練り工程#30からなる。
そして、穀物粒からパン用の生地を製造するときは、図10に示すように生地製造器11を次のように用いる。蓋12を外し、容器13の中に所定量の穀物粒と所定量の液体を入れた後、再び蓋12を嵌め込んで、粉砕前含浸工程#10を実行する。粉砕前含浸工程#10の間、加熱手段14で容器を加熱し、液体(この場合は水)の温度を上げると含浸が進む。粉砕前含浸工程の最初でブレード15を回転させ、その後も時々ブレード15を回転させて穀物粒の表面に傷をつけると、穀物粒の吸液が促され、含浸を早く完了させることができる。
粉砕工程#20に入ったらブレード15を高速回転させ、穀物粒を粉砕する。これにより、粉砕穀物粒と液体の混合物からなる生地原料が形成される。練り工程#30ではブレード15を低速回転させ、生地原料を捏ねて一つにつながった生地を練り上げる。
練り工程#30の冒頭で蓋12を開け、所定量のグルテンと、必要に応じ所定量の調味材料を生地原料に投入する。蓋12を閉じ、ブレード15を低速回転させて、生地原料及びそれに投入されたグルテンや調味材料を混練する。この過程で生地の温度が上昇するので、後に投入される発泡誘起材料がドライイーストである場合には、適当なタイミングで冷却手段16により容器11を冷却し、中の生地を冷やす。なお冷却の場合も加熱の場合も、容器11の温度を温度センサ17で監視し、正確な温度が得られるようにする。
発泡誘起材料を投入する時機になったら、蓋12を開けて生地に所定量の発泡誘起材料を投入する。蓋12を閉め、ブレード15を低速回転させて生地と発泡誘起材料を混練し、生地を完成させる。
その後、生地を容器11から取り出して、あるいは生地を容器11に入れたままで、生地の発泡が進むのを待つ。所望の発泡を得られたら生地をパン焼き装置に入れ、パンを焼く。
このように、同一の容器11内で粉砕前含浸工程#10から練り工程#30まで進行させることにより、ある工程から他の工程に移行する際に内容物を別の容器に移し替える必要がなく、時間を短縮できる。また、穀物粒や生地原料の一部が前の工程で使用した容器の内面に残り、少しずつ目減りするという問題もなくなる。
第1の発明は、被調理材を収容する容器と、前記容器の周囲に配設し前記容器を加熱する加熱手段と、前記容器内の被調理材を撹拌する撹拌手段と、前記被調理材の温度を直接的或いは間接的に検出する温度検出手段と、操作条件を設定する操作部と、前記操作部で設定された条件と、前記温度検出手段で検出された前記被調理材の温度に基づき、前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御し前記被調理材の混合から焼成までを自動的に行う制御手段とを備え、少なくとも前記被調理材の一部に吸水した米澱粉分子が前記加熱手段および前記撹拌手段を駆動制御することにより加熱制御されることによって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製するようにし、前記米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合するようにした自動製パン器を提供する。
これによれば、被調理材の一部に吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合した米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パン工程を有するようにしてあるので、米を被調理材としたパンにおいて、生米を米粉に粉砕する必要がないため、静音化や低振動化が図れるようになる。また、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合することで製パン性能に悪影響を及ぼす心配もなく、簡単に米を使ったおいしいパンができるようになる。
すなわち、粉砕ブレードによって粉砕された粉砕米粉とその他の被調理材に米粉などのグルテンを含まない被調理材を用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しいが、吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合した米ペーストを作製し、その米ペーストを用いてパン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン器で一貫して行うことで、膨らみが安定した生米から作製するパンができるようになる。
また、グルテンを用いない場合には糊化した澱粉を含む米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合した米ペーストを用いることで、発酵の際に気泡の成長に寄与することで生地の膨らみを促進し、グルテンを用いる場合には糊化した澱粉がグルテンと相互作用し合うことでネットワークを形成し、生地の膨らみと形状の保持に対し非常に良好な影響を及ぼす。
さらに、米澱粉の糊化度を調整するために加熱することで米の甘味成分や旨み成分を生成され、出来上がったパンはマルトース含有量が多くなるために、しっとりした良好な感触と自然な甘味が得られ、砂糖の使用量を減らしたりそのまま食べても非常に美味しく食することが出来、日持ちの良いパンとなる。
第2の発明は、特に、第1の発明の米澱粉と水をあらかじめ指定された分量を投入することで、発酵前の米ペーストの状態を一定に管理し発酵時の生地の膨らみを安定化させることができる。
すなわち、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合した米ペーストは、発酵の際に気泡の成長を促す作用と気泡を生地内部に閉じ込める作用を併せ持ち、相互作用よって生地の膨らみを促進し、生地の膨らみと形状の保持に対し非常に良好な影響を及ぼす。
第3の発明は、特に、第1または2の発明の被調理材と容器近傍を冷却する冷却手段を配設した自動製パン器とすることにより、吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストの温度が発酵前の生地の練りに適する温度に冷却するようにした構成としている。
米ペーストを作製するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜冷却手段を作動することで、加熱して米澱粉の糊化度を調整するときにその熱でイースト菌が死滅しないようにしたり、米ペーストを冷ます時間の短縮を図ることが出来るようになる。また、米ペーストの水分を蒸発させることで米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合することができる。つまり、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストから製パンするときの温度調節をすることが出来、より米澱粉の糊化度を調整した米ペーストから作製する米パンの製パン性能を向上させることができるようになる。
ここで、冷却手段は、前記容器に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストを作成してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした構成としてあるので、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストの温度を適正な温度に素早く下げるとともに米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように調整することが出来、製パン性の向上と製パンにかかる時間の短縮を図ることが出来るようになる。
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の被調理材として小麦グルテンと米粉と小麦粉を添加することなくパンを作製する工程を有し、前記米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製した後に、ドライイーストを自動で投入することで、パン生地に適した粒残りの無い米ペーストが均等に混ざり合った後にドライイーストを生地に混ぜ込むことが可能となり、小麦グルテンと米粉と小麦粉を添加しないかつ米ペーストを自動で作製するパンにおいて、従来に無い製パン性能を確保することができるとともに製パンのばらつきを少なくすることができる。
すなわち、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストに含まれている糊化した澱粉と糊化していない澱粉が均等に混ざり合うことで、生地の伸びと強度を両立するパン生地のベースとなる状態(糊化澱粉と非糊化澱粉のネットワーク)が作製される。さらに、ドライイーストを均等に混ぜ込むことで糊化澱粉と非糊化澱粉のネットワーク中にドライイーストが入り込み、発酵によって生成する炭酸ガスがネットワークの隙間に気泡を形成し生地が膨らむ。従来は、粉砕ブレードを回転させて米粒を粉砕し微細米粉ペーストを作製しそこに米粉などを添加していたため、生地の伸びと強度が不足していることで製パン性(特に膨らみ)が十分ではなかった。
また、小麦グルテンを投入した時点では、米ペーストの温度が多少なりともばらついているため、米澱粉と小麦グルテンのネットワークを形成する過程で生地の状態を安定させた上で、ドライイーストを投入することで発酵状態が非常に安定したものになる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストは、生米から作製することにより使い勝手の良い自動製パン器とすることができる。
すなわち、ユーザーは米と水とパンの副材料をセットすれば製パン器が自動で米の吸水から糊化度の調整を行い、米ペーストまで作製するので、ユーザー側で糊化度の調整とい
う難しい作業を行う必要がなく非常に安定した米パンを作製することができる。
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の吸水した米澱粉分子が含む加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製する際の加熱温度は、50℃〜80℃とすることで、米の品種に応じて所望の糊化度が得られるとともに、同種の米でもユーザーが糊化度を選択することで好みに合わせた食味が得られる。
例えば、こしひかりなどの米種を選択した場合には60〜65℃で加熱され、その他選択した米種に合わせて自動で50℃〜80℃の範囲で加熱温度設定されるものである。また、こしひかりでも70℃で同時間加熱した場合には、糊化度が上昇するため食感と味が違ったパンが得られ、ユーザーの好みに合わせた製パンが可能となる。
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の米パンを自動で作製する工程の途中で水を添加することができる途中加水手段を備えているので、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合することで製パン性能に悪影響を及ぼす心配もなく、簡単に米を使ったおいしいパンができるようになる。
従来は気温や湿度を十分に管理することができず、雰囲気の状態によって米ペーストの糊化度や含水率、また生地におけるグルテンの形成状態にばらつきが生じることで、パンの出来上がりを安定させることが困難であった。米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合することで、糊化度や含水率を一定に調整することができ、パンの出来上がりを安定させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の制御ブロック図、図3は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の操作部の表示例図、図4は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを用いて作成するパンの工程図、図5は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを用いて作成するパンの工程のフロー図、図6は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の米ペーストの米澱粉と水の重量比の割合と製パン性能の関係を示したグラフ、図7は吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストとドライイーストのみを用いて作製したパンの製パン性能を示したグラフである。
図1、図2に示すように、本実施の形態における自動製パン器は、機器本体21内部に設けた焼成室22と、焼成室22内に着脱自在に収納され被調理材を収容する容器(焼成ケース)23が配設してある。この容器23内には被調理材を攪拌する撹拌手段の練り羽根24が設けてあり、製パン中または米澱粉の糊化度調整時において練り羽根24により被調理材を攪拌するようになっている。練り羽根24はモータ25によって駆動されるようになっており、かつ練り羽根に作用する被調理物の抵抗力をモータ25が検知し被調理物のせん断抵抗が分かるようになっている。つまり、米ペーストを作製する際にモータ25に作用するトルク値から米ペーストのせん断粘度に換算することができ、モータ25は、米ペーストのせん断粘度を検知する粘度検知手段である。
また、機器本体21の上部には開口部を覆う開閉自在な外蓋が設けてあり、焼成室22
内の下方の容器23の外周に位置して外周部より容器23を加熱する加熱手段26が設けてある。そして、容器23の温度を検知して被調理材の温度を間接的に検出する温度検出手段27が容器23に当接して設けてあり、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、機器本体21上部に配設した操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、制御手段である制御部29によって前記加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し前記被調理材の加熱あるいは混合から焼成までを自動的に行うようになっている。
なお、機器本体21の上部の外蓋の内部には、イースト菌を自動投入するイースト菌自動投入器30と、小麦粉などの粉を投入する粉自動投入器31と、具材を投入する具材自動投入器32が配設してあり、さらに、容器23の上部に位置し焼成室22に配設した吸い込み口33から吸引して該機器本体21外へ排出する冷却手段である送風ファン34が設けてあり、加熱して米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、所定のシーケンスで適宜送風ファン34を作動するようにしてある。換言すれば、冷却手段である送風ファン34は、被調理材と容器23近傍を冷却するものである。
また、粉自動投入器31には、粉が固まって落ちにくいので、粉自動投入器31に接して振動を与えて粉を落としやすいようにバイブレーター35が設けてあり、この粉自動投入器31は吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パン工程の米澱粉の糊化度を調整する加熱時に、一緒に炊くことのできない小麦粉や上新粉あるいは餅粉などの被調理材を後から投入する必要性があるものを、適切な投入時期に自動的に投入するものである。
さらに、該機器の雰囲気温度などの影響により温度検出手段27で検出された被調理材の温度が所定の温度より低いときは、加熱手段26で加熱するとともに、温度検出手段27で検出された被調理材の温度が所定の温度より高いときは、被調理材の発酵時間を短縮するなど、温度検出手段27で検出する温度によって調整するようにしてある。
そしてまた、図3に示すように、操作部28には、小麦粉を主とした従来のパンの工程と、吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パン工程を選択する工程選択手段36と表示部37が設けてあり、表示部37に工程毎の設定内容を表示し、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどのそれぞれの工程に共通のメニューと、上記工程の単独メニューを表示してメニュー選択手段38で選べるようになっている。
さらに、操作部28には、吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パン工程のときに、該機器で使用する米量を設定する米量設定手段39と、できあがりのパンにおける米の含有割合を変化させる割合選択手段40が設けてあり、米量設定手段39で設定された米の量と割合選択手段40で選択された含有割合に基づき、米以外の使用する前記被調理材の量を表示部37に表示するようになっている。
また、操作部28には、パン工程を開始させるスタートボタン41が配設してあり、上述の設定した条件で、パン工程を開始させるようになっている。
以上のように構成された自動製パン器について、それぞれの工程のパンの作成について説明する。
先ず、吸水した米澱粉分子が前記加熱手段および撹拌手段を駆動制御することにより加熱制御されることによって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように米ペーストを作製し、加熱制御される温度は酵素活性温度が設定され、その米ペーストを用いてパンを作製する代表的な米パン工程について説明する。
図4に示すように、はじめに操作部28で吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パン工程を選択して(ステップ201)、つぎに、米量設定手段39で該機器での米澱粉の糊化度を調整する米量を設定する(ステップ202)とともに、割合選択手段40でできあがりのパンの米の含有割合を選択する(ステップ203)。つぎに、表示部37に、例えば食パンやレーズンなどの具入りパンなどの共通のメニューあるいは米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作製する米パンの個別のメニュー(出来上がりの米パンの食味:甘い、しっとり感など)および米種を表示して(ステップ204)、メニュー選択手段38で選択する(ステップ205)。つぎに、選択された内容に基づき表示部37に必要な具材の量を表示して(ステップ206)、使用者が確認して容器23に水と米を所定量投入するとともに、イースト菌自動投入器30にイースト菌を、粉自動投入器31にグルテン、小麦粉等の粉品を、そして、具材自動投入器32に具材を所定量セットし(ステップ207)、準備が完了したら、スタートボタン41を押して、該機器の製パンを開始させる(ステップ208)。該機器は、操作部28で設定された設定内容に対応する所定のシーケンスで、温度検出手段27で検出された前記被調理材の温度に基づき、加熱手段26および練り羽根24を駆動制御し、米澱粉の糊化度調整、磨り潰し、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げを組み合わせて、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製しその米ペーストを用いてパンを作成する(ステップ209)。
ここで、米澱粉の糊化度調整(米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように調整)、磨り潰し、ねり、ねかせ、発酵、焼き上げの米澱粉の糊化度調整と製パンのフローは、図5に示すように、ステップ211で米澱粉の糊化度を調整する。このとき、練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、米澱粉の糊化度調整のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(糊化温度近傍、例えばこしひかりなどの米種を選択した場合には60〜65℃、選択した米種に合わせて自動で50℃〜80℃の範囲で加熱温度設定される)で加熱するようにしてある。また、生米の糊化度を調整しながら練り羽根24に作用する被調理物の抵抗力をモータ25が検知し被調理物のせん断抵抗が分かるようになっているため、せん断抵抗を検知しながら米ペーストにおける米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように加熱手段26と送風ファン34を制御する。米澱粉の糊化が進んでいない初期の段階ではせん断粘度は小さく、加熱するに従ってせん断粘度が大きくなっていくため、米ペーストの加熱状態における米の糊化度を判定しながら米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように、せん断抵抗を検知しつつ加熱手段26と送風ファン34を制御して米ペーストを最適な状態に保つようにしている。
図6は本発明の第1の実施の形態における自動製パン器の米ペーストの米澱粉と水の重量比の割合と製パン性能の関係を示したグラフである。
図6に示すように、米澱粉と水の重量割合が1:1〜1:1.5の時に膨らみと食味のバランスが最も良い結果となった。これは、米澱粉と水の重量割合が1:1よりも小さい時、すなわち水の方が米澱粉よりも小さい時には米ペースト生地の伸びが少ないため、醗酵時に発生する炭酸ガスを生地の膨らみに十分に利用することができていない。一方、米澱粉と水の重量割合が1:1.51〜1:2の時には膨らみが良くなるが、出来上がった
パンの含水率が高くべちゃついた食感になり美味しく感じられなくなっている。さらに、米澱粉と水の重量割合が1:2よりも大きい時には、膨らみはあまり変わらないが、出来上がったパンの含水率がさらに高くなり美味しく感じられない。
以上のことより、米澱粉と水の重量割合が1:1〜1:1.5の範囲とすることで、出来上がりのパンの膨らみと食味のバランスを良くすることができる。
送風ファン34を作動させると、容器23の上部の焼成室22内の米澱粉の糊化度調整中の蒸気を含む温度の高い空気を該機器本体21外へ排出する様になっており、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように混合するようになっている。
そして米澱粉の糊化度調整のための加熱が終了すると、ステップ212で練り羽根24で磨り潰し、ステップ213で粉自動投入器31から小麦粉等の粉を投入して、ステップ214で練りを行い米澱粉の糊化度を調整した米ペーストと小麦粉等の粉品を混ぜるとともに、ステップ212およびステップ214の間で、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内の米ペーストの蒸気を含む温度の高い空気を該機器本体21外へ排出して、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストをイースト菌の最も活動する温度に冷却していくようになっている。尚、ステップ213の小麦粉等の粉品を投入時には、送風ファン34の作動は停止して、送風ファン34の吸い込み口33に小麦粉等の粉品が入らないようにしてある。
つぎに、ステップ215で、イースト菌をイースト菌自動投入器30で自動投入するとともに、ステップ216で、具材自動投入器32でレーズン等の具材を投入したのち、ステップ217で、第3練りを行い、ステップ218、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストと小麦粉等の粉の混合物をねかし、そして、ステップ219で焼き上げる。さらにこのとき、ステップ217およびステップ218の間で、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内のパン生地の水分を含む温度の高い空気を該機器本体21外へ排出して、焼成中のパン生地の水分の微調整をおこなうようになっている。尚、ステップ215のイースト菌およびステップ216のレーズン等の具材を投入時には、送風ファン34を作動は停止して、送風ファン34の吸い込み口33にイースト菌およびレーズン等の具材が入らないようにしてある。
ステップ220で焼き上がったら完成となり、容器23から取り出して完了する。
そして、上述の吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように米ペーストを作製しその米ペーストを用いて作成したパンは、添加する小麦粉やグルテン等の添加する割合にもよるが、実験によれば、米と例えば小麦粉の割合が50%程度まであれば、小麦粉を主とした従来のパンの工程で作成したものとほぼ同等の膨らみが得られ、しっとりとした触感で、甘みが感じられよりおいしく感じられた。
該機器で吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストを被調理材として用いるので、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを別途準備する必要がなく手軽に米を主材料とするパンを作製することが出来る。
ここで、あらかじめ炊飯したごはんを使おうとすると、保管の状態、例えばラップをして冷蔵した場合や、冷凍したものを解凍した場合、室温で放置した場合など、さらには、炊飯した条件、例えば、炊飯器の性能ばらつき、早炊きなどの炊飯設定条件などでは、ごはんに含まれる水分量が変化して、製パンしたときに水分量のばらつきで、うまく膨らま
なかったり、べたっとしたものになったりする心配もある。例えば、ごはんに含まれる水分量は一般に約60%で、これがおかゆになると約85%、おもゆでは約90%、餅では約40〜45%、赤飯では約45〜48%となり炊き方でいろいろ変化し、これが、大気に放置されたり、冷凍することで、水分が飛んでしまい、水分量がばらついてしまう心配がある。特に、ごはんに含まれる水分量が冷ます状態で置かれ、赤飯程度の水分量になったとすると、ごはん160gに対し後者の乾燥したごはんだと145gとなり、水分量は15gも少なくなってしまう。また、ごはん160gに相当する米を水分量を多くしすぎて炊飯してしまい、例えば10%多めになると、ごはん170gになってしまい水分量は水分量は15gも多くなってしまう。そして、レシピでごはん200gを用いるとした場合に、乾燥したごはんでは水分量が約62g、水分が10%多めのごはんでは水分量が約82gとなり、水分量が20gも大きく変化して、これを同じ条件でパンにすると、膨らみが悪くなったり、練り不十分で不均一のものができ、パンのできの悪いものが出来てしまう心配があった。
しかしながら、被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように米ペーストを作製したものに、容器23に被調理材の残りを投入してパンを作成するようにしてあるので、製パンに適した米澱粉の糊化度調整条件で作成した米ペーストが得られ、できあがりが安定した米から作製するパンができるようになる。
尚、上述の米ペーストは、水分量の多い粥状のものでも、また、水分量の少ないおこわ状のものでもまた、普通のごはん同様の水分量のものでもよく、目的のパンに適した水分量となるように用いるようにすればよい。
さらに、吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストとドライイーストのみを用いたパンにおいては、小麦を用いていないので、小麦アレルギーの人でも食べられるようになるが、小麦に比べ、米粉は水を多量に含み、小麦パンが膨らむ要素のグルテンを有しておらず、グルテンの代替品を用いても膨らみにくいため、捏ね方や水分量など作り方が難しく、パン材料の捏ねから焼成までの種々の工程を自動製パン器で一貫して行うことで、できあがりが安定した米から作製するパンができるようになる。
図7は吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストとドライイーストのみを用いて作製したパンの製パン性能を示したグラフである。
図7に示すように、A従来の粉砕ブレードを回転させて米粒を粉砕する方式と、B従来の市販の米粉を用いる方式と、C米澱粉の糊化度を調整し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストを用いる本発明の方式との比較において、本発明の方式は従来の方式に比べて、「膨らみ」、「食味」とも上回っていることが分かる。これは、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストに含まれている糊化した澱粉と糊化していない澱粉が均等に混ざり合うことで、生地の伸びと強度を両立するパン生地のベースとなる状態(糊化澱粉と非糊化澱粉のネットワーク)が作製され、ドライイーストを均等に混ぜ込むことで糊化澱粉と非糊化澱粉のネットワーク中にドライイーストが入り込み、発酵によって生成する炭酸ガスがネットワークの隙間に気泡を形成し生地が十分に膨らむためである。また、米中には糖生成酵素が存在しているが、その酵素は米の外層部と内層部で温度依存性が異なる。先に溶液の温度の影響を受ける外層部の酵素群至適温度は40℃であり、内層部は60℃である。よって、米ペーストを作製する際に2段階の温度制
御を行って炊飯することによって、米が本来持っているアミラーゼが米の表層および内層へ順次作用して十分にデンプンの分解が起こり、ご飯の甘味成分を生成でき、甘味の強いパンを焼き上げることができる。また糖類が生成することでパンの日持ちも良くすることができる。
従来の方式では、粉砕ブレードを回転させて米粒を粉砕し微細米粉ペーストを作製しそこに米粉などを添加していたため、生地の伸びと強度が不足していることで製パン性(特に膨らみ)が十分ではない。また、米を加熱して粉砕ブレードを回転させると粘性が高くなることによってブレードが回転不能になるため、温度を上げることが出来ず、甘味の強いパンを焼き上げることが出来ない。
容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストを作製するときに、練り羽根24で被調理材を撹拌するようにした構成としてあるので、生米と水の状態で攪拌することで、生米の吸水を早く均一にすることができ、また、米澱粉の糊化度を調整する加熱中に攪拌することで、温度分布を平均にすることができ、更に製パン時の捏ねに適するように混ぜることができ、そして、製パンに適した条件で米澱粉の糊化度調整時間を短縮することが出来るとともに、次ステップの磨り潰しにスムーズに移行でき、磨り潰し時間を短縮することができるようになる。
また、容器23に被調理材の一部の生米と水を投入し吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストを作成するときに、生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(糊化温度近傍、例えばこしひかりなどの米種を選択した場合には60℃〜65℃、選択した米種に合わせて自動で50℃〜80℃の範囲で加熱温度設定される)で加熱するようにしてあるので、米澱粉の糊化度調整時の加熱量を小さくでき、該機器の機体温度の上昇を抑えることが出来るようになる。そして、冷却は必要となるが、製パン時に用いるイースト菌を該機器の機体内に保管することが容易にできるようになるとともに、米澱粉の糊化度調整時から製パンに至るときに必要な冷却期間を短縮することができる。ここで、製パン時に用いるイースト菌は、温度が27〜36℃でイーストが最も活動的になり、60℃以上で死滅するため、製パン時はパンを焼成する前までつまり、イースト菌の保管、捏ね、発酵期間は少なくとも常温に近い温度にしておかねばならず、米澱粉の糊化度調整時の加熱量を小さくすることで、イースト菌を冷却保管を容易にして、イースト菌の冷却手段を簡易とすることができ、イースト菌の温度管理が容易となり、できあがりが安定した米澱粉の糊化度を調整した米から作製するパンができるようになる。
このように、米澱粉の糊化度を調整する加熱中の攪拌と米澱粉の糊化度を調整する加熱中の温度を糊化温度近傍で加熱することを組み合わせてあるので、加熱時間を短縮化が図れるようになる。
また、被調理材あるいは容器23近傍を冷却する送風ファン34を配設してあるので、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作成するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜送風ファン34を作動することで、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製する加熱時にその熱でイースト菌が死滅しないようにするなどや、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを冷却する時間の短縮を図ることが出来るようになる。つまり、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストから製パンするときの温度調節をすることが出来、より米から作製するパンの製パン性能を向上させることができるようになる。
特に、パンをふくらませる働きをするイースト菌は、4℃以下になると活動が停止し60℃以上で死滅し、27℃〜30℃が活発に働く温度として、一次発酵に丁度よい温度で、再発酵(仕上げ発酵)させる時は35℃〜38℃とやや高めで発酵させるようになっており、温度管理が必要で、米澱粉の糊化度を調整した直後の米ペーストは温度が高いため、イースト菌を投入することが出来ない。
ここで、送風ファン34は、前記容器23に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製してから、イースト菌を投入するまでの間に作動させ、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストの温度がイースト菌の死滅する温度以下になるまで冷却するようにした構成としてあるので、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストの温度を適正な温度に素早く下げることが出来、製パン性の向上と製パンにかかる時間の短縮を図ることが出来るようになる。
また、送風ファン34は、前記容器23の上部に位置し焼成室22に配設した吸い込み口33から吸引して該機器本体21外へ排出する送風ファン34で構成してあるので、加熱手段で加熱された容器23および近傍の熱を効率よく排出すると同時に、容器23内の被調理材から生じる水分を取り去ることが出来、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストから製パンするときの温度調節や、水分調整をすることが出来るようになる。
例えば、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製するときから、焼成してパンに作り上げるときまで、適宜送風ファン34を作動することで、米澱粉の糊化度を調整する加熱時にその熱でイースト菌が死滅しないようにするなどや、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを冷ます時間の短縮、あるいは、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストの水分蒸発の促進を図ることが出来るようになる。つまり、米澱粉の糊化度を調整した米ペーストから製パンするときの温度調節や、水分調整をすることが出来、より米から作製するパンの製パン性能を向上させることができるようになる。
尚、吸い込み口33は、特に、撹拌手段で被調理材を撹拌するときに、被調理材の一部が飛沫となって飛び散るなど、周囲から米ペーストなどの異物が入らないように、金網やパンチングなどの遮蔽構造を配設した方が良く、上部から覆うように配設した上遮蔽板の内側に下方から覆うように配設した下遮蔽板を配設して迂回路を設けてもよい。
そして、生米と水を投入し米澱粉の糊化度を調整する加熱時の熱が容器23の上部に上がって高温となって、イースト菌などの前記被調理材の残りを投入するまでの間にイースト菌などが劣化・死滅する心配があるが、容器23に前記被調理材の一部の少なくとも生米と水を投入し米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製する間の一部あるいは全部の期間を作動させる構成としてあるので、加熱手段で加熱される容器23および近傍を冷却されて、結果、イースト菌などを劣化させないようにすることが出来るようになる。
そして、パンを作成する工程の磨り潰し、ねり、または、発酵、ねかし、そして、焼成の間の一部あるいは全部の期間に作動させる構成としてあるので、加熱手段と合わせて細やかな温度調整出来るようになるとともにパンを作成する工程時にパン生地の余分な水分を蒸発させて、水分調整ができるようになる。
ここで、米の澱粉粒は非常に小さく、小麦粉澱粉の約七分の一程度の粒径のため表面積が広く水分の吸収率が高い特徴があり、パンを作るにはグルテンがある程度は水を吸収することが必要なため、小麦粉だけに比べて米を用いた場合は水分量の多い生地を作成するようになる。しかしながら、水分が多すぎる生地は、発酵してもスポンジ状にならずに団子状となり、焼いても膨らみが悪く変形しやすく、べとついたパンになり易くなる心配があるが、送風ファン34を作動させて、パン生地の余分な水分を積極的に蒸発させること
で、水分調整ができ、製パン性の向上が図れる。
なお、本実施の形態においては、米澱粉の糊化度調整中には、送風ファン34を作動させて、容器23の上部の焼成室22内の米澱粉の糊化度調整中の蒸気を含む温度の高い空気を該機器本体21外へ排出する様にとしたが、これは、送風ファン34は加熱手段で容器23を加熱の開始当初の温度の低い期間は作動しないようにしてもよく、また、被調理材や容器23あるいはイースト菌の温度に対応して、送風ファン34の入り・切りや能力などの作動状態を調整するようにしてもよい。
また、吸水した米澱粉分子が加熱によって全てゲル状に変化しないように米澱粉の糊化度を調整した米ペーストを作製し、米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるようにした米ペーストを被調理材として用いてパンを作成する場合は、小麦粉を主とした被調理材を用いてパンを作成する場合より、パンの膨らみが少なく、また、作製した米ペーストの量や被調理材などの量を調整して、容器23のパンを作成したときのパンの体積が少なくて、容器23の上部まで達していないと、どうしても、パン焼成時のパン上面への熱の伝わり方が不十分となりやすい。そこで、容器23の上方にできあがるパンの天面を加熱する第2加熱手段26を配設するか、あるいは、容器23の上方に加熱手段26の熱を反射させる反射板を配設するようにしてもよい。
これによれば、パンの膨らみが十分でない場合でも、容器23の側面からの加熱に加えて、容器23の上方から加熱されるので、パン焼成時にパン上面が加熱されやすくなり、パン上面の焼きムラが低減されるようになる。
(実施の形態2)
図8は本発明の第2の実施の形態における自動製パン器の要部断面図を示したものである。
図8に示すように、本実施の形態における自動製パン器は、米パンを自動で作製する工程の途中で水を添加することができる途中加水手段である水タンク40と水経路41が新たに設けられている他は、実施の形態1に示す自動製パン器と同等の構成としており、実施の形態1と同一構成要素には同一符号を付与し、説明を省略する。
以上のように構成された自動製パン器について、それぞれの工程のパンの作成について説明する。
米澱粉の糊化度調整時に、練り羽根24で米と水をゆっくりと間欠的に撹拌するようにしてあるとともに、米澱粉の糊化度調整のための加熱温度は生米のでんぷんの糊化が始まるデンプン糊化温度(糊化温度近傍、例えばこしひかりなどの米種を選択した場合には60〜65℃、選択した米種に合わせて自動で50℃〜80℃の範囲で加熱温度設定される)で加熱するようにしてある。また、生米の糊化度を調整しながら練り羽根24に作用する被調理物の抵抗力をモータが検知し被調理物のせん断抵抗が分かるようになっているため、せん断抵抗を検知しながら米ペーストにおける米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように加熱手段26と送風ファン34を制御する。米澱粉の糊化が進んでいない初期の段階ではせん断粘度は小さく、加熱するに従ってせん断粘度が大きくなっていくため、米ペーストの加熱状態における米の糊化度を判定しながら米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように、せん断抵抗を検知しつつ加熱手段26と送風ファン34を制御して米ペーストを最適な状態に保つようにしている。
この時、加熱手段または送風ファンへの入力が大きくなって、所望のせん断粘度より大きくなり米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5の範囲外になった場合(米澱粉
の方が水よりも重量比が大きくなった場合)には、途中加水手段である水タンク40から水経路41を経て容器23に水が滴下される。そうすることによって、せん断粘度は小さくなり米ペーストを最適な状態に保つことができる。
また、従来は気温や湿度を十分に管理することができず、雰囲気の状態によって米ペーストの糊化度や含水率、また生地におけるグルテンの形成状態にばらつきが生じることで、パンの出来上がりを安定させることが困難であった。米澱粉と水の重量比の割合が1:1〜1:1.5となるように適宜水を滴下して混合することで、糊化度や含水率を一定に調整することができ、パンの出来上がりを安定させることができる。