JP2014052309A - 膜、基体及び細胞の採取方法 - Google Patents

膜、基体及び細胞の採取方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014052309A
JP2014052309A JP2012197591A JP2012197591A JP2014052309A JP 2014052309 A JP2014052309 A JP 2014052309A JP 2012197591 A JP2012197591 A JP 2012197591A JP 2012197591 A JP2012197591 A JP 2012197591A JP 2014052309 A JP2014052309 A JP 2014052309A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
cells
membrane
polymer
cancer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012197591A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6080035B2 (ja
Inventor
Toshishige Uehara
寿茂 上原
Ken Tanaka
賢 田中
Satomi Yagi
理美 八木
Takashi Hoshiba
隆志 干場
Kazuha Nikaido
万葉 二階堂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Yamagata University NUC
Showa Denko Materials Co Ltd
Original Assignee
Yamagata University NUC
Hitachi Chemical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Yamagata University NUC, Hitachi Chemical Co Ltd filed Critical Yamagata University NUC
Priority to JP2012197591A priority Critical patent/JP6080035B2/ja
Publication of JP2014052309A publication Critical patent/JP2014052309A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6080035B2 publication Critical patent/JP6080035B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】癌細胞を特異的に接着させることができる膜、上記の膜を備える基体及び細胞の採取方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを材料に含む膜、上記の膜を備える基体及び細胞の採取方法。
Figure 2014052309

[式中、Rは水素原子又はメチル基である。]
【選択図】なし

Description

本発明は、膜、基体及び細胞の採取方法に関する。
癌細胞濃縮の研究・臨床的意義は極めて大きく、血液中の癌細胞を濃縮することができれば、癌の診断に応用することができる。例えば、癌の予後および治療の最も重要な要因は、初診時および処置時における癌細胞の転移の有無である。癌細胞の初期の拡散が末梢血中に及んだ場合、血中循環癌細胞(Circulating Tumor Cell、以下、場合により「CTC」という。)を検出することは、癌の病状進行を判断する有用な手段である。
しかしながら、転移が始まった一般的な癌患者の場合、血液中100億個の血球細胞あたり、CTCはおよそ1個程度存在しているに過ぎない。これに対し、血液中には、赤血球や白血球等の血液成分が圧倒的に多く存在する。したがって、極低濃度のCTCを濃縮し、高感度、高効率及び高特異的に解析することは非常に困難である。例えば、磁気ビーズ、密度勾配遠心分離、マイクロ流路、フローサイトメータを用いた方法でCTCを濃縮する場合、煩雑な処理が必要であるうえ、回収率が悪い場合がある。
CTCを分離・濃縮する他の技術として、ポリカーボネートフィルターを用いた方法が提案されている(例えば、非特許文献1及び2を参照)。また、サイズの違いを利用してCTCを分離・濃縮する技術も提案されている(例えば、非特許文献3〜5及び特許文献1を参照)。
ところで、人工心肺等の医療用材料表面に血液が接触すると、補体系の活性化や血小板の活性化による血栓形成の誘発や溶血等の副作用が生じることが知られている。この問題を解決するために、所定の化合物で医療用材料表面を被覆することが有効であることが報告されている(例えば、特許文献2を参照)。
米国特許出願公開第2001/0019029号明細書 特開2004−161954号公報
Vona G, et al., "Enrichment, immunomorphological, and genetic characterization of fetal cells circulating in maternal blood", Am J Pathol. 160(1):51−8 (2002) Kahn HJ, et al., "Enumeration of circulating tumor cells in the blood of breast cancer patients after filtration enrichment: correlation with disease stage", Breast Cancer ResTreat;86(3):237−47 (2004) Wilding P, et al., "Integrated Cell Isolation and Polymerase Chain Reaction Analysis Using Silicon Microfilter Chambers", Anal Biochem. 257(2):95−100 (1998) Yuen PK, et al., "Microchip module for blood sample preparation and nucleic acid amplification reactions", Genome Res. 11(3):405−12 (2001) Mohamed H, et al., "Development of a rare cell fractionation device: application for cancer detection.", IEEE Trans Nanobioscience 3(4):251−6 (2004)
CTC等の癌細胞は、血液中の血球細胞、例えば赤血球や白血球、あるいは血小板等に比べてサイズが一回り大きい。したがって、理論的には、機械的濾過法を適用してこれらの血球成分を除去し、癌細胞を濃縮することが可能である。
しかしながら、非特許文献1及び2のメンブレンフィルターは、ランダムに分布する孔を含み、孔径が不均一なため、癌細胞の回収率が悪い場合があった。また、非特許文献3〜5及び特許文献1の、孔径や厚みが正確に制御されたフィルターであっても、正確に解析可能な精度で癌細胞を濃縮することは困難な場合があった。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、癌細胞を特異的に接着させることができる膜、及びこの膜を備える基体を提供することを目的とする。本発明はまた、上記の基体を用いて体液中の細胞を採取する方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記一般式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とするポリマーを材料に含むことを特徴とする膜を提供する。一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。
Figure 2014052309
上記本発明の膜は、その表面に癌細胞を特異的に接着させることができる。また、上記の膜は癌細胞の採取用膜として好適である。
上記のポリマーの数平均分子量は、10,000〜300,000であることが好ましい。数平均分子量がこの範囲であれば、ポリマーの取り扱いが容易な傾向にある。
本発明はまた、少なくとも表面の一部に上記の膜を備えることを特徴とする基体を提供する。上記本発明の基体によれば、サンプル中の癌細胞を効率よく採取することができる。
上記の基体は金属からなることが好ましい。また、金属は、銅、ニッケル、銅及びニッケルの合金並びにこれらの表面が金めっきされたものからなる群より選択されるものであることが好ましい。また、上記の基体は、電気鋳造法によって形成されたものであることが好ましい。
このような基体によれば、サンプル中の癌細胞を更に効率よく採取することができる。
本発明はまた、上記の基体を体液に接触させることにより体液中の細胞を基体に接着させるステップを含むことを特徴とする細胞の採取方法を提供する。
上記本発明の方法によれば、体液中の癌細胞を効率よく採取することができる。
上記の体液は、末梢血であることが好ましい。末梢血は容易に採取可能であるため、癌細胞を採取するサンプルとして使いやすい。
本発明により、癌細胞を特異的に接着させることができる膜、及びこの膜を備える基体を提供することができる。また、上記の基体を用いて体液中の細胞を採取する方法を提供することができる。
図1は、癌細胞採取用基体の一実施形態を示す概略図である。 図2は、実験例3の結果を示すグラフである。Aは、ポリマーで被覆したニッケル基体の結果であり、Bは、ポリマーで被覆したポリエチレンテレフタレート基体(陽性対照)の結果である。 図3は、実験例4の結果を示すグラフである。 図4は、実験例5の結果を示すグラフである。
従来、人工心肺等の医療用材料表面に血液が接触すると、補体系の活性化や血小板の活性化による血栓形成の誘発や溶血等の副作用が生じることが問題となっていた。これに対して、下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを含む膜で医療用材料表面を被覆すると、当該膜に血液が接触した場合の血球成分の接着性が低下し、血栓形成の誘発や溶血等の副作用が抑制されることが知られている。このような、血栓形成や溶血を抑制する性質のことを血液適合性、又は生体適合性という。
本発明者らは、下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを含む膜の表面の特徴を検討したところ、意外なことに、当該膜においては癌細胞の接着性が高いことを初めて見出し、本発明を完成した。
癌細胞の採取用膜は、下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを材料に含む。すなわち、下記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーは、癌細胞接着性向上用ポリマーとして使用することができる。
Figure 2014052309
上記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基である。上記のポリマーの数平均分子量は10,000〜300,000であることが好ましい。数平均分子量がこの範囲であれば、上記のポリマーは液状とならず、取り扱いが容易な傾向にある。また、数平均分子量が上記の範囲であれば通常のラジカル重合によって合成することができる。
上記のポリマーは、典型的には、下記一般式(2)で表されるモノマーの溶液に適切な開始剤を添加し、一般的な方法によって重合させることにより製造することができる。下記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基である。重合反応を行う温度は、40〜100℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、70〜80℃が更に好ましい。重合反応を行う圧力は常圧であることが好ましい。
Figure 2014052309
一実施形態において、癌細胞の採取用膜は、上記一般式(2)で表されるモノマーと他の重合可能なモノマーとのランダムコポリマー又はブロックコポリマー又はグラフトコポリマーを材料に含む。
上記一般式(2)で表されるモノマーと重合可能なモノマーとしては、アクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、n−ブチルアクリルアミド、i−ブチルアクリルアミド、ヘキシルアクリルアミド、ヘプチルアクリルアミド等のアルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等のN,N−ジアルキルアクリルアミド、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノイソプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート、ジアミノメチルアクリレート、ジアミノエチルアクリレート、ジアミノブチルアクリレート等のジアミノアルキルアクリレート、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド等のN,N−ジアルキルメタクリルアミド、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルメタクリレート、ジアミノメチルメタクリレート、ジアミノエチルメタクリレート等のジアミノアルキルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート等のアルキルメタクリレート、メトキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、プロピレン等が挙げられる。
上記一般式(2)で表されるモノマーと重合可能なモノマーは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルコキシ(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート及びプロピレンからなる群より選ばれる1種以上のモノマーであってもよい。
上記一般式(2)で表されるモノマー及び上記の重合可能なモノマーとのコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーのいずれでもよく、ランダム重合、イオン重合、マクロマーを利用した重合等の方法で製造できる。
上記一般式(2)で表されるモノマーと、上記の重合可能なモノマーとを共重合させる場合、上記一般式(2)で表されるモノマーは、コポリマー中の30〜99質量%であることが好ましく、50〜99質量%であることが更に好ましい。
上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーは、典型的には、上記一般式(2)で表されるモノマーの溶液に適切な開始剤、及び、場合により上記の重合可能な1種以上のモノマーを添加し、ランダム重合、イオン重合、光重合、マクロマーを利用した重合等の方法によって重合させることにより製造することができる。重合反応を行う温度は、40℃〜100℃が好ましく、60℃〜90℃がより好ましく、70℃〜80℃が更に好ましい。重合反応を行う圧力は常圧であることが好ましい。
重合反応において、溶媒としては、上記一般式(2)で表されるモノマー及び上記の重合可能なモノマーを溶解可能な溶媒を使用できる。このような溶媒は、例えば脂肪族又は芳香族の有機溶媒であり、より具体的には、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素が挙げられ、ジオキサン等のエーテル系溶媒が好ましい。
本発明は、上記のポリマーを材料に含む膜(以下、場合により「癌細胞採取用膜」という。)を提供する。この膜は、上記のポリマーを材料として一般的な製膜方法により形成することができる。例えば、上記のポリマーを溶媒に溶解させ、基体表面に塗布した後、溶媒を乾燥させることにより、膜を形成することができる。癌細胞採取用膜を癌細胞の採取に用いる所定形状の基体の表面に適用すると、当該膜が血液適合性を発揮するため、血液の接触時に血液成分の活性化が抑制でき、血球成分の基体への付着が抑制される。その一方、癌細胞採取用膜は、種々の癌細胞に対する接着性が良好なため、癌細胞を選択的に接着させることができる。
上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーは、分子内に極性基としてエーテル結合及びエステル結合を有するが、これらの極性基は窒素原子(アミノ基、イミノ基)やカルボキシル基等と異なり、生体成分と強い静電相互作用を持たない。また、大きな疎水性基を持たないため、疎水性相互作用も小さい。このため、上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーは、血液に対して活性が低く、優れた血液適合性を発現するものと推測される。
医療用材料表面と生体内組織や血液中のタンパク質との接触においては、タンパク質の吸着変性や活性化が起こらないことが好ましく、このためには、物質間に働く大きな相互作用である疎水性相互作用や静電的相互作用を小さくすることが有用であると考えられている。この点からも、癌細胞採取用膜の表面は好適な表面構造を備え得る。
また、癌細胞採取用膜の表面は、適度な親水性を有しているため、血液と接触した場合においても血小板の接着が軽微であり、優れた血液適合性を発現する。また、水酸基に起因した水素結合による生体成分との相互作用や吸着タンパク質の変性等も抑制されると考えられる。
癌細胞採取用膜、又は癌細胞採取用膜を表面に備える基体を、血液、リンパ、組織液、臍帯血等の体液に接触させることにより、赤血球、白血球、血小板等の血球成分やその他の細胞の接着が生じにくい一方で、癌細胞を選択的に接着することが可能となる。この機能の発現メカニズムについての詳細は明らかになっていないが、発明者らは、中間水の概念により説明できるものと推測している。
すなわち、癌細胞採取用膜の内部や表面部に存在する水には、(1)上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーと弱い相互作用をしており0℃で融解する自由水、(2)上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーと強い相互作用をしており−100℃でも凍結しない不凍水、(3)自由水と不凍水の中間的な相互作用をしており0℃より低温で凍結する中間水、の3種の形態が存在すると考えられる。正常な血球細胞は、癌細胞採取用膜の内部や表面部に存在している不凍水、中間水、自由水等と水和殻を持ち、この水和構造によって安定化しているが、中間水によって不凍水がカモフラージュされ、基体表面への接着が抑制されると考えられる。一方、癌細胞は、細胞表面の糖鎖の発現が正常細胞とは異なるので、正常な血球細胞と比較して、水和構造が乱れていると考えられる。これにより、癌細胞採取用膜表面の中間水の構造をかく乱し、癌細胞採取用膜表面への接着性が発現すると考えられる。
癌細胞採取用膜は、あらゆる種類の癌細胞に適用可能であるが、血管への浸潤を起こしやすい上皮性細胞由来の癌に適用することが好ましく、その中でもCTCが多いとされている、肺癌、大腸癌若しくは胃癌若しくは食道癌等の消化器癌、乳癌、前立腺癌に適用することが特に好ましい。
一実施形態において、癌細胞採取用膜は任意の基体の表面に設けることができ、癌細胞の採取に使用することが可能である。基体には貫通孔が存在しないことが好ましく、例えば、平滑な板状の形状であることが好ましい。
図1は、癌細胞採取用基体の一実施形態を示す概略図である。癌細胞採取用基体100は、基体110からなる。少なくとも面120の一部は癌細胞採取用膜で被覆されている。面120の表面に癌細胞が捕獲される。癌細胞採取用膜は、面120の全体を被覆していることが好ましい。面120とは反対側の面の一部若しくは全体は、癌細胞採取用膜で被覆されていてもよい。
基体の表面に癌細胞採取用膜を適用する方法としては、被覆が最も一般的である。被覆は、上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーの溶液を、浸漬法、スプレー法、スピンコート法等により基体表面に付着させた後、溶媒を除去(乾燥)することにより行われる。乾燥後の膜厚は、0.01μm〜1.0mmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましく、0.5〜50μmが更に好ましい。膜厚が0.01μm未満であると血球成分との非接着性や癌細胞との接着性が十分発現しない場合がある。また膜厚が1.0mmを超えるとこれらの接着特性のバランスが崩れる場合がある。
基体に癌細胞採取用膜をより強固に固定化させるために、癌細胞採取用膜を被覆した後、基体に熱を加えてもよい。また、上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーを架橋してもよい。架橋する方法として、予めポリマーの材料に架橋性モノマーを添加することが例示できる。架橋には、電子線、γ線、光照射を用いてもよい。
プラズマグラフト重合により基体の表面に上記一般式(1)で表される構造単位を含むポリマーの層(癌細胞採取用膜)を形成するには、約1.33〜1330Pa、より好ましくは6.65〜665Paの減圧下で、アルゴン、窒素、空気、種々のモノマー等の雰囲気下に低温プラズマを1〜300秒間、好ましくは2〜30秒間照射した後、上記一般式(2)で表されるモノマーを供給してプラズマ開始重合を行えばよい。
一実施形態において、基体の材質や形状は特に制限されることなく、例えば平滑な板、多孔質体、繊維、不織布、フィルム、シート、チューブを使うことができる。基体の材質としては、木綿、麻等の天然高分子、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン、ハロゲン化ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(メタ)アクリレート、ハロゲン化ポリオレフィンエチレン−ポリビニルアルコール共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等の合成高分子あるいはこれらの混合物が挙げられる。また、金属、セラミックス及びこれらの複合材料等も例示でき、複数の基体より構成されていてもよい。
金属としては、金、銀等の貴金属、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム等の卑金属、及びこれらの金属の合金並びにこれらの表面が金めっきされたものが例示できるがこれらに限定するものではない。金属は単体で用いてもよく、機能性を付与するために他の金属との合金又は金属の酸化物として用いてもよい。価格や入手の容易さの観点から、ニッケル、銅及びこれらを主成分とする金属を用いることが好ましい。ここで、主成分とは、上記基体を形成する材料のうち50重量%以上を占める成分をいう。
基体の厚さは3〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることが特に好ましい。基体の厚さが3μmより薄いと、強度が低下し、取り扱いが困難になる場合がある。また、基体の厚さが100μmを超えると、必要以上の材料を消費したり、加工に長時間かかったりするため、コスト的に不利になる場合がある。
続いて、本実施形態の癌細胞採取用基体の製造方法を説明する。癌細胞採取用基体の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば電気鋳造法(電鋳法)によって形成される。電気鋳造法とは、母型に厚い電気めっきを施した後に剥離する方法である。まず、ステンレス等からなる支持体上にめっきを行う。めっきの方法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどが挙げられる。めっき処理後、めっき層を支持体及び感光層から剥離すると、めっき層が得られる。上記の方法により、このめっき層の少なくとも一部を癌細胞採取用膜で被覆することにより、癌細胞採取用基体が得られる。
一実施形態において、本発明は、上記の癌細胞採取用基体を体液に接触させることにより体液中の細胞を基体に接着させるステップを含むことを特徴とする細胞の採取方法を提供する。CTC等の癌細胞を収集する体液としては、骨髄、脾臓、肝臓等にプールされている血液、リンパ、組織液、臍帯血等を利用することも可能であるが、体内を循環している末梢血を使うことが最も簡便である。末梢血中のCTCの存在を検出することは、癌の病状進行を判断する有用な手段である。
本実施形態の細胞の採取方法は、例えば上記の癌細胞採取用基体を流路内に組み込み、流路に末梢血を導入することにより実施することができる。癌細胞は、癌細胞採取用基体上の癌細胞採取用膜の表面に採取される。流路への血液の導入には、流路の入り口方向からの加圧を用いる方法、流路の出口方向からの減圧を用いる方法、ぺリスタルティックポンプを使用する方法等が例示できる。また、使用する癌細胞採取用基体の面積は、例えば1mLの血液からCTCを採取する場合、1〜10cmが適している。
上記の方法でCTCを採取した場合、CTCだけでなく白血球等の血球細胞も同時に採取される場合がある。このような場合には、採取された細胞に癌細胞が含まれているか否かを確認することが必要である。例えば、上記の方法でCTCを採取した後、蛍光標識された癌マーカーに対する抗体で染色し、癌細胞であることを確認することができる。癌マーカーに対する抗体としては、抗EpCAM抗体等が例示できる。
また、上記の方法で採取された細胞の遺伝子を解析することにより、癌細胞であることを確認することもできる。例えば、p53、K−RAS、H−RAS、N−RAS、BRAF、APC等の遺伝子における変異を解析し、癌細胞であることを確認できる。また、これらの遺伝子解析の結果は、その後の患者の治療方針の決定等にも利用することができる。あるいは、上記の方法で採取した細胞のテロメラーゼ活性等を測定することにより、癌細胞であることを確認することもできる。
上記の細胞の採取方法は、細胞に対するダメージが小さいため、採取された細胞を培養し、更に詳細な解析を行うこともできる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
(実験例1)
(ポリテトラヒドロフルフリルアクリレートの合成)
上記一般式(1)において、Rが水素である、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレートを合成した。具体的には、テトラヒドロフルフリルアクリレート15gを1,4−ジオキサン60g中でアゾビスイソブチロニトリル(0.1質量%)を開始剤として、窒素バブリングしながら75℃で10時間重合を行った。重合反応終了後、n−ヘキサンに滴下し沈殿させ、生成物を単離した。生成物をテトラヒドロフランに溶解し、さらにn−ヘキサンを用いて2回精製を行い、一昼夜減圧乾燥した。無色透明で高粘度のポリマーが得られた。収率は76%であった。得られたポリマーをゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により解析した結果、数平均分子量が23,000で、分子量分布(Mw/Mn)が3.3であった。
ポリマーの分子量は、下記GPCの測定条件にてポリスチレン換算分子量で算出した。
ポンプ:PU Intelligent HPLC Pump (Jasco製)
カラム:GPC K804(昭和電工製、Shodex)
溶離液:クロロホルム
測定温度:室温
流量:1.0mL/分
検出器:Jasco RI−1530型RI(Jasco製)
(実験例2)
(ニッケル基体の作製)
市販のチタン板上に、チタン板を陰極として電解ニッケルめっき用の電解浴(スルファミン酸ニッケル450g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/Lの水溶液、55℃)中に浸し、陽極を同電解浴中に浸した。両極に電圧をかけて10μm厚になるようにニッケルめっきを行い、ニッケル基体を作製した。
(実験例3)
(ニッケル基体の被覆及び確認)
実験例1で合成したポリマーをクロロホルムに溶解し、0〜1.0質量%の範囲で濃度の異なる複数のポリマー溶液を得た。各ポリマー溶液を、実験例2で作製したニッケル基体上に塗布(キャスト)し、溶媒を乾燥させて、ニッケル基体の表面を被覆(ニッケル基体の表面にポリマーの膜を形成)した。陽性対照として、ポリエチレンテレフタレート基体上に、40μLのポリマー溶液(ポリマーの濃度0.2wt/vol%)を塗布したものを使用した。これらの基体上で水の接触角を測定し、ポリマーで被覆されていることを確認した。接触角の測定には、接触角測定装置(エルマ、MODEL G−1−100)を使用した。純水2μlを各基体の表面に滴下し、30秒後の静的接触角を測定した。図2は、実験例3の結果を示すグラフである。横軸はポリマーの濃度を示し、縦軸は水の接触角を示す。図2中、Aはポリマーを被覆したニッケル基体の結果であり、Bはポリマーを被覆したポリエチレンテレフタレート基体(陽性対照)の結果である。
(実験例4)
(基体の準備)
実験例1で合成したポリマーを、クロロホルムに溶解し4質量%溶液を得た。この溶液を、実験例2で作製したニッケル基体上に塗布し、溶媒を乾燥させて、ニッケル基体の表面をポリマーで被覆し、実施例1のニッケル基体を作製した。X線光電子分光(島津製作所、ESCA−1000)により、ニッケル基体由来のニッケルのピークが観測されず、ポリマー由来の炭素と酸素のピークが検出されたことから、ニッケル基体がポリマーを含む膜で被覆されていることを確認した。また、実験例2で作製したニッケル基体を比較例1のニッケル基体として使用した。
(癌細胞の接着性試験)
実施例1及び比較例1のニッケル基体上に、血清を10%添加した培地で10,000個/mLに調整した癌細胞懸濁液1.0mLをピペットで滴下し、37℃で60分間静置した。癌細胞として、ヒト線維肉腫細胞株HT−1080を使用した。続いて、生理緩衝食塩水を用いてリンスし、基体表面に接着した細胞の数をカウントした。カウントを容易にするために、ホルムアルデヒドで細胞を固定化後、4,6−diamino−2−phenylindole(DAPI)で細胞核を染色した。細胞核の数を、共焦点レーザー顕微鏡(オリンパスFV−1000)を用いてカウントし、細胞の数とした。
図3は、実験例4の結果を示すグラフである。実験は5回ずつ行い、結果を平均値±標準偏差で示した。実施例1のニッケル基体は、比較例1のニッケル基体と比較して、接着した癌細胞数が向上した。多数の他の癌細胞においても同様の結果が確認された。
(実験例5)
(基体の準備)
実験例4と同様に、実施例1及び比較例1のニッケル基体を使用して実験を行った。
(血小板の接着性試験)
実施例1及びポリマー被覆を行わない比較例1のニッケル基体上に、クエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト新鮮多血小板血漿0.2mLをピペットで滴下し、37℃で60分間静置した。続いてリン酸緩衝溶液でリンスし、グルタルアルデヒドで固定した後、基体を走査型電子顕微鏡で観察し、1×10μmの面積に接着した血小板数をカウントした。
図4は、実験例5の結果を示すグラフである。実験は5回ずつ行い、結果を平均値±標準偏差で示した。実施例1のニッケル基体は、比較例1のニッケル基体と比較して、接着した血小板数が少ないことが示された。
実験例4及び5の結果から、ポリマーで被覆した実施例1のニッケル基体は、ポリマー被覆しない比較例1と比較して、癌細胞の接着性が向上しているにもかかわらず、血球成分の接着性は小さいことが明らかとなった。したがって、癌細胞採取用膜は、血液適合性を有しつつ癌細胞を選択的に接着可能であることが示された。また、癌細胞採取用膜を癌細胞採取用基体の表面に適用することにより、癌細胞の基体への接着性を高め、癌細胞の採取効率を向上させることができる。
100…癌細胞採取用基体、110…基体、120…面。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とするポリマーを材料に含むことを特徴とする膜。
    Figure 2014052309

    [式中、Rは水素原子又はメチル基である。]
  2. 前記ポリマーの数平均分子量が10,000〜300,000であることを特徴とする請求項1に記載の膜。
  3. 癌細胞の採取用であることを特徴とする請求項1又は2に記載の膜。
  4. 少なくとも表面の一部に請求項1〜3のいずれか一項に記載の膜を備えることを特徴とする基体。
  5. 金属からなることを特徴とする請求項4に記載の基体。
  6. 前記金属は、銅、ニッケル、銅及びニッケルの合金並びにこれらの表面が金めっきされたものからなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項5に記載の基体。
  7. 前記基体は、電気鋳造法によって形成されたものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の基体。
  8. 請求項4〜7のいずれか一項に記載の基体を体液に接触させることにより体液中の細胞を基体に接着させるステップを含むことを特徴とする細胞の採取方法。
  9. 前記体液は、末梢血であることを特徴とする請求項8に記載の細胞の採取方法。
JP2012197591A 2012-09-07 2012-09-07 膜、基体及び細胞の採取方法 Expired - Fee Related JP6080035B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012197591A JP6080035B2 (ja) 2012-09-07 2012-09-07 膜、基体及び細胞の採取方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012197591A JP6080035B2 (ja) 2012-09-07 2012-09-07 膜、基体及び細胞の採取方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014052309A true JP2014052309A (ja) 2014-03-20
JP6080035B2 JP6080035B2 (ja) 2017-02-15

Family

ID=50610897

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012197591A Expired - Fee Related JP6080035B2 (ja) 2012-09-07 2012-09-07 膜、基体及び細胞の採取方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6080035B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016052300A (ja) * 2014-09-03 2016-04-14 日立化成株式会社 生体物質捕獲システム
JP2017102038A (ja) * 2015-12-02 2017-06-08 国立大学法人山形大学 癌細胞接着剤及び癌細胞の検出方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001042526A (ja) * 1999-07-30 2001-02-16 Hitachi Chem Co Ltd 感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、感光性積層体及びフレキシブルプリント配線板の製造法
JP2002014466A (ja) * 2000-06-28 2002-01-18 Taiyo Ink Mfg Ltd 感光性樹脂組成物
JP2004161954A (ja) * 2002-11-15 2004-06-10 Terumo Corp 血液適合性高分子およびそれを用いた医療用器具
JP2007525642A (ja) * 2003-02-27 2007-09-06 イムニベスト・コーポレイション 循環腫瘍細胞(ctc):転移癌患者における増悪までの時間、生存および療法に対する応答の早期評価

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001042526A (ja) * 1999-07-30 2001-02-16 Hitachi Chem Co Ltd 感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメント、感光性積層体及びフレキシブルプリント配線板の製造法
JP2002014466A (ja) * 2000-06-28 2002-01-18 Taiyo Ink Mfg Ltd 感光性樹脂組成物
JP2004161954A (ja) * 2002-11-15 2004-06-10 Terumo Corp 血液適合性高分子およびそれを用いた医療用器具
JP2007525642A (ja) * 2003-02-27 2007-09-06 イムニベスト・コーポレイション 循環腫瘍細胞(ctc):転移癌患者における増悪までの時間、生存および療法に対する応答の早期評価

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016052300A (ja) * 2014-09-03 2016-04-14 日立化成株式会社 生体物質捕獲システム
JP2017102038A (ja) * 2015-12-02 2017-06-08 国立大学法人山形大学 癌細胞接着剤及び癌細胞の検出方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6080035B2 (ja) 2017-02-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5975532B2 (ja) 癌細胞接着性向上剤
Ku et al. Acoustic enrichment of extracellular vesicles from biological fluids
NL1038359C2 (en) Device and method for separation of circulating tumor cells.
US20220170913A1 (en) Method for Processing Blood Sample
JP6474540B2 (ja) 溶液から細胞を分離する細胞分離方法、細胞吸着用水和性組成物、および細胞分離システム
JP6518985B2 (ja) がん細胞捕捉方法
US8136676B2 (en) Polymers useful as medical materials
JP2016131561A (ja) 細胞を回収する方法、及びそれに用いられるポリマー
JP6080035B2 (ja) 膜、基体及び細胞の採取方法
JP6601768B2 (ja) 癌細胞接着剤及び癌細胞の検出方法
JP2017083247A (ja) 血液試料中に含まれる目的細胞の検出方法
JP7143678B2 (ja) 標的細胞を検出する方法
EP3490696B1 (en) Flow capture device for removing cells from blood
JPWO2003014394A1 (ja) 生体適合性評価法
WO2015133461A1 (ja) 生体物質の付着抑制能を有するイオンコンプレックス材料
JP5262708B2 (ja) mRNA捕捉用担体及びmRNAの精製方法
WO2023013410A1 (ja) 高分子組成物
JP7279542B2 (ja) 試料中に含まれる目的細胞の定量方法
Fu et al. Thermo-responsive bioseparation engineered for human leukocyte enrichment process driven by functionalized polypropylene bio-separators
JP2016106622A (ja) 細胞の分離回収方法
JP6686357B2 (ja) 細胞の回収方法
JP2016073324A (ja) 溶液から細胞を分離する細胞分離方法、および、細胞分取用水和性組成物
Sun et al. Precise Capture and Dynamic Release of Circulating Liver Cancer Cells with Dual‐histidine‐based Cell Imprinted Hydrogels
CN111500441A (zh) 细胞培养装置以及细胞培养方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150828

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150828

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160614

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160714

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161206

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170105

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6080035

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees