JP6686357B2 - 細胞の回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、細胞を含む溶液から前記細胞を効率的に回収する方法に関する。特に本発明は、前記溶液中に含まれる細胞量が非常に少ない場合であっても、前記細胞を効率的に回収可能な方法に関する。
近年、血液などの体液や、臓器などの組織を溶液に懸濁もしくは分散して得られる組織標本試料や細胞培養液などから細胞を選択的に分離回収し、当該分離回収した細胞を基礎研究や臨床診断、治療へ応用する研究が進められている。例えば、がん患者より採取した血液から腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、以下CTC)を採取し、当該細胞について形態学的分析、組織型分析や遺伝子分析を行ない、前記分析により得られた知見に基づき治療方針を判断する研究が進められている。
血液などの検体中に含まれる細胞を回収する方法として、細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に細胞を含む溶液を導入した後、誘電泳動力を用いて前記保持部に前記細胞を保持させることで細胞を回収する方法がある。特許文献1には、上部電極と、多数の貫通孔が形成された絶縁体層を設けた下部電極との間の空間に、微粒子を含む懸濁液を導入し、両電極間に交流電圧を印加することで、誘電泳動力により微粒子を貫通孔内に導入し固定する方法が開示されている。しかしながら、CTCのように血液中に含まれる量が非常に少ない希少細胞に対しては、特許文献1に開示の方法を用いても、効率的に細胞を回収するのは困難であった。
特開2007−296510号公報
本発明の課題は、細胞を含む溶液から前記細胞を回収する方法であって、前記溶液中に含まれる細胞量が非常に少ない場合であっても、効率的に細胞を回収可能な方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の第一の態様は、
細胞を含む溶液を、前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入する工程と、
前記保持部に前記細胞を保持させる工程とを含む、細胞の回収方法であって、
細胞を含む溶液が、血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質をさらに含む溶液である、前記回収方法である。
さらに本発明の第二の態様は、
細胞を含む溶液を、前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入する工程と、
前記保持部に前記細胞を保持させる工程と、
接着物質を含む溶液を前記細胞保持手段に導入することで、前記保持された細胞を前記保持部に接着させる工程とを含む、細胞の固定化方法であって、
細胞を含む溶液が、血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質をさらに含む溶液である、前記固定化方法である。
さらに本発明の第三の態様は、
細胞を含む溶液を、前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入する工程と、
前記保持部に前記細胞を保持させる工程と、
接着物質を含む溶液を前記細胞保持手段に導入することで、前記保持された細胞を前記保持部に接着させる工程と、
細胞固定試薬を含む細胞膜透過試薬を前記細胞保持手段に導入することで、前記保持部に接着した細胞を標本化する工程とを含む、細胞の標本化方法であって、
細胞を含む溶液が、血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質をさらに含む溶液である、前記標本化方法である。
また本発明の第四の態様は、細胞固定試薬を含む細胞膜透過試薬がエタノールとホルムアルデヒドとを少なくとも含む試薬である、前記第三の態様に記載の方法である。
また本発明の第五の態様は、接着物質を含む溶液がポリ−L−リジンを少なくとも含む溶液である、前記第二から第四の態様のいずれかに記載の方法である。
また本発明の第六の態様は、細胞を含む溶液が、糖をさらに含む溶液である、前記第一から第五の態様のいずれかに記載の方法である。
また本発明の第七の態様は、保持部に細胞を保持させる工程を、誘電泳動力を用いて行なう、前記第一から第六の態様のいずれかに記載の方法である。
また本発明の第八の態様は、細胞を含む溶液が親水性高分子を結合したタンパク質をさらに含む溶液であり、前記親水性高分子を結合したタンパク質が、当該タンパク質に対し親水性高分子を1.5以上のモル比で反応させて得られたタンパク質である、前記第一から第七の態様のいずれかに記載の方法である。
また本発明の第九の態様は、親水性高分子を結合したタンパク質が、親水性高分子を結合した血液由来タンパク質または親水性高分子を結合した乳由来タンパク質である、前記第一から第八の態様のいずれかに記載の方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法で分離回収する、細胞を含む溶液は、細胞を含む液状の組成物を意味する。具体的には、血液、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液、尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水などの生体試料や、肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、腫瘍、リンパ節などの組織の一片を懸濁させた液や、前記生体試料や前記組織懸濁液より分離して得られる、前記生体試料または前記組織由来の細胞を含む画分や、あらかじめ単離した細胞の培養液、などがあげられる。このうち前記生体試料や前記組織懸濁液より分離して得られる、前記生体試料または前記組織由来の細胞を含む画分の一例として、生体試料や組織懸濁液を密度勾配形成用媒体上に重層後、密度勾配遠心分離を行ない、得られる画分があげられる。
本発明は、細胞を含む溶液を、前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入した後、前記保持部に前記細胞を保持させることで細胞を回収する際、前記溶液に血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質がさらに含まれていることを特徴としている。血液由来タンパク質は水溶性タンパク質であればよく、一例として血清由来タンパク質や血漿由来タンパク質があげられ、さらに具体的な例として当業者が通常用いる血清由来タンパク質である、ウシ血清アルブミン(BSA)があげられる。乳由来タンパク質も水溶性タンパク質であればよく、具体的な例としては、当業者が通常用いる乳由来タンパク質であるカゼインがあげられる。また親水性高分子は電荷を持たない親水性高分子であればよく、一例としてポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシアルキル)メタクリレート、ポリアクリルアミド、ホスホリルコリン基を側鎖に有するポリマー、多糖類、ポリペプチドがあげられる。親水性高分子を結合したタンパク質は、親水性高分子とタンパク質とが一定の割合で結合したタンパク質であり、例えば、タンパク質と結合可能な官能基(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド基)を付与した親水性高分子とタンパク質とを一定のモル比で反応させることで得られる。親水性高分子を結合したタンパク質の一例として、親水性高分子を結合した血液由来タンパク質や親水性高分子を結合した乳由来タンパク質があげられる。なお親水性高分子とタンパク質との反応比は、タンパク質に対し親水性高分子を0.01以上のモル比で反応させればよく、1.5以上のモル比で反応させればより好ましく、2以上のモル比で反応させると最も好ましい(タンパク質に対し親水性高分子を2以上のモル比で反応させると、血液由来タンパク質の場合は前記タンパク質に対し親水性高分子が実測モル比1以上で結合し、乳由来タンパク質の場合は前記タンパク質に対し親水性高分子が実測モル比0.2以上で結合する)。また前記溶液に、マンニトール、グルコース、スクロースなどの糖をさらに含むと細胞へのダメージが少なくなるため好ましく、前記糖を含む溶液に塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどの電解質や、BSA等のタンパク質をさらに含んでもよい。添加する糖の濃度は等張液となる濃度とすればよく、糖としてマンニトールを用いる場合は終濃度で250mMから350mMの間とすればよい。
本発明の回収方法で用いる、細胞保持手段に設けた保持部の例として、細胞を収納可能な孔や、前記細胞を固定可能な材料(例えば、ポリ−L−リジン)で覆われた面があげられる。なお保持部の大きさを前記細胞を一つだけ保持可能な大きさとすると、特定細胞の採取および解析(形態学的分析、組織型分析、遺伝子分析など)が容易に行なえる点で好ましい。
本発明の回収方法において、細胞保持手段に設けた保持部へ細胞を保持させる方法に特に限定はなく、単に保持部に細胞を含む液体を導入するだけでもよいし、細胞を含む液体を導入した後、遠心力を利用して保持部へ強制的に細胞を導入させてもよい。また保持部を設けたスライドに細胞を含む液体を塗布することで前記細胞を前記保持部に保持させてもよい。中でも細胞を含む液体を導入した後、誘電泳動力を利用して保持部へ細胞を導入させると、細胞を保持部へ効率的に保持させることができる点で好ましい。誘電泳動力を用いた保持部への細胞の保持は、具体的には、交流電圧を印加することで誘電泳動を発生させ、保持部内へ細胞を導入すればよい。印加する交流電圧は、保持部内の細胞の充放電が周期的に繰り返される波形を有した交流電圧であると好ましく、周波数を100kHzから3MHzの間とし、電界強度を1×10から5×10V/mの間とすると特に好ましい(WO2011/149032号および特開2012−013549号公報参照)。
本発明の回収方法と、接着物質を含む溶液を細胞保持手段に導入する工程とを組み合わせることで、細胞保持手段に設けた保持部に保持された細胞を前記保持部に接着(固定)させることができる。接着物質は、細胞を構成する成分と特異的に結合可能な物質であれば、特に制限はなく、例えば、細胞表面特有の物質を認識する分子であるリガンド、レクチン、抗体などや、細胞の脂質二重膜に結合可能な脂質オレイル基を有するBiocompatible Anchor for Membrane(BAM)があげられる。中でも細胞表面と静電的に結合するポリ−L−リジンは、比較的短時間で細胞を構成する成分との結合が可能なため、好ましい。なお溶液へ添加するポリ−L−リジンの濃度を0.01(w/v)%以下とすると好ましい。接着物質を含む試薬による前記接着物質の保持部への修飾は、保持部へ細胞を導入する工程の前に行なってもよいし、保持部へ細胞を導入する工程の後に行なってもよい。保持部へ細胞を導入する工程の後に行なう場合は、細胞へのダメージを少なくするために、修飾処理を短時間で完了させた方がよい。具体的には接着物質がポリ−L−リジンの場合、処理時間は5分以内が好ましく、3分以内がより好ましい。
本発明の回収方法と、接着物質を含む溶液を細胞保持手段に導入する工程と、細胞固定試薬を含む細胞膜透過試薬を細胞保持手段に導入する工程とを組み合わせることで、細胞保持手段に設けた保持部に保持された細胞を標本化することができる。細胞膜透過試薬は細胞膜内部のタンパク質や核酸などを標識可能な状態となる試薬であればよく、一例として、エタノール、メタノールなどのアルコール類や、サポニン、Tween 20(商品名)、Triton X−100(商品名)、ジギトニンなどの界面活性剤があげられる。細胞固定試薬は細胞の持つタンパク質や形態、状態を固定保存可能な試薬であればよく、一例として、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどのアルデヒド類や、金属塩、有機溶媒系固定液があげられる。中でも、細胞膜透過試薬としてはエタノールが、細胞固定試薬としてはホルムアルデヒドが、それぞれ好ましい。細胞膜透過試薬としてエタノールを用いる場合、30%(v/v)以上のエタノールを含む試薬を用いればよいが、40%(v/v)以上のエタノールを含む試薬を用いると、接着した細胞が十分な透過性を有するため好ましい。また40から50%(v/v)のエタノールを含む試薬を用いると、接着した細胞が十分な透過性を有し、かつその後の細胞回収工程を容易に行なえる点でさらに好ましい(特願2014−238871号)。また細胞固定試薬としてホルムアルデヒドを用いる場合、0.1から5%(v/v)含むと好ましく、0.1から1%(v/v)含むと細胞膜内外タンパク質の架橋反応による抗原のマスキングが防止できる点でより好ましい(特願2014−238871号)。
本発明の方法で回収した細胞の測定は、保持部に保持された細胞を、例えば顕微鏡や光学検出器などで観察することで測定すればよい。
本発明の細胞回収方法で用いる細胞保持手段を備えた細胞回収装置の一例を図1に示す。図1に示す細胞回収装置100は、
貫通孔11aを有した平板状の遮光部材11と、貫通孔12aを有した平板状の絶縁体12と、導入口13a、排出口13bおよび貫通部13cを有した平板状のスペーサ13とからなる細胞導入保持手段10と、
細胞導入保持手段10を上下方向に密着して挟むよう設けた電極基板21・22と、
電極基板21・22同士を接続する導線30と、
電極基板21・22に信号を印加する信号発生器40と、
を備えている。遮光部材11が有する貫通孔11aと絶縁体12が有する貫通孔12aとは互いに同一の寸法および形状であり、かつそれぞれの貫通孔の位置が一致するよう遮光部材11および絶縁体12を設けている。貫通孔11a、貫通孔12aおよび遮光部材11の下部に密着して設けた電極基板21により保持部50が構成され、導入口13aから細胞を含む液体を導入すると、貫通部13cを通じて保持部50へ細胞が導入される。電極基板22はスペーサ13上部に密着して設けており、導入口13aから導入した、細胞を含む液体の飛散や蒸発を防止している。なお保持部50に保持した細胞の回収を容易にするため、電極基板22はスペーサ13から取り外し可能な構造となっている。
なお貫通孔11a・12aは直径30μm、深さ40μmであり、孔間隔50μmでアレイ状に配置されている。また遮光部材11はクロム膜で構成されており、スペーサ13の厚さは1mmである。
以下、本発明の標本化方法の一例として、血液中に含まれる腫瘍細胞(CTC)を標本化する方法について説明するが、本発明は本説明の内容に限定されるものではない。
(1)がんの疑いのある患者から血液から採取し、密度勾配遠心法を用いて、CTCを含むペレットを取得後、血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質(例えば、ポリエチレングリコールを結合したBSAやポリエチレングリコールを結合したカゼイン)を含む溶液を添加し、CTCを懸濁させる。血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質の濃度は、懸濁液でのタンパク質の終濃度として、0.01から25%(w/v)の間であればよく、0.02から5%(w/v)の間であればより好ましく、0.05から2%(w/v)の間であればさらに好ましい。
(2)(1)で調製したCTCを含む懸濁液を、図1に示した細胞回収装置100に備えた導入口13aから、信号発生器40から交流電圧を電極基板21・22へ印加した状態で導入することで、誘電泳動力により保持部50へCTCが保持させる。誘電泳動時、CTCを含む懸濁液の電気伝導度が高いと、交流電場印加の際に発熱し、溶媒内のCTCを含む粒子のブラウン運動が活発になるため、誘電泳動力によるCTC保持能が低下する。またCTCを含む懸濁液の電気泳動度が低いと、細胞表面の負電荷による細胞自体の分散安定性が高まるため、細胞の微細孔近傍への沈降が妨げられ、保持部50へのCTC保持能力が低下する。一方、CTCを含む懸濁液に血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質をさらに含ませると、細胞自体の分散安定性が低下し、細胞が貫通孔11a・12a近傍に速やかに沈降するので、保持部50へのCTCの保持能が向上する。
(3)保持部50に保持されたCTCに対し、接着物質を含む溶液を導入口13aから導入することで、前記CTCを保持部50に接着させる。接着物質としてポリ−L−リジンを用いた場合、血液由来タンパク質、乳由来タンパク質、またはタンパク質に対し親水性高分子を1以下のモル比で反応させて得られた親水性高分子を結合したタンパク質が共存すると、ポリ−L−リジンとタンパク質とが結合し可溶性が低下して白色の析出物が形成するため、CTCの観察・測定が困難となる(後述の実施例2参照)。そこでタンパク質に対し親水性高分子を1.5以上のモル比で反応させて得られた、親水性高分子を結合したタンパク質を含む溶液でCTCを懸濁させるとよい。
(4)保持部50に接着したCTCに対し、細胞固定試薬を含有する細胞膜透過試薬を導入口13aから導入することで、前記CTCを標本化させる。
本発明は、細胞を含む溶液を前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入する工程と、前記保持部に前記細胞を保持させる工程とを含む細胞の回収方法において、細胞を含む溶液に血液由来タンパク質、乳由来タンパク質または親水性高分子を結合したタンパク質をさらに含ませることを特徴としている。本発明の方法は細胞を含む溶液から前記細胞を高効率に回収することができ、特に前記溶液中に含まれる細胞量が非常に少ない場合に有用な方法である。
例えば本発明を、血液中に含まれる腫瘍細胞(CTC)の回収に適用することで、採血量を少なくすることができ、患者への負担を低減させることができる。またがんの診断をCTCの存在により行なう場合、CTCの有無の判断結果に対する信頼性が向上するため、精度高く診断することができる。
本発明の細胞回収方法を利用可能な装置の一例を示した図。(A)は分解図を、(B)は正面図を、それぞれ表わす。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は当該例に限定されるものではない。
実施例1
(1)一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN−ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG−NHS)と、ウシ血清アルブミン(BSA)(300mg、4.5μmol)とを、炭酸水素ナトリウム緩衝液(0.1M、15mL)に溶解させ、当該溶液を室温で3時間撹拌することでポリエチレングリコールを結合したBSA(PEG−BSA)を調製した。なお調製する際、mPEG−NHSとBSAとのモル比(mPEG−NHS/BSA)を1、2または5となるようにした。調製後、分画分子量10000の透析膜を用いて、純水への溶液置換を3日間行なった。
(2)ヒト乳がん細胞(SKBR3)を、5%CO環境下、10%FBSを含むRPMI−1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から細胞を剥離し、蛍光染色色素(CFSE、同仁化学研究所社製)で標識した。蛍光標識されたSKBR3細胞を目的とする細胞とし、蛍光標識されたSKBR3細胞50から200個を0.1%(w/v)BSAおよび300mMマンニトールを含む溶液800μL、または(1)で調製したPEG−BSA(BSAとして1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液800μLに添加し、懸濁させた。
(3)(2)で得られたSKBR3細胞を含む懸濁液を図1に示す細胞回収装置100に導入し、信号発生器40で電圧20Vpp、周波数1MHzの交流電圧を電極基板21・22に3分間印加することで細胞回収装置100が有する保持部50にSKBR3細胞を保持させた。
(4)細胞診断チップに保持されたSKBR3細胞数を計測し、(2)で添加したSKBR3細胞数で除することで回収率を算出した。
実施例2
(1)一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN−ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG−NHS)と、カゼイン(300mg、10.7μmol)(カゼインの分子量28000と仮定し算出)とを、純水(30mL)に溶解させ、当該溶液を室温で24時間撹拌することでポリエチレングリコールを結合したカゼイン(PEG−カゼイン)を調製した。なお調製する際、mPEG−NHSとカゼインとのモル比(mPEG−NHS/カゼイン)を0.5、1、2または5となるようにした。
(2)実施例1(2)のSKBR3細胞に懸濁させる溶液として、0.1%(w/v)カゼインおよび300mMマンニトールを含む溶液800μL、また
(1)で調製したPEG−カゼイン(カゼインとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液を用いた他は、実施例1と同様な方法で回収率を算出した。
比較例1
実施例1(2)のSKBR3細胞に懸濁させる溶液として、300mMマンニトールを含む溶液を用いた他は、実施例1と同様な方法で回収率を算出した。
実施例1および2ならびに比較例1での回収率の結果をまとめて表1に示す。なお表1において、PEG(1)−BSAはmPEG−NHS/BSAがモル比1の条件で調製したPEG−BSA(PEGはBSAに対して実測モル比0.45で結合している)であり、PEG(2)−BSAはmPEG−NHS/BSAがモル比2の条件で調製したPEG−BSA(PEGはBSAに対して実測モル比1.14で結合している)であり、PEG(5)−BSAはmPEG−NHS/BSAがモル比5の条件で調製したPEG−BSA(PEGはBSAに対して実測モル比3.01で結合している)であり、PEG(1)−カゼインはmPEG−NHS/カゼインがモル比1の条件で調製したPEG−カゼイン(PEGはカゼインに対して実測モル比0.12で結合している)であり、PEG(2)−カゼインはmPEG−NHS/カゼインがモル比2の条件で調製したPEG−カゼイン(PEGはカゼインに対して実測モル比0.23で結合している)であり、PEG(5)−カゼインはmPEG−NHS/カゼインがモル比5の条件で調製したPEG−カゼイン(PEGはカゼインに対して実測モル比0.38で結合している)である。誘電泳動力を用いたがん細胞の分離回収工程において、血液由来タンパク質であるBSA、乳由来タンパク質であるカゼイン、親水性高分子を結合した血液由来タンパク質であるPEG−BSA、または親水性高分子を結合した乳由来タンパク質であるPEG−カゼインを含む溶液を用いることで、PEGおよびタンパク質を含まない溶液(88.8%)と比較し、回収率が向上していることがわかる(96.1%から100%)。特にBSAまたはカゼインに対しPEGを2以上のモル比で反応させて得られたPEG−BSAまたはPEG−カゼインでは回収率100%であった。
Figure 0006686357
実施例3
(1)実施例1(2)から(3)と同様な方法で、誘電泳動により保持部50にSKBR3細胞を保持した。その後、引き続き信号発生器40で電圧20Vpp、周波数1MHzの交流電圧を電極基板21・22に印加しながら、0.01%(w/v)ポリ−L−リジンを含む300mMマンニトール溶液を導入することで、SKBR3細胞を保持部50に接着させた。
(2)(1)でポリ−L−リジンにより微細孔内にSKBR3細胞を接着させた後、細胞導入保持手段10内部を目視および顕微鏡で観察した。
実施例4
実施例1(2)のSKBR3細胞に懸濁させる溶液として、0.1%(w/v)カゼインおよび300mMマンニトールを含む溶液800μL、または実施例2(1)で調製したPEG−カゼイン(カゼインとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液を用いた他は、実施例3と同様な方法で観察した。
比較例2
実施例1(2)のSKBR3細胞に懸濁させる溶液として、300mMマンニトールを含む溶液を用いた他は、実施例3と同様な方法で観察した。
実施例3および4ならびに比較例2における目視での観察結果をまとめて表2に示す。なお表2において、PEG(1)−BSAはmPEG−NHS/BSAがモル比1の条件で調製したPEG−BSAであり、PEG(2)−BSAはmPEG−NHS/BSAがモル比2の条件で調製したPEG−BSAであり、PEG(5)−BSAはmPEG−NHS/BSAがモル比5の条件で調製したPEG−BSAであり、PEG(1)−カゼインはmPEG−NHS/カゼインがモル比1の条件で調製したPEG−カゼインであり、PEG(2)−カゼインはmPEG−NHS/カゼインがモル比2の条件で調製したPEG−カゼインであり、PEG(5)−カゼインはmPEG−NHS/カゼインがモル比5の条件で調製したPEG−カゼインである。がん細胞を保持部50に接着させる工程において、PEGを含まないBSAまたはカゼイン溶液や、PEG(1)−BSAまたはPEG(1)−カゼインを含む溶液を用いると白色の析出物が生成されていることが観察された。白色の析出物は保持部50に保持された細胞の観察・測定を困難にするため好ましくない。一方、タンパク質を含まない溶液や、mPEG−NHS/BSAまたはmPEG−NHS/カゼインのモル比2以上のモル比で反応させて得られたPEG−BSAを含む溶液を用いた場合は、白色析出物は確認されず、顕微鏡下においても良好な細胞観察が可能であった。
Figure 0006686357
実施例5
(1)実施例1(2)のSKBR3細胞に懸濁させる溶液として、
mPEG−NHS/BSAがモル比2の条件で調製したPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液、または
mPEG−NHS/カゼインがモル比2の条件で調製したPEG−カゼイン(カゼインとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液、
を用いた他は、実施例3(1)と同様な方法で、ポリ−L−リジンにより微細孔内にSKBR3細胞を接着させた。
(2)50%(v/v)エタノールおよび1%(v/v)ホルムアルデヒドを含む溶液を図1に示す細胞回収装置100へ導入することで、保持部に保持されたSKBR3細胞を標本化した。
(3)保持部50に保持されたSKBR3細胞数(計測値)を、誘電泳動後の時点で保持部50に捕捉されたSKBR3細胞数(計測値)で除することで保持率を算出した。
比較例3
実施例1(2)のSKBR3細胞に懸濁させる溶液として、300mMマンニトールを含む溶液を用いた他は、実施例5と同様な方法で保持率を算出した。
実施例5および比較例3での保持率の結果をまとめて表3に示す。なお表3において、PEG(2)−BSAはmPEG−NHS/BSAがモル比2の条件で調製したPEG−BSAであり、PEG(2)−カゼインはmPEG−NHS/カゼインがモル比2の条件で調製したPEG−カゼインである。エタノールおよびホルムアルデヒドを用いた、がん細胞を標本化する工程において、親水性高分子を結合した血液由来タンパク質であるPEG−BSA、または親水性高分子を結合した乳由来タンパク質であるPEG−カゼインを含む溶液を用いた時の保持率(99.3%、97.7%)は、PEGおよびタンパク質を含まない溶液を用いたとき(98.4%)と同等の高い保持率であった。この結果は、mPEG−NHS/BSAまたはmPEG−NHS/カゼインのモル比2以上のモル比で反応させて得られたPEG−BSAまたはPEG−カゼインを含む溶液を用いても、ポリ−L−リジンによる微細孔への細胞接着を阻害することなく、かつエタノールおよびホルムアルデヒドを用いたがん細胞の標本化を行なっても、保持部50への細胞の保持能は維持されていることが確認された。
Figure 0006686357
100:細胞回収装置
10:細胞導入保持手段
11:遮光部材
12:絶縁体
11a、12a:貫通孔
13:スペーサ
13a:導入口
13b:排出口
13c:貫通部
21・22:電極基板
30:導線
40:信号発生器
50:保持部
60:細胞

Claims (8)

  1. 細胞を含む溶液を、前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入する工程と、
    前記保持部に前記細胞を保持させる工程とを含む、細胞の回収方法であって、
    細胞を含む溶液が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシアルキル)メタクリレート、ポリアクリルアミド及びホスホリルコリン基を側鎖に有するポリマーから選択される親水性高分子を結合したBSAまたは前記親水性高分子を結合したカゼインをさらに含む溶液である、前記回収方法。
  2. 細胞を含む溶液を、前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入する工程と、
    前記保持部に前記細胞を保持させる工程と、
    接着物質を含む溶液を前記細胞保持手段に導入することで、前記保持された細胞を前記保持部に接着させる工程とを含む、細胞の固定化方法であって、
    細胞を含む溶液が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシアルキル)メタクリレート、ポリアクリルアミド及びホスホリルコリン基を側鎖に有するポリマーから選択される親水性高分子を結合したBSAまたは前記親水性高分子を結合したカゼインをさらに含む溶液である、前記固定化方法。
  3. 細胞を含む溶液を、前記細胞を保持可能な保持部を設けた細胞保持手段に導入する工程と、
    前記保持部に前記細胞を保持させる工程と、
    接着物質を含む溶液を前記細胞保持手段に導入することで、前記保持された細胞を前記保持部に接着させる工程と、
    細胞固定試薬を含む細胞膜透過試薬を前記細胞保持手段に導入することで、前記保持部に接着した細胞を標本化する工程とを含む、細胞の標本化方法であって、
    細胞を含む溶液が、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシアルキル)メタクリレート、ポリアクリルアミド及びホスホリルコリン基を側鎖に有するポリマーから選択される親水性高分子を結合したBSAまたは前記親水性高分子を結合したカゼインをさらに含む溶液である、前記標本化方法。
  4. 細胞固定試薬を含む細胞膜透過試薬がエタノールとホルムアルデヒドとを少なくとも含む試薬である、請求項3に記載の方法。
  5. 接着物質を含む溶液がポリ−L−リジンを少なくとも含む溶液である、請求項2から4のいずれかに記載の方法。
  6. 細胞を含む溶液が、糖をさらに含む溶液である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 保持部に細胞を保持させる工程を、誘電泳動力を用いて行なう、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 記親水性高分子を結合したBSAまたは前記親水性高分子を結合したカゼインが、BSAまたはカゼインに対し前記親水性高分子を1.5以上のモル比で反応させて得られたBSAまたはカゼインである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
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