JP2014050303A - 電気自動車 - Google Patents

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Abstract

【課題】本明細書は、電気自動車においてインバータの入力側に接続されているコンデンサに出入りするリプル電流とコンデンサの発熱量を正確に推定する。
【解決手段】本明細書が開示する電気自動車は、走行用のモータ5a、5bと、モータに電力を供給するバッテリ3と、バッテリの直流電力を交流電力に変換してモータに供給するインバータ回路16a、16bと、インバータの入力端の正極と負極の間に接続されているコンデンサ15と、制御器9を備えている、制御器9は、インバータとモータの間に流れる電流と、インバータの変調率と、インバータの入力電圧に基づいて、コンデンサのリプル電流を推定する。制御器9はさらに、推定したリプル電流に基づいてコンデンサの発熱量を推定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気自動車に関する。本明細書における「電気自動車」には、モータとエンジンの双方を備えるハイブリッド車や燃料電池車を含む。
電気自動車は、バッテリの直流電力をモータ駆動に適した周波数の交流電力に変換するインバータを備える。また、電気自動車の中には、電圧コンバータによってバッテリの出力電圧を昇圧してからインバータに供給するタイプがある。電圧コンバータの出力(インバータに入力される電流)を平滑化するため、あるいは、回生時にインバータが出力する電流を平滑化するため、電気自動車はインバータの入力端(バッテリに接続する側の端子)の正極と負極の間にコンデンサを備える。コンデンサは、内部抵抗を有するため、電流の出入りに伴って発熱する。インバータのスイッチング素子、あるいは、電圧コンバータのスイッチング素子のスイッチング動作により電流が脈動し、その脈動がコンデンサへの電流の出入りとなって発熱する。電気自動車の場合、大出力の走行用モータに合わせてコンデンサは大容量であるため、発熱量も大きい。スイッチング動作に伴う電流の脈動はリプル電流と呼ばれる。以下では、説明の便宜上、スイッチング素子の動作に起因してコンデンサに出入りするリプル電流を「コンデンサのリプル電流」あるいは単に「リプル電流」と表現する。
上記のコンデンサの発熱を抑える技術が例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の技術は、コンデンサの温度が許容温度を上回る場合、インバータの出力を抑える、あるいは、インバータ冷却器の能力を上げる、というものである。コンデンサの温度は、インバータの冷媒温度、エンジンの冷媒温度、及び、インバータの出力から推定する。
また、コンデンサの発熱による温度上昇を考慮してコンデンサの寿命を推定する技術が特許文献2、3に開示されている。特許文献2の技術は、回路の電流からコンデンサのリプル電流を推定し、そのリプル電流から発熱量を推定する。また、特許文献3の技術は、リプル電圧、コンデンサ温度、コンデンサに流れる電流からコンデンサの寿命を推定する。
特開2009−012702号公報 特開2006−166569号公報 特開2010−193627号公報
特許文献2に記載されているように、コンデンサの発熱はリプル電流に依存する。そこで、コンデンサの発熱量を推定するには、リプル電流をできるだけ正確に推定することが望ましい。本明細書は、リプル電流を従来よりも正確に推定し、その推定値を使ってコンデンサの発熱量を推定する技術を提供する。さらに、本明細書は、2個のモータとエンジンを有するハイブリッド車特有の構造を利用し、車両の走行能力の低下を少なくしつつコンデンサの発熱量を抑制する技術を提供する。
リプル電流を従来よりも正確に推定し、その推定値を使ってコンデンサの発熱量を推定する技術の一つとして、本明細書が開示する電気自動車は、インバータとモータの間に流れる電流と、インバータの変調率と、インバータの入力電圧(バッテリ側の端子間電圧)に基づいて、コンデンサのリプル電流を推定するととともに、推定したリプル電流に基づいてコンデンサの発熱量を推定する制御器を備える。リプル電流の大きさは、(1)コンデンサに流れる電流大きさ、(2)インバータの変調率(デューティ比)、及び、(3)インバータの入力電圧、に影響される。それゆえ、本明細書が開示する電気自動車は、上記3つの物理量をパラメータとしてリプル電流を推定する。上記3つの物理量をパラメータとすることによって、従来よりも正確にリプル電流を推定することができる。なお、(1)のコンデンサに流れる電流の大きさは、前述したように、インバータとモータの間に流れる電流に相当する。より詳しくは、インバータとモータの間に流れる電流とは、モータを駆動源として用いる場合には、インバータからモータへ供給する電流であり、回生時にはモータが発電してインバータへ供給する電流である。後者の場合は、モータで発電した電力でバッテリを充電する際、モータが発生する交流電力はインバータで直流に変換されバッテリへと供給される。その間にリプル電流が発生する。リプル電流はコンデンサに出入りすることで平滑化されるがその際に発熱が生じる。以下では、説明の便宜上、インバータとモータの間に流れる電流を、単に「モータ電流」と称する。
上記3つのパラメータからリプル電流を得る処理は、予め実験やシミュレーション等でマップ化しておけばよい。すなわち3つのパラメータを入力変数としリプル電流を出力変数とする関係を予め求めておけばよい。全てをマップ化するとデータ量が大きくなる。そこで、特定の一つあるいは二つのパラメータを固定した上で残りのパラメータとリプル電流の関係をマップ化しておき、特定の一つまたは二つのパラメータに応じてマップ上のリプル電流に係数を乗じて最終的に現在のリプル電流を求めることも好適である。例えば、特定の変調率(デューティ比)と入力電圧の下でモータ電流とリプル電流の関係をマップ化しておき、実際のデューティ比と入力電圧に基づいて係数を決定し、マップから求めたリプル電流に係数を乗じて現在のリプル電流を推定する。リプル電流の求め方の一つの具体的な処理は実施例にて説明する。
本明細書が開示する技術の別の側面は、2個のモータとエンジンを有するハイブリッド車特有の構造を利用し、車両の走行能力の低下を少なくしつつコンデンサの発熱量を抑制する技術を提供する。一つの典型的なハイブリッド車は、エンジンと、走行のための駆動と発電の双方に用いられるモータであってエンジンの駆動力によって発電する第1モータと、走行のための駆動と発電の双方に用いられるモータであって第1モータよりも先に駆動源として用いられる第2モータを備える。そのような駆動系を有するハイブリッド車において、コンデンサの発熱を防止する制御器は、推定した発熱量が所定の発熱量閾値を超えている場合、バッテリの残量が所定の残量閾値よりも高いときは第1モータの電流(第1モータとインバータの間に流れる電流)を抑制し、バッテリの残量が所定の残量閾値よりも低いときは第2モータの電流(第2モータとインバータの間に流れる電流)を抑制する。バッテリ残量は通称、SOC(State Of Charge)と呼ばれるので本明細書でも以後、バッテリ残量を「バッテリのSOC」と称する。
第1モータと第2モータは、高トルクが必要な場合は双方ともに駆動に用いられる。即ち、バッテリの電力によって2つのモータは共にトルクを発生する。しかし、第1モータは発電を主たる使用目的としており、エンジンの駆動力によって発電する。また、第2モータも発電するが、専ら回生時の発電に用いられる。具体的には、次のドライブトレインを有すると、第1モータと第2モータがそのような使い分けをするのに適している。そのドライブトレインは、プラネタリギアで構成されており、第1モータの出力がサンギアに入力され、エンジンの出力がプラネタリキャリアに入力され、第2モータの出力がリングギアに入力される。
第1モータと第2モータを上記の使い分けで用いる場合、SOCが高ければそれ以上発電する必要性が低いので、第1モータの電流を制限しても走行性能に与える影響は小さい。逆にバッテリのSOCが低い場合は、第1モータで発電する頻度が高まるので、第1モータではなく第2モータの電流を制限するのがよい。コンデンサの発熱量が大きくなると予想される場合に、SOCに応じて電流制限するモータを選択することによって、走行性能の低下を抑えつつ、コンデンサの発熱量を低減することが可能となる。
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
実施例の電気自動車(ハイブリッド車)の駆動系のブロック図である。 モータ電流とリプル電流の関係の一例を表すグラフである。 インバータのデューティ比とリプル電流の第1補正係数との関係の一例を示すグラフである。 インバータの入力電圧とリプル電流の第2補正係数との関係の一例を示すグラフである。 動力分配機構のギア構造を示すスケルトン図である。 動力分配機構の共線図である。 モータのTN線図の一例である。 モータ電流とコンデンサ発熱量の関係を記したマップの一例である。
図面を参照して実施例の電気自動車を説明する。実施例の電気自動車は、走行用に二つのモータ5a、5bと一つのエンジン4を有するハイブリッド車2である。なお、図中では、第1モータ5aには「MG1」の文字を付しており、第2モータ5bには「MG2」の文字を付してある。「MG」は、「モータジェネレータ」を意味する文字であり、第1、第2モータ5a、5bが、走行のための駆動力(トルク)を出力する機能と、発電する機能を兼ね備えていることを表している。
ハイブリッド車2の駆動系は、主に、メインバッテリ3、パワーコントロールユニット10(以下、PCU10)、制御器9、第1及び第2モータ5a、5b、エンジン4、及び、動力分配機構30で構成されている。
メインバッテリ3は、第1、第2モータに供給する電力を蓄えるバッテリであり、その出力電圧は例えば300ボルトである。なお、ハイブリッド車2は、メインバッテリ3の他に、電気回路やナビゲーション、ルームランプなど低電圧駆動のデバイスに電力を供給するサブバッテリも備える。サブバッテリの出力電圧は例えば12ボルトである。
メインバッテリ3の出力はPCU10に入力される。PCU10は、メインバッテリ3の出力電圧を昇圧するコンバータ回路13と、昇圧された直流電力を交流に変換し、2個のモータの夫々に供給するインバータ回路16a、16bを含む。コンバータ回路13の入力側と、インバータ回路の入力側には、それぞれ、電流を平滑化するコンデンサ12、15が正極と負極の間に接続されている。
第1インバータ回路16aは第1モータ5aに交流電力を供給し、第2インバータ回路16bは第2モータ5bに交流電力を供給する。インバータ回路16a、16bは複数のスイッチング素子(トランジスタであり、典型的にはIGBT)を備え、夫々のスイッチング素子を適宜にON/OFFして直流を交流に変換する。コンバータ回路13はスイッチング素子とリアクトルを備え、スイッチング素子を適宜にON/OFFすることで電圧を昇圧する。なお、インバータ回路16a、16bは、モータが発電した交流電力を直流に変換することもでき、また、コンバータ回路13は、モータが発電した交流電力をインバータが直流電力に変換した後の電圧をメインバッテリ3の充電に適した電圧まで降圧する機能も有する。インバータ回路とコンバータ回路の具体的な構成は良く知られているので詳細な説明は省略する。
PCU10は大電流を扱うので内部の素子やコンデンサが発熱する。そこで、PCU10は冷却器20を備える。冷却器20は、冷媒を循環させる冷却管23、冷媒を冷却するラジエータ22、冷媒を送り出すポンプ21で構成される。
冷却管23の途中には、冷媒温度を計測する温度センサ25が備えられている。また、インバータ回路16a(16b)とモータ5a(5b)の間のパワーケーブルには電流センサ17a(17b)が備えられている。さらに、メインバッテリ3には、バッテリの残量(SOC)を計測するSOCセンサ24が備えられている。また、コンバータ回路13とインバータ回路16a、16bの間には、インバータ回路の入力電圧(バッテリ側の端子間電圧)を計測する電圧センサ14が備えられている。それらのセンサデータは制御器9に送られる。制御器9は、それらのセンサデータ、さらには、図示しないモータ回転数センサ、車速センサ、アクセル開度センサなどのセンサデータに基づいて、コンバータ回路13とインバータ回路16a、16bに与えるPWM信号を生成し、それらの回路に供給する。
2個のモータ5a、5bの出力軸と、エンジン4の出力軸は、動力分配機構30に連結されている。動力分配機構30は、2個のモータとエンジン4の出力トルクを合成して車軸6に出力したり、エンジン4の出力トルクを車軸6と第1モータ5aに分配する。動力分配機構30の詳しい構造は図5を参照して後述する。駆動源のトルクは車軸6からデファレンシャルギア7を介して車輪8へと伝達される。
先に述べたように、コンバータ回路13、インバータ回路16a、16bは、スイッチング素子のON/OFF動作により所望の出力を得る。出力電流には、スイッチング素子のON/OFF動作に起因する脈動が含まれる。この電流の脈動はリプル電流と呼ばれる。リプル電流はコンデンサ15(あるいはコンデンサ12)で吸収され平滑化される。逆に言えば、リプル電流は、コンデンサ15に対する周期的な電流の出入りとなる。コンデンサには内部抵抗が存在し、その内部抵抗に周期的に電流が流れることにより発熱する。ハイブリッド車の駆動系は大電流を扱うため、発熱量も大きい。制御器9は、コンデンサ15の発熱を抑えるべく、コンデンサ15に出入りするリプル電流を推定し、さらに推定したリプル電流から発熱量を推定する。制御器9は、推定した発熱量が所定の発熱量閾値を超える場合、モータ電流を抑制する。次に、リプル電流と発熱量の推定の原理を説明する。
リプル電流Irpは、モータ電流(インバータからモータへ供給する電流あるいはモータが発電してインバータへ供給する電流)と、インバータの変調率と、インバータの入力電圧に依存する。ここで、インバータからモータへ供給する電流は、モータに駆動力を出させるために、メインバッテリ3の電力を入力としてインバータが出力する交流電流に相当する。他方、モータが発電してインバータへ供給する電流は、エンジン4の駆動力によって、あるいは、車両の運動エネルギによってモータを回転させ、そのモータが発電してインバータへ供給される電流に相当する。いずれも、インバータとモータを繋ぐパワーケーブルに備えられた電流センサ17a、17bで検出される。インバータからモータへ供給する電流と、モータが発電してインバータへ供給する電流を総称してモータ電流Imと称する。
インバータの変調率は、インバータがPWM制御の場合はPWM信号のデューティ比Dtに相当する。インバータが矩形制御を行う場合、矩形制御はデューティ比50%のPWM制御に実質的に相当するので、矩形制御の場合は、変調率は50%(0.5)である。以下では、インバータの変調率をデューティ比Dtで表す。PWM信号は車速やアクセル開度に応じて制御器9が生成するので、デューティ比Dtは制御器9にとって既知である。インバータの入力電圧VHは、電圧センサ14によって計測される。
リプル電流Irpは、PCU10の具体的な構成に依存する。それゆえ、リプル電流Irpは、実験やシミュレーションなどにより、モータ電流Im、デューティ比Dt、入力電圧VHをパラメータとしたマップあるいは関数の形で事前に特定されており、制御器9に記憶されている。一部を関数化したマップの一例を以下に説明する。
図2は、デューティ比Dt=50[%]、入力電圧VH=VHmax[V]の場合のモータ電流とリプル電流の関係の一例を示す。図2における(すなわち、デューティ比Dt=50[%]、入力電圧VH=VHmax[V]という条件下での)、モータ電流Imに対するリプル電流を基準リプル電流Irp_bと称することにする。制御器9には図2の関係が記憶されており、制御器9は、電流センサ17a、17bによって計測したモータ電流Im(電流センサ17a、17bの計測値の合計)に対する基準リプル電流Irp_bを図2の関係から特定する。基準リプル電流Irp_bは、デューティ比Dt=50%、入力電圧VH=VHmaxのときの値であるから、この値を、現在のデューティ比Dt_cと現在の入力電圧VH_cに応じた係数で補正する。図3に、デューティ比Dtに応じた係数(第1係数K1)の一例を示す。なお、PWM制御はデューティ比Dt=50[%]の場合が最も効率が高く、50[%]から離れるに従い効率が低下する。それゆえ、デューティ比Dt=50[%]に対する第1係数K1はK1=1.0であり、50[%]から離れるに従い小さくなる。
図3の関係も制御器9に予め記憶されている。制御器9は、現在のデューティ比Dt_cに対応する第1係数K1_cを図3のグラフ(記憶している関係)から特定する。また、図2以降のグラフでは電流の単位を[A]としているが、電流は交流であるので、正確には平方二乗平均であることに留意されたい。
図4に、インバータの入力電圧VHに応じた係数(第2係数K2)の一例を示す。図4の関係も制御器9に予め記憶されている。制御器9は、現在の入力電圧VH_cに対応する第2係数K2_cを図4のグラフ(記憶している関係)から特定する。なお、入力電圧最大(VH=VHmax)に対する第2係数K2はK2=1.0である。
第1係数K1_c、第2係数K2_cが求まると、制御器9は、現在のリプル電流Irp_cを、次の式(1)にて推定する。
Figure 2014050303
制御器9は、コンデンサ15の時間dt当たりの発熱量を、コンデンサ15の時間dt当たりの温度増加分dTとして次の式(2)を使って推定する。
Figure 2014050303
式(2)において、ESRはコンデンサ15の内部抵抗である。ESRの値は予め測定され、制御器9に記憶される。一方、制御器9は、温度センサ25によって計測する冷媒温度Twを、コンデンサ15の温度近似値(推定値)として用いる。制御器9は、時間dt後のコンデンサ15の温度Tcを、Tc=Tw+dTで推定する。
制御器9は、時間dt後のコンデンサ推定温度Tcが予め定められた温度閾値Tthを超えている場合、モータ電流Imを制限し、それ以上の発熱を抑制する。別言すれば、制御器9は、時間dt後のコンデンサ発熱量dTが所定の発熱量閾値dT_th(=Tth−Tw)を超えている場合、モータ電流Imを制限する。
ハイブリッド車2は、モータ電流Im、インバータのデューティ比Dt(変調率)、及び、インバータへの入力電圧VHをパラメータとしてコンデンサ15のリプル電流Irpを推定し、さらにそのリプル電流Irpからコンデンサ15の発熱量dTを推定する。上記3個のパラメータに基づくので、ハイブリッド車2は、リプル電流を従来よりも正確に推定することができる。
次に、ハイブリッド車2の駆動系に特有の構造を利用したモータ電流の制限について説明する。制御器9は、時間dt後のコンデンサ発熱量dTが所定の発熱量閾値dT_th(=Tth−Tw)を超えている場合、メインバッテリ3のSOCの大小に基づいて第1モータ5aと第2モータ5bのいずれか一方のモータ電流を選択的に制限する。
モータ電流の制限のプロセスを説明する前に、第1モータ5aと第2モータ5bの機能の相違を説明する。図5に動力分配機構30のギア構造を表すスケルトン図を示す。動力分配機構30は、2個のプラネタリギアセット31、36で構成されている。両プラネタリは、リングギア35を共通とする。第1プラネタリ31のサンギア32に第1モータ5aの出力軸が連結しており、キャリア33にインプットギア41を介してエンジン4の出力軸が連結している。第2プラネタリ36のキャリア38は固定されている。第2プラネタリ36のサンギア37に第2モータ5bの出力軸が連結している。共通するリングギア35の外側にもギア歯が形成されており、アウトプットギア42を介して車軸6が連結している。
図5のプラネタリギアセットの共線図を図6に示す。ハイブリッド車2(制御器9)は、エンジン4と2個のモータ5a、5bの出力配分を次のように決定する。まず、リングギア35は車軸6と一意に連動するので、リングギア35の回転数R1は、車速で定まる。制御器9は、この車速と、アクセル開度に基づいて、エンジン4の燃費のよい動作点を決定し、そのときの回転数(第1プラネタリ31のキャリア33の回転数R2)を決定する。リングギアの回転数R1とキャリア33の回転数R2が決まるので、サンギア32の回転数R3が従属的に定まる。また、第2プラネタリ36のキャリア38は固定されているので、リングギア35の回転数R1が定まると第2プラネタリ36のサンギア37の回転数R4、即ち、第2モータ5bの回転数も定まる。次に出力トルクであるが、制御器9は、車速とアクセル開度から目標出力Tqを定める。エンジン4の出力で目標出力Tqに足りない分は、第2モータ5bで補う。すなわち、第2モータ5bの出力が定まる。また、エンジン4が所定のトルクを出力する間、第1プラネタリ31のサンギア32の回転数をR3に維持するのに第1モータ5aは逆トルクを出力しなければならない。この逆トルクは、エンジン4の回転にブレーキを加える方向のトルクとなる。このとき第1モータ5aは、エンジン4の出力によって駆動させられ、発電する。発電量で、エンジン4の回転にブレーキを加える逆トルクの大きさが定まる。
なお、目標出力Tqが大きい場合は、第1モータ5aも駆動力(駆動トルク)を出力することになる。一方、第2モータ5bは、主として駆動力を発生するが、減速時には、第2モータ5bで発電する。即ち、第1モータ5a、第2モータ5bは共に、走行のための駆動と発電の双方に用いられるモータであるが、第1モータ5aはエンジン4の駆動力によって発電し、第2モータ5bは、第1モータ5aよりも先に駆動源として用いられる。別言すれば、第2モータ5bは第1モータ5aよりも優先的に駆動源として用いられる。この機能分担は、図5に示した動力分配機構30の構造に依拠するものである。
第1モータ5aと第2モータ5bの上記の機能分担のもと、制御器9は、時間dt後のコンデンサ発熱量dTが所定の発熱量閾値dT_th(=Tth−Tw)を超えている場合、次のルールに基づいてモータ電流を制限する。即ち、制御器9は、メインバッテリ3のSOCが所定の残量閾値S_thよりも高いときは第1モータ5aの出力(モータ電流)を抑制し、メインバッテリ3のSOCが残量閾値S_thよりも低いときは第2モータ5bの出力(モータ電流)を制限する。
モータの出力(モータ電流)の制限を、例を挙げて説明する。図7は、一般的なモータの出力トルクと回転数の関係を表すいわゆるTN線図である。グラフの下側の領域にモータの動作点が定められる。例えば、回転数Rn、出力トルクTq1の動作点P1で動作しているときに、出力電流を抑制すると、回転数はRnのままでも出力トルクがTq1からTq2に低下する。このように、モータは、回転数を落とさずに出力トルクを低下させることができる。すなわち、図6の共線図の関係を保ちつつ、モータの出力を低下することができる。なお、モータの出力を低下する場合、共線図の関係が維持されるように、制御器9はエンジン4の出力も調整する。また、出力トルクはモータ電流(この場合はインバータからモータに供給される電流)と一意に対応するので、出力を抑制することは、モータ電流、即ち、インバータからモータに供給する電流を抑制することに相当する。
メインバッテリ3のSOCが高い場合は、発電する必要性が低いので主として発電に用いる第1モータ5aの出力(モータ電流)を制限しても走行性能に与える影響は小さい。他方、メインバッテリ3のSOCが低い場合は、第1モータ5aを使って発電する機会を十分に活用しないとメインバッテリ3のSOCが減り続けてしまう。そこで、メインバッテリ3のSOCをある程度回復するまでは、第2モータ5bの出力(モータ電流)を制限し、第1モータ5aで発電してメインバッテリ3の回復を優先する。そうすることで、メインバッテリ3のSOCが極端に減少してモータが駆動力を出力できなくなることを防止する。即ち、モータ出力を制限する場合の上記のモータ選択は、ハイブリッド車2の走行性能をできるだけ損なうことなく、コンデンサの発熱量を抑制するのに好適である。なお、第1モータ5aと第2モータ5bのいずれか一方のモータの出力を抑制してもコンデンサの発熱量が所定の閾値を超えることが予想される場合、制御器9は、第1モータ5aと第2モータ5bの双方の出力(モータ電流)を制限する。
実施例で説明したハイブリッド車2に関する留意点を述べる。図2から図4、及び、式(1)、(2)を用いてコンデンサのリプル電流と発熱量を推定する一つの具体例を説明した。コンデンサの発熱量は、インバータの変調率(デューティ比)、入力電圧、及び、モータ電流に基づいて推定されるものであれば、実施例の方法に限られない。例えば、2個のモータを有する電気自動車において、図8に示すごとく、2個のモータ電流の組に対してコンデンサの発熱量が対応付けられた2次元マップを用意することも好適である。例えば、図8のマップは、デューティ比Dt=50%、インバータへの入力電圧VH=VHmaxの条件の下での、2個のモータ電流の組に対するコンデンサの発熱量のマップである。従って、電流センサ17a、17bで計測した夫々のモータ電流に基づいて図8のマップを参照して発熱量を得た後、図3、図4と同様の補正係数(デューティ比に起因する補正係数K1と入力電圧に起因する補正係数K2)を乗じて現在のコンデンサの発熱量を求めるようにしてもよい。
実施例のハイブリッド車2は、PCU10を冷却する冷媒の温度を、コンデンサ15の温度の近似値(推定値)として用いた。コンデンサ15の温度を直接計測する温度センサを備え、その温度センサの値を使うことも好適である。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
2:ハイブリッド車
3:メインバッテリ
4:エンジン
5a、5b:モータ
6:車軸
9:制御器
10:パワーコントロールユニット(PCU)
12、15:コンデンサ
13:コンバータ回路
14:電圧センサ
16a、16b:インバータ回路
17a、17b:電流センサ
20:冷却器
24:SOCセンサ
25:温度センサ
30:動力分配機構
31、36:プラネタリギア
32、37:サンギア
33、38:キャリア
35:リングギア

Claims (3)

  1. 走行用のモータと、
    モータに電力を供給するバッテリと、
    バッテリの直流電力を交流電力に変換して前記モータに供給するインバータと、
    インバータの入力端の正極と負極の間に接続されているコンデンサと、
    インバータとモータの間に流れる電流と、インバータの変調率と、インバータの入力電圧に基づいて、コンデンサのリプル電流を推定するととともに、推定したリプル電流に基づいてコンデンサの発熱量を推定する制御器と、
    を備えることを特徴とする電気自動車。
  2. エンジンと、
    走行のための駆動と発電の双方に用いられるモータであってエンジンの駆動力によって発電する第1モータと、
    走行のための駆動と発電の双方に用いられるモータであって第1モータよりも先に駆動源として用いられる第2モータと、
    を備えており、
    前記制御器は、推定した発熱量が所定の発熱量閾値を超えている場合、バッテリの残量が所定の残量閾値よりも高いときは第1モータとインバータの間に流れる電流を抑制し、バッテリの残量が所定の残量閾値よりも低いときは第2モータとインバータの間に流れる電流を抑制する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
  3. 第1モータの出力がサンギアに入力され、エンジンの出力がプラネタリキャリアに入力され、第2モータの出力がリングギアに入力されるプラネタリギアを備えていることを特徴とする請求項2に記載の電気自動車。
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