JP2014047100A - 酸化物超電導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安定した厚膜化を実現する酸化物超電導体の製造方法を提供する。
【解決手段】実施の形態の酸化物超電導体は、イットリウムおよびランタノイド族(ただしセリウム、プラセオジウム、プロメシウム、ルテニウムを除く)を含む金属、バリウムおよび銅が混合されたトリフルオロ酢酸塩を含むフルオロカルボン酸塩を溶解し、メタノールを含むアルコールを溶媒とするコーティング溶液を調整し、コーティング溶液に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)をクラック防止剤として添加し、クラック防止剤が添加されたコーティング溶液を用い、基板上にゲル膜を形成し、ゲル膜に、3%以下の酸素分圧で、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるよう仮焼を行い、仮焼膜を形成し、仮焼膜に本焼および酸素アニールを行い酸化物超電導体の膜を形成する。
【選択図】図16

Description

本発明の実施の形態は、酸化物超電導体の製造方法に関する。
超電導転位温度(Tc)が理論的に39K以下とされる金属系超電導体に対して高温超電導体は高いTcを持つ金属酸化物の総称である。1986年に最初の酸化物超電導体が発見され、約25年が経過し、超電導送電ケーブル、核融合炉、磁気浮上式列車、加速器、磁気診断装置(MRI)など、冷却コストを含めてもメリットがある大型設備への応用が実現しつつある。
酸化物超電導体には主にビスマス系、イットリウム系、水銀・タリウム系超電導体などがあるが、液体窒素温度の磁場中で最も高い特性を発揮し、かつ貴金属が不要なイットリウム系超電導体が近年最も注目を集めている。
イットリウム系超電導体の製法の中で、2000年頃から急速に勢力を伸ばしてきたのが、トリフルオロ酢酸塩を用いるMOD法、いわゆるTFA-MOD(Metal organic deposition using
trifluoroacetates)法である。この製法はフッ素を使い液相で成長させて原子レベルの配向が再現性良く得られる手法である。また、この手法は真空装置が不要なだけでなく、成膜と超電導形成が別に行われるためにプロセス制御が容易であり、安定的に超電導線材が得られるという特徴がある。
TFA-MOD法の最大の課題は膜の厚膜化である。1回塗りではクラックが発生し、厚膜化が困難であるため、例えば、反復コートによる厚膜化が検討されている。また、例えば、クラック防止剤を添加しての厚膜化が検討されている。
特許第4738322号公報 米国特許第7833941号明細書 欧州特許第1334525号明細書
P.M. Mankiewich, et al. Appl. Phys. Lett. 51,(1987), 1753-1755 A. Gupta, et al. Appl. Phys. Lett. 52, (1988), 2077-2079 P.C. McIntyre, et al. J.Appl. Phys. 71, (1992), 1868-1877 J.A. Smith, et al. IEEETrans. on Appl. Supercond., 9, (1999), 1531-1534 P.C. McIntyre, et al., Mat. Soc. Symp. Proc. 169, (1990),743-746 M. Rupich, et al., Supercond. Sci. Technol. 23(2010) 014015 T.Araki, et al., IEEE Trans. on Appl. Supercond., 13, (2003), 2803-2808
超電導転位温度(Tc)が理論的に39K以下とされる金属系超電導体に対して高温超電導体は高いTcを持つ金属酸化物の総称である。1986年に最初の酸化物超電導体が発見され、約25年が経過し、超電導送電ケーブル、核融合炉、磁気浮上式列車、加速器、磁気診断装置(MRI)など、冷却コストを含めてもメリットがある大型設備への応用が実現しつつある。
酸化物超電導体には主にビスマス系、イットリウム系、水銀・タリウム系超電導体などがあるが、液体窒素温度の磁場中で最も高い特性を発揮し、かつ貴金属が不要なイットリウム系超電導体が近年最も注目を集めている。第1世代と呼ばれるビスマス系超電導線材は銀を60vol%以上必要とし、製造撤退が相次いでいる。第2世代のイットリウム系超電導体は1契約の販売量で、第1世代の10年以上の合計販売線材長を超えており、実用化への期待が高まっている。
水銀・タリウム系酸化物はTcが130K以上と非常に高いものの、冷却しても特性が向上せず、イットリウム系酸化物と比べると液体窒素温度で得られる電流密度は小さく、実用性の観点から問題がある。また、最近発見された鉄ヒ素系酸化物はTcが60K台で液体窒素中で動作しない。特性面で問題を抱えている。
このイットリウム系超電導体とは、YBa2Cu3O7-xの組成で表され、ペロブスカイト構造を持つ超電導体のことで、イットリウムにランタノイド系の希土類元素が置換した酸化物(ただし一部の元素を除く)も超電導特性を示す。その作成方法としてはこれまで、パルスレーザー堆積法、液相成長堆積法、電子ビーム(EB)法、金属有機物堆積(MOD)法などが用いられてきた。
これらの製法の中で、2000年頃から急速に勢力を伸ばしてきたのが、トリフルオロ酢酸塩を用いるMOD法、いわゆるTFA-MOD(Metal organic deposition using
trifluoroacetates)法である。旧来のMOD法がフッ素は使わず固相成長であるのに対し、こちらの製法はフッ素を使い液相で成長させて原子レベルの配向が再現性良く得られる手法である。この手法は真空装置が不要なだけでなく、成膜と超電導形成が別に行われるためにプロセス制御が容易であり、安定的に超電導線材が得られるという特徴がある。また液相成長により真空無しで再現性良く数百mに渡り原子レベルの配向が得られる、人類史上初の驚異的手法でもある。また幅広の線材を焼成後に細線化して量産することが可能なプロセスであることも2012年時点での契約ベースにおいて、100%近い販売シェアにつながったものと思われる。
この手法はEB法(非特許文献1参照)によりBaCO3を経由せずに超電導体を作成する方法に源流があり、翌年Gupta等(非特許文献2参照)が、Mankiewich等の前駆体と同様の前駆体を安価なMOD法で作成しようとした試みが最初のTFA-MOD法の試みとなっている。
Gupta等が作成した超電導体は出発原料の基が異なるために溶解度差が原因と思われる沈殿物や不純物に悩まされたと推定され、超電導特性はMankiewichの1/100程度でしかなかった。そのためTFA-MOD法が示す本来の液相成長による原子レベルの配向組織が実現することなく、低い特性の超電導体となってしまったことが予想される。
その溶解度差を解消するために原料を酢酸塩に統一したのがMITのCima教授グループのMcIntyre等(非特許文献3参照)であった。それにより特性がMankiewich等とほぼ同等のものが得られるようになった。そののち、詳細内容が不明ながら膜厚1μmが可能になったとの発表がCima教授グループのSmith等から1998年に報告(非特許文献4参照)があり、TFA-MOD法が1999年ごろから盛んに研究されるようになった。
TFA-MOD法の最大の弱点は1回塗りで厚くできないと考えられた点であった。超電導線材は液体窒素下での超電導臨界電流値が重要であり、膜厚の増大が低コストにつながるため盛んに開発が行われた。その厚膜化に関して、上述のSmith等はプロセスの制御で膜厚が増大したと発表したが、高純度の溶液での追試では臨界膜厚は0.30-0.35μmであった。臨界膜厚とは最適プロセスで得られる最大膜厚であり、プロセスの変更のみで厚膜が実現したと説明には矛盾がある。Smith等の実験においては、何らかの不純物が混在し、それがクラック防止に効いて1μmの膜厚が実現した可能性が考えられる。
TFA-MOD法における厚膜化は、体積減少率が80〜90%にも達する仮焼時のクラック防止技術がカギを握る。TFA-MOD法の高純度溶液で成膜される超電導膜の臨界膜厚は僅かに0.30μmであり、0.35μm成膜ではクラックが発生しやすくなり、再現性が低下する。
Rupich等はこの課題に対して2000年の発明(特許文献3参照)において-(CH2)n-を主に含むクラック防止剤を使って厚膜化を行っている。炭化水素を主鎖とする有機物を添加する手法は、旧来のMOD法では一般的な手法であった。
しかし、この手法をTFA-MOD法に適用する場合、主に次の点で問題が生じると思われる。トリフルオロ酢酸塩のフッ素と-(CH2)n-の水素は反応しやすく、その化学反応により中心の炭素原子が残りやすくなる。また分子量が小さく低温で反応し昇華の可能性のあるCu成分は膜の上部に集積し、逆に重たいBa成分が下部に集積すると考えられる。
トリフルオロ酢酸基に結合した金属元素の原子量が小さいほど移動しやすくなる。仮焼時に最も低分子量のトリフルオロ酢酸銅昇華防止を目的として、McIntyre等(非特許文献5参照)は部分加水分解によるオリゴマー形成を行っている。逆に重たいBa成分が膜下部に偏析すると考えられ一部試料の断面TEM像にもこの傾向が現われている。
TFA-MOD法は本焼時に液相を形成するため仮焼膜中の偏析解消が期待される。しかし、さまざまな実験からその液相の流動性は低く移動距離は10〜20nmにも満たないと思われる。一回塗り厚膜化で得られる空隙の多い仮焼膜が、液相を形成する本焼後に解消されずに残るのもこの理由のためである。疑似液層形成には3種類の金属元素が所定の濃度で存在する必要性がある。金属元素の偏析が大きくなれば本焼時に疑似液相自体が形成されず超電導体のペロブスカイト構造が作れず、超電導特性が低下する。そのため-(CH2)n-の厚膜化方式では0.6μm程度で特性が低下し、0.8μmでより特性が不安定になると考えられる。少サンプルであれば厚膜で特性が得られるものもあるが、500mや1,000m長尺テープにおいて両端部間での特性実現は難しい。途中一か所の特性低下が、テープ全体の特性低下につながるためである。
Rupich等の技術では偏析が原因となり、超電導を作れる膜厚上限が0.6〜0.8μmになると考えられる。そのため更に電流値を稼ぐ必要から、反復コートによる厚膜化が開発されてきた。しかし反復コート厚膜化には別の問題が生じていた。1回目の成膜層上部にゲル膜を成膜し、2回目の成膜層を形成して仮焼熱処理を行うために下層ほど多くの熱履歴を受けて特性が不安定になりやすいという欠点が存在した。さらに1層目と2層目の界面に不均質層が形成され、あるいは本焼時のランダム成長の起点となる核が形成されるなど、特性を低下要因が多い技術でもあった(非特許文献6参照)。
2008年8月までに試みられた反復コート厚膜化において、日米欧を含むTFA-MOD法の全てのグループにおいて100mを超す線材が安定的に得られたとの報告がされなかったのは上記の理由のためと考えられる。残留炭素の問題、金属種の偏析の問題、反復コート時下層熱履歴による特性不安定化の問題、界面不均化によるランダム成長の問題、などが理由となるためである。
クラック防止剤が内部で化学反応を起こし、金属成分が偏析する問題と、残留炭素成分として超電導特性を低下させる問題に対して、Arakiは-(CF2)n-を主として含むクラック防止剤を用いる厚膜化手法の開発を行った(特許文献1、特許文献2参照)。この手法はTFA-MOD法の仮焼時に炭素が追い出される機構である、Carbon expulsion scheme(非特許文献7参照)をベースに開発された技術でもある。TFA-MOD法の仮焼では燃焼を避けながら金属酸化物を一時的に形成させ、YとBaの結合酸素の一部がFに置換される。それら反応に無関係な炭素成分は沸点の低い物質となり揮発して除去される。これが炭素追い出し機構の要旨である。同じようにクラック防止剤でも残留炭素が残らないように、フッ素比率が高い有機物を使って厚膜化を行ったのがArakiの1回塗り厚膜化技術である。
1回塗り厚膜化技術はAraki等の2008年8月の国際学会発表以降、米国でも欧州でも急速に広まっていった。米国で行われている1回塗り厚膜化についてはプロセスの詳細が報告されていないため詳細は不明であるが、近い内容の厚膜化がおこなわれている可能性はある。1回塗り厚膜化技術は反復コート厚膜化法に比べて積層界面不安定化による線材としての特性不安定化が無く、TFA-MOD法で長時間の処理が必要と考えられる仮焼プロセスを1回で済ませることができる。そのため、特に0.5〜0.6μmを超す安定な膜を得ようとする場合に威力を発揮する技術である。
Arakiの2006年1回塗り厚膜化技術はクラックのない超電導膜で1.3μmもの1回塗り成膜を世界で初めて実現しており、小さいながらも超電導特性は得られたのは事実である。しかしその厚膜化技術で1.5μmや2.0μm分の超電導物質を成膜しようとした場合、安定的に成膜を行うには特別な仮焼条件が必要であることが分かってきた。また長尺線材製造には連続プロセスでの成膜が必要であり、クラック防止剤が添加されたコーティング溶液が長時間安定に存在する必要があった。一部のクラック防止剤は溶液と混合後に安定的に長時間存在できないものがあり、小サンプルで成膜可能でも、長時間溶液を保持する連続プロセスに向かない物質があることも分かってきた。
クラック防止剤を含まない仮焼プロセスでは3種のトリフルオロ酢酸塩が比較的近い温度で分解するため、応力集中によるクラック発生防止のためゆっくりとした昇温が必要であった(非特許文献7)。一方、クラック防止剤を添加した場合にはゆっくりとした昇温を行うとCuOが粒成長するために内部に応力が蓄積されクラックが生じやすいことが分かってきた。
2006年当時は酸素分圧を100%に固定しての仮焼を行ってきたが、仮焼プロセスによってはクラック防止剤が燃焼することがあり、必ずしも100%酸素雰囲気での仮焼が良くないこともわかってきた。
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、安定した厚膜化を実現する酸化物超電導体の製造方法を提供することにある。
実施の形態の酸化物超電導体の製造方法は、イットリウムおよびランタノイド族(ただしセリウム、プラセオジウム、プロメシウム、ルテニウムを除く)を含む金属、バリウムおよび銅が混合されたトリフルオロ酢酸塩を含むフルオロカルボン酸塩を溶解し、メタノールを含むアルコールを溶媒とするコーティング溶液を調整し、前記コーティング溶液に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)をクラック防止剤として添加し、前記クラック防止剤が添加されたコーティング溶液を用い、基板上にゲル膜を形成し、前記ゲル膜に、3%以下の酸素分圧で、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるよう仮焼を行い、仮焼膜を形成し、前記仮焼膜に本焼および酸素アニールを行い酸化物超電導体の膜を形成する。
第1の実施の形態のコーティング溶液調整の一例を示すフローチャートである。 第1の実施の形態のコーティング溶液およびクラック防止剤から超電導体を成膜する方法の一例を示すフローチャートである。 実施例1のCF2H-(CF2)3-COOH添加で得られたゲル膜の外観写真である。 実施例1のCF2H-(CF2)4-CF2H添加で得られたゲル膜の外観写真である。 実施例1のCF2H-(CF2)3-COOH添加で得られたゲル膜の断面SEM像である。 実施例1のCF2H-(CF2)3-COOH添加で得られたゲル膜のTOF-SIMS像である。 実施例1等の仮焼プロファイルである。 実施例1のCF2H-(CF2)4-CF2H添加で得られたゲル膜の断面SEM像である。 実施例4等の本焼プロファイルである。 実施例5のCF2H-(CF2)3-COOH添加で得られた仮焼膜の断面TEM観察像である。 実施例5のCF2H-(CF2)7-COOH添加で得られた仮焼膜の断面TEM観察像である。 クラック防止剤使用の厚膜化、仮焼までのモデル図である。 厚膜化に関して仮焼時酸素分圧が与える影響を示す図である。 実施例7の1回塗り厚膜仮焼膜内部のEDSマップである。 本焼時のクラック発生モデルである。 実施例16の1回塗り5.2μm厚の超電導膜の断面TEM像である。
以下、実施の形態の酸化物超電導体について、図面を参照しつつ説明する。
実施の形態は、酸化物超電導線材やその応用に関わり、特に超電導送電ケーブル、超電導コイル、超電導マグネット、MRI装置、磁気浮上式列車、SMESなどに使用される酸化物超電導体の製造方法に関する。
実施の形態では、効果的で安定的な厚膜化を実現するため次のような解決手段を提供することとした。(1)TFA-MOD法のコーティング溶液中で安定的に存在するクラック防止剤、(2)仮焼時長時間保持でクラックが生じやすい理由と対策、(3)クラック防止剤の燃焼抑制に必要な仮焼条件である。
実施の形態によれば、連続プロセスにおいてダイコートやウェブコートのように長時間溶液にコーティングヘッドやメニスカス部が触れている状態でも安定的に成膜が行え、Arakiの先願(特許文献1、特許文献2)よりも安定的で1.5μmを再現性良く超える厚膜が得られる手法が提供される。
(第1の実施の形態)
本実施の形態の酸化物超電導体の製造方法は、イットリウムおよびランタノイド族(ただしセリウム、プラセオジウム、プロメシウム、ルテニウムを除く)を含む金属、バリウムおよび銅が概ね1:2:3となるよう混合されたトリフルオロ酢酸塩を含むフルオロカルボン酸塩を溶解し、メタノールを含むアルコールを溶媒とするコーティング溶液を調整し、コーティング溶液に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)をクラック防止剤として添加し、クラック防止剤が添加されたコーティング溶液を用い、基板上にゲル膜を形成し、ゲル膜に、3%以下の酸素分圧で、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるよう仮焼を行い、仮焼膜を形成し、仮焼膜に本焼および酸素アニールを行い酸化物超電導体の膜を形成する。
図1は、本実施の形態のコーティング溶液調整の一例を示すフローチャートである。
本実施の形態の製造方法では、まず、イットリウムおよびランタノイド族(ただしセリウム、プラセオジウム、プロメシウム、ルテニウムを除く)を含む金属、バリウムおよび銅が概ね1:2:3の原子比となるよう混合されたトリフルオロ酢酸塩を含むフルオロカルボン酸塩を溶解し、メタノールを含むアルコールを溶媒とするコーティング溶液を調整する。
具体的には、図1に示すように、金属酢酸塩、例えば、イットリウム、バリウム、銅それぞれの酢酸塩を準備する(a1)。また、フルオロカルボン酸を準備する(a2)。次に、準備した金属酢酸塩を水に溶解させ(b)、準備したフルオロカルボン酸と混合し反応させる(c)。得られた溶液を精製し(d)、不純物入りの粉末(ゾル)またはゲルを得る(e)。その後、得られたゾルまたはゲルをメタノールに溶解し(f)、不純物入りの溶液を作成する(g)。得られた溶液を精製し不純物を取り除き(h)、溶媒入り粉末(ゾル)またはゲルを得る(i)。さらに、得られたゾルまたはゲルをメタノールに溶解し(j)、コーティング溶液が準備される(k)。
なお、「概ね1:2:3の原子比」とは、原子比が完全に1:2:3である場合に限らず、多少のずれを許容する概念である。多少のずれとは、例えば、酢酸塩の純度や結晶水量に起因するものであり、原料混合時に、1:2:3から原子比が5%程度ずれることを許容する概念である。なお、この組成には磁場中超電導特性向上を目指しての、例えばDy2O3粒子などのドープを含まない量を示している。
フルオロカルボン酸塩には、トリフルオロ酢酸塩を70mol%以上含むことが望ましい。TFA-MOD法に特徴的な本焼時の液相反応を引き起こすにはフッ素化カルボン酸が必要であるが、最も炭素数が少ないのがトリフルオロ酢酸である。炭素数が一つ増えたペンタフルオロプロピオン酸を一部用いた場合でも残留炭素増大が起き、YBa2Cu3O7-x超電導体のCuO面に炭素成分がCOまたはCO2の形で拡散し、超電導特性が低下する。そのためトリフルオロ酢酸は70mol%以上が望ましい。
また、メタノールが溶媒の80mol%以上であることが望ましい。アルコール系有機溶剤中で最も揮発性が高いのがメタノールである。その他のアルコールが少量混合していても成膜は可能となるが、20mol%以上となると成膜および焼成後に残留炭素成分が増大し、超電導特性が低下する。メタノール以外の溶媒は20mol%までであれば許容されるが、特性がやや低下する傾向がある。
図2は、本実施の形態のコーティング溶液およびクラック防止剤から超電導体を成膜する方法の一例を示すフローチャートである。
本実施の形態の製造方法では、コーティング溶液に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)をクラック防止剤として添加し、クラック防止剤が添加されたコーティング溶液を用い、基板上にゲル膜を形成し、ゲル膜に、3%以下の酸素分圧で、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるよう仮焼を行い、仮焼膜を形成し、仮焼膜に本焼および酸素アニールを行い酸化物超電導体の膜を形成する。
具体的には、図2に示すように、まず、先に調整したコーティング溶液とクラック防止剤を準備する(a)。準備したコーティング溶液に、やはり準備したクラック防止剤を添加してクラック防止剤が入った混合コーティング溶液を作成する(b)。その後、混合コーティング溶液を基板上に、例えば、ダイコート法により塗布することで成膜し(c)、ゲル膜を得る(d)。その後、得られたゲル膜に、一次熱処理である仮焼を行い、有機物を分解し(e)、仮焼膜を得る(f)。さらに、この仮焼膜に二次熱処理である本焼を行い(g)、その後、例えば、純酸素アニールを行い(h)、超電導体(i)を得る。
基板は、例えば、LaAlO3単結晶基板であるが、ゲル膜が形成されるものであれば、これに限定されるものではない。CeO2中間層が成膜されたYSZ(酸化イットリウム強化の酸化ジルコニウム)基板でもよく、CeO2/YSZ/Y2O3成膜の金属テープ上でもよい。超電導成膜時に化学反応を起こさない中間層で、格子定数が合致していればその上部に超電導成膜が可能となる。
クラック防止剤は、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)を用いる。特に、n=2〜6、m=2~5であることが、クラック防止効果が大きいため、望ましい。
添加するクラック防止剤には、トリフルオロ酢酸との反応が無く、同じ強酸で混合時に偏析が少ないパーフルオロカルボン酸が好ましい。添加されるクラック防止剤中に、パーフルオロカルボン酸が75mol%以上であるとクラック防止効果が大きくなるため望ましい。強酸を示さないクラック防止剤を用いた場合、強酸のトリフルオロ酢酸塩と溶液中で分離が進みクラック防止効果が失われてしまうためである。
ただし、水素化の無いパーフルオロカルボン酸は、カルボキシル基の逆側が中性化し、カルボキシル基が金属元素などを囲んでミセルのようになり、溶液中での分離を促進するため、クラック防止効果が低くなる。そのため、クラック防止剤として有効な物質は、化学式CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOHで記載される物質となる。これらの物質がクラック防止剤中75mol%以上溶液に添加されると、クラック防止効果が大きくなるため望ましい。
クラック防止剤の添加量としては、トリフルオロ酢酸塩の物質量に対して3〜25atm%が適量である。少なすぎる場合にはクラック防止効果が失われ、多すぎる場合には残留炭素により超電導特性が低下するおそれがある。
クラック防止剤の添加から成膜終了までの時間はメタノール蒸気量や水蒸気量を管理した空間でかつ短時間であることが望ましい。1時間以内の成膜であれば安定的な成膜が実現できる。しかし1,000mのテープを成膜する場合、1m/min.の成膜速度では16h40mの時間が必要となる。そのため溶液混合後、一定時間溶液が劣化しないクラック防止剤が必要となる。
本実施の形態のクラック防止剤による混合コーティング溶液は極めて安定である。クラック防止剤の添加後、ゲル膜を形成するまでの時間が60分以上はもちろん、24時間以上であっても良好な成膜を行うことが可能である。すなわち、図2中の混合コーティング溶液作成(図2中b)から成膜(図2中c)までの時間が、60分以上はもちろん、24時間以上であっても安定して成膜することが可能である。
特に、炭素数の少ないクラック防止剤を適用することで、クラック防止剤の添加後、ゲル膜を形成するまでの時間が7日以上、さらには14日以上であっても良好な成膜を行うことが可能である。
本実施の形態では、仮焼を、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるように行う。すなわち、仮焼時に200℃以上で保持する時間は、合計が7時間以下となる。
規定すべき温度は、トリフルオロ酢酸銅が分解し、CuOナノ微結晶が形成する温度である。この温度は、より正確には、210-220℃である可能性が高いが詳細は分かっていない。その温度以上での保持時間としては合計6時間以下である可能性があるが、現時点で分かっていることは200℃以上の保持温度を7時間以下とすることで良好な成膜が可能であるということである。
クラック防止剤を添加して得られる厚膜の仮焼膜には、クラック防止剤に起因する空隙が存在する。その空隙の周囲にはブリッジ部が存在するが、そのブリッジ部には多数のCuOナノ微結晶が存在し、温度保持時間とともに粒成長して応力が大きくなることが分かっている。その応力が一定量以上となった時にブリッジが破壊されクラックとなる。そのため厚膜の仮焼膜を成膜する場合にCuO形成後の温度保持は、なるべく短時間が望ましい。
一方、200℃以上で加熱が必要な最低時間がどれくらいかは現時点では不明である。TFA-MOD法ではトリフルオロ酢酸塩を分解して酸化物とし、一部をフッ化物とする必要がある。しかし、クラック防止剤を添加した場合にはその化学物質からもフッ素化が起きて短時間で反応が終了するためである。
少なくともクラック防止剤が無い場合には最低7時間程度の仮焼が必要であった(特許文献1、特許文献2参照)が、パーフルオロカルボン酸を用いた場合は最大7時間の仮焼としなければならない。このようにクラック防止剤を混合した溶液では、最適仮焼プロセスが大きく変化する。
また、本実施の形態では、仮焼を、3%以下の酸素分圧で実施する。よりよい成膜のために、酸素分圧は1%以下であることが望ましく、0.3%以下であることがより望ましい。低酸素でクラック防止剤が激しく燃焼するのを防ぐことによりクラックの発生が抑制されることが分かっている。
クラック防止剤の分解のために仮焼時には、酸素が必要である。しかし、その酸素量の下限値がどこにあるのか現時点で不明である。0.1%、0.01%、0.001%酸素での熱処理でも1回塗りでの厚膜は得られている。0.0001%酸素でも厚膜が得られているが、それ以下の酸素分圧実現はボンベガス内残留酸素成分が0.2ppm程度あるため、実験が困難である。
ただし、30%や10%ではクラック発生がかなり激しくなることも分かっており、この酸素分圧量で1.5μm程度の厚膜が得られにくいことも分かっている。現時点では1%酸素で熱処理した厚膜で、空隙が残留しながらも5.2μmの配向した超電導膜が得られることが分かっている。この膜においてぺロブスカイト構造の面方位が表面近傍まで基板方位と一致しており、TFA-MOD法の成長が実現していることが確認できている。
以上、本実施の形態によれば、クラック防止剤の選択、仮焼時の酸素濃度、仮焼時の熱処理条件を同時に実現することにより、クラックの無い厚膜の仮焼膜が安定的に得られる手法を提供する。この技術により、少なくとも1回塗りで、5.2μmの膜厚で、クラックの無い酸化物超電導体の膜が実現できる。
(第2の実施の形態)
本実施の形態の酸化物超電導体の製造方法は、イットリウムおよびランタノイド族(ただしセリウム、プラセオジウム、プロメシウム、ルテニウムを除く)を含む金属、バリウムおよび銅が概ね1:2:3となるよう混合されたトリフルオロ酢酸塩を含むフルオロカルボン酸塩を溶解し、メタノールを含むアルコールを溶媒とするコーティング溶液を調整し、コーティング溶液に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)におけるカルボン酸基(-COOH)のHが少なくとも一つ以上Y,
La, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Ba, Cuで置換された物質をクラック防止剤として添加し、クラック防止剤が添加されたコーティング溶液を用い、基板上にゲル膜を形成し、ゲル膜に、3%以下の酸素分圧で、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるよう仮焼を行い、仮焼膜を形成し、仮焼膜に本焼および酸素アニールを行い酸化物超電導体の膜を形成する。
本実施の形態は、クラック防止剤に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)におけるカルボン酸基(-COOH)のHが少なくとも一つ以上Y,
La, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Ba, Cuで置換された物質を含むこと以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については、記述を省略する。
本実施の形態は、クラック防止剤に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)におけるカルボン酸基(-COOH)のHが少なくとも一つ以上Y,
La, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Ba, Cuで置換された物質を用いる。この物質は、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)におけるカルボン酸基(-COOH)のHが、超電導体を構成する金属元素で置換された物質である。この物質も、クラック防止剤として機能する。
この物質は、例えば、HOCO-(CF2)2-COOHの水素を銅で置換したCuOCO-(CF2)2-COOCuでもよく、CF2H-(CF2)3-COOHの水素を銅で置換したCF2H-(CF2)3-COOCuでもよい。
クラック防止剤に水素量が極端に少ない場合、クラック防止効果が失われるおそれがある。これに対しては、適量、水素が金属元素で置換されていないクラック防止剤を加えることにより回避することができる。
例えば、CuOCO-(CF2)2-COOCuにHOCO-(CF2)2-COOHを等モル加えることにより、フッ素比率は80%にすることができクラック防止の効果を高めることができる。なおこの混合時には、HOCO-(CF2)2-COOCuが形成されていることが予想される。
したがって、本実施の形態においては、フッ素比率を下げるため、あるいは、水素比率を上げるために、コーティング溶液に、さらにCF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOHをクラック防止剤として添加することが望ましい。
本実施の形態においても、第1の実施の形態同様、クラックの無い厚膜の仮焼膜が安定的に得られる。そして、クラックの無い酸化物超電導体の厚膜が実現できる。
(実施例1)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液1Cs-base(実施例1、Coating Solution base)を得た。
コーティング溶液1Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えたものを混合コーティング溶液1Cs-Aとする。コーティング溶液1Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)4CF2Hをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えたものを混合コーティング溶液1Cs-Bとする。
混合コーティング溶液1Cs-Aを100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で1分後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、6枚のゲル膜1Cs-A-Gf-01(Gel film sample No.01)、1Cs-A-Gf-02、1Cs-A-Gf-03、1Cs-A-Gf-04、1Cs-A-Gf-05、1Cs-A-Gf-06をそれぞれ得た。同様に1Cs-Bからも1Cs-B-Gf-01、1Cs-B-Gf-02、1Cs-B-Gf-03、1Cs-B-Gf-04、1Cs-B-Gf-05、1Cs-B-Gf-06をそれぞれ得た。
なお、全てのゲル膜は成膜直後両面に成膜されているが片方の面は成膜直後に拭き取っている。その拭き取りは乾燥状態で行っているために筋状にゲル膜が残されており、ゲル膜の拡大写真で筋状のものが見えるとすればこの拭きとりによるものである。この条件で成膜を行ったゲル膜は計算値で10μmであり、仮焼および本焼後の計算値は2.0μm、1.0μmである。
ゲル膜は吸湿性が非常に強くて劣化するため、ゲル膜として観察を行った1Cs-A-Gf-01、1Cs-A-Gf-02、1Cs-B-Gf-01、1Cs-B-Gf-02は、水分を遮断するテフロン(登録商標)系特殊容器に2枚ずつ入れ、内部のガスを十分乾燥酸素ガスで置換した後にゲル膜を入れ、直後に外部からの吸湿を遮断するために蓋をした状態となっている。ゲル膜をプラスチック容器に両面テープ固定したのは観察の都合上である。
図3は、CF2H(CF2)3COOHをクラック防止剤で用い厚膜化を行った10μm厚のゲル膜の外観写真である。図3(a)が成膜直後(5分以内)、図3(b)は成膜後96時間の外観写真である。図3(a)および(b)に共通して薄い青色のゲル膜が均一に成膜されている。
図4は、CF2H(CF2)4CF2Hをクラック防止剤で用い厚膜化を行った10μm厚のゲル膜の外観写真である。図4(a)が成膜直後(5分以内)、図4(b)は成膜後48時間、図4(c)は成膜後96時間の外観である。図4(a)は全面に薄い青色のゲル膜が均一に成膜され、図4(b)ではそれが中央部に凝集し、図4(c)ではさらにそれが凝集したものとなっている。
成膜直後の写真を、1Cs-A-Gf-01、1Cs-A-Gf-02は図3(a)に、1Cs-B-Gf-01、1Cs-B-Gf-02は図4(a)にそれぞれ示す。容器越しで多少は曇って見えるものの全てのゲル膜が薄い青色で均一に成膜されていることがわかる。
ゲル膜が置かれた環境は25℃である。内部の湿度は0-5%のまま保持される。1Cs-B-Gf-01、1Cs-B-Gf-02は48時間が経過した時点で2枚とも収縮する傾向がみられ、図4(b)のようになってしまった。図4(a)左が1Cs-B-Gf-01である。さらに96時間経過後には図4(c)のようになってしまった。一方、1Cs-A-Gf-01、1Cs-A-Gf-02は96時間経過後に図3(b)で2枚とも外観上はほとんど変化が無く薄い青色のゲル膜を保っており、240時間後でも変化が無かった。
図5は、CF2H(CF2)3COOHをクラック防止剤で用い厚膜化を行った10μm厚のゲル膜の断面SEM像である。ゲル膜1Cs-A-Gf-01(図3(a)左)を湿度のある雰囲気にさらすことなくSEM観察を行った結果が図5である。
ゲル膜は計算値とほぼ同じ10μm程度の膜厚であることが分かった。また長期間乾燥雰囲気で保管したためと思われる表面に体積で3%程度となる乾燥状態の層が見られたものの、その他は均質な状態であった。
図6は、図5のTOF-SIMS像である。ゲル膜1Cs-A-Gf-01をTOF-SIMSで分析した結果が図6である。
Y+, Ba+, Cu+成分に偏析が全く見られない。仮焼前の状態であるために炭素成分も含むが、その成分も均質に混合されていることが図6の結果からわかる。クラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHを用いた厚膜化では均質なゲル膜が形成されていることが分かった。
図7は、TFA-MOD法の仮焼プロファイルである。残りのゲル膜1Cs-A-Gf-03、1Cs-A-Gf-04、1Cs-A-Gf-05、1Cs-A-Gf-06、1Cs-B-Gf-03、1Cs-B-Gf-04、1Cs-B-Gf-05、1Cs-B-Gf-06は、それぞれ図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を9h43mとし、250-300℃を1h40m、300-400℃を0h20mとするプロファイルにて熱処理を行った。
1Cs-A-Gf-03、1Cs-A-Gf-04、1Cs-B-Gf-03、1Cs-B-Gf-04は10%酸素ガス中で仮焼を行い、1Cs-A-Gf-05、1Cs-A-Gf-06、1Cs-B-Gf-05、1Cs-B-Gf-06は100%酸素ガス中で仮焼を行った。その結果、クラックの無い仮焼膜が得られたのは1Cs-A-Gf-03、1Cs-A-Gf-04だけであった。
クラック防止剤として、CF2H(CF2)3COOHとCF2H(CF2)4CF2Hは分子量がほとんど同じである。またフッ素比率(フッ素原子+水素原子に対するフッ素原子の割合)も大差ない。両者の差として考えられるものは溶液中でトリフルオロ酢酸塩と安定して共存できるか否かである。
トリフルオロ酢酸はその構造上、カルボキシル基部分からCF3-側に電子の存在確率が移動しており結合している水素や金属元素がかい離しやすい。トリフルオロ酢酸の推定pHは-0.6程度と有機物ながらかなりの強酸性を示す。
クラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHは同じ構造を持つために強酸同士で共存可能であるが、CF2H(CF2)4CF2Hはその構造を持たないために溶液中で分離していると考えられる。そのためゲル膜でも不安定な状態は維持され、時間とともに膜内部が分離して図4のような結果になったと考えられる。
コーティング溶液にクラック防止剤を混合してから短時間のうちに成膜を行えばゲル膜は得られることもあるが、連続プロセスではコーティング溶液にクラック防止剤を添加後に成膜までの間に一定時間が経過してしまう。その場合にCF2H(CF2)4CF2Hはクラック防止剤として適さないことが分かった。
CF2H(CF2)4CF2Hがクラック防止剤として適さない理由を調べるため、CF2H(CF2)3COOHを用いた場合のゲル膜との違いを調べることとした。1Cs-A-Gf-01を再現した1Cs-A-Gf-07、1Cs-A-Gf-08を作り、劣化が起きないように乾燥雰囲気の瓶に入れ、移動または劣化が進行しないように冷蔵庫(約8℃)でゲル膜を24時間だけ保管し分析を行った。ゲル膜の分析を行う前に1Cs-A-Gf-08を冷蔵庫中で7日間保管した。この場合は、ゲル膜は図4のような移動することなく維持されることが分かった。
図8は、CF2H(CF2)4CF2Hをクラック防止剤で用い厚膜化を行った10μm厚のゲル膜の断面SEM像である。1Cs-A-Gf-07は、保管せずに直ぐにゲル膜の断面SEM観察を行った。その結果を図8に示す。
図5との比較からも明らかなように、図8のゲル膜は保管期間が短く劣化が少ないはずの冷蔵保管にも関わらず、上部から中央部まで何らかの変質がみられる。これが保管時充填ガス(純酸素)によるものなのか、単純に凝集しようとしたが基板直上部は基板とゲルが密着していることにより応力で凝集が逃れ上部だけ変質したのかは、現時点で不明である。外見が健全に見える膜であっても、本発明によらないクラック防止剤を用いるとゲル膜内部に偏析が起きてしまうことが分かった。
(実施例2)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液2Cs-baseを得た。
コーティング溶液2Cs-baseにクラック防止剤として以下の物質をトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えた。HOCO(CF2)2COOH、HOCO(CF2)3COOH、HOCO(CF2)4COOH、HOCO(CF2)5COOH、HOCO(CF2)6COOH、HOCO(CF2)7COOH、HOCO(CF2)8COOH、HOCO(CF2)10COOHを2Cs-baseに加えたコーティング溶液をそれぞれ、2Cs-PFDA-C04(実施例2、Coating Solution、PerFluoroDioic Acid、number of
Carbon 04)、2Cs-PFDA-C05、2Cs-PFDA-C06、2Cs-PFDA-C07、2Cs-PFDA-C08、2Cs-PFDA-C09、2Cs-PFDA-C10、2Cs-PFDA-C12とする。
HOCO(CF2)O(CF2)2O CF2COOH、HOCO(CF2)O(CF2)O(CF2)2O
CF2COOHを2Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ2Cs-PFO-C06(PerFluoro-3, 6-diOxaoctane-1, 8-dioic acid)、2Cs-PFO-C08とする。
CF2H(CF2)2CF2H、CF2H(CF2)3CF2H、CF2H(CF2)4CF2H、CF2H(CF2)5CF2H、CF2H(CF2)6CF2H、CF2H(CF2)8CF2Hを2Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ2Cs-PFA-C04(PerFluoro Alkan)、2Cs-PFA-C05、2Cs-PFA-C06、2Cs-PFA-C07、2Cs-PFA-C08、2Cs-PFA-C10とした。
CF3(CF2)2COOH、CF3(CF2)3COOH、CF3(CF2)4COOH、CF3(CF2)5COOH、CF3(CF2)6COOH、CF3(CF2)7COOH、CF3(CF2)8COOH、CF3(CF2)9COOHを2Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ2Cs-PFC-C04(PerFluoro Carboxylic acid)、2Cs-PFC-C05、2Cs-PFC-C06、2Cs-PFC-C07、2Cs-PFC-C08、2Cs-PFC-C09、2Cs-PFC-C10、2Cs-PFC-C11とした。
CF2H(CF2)2COOH、CF2H(CF2)3COOH、CF2H(CF2)4COOH、CF2H(CF2)5COOH、CF2H(CF2)6COOH、CF2H(CF2)7COOH、CF2H(CF2)8COOH、CF2H(CF2)9COOHを2Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ2Cs-HPFC-C04(5H-PerFluoro Carboxylic acid)、2Cs-HPFC-C05、2Cs-HPFC-C06、2Cs-HPFC-C07、2Cs-HPFC-C08、2Cs-HPFC-C09、2Cs-HPFC-C10、2Cs-HPFC-C11とした。
クラック防止剤を添加した上記記載の全ての混合コーティング溶液をそれぞれ100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で容器混合60分後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、それぞれ1枚のゲル膜を得た。例えば、混合コーティング溶液2Cs-PFDA-C04から得られたゲル膜は、2Gf-PFDA-C04とする。
全てのゲル膜を、図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を9h43mとし、250-300℃を1h40m、300-400℃を0h20mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は10%であり、加湿は4.2%である。例えばゲル膜2Gf-PFDA-C04から得られた仮焼膜を2Cf-PFDA-C04とする。
2Cf-PFO-C06、2Cf-PFO-C08、2Cf-PFA-C04、2Cf-PFA-C05、2Cf-PFA-C06、2Cf-PFA-C07、2Cf-PFA-C08、2Cf-PFA-C10、2Cf-PFC-C04、2Cf-PFC-C05、2Cf-PFC-C06、2Cf-PFC-C07、2Cf-PFC-C08、2Cf-PFC-C09、2Cf-PFC-C10、2Cf-PFC-C11でクラックが確認され、2Cf-PFDA-C04、2Cf-PFDA-C05、2Cf-PFDA-C06、2Cf-PFDA-C07、2Cf-PFDA-C08、2Cf-PFDA-C09、2Cf-PFDA-C10、2Cf-PFDA-C12、2Cf-HPFC-C04、2Cf-HPFC-C05、2Cf-HPFC-C06、2Cf-HPFC-C07、2Cf-HPFC-C08、2Cf-HPFC-C09、2Cf-HPFC-C10、2Cf-HPFC-C11ではクラックは発生しなかった。
発明者の先願(特許文献1、特許文献2)時の成膜は、すべてコーティング溶液にクラック防止剤を添加し直後に成膜を行いクラック防止効果を確認できたが、今回は連続成膜を意識した60分の静置時間をおいた。その時間で、溶液内部で分離などが起きたものと考えられる。
CF2H(CF2)2CF2H、CF2H(CF2)3CF2H、CF2H(CF2)4CF2H、CF2H(CF2)5CF2H、CF2H(CF2)6CF2H、CF2H(CF2)8CF2Hは分子構造において両端部の水素がプラスに帯電し、その付近のフッ素がマイナスに帯電する。そのために水素化パーフルオロカルボン酸のような水素結合が期待できるはずだがクラック防止効果は確認できなかった。
これらの物質はフッ素化された直鎖とカルボン酸基を持たないために強酸としての性質が無い。そのためにトリフルオロ酢酸塩を混合しても分離してしまい、クラック防止効果が無くなったものとも割れる。クラック防止効果を安定的に発揮させるには、強酸を示す構造であるフッ素化された直鎖とカルボキシル基を同時に持つ必要がある。
HOCO(CF2)O(CF2)2O CF2COOH、HOCO(CF2)O(CF2)O(CF2)2O
CF2COOHはフッ素化された直鎖とカルボン酸基を持つためにトリフルオロ酢酸塩と均一な混合が期待できるが、実験結果からするとかなり激しくクラックが発生しており、粉状に割れてしまっている。
この物質の直鎖はフッ素と酸素が混在して電気陰性度に差がある。仮焼時にその部分にトリフルオロ酢酸塩でプラスに帯電した金属塩からの攻撃を受けて直鎖が分断され、クラック防止能力を失ったものと考えることができる。そのためクラック防止効果を発揮するには直鎖に酸素をはさむ構造ではなく、直鎖に炭素を連続して持つ構造が望ましいと考えられる。
CF3(CF2)2COOH、CF3(CF2)3COOH、CF3(CF2)4COOH、CF3(CF2)5COOH、CF3(CF2)6COOH、CF3(CF2)7COOH、CF3(CF2)8COOH、CF3(CF2)9COOHは上記の二つの条件を満たしているがクラックが発生している。これはカルボン酸基の水素から電子の存在確率が奪われてプラスに帯電するものの、マイナスに帯電するのはカルボン酸基付近のフッ素であり、カルボン酸基の対極にある直鎖は電気的に中性となってしまう。
そのためにクラック防止剤は石鹸のミセルのようにマイナスに帯電した元素を取り囲み、クラック防止効果が失われたものと考えられる。特に60分静置した今回はその効果が大きくなったと考えられる。また同じ理由から、端部を水素化された物質はクラック防止効果を持っているものと推定される。
実施例2の結果から、安定したクラック防止効果を発揮させる物質は、上記でクラックを発生させた3系統の物質が示す全ての条件を満たす必要がある。その物質は2系統しかない。CHF2-(CF2)n-COOH
とHOCO-(CF2)m-COOHである。
(実施例3)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液3Cs-baseを得た。
コーティング溶液3Cs-baseにクラック防止剤として以下の物質をトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えた。HOCO(CF2)2COOH、HOCO(CF2)3COOH、HOCO(CF2)4COOH、HOCO(CF2)5COOH、HOCO(CF2)6COOH、HOCO(CF2)7COOH、HOCO(CF2)8COOH、HOCO(CF2)10COOHを3Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ、3Cs-PFDA-C04(実施例2、Coating Solution、PerFluoroDioic Acid、number of
Carbon 04)、3Cs-PFDA-C05、3Cs-PFDA-C06、3Cs-PFDA-C07、3Cs-PFDA-C08、3Cs-PFDA-C09、3Cs-PFDA-C10、3Cs-PFDA-C12とする。
CHF2(CF2)2COOH、CHF2(CF2)3COOH、CHF2(CF2)4COOH、CHF2(CF2)5COOH、CHF2(CF2)6COOH、CHF2(CF2)7COOH、CHF2(CF2)8COOH、CHF2(CF2)9COOHを3Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ3Cs-HPFC-C04(5H-PerFluoro Carboxylic acid)、3Cs-HPFC-C05、3Cs-HPFC-C06、3Cs-HPFC-C07、3Cs-HPFC-C08、3Cs-HPFC-C09、3Cs-HPFC-C10、3Cs-HPFC-C11とした。
クラック防止剤を添加した上記記載の全てのコーティング溶液をそれぞれ100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合3時間後、6時間後、1日後、3日後、7日後、14日後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、それぞれ1枚のゲル膜を得た。
得られたゲル膜を、図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を9h43mとし、250-300℃を1h40m、300-400℃を0h20mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は10%であり、加湿は4.2%である。
例えば溶液3Cs-PFDA-C04を用い、溶液混合後3時間、および1日後に成膜して得られた仮焼膜をここでは3Cf-PFDA-C04-3hour、3Cf-PFDA-C04-1dayとそれぞれ表記する。得られた仮焼膜の表面状態を調べたところ、3Cf-PFDA-C12-7day、3Cf-PFDA-C09-14day、3Cf-PFDA-C10-14day、3Cf-PFDA-C12-14day、3Cf-HPFC-C10-7day、3Cf-HPFC-C11-7day、3Cf-HPFC-C08-14day、3Cf-HPFC-C09-14day、3Cf-HPFC-C10-14day、3Cf-HPFC-C11-14dayではクラックが生じていることが分かった。
長い炭素鎖のクラック防止剤を混合した溶液を長期間保持するとクラックが発生しやすい傾向があることが分かった。しかし、これらのクラック防止剤を添加して数日間は溶液が安定的に維持され成膜が可能であることが分かった。
(実施例4)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液4Cs-baseを得た。
コーティング溶液4Cs-baseにクラック防止剤として以下の物質をトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えた。HOCO(CF2)2COOH、HOCO(CF2)3COOH、HOCO(CF2)4COOH、HOCO(CF2)5COOH、HOCO(CF2)6COOH、HOCO(CF2)7COOH、HOCO(CF2)8COOH、HOCO(CF2)10COOHを4Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ、4Cs-PFDA-C04、4Cs-PFDA-C05、4Cs-PFDA-C06、4Cs-PFDA-C07、4Cs-PFDA-C08、4Cs-PFDA-C09、4Cs-PFDA-C10、4Cs-PFDA-C12とする。
CHF2(CF2)2COOH、CHF2(CF2)3COOH、CHF2(CF2)4COOH、CHF2(CF2)5COOH、CHF2(CF2)6COOH、CHF2(CF2)7COOH、CHF2(CF2)8COOH、CHF2(CF2)9COOHを4Cs-baseに加えた混合コーティング溶液をそれぞれ4Cs-HPFC-C04、4Cs-HPFC-C05、4Cs-HPFC-C06、4Cs-HPFC-C07、4Cs-HPFC-C08、4Cs-HPFC-C09、4Cs-HPFC-C10、4Cs-HPFC-C11とした。
クラック防止剤を添加した上記記載の全てのコーティング溶液をそれぞれ100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、それぞれ1枚のゲル膜を得た。
得られたゲル膜を、図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を9h43mとし、250-300℃を1h40m、300-400℃を0h20mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は10%であり、加湿は4.2%である。例えば溶液4Cs-PFDA-C04を用いて得られた仮焼膜をここでは4Cf-PFDA-C04と表記する。
図9は、TFA-MOD法の本焼プロファイルである。全ての仮焼膜を、図9に示す本焼プロファイルにて焼成を行った。4.2%加湿の酸素1,000ppm混合アルゴンガス中、800℃で4時間保持して本焼を行い、続いて525℃より酸素アニールを行い超電導体をそれぞれ得た。
仮焼膜4Cf-PFDA-C04を本焼および酸素アニールして得られる超電導膜を4Ff-PFDA-C04(Fired film)と記載する。今回の試験において、LaAlO3単結晶基板上においては1μm級の厚膜成膜ではa/b軸配向粒の問題があり特性は1MA/cm2 (77K, 0T)程度しか上がらない問題があることは承知の上ではあるが、残留炭素による特性低下が容易に判別できるためにこの試験を行った。
超電導特性は誘導法による測定で行った。液体窒素中に磁場を印加し、完全反磁性が破れるときに出されるシグナルで臨界電流密度を推定する方法である。表1にその結果を示す。
炭素数が一定以下であれば特性が得られやすいが、一定以上となると特性が低下していることがわかった。これは残留炭素による超電導特性劣化が起きたためと推定される。
CHF2(CF2)nCOOHと、HOCO(CF2)mCOOHのそれぞれにクラック防止効果があることが分かっているが、超電導特性維持を考えた場合にはn=2,3,4,5,6、 m=2,3,4,5がより望ましいことが分かった。
(実施例5)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液5Cs-baseを得た。
コーティング溶液5Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOH、CF2H(CF2)7COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を5Cs-HPFC-C05、5Cs-HPFC-C09とした。
混合コーティング溶液5Cs-HPFC-C05と5Cs-HPFC-C09をそれぞれ100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、それぞれ1枚のゲル膜を得た。
得られたゲル膜を図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を9h43mとし、250-300℃を1h40m、300-400℃を0h20mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は10%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜は5Cf-HPFC-C05、5Cf-HPFC-C09である。
仮焼膜の内部構造観察を行うため、TEM観察を行った。図10は、CF2H(CF2)3COOHをクラック防止剤で用い厚膜化を行った仮焼膜の断面TEM観察像とその高倍率観察像である。図11は、CF2H(CF2)7COOHをクラック防止剤で用い厚膜化を行った仮焼膜の断面TEM観察像とその高倍率観察像である。
図10は左が全体図で右が拡大図である。下がLaAlO3単結晶基板であるが、膜表面が密な状態に対して基板近傍では空隙が多い構造となっていることがわかる。図10の仮焼膜は物質量から計算し、完全に密で空隙の無い仮焼膜となれば2.0μm程度の膜厚となるはずであるが、図から膜厚は3.2μmとなっている。そのため物質量から計算すると40%程度が空隙であると推定される。
一方、図11も似たような構造であり、見かけ膜厚は3.2μm程度となっている。こちらも計算では40%が空隙となっている。しかしその空隙の空間が図10との比較からかなり大きいことがわかる。
トリフルオロ酢酸メタノール溶液の熱分析結果などから、クラック防止剤を添加したコーティング溶液溶質の分解は、温度で見た場合に次の順であると考えられる。トリフルオロ酢酸銅、トリフルオロ酢酸イットリウムとバリウム、CF2H(CF2)3COOH、CF2H(CF2)7COOHである。
図12は、左から順に、クラック防止剤を添加した溶液、溶液から成膜されたゲル膜、仮焼時にトリフルオロ酢酸塩のみが分解された状態を示すモデル図である。溶液中ではトリフルオロ酢酸塩と相互作用しながらも均一に溶解しているものと推定される。成膜後はメタノールが無くなった状態となり、ゲル状態の膜になっていると推定される。
クラック防止剤が分解する直前には、トリフルオロ酢酸塩が分解しているので図12の右図のようになる。この時にクラック防止剤は液体状態である可能性もあり、分解した酸化フッ化物が凝集するのを促進する役目もあると考えられる。そのためにクラック防止剤は全てのトリフルオロ酢酸塩が分解したのち、なるべくそれに近い温度で分解したほうが凝集、すなわち空隙の粗大化が抑制されると考えられる。
今回の試験において分解温度が低いと考えられるクラック防止剤はCF2H(CF2)3COOHである。この理由から、CF2H(CF2)7COOHで得られた厚膜は、CF2H(CF2)3COOHで得られる厚膜よりも内部の空隙が大きくなったものと考えられる。
この空隙であるが、表面から深さ方向に距離が進むほどに空隙の大きさが大きくなっている。その空隙の大きさが臨界値以上となればクラックが発生すると考えられる。そのため、トリフルオロ酢酸塩の分解温度より、より離れた分解温度を持つと考えられるCF2H(CF2)7COOHでの厚膜化は、全く厚膜が得られないというわけではないが、分解温度がよりトリフルオロ酢酸塩の分解温度に近いと思われるCF2H(CF2)3COOHを用いた厚膜化の方がより安定的に厚膜が得られるものと考えられる。
(実施例6)
-(CF2)n-ベースのクラック防止剤は仮焼時に分解してガス化するなどして膜中にほとんど残らず散逸すると考えられる。一方、2008年ごろまで盛んに開発されてきた-(CH2)n-ベースのクラック防止剤は分解後にタール状の炭素成分が超電導物質内に残留して特性を大きく劣化させると考えられ、似たような構造ながら超電導成膜においては雲泥の差が出る。そのクラック防止剤の分解には酸素が必要であるため、その量が多すぎると燃焼が激しくなり、少なすぎると分解が不十分となることが危惧される。これを調べるために次のような実験を行った。
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液6Cs-baseを得た。
コーティング溶液6Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加え、混合コーティング溶液を6Cs-HPFC-C05を得た。
コーティング溶液6Cs-HPFC-C05を100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度14, 40, 70, 100mm/secで基板の引き上げを行い、それぞれ4枚のゲル膜を得た。ゲル膜はそれぞれ、6Gf-HPFC-C05-w014(withdrawal speed 014mm/sec)、6Gf-HPFC-C05-w040、6Gf-HPFC-C05-w070、6Gf-HPFC-C05-w100とする。
得られたゲル膜を4枚1組で図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を9h43mとし、250-300℃を1h40m、300-400℃を0h20mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は0.001%、0.01%、0.1%、0.3%、1%、3%、10%、100%で行った。加湿は4.2%である。
得られた仮焼膜は例えばゲル膜6Gf-HPFC-C05-w040を用いて酸素分圧1%であれば、仮焼膜6Cf-HPFC-C05-w040-1%である。この条件で引き上げ速度14,
40, 70, 100mm/secで得られたゲル膜を本焼まで行うと、空隙をゼロと仮定した理論膜厚は、超電導膜でそれぞれ、510、760、1,000、1,190nmである。
図13は、本焼後に膜厚510〜1190nmとなる超電導膜の仮焼膜であり(推定膜厚は本焼後の約3倍と想定される)、仮焼時酸素分圧により外観がどのように変化するかを調査した一覧図である。図13は、6Cf-HPFC-C05-w014-1%、6Cf-HPFC-C05-w040-1%、6Cf-HPFC-C05-w070-1%、6Cf-HPFC-C05-w100-1%、6Cf-HPFC-C05-w014-10%、6Cf-HPFC-C05-w040-10%、6Cf-HPFC-C05-w070-10%、6Cf-HPFC-C05-w100-10%、6Cf-HPFC-C05-w014-10%、6Cf-HPFC-C05-w040-100%、6Cf-HPFC-C05-w070-100%、6Cf-HPFC-C05-w100-100%の外観写真である。
図13からわかるように100%酸素雰囲気下で仮焼を行うと膜表面に揺らぎが生じたり、クラックが発生しやすくなることが分かった。10%酸素雰囲気下でもクラックの無い膜が得られないわけではないが、基板下部の液溜まり部分でクラックが生じているところを見てもわかるように、やや不安定な外観となっていた。図13では示していないが、酸素分圧が3%以下では安定的な成膜が出来ており、図13に示した1%酸素下での仮焼をはじめとして、0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、0.3%でもクラックの無い膜が得られていた。今回の試験で用いたアルゴンのボンベガスやラインガスは99.9999%の濃度しか保証しておらず、酸素分圧0.0001%以下は制御できない。
1回塗り厚膜化で1μm以上の膜を安定的に得るには、クラック防止剤の燃焼を制御する必要があり、3%以下の酸素分圧とするのが良いことが分かった。酸素量下限値は不明であるが、0.0001%でもクラック発生防止に効果があった。
(実施例7)
実施例5で得られた仮焼膜5Cf-HPFC-C05および5Cf-HPFC-C09について、断面TEM観察を行ったが、クラック防止剤を添加した場合にTFA-MOD法の仮焼で起きる反応に変化があるか否かを調べるため、EDSマップ測定をそれぞれ行った。
図14はクラック防止剤を添加して厚膜化を行い、仮焼膜の断面TEM観察を行った際にEDSマップの測定を行った結果である。クラック防止剤の有無で通常のTFA-MOD法との反応の違いを調べるために行った分析である。
5Cf-HPFC-C05のEDSマップを図14に示す。図14において枠で記した個所での元素の存在比を見比べたところ、CuOが形成しているであろうこと、Ba-O-Fは結晶化とは呼べない状態ながら混在していること、また一部はY-O-Fと共存していることが分かった。Y-O-Fはアモルファスに近い状態で分布していることも分かった。Ba-O-FとY-O-Fは不定比化合物であると考えられ、明らかな粒成長はしていないことが分かった。
一方、CuOは粒成長して時間とともに粗大化するであろうことも分かった。これらの一連の反応はTFA-MOD法の仮焼反応とほとんど変わりはなく、厚膜化においてCHF2(CF2)3COOHを添加してもTFA-MOD法の仮焼反応には影響が大きくは出ないことが分かった。
図15は、仮焼時に空隙が形成した1回塗り厚膜化技術で得られた仮焼膜のブリッジ部でCuO粒成長による応力がクラック発生原因となることを示すモデル図である。これまでの実験事実を総合すると、図15に示したモデルが1回塗り厚膜化時長時間高温保持でのクラック発生のモデルと考えている。
まず1回塗り厚膜化に必要なクラック防止剤を添加すると、その性質上図12に示すようにクラック防止剤分解時に空隙が形成されてしまう。その空隙の周辺部、これをブリッジ部と呼ぶとする。クラック防止剤を加えてもTFA-MOD法と同じ反応が起きるのでCuOは粒成長する。ブリッジ内部のCuO粒成長によりブリッジ部に応力がかかり、耐力の限界を超えるとクラックが発生する。これが図15に示したモデルである。
このモデルが示す1回塗り厚膜化に有効な技術は、CuO粒成長可能な温度で長時間保持しないことである。クラックの発生はCuO粒子の凝集が関与しているとしても、その耐力限界はブリッジ部の太さ(あるいは空隙の大きさ)に依存し、ブリッジ部の太さ自体も膜圧に依存する(厚い膜では深い位置で空隙は大きくなる)ため、一概にどの空隙の大きさでクラックが発生するとは言えない。しかし、膜厚が一定で同じ太さのブリッジ部であれば、CuO粒成長で破壊される上限時間も決まるはずである。1回塗り厚膜化においてはクラックが発生しない熱処理時間の上限があることがこの結果からわかる。
(実施例8)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で2.13Mのコーティング溶液8Cs-baseを得た。
コーティング溶液8Cs-baseにクラック防止剤としてCHF2(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を8Cs-HPFC-C05とした。
混合コーティング溶液8Cs-HPFC-C05を100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度100mm/secで単結晶の引き上げを行い、ゲル膜8Gf-HPFC-C05を得た。
得られたゲル膜を、図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を3h00m〜12h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。一部の試料は250-300℃、および300-400℃の時間を2倍または1/2として実験を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。
得られた仮焼膜は200-250℃仮焼時間を例えば4.5hとした場合、8Cf-HPFC-C05-4.5hとする。なおこの条件で本焼まで行うと、理論的な超電導膜厚(空隙率ゼロでの膜厚のこと)は1,500nmとなる。これ以外に引き上げ速度143mm/secや195mm/secも試したが、ディップコートの限界に達したと思われ、メニスカス部から重力で混合コーディング溶液が下がる速度が遅れるために均一なゲル膜は得られなかった。
ディップコートで均一なゲル膜が得られる限界は超電導体で密な膜において1,700nm程度とみられ、それよりも厚い膜を成膜する場合にはダイコートやウェブコートなどが必要である。
200-250℃熱分解温度とクラックの有無についての一覧を表2にまとめた。
表2からわかるように、合計7時間を超えての仮焼、すなわち200-250℃での保持時間が6時間を超えるとクラックが発生することが分かった。1.5μm成膜では合計7時間以下となる仮焼が必要であることが分かった。この実験事実は図15のモデルを補強するデータと考えられる。
なお、本実験において250-400℃の昇温速度を2倍、または半分にした実験も行ったが、クラックが発生した。短時間で昇温したプロファイルではクラック防止剤の分解が不十分で急激な燃焼が起きたためにクラックが発生したと考えられ、長時間で昇温したプロファイルではCuO粒成長が起きてクラックが発生するものと考えられる。
(実施例9)
Eu(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.52Mのコーティング溶液9Eu-Cs-base(Eu based coating solution)を得た。
コーティング溶液9Eu-Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を9Eu-Cs-HPFC-C05とした。
混合コーティング溶液9Eu-Cs-HPFC-C05を100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度100mm/secで単結晶の引き上げを行い、ゲル膜8Gf-HPFC-C05を得た。
得られたゲル膜を、図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を4h30mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜は9Eu-Cf-HPFC-C05とする。
仮焼膜9Eu-Cf-HPFC-C05を図8に示す本焼プロファイルにて、最高温度800℃で4時間保持を行い、加湿量を4.2%として、525℃以下で酸素アニールを行い得られた超電導膜が9Eu-Ff-HPFC-C05である。
上記と同様の手法で、Eu(OCOCH3)3の代わりにGd(OCOCH3)3、Tb(OCOCH3)3、Dy(OCOCH3)3、Ho(OCOCH3)3、Er(OCOCH3)3、Tm(OCOCH3)3、Yb(OCOCH3)3を用い、超電導膜9Gd-Ff-HPFC-C05、9Tb-Ff-HPFC-C05、9Dy-Ff-HPFC-C05、9Ho-Ff-HPFC-C05、9Er-Ff-HPFC-C05、9Tm-Ff-HPFC-C05、9Yb-Ff-HPFC-C05を得た。
これら超電導体の特性を77K, 0Tにて誘導法により測定すると、順に1.2、1.1、1.3、0.97、0.75、0.68、0.45MA/cm2であった。YBa2Cu3O7-x超電導体と同様に厚膜化できることが分かった。なお特性が低いのはLaAlO3単結晶基板上に成膜したためであり、a/b軸配向粒子が形成しているためと思われる。
(実施例10)
Sm(OCOCH3)3水和物の粉末をイオン交換水中に溶解し、反応等モル量のCF3CF2COOHと混合および攪拌を行い、淡黄色の溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明やや黄色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明やや黄色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で0.75〜1.30Mの半コーティング溶液9Sm-h-Cs(Sm based half coating solution)を得た。
Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.52〜1.86Mの半コーティング溶液9Ba+Cu-h-Cs(Ba and Cu based half coating solution)を得た。
9Sm-h-Csと9Ba+Cu-h-Csを混合し、Sm:Ba:Cuの金属イオンモル比1:2:3で混合し、金属イオン換算で1.15〜1.45MのSm超電導用コーティング溶液10Sm-Cs-baseを得た。
コーティング溶液10Sm-Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して10wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を10Sm-Cs-HPFC-C05とした。
混合コーティング溶液10Sm-Cs-HPFC-C05を100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合直後に引き上げ速度45mm/secで単結晶の引き上げを行い、ゲル膜10Sm-Gf-HPFC-C05を得た。
得られたゲル膜を、図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を6h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜は10Sm-Cf-HPFC-C05とする。
仮焼膜10Sm-Cf-HPFC-C05を図8に示す本焼プロファイルにて、酸素分圧20ppm混合アルゴンガス下で最高温度800℃で2時間保持を行い、加湿量を4.2%として、375℃以下で酸素アニールを行い得られた超電導膜が10Sm-Ff-HPFC-C05である。
上記と同様の手法で、Sm(OCOCH3)3の代わりにNd(OCOCH3)3、La(OCOCH3)3を用い、本焼時の酸素分圧を0.2〜5ppmとし、酸素アニール開始温度を325℃以下として超電導膜10Nd-Ff-HPFC-C05、10La-Ff-HPFC-C05を得た。10Sm-Ff-HPFC-C05と10Nd-Ff-HPFC-C05超電導体の特性を77K,
0Tにて誘導法により測定すると、膜厚が0.50μmとして、順に3.1、1.4MA/cm2であった。10La-Ff-HPFC-C05についてはXRD測定によりピークを確認した。以上のようにYBa2Cu3O7-x超電導体と同様に厚膜化できることが分かった。
(実施例11)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:2.8で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mの半コーティング溶液11Cs-half-Aを得た。
上記で1:2:3組成となるために不足するCu成分は、Cu(OCOCH3)2水和物の粉末をイオン交換水中に溶解しCF2H(CF2)3COOHと反応させ精製することにより(CF2H(CF2)3COO)2Cuを得た。このメタノール溶液を11Cs-half-Bとする。11Cs-half-Aと11Cs-half-Bを混合し、Y:Ba:Cuが1:2:3組成で金属イオンモル濃度が1.52Mのコーティング溶液11Cs-baseを得た。
コーティング溶液11Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHを加え、トリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%となるよう混合した。なおCF2H(CF2)3COOHの物質量には(CF2H(CF2)3COO)2Cuが持つCF2H(CF2)3COO-基を含めて計算するものとする。得られた溶液をコーティング溶液11Cs-HPFC-C05とした。
コーティング溶液11Cs-HPFC-C05を100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、それぞれ1枚のゲル膜を得た。
得られたゲル膜を図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を6h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜は11Cf-HPFC-C05である。この手法によってもクラックを防止し厚膜が得られることが分かった。
上記において、1:2:2.8の組成を1:2:2.9として同様に厚膜成膜を行い、得られた仮焼膜が11Cf-HPFC-C05-Bである。この膜もクラックを防止しながら厚膜が得られることが分かった。
(実施例12)
実施例11においてY(OCOCH3)3の代わりにGd(OCOCH3)3、Dy(OCOCH3)3を用い、金属イオンモル比1:2:2.8で厚膜仮焼膜を成膜した。得られた仮焼膜は12Gd-Cf-HPFC-C05および、12Dy-Cf-HPFC-C05であった。この手法でもクラックを防止しながら厚膜が得られることが分かった。
(実施例13)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量となるようにCF3COOHとCF3CF2COOHを混合したものに混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。CF3COOHとCF3CF2COOHの混合において、物質量でCF3COOH量が90%、80%、70%の3種類の溶液を準備した。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液を得た。CF3COOH量が90%、80%、70%の溶液を用いて得られた溶液をそれぞれ、13Cs-base-90%、13Cs-base-80%、13Cs-base-70%とする。
各コーティング溶液にクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対して15wt%加え、混合コーティング溶液を13Cs-HPFC-C05-90%、13Cs-HPFC-C05-80%、13Cs-HPFC-C05-70%をそれぞれ得た。
混合コーティング溶液13Cs-HPFC-C05-90%、13Cs-HPFC-C05-80%、13Cs-HPFC-C05-70%を100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度70mm/secで基板の引き上げを行い、それぞれ1枚ずつゲル膜を得た。ゲル膜はそれぞれ13Gf-HPFC-C05-90%、13Gf-HPFC-C05-80%、13Gf-HPFC-C05-70%とする。
得られたゲル膜を図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を6h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜は13Cf-HPFC-C05-90%、13Cf-HPFC-C05-80%、13Cf-HPFC-C05-70%である。この手法によってもクラックを防止し厚膜が得られることが分かった。
(実施例14)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルはエタノールを10%、20%、30%混合したメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液14Cs-base-10%、14Cs-base-20%、14Cs-base-30%を得た。
コーティング溶液14Cs-base-10%、14Cs-base-20%、14Cs-base-30%にクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対してそれぞれ15wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を14Cs-HPFC-C05-10%、14Cs-HPFC-C05-20%、14Cs-HPFC-C05-30%とした。
混合コーティング溶液14Cs-HPFC-C05-10%、14Cs-HPFC-C05-20%、14Cs-HPFC-C05-30%をそれぞれ100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、それぞれ1枚のゲル膜を得た。
得られたゲル膜を図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を6h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜である、14Cf-HPFC-C05-10%、14Cf-HPFC-C05-20%、14Cf-HPFC-C05-30%はクラックの無い厚膜が形成されていることを確認した。
(実施例15)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液は2つのナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。片方のナス型フラスコのゲルまたはゾルをメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液15Cs-impureを得た。
もう一方のゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルをメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.86Mのコーティング溶液15Cs-pureを得た。
コーティング溶液15Cs-impure と15Cs-pureにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対してそれぞれ15wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を15Cs-HPFC-C05-impure、15Cs-HPFC-C05-pureとした。
混合コーティング溶液15Cs-HPFC-C05-impure、15Cs-HPFC-C05-pureをそれぞれ100ccビーカーに水深約30mmとなるようそれぞれ満たし、両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板を液に浸し、気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で溶液混合2時間後に引き上げ速度70mm/secで単結晶の引き上げを行い、それぞれ1枚のゲル膜を得た。
得られたゲル膜を図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を6h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜を15Cf-HPFC-C05-impure、15Cf-HPFC-C05-pureとする。
15Cf-HPFC-C05-pureはクラックの無い厚膜であるのに対して、15Cf-HPFC-C05-impureは激しくクラックが入っており基板からはばれた部分が多数存在していた。1回塗り厚膜化技術を用いて厚膜仮焼膜を成膜すると、空隙部が必ず形成することから周辺のブリッジ部の強度が問題となる。溶液の不純物は酢酸やY, Ba, Cuの異相と考えられるが、それがブリッジ部に入り強度を弱めることにより高純度溶液を使って得られる膜厚で成膜を行ってもその部分にクラックが入り、膜全体としてれなどが生じたものと考えられる。
(実施例16)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルをメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.52Mのコーティング溶液16Cs-baseを得た。
コーティング溶液16Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対してそれぞれ15wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を16Cs-HPFC-C05とした。
混合コーティング溶液16Cs-HPFC-C05をダイコートの原理を使って両面研磨の配向LaAlO3単結晶基板上に約40μm厚のゲル膜を成膜した。気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で成膜を行った。
得られたゲル膜を図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を6h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜を16Cf-HPFC-C05とする。この膜は非常に厚いクラックの無い仮焼膜であると考えられるが、直後に本焼を行ったために仮焼膜での膜厚は不明である。
仮焼膜16Cf-HPFC-C05を図9に示す本焼プロファイルにて、酸素分圧1,000ppm混合アルゴンガス下で最高温度800℃で24時間保持を行い、加湿量を1.26%として、525℃以下で酸素アニールを行い得られた超電導膜が16-Ff-HPFC-C05である。本焼時間が必要以上に長いのは膜厚が不明であったためである。
図16は、16-Ff-HPFC-C05の断面高分解能TEM観察結果である。断面TEM観察像と各部位での結晶方位を調べた結果である。
まだ仮焼プロセスと本焼プロセスが最適化途上であるために空隙が抑制しきれていないが、膜厚は5.2μmにも達しており、膜上部でa/b軸配向が膜全体で観察されていることがわかる。基板近辺しかc軸配向が得られないのはLaAlO3基板上成膜の性質によるものである。
しかし、膜上部まで配向層が確認できている。空隙の多い仮焼膜はクラックが生じやすく割れやすいのは1回塗り厚膜化のモデルから明らかであるが、空隙が少なくなればクラックを生じにくくなる。1回塗りで、5.2μmもの超電導成膜がTFA-MOD法にて可能となったことをこの結果は示している。
以上のように、実施例により、クラック防止剤としてCF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)を選択しコーティング溶液に混合し、仮焼時の酸素分圧を3%以下とし、かつ200℃以上保持する時間を7時間以下とすることにより1回塗りでクラックの無い厚膜が得られる。
この技術により得られる厚膜は本焼後に超電導としたときに5.2μmにも達している。今回得られた膜は空隙率が20%存在し、超電導物質としては4.2μm厚分しか無い膜ではあるが、クラック発生原因の一つはCuO粒成長であると考えられ、空隙率が0%に近くなればブリッジ部の破壊可能性が小さくなる。そのため、1回塗りで5.2μmの膜が得られる技術であることがわかる。
現時点ではLaAlO3単結晶基板上に成膜を行っており、a/b軸がほとんどの膜となるために超電導特性はほぼゼロに近くなってしまうが、c軸配向が優先的に形成するCeO2中間層上で、かつ本焼プロセスを最適化することにより超電導特性が改善するものと思われる。また断面TEMからは基板の結晶方位と膜上部のa/b軸配向粒子の結晶方位が合致しており、この膜厚でも基板の配向が膜上部まで伝わっていることが確認できている。そのため別途本焼条件を最適化して、かつCeO2中間層上成膜を行うことにより特性が改善するものと思われる。
1回塗り厚膜化の要点は、実施例に関する検討で示した通り、(1)クラック防止剤がトリフルオロ酢酸塩と安定的に存在すること、(2)仮焼時にクラック防止剤の激しい燃焼を抑制する低酸素での仮焼を行うこと、(3)空隙のブリッジ部のCuO粒成長による応力増大とクラック発生を防ぐために短時間で仮焼を行う、の3点である。またコーティング溶液に不純物が入っていてもブリッジ部に不安定な部分が出来てクラックが発生しやすくなるため、(4)コーティング溶液を高純度化する、ことも重要である。
上記の条件を満たすことにより連続成膜プロセス向きの成膜および仮焼プロセスが可能となる。溶液からゲル膜成膜において少なくとも24時間は溶液が安定であり、特に炭素鎖が小さい物質はクラック防止剤混合後7日間も安定である。また成膜されたゲル膜も安定して存在することが分かっている。
(実施例17)
Y(OCOCH3)3、Ba(OCOCH3)2、Cu(OCOCH3)2の各水和物の粉末をそれぞれイオン交換水中に溶解し、それぞれ反応等モル量のCF3COOHと混合および攪拌を行い、金属イオンモル比1:2:3で混合を行うことにより混合溶液を得る。得られた混合溶液はナス型フラスコ中に入れ、ロータリーエバポレータ中減圧下で反応および精製を12時間行ない半透明青色のゲルまたはゾルを得る。
得られたゲルまたはゾルを、その約100倍の重量に相当するメタノール(図1のf)を加えて完全に溶解し、その溶液をロータリーエバポレータ中で再び減圧下で反応および精製を12時間行うと半透明青色のゲルまたはゾルが得られる。
得られたゲルまたはゾルをメタノール(図1のj)中に溶解し、メスフラスコを用いることにより希釈を行い、金属イオン換算で1.52Mのコーティング溶液17Cs-baseを得た。
コーティング溶液17Cs-baseにクラック防止剤としてCF2H(CF2)3COOHをトリフルオロ酢酸塩の溶質に対してそれぞれ15wt%加えた。得られた混合コーティング溶液を17Cs-HPFC-C05とした。
混合コーティング溶液17Cs-HPFC-C05を溶液混合後に24時間乾燥雰囲気下で保管し、スクリーンコート法の原理を応用した成膜方法によりCeO2(150nm)/YSZ単結晶基板上、およびCeO2(70nm)/YSZ(70nm)/Y2O3(70nm)/配向Ni基板上へ約20μm厚のゲル膜を成膜した。気温25℃、相対湿度30-45RH%の環境下で成膜を行い、得られたゲル膜をそれぞれ16Gf-HPFC-C05-A、16Gf-HPFC-C05-Bとする。
ゲル膜16Gf-HPFC-C05-A、16Gf-HPFC-C05-Bを図7に記載の仮焼プロファイルで熱処理を行った。図7記載のプロファイルにおいて、200-250℃の熱処理時間を6h00mとし、250-300℃を0h50m、300-400℃を0h10mとするプロファイルにて熱処理を行った。酸素濃度は1%であり、加湿は4.2%である。得られた仮焼膜を16Cf-HPFC-C05-A、16Cf-HPFC-C05-Bとする。両方の仮焼膜にクラックは生じていなかった。
仮焼膜16Cf-HPFC-C05-A、16Cf-HPFC-C05-Bを図9に示す本焼プロファイルにて、酸素分圧1,000ppm混合アルゴンガス下、最高温度800℃で12時間保持を行い、加湿量を1.26%として、525℃以下で酸素アニールを行い得られた超電導膜を16Ff-HPFC-C05-A、16Ff-HPFC-C05-Bとする。この超電導膜にもクラックは生じていなかった。超電導膜の膜厚はそれぞれ2.4μmと2.7μmであった。成膜を行う中間層や基板などが異なっても同様い厚膜化技術が適用できることが分かった。
TFA-MOD法での成膜で鍵となるのは(1)本焼時に発生するフッ化水素ガスと中間層が反応しない中間層(または基板)、(2)形成される超電導体の格子状数と中間層の格子状数の比が93〜107%となり格子整合性を有することが重要である。なおCeO2上成膜の場合は面内方向に45度傾いた状態で超電導層が成長するため、格子定数を2の平方根を割った値での格子整合性が配向超電導層形成のカギとなる。この(1)と(2)の条件が満たされれば、従来成膜実績がある中間層上へも同じように成膜が可能となると考えられる。
TFA-MOD法により安定的に厚膜の超電導膜を得たい場合に、実施の形態および実施例の製造プロセスを適用することが有効であり、これにより、安定的して厚膜が得られる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態、実施例について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
そして、実施の形態の説明においては、酸化物超電導体、酸化物超電導体の製造方法等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる酸化物超電導体、酸化物超電導体の製造方法に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての酸化物超電導体の製造方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。

Claims (13)

  1. イットリウムおよびランタノイド族(ただしセリウム、プラセオジウム、プロメシウム、ルテニウムを除く)を含む金属、バリウムおよび銅が混合されたトリフルオロ酢酸塩を含むフルオロカルボン酸塩を溶解し、メタノールを含むアルコールを溶媒とするコーティング溶液を調整し、
    前記コーティング溶液に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)をクラック防止剤として添加し、
    前記クラック防止剤が添加されたコーティング溶液を用い、基板上にゲル膜を形成し、
    前記ゲル膜に、3%以下の酸素分圧で、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるよう仮焼を行い、仮焼膜を形成し、
    前記仮焼膜に本焼および酸素アニールを行い酸化物超電導体の膜を形成することを特徴とする酸化物超電導体の製造方法。
  2. n=2〜6またはm=2〜5であることを特徴とする請求項1記載の酸化物超電導体の製造方法。
  3. 前記フルオロカルボン酸塩に、トリフルオロ酢酸塩を70mol%以上含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の酸化物超電導体の製造方法。
  4. 前記メタノールが、溶媒の80mol%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の酸化物超電導体の製造方法。
  5. 前記クラック防止剤の添加後、前記ゲル膜を形成するまでの時間が60分以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の酸化物超電導体の製造方法。
  6. 前記クラック防止剤の添加後、前記ゲル膜を形成するまでの時間が24時間以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の酸化物超電導体の製造方法。
  7. イットリウムおよびランタノイド族(ただしセリウム、プラセオジウム、プロメシウム、ルテニウムを除く)を含む金属、バリウムおよび銅が混合されたトリフルオロ酢酸塩を含むフルオロカルボン酸塩を溶解し、メタノールを含むアルコールを溶媒とするコーティング溶液を調整し、
    前記コーティング溶液に、CF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOH(n,mは正の整数)におけるカルボン酸基(-COOH)のHが少なくとも一つ以上Y,
    La, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Ba, Cuで置換された物質をクラック防止剤として添加し、
    前記クラック防止剤が添加されたコーティング溶液を用い、基板上にゲル膜を形成し、
    前記ゲル膜に、3%以下の酸素分圧で、200℃以上となる工程の合計時間が7時間以下となるよう仮焼を行い、仮焼膜を形成し、
    前記仮焼膜に本焼および酸素アニールを行い酸化物超電導体の膜を形成することを特徴とする酸化物超電導体の製造方法。
  8. n=2〜6またはm=2〜5であることを特徴とする請求項7記載の酸化物超電導体の製造方法。
  9. 前記コーティング溶液に、さらにCF2H-(CF2)n-COOHまたはHOCO-(CF2)m-COOHをクラック防止剤として添加することを特徴とする請求項7または請求項8記載の酸化物超電導体の製造方法。
  10. 前記フルオロカルボン酸塩に、トリフルオロ酢酸塩を70mol%以上含むことを特徴とする請求項7ないし請求項9いずれか一項記載の酸化物超電導体の製造方法。
  11. 前記メタノールが、溶媒の80mol%以上であることを特徴とする請求項7ないし請求項10いずれか一項記載の酸化物超電導体の製造方法。
  12. 前記クラック防止剤の添加後、前記ゲル膜を形成するまでの時間が60分以上であることを特徴とする請求項7ないし請求項11いずれか一項記載の酸化物超電導体の製造方法。
  13. 前記クラック防止剤の添加後、前記ゲル膜を形成するまでの時間が24時間以上であることを特徴とする請求項7ないし請求項11いずれか一項記載の酸化物超電導体の製造方法。
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