JP5380250B2 - 希土類系酸化物超電導線材及びその製造方法 - Google Patents

希土類系酸化物超電導線材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超電導マグネット、超電導ケーブル、電力機器等に有用な希土類系酸化物超電導線材及びその製造方法の改良に関する。
希土類系酸化物超電導線材は、一般に金属基板上に2軸配向した酸化物層を少なくとも1層若しくは複数層形成し、その上に酸化物超電導層を、更に超電導層の表面保護と電気的接触の向上及び過通電時の保護回路としての役割を担う安定化層を積層した構造を有する。
この場合、超電導線材の臨界電流特性は超電導層の面内配向性に依存し、下地となる配向金属基板及び中間層の面内配向性と表面平滑性の影響を大きく受けることが知られている。
希土類系酸化物超電導体、例えば、YBaCu7−δ(以下YBCOと称する。)超電導体の結晶系は斜方晶であり、x軸、y軸、z軸の3辺の長さが異なり、単位胞の三辺間の角度もそれぞれ微妙に異なるために双晶を形成し易く、僅かな方位のずれが双晶粒界を発生させ通電特性を低下させるため、通電特性において材料の特性を発揮させるためには、結晶内のCuO面を揃えるだけでなく、面内の結晶方位をも揃えることが要求されることからBi系酸化物超電導体と比較してその線材化に困難が伴う。
希土類系酸化物超電導体の結晶の面内配向性を高め、かつ面内の方位を揃えながら線材化する製法は、薄膜の製法と規を同一にしている。即ち、テープ状金属基板の上に面内配向度と方位を向上させた中間層を形成し、この中間層の結晶格子をテンプレートとして用いることによって、超電導層の結晶の面内配向度と方位を向上させるものである。
希土類系酸化物超電導体は、現在、さまざまな製造プロセスで検討が行われ、テープ状金属基板の上に面内配向した中間層を形成した種々の2軸配向複合基板が知られており、上述のように、中間層上に形成される超電導層の臨界電流特性は下層の中間層の表面平滑性の影響を大きく受けることから、表面平滑な中間層を如何に形成するかが問題となる。
現在、基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導層を配置した超電導体において、最も高い臨界電流特性を示す中間層の成膜方法の一つとして、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法によるものが知られている。この方法は、多結晶の非磁性で高強度のテープ状Ni系基板(ハステロイ等)上に、このNi系基板の法線に対して一定の角度方向からイオンを照射しながら、ターゲットから発生した粒子をPLD(Pulsed Laser Deposition :パルスレーザー堆積)法で堆積させて、結晶粒径が細かく高配向性を有し、超電導体を構成する元素との反応を抑制する中間層(CeO、Y、YSZ:イットリア安定化ジルコニア)または2層構造の中間層(YSZまたはRxZr/CeOまたはY等:Rxは、Y、Nd、Sm、Gd、Ei、Yb、Ho、Tm、Dy、Ce、LaまたはErを示す。)を形成し、その上にCeOをPLD法で成膜するもので、このIBAD基板の上にYBCO層等をPLD法又はCVD法で成膜して超電導線材を製造する(例えば、特許文献1及び2参照。)。
近年、金属基板上に上記のIBAD法による配向MgO中間層(以下、IBAD−MgOと称する。)を設けた複合基板が、高速で結晶性膜が得られ、かつ低コストであることから希土類系酸化物超電導線材用の複合基板として注目されている。
IBAD−MgO膜は、膜厚が10nm以下の非常に薄い領域で良好な2軸配向性が得られることから高速化が可能な反面、成膜に用いる基板の平滑性がIBAD−MgO層の2軸配向に影響を与えることが知られており、このため、従来、機械加工により金属基板の表面を研磨することが行われており、例えば、機械研磨したRa≦2nmの平滑面を有する金属基板が用いられている。
一方、IBAD−MgO膜の配向性を向上させるために、金属基板上にIBAD−MgO膜の下地層(ベッド層)となる中間層を成膜し、このベッド層の上にIBAD−MgO層を形成することが検討されている。このベッド層は金属基板の構成元素の拡散を防止する機能も有する。
以上のIBAD法によるMgO層のベッド層として、アモルファス層を用いる方法が知られており、これは、平滑なアモルファス表面を有する金属基板上に岩塩構造の2軸配向性を有する第1の薄膜からなるバッファー層を設け、このバッファー層をテンプレートとしてその上に超電導層からなる第2の膜を設けるもので、具体的には、表面平滑なSi又はSiOアモルファス層を有する基板上に、IBAD法により面内配向したMgO(100)層を成膜する。この金属基板として平滑表面を有するハステロイを用い、この上にアモルファス層、IBAD−MgO層及びYBCO層を成膜することにより、YBCO層のJc値を向上させることが報告されており、上記のアモルファス層は、例えば、ハステロイ等のNi合金の表面にレーザー加工、イオン損傷、高速機械加工、蒸着、イオン注入を施して形成されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、IBAD法によるMgO層のベッド層として岩塩構造の酸化物層を用いる方法が知られており、これは、基板上に配置された多結晶酸化物からなる第1のバッファー層と、この第1のバッファー層上に直接配置されたIBAD−MgO、IBAD−CeO、IBAD−(RE)((RE)は希土類元素)からなる2軸配向性の第2のバッファー層と、この第2のバッファー層上に配置された超電導層を設けたもので、具体的には、ハステロイ等のNi基合金基板上に、PLD法によるCeO、YSZからなる保護層、スパッタリング法、PLD法又は蒸着法によるMgO、NiO等の岩塩構造の酸化物からなる第1中間層及びIBAD法によるMgO、YSZ、CeO等からなる第2中間層を順次積層し、この上にYBCO層等を形成することにより、2軸配向した第2中間層上の超電導層の2軸配向性を向上させたものである(例えば、非特許文献2参照)。
一方、IBAD法によるMgO層のベッド層として、スパッタリング法などの蒸着により成膜したAl/YやGdZr中間層を金属基板上に成膜する方法も知られている。
特開平4−329867号公報 特開平4−331795号公報
US Patent 6,190,752 B1 US Patent 7,071,149 B2
以上述べたように、IBAD層の形成には機械加工により研磨した平滑表面を有する金属基板が用いられているが、この機械研磨金属基板は非常に平坦な表面が得られる反面、局部的な研磨不良による欠陥が問題となる上、非常に高コストであるという問題があり、また、スパッタリング法などの気相法により蒸着したベッド層は、中間層の形成に高価な成膜装置が必要であるため、コスト増の原因となるという問題があった。
以上のことから、MgO等の岩塩構造のIBAD層のベッド層を低コストで基板上に形成し、このベッド層の配向性を向上させて、IBAD層の配向性をさらに向上させる必要があり、このために機械研磨や気相法を使用せずに、ベッド層のさらなる平滑化が要求されている。
本発明は以上の問題を解決するためになされたもので、機械研磨や気相法等の高コストの方法を用いることなく、IBAD層の配向性をさらに向上させるために、ベッド層をMOD法により形成することにより、その表面の平滑性を向上させ、超電導特性に優れた希土類系酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することを目的としている。
以上の目的を達成するために、本発明の希土類系酸化物超電導線材は、基板上に複数の酸化物中間層を介して希土類系酸化物超電導層を配置した酸化物超電導線材において、中間層は、少なくとも基板上にMOD法により成膜された第1中間層及び少なくとも第1中間層上にIBAD法により成膜された第2中間層からなり、この第2中間層上に希土類系酸化物超電導層を配置するようにしたものである。
上記の希土類系酸化物超電導線材は、基板上に複数の酸化物中間層を介して希土類系酸化物超電導層を配置した酸化物超電導線材において、中間層は、少なくとも基板上にMOD法により成膜された第1中間層と、第1中間層上にテンプレート層を介してIBAD法により成膜された第2中間層からなり、第2中間層上にテンプレート層を介して希土類系酸化物超電導層を配置して製造することもできる。
以上の発明において、第1中間層として、[RE]−Zr−O系酸化物([RE]は、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb及びLuから選択された1又は2種以上の元素を示す。以下同じ。)、例えば、[RE]Zr又はYSZをMOD法により基板上に成膜することが好ましい。
上記の第1中間層は、膜厚20nm以上、300nm以下で、かつ、その表面粗さRaが3nm以下であることが望ましく、IBAD層からなる第2中間層は、表面粗さRaは3nm以下の中間層上に直接形成されることが好ましい。
第1中間層の膜厚が20nm未満であると金属基板の構成元素の拡散を防止することが不十分となり、一方、膜厚が増加(塗布回数が増加)するに従って平滑性は向上するが、この平滑性は所定の厚さ以上で飽和する傾向にあるため膜厚300nm以下とされる。
IBAD層からなる第2中間層は、MgO、Gd−Zr−O(GZO)、YSZ等により成膜されるが、特に、IBAD−MgOが、前述のように、高速で結晶性膜が得られる上、低コストである点から好ましい。
本発明における希土類系酸化物超電導線層は、REBaCu(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1又は2種以上の元素を示し、x≦2及びy=6.2〜7であり、以下、REBCOと称する。以下同じ。)からなるが、この超電導層は、MOD(Metal Organic Deposition:金属有機酸塩堆積)法、PLD法又はMOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)により成膜することができるが、成膜方法としては、特にTFA−MOD法が好適する。
本発明においては、IBAD層のベッド層をMOD法により成膜することにより、表面の平滑性を向上させることができるため、平滑性の低い金属基板の使用が可能となり、研磨コストが低減されるとともに、非真空プロセスであるMOD法の採用により大幅な製造コスト低減が可能となり、IBAD層の配向性を機械研磨した金属基板に匹敵させることができ、優れた超電導特性を有する希土類系酸化物超電導線材を容易に製造することができる。
本発明に係る第1中間層の一実施例に用いられるMOD−CZO層の塗布回数に対する表面粗さを示すグラフである。 MOD−CZO層の焼成温度と重量変化及び温度差の関係を示すグラフである。 本発明の一実施例における希土類系酸化物超電導線材の軸方向に垂直な断面図である。 本発明の他の実施例における希土類系酸化物超電導線材の軸方向に垂直な断面図である。
本発明における[RE]−Zr−O系酸化物等の第1中間層は、MOD法により成膜されるが、このMOD法は、金属成分の有機化合物が均一に溶解した原料溶液を基板上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基板上に薄膜を形成する方法として知られており、非真空プロセスであることから低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導線材の製造に適する利点を有する。
また、本発明におけるREBCO層は、前述のように好ましくはTFA−MOD法により成膜されるが、このTFA−MOD法は、MOD法におけるアルカリ土類金属(Ba等)の炭酸塩を経由する固相反応による高温熱処理を必要とせず、面内配向性に優れた超電導膜を得ることができる方法として知られており、フッ素を含む有機酸塩(例えば、TFA塩:トリフルオロ酢酸塩)を出発原料とし、水蒸気雰囲気中で熱処理を行うことにより、フッ化物の分解を経由して超電導体を成膜するものである。TFA−MOD法では、塗布膜の仮焼後に得られるフッ素を含むアモルファス前駆体と水蒸気との反応によりHFガスを発生しつつ超電導膜が成長する界面にHFに起因する液相を形成することにより基板界面から超電導体がエピタキシャル成長するため、HFガスを速やかに膜面から排出する必要があり、排出が不十分であると超電導体の結晶成長速度が抑制される。
従来、REBCO超電導体においては、仮焼プロセスにおけるHFガスの大量発生とREBCO層と中間層との反応によりBaCeOが生成してF元素を膜外に排出するのに多くの時間を有するという問題を回避するため、フッ素化合物を少なくすることが行われており、本発明においてもBaのモル比を、Ba<2の範囲、好ましくは1.3≦Ba≦1.8の範囲とすることが好ましい。
Baのモル比をその標準モル比(2)より小さくすることにより、Baの偏析が抑制され、結晶粒界でのBaべ一スの不純物の析出が抑制される結果、クラックの発生が抑制されるとともに、結晶粒間の電気的結合性が向上する。また、Baモル比を低減することにより、磁束ピンニング点であるYCuやCuOが形成される利点もある。
以上のTFA−MOD法によるREBCO超電導体の原料溶液としては、例えば、(a)REを含む金属有機酸塩溶液として、REを含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液、特に、REを含むトリフルオロ酢酸塩溶液、(b)Baを含む金属有機酸塩溶液として、Baを含むトリフルオロ酢酸塩の溶液及び(c)Cuを含む金属有機酸塩溶液として、Cuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液が用いられる。
上記の原料溶液中には、Zr、Ce、Sn又はTiから選択された1種以上の元素を含む金属有機酸塩溶液を原料溶液に混合することが好ましく、これにより、REBCO超電導層内にZr等の酸化物をピンニング点として分散させることができ、特に、低磁界下でIc値の低下率が大きいYBCO超電導体の磁場特性を改善することができる。
即ち、TFA−MOD法は、気相成長と異なり前駆体からの相変態で結晶成長するため、導入した磁束ピンニング点は粗大化し易く、微細人工ピンニング点の導入は難しいという問題があるが、TFA−MOD法による原料溶液として、RE、Ba及びCuを含む金属有機酸塩溶液とBaと親和性の大きいZr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含む金属有機酸塩溶液からなる混合溶液を用いることにより50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させることができる(例えば、特開2009−164010号参照。)。
REBCO超電導層は、超電導体を構成する金属元素を含む原料溶液を中間層上に塗布し、仮焼熱処理を施す工程を複数回繰り返して、結晶化熱処理後に所定の膜厚を有するように積層して形成される。
以上の発明において、基板にNi基合金を用いることが好ましく、例えば、NiにW、Mo、Cr、Fe、Cu、V、Sn及びZnから選択された1以上の元素を含むものを用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
(MOD層の塗布回数と表面粗さ)
IBAD層のベッド層の材料として、Ni−W合金基板用バリア層として実績があるCZO(Ce−Zr−O)層をハステロイ基板上にMOD法により成膜し、その平滑性を調査した。
金属基板として、幅5mm、厚さ70μmのハステロイ基板の圧延上り基板(A)及びハステロイ基板を電解研磨した電解研磨基板(B)を用い、これらの基板上にCe及びZrのナフテン酸溶液をDIPコーティング法により塗布し、RTR(Reel-to-Reel)方式の連続焼成炉によりAr雰囲気中で500℃の温度で連続焼成して種々の膜厚のCZO層をハステロイ基板上に成膜し、塗布回数(回)に対する表面粗さ(Ra:nm)を原子間力顕微鏡(AMF)観察により測定した。
上記の圧延上り基板(A)及び電解研磨基板(B)の塗布前の当初の表面粗さは、それぞれRa=12.3nm及び6.5nmであった。
MOD−CZO層の塗布回数(回)に対する表面粗さ(Ra:nm)を測定した結果を図1に示す。同図において、■及び●は、それぞれ圧延上り基板(A)及び電解研磨基板(B)の実測値である。
この結果から、圧延上り基板(A)及び電解研磨基板(B)のいずれに対しても、Ra値はCZO層の塗布回数に従って漸次減少する傾向が認められ、特に、電解研磨基板(B)の場合には塗布回数6〜7回程度でRa値が3nm程度まで低下し、従来、優れた超電導特性を示すことが知られている機械研磨基板(〜2nm)と同等程度の平滑性を示している。
また、MOD−CZO層の焼成温度の影響を示差熱熱重量同時測定装置を用いて、Ar雰囲気中での焼成温度と蒸発や化学変化によう重量変化(TG)及び温度差(熱電対の起電力差:μV)の関係を測定した。
測定結果を図2に示す。Ar雰囲気中でMOD−CZO膜は400℃程度で熱分解し、約500℃で結晶化する。
(CeO層の平滑性)
中間層の配向性は、図3に示すように、Ra=6.5nmの電解研磨基板1上に、膜厚約80nmに成膜したMOD−CZO層2及びイオンビーム・スパッタ法(IBS)により(IBAD−MgO層の)テンプレート層として膜厚約110nmのGZO(GdZr)層3を成膜し、この上に膜厚5〜10nmのIBAD−MgO層4、スパッタリング法により(CeO層の)テンプレート層として膜厚約10nmのLaMnO(LMO)層5及びPLD法によりキャップ層として膜厚約0.5μmのCeO層6を順次成膜した後、このCeO層の配向性を評価した。
この複合基板7のCeO層6の面内配向性をX線回折(XRD)による半値幅(FWHM)で測定した結果、Δφ=4.1deg.を示した。この値は機械研磨基板を用いた場合のΔφ=〜4deg.と同程度である。
(REBCO層の特性)
以上のようにして形成した複合基板7のCeO層の上に、PLD法により膜厚約0.5μmのGdBCO超電導層8を成膜し、Jc値を77K、自己磁界中で直流四端子法により1μV/cmの電圧基準で評価した。
このようにして製造した希土類系酸化物超電導線材10は、図3に示すように、[PLD−CeO/LMO/IBAD−MgO/IBS−GZO/MOD−CZO/電解研磨基板]の構造を有し、GdBCO超電導層8は、Ic=249A(Jc〜5MA/cm)の値を示した。この値は機械研磨基板を用いた場合のJc=5〜6MA/cmと同程度であった。
実施例2
ハステロイ基板を電解研磨したRa=5nmの電解研磨基板を用い、この基板上に実施例1と同様にしてMOD−CZO層を成膜し、この上にIBAD−MgO層及びLMO層(テンプレート層)を成膜した後、このLMO層の上にCeO層を膜厚0.5μmに成膜して複合基板を製造した。
さらにこの複合基板上のCeO層の上に、PLD法により膜厚約0.5μmのGdBCO超電導層を成膜した。
この[PLD−GdBCO/PLD−CeO/LMO/IBAD−MgO/MOD−CZO/電解研磨基板]構造の希土類系酸化物超電導線材20のCeO層の面内配向性及びIcを実施例1と同様の方法により測定した結果、それぞれΔφ=6.4deg.、Ic=180Aの値を示した。
実施例3
図4に示すように、ハステロイ基板を電解研磨したRa=5nmの電解研磨基板31を用い、この基板上に実施例1と同様にしてMOD−CZO層32を成膜し、この上にIBAD−MgO層33及びLMO層34(テンプレート層)を成膜した後、このLMO層の上にCeO層35を膜厚1μmに成膜して複合基板36を製造した。
さらにこの複合基板36上のCeO層35の上に、TFA−MOD法により膜厚約1.3μmのYBCO超電導層37を成膜した。
この[MOD−YBCO/PLD−CeO/LMO/IBAD−MgO/MOD−CZO/電解研磨基板]構造の希土類系酸化物超電導線材30のCeO層35の面内配向性及びIcを実施例1と同様の方法により測定した結果、それぞれΔφ=4.6deg.、Ic=250Aの値を示した。
実施例4
ハステロイ基板を電解研磨したRa=5nmの電解研磨基板を用い、この基板上に実施例1と同様にしてMOD−CZO層、IBS−GZO層(テンプレート層)、IBAD−MgO層、LMO層(テンプレート層)を順次成膜した後、このLMO層の上にCeO層を膜厚0.5μmに成膜して複合基板を製造した。
さらにこの複合基板上のCeO層の上に、それぞれ、PLD法により膜厚約0.5μmのGdBCO超電導層及びTFA−MOD法により膜厚約1.4μmのYBCO超電導層を成膜した。
この[PLD−GdBCO/PLD−CeO/LMO/IBAD−MgO/IBS−GZO/MOD−CZO/電解研磨基板]構造[1]及び[MOD−YBCO/PLD−CeO/LMO/IBAD−MgO/IBS−GZO/MOD−CZO/電解研磨基板]構造[2]の希土類系酸化物超電導線材のCeO層の面内配向性を実施例1と同様の方法により測定した結果、Δφ=4.9deg.の値を示し、またIc値は、それぞれ、構造[1]に対してIc=250A及び構造[2]に対してIc=303Aの値を示した。
実施例5
ハステロイ基板を電解研磨したRa=5nmの電解研磨基板を用い、この基板上に実施例4と同様にしてMOD−CZO層、IBS−GZO層(テンプレート層)、IBAD−MgO層、LMO層(テンプレート層)を順次成膜した後、このLMO層の上にCeO層を膜厚1μmに成膜して複合基板を製造した。
さらにこの複合基板上のCeO層の上に、TFA−MOD法により膜厚約1.4μmのYBCO超電導層を成膜した。
この[MOD−YBCO/PLD−CeO/LMO/IBAD−MgO/IBS−GZO/MOD−CZO/電解研磨基板]構造の希土類系酸化物超電導線材のCeO層の面内配向性及びIc値を実施例1と同様の方法により測定した結果、Δφ=4.2deg.Ic=330Aの値を示した。
以上の実施例2〜5の結果から、IBAD−MgO層のベッド層としてMOD−CZO層を成膜した希土類系酸化物超電導線材において、IBAD−MgO層のテンプレート層としてIBS−GZO層を成膜しない場合に、CeO層の配向性及びPLD−GdBCO層のIc値は、膜厚0.5μmでは機械研磨基板の場合に比較して若干低下するものの、膜厚1μmではCeO層の配向性及びTFA−YBCO層のIc値は機械研磨基板の場合と同等の値を示していることが認められた。
一方、IBAD−MgO層のベッド層としてMOD−CZO層を成膜した希土類系酸化物超電導線材において、IBAD−MgO層のテンプレート層としてIBS−GZO層を成膜した場合には、CeO層の配向性は膜厚0.5μmで機械研磨基板の場合と同等の値を示す一方、PLD−GdBCO層のIc値は機械研磨基板の場合と同等の値を示し、TFA−YBCO層のIc値は機械研磨基板の場合と同等以上の値を示している。
さらに、CeO層の膜厚1μmの場合には、機械研磨基板の場合と同等の配向性を示すととともに、TFA−YBCO層のIc値は機械研磨基板の場合と同等以上の値を示している。
本発明によりIBAD層の表面平滑性をより向上させることができるため低コストの金属基板の使用が可能となり、優れた超電導特性を有する希土類系酸化物超電導線材を低コストで容易に製造することができ、超電導マグネット、超電導ケーブル及び電力機器等への超電導線の適用に有効である。
1、31 電解研磨基板
2、32 MOD−CZO層
3 GZO層
4、33 IBAD−MgO層
5、34 LaMnO(LMO)層
6、35 CeO
7、36 複合基板
8、GdBCO超電導層
10、30 希土類系酸化物超電導線材
37 YBCO超電導層

Claims (9)

  1. 基板上に複数の酸化物中間層を介して希土類系酸化物超電導層を配置した酸化物超電導線材において、前記中間層は、少なくとも前記基板上にMOD法により成膜された第1中間層及び少なくとも前記第1中間層上にIBAD法により成膜された第2中間層からなり、前記第2中間層上に希土類系酸化物超電導層を配置したことを特徴とする希土類系酸化物超電導線材。
  2. 第1中間層は、[RE]−Zr−O系酸化物([RE]は、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Tm、Yb及びLuから選択された1又は2種以上の元素を示す。以下同じ。)又はYSZからなることを特徴とする請求項1記載の希土類系酸化物超電導線材。
  3. 第1中間層は、膜厚20nm以上、300nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の希土類系酸化物超電導線材。
  4. 第1中間層の表面粗さRaは3nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の希土類系酸化物超電導線材。
  5. 第2中間層は、MgOからなることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の希土類系酸化物超電導線材。
  6. 希土類系酸化物超電導層は、REBaCu(REは、Y、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbから選択された1又は2種以上の元素を示し、x≦2及びy=6.2〜7である。以下同じ。)からなることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の希土類系酸化物超電導線材。
  7. 希土類系酸化物超電導層は、PLD、MOD法又はMOCVD法により形成された膜体からなることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の希土類系酸化物超電導線材。
  8. 第1中間層と第2中間層との間及び/又は第2中間層と希土類系酸化物超電導層との間にテンプレート層を有することを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の希土類系酸化物超電導線材。
  9. 基板上に、MOD法により膜厚20nm以上、300nm以下で3nm以下の表面粗さRaを有する[RE]−Zr−O系酸化物又はYSZからなる第1中間層を成膜した後、前記第1中間層上にIBAD法によりMgOからなる第2中間層を成膜し、次いで、前記第2中間層上にTFA−MOD法によりREBaCu超電導層を成膜することを特徴とする希土類系酸化物超電導線材の製造方法。
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