JP2014043656A - ガラス繊維被覆用塗布液およびそれを用いたゴム補強用ガラス繊維 - Google Patents

ガラス繊維被覆用塗布液およびそれを用いたゴム補強用ガラス繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設して伝動ベルトを作製した際に、高温下、水がかかり、オイルが付着する走行後にあって、寸法変化の小さく、屈曲疲労しにくい、即ち、伸びが少ないという伝動ベルトに優れた耐熱性、耐水性、特に優れた耐油性を与えるゴム補強用ガラス繊維を提供する。
【解決手段】モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを反応させてなるモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)、及びビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)とを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維被覆用塗布液。
【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム組成物の補強に用いるガラス繊維コードに塗布被覆するためのガラス繊維被覆用塗布液に関する。
さらに、本発明は、伝動ベルトを作製する際に、母材であるゴムに埋設し補強を行うためのゴム補強用ガラス繊維に関する。さらに、該ゴム補強用繊維を用いた伝動ベルトに関する。本発明のゴム補強用ガラス繊維は特に自動車用タイミングベルトの補強用として有用である。
伝動ベルト、タイヤ等のゴム製品に引っ張り強さおよび寸法安定性を付与するために、ガラス繊維、ナイロン繊維およびポリエステル繊維等の強度の高い繊維を母材ゴムに補強材として埋設することは一般的に行われ、母材ゴムに埋設するゴム補強用繊維には、母材であるゴムとの密着性がよく、界面が強固で剥離しないことが必要とされる。しかしながら、ガラス繊維コードをそのまま使用しても全く密着しないか、密着したとしても密着性が弱く界面が剥離してしまい補強材としての用をなさない。そのため、伝動ベルトを製造する際に母材ゴムに埋設して使用するゴム補強用ガラス繊維には、母材ゴムと接着するための被覆材がガラス繊維コードに塗布被覆し被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が用いられる。
例えば、自動車用伝動ベルトは高温のエンジンル−ム内で使用されるため、前記被覆処理を行ったゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトであっても、高温下において屈曲し続ける走行状況において、初期の接着強さが持続されず、長時間の走行においては、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの界面の剥離をきたすこともある。
自動車用伝動ベルトには、高温下のエンジンルーム内、水がかかり、エンジンオイル、潤滑油等の油が付着する長時間の走行後において、引っ張り強さを持続し、伸びがなく寸法安定性に優れていることが要求される。特にタイミングベルトは、エンジンのカムシャフトおよびクランクシャフトを連結し、バルブの開閉をピストンの上下動に連動させるもので歯付きベルトが使用され、過酷な条件下の長時間の使用において、破損は言うにおよばず、少しの伸びも許されない。タイミングベルトの母材ゴムは、耐熱ゴムである水素化ニトリルゴム(以下、HNBRと略する)が用いられ、芯線には耐久性が有り、アラミド繊維に比べ安価なことからゴム補強用ガラス繊維が用いられ、さらなる耐久性の向上が望まれている。
伝動ベルトとし高温下長時間走行させてもゴム繊維コードと母材ゴムの初期の接着強さを持続する耐熱性に加え、伝動ベルトに水をかけつつ長時間走行させても、被覆層がガラス繊維コードへの水の浸透を防ぐことで初期の接着強さを持続する耐水性、油の中で長時間走行させても油の浸透を防ぐことで初期の接着強さを持続する耐油性、さらには、長時間の走行においても強度の低下をおさえる高い屈曲疲労性を兼ね備えたゴム補強用ガラス繊維持つ伝動ベルトの開発が待たれている。
母材ゴムとしてのHNBRとガラス繊維コードとの初期の接着強さを持続し界面の剥離をきたさず、高温下の走行においても長期信頼性のある伝動ベルトを提供するための被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維として、ガラス繊維コードに上述の被覆処理を行った後に得られた被覆を1次被覆層として、該1次被覆層上に異なる組成のガラス繊維2次被覆用途塗布液を塗布乾燥させて、さらなる2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が特許文献1〜4に開示されている。
例えば、特許文献1において、ハロゲン含有ポリマーとイソシアネートを含む第2液で処理する方法が開示されている。
また、特許文献2には、ゴムラテックス、レゾルシン−ホルムアルデヒド水溶性縮合物及びトリアジンチオールを含有するゴム補強用繊維処理剤が開示されている。
また、本出願人の特許出願に関わる特許文献3には、ガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とを含有する1次被覆層を設け、その上層にクロロスルホン化ポリエチレンとビスアリルナジイミドを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
さらに、本出願人の特許出願に関わる特許文献4には、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とゴムラテックスと含有する1次被覆層を設け、ビスアリルナジイミドとゴムエラストマーと加硫剤と無機充填材とを含有する2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
また、伝動ベルトとした際の耐水性の向上を目的として、本出願人の特許出願に関わる特許文献5には、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とクロロスルホン化ポリエチレンとを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維コードに被覆するためのガラス繊維被覆用塗布液が開示されている。
さらに、本出願人の特許出願に係る特許文献6〜10には、特許文献5に記載のガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布し1次被覆層とし、その上層にハロゲン含有ポリマーとビスアリルナジイミドを含有する2次被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にハロゲン含有ポリマーとマレイミドを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にハロゲン含有ポリマーと、有機ジイソシアネートおよびメタクリル酸亜鉛とを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、および該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンとトリアジン系化合物を含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
また、自動車用伝動ベルトには、エンジンの熱に対する耐熱性、雨天走行における耐水性に加え、エンジン内部のエンジンオイルがシリンダーヘッドのガスケットから滲みでそれが付着する等のことより、耐油性も必要である。
そこで、特許文献11には、極めて長い時間使用できるタイミングベルトを得ることが可能な、耐油性に優れたゴム製品の補強繊維として、 レゾルシンとホルムアルデヒドと
の水溶性縮合物、固形状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス、および液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックスを含有する処理剤による被膜がされたガラス繊維コードが開示されている。
また、特許文献12には、耐油性を改善するレゾルシン−ホルムアルデヒド水溶性縮合物およびソープフリーのアクリロニトリルブタジエン共重合体ラテックスを含有する処理剤で被覆処理を施したゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
また、特許文献13には、耐油性を改善するガラス繊維処理剤レゾルシン−ホルムアルデヒド水溶性縮合物およびブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックスのみからなり、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックスは、その固形分重量を基準として、アクリロニトリルの含有率が31〜55重量%のものであるゴム補強用ガラス繊維処理剤が開示されている。
また、特許文献14には、優れた耐油性、タック性および耐屈曲疲労性を有し、過酸化物を加硫剤とするHNBRを用いたタイミングベルト等のゴム製品の製造にも適した補強繊維として、第1の被覆層が、レゾルシンとホルムアルデヒドとの水溶性縮合物、固形状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス、および液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックスを含有し、その上層の第2の被覆層が、未硬化フェノール樹脂およびゴムを含有する補強繊維が開示されている。
特公平2−4715号公報 特開平10−25665号公報 特開2004−203730号公報 特開2004-244785号公報 特開2006−104595号公報 国際公開WO/2006/038490のパンフレット 特開2007−63726号公報 特開2007−63727号公報 特開2007−63728号公報 特開2007−63729号公報 特開2002−339255号公報 特開2003−253569号公報 特開2003−268678号公報 特開2004−100059号公報
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物およびビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体を含有する被覆層を設けたゴム補強ガラス繊維を、HNBRに埋設させて作製されたタイミングベルトは、高温下におけるエンジンオイルとの接触浸透によって、埋設したゴム補強用ガラス繊維の被覆層が変質し易く、ガラス繊維コードとHNBRの接着力低下および界面の剥がれに繋がることがある。特に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体が変質し易い。
そこで、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の存在下、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体の替わりに、耐油性に優れるアクリロニトリルブタジエンゴムを被覆材として加えた、またはビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とアクリロニトリルブタジエンゴムを被覆材の成分として共存させたとしても、ガラス繊維コードと母材ゴムにおいて初期の接着力を保てなくて、使用時間の経過に伴ってベルトが伸びて不具合が発生するのが早い、具体的には、タイミングベルトならば、クランクシャフトとカムシャフトの連動によるピストンの上下動とバルブの開閉タイミングを合わせる等の動力伝達機構の機能に支障をきたすのが早いという問題があることがわかった。
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョン、さらにビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(D)エマルジョンを混合したガラス繊維被覆用塗布液を、ガラス繊維コードに塗布後、乾燥させると、屈曲疲労性が改善できるが、耐油性能が落ちることがわかった。
本発明は、ゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設して伝動ベルトを作製した際に、高温下、水がかかり、オイルが付着する走行後にあって、寸法変化の小さく、屈曲疲労しにくい、即ち、伸びが少ないという伝動ベルトに優れた耐熱性、耐水性、特に優れた耐油性を与えるゴム補強用ガラス繊維を提供することを目的とする。即ち、前記従来の伝動ベルトに比較して、伝動ベルトに水をかけつつ長時間走行させても被覆層が初期の接着強さを持続する耐水性を加え、高温下において長時間走行させても被覆層が初期の接着強さを持続する耐熱性、特に耐油性を合わせ持つ伝動ベルトを提供することを目的とする。
前記問題を解決するために、本発明者らが検討した結果、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンを加えると、耐熱性が向上するが屈曲疲労性がよくないことが分かった。また、屈曲疲労性を向上させるためにビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(D)を加えると耐油性が悪くなることも分かった。
そこで、耐水性、耐熱性に加え、耐油性、屈曲疲労性を向上させるために鋭利検討した結果、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(D)を構成しているモノマーの構成比を変えることで耐油性を落とすことなく屈曲疲労性も保持できることが判明した。
すなわち、本発明は、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)、及びビニルピリジンーブタジエンースチレン共重合体(D)とを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維被覆用塗布液において、
前記(D)を構成するモノマーであるビニルピリジン(E)、ブタジエン(F)、及びスチレン(G)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、前記(E)をE/(E+F+G)=17%以上、35%以下、前記(F)をF/(E+F+G)=35%以上、60%以下、前記(G)をG/(E+F+G)=20%以上、40%以下、であることを特徴とするガラス繊維被覆用塗布液である。
また、本発明は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)、及びビニルピリジンーブタジエンースチレン共重合体(D)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、前記(A)をA/(A+B+C+D)=3%以上、8%以下、前記(B)をB/(A+B+C+D)=25%以上、60%以下、前記(C)をC/(A+B+C+D)=8%以上、15%以下、前記(D)をD/(A+B+C+D)=30%以上、60%以下の範囲で含有することを特徴とする前記のガラス繊維被覆用塗布液である。
また、本発明は、前記のガラス繊維被覆用塗布液を、複数本のガラス繊維フィラメントを集束させたガラス繊維コードに塗布後乾燥させた被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
また、本発明は、前記に記載のガラス繊維被覆用塗布液を塗布乾燥させた1次被覆層を形成し、その上層にクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(D)を含有する2次被覆用塗布液を塗布した2次被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
また、本発明は、前記の2次被覆層のクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(H)の含有比が、クロロスルホン化ポリエチレンの重量を100%基準とする重量百分率で表してH/C=0.3%以上、10.0%以下であることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
また、本発明は、前記のゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設させてなる伝動ベルトである。
また、本発明は、母材ゴムに水素化ニトリルゴムを使用した前記の伝動ベルトである。
本発明によるガラス繊維被覆用塗布液を塗布しガラス繊維コードに被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維は、耐熱ゴムである、例えば、HNBRへ埋設した際に、ガラス繊維コードとHNBRとに優れた接着強さを有する。更に、HNBRへ埋設して伝動ベルトとした際に、耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持たせ、高温多湿下における伝動ベルトとしての長時間の使用後、言い換えれば、走行後において、ガラス繊維コードと耐熱ゴムの界面が剥離する懸念がなく該伝動ベルトは引っ張り強さを維持し寸法安定性に優れる。
特に伝動ベルトの中でも自動車用タイミングベルトに用いた時、高温下のエンジンルーム内、水がかかり、エンジンオイル、潤滑油等の油が付着する長時間の走行後において、引っ張り強さを持続し、伸びがなく寸法安定性に優れる。
MIT屈曲試験の試験片の模式図である。 MIT屈曲試験の試験状況の模式図である。
ガラス繊維被覆用塗布液は、例えば、ガラス溶融炉のブッシングより突出させた複数本、即ち、多数のガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤と樹脂を含有する集束剤を散布塗布した後、集束させたストランドに塗布被覆しゴム補強用ガラス繊維とする。塗布はガラス繊維被覆用塗布液中にストランドを屈曲走行させて強制的に付着させた後、乾燥させる等の手段で行う。伝動ベルトを作製する際、該ゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムであるHNBR等に埋め込んで、芯線として使用する。
本発明は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョン、及びビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)のエマルジョンとを水に分散させて調整する。
伝動ベルトに使用した際のゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムに、所望の接着強さを得るには、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)、及びビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、前記(A)をA/(A+B+C+D)=3%以上、8%以下、前記(B)をB/(A+B+C+D)=25%以上、60%以下、前記(C)をC/(A+B+C+D)=8%以上、15%以下、前記(D)をD/(A+B+C+D)=30%以上、60%以下の範囲で含有することが好ましい。
本発明のガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有が、A/(A+B+C+D)=3%より少ないと、ゴム補強用ガラス繊維の被覆材とした際に、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐水性、耐熱性、耐油性が得難い。モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有が8%を超えると、ガラス繊維被覆用塗布液が凝集沈殿を起こし易く使用不能となる。よって、本発明のガラス繊維被覆用塗布液における好適なモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、A/(A+B+C+D)=3%以上、8%以下である。より好ましくは、A/(A+B+C+D)=4%以上、7%以下である。
また、本発明のガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の含有が、B/(A+B+C+D)=25%より少ないと、ガラス繊維と架橋された母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の含有がB/(A+B+C+D)=60%を超えると、耐熱性が悪くなる。よって、本発明のガラス繊維被覆用塗布液におけるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の好適な含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、B/(A+B+C+D)=25%以上、60%以下である。より好ましくは、B/(A+B+C+D)=27%以上、55%以下である。
また、本発明のガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のクロロスルホン化ポリエチレン(C)の含有が、C/(A+B+C+D)=8%より少ないと、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。クロロスルホン化ポリエチレン(C)の含有がC/(A+B+C+D)=15%を超えると、耐熱性を向上させる効果が殆どない。よって、本発明のガラス繊維被覆用塗布液におけるクロロスルホン化ポリエチレン(C)の好適な含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、C/(A+B+C+D)=8%以上、15%以下である。より好ましくは、C/(A+B+C+D)=9%以上、13%以下である。
また、本発明のガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)が、D/(A+B+C+D)=30%より少ないと、伝動ベルトにした際の屈曲走行において、好ましい耐水性が得難い。ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)の含有がD/(A+B+C+D)=60%を超えると、伝動ベルトにした際の屈曲走行において、好ましい耐油性が得難い。よって、本発明のガラス繊維被覆用塗布液におけるビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)の好適な含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+C+D)=30%以上、60%以下である。より好ましくは、D/(A+B+C+D)=33%以上、57%以下である。
ガラス繊維フィラメントを集束させたストランドにガラス繊維被覆用塗布液を塗布したゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設してなる伝動ベルトに、耐水性及び耐熱性に加え、耐油性及び耐屈曲疲労性を向上させるためには、前記ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)のを構成しているモノマーの構成比を選択する。
伝動ベルトとした際に、耐水性及び耐熱性に加え、耐油性及び耐屈曲疲労性を向上させるために、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)を構成しているモノマーの構成範囲において、ビニルピリジン(E)、ブタジエン(F)、及びスチレン(G)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、前記(E)をE/(E+F+G)=15%以上、30%以下、前記(F)をF/(E+F+G)=35%以上、60%以下、前記(G)をF/(E+F+G)=20%以上、40%以下、であることが好ましい。
本発明のガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)を構成するモノマーであるビニルピリジン(E)の含有が、E/(E+F+G)=17%より少ないと、塗布膜が油を吸収しやすくなり、高い耐油性が得難い。前記(E)の含有が35%を超えると、塗布膜が硬くなり、屈曲疲労性が低下する。よって、好適なビニルピリジン(E)の構成範囲は、ビニルピリジン(E)、ブタジエン(F)、及びとスチレン(G)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、E/(E+F+G)=15%以上、30%以下である。
また、本発明のガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)を構成するモノマーであるブタジエン(F)の含有が、F/(E+F+G)=35%より少ないと、塗布膜が水を吸収し易くなり、耐水性が低下する。前記(E)の含有が60%を超えると、塗布膜が油を吸収しやすくなり、高い耐油性が得難い。よって、好適なブタジエン(F)の構成範囲は、ビニルピリジン(E)、ブタジエン(F)、及びとスチレン(G)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、F/(E+F+G)=35%以上、60%以下である。
また、本発明のガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)を構成するモノマーであるスチレン(G)の含有が、G/(E+F+G)=20%より少ないと、塗布膜が油を吸収しやすくなり、高い耐油性が得難い。前記(E)の含有が40%を超えると、塗布膜が硬くなり、屈曲疲労性が低下する。よって、好適なスチレン(G)の構成範囲は、ビニルピリジン(E)、ブタジエン(F)、及びとスチレン(G)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、G/(E+F+G)=20%以上、40%以下である。
本発明のゴム補強用ガラス繊維に1次被覆層を形成するためには、複数本、実質的には多数本のガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤を含有する集束剤を散布塗布した後に集束させたストランドに、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョン及びビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)のエマルジョンを混合させて調製した1次被覆用塗布液を塗布し乾燥被覆する。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の2次被覆層を形成するためには、前記1次被覆層上にクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(H)とを有機溶剤、例えば、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を塗布し、2次被覆層を設ける。該2次被覆用塗布液の塗布は、2次被覆用塗布液中にゴム補強用ガラス繊維を屈曲走行させて強制的に付着させた後、乾燥させる等の手段で行う。
モノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)、及びビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)を含有させた1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(H)とを含有する2次被覆層を設けることは、本発明のゴム補強用ガラス繊維に、伝動ベルトとした際の寸法安定性、耐熱性、耐水性、耐油性を合わせ持たせる効果がある。
2次被覆層中に含有するクロロスルホン化ポリエチレン(C)の質量を100%基準とする質量百分率で表して、ビスアリルナジイミド(H)の含有はH/D=0.3%以上、10.0%以下であることが好ましい。
2次被覆層中のビスアリルナジイミド(H)の含有が、H/D=0.3%より少ないと、前述の優れた耐熱性が得難い。H/D=10.0%を超えると、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの接着強さが弱くなり作製した伝動ベルトは、耐久性に劣る。
クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(H)とを含有する2次被覆液には、キシレンなどの有機溶剤が用いられる。
次いで、本発明のゴム補強用ガラス繊維において、1次被覆層に含有させるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)のエマルジョン及び2次被覆層に含有させるビスアリルナジイミド(H)について説明する。
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)としては、モノヒドロキシベンゼンに対するホルムアルデヒドのモル比が0.5以上、3.0以下で、水を溶剤としてアルカリの存在下で反応させたレゾール型のフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)を使用することが固形分の析出なく、被覆液を安定させる効果があるので好ましい。ホルムアルデヒドのモル比が0.5未満では、ゴム補強用ガラス繊維と耐熱ゴムとの接着強さに劣り、3.0を越えると1次被覆用塗布液がゲル化し易い。本発明において、レゾール型のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)を用いることでガラス繊維被覆用塗布液の液安定性が向上する。
尚、前記アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等が挙げられる。
例えば、工業用フェノール樹脂として市販されている群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分濃度100質量%が挙げられる。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層に用いるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)には、例えば、日本ゼオン社株式会社製、商品名、Nipol L1560、Nipol L1562、固形分濃度41%が挙げられる。
本発明のガラス繊維被覆用塗布液の組成物として用いるクロロスルホン化ポリエチレン(C)は、質量百分率で表して、塩素含有量が20.0%以上、40.0%以下、スルホン基中の硫黄含有量が0.5%以上、2.0%以下のものが好適に用いられ、例えば、固形分約40質量%のラテックスとして、住友精化株式会社製、商品名、セポレックスCSM、固形分濃度40質量%が市販されており、本発明のガラス繊維被覆用塗布液に使用される。尚、前述の塩素含有量及びスルホン基中の硫黄含有量を外れたクロロスルホン化ポリエチレン(C)を用いたガラス繊維被覆用塗布液を使用し、ガラス繊維コードに被覆を施し作製したゴム補強用ガラス繊維は、母材である架橋されたHNBRとの接着性に劣る。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層に使用されるビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)には、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックスBL、固形分濃度、41.0質量%が掲げられる。
本発明のゴム補強用ガラス繊維において、2次被覆層に含有させるビスアリルナジイミド(H)は、熱硬化性イミドの一種であり、低分子量のビスアリルナジイミド(H)は他の樹脂との相溶性に優れており、硬化後のビスアリルナジイミド樹脂は、ガラス転移点が300℃以上である。
ビスアリルナジイミド(H)は、その硬化前において化1の構造式で表され、化1の構造式のアルキル基は、化2または化3の構造式等で示され、特に、N−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドが好適に使用される。
Figure 2014043656



Figure 2014043656




Figure 2014043656



ビスアリルナジイミド(H)は、丸善石油化学株式会社よりBANI−M、BANIH、BANI−X等の商品名で市販され本発明のゴム補強用ガラス繊維に使用できる。
ビスアリルナジイミド(H)を2次被覆層に含有させるとゴム補強ガラス繊維を母材ゴムに埋設またはその後に伝動ベルトに成形する際、化1の構造式からわかるように、二重結合部位が反応部位となり2次被覆層中でマトリックスを形成し、1次被覆層中の耐油性には優れるが耐水性に劣るアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)に水が浸透するのを抑制する効果があり、本発明のゴム補強用ガラス繊維に耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持たせる役割を果たす。
2次被覆層としては、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(H)の他に、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とマレイミドを含有する2次被覆層、クロロスルホン化ポリエチレン(C)と、有機ジイソシアネートおよびメタクリル酸亜鉛とを含有する2次被覆層が挙げられる。しかしながら、これら2次被覆層と比較して、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層が、本発明のゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトに、優れた耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持たせる。クロロスルホン化ポリエチレン(C)は耐熱性のために必要である。
前記1次被覆層および2次被覆層を設けてなる本発明のゴム補強用ガラス繊維は、種々の母材ゴム、特にHNBR等の耐熱ゴムに埋設し伝動ベルトとすると、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの優れた接着性が得られ、本発明のゴム補強用ガラス繊維は伝動ベルトの補強材として有効に働く。さらに、本発明のゴム補強用ガラス繊維を埋設させてなる伝動ベルトは、高温多湿およびオイルが付着する環境下における長時間の屈曲走行において、被覆層がゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの初期の接着強さを持続することで、寸法安定性に優れ、優れた耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持たせる。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層または2次被覆層には、老化防止剤、pH調整剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物、pH調整剤にはアンモニアが挙げられる。
耐熱性のためには、本発明のゴム補強用ガラス繊維の2次被覆用塗布液にクロロスルホン化ポリエチレン(C)を用い、さらに、加硫剤としてのニトロソ化合物、例えば、p−ニトロソベンゼン、無機充填剤、例えばカーボンブラックまたは酸化マグネシウムを添加し、ゴム補強用ガラス繊維の2次被覆層とすることは、該ゴム補強用ガラス繊維をゴムに埋設して作製した伝動ベルトの耐熱性を高める一層の効果がある。2次被覆用塗布液に、塗布液中のクロロスルホン化ポリエチレン(C)の質量を100%基準とする質量百分率で表して、加硫剤を0.5%以上、20.0%以下、無機充填材を10.0%以上、70.0%以下の範囲で添加すると、作製した伝動ベルトは、いっそうの耐熱性を発揮する。
加硫剤の含有が0.5%より少ない、また無機充填材の含有が10.0%より少ないと耐熱性を向上させる効果が発揮されず、加硫剤を20.0%を超えて、また無機充填材を70.0%を超えて加える必要はない。
尚、本発明において、伝動ベルトとは、エンジン、その他機械を運転するために、エンジン、モーター等の駆動源の駆動力を伝えるベルトのことであり、かみ合い伝動で駆動力を伝える歯付きベルト、摩擦伝動で駆動力を伝えるVベルトが挙げられる。自動車用伝動ベルトとは自動車のエンジンルーム内で用いられる耐熱性、耐水性および耐油性の前記伝ャフトを有するエンジンにおいて、クランクシャフトの回転をタイミングギヤに伝えカムシャフト駆動させバルブの開閉を設定されたタイミングで行うための、プーリーの歯とかみ合う歯を設けた歯付きベルトのことである。自動車用伝動ベルトには、エンジンの熱に対する耐熱性と雨天走行における耐水性、エンジンオイルにさらされるので耐油性が必要であり、長時間の屈曲走行後において、引っ張り強さを持続し寸法安定性に優れていること、即ち、耐熱性、耐水性、耐油性が要求される。
実施例1
(ガラス繊維被覆用塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)のエマルジョン、アンモニア水及び水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、市販のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈したモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用いた。当該モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、308重量部、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol 1562 固形分、41重量%)3415重量部、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョン(住友精化株式会社製、セポレックスCSM 固形分、40重量%)700重量部、及びビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックスBL、固形分、41質量%)2356重量部を加え、全体として10000重量部になるように水を添加し、ガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
ガラス繊維被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)、前記(B)、前記(C)及び前記(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+B+C+D)=5.5質量%、前記(B)が、B/(A+B+C+D)=50質量%、前記(C)が、C/(A+B+C+D)=10質量%、前記(D)が、D/(A+B+C+D)=34.5質量%である。
尚、ガラス繊維被覆用塗布液中の前記(A)、前記(B)、前記(C)及び前記(D)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(H)に属するヘキサメチレンジアリルナジイミドとに、カーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、クロロスルホン化ポリエチレン(C)としての東ソー株式会社製、商品名、TS−430、100重量部と、p−ジニトロベンゼン、40重量部と、N−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドとしての丸善石油化学株式会社製、商品名、BANI−H、0.3重量部とに、カーボンブラック、30重量部を加え、キシレン、1315重量部に分散させて2次被覆用塗布液を調製した。即ち、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の質量に対して、ビスアリルナジイミド(H)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドをH/C=0.3質量%、加硫剤であるp−ジニトロベンゼンを40質量%、無機充填材であるカーボンブラックを30質量%となるようにして2次被覆用塗布液を調製した。このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の2次被覆層となる。
(本発明のゴム補強用ガラス繊維の作製)
径9μmのガラス繊維フィラメントを、アクリルシラン系カップリング剤および樹脂を含有する集束剤を用い200本集束したストランド3本を引き揃えた後、前述の手順で作製した1次被覆用塗布液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて1次被覆層を設け1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。
この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して19質量%であった。
前記、1次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維に、2.54cm当たり2.0回の下撚りを与え、さらに13本引き揃えて下撚りと逆方向に2.54cm当たり2.0回の上撚りをする作業を施した。その後、前述の手順で作製した2次被覆用塗布液を塗布した後、110℃で1分間の乾燥を行い、2次被覆層を設け、本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1)を作製した。このようにして、下練りと上練りの方向を各々逆方向とした2種類のゴム補強用ガラス繊維を作製した。各々、S練り、Z練りと称する。
実施例2〜5
(ガラス繊維被覆用塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)のエマルジョン、アンモニア水及び水を添加し、本発明のガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
該ガラス繊維被覆用塗布液は、表1に記載されている組成にて、実施例1と同じ手順で調整した。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(H)に属するヘキサメチレンジアリルナジイミドとに、カーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製した。
該2次被覆用塗布液は、実施例1と同じ組成及び手順で調整した。
(本発明のゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同じ手順にて同じ構成のゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の1次被覆層の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して全て19質量%であった。下撚り後、13本引き揃えて、上撚り後、2次被覆用塗布液を塗布乾燥後、各々S撚り,Z撚りの2種類のゴム補強用ガラス繊維を作製した。実施例1と同じ手順で調整した。
比較例1
(ガラス繊維被覆用塗布液の調製)
ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)エマルジョンを含まないガラス繊維被覆用塗布液を、表1に記載されている組成にて、実施例1と同じ手順で調整した。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(H)に属するヘキサメチレンジアリルナジイミドとに、カーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製した。
該2次被覆用塗布液は、実施例1と同じ組成及び手順で調整した。
(本発明のゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同じ手順にて同じ構成のゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の1次被覆層の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して19質量%であった。下撚り後、13本引き揃えて、上撚り後、2次被覆用塗布液を塗布乾燥後、S撚り,Z撚りの2種類のゴム補強用ガラス繊維を作製した。実施例1と同じ手順で調整した。
比較例2
実施例1〜5と比較し、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)エマルジョンの種類を、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックスBL、固形分、41重量%から、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41重量%に変えて、ガラス繊維被覆用塗布液を、表1に記載されている組成にて、実施例1と同じ手順で調整した。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(H)に属するヘキサメチレンジアリルナジイミドとに、カーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製した。
該2次被覆用塗布液は、実施例1と同じ組成及び手順で調整した。
(本発明のゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同じ手順にて同じ構成のゴム補強用ガラス繊維の作製を行った。この時の1次被覆層の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して19質量%であった。下撚り後、13本引き揃えて、上撚り後、2次被覆用塗布液を塗布乾燥後、S撚り,Z撚りの2種類のゴム補強用ガラス繊維を作製した。実施例1と同じ手順で調整した。

Figure 2014043656



*モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A):群栄化学工業社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50重量%)を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の重量割合で希釈
*アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B):日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol 1562 固形分濃度、41重量%
*クロロスルホン化ポリエチレン(C):住友精化株式会社製、セポレックスCSM 固形分濃度、40.0重量%
*ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体:日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックスBL(固形分濃度、41重量%)(1)
*ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体:日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41重量%)(2)



Figure 2014043656



*モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A):群栄化学工業社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50重量%)を1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の重量割合で希釈
*アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B):日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol 1562 固形分濃度、41重量%
*クロロスルホン化ポリエチレン(C):住友精化株式会社製、セポレックスCSM 固形分濃度、40重量%
*ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体:日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックスBL(固形分濃度、41重量%)(1)
*ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体:日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41重量%)(2)

(ガラス繊維被覆用塗布液のフィルムの作製)
ガラス繊維被覆用塗布液を500g秤量氏し、テフロン(登録商標)容器に入れ、乾燥させフィルムを作製した。
その後、140℃ 15分間で30kgf/cmでプレスした、このフィルムを150℃の油に200時間浸漬させ、浸漬前後の重量より表3の膨潤率を求めた。

Figure 2014043656



(数1)

吸収率=(油浸漬後のフィルム重量―油浸漬前のフィルム重量)/油浸漬前のフィルム重量

表3に示すように、実施例1のゴム補強用のフィルムへの油の吸収率を測定したところ26.6%あり、実施例2は42.4%であり、実施例3は36.1%であり、実施例4は22.0%であり、実施例5は49.5%であり、実施例1〜5ともに、油に対する吸収率は小さく、油を吸収しにくい。比較例1のフィルムの吸収率は88.5%であり、比較例2は160%であり、油を吸収しやすい

(各ゴム補強用ガラス繊維とHNBRの接着強さの評価試験)
接着強さの評価試験を説明する前に、試験に使用した耐熱ゴムを説明する。
母材ゴムとしてのHNBR(日本ゼオン株式会社製、型番、2020)、100重量部に対して、カーボンブラック、40重量部と、亜鉛華、5重量部と、ステアリン酸、0.5重量部と、硫黄、0.4重量部と、加硫促進剤、2.5重量部と、老化防止剤、1.5重量部とを配合した。
試験片はHNBRからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維コード(実施例1〜5、比較例1〜2)を20本並べ、その上から布をかぶせ、耐熱ゴムAについては、温度、150℃下、196ニュートン/cm2(以後、ニュートンをN
と略す)、また耐熱ゴムBについては、温度、170℃下、196N/cm2の条件で端
部を除き押圧し、30分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のための試験片を得た。この試験片の接着強さの測定を、端部において各々のゴムシートとゴム補強用ガラス繊維を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を測定し、接着強さとした。接着強さが大きいほど接着力に優れる。

(接着強さの評価結果)
表4において、ガラス繊維とHNBRが界面から剥離していない破壊状態をゴム破壊とし、界面から一部のみでも剥離している破壊状態を界面剥離とした。ゴム破壊の方が、界面剥離より接着強さに優れる。

Figure 2014043656



表4に示すように、実施例1のゴム補強用ガラス繊維は、接着強さを測定したところ312Nであり、実施例2は302Nであり、実施例3は335Nであり、実施例4は300Nであり、実施例5は321Nであり実施例1〜5ともに、HNBRに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。比較例1のゴム補強用ガラス繊維は311Nであり、比較例2は321Nであり、ゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
(各ゴム補強用ガラス繊維のMIT屈曲試験、耐水性、耐熱性、耐油性)
実施例1〜5および比較例1〜2で作製したゴム補強用ガラス繊維を補強材として、母材ゴムに前記HNBRを用い、巾50mm、長さ250mm、厚さ20mmのゴムの中に2本コードを埋設させて、MIT屈曲試験用の試験片サンプルを作成した。耐水性、耐熱性および耐油性を評価した。
耐水性については、水を入れたビーカーに試験片を漬けて、ガスバーナーにかけて、2時間煮沸した後に取り出し、水分をふき取った後、試験片端部に3Kgの重りを付けて、210度の角度に1200回屈曲を繰り返し、その後、引っ張り強度を測定した。
また耐熱性については、試験片を、加熱炉中で150℃に240時間加熱し室温に戻した後、試験片端部に3Kgの重りを付けて、210度の角度に1200回屈曲を繰り返し、その後、引っ張り強度を測定した。
また、耐油性については、120℃に加熱した自動車用エンジンオイルに試験片を100時間浸漬してから取り出し、エンジンオイルを拭き取った後、試験片端部に3Kgの重りを付けて、210度の角度に1200回屈曲を繰り返し、その後、引っ張り強度を測定した。
図1は、MIT屈曲試験の試験片の模式図である。
図1に示すように、試験片1の大きさは、高さ2mm、幅5mm、長さ250mmであり、HNBRの内部に実施例1〜5、比較例1〜2によるゴム補強用ガラス繊維3が埋設されている。
図2は、MIT屈曲試験の試験状況の模式図である。
図2に示すように、図1に示す試験片をクランプに装着し、錘4を付け、クランプの曲げ角度は210度、120回/分の頻度で、1200回屈曲させる。
MIT屈曲試験の結果を表5に示す、表5中の数値は引っ張り強さ保持率であり、以下の数1の式により求めた。
(数2)
引張り強さ保持率(%) = 試験後の引張り強さ ÷ 試験前の引張り強さ × 100

Figure 2014043656



表5に示したように、引っ張り強さ保持率の測定結果、耐熱性において、実施例1は35.3%であり、実施例2は33.6%であり、実施例3は39.2%であり、実施例4は31.5%、実施例5は32.5%、比較例1は、38.5%、比較例2は39.2%で同等の結果であった。
耐水性においては、実施例1は91.3%であり、実施例2は93.2%であり、実施例3は90.5%であり、実施例4は89.9%、実施例5は60.5%、比較例1は82.0%、比較例2は75.9%であり、本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜5)を用いた伝動ベルトが、本発明の範疇にない従来のゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動ベルトに対して、優れた引っ張り強さを示した。
また、耐油性においても、実施例1は91.4%であり、実施例2は88.2%であり、実施例3は89.4%であり、実施例4は86.2%、実施例5は79.0%、比較例1は55.8%、比較例2は45.5%であり、本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜5)を用いた伝動ベルトが、本発明の範疇にない従来のゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動ベルトに対して、優れた引っ張り強さを示した。優れた結果を示した。
1 試験片
2 HNBR
3 ゴム補強用ガラス繊維
4 錘

Claims (7)

  1. モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを反応させてなるモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、
    アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、
    クロロスルホン化ポリエチレン(C)、
    及びビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(D)
    とを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維被覆用塗布液において、
    前記(D)を構成するモノマーであるビニルピリジン(E)、ブタジエン(F)、及びスチレン(G)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、
    前記(E)がE/(E+F+G)=17%以上、35%以下、
    前記(F)がF/(E+F+G)=35%以上、60%以下、
    前記(G)がF/(E+F+G)=20%以上、40%以下、
    であることを特徴とするガラス繊維被覆用塗布液。
  2. モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)、
    アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、
    クロロスルホン化ポリエチレン(C)、
    及びビニルピリジンーブタジエンースチレン共重合体(D)とを合わせた重量を100%基準とした重量百分率で表して、
    前記(A)をA/(A+B+C+D)=3%以上、8%以下、
    前記(B)をB/(A+B+C+D)=25%以上、60%以下、
    前記(C)をC/(A+B+C+D)=8%以上、15%以下、
    前記(D)をD/(A+B+C+D)=30%以上、60%以下
    の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維被覆用塗布液。
  3. 請求項1又は2に記載のガラス繊維被覆用塗布液を、複数本のガラス繊維フィラメントを集束させたガラス繊維コードに塗布後乾燥させた被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス繊維被覆用塗布液を塗布乾燥させた1次被覆層を形成し、その上層にクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(H)を有機溶剤に溶解又は分散した2次被覆用塗布液を塗布した2次被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維。
  5. 2次被覆層のクロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(H)の含有比が、クロロスルホン化ポリエチレンの重量を100%基準とする重量百分率で表してH/C=0.3%以上、10.0%以下であることを特徴とする請求項6に記載のゴム補強用ガラス繊維。
  6. 請求項4〜5のいずれか1項に記載のゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設させてなる伝動ベルト。
  7. 母材ゴムに水素化ニトリルゴムを使用した請求項6に記載の伝動ベルト。
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